(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132422
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 46/00 20220101AFI20240920BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20240920BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240920BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D46/00 302
B01D39/20 D
B01D53/94 241
F01N3/022 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043174
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】永津 佑一
【テーマコード(参考)】
3G190
4D019
4D058
4D148
【Fターム(参考)】
3G190AA02
3G190AA12
3G190BA01
3G190CA03
3G190CA13
3G190CB05
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BC07
4D019BC12
4D019BD01
4D019CA01
4D019CB04
4D019CB06
4D058JA32
4D058JA37
4D058JA38
4D058JA39
4D058JB06
4D058JB22
4D058SA08
4D058TA06
4D148AA14
4D148AB01
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA33Y
4D148BB02
4D148CC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】触媒がコートされる前もしくはPMが堆積する前の段階で、第1排ガス導入セルに流れるガス流量と第2排ガス導入セルに流れるガス流量の差が小さく、かつ、スス無し圧力損失が低いハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】ハニカムフィルタは、多孔質のセル隔壁を備え、排ガス入口側か出口側かの一方を封止したセルを備え、セルの断面形状は、封止部分を除き排ガス入口側の端部から排ガス出口側の端部にかけて同じであり、排ガス導入セルは、断面形状の異なる第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルの2種類からなり、かつ、排ガス排出セルの開口面積は、第2排ガス導入セルの開口面積より大きく形成されており、第1排ガス導入セルの辺が、第2排ガス導入セルの辺の長さよりも長く、第1と第2排ガスセルの開口面積比が1.20~2.20倍であり、第1、第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、排出セルの開口面積の1.20~2.00倍である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、排ガス入口側の端部が開口され、かつ、排ガス出口側の端部が封止された排ガス導入セルと、排ガス出口側の端部が開口され、かつ、排ガス入口側の端部が封止された排ガス排出セルとを備えてなり、前記排ガス導入セル及び前記排ガス排出セルの長手方向に垂直方向の断面形状は、封止部分を除き前記排ガス入口側の端部から前記排ガス出口側の端部にかけて、それぞれのセルにおいて同じであるハニカムフィルタであって、
前記排ガス排出セルの周囲全体に、前記セル隔壁を隔てて前記排ガス導入セルが隣接してなり、前記排ガス導入セルは、断面形状の異なる第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルの2種類からなり、かつ、
セルの長手方向に対して垂直な断面において、前記排ガス排出セルの開口面積は、前記第2排ガス導入セルの開口面積より大きく形成されており、
セルの長手方向に対して垂直な断面において、前記排ガス排出セル及び前記排ガス導入セルは、いずれも多角形からなり、前記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、前記排ガス排出セルと対面している辺の長さが、前記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、前記排ガス排出セルと対面している辺の長さよりも長く、
セルの長手方向に垂直な断面において、前記第2排ガス導入セルの開口面積が前記第1排ガス導入セルの開口面積の1.20~2.20倍であり、
セルの長手方向に垂直な断面において、前記第1排ガス導入セルの開口面積と前記第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、前記排ガス排出セルの開口面積の1.20~2.00倍であることを特徴とするハニカムフィルタ。
【請求項2】
セルの長手方向に垂直な断面において、前記第1排ガス導入セルは四角形であり、前記第2排ガス導入セルは八角形であり、前記排ガス排出セルは八角形である請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
セルの長手方向に垂直な断面において、前記第1排ガス導入セルは長方形である請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
セルの長手方向に垂直な断面において、前記第2排ガス導入セルの開口面積が前記第1排ガス導入セルの開口面積の1.30~1.50倍であり、
セルの長手方向に垂直な断面において、前記第1排ガス導入セルの開口面積と前記第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、前記排ガス排出セルの開口面積の1.70~1.90倍である請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
セルの長手方向に垂直な断面において、前記排ガス排出セルの周囲にはセル隔壁を隔てて前記第1排ガス導入セルと前記第2排ガス導入セルとがそれぞれ4つずつ交互に配置されて前記排ガス排出セルを包囲してなり、
また、前記排ガス排出セルを包囲している4つの前記第2排ガス導入セルの断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、前記排ガス排出セルの断面形状からなる図形領域を通過する2本の線分の交点は、前記排ガス排出セルの断面形状である八角形の幾何学的な重心と一致してなり、
かつ、前記4つの第2排ガス導入セルの断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、前記排ガス排出セルの断面形状からなる図形領域を通過しない4本は、四角形を構成し、その各辺の中点は前記排ガス排出セルを包囲している4つの前記第1排ガス導入セルの断面形状である各四角形の幾何学的な重心と一致するように、
前記排ガス排出セル、前記第1排ガス導入セル及び前記第2排ガス導入セルがそれぞれ配置されてなる請求項2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記ハニカムフィルタは、前記排ガス排出セル、前記第1排ガス導入セル及び前記第2排ガス導入セルを有し、外周に外周壁を有する複数のハニカム焼成体が接着材層を介して接着されることにより形成されている請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記ハニカム焼成体は、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなる請求項6に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
前記セル隔壁の厚さは、0.05~0.30mmである請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項9】
前記セル隔壁の気孔率は、30~65%である請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項10】
前記セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmである請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項11】
