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特開2024-13242フルオロビニル基を有する含フッ素アルコールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013242
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】フルオロビニル基を有する含フッ素アルコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/26 20060101AFI20240125BHJP
   C07C 43/178 20060101ALI20240125BHJP
   C07C 41/58 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C07C41/26
C07C43/178 A
C07C41/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115171
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】近藤 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】清野 淳弥
(72)【発明者】
【氏名】小室 弘司
(72)【発明者】
【氏名】小金 敬介
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006BB14
4H006BB15
4H006BC10
4H006BE23
4H006GP01
4H006GP20
(57)【要約】
【課題】安全かつ高収率でフルオロビニル基を有する含フッ素アルコールを製造することができる含フッ素アルコールの製造方法を提供すること。
【解決手段】還元剤と溶媒とを含有する溶液を準備する工程と、溶液中に一般式(1)の化合物を添加し還元剤により一般式(1)の化合物を還元することにより一般式(2)のフルオロビニル基を有する含フッ素アルコールを得る工程と、を有し、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、溶媒はメタノールおよびエタノールを含まない、フルオロビニル基を有する含フッ素アルコールの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤と、溶媒とを含有する溶液を準備する工程と、
前記溶液中に下記一般式(1)の化合物を添加し、前記還元剤により下記一般式(1)の化合物を還元することにより下記一般式(2)のフルオロビニル基を有する含フッ素アルコールを得る工程と、
を有し、
前記還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、前記溶媒はメタノールおよびエタノールを含まない、
フルオロビニル基を有する含フッ素アルコールの製造方法。
【化1】
(上記一般式(1)および(2)において、aは1~3の整数を表し、xおよびyは1~12の整数を表し、zは1~2の整数を表し、Rは炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基、または芳香族基を表す)。
【請求項2】
前記含フッ素アルコールを得る工程において、前記還元剤として水素化金属化合物を用いて一般式(1)の化合物の還元を行う、請求項1に記載の含フッ素アルコールの製造方法。
【請求項3】
前記含フッ素アルコールを得る工程において、前記還元剤である水素化金属化合物として水素化ホウ素カリウムを用いて一般式(1)の化合物の還元を行う、請求項1に記載の含フッ素アルコールの製造方法。
【請求項4】
前記溶媒が、炭素数2以上のアルコール、または1つ以上の酸素原子を含む炭素数が4以上の脂肪族エーテルである、請求項1に記載の含フッ素アルコールの製造方法。
【請求項5】
前記含フッ素アルコールを得る工程において、温度が10℃~25℃で一般式(1)の化合物の還元を行う、請求項1に記載の含フッ素アルコールの製造方法。
【請求項6】
前記溶媒が炭素数2以上のアルコールであり、
前記含フッ素アルコールを得る工程の後にさらに、水洗浄により前記溶媒を除去する工程を有する、請求項1に記載の含フッ素アルコールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロビニル基を有する含フッ素アルコールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一方の末端にフルオロビニル基を有し、他方の末端にカルボン酸エステル基を有する化合物において、カルボン酸エステル基の還元反応を行うことにより該化合物をアルコールへと変換する方法が報告されている。具体的に、特許文献1(特開平5-503935号公報)には、フルオロビニル基を有する含フッ素メチルエステルを無水エタノールに溶解させて無水エタノール溶液を調製し、該無水エタノール溶液に、無水エタノールに懸濁させた水素化ホウ素ナトリウムを冷却しながら添加する方法が報告されている(実施例2)。しかしながら、この方法で使用する水素化ホウ素ナトリウムは、無水エタノールの作用によって水素ガスを発生させながら分解するため、安全性の観点からパイロットプラント以上のスケールアップを行う際には更なる改善の余地があった。また、特許文献1の方法では、使用した無水エタノールを単蒸留により除去しているが、蒸留時の熱と含有する水によってフルオロビニル基が分解するため、更なる収率の向上が要望されていた。
