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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132417
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】包装用容器の蓋体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20240920BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D65/40 D
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043167
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】396000422
【氏名又は名称】リスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】浅野 悦男
(72)【発明者】
【氏名】竹山 陽一
【テーマコード(参考)】
3E013
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E013BA30
3E013BB06
3E013BB08
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF22
3E013BF38
3E013BG20
3E086AA21
3E086AB01
3E086AD06
3E086AD23
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB85
3E086CA01
3E086DA07
3E086DA08
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EJ38
4F100GB18
4F100JL16B
(57)【要約】
【課題】気体または液体が出入りする開口弁を有し、かつ、樹脂シートによって形成される包装用容器の蓋体において、開口弁の通気性を確保しつつ、実用上問題なく引き裂かれ難い。
【解決手段】包装用容器10の蓋体15は、樹脂シート20によって形成された蓋体である。樹脂シート20は、使用済みポリエステルからなる再生ポリエステルを含む再生ポリエステル層21と、再生ポリエステル層21の片側または両側に積層され、再生ポリエステルを含まないバージンポリエステル層22とを有している。樹脂シート20は、二軸延伸させて形成されたシートである。樹脂シート20への熱成形によって得られた蓋体15の天面部16には、気体または液体が出入りする開口弁18が形成されている。蓋体15の天面部16の引裂強度が4.0N以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートによって形成された包装用容器の蓋体であって、
前記樹脂シートは、
使用済みポリエステルからなる再生ポリエステルを含む再生ポリエステル層と、
前記再生ポリエステル層の片側または両側に積層され、前記再生ポリエステルを含まないバージンポリエステル層と、
を有し、かつ、二軸延伸させて形成されたシートであり、
前記樹脂シートへの熱成形によって得られた前記蓋体の天面部には、気体または液体が出入りする開口弁が形成されており、
前記蓋体の前記天面部の引裂強度が4.0N以上である、包装用容器の蓋体。
【請求項2】
前記開口弁は、
前記天面部に形成された開口と、
前記開口を開閉可能な弁体と、
を有し、
前記弁体は、C字状またはU字状である、請求項1に記載された包装用容器の蓋体。
【請求項3】
前記樹脂シートの全体厚みに対する前記再生ポリエステル層の厚みの割合は、60%以上かつ98%以下である、請求項1に記載された包装用容器の蓋体。
【請求項4】
前記再生ポリエステル層に含まれる前記再生ポリエステルは、80質量%以上である、請求項1に記載された包装用容器の蓋体。
【請求項5】
前記蓋体の相対結晶化度が30%以上である、請求項1から4までの何れか1つに記載された包装用容器の蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用容器の蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、食品を収容する合成樹脂製の容器本体に被せて容器本体の開口を閉じる、合成樹脂製の蓋が開示されている。この蓋の天面部には、切り込みを入れることで、所望形状の舌片部が形成されている。舌片部は、蓋の天面部と繋がる連結部を残して天面部に切り込みを入れることで形成される。
【0003】
例えば食品が収容された容器本体に蓋を被せた状態で、食品を温めるために電子レンジなどで加熱する場合、食品から蒸気が発生し、容器本体内の圧力が上昇することに伴って舌片部が上向きに撓んで排気口が形成される。この舌片部が撓んで形成された排気口を通じて、容器本体内の蒸気を、容器本体の外部に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-50008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、環境問題を背景に、使用済みプラスチック製品の再利用が注目されいる。そこで、本願発明者は、使用済みプラスチック製品が再利用された再生プラスチック層を含む樹脂シートから、特許文献1に開示されたような合成樹脂製の蓋を形成することを考えている。本願発明者は、再生プラスチック層を含む樹脂シートによって形成された蓋体であっても、例えば舌片部(言い換えると開口弁)が衣服や障害物に引っ掛かった場合であっても、舌片部が引き裂かれ難くすることを考えている。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、気体または液体が出入りする開口弁を有し、かつ、樹脂シートによって形成される包装用容器の蓋体において、蓋体の開口弁の通気性を確保しつつ、実用上問題なく引き裂かれ難い包装用容器の蓋体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る包装用容器の蓋体は、樹脂シートによって形成された包装用容器の蓋体である。前記樹脂シートは、使用済みポリエステルからなる再生ポリエステルを含む再生ポリエステル層と、前記再生ポリエステル層の片側または両側に積層され、前記再生ポリエステルを含まないバージンポリエステル層とを有している。前記樹脂シートは、二軸延伸させて形成されたシートである。前記樹脂シートを熱成形して得られた前記蓋体の天面部には、気体または液体が出入りする開口弁が形成されている。前記蓋体の前記天面部の引裂強度が4.0N以上である。