前記ハニカムフィルタの外周に外周コート層が形成されている請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項12】
前記排ガス導入セルの壁面に触媒が担持されている、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、スス等のパティキュレート(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境又は人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、CO、HC又はNOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境又は人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、内燃機関と連結されることにより排ガス中のPMを捕集したり、排ガスに含まれるCO、HC又はNOx等の排ガス中の有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、コージェライトや炭化ケイ素等の多孔質セラミックからなるハニカム構造のフィルタ(ハニカムフィルタ)が種々提案されている。
【0004】
また、これらのハニカムフィルタでは、内燃機関の燃費を改善し、圧力損失の上昇に起因する運転時のトラブル等をなくすために、初期の圧力損失が低いハニカムフィルタや、所定量のPMが堆積した際に圧力損失の上昇割合が低いハニカムフィルタが種々提案されている。
【0005】
このようなハニカムフィルタを開示した発明として、特許文献1が挙げられる。特許文献1に記載のハニカムフィルタは、排ガス導入セルとしての第1排ガス導入セル及び第2排ガス導入セルと、排ガス排出セルの、計3種類のセルを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/187444号
【特許文献2】国際公開第2022/130978号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PM排出数規制に対応するため、PM捕集性能を向上させることのできる方法として、キャリアガスに分散させたセラミック粒子をセル内に導入してセル隔壁にセラミック層を形成し、セラミック層に貴金属触媒を担持することにより触媒をセル隔壁にコートする触媒コート法が検討されている。
【0008】
このような触媒コート法の参考として特許文献2の方法が知られている。特許文献2に記載の方法はアルミナ粉末を含むエアロゾルをコージェライト担体に通過させ、セラミック層を形成し、セラミック層に貴金属触媒を担持する方法である。
【0009】
特許文献2に記載された方法を参考にして、特許文献1に記載されたような3種類のセルを備えるハニカムフィルタに対して、その排ガス導入セルへの触媒のコートを行ったところ、第1排ガス導入セルに流れるガス流量と第2排ガス導入セルに流れるガス流量の差が大きいために、触媒のコート量に偏りが生じるという問題が生じることがわかった。
【0010】
また、ハニカムフィルタにおいては圧力損失が低いことが要求されており、とくにススの堆積が無い状態での圧力損失(スス無し圧力損失)が低いことが望まれていた。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、触媒がコートされる前もしくはPMが堆積する前の段階で、第1排ガス導入セルに流れるガス流量と第2排ガス導入セルに流れるガス流量の差が小さく、かつ、スス無し圧力損失が低いハニカムフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のハニカムフィルタは、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、排ガス入口側の端部が開口され、かつ、排ガス出口側の端部が封止された排ガス導入セルと、排ガス出口側の端部が開口され、かつ、排ガス入口側の端部が封止された排ガス排出セルとを備えてなり、上記排ガス導入セル及び上記排ガス排出セルの長手方向に垂直方向の断面形状は、封止部分を除き上記排ガス入口側の端部から上記排ガス出口側の端部にかけて、それぞれのセルにおいて同じであるハニカムフィルタであって、上記排ガス排出セルの周囲全体に、上記セル隔壁を隔てて上記排ガス導入セルが隣接してなり、上記排ガス導入セルは、断面形状の異なる第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルの2種類からなり、かつ、セルの長手方向に対して垂直な断面において、上記排ガス排出セルの開口面積は、上記第2排ガス導入セルの開口面積より大きく形成されており、セルの長手方向に対して垂直な断面において、上記排ガス排出セル及び上記排ガス導入セルは、いずれも多角形からなり、上記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、上記排ガス排出セルと対面している辺の長さが、上記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、上記排ガス排出セルと対面している辺の長さよりも長く、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第2排ガス導入セルの開口面積が上記第1排ガス導入セルの開口面積の1.20~2.20倍であり、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第1排ガス導入セルの開口面積と上記第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、上記排ガス排出セルの開口面積の1.20~2.00倍であることを特徴とする。
【0013】
セルの長手方向に垂直な断面において、上記第2排ガス導入セルの開口面積が上記第1排ガス導入セルの開口面積の1.20~2.20倍であり、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第1排ガス導入セルの開口面積と上記第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、上記排ガス排出セルの開口面積の1.20~2.00倍であると、触媒がコートされる前もしくはPMが堆積する前の第1排ガス導入セルに流れるガス流量と第2排ガス導入セルに流れるガス流量の差を小さくすることができる。
そのため、キャリアガスを用いた触媒コート法により触媒をセル隔壁に均一にコートすることができる。
また、スス無し圧力損失を低くすることができる。
【0014】
本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第1排ガス導入セルは四角形であり、上記第2排ガス導入セルは八角形であり、上記排ガス排出セルは八角形であることが好ましい。
上記構成のハニカムフィルタでは、排ガス処理の初期の圧力損失を効果的に抑制することができるとともに、PMが堆積する表面積を大きくとることが可能となり、圧力損失を低く保つことができる。
【0015】
本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第1排ガス導入セルは長方形であることが好ましい。
【0016】
本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第2排ガス導入セルの開口面積が上記第1排ガス導入セルの開口面積の1.30~1.50倍であり、
セルの長手方向に垂直な断面において、上記第1排ガス導入セルの開口面積と上記第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、上記排ガス排出セルの開口面積の1.70~1.90倍であることが好ましい。
上記の関係を満たしていると、第1排ガス導入セルに流れるガス流量と第2排ガス導入セルに流れるガス流量の差をより小さくすることができる。
【0017】
本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に垂直な断面において、上記排ガス排出セルの周囲にはセル隔壁を隔てて上記第1排ガス導入セルと上記第2排ガス導入セルとがそれぞれ4つずつ交互に配置されて上記排ガス排出セルを包囲してなり、また、上記排ガス排出セルを包囲している4つの上記第2排ガス導入セルの断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、上記排ガス排出セルの断面形状からなる図形領域を通過する2本の線分の交点は、上記排ガス排出セルの断面形状である八角形の幾何学的な重心と一致してなり、かつ、上記4つの第2排ガス導入セルの断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、上記排ガス排出セルの断面形状からなる図形領域を通過しない4本は、四角形を構成し、その各辺の中点は上記排ガス排出セルを包囲している4つの上記第1排ガス導入セルの断面形状である各四角形の幾何学的な重心と一致するように、上記排ガス排出セル、上記第1排ガス導入セル及び上記第2排ガス導入セルがそれぞれ配置されてなることが好ましい。