【0003】
特許文献1には、フルオロビニル基を有する含フッ素メチルエステルを無水エタノールに溶解させて無水エタノール溶液を調製し、該無水エタノール溶液に水素化ホウ素ナトリウムの固体を冷却しながら添加することにより、目的物を得る方法が報告されている(実施例1、3)。しかしながら、前述のように、この方法で使用する水素化ホウ素ナトリウムは、無水エタノールの作用によって水素ガスを発生させながら分解する。このため、この方法では、有機溶媒および水素ガスを含んでいる反応系を何度も大気雰囲気中に開放することが必要となり、安全性の観点からパイロットプラント以上のスケールアップを行う際には、更なる改善の余地があった。
【0004】
特許文献2(特開昭63-2418号公報)には、フルオロビニル基およびメチルエステル基を有する化合物について、該フルオロビニル基の水素による還元を防止するため、フルオロビニル基を塩素や臭素といったハロゲン原子で予め保護した上で、メチルエステル基を還元してアルコールを得た後、亜鉛などの金属で脱ハロゲン化させて、フルオロビニル基を復元する方法が報告されている。しかしながら、この方法では反応工程が増加する上、ハロゲン化金属などの廃棄物が増加し、環境負荷がより少ない方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-503935号公報
【特許文献2】特開昭63-2418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように従来技術の含フッ素アルコールの製造方法では、パイロットプラント以上のスケールアップを行う際に安全性および収率の観点から更なる改善が望まれていた。そこで、本発明者らは、フルオロビニル基およびエステル基を有する化合物における該エステル基の還元反応によりアルコールを得る方法において、予めエステル基の還元剤を溶媒中に添加した後に、該溶液中に原料を添加する方法が望ましいことを発見した。また、この際、特定の還元剤と該特定の還元剤を分解させやすい溶媒との組み合わせを使用しないことが望ましいことを発見し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、安全かつ高収率でフルオロビニル基を有する含フッ素アルコールを製造することができる含フッ素アルコールの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]還元剤と、溶媒とを含有する溶液を準備する工程と、
前記溶液中に下記一般式(1)の化合物を添加し、前記還元剤により下記一般式(1)の化合物を還元することにより下記一般式(2)のフルオロビニル基を有する含フッ素アルコールを得る工程と、
を有し、
前記還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、前記溶媒はメタノールおよびエタノールを含まない、
フルオロビニル基を有する含フッ素アルコールの製造方法。
【化1】
(上記一般式(1)および(2)において、aは1~3の整数を表し、xおよびyは1~12の整数を表し、zは1~2の整数を表し、Rは炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基、または芳香族基を表す)。
[2]前記含フッ素アルコールを得る工程において、前記還元剤として水素化金属化合物を用いて一般式(1)の化合物の還元を行う、上記[1]に記載の含フッ素アルコールの製造方法。
[3]前記含フッ素アルコールを得る工程において、前記還元剤である水素化金属化合物として水素化ホウ素カリウムを用いて一般式(1)の化合物の還元を行う、上記[1]に記載の含フッ素アルコールの製造方法。
[4]前記溶媒が、炭素数2以上のアルコール、または1つ以上の酸素原子を含む炭素数が4以上の脂肪族エーテルである、上記[1]に記載の含フッ素アルコールの製造方法。
[5]前記含フッ素アルコールを得る工程において、温度が10℃~25℃で一般式(1)の化合物の還元を行う、上記[1]に記載の含フッ素アルコールの製造方法。
[6]前記溶媒が炭素数2以上のアルコールであり、
前記含フッ素アルコールを得る工程の後にさらに、水洗浄により前記溶媒を除去する工程を有する、上記[1]に記載の含フッ素アルコールの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
安全かつ高収率でフルオロビニル基を有する含フッ素アルコールを製造することができる含フッ素アルコールの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフルオロビニル基を有する含フッ素アルコールの製造方法は、還元剤と溶媒とを含有する溶液を準備する工程と、溶液中に下記一般式(1)の化合物を添加し還元剤により下記一般式(1)の化合物を還元することにより下記一般式(2)のフルオロビニル基(CF=CF-)を有する含フッ素アルコールを得る工程と、を有する。また、本発明のフルオロビニル基を有する含フッ素アルコールの製造方法では、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、溶媒はメタノールおよびエタノールを含まない。