【0008】
本願発明者は、樹脂シートを二軸延伸させると、分子鎖の配向によって引裂強度が低下するという知見を得ている。一方、再生ポリエステルにおいて、例えばペットボトルのラベルやキャップなどの不純物を含んでいる可能性があり得る。例えば不純物を含む再生ポリエステルを含む再生ポリエステル層を有する樹脂シートが熱成形時に延伸されると、不純物の周囲の部分は延伸されるが、不純物自体は延伸され難い。このことによって、不純物とその周囲の間に小さな空隙(ボイド)が発生すると考えられる。この空隙が起点になって引裂強度が低下するおそれがある。さらに、再生ポリエステルを含む樹脂シートは、二軸延伸されることで、上記の空隙の発生が顕著になり、引裂強度が低下すると考えられる。しかしながら、上記の包装用容器の蓋体によれば、樹脂シートにおいて、再生ポリエステル層の片面または両面に、再生ポリエステルを含まないバージンポリエステル層を設けることで、樹脂シートを二軸延伸させた場合であっても、引裂強度を4.0N以上にすることができる。よって、蓋体の開口弁の通気性を確保しつつ、包装用容器の蓋体を、実用上問題なく引き裂かれ難くすることができる。
【0009】
本発明の好ましい一態様によれば、前記開口弁は、前記天面部に形成された開口と、前記開口を開閉可能な弁体と、を有している。前記弁体は、C字状またはU字状である。
【0010】
上記態様によれば、開口弁の弁体をC字状またはU字状とすることで、シンプルな構成で通気性を確保しつつ、弁体が引っ掛かった場合であっても、蓋体の開口弁を引き裂かれ難くすることができる。
【0011】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記樹脂シートの全体厚みに対する前記再生ポリエステル層の厚みの割合は、60%以上かつ98%以下である。
【0012】
上記態様によれば、再生ポリエステル層の厚みの割合を、樹脂シートの全体厚みに対して60%以上かつ98%以下にすることで、環境負荷の低減に貢献することができる。
【0013】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記再生ポリエステル層に含まれる前記再生ポリエステルは、80質量%以上である。
【0014】
上記態様によれば、再生ポリエステルを多く使用することができるため、環境負荷の低減に貢献することができる。
【0015】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記蓋体の相対結晶化度が30%以上である。
【0016】
相対結晶化度が高いほど、樹脂全体における結晶質部分の割合が高くなり、耐熱性が向上する。したがって、蓋体の相対結晶化度を30%以上にすることで、高い耐熱性を有する蓋体を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、気体または液体が出入りする開口弁を有し、かつ、樹脂シートによって形成される包装用容器の蓋体において、蓋体の開口弁の通気性を確保しつつ、衣服などの障害物などが開口弁に引っ掛かったときに、開口弁が実用上問題なく引き裂かれ難く、破片が不純物として混入し難い包装用容器の蓋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る蓋体と容器体とを備えた包装用容器を示す斜視図である。
図2】蓋体の一部を示す断面図であり、かつ、樹脂シートの断面図である。
図3】二軸延伸されるMD方向とTD方向を示す樹脂シートの図である。
図4A】開口弁の弁体の形状を示す平面図である。
図4B】変形例に係る開口弁の弁体の形状を示す平面図である。
図5】樹脂シートおよび包装用容器を作製する手順を示すフローチャートである。
図6】押出成形において使用される押出装置を模式的に示した図である。
図7】熱成形において使用される金型およびプラグを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る包装用容器の蓋体の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る蓋体15と容器体11とを備えた包装用容器10を示す斜視図である。包装用容器10は、例えば食品が収容される容器である。包装用容器10は、加熱される容器である。ここでは、例えば包装用容器10は、食品を収容した状態で電子レンジに入れられて加熱される容器である。ただし、包装用容器10は、食品が収容される容器に限定されない。図1に示すように、包装用容器10は、容器体11と、蓋体15とを備えている。包装用容器10、すなわち容器体11および蓋体15は、樹脂シート20によって形成されている。包装用容器10は、樹脂シート20によって形成されたものであれば、その種類、用途および形状などは特に限定されるものではない。
【0021】
樹脂シート20は、ポリエステルによって形成されたシートであり、いわゆるポリエステルシートである。例えば樹脂シート20は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう。)によって形成されている。ただし、樹脂シート20を形成する材料は、PETに限定されず、例えばポリ乳酸(以下、PLAともいう。)であってもよい。PLAは、トウモロコシ、芋、サトウキビ、ビートなどの農産物を原料とする生分解性プラスチックの一種である。
【0022】
図2は、樹脂シート20の断面図である。図2に示すように、樹脂シート20は、複数の層から形成されている。なお、樹脂シート20を形成する層の数は特に限定されない。以下では、3つの層によって形成された樹脂シート20について説明する。
【0023】
本実施形態では、樹脂シート20は、再生ポリエステル層21と、バージンポリエステル層22(ここでは、2つのバージンポリエステル層22)とを備えている。樹脂シート20は、再生ポリエステル層21と、バージンポリエステル層22とが積層されたシートである。
【0024】
再生ポリエステル層21は、再生ポリエステルを含む層のことである。再生ポリエステル層21は、再生ポリエステルによって形成された層である。ここで、再生ポリエステルとは、使用済みポリエステルからなるものである。使用済みポリエステルとは、使用済みのポリエステル品から得られるポリエステルのことである。使用済みのポリエステル品は、例えば市場から回収した使用済みのポリエステル品である。ここでは、ポリエステル品とは、例えばPETボトルやPETトレイなどのことをいう。再生ポリエステルとは、使用済みのポリエステル品を回収することで得られるポリエステルであって、再利用されたポリエステルのことである。また、再生ポリエステルとは、使用済みのポリエステル品を所定のリサイクル方法に基づいて回収することで得られるポリエステルである。