ハニカムフィルタがこのような構成であると、上記本発明の効果を好適に発揮することができる。
【0018】
本発明のハニカムフィルタは、上記排ガス排出セル、上記第1排ガス導入セル及び上記第2排ガス導入セルを有し、外周に外周壁を有する複数のハニカム焼成体が接着材層を介して接着されることにより形成されていることが好ましい。
ハニカムフィルタがこのような構成であると、1つのハニカム焼成体に応力が生じた場合でも、その応力が接着材層により緩和され、他のハニカム焼成体に伝わりにくくなる。つまり、ハニカムフィルタに生じた応力を緩和させることができる。その結果、ハニカムフィルタが損傷することを防ぐことができる。
【0019】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記ハニカム焼成体は、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなることが好ましい。
炭化ケイ素及びケイ素含有炭化ケイ素は、耐熱性に優れた材料である。このため、上記構成のハニカムフィルタは、耐熱性に優れたハニカムフィルタとなる。
【0020】
本発明のハニカムフィルタでは、上記セル隔壁の厚さは、0.05~0.30mmであることが好ましい。
セル隔壁の厚さがこのような範囲であると、排ガス処理の初期において、排ガスがセル隔壁を通過しやすくなり、圧力損失を低減することができる。
セル隔壁の厚さが0.05mm未満であると、強度が低くなり破損しやすくなる。
セル隔壁の厚さが0.30mm以上であると、排ガスがセル隔壁を通過しにくくなり、排ガス処理の初期の圧力損失が低減されにくくなる。
【0021】
本発明のハニカムフィルタでは、上記セル隔壁の気孔率は、30~65%であることが好ましい。
気孔率をこのように設定することにより、セル隔壁は、排ガス中のPMを良好に捕集することができ、かつ、セル隔壁に起因する圧力損失の上昇を抑制することができる。
セル隔壁の気孔率が30%未満である場合、セル隔壁の気孔の割合が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過しにくくなり、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁の気孔率が65%を超える場合、セル隔壁の機械的特性が低くなり、再生時等において、クラックが発生し易くなる。
【0022】
本発明のハニカムフィルタでは、上記セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmであることが好ましい。
平均気孔径が上記範囲であると、圧力損失の増加を抑制しながら、高い捕集効率でPMを捕集することができる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が5μm未満であると、気孔が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が25μmを超えると、気孔が大きくなりすぎるので、PMの捕集効率が低下してしまう。
【0023】
本発明のハニカムフィルタにおいては、上記ハニカムフィルタの外周に外周コート層が形成されていることが好ましい。
外周コート層は、内部のセルを機械的に保護する役割を果たす。そのため、圧縮強度等の機械的特性に優れたハニカムフィルタとなる。
【0024】
本発明のハニカムフィルタは、上記排ガス導入セルの壁面に触媒が担持されていることが好ましい。
本発明のハニカムフィルタは、キャリアガスを用いた触媒コート法により触媒をセル隔壁に均一にコートすることができるので、触媒が担持されたハニカムフィルタは排ガス浄化性能に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明に係るハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すハニカム焼成体の排ガス入口側の端面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すハニカム焼成体のA-A線断面図である。
【
図5】
図5は、ハニカム焼成体のセルの長手方向に垂直な断面におけるセル形状を、排ガス入口側から模式的に示す拡大端面図である。
【
図6】
図6は、ハニカム焼成体のセルの長手方向に垂直な断面におけるセル形状を、排ガス入口側から模式的に示す拡大端面図である。
【
図7】
図7は、ハニカム焼成体のセルの長手方向に垂直な断面におけるセル形状を、排ガス入口側から模式的に示す拡大端面図である。
【
図8】
図8は、ハニカム焼成体のセルの長手方向に垂直な断面におけるセル形状を、排ガス入口側から模式的に示す拡大端面図である。
【
図9】
図9は、比較例2のハニカム焼成体のセルの長手方向に垂直な断面におけるセル形状を、排ガス入口側から模式的に示す拡大端面図である。
【
図10】
図10は、表1に示す第2/第1流量比を横軸に、第2/第1面積比を縦軸にとってプロットし、近似直線を引いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のハニカムフィルタの一例について、図面を用いて詳述する。
図1は、本発明に係るハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明に係るハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
図3は、
図2に示すハニカム焼成体の排ガス入口側の端面図である。
図4は、
図2に示すハニカム焼成体のA-A線断面図である。
【0027】
図1に示すハニカムフィルタ20では、複数個のハニカム焼成体10が接着材層15を介して結束されてセラミックブロック18を構成し、このセラミックブロック18の外周には、排ガスの漏れを防止するための外周コート層16が形成されている。なお、外周コート層16は、必要に応じて形成されていればよい。
【0028】
ハニカムフィルタ20では、複数個のハニカム焼成体10が接着材層15を介して結束されている。そのため、1つのハニカム焼成体10に応力が生じた場合でも、その応力が接着材層15により緩和され、他のハニカム焼成体10に伝わりにくくなる。つまり、ハニカムフィルタ20に生じた応力を緩和させることができる。その結果、ハニカムフィルタ20が損傷することを防ぐことができる。
接着材層15は、無機バインダと無機粒子とを含む接着材ペーストを塗布、乾燥させたものである。接着材層15は、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
接着材層15の厚さは、0.5~2.0mmが望ましい。
【0029】
外周コート層16は、内部のセルを機械的に保護する役割を果たす。そのため、ハニカムフィルタ20は、圧縮強度等の機械的特性に優れる。
なお、外周コート層16の材料は、接着材層15の材料と同じであることが望ましい。外周コート層16の厚さは、0.1~3.0mmが望ましい。
【0030】
なお、ハニカム焼成体10は、四角柱形状であるが、
図3に示すように、端面における角部が曲線形状となるように面取りが施されており、これにより角部に熱応力が集中し、クラック等の損傷が発生するのを防止している。上記角部は、直線形状となるように面取りされていてもよい。
【0031】
図2に示すハニカム焼成体10は、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁13を備え、排ガス入口側の端部10aが開口され、かつ、排ガス出口側の端部10bが目封止された排ガス導入セル(符号12及び14で示すセル)と、排ガス出口側の端部10bが開口され、かつ、排ガス入口側の端部10aが目封止された排ガス排出セル11とを備えてなる。
【0032】
なお、本発明のハニカムフィルタでは、排ガス導入セル及び排ガス排出セルを目封止する目封止材は、ハニカム焼成体と同じ材料であることが望ましい。
【0033】
ハニカムフィルタ20では、排ガス導入セル(符号12及び14で示すセル)及び排ガス排出セル11の長手方向に垂直方向の断面形状は、目封止部分を除き排ガス入口側の端部10aから排ガス出口側の端部10bにかけて、それぞれのセルにおいて同じである。
【0034】