【化2】
(上記一般式(1)および(2)において、aは1~3の整数を表し、xおよびyは1~12の整数を表し、zは1~2の整数を表し、Rは炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基、または芳香族基を表す)。
【0011】
本発明の含フッ素アルコールの製造方法では、予め還元剤と溶媒とを含有する溶液を準備した後、該溶液中に原料である一般式(1)の化合物を添加させて、該一般式(1)の化合物を還元剤により還元する。より具体的には、一般式(1)の化合物の一方の末端を構成するエステル基-COORが還元剤により還元されて、-CHOHとなる。このため、一般式(1)の化合物中の他方の末端に位置するフルオロビニル基(CF=CF-)を保護することなく、還元剤によりエステル基を選択的に還元することができ、高収率で所望のアルコールを得ることができる。また、予め準備した還元剤と溶媒とを含有する溶液中に一般式(1)の化合物を添加して、該一般式(1)の化合物の還元反応を行う際に還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、該水素化ホウ素ナトリウムを分解させやすい溶媒であるメタノールおよびエタノールを用いない。この結果、還元剤と溶媒との反応による水素ガスの発生を抑制することができる。なお、上記の「メタノール」には、通常の含水率のメタノールだけでなく、無水メタノールも含まれる。同様に、上記の「エタノール」には、通常の含水率のエタノールだけでなく、無水エタノールも含まれる。このように、本発明の含フッ素アルコールの製造方法では、溶媒による分解を受けにくい還元剤、または還元剤を分解させにくい溶媒を使用することで、水素ガスの発生を効果的に抑制することができる。この結果、含フッ素アルコールの製造方法の安全性を高めることができる。特に、パイロットプラント以上のスケールアップを行う際には、還元剤と溶媒との反応により発生する水素ガス量も多くなり危険性が増すが、本発明の方法ではそのような危険性を回避することができる。
【0012】
上記一般式(1)および(2)において、aは1~3の整数を表す。xは1~12の整数を表すが、1~7であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。yは1~12の整数を表すが、1~5であることが好ましい。Rは炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基、または芳香族基を表すが、Rの炭素数は1~4であることが好ましく、1であることがより好ましい。また、アルキル基であるRとしてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基を挙げることができる。アラルキル基であるRとしてはベンジル基、フェネチル基を挙げることができる。芳香族基であるRとしてはフェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0013】
以下では、本発明の含フッ素アルコールの製造方法の各工程を詳細に説明する。
【0014】
(溶液を準備する工程)
まず、還元剤と溶媒とを含有する溶液を準備する。還元剤としては、上記一般式(1)の化合物のエステル基を還元する作用を有するものであれば特に限定されないが、水素化金属化合物であることが好ましい。また、水素化金属化合物としては例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムを挙げることができるが、水素化ホウ素カリウムであることが好ましい。このような還元剤を用いることによって、効率的にエステル基の還元を行うことができ、より高い収率で含フッ素アルコールを得ることができる。溶媒としては一般式(1)の化合物の還元反応に悪影響を与えるものでなければ特に限定されないが、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、溶媒はメタノールおよびエタノールを含まない。溶媒は、炭素数2以上のアルコール、または1つ以上の酸素原子を含む炭素数が4以上の脂肪族エーテルであることが好ましい。炭素数2以上のアルコールである溶媒としてはエタノール、2-プロパノールを挙げることができる。1つ以上の酸素原子を含む炭素数が4以上の脂肪族エーテルである溶媒としては、モノグライム、ジグライム、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンを挙げることができる。これらの溶媒を用いることにより、溶媒中に効果的に還元剤を懸濁させて一般式(1)の化合物の還元反応の反応効率を向上させることができる。また、溶液中にはその他の成分を含有していてもよい。
【0015】
(含フッ素アルコールを得る工程)