【0025】
ここでは、PETボトルなどのポリエステル品のリサイクル方法として、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、および、メカニカルリサイクルなどが挙げられる。マテリアルリサイクルとは、回収されたポリエステル品を粉砕した後にアルカリ洗浄をして繊維などに再利用することである。ケミカルリサイクルとは、回収されたポリエステル品を化学分解して、原料レベルに差し戻して、PETを再合成することである。メカニカルリサイクルは、回収されたポリエステル品に対して、上述のマテリアルリサイクルにおけるアルカリ洗浄をより厳密に行うこと、または、高温で真空乾燥することなどでポリエステル品の汚れを確実に取り除いて再利用することである。ここで、メカニカルリサイクルによって再利用されたポリエステルのことをメカニカルリサイクルポリエステルという。本実施形態では、再生ポリエステルは、例えばメカニカルリサイクルポリエステルである。
【0026】
なお、再生ポリエステル層21には、再生ポリエステル以外のポリエステル(例えばPET)が含まれていてもよい。ここで、再生ポリエステル層21に含まれる、再生ポリエステル以外のポリエステルとして、例えば後述のバージンポリエステルが挙げられる。本実施形態では、再生ポリエステル層21に含まれる再生ポリエステルは、80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0027】
なお、再生ポリエステル層21には、成形性を著しく損なわない範囲において、樹脂シート20や、包装用容器10を作製する際に発生する耳ロス、スケルトンなどの製造工程内ロスを含んでいてもよい。
【0028】
バージンポリエステル層22は、再生ポリエステルを含まない層のことである。バージンポリエステル層22は、いわゆるバージンポリエステルを含む層である。バージンポリエステル層22は、バージンポリエステルによって形成されている。ここで、バージンポリエステルとは、再生ポリエステルを含まないポリエステルのことであり、かつ、未利用の(言い換えると、再利用されていない)ポリエステルのことである。バージンポリエステルは、新材である。バージンポリエステル層22は、未利用のポリエステルによって形成された層である。バージンポリエステルとは、市場から回収した使用済みポリエステル品から得られる再生ポリエステルとは異なるものである。
【0029】
例えばバージンポリエステルは、バイオマス由来のポリエステルを含んでいる。バイオマス由来のポリエステルとして、例えばバイオマス由来のPETが挙げられる。バイオマス由来のポリエステルとは、トウモロコシ、芋、サトウキビ、ビートなどの植物由来の原料を使用して作製されたポリエステルのことをいう。また、バイオマス由来のPETとは、上記の植物由来の原料を使用して作製されたPETのことをいい、結晶性ポリエステルである。なお、バージンポリエステルは、例えば石油由来のポリエステルを含んでもよい。石油由来のポリエステル(例えばPET)とは、石油を原料としたポリエステルのことをいう。
【0030】
なお、バージンポリエステル層22には、透明性や機能性を著しく損なわない範囲において、必要に応じてポリエステル(例えばPET)以外の他の成分が含まれていてもよい。当該他の成分として、例えば公知の樹脂シートに使用されている添加剤(例えば難燃材、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防雲剤、滑剤(例えば滑剤MB(マスターバッチ))、アンチブロッキング剤、流動性改質剤、可塑剤、分散剤、および抗菌剤など)が挙げられる。
【0031】
本実施形態では、図2に示すように、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の両側に積層されている。ここでは、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の幅広な面の両面(図2では、上面および下面)に設けられている。ここでは、バージンポリエステル層22の数は2つである。再生ポリエステル層21は、2つのバージンポリエステル層22によって挟まれている。
【0032】
なお、1つの再生ポリエステル層21は、単層であってもよいし、多層であり、複数の層(ここでは、再生ポリエステル層)が積層されて形成されてもよい。同様に、1つのバージンポリエステル層22は、単層であってもよいし、多層であり、複数の層(ここでは、バージンポリエステル層)が積層されて形成されてもよい。
【0033】
本実施形態では、樹脂シート20の全体厚み(言い換えると、容器体11および蓋体15の厚み)は、0.3mm以下であり、好ましくは0.25mm以下である。ここで、樹脂シート20の厚みとは、再生ポリエステル層21とバージンポリエステル層22とを合わせた全体の厚みのことである。本実施形態では、樹脂シート20の再生ポリエステル層21とバージンポリエステル層22のうち、再生ポリエステル層21の方がバージンポリエステル層22よりも厚みが大きい。例えば樹脂シート20の全体厚みに対する、再生ポリエステル層21の厚みの割合は、60%以上かつ98%以下であり、好ましくは70%以上かつ95%以下、特に好ましくは80%以上かつ92%以下である。例えば再生ポリエステル層21とバージンポリエステル層22の厚みの比率は、再生ポリエステル層:バージンポリエステル層=80:20、または、92:8である。本実施形態では、2つのバージンポリエステル層22の厚みは、同じである。しかしながら、2つのバージンポリエステル層22の厚みは、異なっていてもよい。
【0034】
樹脂シート20は、二軸延伸させて形成されたシートである。図3は、二軸延伸されるMD方向とTD方向を示す樹脂シート20の図である。ここでは、図3に示すように、樹脂シート20の長手方向、短手方向を、それぞれMD方向、TD方向と定義する。TD方向は、MD方向に対して垂直な方向である。MD方向とTD方向とは直交している。ここでの二軸延伸とは、樹脂シート20を、MD方向とTD方向の二軸に延伸させて、薄肉に形成することをいう。ただし、樹脂シート20に対して二軸延伸させる方向は、MD方向とTD方向に限定されない。