本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に垂直な断面において、排ガス排出セル及び排ガス導入セルは、いずれも多角形からなる。
そして、排ガス導入セルは、第1排ガス導入セルと、セルの長手方向に対して垂直方向の断面における断面積が該第1排ガス導入セルより大きい第2排ガス導入セルの2種類からなる。
セルの長手方向に垂直な断面において、排ガス排出セルは、八角形であり、第1排ガス導入セルは四角形であり、第2排ガス導入セルは、八角形であることが好ましい。
【0035】
図3に示すように、ハニカム焼成体10では、断面が八角形状の排ガス排出セル11の周囲全体に、断面が四角形の第1排ガス導入セル12と断面が八角形状の第2排ガス導入セル14とが隣接している。
また、このハニカム焼成体10の外周には、外周壁17が形成されている。
【0036】
ハニカム焼成体10では、セルの長手方向に垂直な断面において、排ガス排出セル11の断面形状は八角形であり、第1排ガス導入セル12の断面形状は四角形であり、第2排ガス導入セル14の断面形状は八角形である。
そして、排ガス排出セル11の周囲にはセル隔壁13を隔てて第1排ガス導入セル12と第2排ガス導入セル14とがそれぞれ4つずつ交互に配置されて排ガス排出セル11を包囲してなる。
また、排ガス排出セル11を包囲している4つの第2排ガス導入セル14の断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、排ガス排出セル11の断面形状からなる図形領域を通過する2本の線分の交点は、排ガス排出セル11の断面形状である八角形の幾何学的な重心と一致してなり、かつ、4つの第2排ガス導入セル14の断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、排ガス排出セル11の断面形状からなる図形領域を通過しない4本は、四角形を構成し、その各辺の中点は排ガス排出セル11を包囲している4つの第1排ガス導入セル12の断面形状である各四角形の幾何学的な重心と一致する。
【0037】
また、ハニカム焼成体10では、角部以外の外周壁17の厚さが均一になるように、セルの長手方向に垂直な断面における外周壁17に隣接する排ガス導入セルの外周壁に接する辺は、外周壁17の外壁をなす辺と平行かつ直線的に形成されている。
従って、外周壁17に隣接する第2排ガス導入セル14Aの断面は、一部がカットされているため、八角形から六角形に変化している。外周壁17に隣接する第1排ガス導入セル12Aの形状断面は、一部カットされた形状でもよいが、第1排ガス導入セル12の断面形状と合同であることが望ましい。
【0038】
ハニカム焼成体10の角部に存在する第2排ガス導入セル14Bは、八角形から、曲線からなる面取り部40を有する略五角形に変化している。
図3に示す第2排ガス導入セル14Bの面取り部40は、面取り部分が曲線を有するように面取りされているが、面取り部分が直線となるように面取りされていてもよい。
【0039】
また、ハニカム焼成体10では、セル隔壁13は、隣り合う第1排ガス導入セル12及び第2排ガス導入セル14を隔てる第1セル隔壁13aと、第1排ガス導入セル12及び排ガス排出セル11を隔てる第2セル隔壁13bと、第2排ガス導入セル14及び排ガス排出セル11を隔てる第3セル隔壁13cとを含む。
【0040】
第2セル隔壁13bを隔てて対面する、第1排ガス導入セル12の断面形状を構成する辺12aと排ガス排出セル11の断面形状を構成する辺11bとは平行である。また、第3セル隔壁13cを隔てて対面する、排ガス排出セル11の断面形状を構成する辺11aと第2排ガス導入セル14の断面形状を構成する辺14aとは平行である。そして、第1セル隔壁13aを隔てて対面する、第1排ガス導入セル12の断面形状を構成する辺12bと第2排ガス導入セル14の断面形状を構成する辺14bとは平行である。
【0041】
ハニカム焼成体10では、第1セル隔壁13aの厚さ、第2セル隔壁13bの厚さ及び第3セル隔壁13cの厚さは同じであるが、これらのセル隔壁の厚さは同じであっても異なっていてもよい。
これらのセル隔壁の厚さは、0.05~0.30mmであることが好ましく、0.15~0.30mmであってもよく、0.05~0.25mmであってもよく、0.15~0.25mmであってもよい。
このような厚さのセル隔壁は、充分な機械的強度を有するとともに、圧力損失の増加を効果的に抑制することができる。
【0042】
ハニカム焼成体10に排ガスが流入してPMが捕集される場合、
図4に示すように、第1排ガス導入セル12及び第2排ガス導入セル14(
図4においては図示していない)に流入した排ガスG(
図4中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス排出セル11と第1排ガス導入セル12又は第2排ガス導入セル14とを隔てるセル隔壁13を通過した後、排ガス排出セル11から流出するようになっている。排ガスGがセル隔壁13を通過する際に、排ガス中のPM等が捕集されるため、セル隔壁13は、フィルタとして機能する。
【0043】
本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に対して垂直な断面において、各セルの開口面積が以下の関係を満たす。
(1)排ガス排出セルの開口面積は第2排ガス導入セルの開口面積より大きい。
(2)第2排ガス導入セルの開口面積が第1排ガス導入セルの開口面積の1.20~2.20倍である。
(3)第1排ガス導入セルの開口面積と第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、排ガス排出セルの開口面積の1.20~2.00倍である。
【0044】
(1)における排ガス排出セルと第2排ガス導入セルの開口面積の比較は、排ガス排出セル1つと第2排ガス導入セル1つの開口面積を比較して行う。
(2)における第2排ガス導入セルの開口面積と第1排ガス導入セルの開口面積との比較は、第2排ガス導入セル1つと第1排ガス導入セル1つの開口面積を比較して行う。
(3)においては、排ガス排出セル1つに対して、第1排ガス導入セルが2つ、第2排ガス導入セルが1つ存在することから、第1排ガス導入セルの開口面積と第2排ガス導入セルの開口面積の合計は、第1排ガス導入セル2つの開口面積と第2排ガス導入セル1つの開口面積を合計した値とする。この合計値と排ガス排出セルの開口面積を比較する。
【0045】
また、本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に対して垂直な断面において、セルの断面形状を構成する辺の長さが以下の関係を満たす。
(4)第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち排ガス排出セルと対面する辺の長さが、第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち排ガス排出セルと対面する辺の長さより長い。
【0046】
ハニカムフィルタが上記(1)~(4)の関係を満たすことにより、触媒がコートされる前もしくはPMが堆積する前の段階で、第1排ガス導入セルに流れるガス流量と第2排ガス導入セルに流れるガス流量の差を小さくすることができる。
また、上記構成のハニカムフィルタでは、排ガス処理の初期の圧力損失(スス無し圧力損失)を低くできるとともに、PMが堆積する表面積を大きくとることが可能となり、圧力損失を低く保つことができる。
【0047】
本発明のハニカムフィルタは、触媒がコートされる前において第1排ガス導入セルに流れるガス流量と第2排ガス導入セルに流れるガス流量の差を小さくできる。そのため、キャリアガスを用いた触媒コート法により、触媒を第1排ガス導入セルを囲うセル隔壁の第1排ガス導入セル側の表面と、第2排ガス導入セルを囲うセル隔壁の第2排ガス導入セル側の表面に均一にコートすることができる。
そして、本発明のハニカムフィルタは、排ガス導入セルの壁面に触媒が担持されていることが好ましい。触媒としては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)などの貴金属を用いることができる。
【0048】
本発明のハニカムフィルタでは、第2排ガス導入セルの開口面積が第1排ガス導入セルの開口面積の1.30~1.50倍であることが好ましい。また、第1排ガス導入セルの開口面積と第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、排ガス排出セルの開口面積の1.70~1.90倍であることが好ましい。
【0049】
本発明のハニカムフィルタが満たす、上記(1)~(4)の関係について図面を参照して詳しく説明する。
図5、
図6、
図7及び