次いで、溶液中に上記一般式(1)で表される化合物を添加し、還元剤により一般式(1)の化合物を還元することにより上記一般式(2)で表されるフルオロビニル基を有する含フッ素アルコールを得る。一般式(1)の化合物としては、メチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)、メチル-3-[1-[[1-ジフルオロ[(1,2,2-トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]ジフルオロメチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-2,2,3,3-テトラフルオロプロパノエート、メチル-2,2,3,3-テトラフルオロ-3-[1,1,2,2-テトラフルオロ-2-[(1,2,2-トリフルオロエテニル)オキシ]プロパノエートを挙げることができる。一般式(2)の化合物としては、下記式(A)で表される9,9-ジヒドロ-9-ヒドロキシペルフルオロ-(3,6-ジオキサ-5-メチル-1-ノネン)、3-[1-[[1-ジフルオロ[(1,2,2-トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]ジフルオロメチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-2,2,3,3-テトラフルオロプロパン-1-オール、2,2,3,3-テトラフルオロ-3-[1,1,2,2-テトラフルオロ-2-[(1,2,2-トリフルオロエテニル)オキシ]プロパン-1-オールを挙げることができる。
【化3】
【0016】
含フッ素アルコールを得る工程では、還元剤として水素化金属化合物を用いて一般式(1)の化合物の還元を行うことが好ましく、還元剤である水素化金属化合物として水素化ホウ素カリウムを用いて一般式(1)の化合物の還元を行うことがより好ましい。含フッ素アルコールを得る工程では、温度が好ましくは10℃~25℃、より好ましくは10℃~20℃、さらに好ましくは15℃~20℃で一般式(1)の化合物の還元を行うのがよい。このような温度で一般式(1)の化合物の還元反応を行うことにより、高転化率・高選択率でエステル基の還元反応を進行させることができる。
【0017】
(溶媒を除去する工程)
本発明の製造方法は、溶媒として炭素数2以上のアルコールを用い、含フッ素アルコールを得る工程の後にさらに、得られた生成物に対して水洗浄を行うことにより溶媒を除去する工程を有することができる。単蒸留のように熱を付加する方法ではなく、水洗浄のように熱を付加しない方法により生成物から溶媒を除去することにより得られた含フッ素アルコールのフルオロビニル基の分解を抑制して高収率で所望の含フッ素アルコールを得ることができる。また、溶媒である炭素数2以上のアルコールの水に対する溶解度は、得られた生成物である含フッ素アルコールの水に対する溶解度よりも高いため、得られた生成物の水洗浄により溶媒を選択的に除去して高純度の含フッ素アルコールを得ることができる。この水洗浄の条件としては温度10℃~25℃、30分~2時間等の条件を挙げることができる。
【0018】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0019】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
9,9-ジヒドロ-9-ヒドロキシペルフルオロ-(3,6-ジオキサ-5-メチル-1-ノネン)の製造
窒素置換した300Lのオートクレーブに水素化ホウ素カリウム(2.1kg、38.9モル)とエタノール(38.9L)を仕込み、室温にて撹拌を行い、エタノール溶液を得た。内温が10~25℃の範囲内でメチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)(27.4kg、64.9モル)をエタノール溶液に添加した。メチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)の全量をエタノール溶液に添加後、該エタノール溶液を10~25℃の範囲内にて撹拌を行うことにより、水素化ホウ素カリウムによるメチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)の還元反応を行い、反応混合物を得た。得られた反応混合物を内温0~15℃となるように調整しながら、3N HCl(40.0kg)中に反応混合物を投じて還元反応を停止させて第1の混合物を得た。メチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)の添加を開始してから第1の混合物を得るまでの溶液の状態を目視にて確認したところ、水素ガスによる発泡は確認されなかった。次いで、第1の混合物の下層を分取し、ガスクロマトグラフィーにて溶媒であるエタノールが非検出になるまで下層の水洗を実施した(2~3回)。第1の混合物の下層を硫酸マグネシウムにて脱水した後、ろ過を行い、下記式(A)で表される無色透明の9,9-ジヒドロ-9-ヒドロキシペルフルオロ-(3,6-ジオキサ-5-メチル-1-ノネン)得た。
【化4】
【0021】
得られた生成物である9,9-ジヒドロ-9-ヒドロキシペルフルオロ-(3,6-ジオキサ-5-メチル-1-ノネン)の収量や分析結果等を以下に示す。
収量;23.5kg、収率;82%、純度;89GC%
H-NMR(400MHz、CDCl):4.00(t,J=14.4Hz,2H)、4.89(s,Br,1H)