【0035】
樹脂シート20に対する二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。同時二軸延伸とは、樹脂シート20を、MD方向とTD方向の両方向に同時に延伸させることをいう。逐次二軸延伸とは、樹脂シート20を、MD方向とTD方向のうちの一方の方向に延伸させ、その後、他方の方向に延伸させることをいう。例えば逐次二軸延伸では、樹脂シート20を、MD方向に延伸させた後に、TD方向に延伸させる、もしくは、TD方向に延伸させた後に、MD方向に延伸させる。
【0036】
以上、本実施形態に係る樹脂シート20について説明した。本実施形態では、図1に示すように、樹脂シート20を成形することで、包装用容器10、すなわち容器体11と蓋体15が作製される。上述のように、包装用容器10は、容器体11と、蓋体15とを備えている。容器体11および蓋体15は、樹脂シート20によって形成されている。
【0037】
図1に示すように、容器体11は、底部12と側壁部13とを有している。底部12は、容器体11の底の部分を構成している。側壁部13は、底部12から立ち上がっている。側壁部13は、例えば底部12の端(例えば周端)から上方に向かって延びている。側壁部13は、平面視において底部12を囲むようにして配置されている。なお、側壁部13は、底部12に対して垂直方向に延びていてもよいし、底部12に対して斜め上方に延びるものであってもよい。言い換えると、側壁部13は、底部12から上方に離れるにしたがって、底部12の外方に向かうように傾斜していてもよい。底部12および側壁部13は、平らな面を有していてもよいし、剛性を高めるために、凸部または凹部(図示せず)が設けられてもよい。ここでは、底部12と側壁部13とに囲まれた空間に、食品などが収容される。
【0038】
本実施形態では、底部12は円形状である。ただし、底部12の形状は特に限定されず、容器体11の形状も特に限定されるものではない。ここでは、容器体11には、側壁部13の上縁によって、側壁部13に囲まれた容器開口(図示せず)が形成されている。当該容器開口は、上方に向かって開口している。
【0039】
図1に示すように、蓋体15は、容器体11に装着可能なものである。ここでは、蓋体15は、容器体11の容器開口を開閉自在に容器体11に装着される。蓋体15は、容器体11の側壁部13の上端に装着されることによって、上記の容器開口を閉鎖する。本実施形態では、蓋体15は、天面部16と、嵌合部17とを備えている。
【0040】
天面部16は、蓋体15の天面の部分を構成している。天面部16は、蓋体15を容器体11に装着したときにおいて、底部12と対向している。例えば蓋体15が容器体11に装着されたとき、天面部16は、底部12と平行になるように配置されている。
【0041】
嵌合部17は、蓋体15が容器体11に装着されたとき、容器体11に嵌合するものである。本実施形態では、嵌合部17は、容器体11の側壁部13の上端部に嵌合可能なものである。嵌合部17は、平面視における天面部16の端(例えば周端)に設けられている。嵌合部17は、平面視において天面部16を囲むようにして設けられている。嵌合部17は、蓋体15が容器体11に装着されている状態において、側壁部13の上端部に対応した位置に配置されている。なお、嵌合部17の具体的な構成は特に限定されない。嵌合部17には、例えば容器体11の側壁部13の上端部が嵌め込まれる凹部が設けられてもよい。当該凹部は、平面視において天面部16を囲むように設けられており、嵌合部17の底面から上方に凹むように構成されている。
【0042】
本実施形態では、蓋体15の天面部16には、開口弁18が形成されている。開口弁18は、気体または液体が出入りする弁である。上述のように、本実施形態では、包装用容器10は、食品を収容した状態で電子レンジなどに入れられて加熱される容器である。このように加熱されるとき、食品が温められることで蒸気(例えば水蒸気)が発生する。蓋体15の開口弁18は、電子レンジで加熱される前は閉じた状態であり、電子レンジで加熱されるとき、食品が温められることで発生する蒸気が蓋体15の外部に排出されるときに開口弁18が開き、開口弁18を蒸気が通過する。蒸気が通過した後、開口弁18は元の閉じた状態に戻る。なお、天面部16に形成される開口弁18の数、および、位置は特に限定されない。本実施形態では、蓋体15の天面部16に形成される開口弁18の数は2つである。また、開口弁18は、天面部16の中央部分に形成されている。
【0043】
なお、開口弁18の構成は特に限定されない。ここでは、開口弁18は、天面部16に形成された開口19aと、開口19aを開閉可能な弁体19bとを有している。気体や液体は、開口19aを通過する。弁体19bは、天面部16と繋がっている。本実施形態では、開口弁18は、天面部16に切り込みを入れられることで形成される。天面部16における切り込みを入れられた部分が開口19aとなり、かつ、弁体19bとなる。そのため、弁体19bは、開口19aと合致する形状である。なお、弁体19bは、例えば抜き打ち刃やレーザなどの公知の加工装置によって形成される。
【0044】
図4Aは、開口弁18の弁体19bの形状を示す平面図である。図4Bは、変形例に係る開口弁18の弁体19bの形状を示す平面図である。本実施形態では、図4Aに示すように、開口弁18の弁体19bの形状は、U字状である。このとき、開口19aの形状もU字状である。なお、弁体19bの形状は特に限定されるものではない。図4Bに示すように、例えば弁体19bの形状は、C字状であってもよい。このとき、開口19aの形状もC字状であってもよい。
【0045】
本実施形態では、図2に示すように、包装用容器10(言い換えると、蓋体15)は、内層31と、外層32と、中間層33とを備えている。図2において、上側が蓋体15の内側を示し、下側が蓋体15の外側を示している。蓋体15の天面部16(図1参照)および嵌合部17(図1参照)は、内層31と、外層32と、中間層33とから形成されている。内層31は、蓋体15を構成する複数の層のうち、最も内側に配置される層である。内層31は、蓋体15の内周面を構成する層である。内層31は、包装用容器10に食品を収容した状態において、食品が直接触れる層である。外層32は、蓋体15を構成する複数の層のうち、最も外側に配置される層であり、蓋体15の外周面を構成する層である。外層32は、例えば利用者が包装用容器10を手で持ったときに、手が直接触れる層である。
【0046】