図8は、ハニカム焼成体のセルの長手方向に垂直な断面におけるセル形状を、排ガス入口側から模式的に示す拡大端面図である。
図5に示すセル構造は、本発明のハニカムフィルタではないセル構造であり、
図6、
図7及び
図8は、本発明のハニカムフィルタであるセル構造である。
【0050】
図5には、上記(1)の関係を満たしていないセル構造を示している。
図5に示す構造では、第2排ガス導入セル14と排ガス排出セル11の断面形状は、いずれも八角形であり、互いに合同である。そのため、排ガス排出セル11の開口面積は第2排ガス導入セル14の開口面積と同じであり、上記(1)の関係を満たさない。
また、第2排ガス導入セル14の開口面積が第1排ガス導入セル12の開口面積の2.20倍よりも大きくなっているので上記(2)の関係を満たさない。
【0051】
図6に示すセル構造は、
図5に示す構造から、排ガス排出セル11が第2排ガス導入セル14と対面する辺11aを第2排ガス導入セル14の側に(
図6で矢印で示す方向に)移動させた構造に相当する。
このセル構造では、排ガス排出セル11の開口面積は第2排ガス導入セル14の開口面積より大きいので、上記(1)の関係を満たしている。
また、このセル構造では
図5に示す構造よりも第2排ガス導入セル14の開口面積が小さくなり、第1排ガス導入セル12の開口面積は変わらない。そして、第2排ガス導入セル14の開口面積が第1排ガス導入セル12の開口面積の2.20倍以下となり、上記(2)の関係を満たしている。
また、第1排ガス導入セル12の開口面積と第2排ガス導入セル14の開口面積の合計が、排ガス排出セル11の開口面積の1.20~2.00倍であるので、上記(3)の関係を満たしている。
また、第1排ガス導入セル12の断面形状を構成する辺のうち排ガス排出セル11と対面する辺12aの長さ(両矢印W12aで示す長さ)が第2排ガス導入セル14の断面形状を構成する辺のうち排ガス排出セル11と対面する辺14aの長さ(両矢印W14aで示す長さ)よりも長くなっており、そのため、上記(4)の関係を満たしている。
【0052】
図7に示すセル構造は、
図6に示す構造から、第1排ガス導入セル12が第2排ガス導入セル14と対面する辺12bを第2排ガス導入セル14の側に(
図7で矢印で示す方向に)移動させた構造に相当する。この構造では、第1排ガス導入セル12が長方形となる。
このセル構造では
図6に示す構造よりも第2排ガス導入セル14の開口面積が小さくなり、排ガス排出セル11の開口面積はほぼ変わらない。そのため、依然として排ガス排出セル11の開口面積は第2排ガス導入セル14の開口面積より大きいので、上記(1)の関係を満たしている。
また、第1排ガス導入セル12の開口面積が大きくなり、第2排ガス導入セル14の開口面積は小さくなるが、依然として第2排ガス導入セル14の開口面積が第1排ガス導入セル12の開口面積の1.20倍以上であるので上記(2)の関係を満たしている。
上記(3)と(4)の関係については、
図6に示すセル構造と同様に満たしている。
【0053】
図8に示すセル構造は、
図7に示す構造から、排ガス排出セル11が第1排ガス導入セル12と対面する辺11bを第1排ガス導入セル12の側に(
図8で矢印で示す方向に)移動させた構造に相当する。
このセル構造では
図7に示す構造よりも排ガス排出セル11の開口面積が大きくなり、第2排ガス導入セル14の開口面積は変わらない。そのため、依然として排ガス排出セル11の開口面積は第2排ガス導入セル14の開口面積より大きいので、上記(1)の関係を満たしている。
また、第1排ガス導入セル12の開口面積は小さくなり、第2排ガス導入セル14の開口面積は変わらないが、依然として第2排ガス導入セルの開口面積が第1排ガス導入セルの開口面積の2.20倍以下であるので上記(2)の関係を満たしている。
また、排ガス排出セル11の開口面積が大きくなり、第1排ガス導入セル12の開口面積は小さくなるが、依然として第1排ガス導入セルの開口面積と第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、排ガス排出セルの開口面積の1.20倍以上であるので上記(3)の関係を満たしている。
上記(4)の関係については、
図6及び
図7に示すセル構造と同様に満たしている。
【0054】
図5、
図6、
図7及び
図8に示すようにセル構造を改変することによって、第2排ガス導入セルの開口面積と第1排ガス導入セルの開口面積の比率(上記(2)の関係)を調整することができる。また、排ガス導入セルの開口面積と排ガス排出セルの開口面積の比率(上記(3)の関係)を調整することができる。
これらの比率を適切な範囲に調整することにより、触媒がコートされる前もしくはPMが堆積する前の段階の第1排ガス導入セルに流れるガス流量と第2排ガス導入セルに流れるガス流量の差が小さいハニカムフィルタとすることができる。
また、PMが堆積する前の圧力損失(スス無し圧力損失)を低くすることができる。
【0055】
本明細書において、「長さ」、「厚さ」、「断面積」等の測定は、電子顕微鏡写真を用いて行うことが望ましい。電子顕微鏡写真の撮影は、例えば、電子顕微鏡(FE-SEM:日立ハイテクノロジーズ社製 高分解能電界放出型走査電子顕微鏡 S-4800)にて行うことができる。
また、電子顕微鏡写真の拡大倍率は、セルを構成するセル隔壁の表面(内壁)の粒子や気孔の凹凸が、セルの断面形状の特定や、辺の長さ、隔壁厚さ及びセルの断面積の計測に支障にならない程度の倍率であり、かつセルの断面形状の特定や、辺の長さ、セル隔壁の厚さ及びセルの断面積の計測が可能となる倍率を採用することが必要であり、拡大倍率30倍の電子顕微鏡写真を用いて計測することが最適である。
すなわち、上述したセルの長さやセル隔壁の厚さの定義に基づき、電子顕微鏡写真のスケールを利用してセルの各辺の長さを測定して、その値を求め、断面積については、得られたセルの長さ等の値に基づき、算術的に求める。また、断面積について算術的に計測することが煩雑な場合は、電子顕微鏡写真のスケールから単位面積に相当する正方形(スケール長さを1辺とする正方形)を切り取り、この重量を測定、一方でセルの断面形状に沿ってセル断面を切り取り(多角形の場合に頂点部分が曲線となっている場合にはその曲線に沿って切り取り)、その切り取った部分の重量を測定する。重量比率からセルの断面の断面積を計算することができる。
【0056】
また、このような人手による計測の他に、電子顕微鏡写真を画像データとして取り込むか、電子顕微鏡から直接取り込んだ画像データを用い、写真のスケールを入力して、電子的な計測に置き換えて測定することも可能である。もちろん、人手による計測方法も電子化した計測方法も電子顕微鏡画像のスケールに基づいた計測であって、同一原理に基づいており、両者の計測結果に齟齬が発生しないことは言うまでもない。
【0057】
電子的な計測としては、画像解析式粒度分布ソフトウェア(株式会社マウンテック(Mountech)製)MAC-View(Version3.5)なる計測ソフトウェアを用いることができる。このソフトウェアでは電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込むか、電子顕微鏡から直接取り込んだ画像データを用い、当該写真のスケールを入力し、セルの内壁に沿って範囲を指定することで断面積を計測できる。また、画像中の任意の点間距離も電子顕微鏡写真のスケールを基に計測できる。
電子顕微鏡によりセル断面を撮影する際には、セルの長手方向に垂直にフィルタを切断し、その切断面が入るように、1cm×1cm×1cmのサンプルを準備し、サンプルを超音波洗浄するか、もしくは樹脂で包埋して、電子顕微鏡写真を撮影する。樹脂による包埋を行っても、セルの辺の長さ及びセル隔壁の厚さの計測には影響を与えない。
【0058】
ハニカム焼成体10では、セル隔壁13の気孔率は、30~65%であることが望ましい。
気孔率をこのように設定することにより、セル隔壁13は、排ガス中のPMを良好に捕集することができ、かつ、セル隔壁13に起因する圧力損失の上昇を抑制することができる。
セル隔壁の気孔率が30%未満である場合、セル隔壁の気孔の割合が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過しにくくなり、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁の気孔率が65%を超える場合、セル隔壁の機械的特性が低くなり、再生時等において、クラックが発生し易くなる。
【0059】
ハニカム焼成体10では、セル隔壁13に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmであることが望ましい。