F-NMR(400MHz、C):-83.1(q,J=9.0Hz,3F)、-86.6(m,Br,2F)、-87.3、-87.7、-88.1(3s,2F)、-117.9、-118.1、-118.2、-118.3(4s,1F)、-125.4、-125.6、-125.7、-125.9(4s,1F)、-129.4(t,J=15.2Hz,2F)、-139.0、139.2、-139.3、-139.5(4t,J=2.2Hz,1F)、-147.8(t,J=23.8Hz,1F)
【0022】
(比較例1)
9,9-ジヒドロ-9-ヒドロキシペルフルオロ-(3,6-ジオキサ-5-メチル-1-ノネン)の製造
500ml四つ口フラスコに、水素化ホウ素ナトリウム(11.5g、0.3モル)とエタノール(300ml)を入れ、内温が5℃以下になるまで冷却しながら撹拌を行い、エタノール溶液を得た。滴下ロートを用いてメチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)(211g、0.5モル)を内温が15℃以下となるようにエタノール溶液に滴下した。メチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)の全量をエタノール溶液に滴下後、室温にて15分間撹拌を行うことにより、水素化ホウ素ナトリウムによるメチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)の還元反応を行い、反応混合物を得た。得られた反応混合物を、氷水で冷却した3N HCl(600ml)に少量ずつ添加し、還元反応を停止させて第1の混合物を得た。メチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)の添加を開始してから第1の混合物を得るまでの溶液の状態を目視にて確認したところ、水素ガスによる発泡が確認された。得られた第1の混合物を分液ロートに移し,目的物である下層を分取した。分取した下層を飽和重曹水にて中和し、水洗を3回行い、硫酸マグネシウムにて脱水後、ろ過を行い、無色透明液体の粗9,9-ジヒドロ-9-ヒドロキシペルフルオロ-(3,6-ジオキサ-5-メチル-1-ノネン)180g(収率;26%、純度;26GC%)を得た。
【0023】
(実施例2)
9,9-ジヒドロ-9-ヒドロキシペルフルオロ-(3,6-ジオキサ-5-メチル-1-ノネン)の製造
500ml四つ口フラスコに、水素化ホウ素ナトリウム(11.5g、0.3モル)と2-プロパノール(300ml)を入れ、内温が5℃以下になるまで冷却しながら撹拌を行い、2-プロパノール溶液を得た。滴下ロートを用いてメチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)(211g、0.5モル)を内温が15℃以下となるように2-プロパノール溶液に滴下した。メチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)の全量を2-プロパノール溶液に滴下後、室温にて15分間撹拌を行うことにより、水素化ホウ素ナトリウムによるメチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)の還元反応を行い、反応混合物を得た。得られた反応混合物を、氷水で冷却した3N HCl(600ml)に少量ずつ添加し、還元反応を停止させて第1の混合物を得た。メチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)の添加を開始してから第1の混合物を得るまでの溶液の状態を目視にて確認したところ、水素ガスによる発泡が確認されなかった。第1の混合物を分液ロートに移し,目的物である下層を分取した。分取した下層を飽和重曹水にて中和し、水洗を6回行い、硫酸マグネシウムにて脱水後、ろ過を行い、無色透明液体の粗9,9-ジヒドロ-9-ヒドロキシペルフルオロ-(3,6-ジオキサ-5-メチル-1-ノネン)171g(収率;72%、純度;83GC%)を得た。
【0024】
(比較例2)
9,9-ジヒドロ-9-ヒドロキシペルフルオロ-(3,6-ジオキサ-5-メチル-1-ノネン)の製造
10L-セパラブルフラスコにメチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)(3.0kg、7.1モル)とエタノール(1.7kg)を入れ、内温15℃以下となるよう冷却しながら撹拌を行い、第1のエタノール溶液を得た。その後、別フラスコにて調整した、水素化ホウ素ナトリウム(162.0g、4.3モル)/エタノール(2.2kg)混合溶液を内温が15℃以下となるよう、第1のエタノール溶液に滴下した。水素化ホウ素ナトリウム/エタノールの混合溶液を全量滴下した後、室温にて1時間撹拌を行うことにより、水素化ホウ素ナトリウムによるメチルペルフルオロ(4,7-ジオキサ-5-メチル-8-ヘプテノエート)の還元反応を行い、反応混合物を得た。得られた反応混合物を、氷水で冷却した3N HClが入った別のセパラフラスコに少量ずつ添加し冷却することで、還元反応を停止させて第1の混合物を得た。目視により確認したところ、第1の混合物を得るまでに水素ガスの発生(激しい発泡)が確認された。得られた第1の混合物の下層について、水洗浄を3回行い、硫酸マグネシウムにて脱水後、加圧ろ過を行い、最終的に無色透明溶液の生成物2.4kg(収率;80%、純度;91GC%)を得た。