中間層33は、内層31と外層32との間に配置された層である。図2に示すように、中間層33は、内層31と外層32とによって挟まれている。そのため、中間層33は、食品や利用者が直接触れない層になり得る。なお、内層31、外層32、中間層33は、それぞれ単層であってもよいし、複数の層が積層されて形成された層であってもよい。
【0047】
本実施形態では、包装用容器10の蓋体15において、内層31および外層32は、樹脂シート20のバージンポリエステル層22によって形成されている。中間層33は、樹脂シート20の再生ポリエステル層21によって形成されている。
【0048】
なお、包装用容器10の容器体11は、蓋体15と同様に、内層31、外層32および中間層33によって形成されている。言い換えると、容器体11は、再生ポリエステル層21の両側にバージンポリエステル層22が設けられ、再生ポリエステル層21をバージンポリエステル層22で挟んだ3層によって形成されている。
【0049】
上述のように、蓋体15において天面部16には、開口弁18が形成されている。そのため、開口弁18の弁体19bが引き裂かれ難くするために、本実施形態では、蓋体15の天面部16(言い換えると樹脂シート20)の引裂強度は、4.0N以上であり、好ましくは4.5N以上であり、特に好ましくは5.0Nであり、例えば5.2N以上である。具体的には、蓋体15の天面部16の開口弁18が、二軸延伸された樹脂シート20の延伸方向(例えばMD方向またはTD方向)に形成された場合であっても、天面部16の引裂強度が4.0N以上であるため、開口弁18が実用上問題なく引き裂かれ難くすることができる。
【0050】
本実施形態では、蓋体15の相対結晶化度が30%以上であり、好ましくは50%以上であり、特に好ましくは80%以上であり、例えば95%以上である。ここで、相対結晶化度とは、結晶質部分の割合のことをいう。相対結晶化度が高くなると、高分子鎖が密になり、単位面積当たりの結合力(分子間力)が増すため、靱性、耐熱性、耐薬品性などが向上する。
【0051】
次に、本実施形態に係る樹脂シート20および包装用容器10を作製する手順について説明する。図5は、樹脂シート20および包装用容器10を作製する手順を示すフローチャートである。本実施形態では、図5に示すように、ペレットを用意(ステップS101)し、ペレットに対して押出成形(ステップS103)を行うことで樹脂シート20を作製することができる。そして、樹脂シート20に対して、二軸延伸(ステップS105)と、熱成形(ステップS107)を順に行うことで、包装用容器10、すなわち容器体11および蓋体15を作製することができる。
【0052】
まずステップS101では、ペレットを用意する。本実施形態では、ペレットとして、バージンポリエステルによって形成されたバージンペレットと、再生ポリエステルによって形成された再生ペレットとを用意する。再生ペレットは、例えば市場から回収された使用済みのポリエステル系樹脂成型品(言い換えると、使用済みのポリエステル品)から作製される。使用済みのポリエステル品とは、例えば使用済みのPETボトルや、使用済みのPETトレイなどの使用済みPET容器のことである。ここでは、市場から回収された使用済みのポリエステル品を粉砕し、異物を除去し、洗浄し、乾燥させることで、再生ペレットが作製される。
【0053】
次に、ステップS103では、バージンペレットと、再生ペレットとを押出成形することで、樹脂シート20を作製する、図6は、押出成形で使用される押出装置50を模式的に示した図である。本実施形態では、押出成形において、図6に示すような押出装置50を使用する。図6に示すように、押出装置50は、第1ホッパー51Aと、第1スクリュー52Aと、第2ホッパー51Bと、第2スクリュー52Bと、フィードブロック58と、合流ダイ53と、冷却ローラ54と、巻取機55とを有している。
【0054】
本実施形態では、第1ホッパー51Aと第1スクリュー52Aは、バージンペレット用(以下、バージン用という。)である。第2ホッパー51Bと第2スクリュー52Bは、再生ペレット用(以下、再生用という。)である。第1ホッパー51Aは、第1スクリュー52Aに接続されており、第1スクリュー52Aの周囲には、第1ヒータ57Aが設けられている。第2ホッパー51Bは、第2スクリュー52Bに接続されており、第2スクリュー52Bの周囲には、第2ヒータ57Bが設けられている。また、第1スクリュー52Aおよび第2スクリュー52Bは、フィードブロック58に接続されている。フィードブロック58は、合流ダイ53に接続されている。
【0055】
押出成形では、まずバージンペレット40Aを第1ホッパー51Aに入れる。バージン用において、第1ホッパー51Aに入れられたバージンペレット40Aは、第1スクリュー52Aに流され、第1ヒータ57Aによって加熱されながら、第1スクリュー52Aが回転することによって混ぜ合わされる。第1スクリュー52Aによって混ぜ合わされたバージンペレット40Aは、幅の狭いフィードブロック58に向かって流される。同様に、再生用において、再生ペレット40Bを第2ホッパー51Bに入れる。第2ホッパー51Bに入れられた再生ペレット40Bは、第2スクリュー52Bに流され、第2ヒータ57Bによって加熱されながら、第2スクリュー52Bが回転することによって混ぜ合わされる。第2スクリュー52Bによって混ぜ合わされた再生ペレット40Bは、フィードブロック58に向かって流される。
【0056】
フィードブロック58では、バージンペレット40Aと、再生ペレット40Bとが合流し、合流ダイ53に流される。合流ダイ53では、バージンペレット40Aの層と、再生ペレット40Bの層とになって、フィードブロック58によって押し出されて(ここでは、共押出されて)排出される。ここで、フィードブロック58によって合流ダイ53から押し出されたバージンペレット40Aの層が、バージンポリエステル層22(図2参照)になる。フィードブロック58によって合流ダイ53から押し出された再生ペレット40Bの層が、再生ポリエステル層21(図2参照)になる。
【0057】
本実施形態では、詳しい図示は省略するが、加熱された状態で、バージンポリエステル層22、再生ポリエステル層21、バージンポリエステル層22の順に重ねられてシート状になって、合流ダイ53から排出される。このとき、バージンポリエステル層22と再生ポリエステル層21とが接着されて、樹脂シート20になる。
【0058】
本実施形態では、図6に示すように、合流ダイ53の下流側、すなわち合流ダイ53から排出された樹脂シート20が向かう先には、冷却ローラ54、巻取機55が順に配置されている。合流ダイ53から排出された樹脂シート20は、冷却ローラ54を通過する。ここで、合流ダイ53から排出された樹脂シート20は、加熱された状態であるため、冷却ローラ54を通過することで冷却される。冷却ローラ54を通過する樹脂シート20は、巻取機55に向かって搬送され、巻取機55によってロール状に巻き取られる。以上の手順によって樹脂シート20が作製される。