平均気孔径が上記範囲であると、圧力損失の増加を抑制しながら、高い捕集効率でPMを捕集することができる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が5μm未満であると、気孔が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が25μmを超えると、気孔が大きくなりすぎるので、PMの捕集効率が低下してしまう。
【0060】
なお、本明細書において、「セル隔壁の気孔径」及び「セル隔壁の気孔率」は水銀圧入法にて接触角を130°、表面張力を485mN/mの条件で測定した値を意味する。
【0061】
ハニカム焼成体10の材料は、多孔質材から構成されていれば特に限定されないが、ハニカム焼成体10の構成材料としては、例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック、ケイ素含有炭化ケイ素等が挙げられる。これらのなかでは、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素が好ましい。炭化ケイ素及びケイ素含有炭化ケイ素は、耐熱性に優れた材料である。このため、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなるハニカム焼成体10は耐熱性に優れる。
なお、ケイ素含有炭化ケイ素は、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたものであり、炭化ケイ素を60wt%以上含むケイ素含有炭化ケイ素が好ましい。
【0062】
ハニカム焼成体10の断面におけるセルの単位面積あたりの数は、31~93個/cm2(200~600個/inch2)であることが望ましい。
セルの単位面積あたりの数は、第1排ガス導入セル、第2排ガス導入セル及び排ガス排出セルの合計数である。各図面には、ハニカム焼成体の端面の面積に対して第1排ガス導入セル、第2排ガス導入セル及び排ガス排出セルの面積を説明のために模式的に大きく描いており、ハニカム焼成体の断面におけるセルの単位面積あたりの数が上記の範囲である場合、ハニカム焼成体1つあたりのセルの数は各図面におけるセルの数よりもかなり多くなる。
【0063】
次に、本発明に係るハニカムフィルタの製造方法について説明する。
なお、以下においては、セラミック粉末として、炭化ケイ素を用いる場合について説明する。
【0064】
(1)セラミック粉末とバインダとを含む湿潤混合物を押出成形することによってハニカム成形体を作製する成形工程を行う。
具体的には、まず、セラミック粉末として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末と、有機バインダと、液状の可塑剤と、潤滑剤と、水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0065】
上記湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらの中では、アルミナバルーンが望ましい。
【0066】
続いて、上記湿潤混合物を押出成形機に投入し、押出成形することにより所定の形状のハニカム成形体を作製する。
この際、
図3に示すセル構造(セルの形状及びセルの配置)を有する断面形状が作製されるような金型を用いてハニカム成形体を作製する。
【0067】
(2)ハニカム成形体を所定の長さに切断し、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させた後、所定のセルに封止材となる封止材ペーストを充填して上記セルを目封止する目封止工程を行う。
ここで、封止材ペーストとしては、上記湿潤混合物を用いることができる。
【0068】
(3)ハニカム成形体を脱脂炉中、300~650℃に加熱し、ハニカム成形体中の有機物を除去する脱脂工程を行った後、脱脂されたハニカム成形体を焼成炉に搬送し、2000~2200℃に加熱する焼成工程を行うことにより、
図2に示したようなハニカム焼成体を作製する。
なお、セルの端部に充填された封止材ペーストは、加熱により焼成され、目封止材となる。
また、切断工程、乾燥工程、目封止工程、脱脂工程及び焼成工程の条件は、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0069】
(4)支持台上で複数個のハニカム焼成体を接着材ペーストを介して順次積み上げて結束する結束工程を行い、ハニカム焼成体が複数個積み上げられてなるハニカム集合体を作製する。
接着材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着材ペーストは、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0070】
上記接着材ペーストに含まれる無機粒子としては、例えば、炭化物粒子、窒化物粒子等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子の中では、熱伝導性に優れる炭化ケイ素粒子が望ましい。
【0071】
上記接着材ペーストに含まれる無機繊維及び/又はウィスカとしては、例えば、シリカ-アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等からなる無機繊維及び/又はウィスカ等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維の中では、アルミナファイバが望ましい。また、無機繊維は、生体溶解性ファイバであってもよい。
【0072】
さらに、上記接着材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。
【0073】
(5)次に、ハニカム集合体を加熱することにより接着材ペーストを加熱固化して接着材層とし、四角柱状のセラミックブロックを作製する。
接着材ペーストの加熱固化の条件は、従来からハニカムフィルタを作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0074】
(6)セラミックブロックに切削加工を施す切削工程を行う。
具体的には、ダイヤモンドカッターを用いてセラミックブロックの外周を切削することにより、外周が略円柱状に加工されたセラミックブロックを作製する。
【0075】
(7)略円柱状のセラミックブロックの外周面に、外周コート材ペーストを塗布し、乾燥固化して外周コート層を形成する外周コート層形成工程を行う。
ここで、外周コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストを使用することができる。なお、外周コート材ペーストとして、上記接着材ペーストと異なる組成のペーストを使用してもよい。
なお、外周コート層は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。
外周コート層を設けることによって、セラミックブロックの外周の形状を整えて、円柱状のハニカムフィルタとすることができる。
以上の工程によって、ハニカム焼成体を含む本発明に係るハニカムフィルタを作製することができる。
【0076】
上記工程では、切削工程を行うことにより所定形状のハニカムフィルタを作製していたが、ハニカム焼成体を作製する工程において、外周全体に外周壁を有する複数形状のハニカム焼成体を作製し、それら複数形状のハニカム焼成体を接着材層を介して組み合わせることにより円柱等の所定形状となるようにしてもよい。この場合には、切削工程を省略することができる。
【0077】
ここまでに説明したハニカムフィルタでは、複数のハニカム焼成体が集合して形成された、いわゆる集合型のハニカムフィルタであったが、本発明のハニカムフィルタは、1つのハニカム焼成体からなる、いわゆる一体型ハニカムフィルタであってもよい。
【0078】
また、これまでに説明したハニカムフィルタでは、ハニカム焼成体の外周壁が、角部以外で一定の厚さであり、ハニカム焼成体の最外周にある排ガス導入セルの断面の形状が一部カットされていた。
しかし、本発明のハニカムフィルタでは、ハニカム焼成体の最外周にある排ガス導入セルの断面形状はカットされておらず、外周壁の厚さが一定の厚さでなくてもよい。
【0079】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0080】