【0059】
次に、図5のステップS105において、ステップS103にて作製された樹脂シート20を二軸延伸させる。このときの二軸延伸は、上述のように、同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。ここでは、図3に示すように、MD方向とTD方向に樹脂シート20を延伸させることで二軸延伸を行う。本実施形態では、例えば樹脂シート20の全体厚みが0.3mm以下になるように、樹脂シート20を二軸延伸することで薄肉化させる。
【0060】
次に、図5のステップS107において、二軸延伸された樹脂シート20を熱成形することで、包装用容器10、すなわち容器体11および蓋体15を作製する。ここでは、熱成形は、真空成形、圧空成形、または、真空成形と圧空成形の併用とも言い換えられる。図7は、熱成形において使用される金型60およびプラグ65を模式的に示した図である。図7に示すように、熱成形では、金型60とプラグ65が使用される。金型60には、凹部61が形成されている。プラグ65には、金型60の凹部61に挿入される凸部66が形成されている。ここでは、熱成形のとき、凹部61と凸部66が向かい合うように、金型60とプラグ65を離間させた状態で配置する。その後、加熱された樹脂シート20を金型60とプラグ65との間に配置する。このとき、樹脂シート20の2つのバージンポリエステル層22のうちの一方がプラグ65側に位置し、2つのバージンポリエステル層22のうちの他方が金型60側に位置するように、樹脂シート20を配置する。
【0061】
その後、図7の矢印のように、金型60またはプラグ65を移動させて、金型60の凹部61に、プラグ65の凸部66を挿入する。このことによって、樹脂シート20は、凹部61と凸部66との間で、凹部61と凸部66の形状に沿って熱成形され、熱成形された後の樹脂シート20を適宜カットすることで、包装用容器10が作製される。
【0062】
本実施形態では、容器体11を作製する用の金型60およびプラグ65と、蓋体15を作製する用の金型60およびプラグ65とが用意されている。容器体11を作製する用において、金型60の凹部61、および、プラグ65の凸部66は、容器体11の形状に対応した形状を有している。蓋体15を作製する用において、金型60の凹部61、および、プラグ65の凸部66は、蓋体15の形状に対応した形状を有している。
【0063】
ところで、本実施形態では、包装用容器10は、上述のように、食品を収容する容器として使用され、食品が収容された状態で電子レンジなどに入れられて加熱される。電子レンジなどによって食品が温められると、食品に含まれる水分が蒸発して蒸気が発生する。包装用容器10に収容された状態で食品から蒸気が発生することで、包装用容器10の圧力が上昇することで膨張する。そこで、包装用容器10が過度に膨張することを防ぐために、図1に示すように、本実施形態では蓋体15には、開口弁18が形成されている。食品から発生した蒸気が開口弁18を通過して包装用容器10の外部に排出されることで、包装用容器10が過度に膨張することを防ぐことができる。
【0064】
なお、開口弁18は、包装用容器10内に虫や埃などの異物が混入することを防ぐために、包装用容器10が電子レンジなどによって加熱されるときには、内部で発生した蒸気で開放され、当該加熱以外のときには閉鎖されている方が好ましい。また、開口弁18の弁体19bは、衣服や障害物などに引っ掛かることで引き裂かれるおそれがある。そのため、弁体19bの形状をU字状またはC字状にすることで、弁体19bが引き裂かれ難くすることができる。
【0065】
また、開口弁18の弁体19bが引き裂かれ難くするために、蓋体15(言い換えると樹脂シート20)の引裂強度を高くすることが好ましい。しかしながら、蓋体15を形成する樹脂シート20は、再生ポリエステル層21とバージンポリエステル層22とが積層されたシートである。このうち、再生ポリエステル層21には、使用済みのポリエステル品(例えばPETボトル)を回収、洗浄、粉砕などされた再生ポリエステルが含まれるため、不純物が含まれている可能性があり得る。再生ポリエステル層21に不純物が含まれている状態で、再生ポリエステル層21が熱成形時に延ばされると、不純物の周囲の再生ポリエステルは延ばされるが、不純物自体は延ばされない。その結果、再生ポリエステル層21において、不純物と、不純物の周囲の再生ポリエステルとの間に空隙(いわゆる、ボイド)が形成されることがあり得る。再生ポリエステル層21に空隙が形成されていると、当該空隙が起点となって、蓋体15の開口弁18が引き裂かれることがあり得る。さらに、不純物が含まれた再生ポリエステル層21が二軸延伸されると、上記の空隙の発生が顕著になり、引裂強度が低下すると考えられている。
【0066】
しかしながら、本実施形態では、蓋体15を形成する樹脂シート20において、再生ポリエステル層21にバージンポリエステル層22を積層させることで、例えば再生ポリエステル層21に空隙が形成された場合であっても、当該空隙がバージンポリエステル層22によって覆われることで、空隙を起点とした引き裂きが発生し難くすることができる。その結果、再生ポリエステル層21を含む樹脂シート20で蓋体15を形成した場合であっても、4.0N以上の引裂強度を確保することができる。よって、再生ポリエステル層21を含む樹脂シート20で蓋体15を形成した場合であっても、蓋体15の開口弁18が引き裂かれ難くすることができる。
【0067】
次に、本実施形態に係る包装用容器10の蓋体15に対する引裂強度などを評価するための評価試験を行った。ここでは、評価試験を行うにあたり、以下のサンプル1~6の包装用容器の蓋体を用意した。サンプル1~6において、樹脂シートの厚みは、0.25mmである。また、サンプル1~6において、包装用容器のサイズは、縦が244mm、横が171mm、高さが16mmである。
【0068】
<サンプル1>
サンプル1は、本実施形態に係る樹脂シートによって形成された包装用容器の蓋体である。サンプル1では、中間層は、再生ポリエステル層であり、内層および外層は、バージンポリエステル層である。サンプル1では、包装用容器の蓋体における内層、中間層、外層の厚みの比率(以下、層比という。)は、内層:中間層:外層=4:92:4である。
【0069】