本開示(1)は、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、排ガス入口側の端部が開口され、かつ、排ガス出口側の端部が封止された排ガス導入セルと、排ガス出口側の端部が開口され、かつ、排ガス入口側の端部が封止された排ガス排出セルとを備えてなり、上記排ガス導入セル及び上記排ガス排出セルの長手方向に垂直方向の断面形状は、封止部分を除き上記排ガス入口側の端部から上記排ガス出口側の端部にかけて、それぞれのセルにおいて同じであるハニカムフィルタであって、上記排ガス排出セルの周囲全体に、上記セル隔壁を隔てて上記排ガス導入セルが隣接してなり、上記排ガス導入セルは、断面形状の異なる第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルの2種類からなり、かつ、セルの長手方向に対して垂直な断面において、上記排ガス排出セルの開口面積は、上記第2排ガス導入セルの開口面積より大きく形成されており、セルの長手方向に対して垂直な断面において、上記排ガス排出セル及び上記排ガス導入セルは、いずれも多角形からなり、上記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、上記排ガス排出セルと対面している辺の長さが、上記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、上記排ガス排出セルと対面している辺の長さよりも長く、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第2排ガス導入セルの開口面積が上記第1排ガス導入セルの開口面積の1.20~2.20倍であり、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第1排ガス導入セルの開口面積と上記第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、上記排ガス排出セルの開口面積の1.20~2.00倍であることを特徴とするハニカムフィルタである。
【0081】
本開示(2)は、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第1排ガス導入セルは四角形であり、上記第2排ガス導入セルは八角形であり、上記排ガス排出セルは八角形である本開示(1)に記載のハニカムフィルタである。
【0082】
本開示(3)は、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第1排ガス導入セルは長方形である本開示(1)又は(2)に記載のハニカムフィルタである。
【0083】
本開示(4)は、セルの長手方向に垂直な断面において、上記第2排ガス導入セルの開口面積が上記第1排ガス導入セルの開口面積の1.30~1.50倍であり、
セルの長手方向に垂直な断面において、上記第1排ガス導入セルの開口面積と上記第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、上記排ガス排出セルの開口面積の1.70~1.90倍である本開示(1)~(3)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0084】
本開示(5)は、本開示(2)に記載のハニカムフィルタであり、かつ、セルの長手方向に垂直な断面において、上記排ガス排出セルの周囲にはセル隔壁を隔てて上記第1排ガス導入セルと上記第2排ガス導入セルとがそれぞれ4つずつ交互に配置されて上記排ガス排出セルを包囲してなり、また、上記排ガス排出セルを包囲している4つの上記第2排ガス導入セルの断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、上記排ガス排出セルの断面形状からなる図形領域を通過する2本の線分の交点は、上記排ガス排出セルの断面形状である八角形の幾何学的な重心と一致してなり、かつ、上記4つの第2排ガス導入セルの断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、上記排ガス排出セルの断面形状からなる図形領域を通過しない4本は、四角形を構成し、その各辺の中点は上記排ガス排出セルを包囲している4つの上記第1排ガス導入セルの断面形状である各四角形の幾何学的な重心と一致するように、上記排ガス排出セル、上記第1排ガス導入セル及び上記第2排ガス導入セルがそれぞれ配置されてなる本開示(1)~(4)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0085】
本開示(6)は、上記ハニカムフィルタは、上記排ガス排出セル、上記第1排ガス導入セル及び上記第2排ガス導入セルを有し、外周に外周壁を有する複数のハニカム焼成体が接着材層を介して接着されることにより形成されている本開示(1)~(5)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0086】
本開示(7)は、上記ハニカム焼成体は、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなる本開示(6)に記載のハニカムフィルタである。
【0087】
本開示(8)は、上記セル隔壁の厚さは、0.05~0.30mmである本開示(1)~(7)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0088】
本開示(9)は、上記セル隔壁の気孔率は、30~65%である本開示(1)~(8)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0089】
本開示(10)は、上記セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmである本開示(1)~(9)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0090】
本開示(11)は、上記ハニカムフィルタの外周に外周コート層が形成されている本開示(1)~(10)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0091】
本開示(12)は、上記排ガス導入セルの壁面に触媒が担持されている、本開示(1)~(11)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【実施例0092】
平均粒子径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末54.6重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末23.4重量%とを混合し、得られた混合物に対して、有機バインダ(メチルセルロース)4.4重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)2.6重量%、グリセリン1.2重量%、及び、水13.8重量%を加えて混練して湿潤混合物を得た後、押出成形する成形工程を行った。
本工程では、
図2に示したハニカム焼成体10と同様の形状であって、セルの目封止をしていない生のハニカム成形体を作製した。
【0093】
次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を乾燥させることにより、ハニカム成形体の乾燥体を作製した。その後、ハニカム成形体の乾燥体の所定のセルに封止材ペーストを充填してセルの目封止を行った。
具体的には、排ガス入口側の端部及び排ガス出口側の端部が
図3に示す位置で目封止されるようにセルの目封止を行った。
なお、上記湿潤混合物を封止材ペーストとして使用した。セルの目封止を行った後、封止材ペーストを充填したハニカム成形体の乾燥体を再び乾燥機を用いて乾燥させた。
【0094】
続いて、セルの目封止を行ったハニカム成形体の乾燥体を400℃で脱脂する脱脂処理を行い、さらに、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成処理を行った。
これにより、ハニカム焼成体を作製した。
ハニカム焼成体のサイズは、36.4mm×36.4mm×177.8mmであり、セル隔壁の厚さはいずれも0.20mmであり、気孔率が38%、平均気孔径が12μm、各目封止の長さは5mmであった。
【0095】
出来上がったハニカム焼成体を、SiC粒子、シリカゾル、ムライトファイバの混合物からなる接着材ペーストを用いて複数個結束させ、外周を加工し、外周に接着材ペーストと同じ材料からなるコート層を設けてφ330.2mm×177.8mmの円筒状のハニカムフィルタを作製した。
【0096】
上記の工程により製造されるハニカム焼成体のセル構造を変更して、以下のように複数種類のハニカムフィルタを作製した。
【0097】
(比較例1)
図5に示すセル構造のように第2排ガス導入セルと排ガス排出セルの断面形状が合同のもの。
図5におけるセルの寸法は以下のとおりである。
第1排ガス導入セルのピッチ(両矢印L1で示す寸法)=1.183mm
第2排ガス導入セルのピッチ(両矢印L2で示す寸法)=1.703mm