サンプル1における再生ポリエステル層は、バージンポリエステルと、再生ポリエステルとによって構成されており、20質量%のバージンポリエステルと、80質量%の再生ポリエステルを含んでいる。サンプル1におけるバージンポリエステル層は、バージンポリエステルと、滑剤MB(マスターバッチ)とによって構成されており、94質量%のバージンポリエステルと、6質量%の滑剤MBを含んでいる。
【0070】
サンプル1において、再生ポリエステルとして、市場から回収されたPETボトルからなるメカニカルリサイクルポリエステルを使用した。メカニカルリサイクルポリエステルとして、ウツミリサイクルシステム株式会社製のボトルリサイクルPET「VF-31A」を使用した。この再生ポリエステル(メカニカルリサイクルポリエステル)の固有粘度IV値は、0.74dl/gであった。サンプル1のバージンポリエステルとして、中国海南逸盛石化有限公司製のPET樹脂「YS-H01」を使用した。このバージンポリエステルの固有粘度IV値は、0.78dl/gであった。また、サンプル1の滑剤MBとして、東洋紡績株式会社製の「RE555」を使用した。この滑剤MBは、極限粘度IV値が0.62dl/gのポリエステル樹脂に、平均粒子径が2.4μmの球状シリカ7000ppmを重合時に混合した微粒子を含有するポリエステル樹脂を含んでいる。
【0071】
サンプル1において、樹脂シートおよび包装用容器の蓋体は、以下のように作製された。まず、94質量%のバージンポリエステルと、6質量%の滑剤MBを混合し、バージンポリエステル層用混合物を調製した。次に、20質量%のバージンポリエステルと、80質量%の再生ポリエステルを混合し、再生ポリエステル層用混合物を調製した。
【0072】
その後、株式会社プラスチック工学研究所製の型式「SBIN-42-S2-30-L」の二軸押出機(ここでは押出装置)を使用し、押出成形を行った。ここでは、上記のバージンポリエステル層用混合物と、再生ポリエステル層用混合物とを上記押出装置に供給し、温度280℃で溶融混錬押出しを行うことで、厚みが0.3mm程度の樹脂シートを作製した。
【0073】
次に、厚みが0.3mmの樹脂シートに対して、延伸温度が80℃の環境下において、MD方向およびTD方向に1.2倍に延伸することで二軸延伸を行い、二軸延伸後の樹脂シートを作製した。二軸延伸後の樹脂シートの厚みは0.25mmである。その後、二軸延伸後の樹脂シートを、熱板圧空成形機を用いて、成形圧力が3kg/cm、成形時間が4秒、成形温度が90℃の環境下で熱成形を行い、サンプル1の包装用容器の蓋体を作製した。
【0074】
<サンプル2>
サンプル2は、押出成形によって作製された樹脂シートに内層と外層は含まれず、再生ポリエステル層のみの単層によって構成された樹脂シートに対して熱成形をして包装用容器の蓋体を作製したこと以外は、サンプル1と同様の構成および作製手順作製された包装用容器の蓋体である。なお、サンプル2において、樹脂シートは中間層のみで構成されており、内層と外層は省略されている。サンプル2において、樹脂シートに含まれる中間層(言い換えると、再生ポリエステル層)の厚みが0.25mmである。
【0075】
<サンプル3>
サンプル3は、押出成形によって作製された樹脂シートに対して、二軸延伸を行わずに、未延伸の樹脂シートに対して熱成形をして包装用容器の蓋体を作製したこと以外は、サンプル1と同様の構成および作製手順で作製された包装用容器の蓋体である。すなわち、サンプル3における樹脂シートは、サンプル1における樹脂シートと同じ構成であるが、二軸延伸されていない。なお、サンプル3において、押出成形された後の樹脂シートの厚みは、0.25mmである。
【0076】
<サンプル4>
サンプル4は、押出成形によって作製された樹脂シートに対して、二軸延伸を行わずに、未延伸の樹脂シートに対して熱成形をして包装用容器の蓋体を作製したこと以外は、サンプル2と同様の構成および作製手順で作製された包装用容器の蓋体である。すなわち、サンプル4における樹脂シートは、サンプル2における樹脂シートと同じ構成であるが、二軸延伸されていない。なお、サンプル4において、押出成形された後の樹脂シートの厚みは、0.25mmである。
【0077】
<サンプル5>
サンプル5は、包装用容器の蓋体の中間層の構成が異なる以外、サンプル3と同様の構成および作製手順で作製された包装用容器の蓋体である。サンプル5では、蓋体の中間層は、再生ポリエステル層ではなく、再生ポリエステルを含まない層である。サンプル5における中間層は、バージンポリエステルによって形成されており、100質量%のバージンポリエステルを含んでいる。
【0078】
<サンプル6>
サンプル6は、包装用容器の蓋体を形成する樹脂シートの構成が異なる以外、サンプル4と同様の構成および作製手順で作製された包装用容器の蓋体である。サンプル6では、蓋体は、内層および外層が省略され、中間層のみによって構成された樹脂シートによって形成されている。サンプル6における樹脂シートは、再生ポリエステル層ではなく、再生ポリエステルを含まない層によって構成されている。サンプル6の樹脂シート(言い換えると、中間層)は、バージンポリエステルによって形成されており、100質量%のバージンポリエステルを含んでいる。
【0079】
サンプル1~6における各層の材料、配合、層比などについて、下記の表1に示す。なお、表1の二軸延伸について、「○」は二軸延伸をしたサンプルを示し、「×」は二軸延伸をしていないサンプルを示している。
【0080】
【表1】
【0081】
ここでは、サンプル1~6の包装用容器の蓋体に対して、JIS K7367-5に準拠して、蓋体の固有粘度IV値(dl/g)を測定した。ここでは、溶媒として、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(重量比3/1)の混合溶媒を用いた。サンプル1~6の包装用容器の蓋体の固有粘度IV値を、上記の表1に示す。
【0082】
次に、サンプル1~6の包装用容器の蓋体に対して耐熱試験を行った。ここでは、エスペック株式会社製のパーフェクトオーブン「PHH102M」を使用した。当該オーブン内に、サンプル1~6の包装用容器の蓋体を載置し、設定温度80℃で1分間保管した。その後、サンプル1~6の包装用容器の蓋体を当該オーブンから取り出し、変形の具合を目視で確認した。その結果を、上記の表1に示す。表1において、蓋体に変形があったことを目視で確認できたサンプルに対して「変形有」と示し、蓋体に変形がなかったことを目視で確認できたサンプルに対して「変形無」と示している。
【0083】