第1排ガス導入セルの中心と排ガス排出セルの中心の中心間距離(両矢印L3で示す寸法)=1.443mm
第1排ガス導入セルのピッチL1は、第1排ガス導入セルの両端の第1セル隔壁の中心間の距離である。
第2排ガス導入セルのピッチL2は、第2排ガス導入セルの両端の第1セル隔壁の中心間の距離である。
第1排ガス導入セルの中心と排ガス排出セルの中心の中心間距離L3は、第2セル隔壁を隔てた第1排ガス導入セルの中心と排ガス排出セルの中心の間の距離である。
第1排ガス導入セルの中心と第2排ガス導入セルの中心間距離も両矢印L3で示す寸法と同じであり、1.443mmである。
第1排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、辺の長さが0.983mmの正方形であり、第2排ガス導入セル及び排ガス排出セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.100mmの長辺と、長さが0.285mmの短辺とが4つずつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
【0098】
(実施例1)
比較例1のセル構造を
図6に示すセル構造のように改変したもの。
図5に示す構造から、排ガス排出セル11が第2排ガス導入セル14と対面する辺11aを第2排ガス導入セル14の側に(
図6で矢印で示す方向に)0.1mm移動させた構造に相当する。
第1排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、辺の長さが0.983mmの正方形であり、第2排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが0.817mmの長辺と、長さが0.485mmの短辺とが4つずつ交互に配置されてなる八角形であり、排ガス排出セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.388mmの長辺と、長さが0.080mmの短辺とが4つずつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
【0099】
(実施例2)
実施例1のセル構造を
図7に示すセル構造のように改変したもの。
図6に示す構造から、第1排ガス導入セル12が第2排ガス導入セル14と対面する辺12bを第2排ガス導入セル14の側に(
図7で矢印で示す方向に)0.1mm移動させた構造に相当する。
第1排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長辺の長さが1.183mm、短辺の長さが0.983mmの長方形であり、第2排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.017mmの長辺と、長さが0.202mmの短辺とが4つずつ交互に配置されてなる八角形であり、排ガス排出セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.388mmの長辺と、長さが0.080mmの短辺とが4つずつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
【0100】
(実施例3)
実施例2のセル構造を
図8に示すセル構造のように改変したもの。
図7に示す構造から、排ガス排出セル11が第1排ガス導入セル12と対面する辺11bを第1排ガス導入セル12の側に(
図8で矢印で示す方向に)0.1mm移動させた構造に相当する。
第1排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長辺の長さが1.183mm、短辺の長さが0.783mmの長方形であり、第2排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.017mmの長辺と、長さが0.202mmの短辺とが4つずつ交互に配置されてなる八角形であり、排ガス排出セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.281mmの長辺と、長さが0.270mmの短辺とが4つずつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
【0101】
なお、各実施例のハニカムフィルタでは、第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち排ガス排出セルと対面する辺の長さが、第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち排ガス排出セルと対面する辺の長さより長くなっていた(すなわち、上記(4)の条件を満たしていた)。
【0102】
(比較例2)
図9は、比較例2のハニカム焼成体のセルの長手方向に垂直な断面におけるセル形状を、排ガス入口側から模式的に示す拡大端面図である。
図9に示すセル構造のように、セルの長手方向に垂直な断面において、第1排ガス導入セルの断面形状が正方形であり、第2排ガス導入セルの断面形状と排ガス排出セルの断面形状が合同な八角形であるもの。
図9におけるセルの寸法は以下のとおりである。
第1排ガス導入セルのピッチ(両矢印L1で示す寸法)=1.318mm
第2排ガス導入セルのピッチ(両矢印L2で示す寸法)=1.568mm
第1排ガス導入セルの中心と排ガス排出セルの中心の中心間距離(両矢印L3で示す寸法)=1.443mm
第1排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、辺の長さが1.118mmの正方形であり、第2排ガス導入セル及び排ガス排出セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.235mmの長辺と、長さが0.094mmの短辺とが4つずつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
【0103】
(ガス流量及び圧力損失シミュレーション)
実施例1~3及び比較例1、2に係るハニカムフィルタに対して、以下の条件で各セルのガス流量及び圧力損失のシミュレーションを行った。
セル隔壁のガス透過性は5.31×10―13[m2]とした。
シミュレーションに用いたソフトウェアは、「STAR-CCM+」であった。
シミュレーションの系は、最小のセルの繰り返し単位(第1排ガス導入セルの1/4を2つ、第2排ガス導入セルの1/4、排ガス排出セルの1/4)となる断面を用い、ハニカムフィルタへの流入するガスの温度を410℃、ガスの断面流速を、10m/sとした。
この時の、第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルに流入するガス流量を、それぞれのセルに流入するガスの断面流速とセルの断面積から算出し、その流量比(第2排ガス導入セルに流入するガス流量/第1排ガス導入セルに流入するガス流量)とともに、結果を表1に示した。
また、このときの、ハニカムフィルタの排ガス入口側の端面における全ガス圧と排ガス出口側の端面から100mm後方での全ガス圧との差を、ハニカムフィルタの圧力損失とし、結果を表1に示した。
【0104】
【0105】
各実施例のハニカムフィルタでは、第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルに流れるガス流量の比(第2/第1流量比)が1に近くなっており、かつ、圧力損失も小さくなっていた。
とくに実施例2のセル構成において、第2/第1流量比が最も1に近くなっていた。これは、第1排ガス導入セルに流れるガス流量と第2排ガス導入セルに流れるガス流量の差が小さいことを表し、これによってキャリアガスを用いた触媒コート法により触媒をセル隔壁に均一にコートすることができる。
【0106】
図10は、表1に示す第2/第1流量比を横軸に、第2/第1面積比を縦軸にとってプロットし、近似直線を引いた図である。
図10から、第2/第1流量比と第2/第1面積比の関係が直線近似でき、この近似直線によると第2/第1流量比が1.00になるのは第2/第1面積比が1.20のときであることがわかる。このことから、本発明のハニカムフィルタでは第2排ガス導入セルの開口面積の第1排ガス導入セルの開口面積に対する比(第2/第1面積比)の下限値を1.20と規定している。
【0107】
比較例1のハニカムフィルタは、第2排ガス導入セルの開口面積が第1排ガス導入セルの開口面積の2.20倍を超えていて、第2/第1流量比が大きくなっていた。
比較例2のハニカムフィルタは、第1排ガス導入セルの開口面積と第2排ガス導入セルの開口面積の合計が、排ガス排出セルの開口面積の2.00倍を超えていて、圧力損失が大きくなっていた。