次に、サンプル1~6の包装用容器の蓋体に対して、JIS K7122に準拠して相対結晶化度を測定した。ここでは、株式会社リガク社製の示差走査熱量計「DSC8230」を使用して、サンプル重量を5.0mg、昇温速度を10℃/分の条件で、サンプル1~6における結晶化発熱量と融解吸熱量を測定した。
【0084】
ここで、相対結晶化度とは、測定対象となる系(ここでは樹脂系)が到達し得る結晶化の最大状態を相対結晶化度100%とみなした場合において、測定対象となる系の結晶化がどの程度(相対度)にあるかを示す指標である。相対結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)によって測定可能である。ここでは、10℃/分の昇温条件で、示差走査熱量計で測定した試料(サンプル1~6における包装用容器の蓋体)における樹脂系の結晶化発熱量と、樹脂系の融解吸熱量と、に基づいて相対結晶化度が算出される。ここで、樹脂系の結晶化発熱量をΔHc、樹脂系の融解吸熱量をΔHmとしたとき、相対結晶化度xcは、以下の式(1)によって算出されることができる。
xc=100×(|ΔHm|-|ΔHc|)/|ΔHm| ・・・(1)
【0085】
上記のようにして算出されたサンプル1~6の相対結晶化度を上記の表1に示す。
【0086】
更に、サンプル1~6の包装用容器の蓋体に対して引裂強度を測定した。ここでは、JIS K7128-1の「プラスチック-フィルムおよびシートの引裂強さ試験方法、第1部:トラウザー引裂法」に準拠し、サンプル1~6の蓋体の天面部から縦または横方向(二軸延伸のMD方向またはTD方向に相当する方向)に試験片を切り出し、試験片のつかみ具間距離を75mm、試験速度を200mm/分とした条件に基づいて、引裂強度を測定した。上記のように測定した、サンプル1~6の包装用容器の蓋体における引裂強度を上記の表1に示す。
【0087】
上記表1に示すように、二軸延伸していないサンプル3~6において、相対結晶化度が30%未満であり、耐熱試験において包装用容器の蓋体に変形があった。一方、樹脂シートに対して二軸延伸したサンプル1、2では、相対化結晶化度が100%であり、耐熱試験において包装用容器の蓋体に変形がなかった。よって、サンプル1および2のように、二軸延伸させた樹脂シートを使用して包装用容器の蓋体を形成することによって、耐熱性が高い包装用容器の蓋体を作製することができる。また、上記表1に示すように、サンプル1において、内層と外層をバージンポリエステル層とし、中間層を再生ポリエステル層とする多層の樹脂シートによって蓋体を形成することで、引裂強度が4.0N以上という結果が得られた。一方、サンプル2において、内層と外層を省略し、中間層を再生ポリエステル層とする単層の樹脂シートによって蓋体を形成することで、引裂強度が4.0N未満となった。この結果から、樹脂シートを再生ポリエステル層のみではなく、バージンポリエステル層と再生ポリエステル層とを積層させた多層とすることで、引裂強度を高くして、蓋体の開口弁が引き裂かれ難くすることができると考えられる。
【0088】
以上、本実施形態では、図1に示すように、包装用容器10の蓋体15は、樹脂シート20によって形成された蓋体である。図2に示すように、樹脂シート20は、使用済みポリエステルからなる再生ポリエステルを含む再生ポリエステル層21と、再生ポリエステル層21の片側または両側に積層され、再生ポリエステルを含まないバージンポリエステル層22とを有している。樹脂シート20は、図3に示すように、二軸延伸させて形成されたシートである。図1に示すように、樹脂シート20への熱成形によって得られた蓋体15の天面部16には、気体または液体が出入りする開口弁18が形成されている。蓋体15の天面部16の引裂強度が4.0N以上である。本実施形態では、樹脂シート20において、再生ポリエステル層21の片面または両面に、再生ポリエステルを含まないバージンポリエステル層22を設けることで、樹脂シート20を二軸延伸させた場合であっても、引裂強度を4.0N以上にすることができる。よって、蓋体15の開口弁18の通気性を確保しつつ、包装用容器10の蓋体15を、実用上問題なく引き裂かれ難くすることができる。
【0089】
本実施形態では、蓋体15の相対結晶化度が30%以上である。ここでは、相対結晶化度が高いほど、耐熱性などが向上する。よって、蓋体15の相対結晶化度を30%以上にすることで、蓋体15の耐熱性を高めることができる。
【0090】
本実施形態では、図1に示すように、開口弁18は、天面部16に形成された開口19aと、開口19aを開閉可能な弁体19bと、を有している。弁体19bは、C字状(図4B参照)またはU字状(図4A参照)である。このように、開口弁18の弁体19bをC字状またはU字状とすることで、シンプルな構成で通気性を確保しつつ、弁体19bが引っ掛かった場合であっても、蓋体15の開口弁18を引き裂かれ難くすることができる。
【0091】
本実施形態では、樹脂シート20の全体厚みに対する再生ポリエステル層21の厚みの割合は、60%以上かつ98%以下である。このことによって、環境負荷の低減に貢献することができる。
【0092】
本実施形態では、再生ポリエステル層21に含まれる再生ポリエステルは、80質量%以上である。このことによって、再生ポリエステルを多く使用することができるため、環境負荷の低減に貢献することができる。
【0093】
上記実施形態では、図2に示すように、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の両側に積層されていた。言い換えると、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の幅広な面の両面に配置されており、バージンポリエステル層22の数は2つであった。しかしながら、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の片側に積層されていてもよい。すなわち、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の幅広な面のうちの一方の面にのみ配置されており、バージンポリエステル層22の数は1つであってもよい。この場合、包装用容器10の蓋体15において、外層32が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
10 包装用容器
11 容器体
12 底部
15 蓋体
16 天面部
18 開口弁
19a 開口
19b 弁体
20 樹脂シート
21 再生ポリエステル層
22 バージンポリエステル層
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7