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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132423
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/00 20220101AFI20240920BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20240920BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D46/00 302
B01D39/20 D
F01N3/022 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043175
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真啓
【テーマコード(参考)】
3G190
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
3G190AA02
3G190AA12
3G190BA01
3G190CA03
3G190CA13
3G190CB05
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BC12
4D019BD01
4D019CA01
4D019CB04
4D019CB06
4D058JA32
4D058JA37
4D058JA38
4D058JA39
4D058JB06
4D058JB22
4D058SA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内側領域と外側領域におけるPMの堆積量の差を小さくすることで、クラックが発生することを抑制し、かつ、領域の範囲を変えるように仕様変更した場合でも、同じ金型で製造可能であるハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、貫通孔の排ガス入口側か出口側の一方が封止されたセルを備えるハニカムフィルタであって、セルの内側領域と外側領域は貫通孔のパターンが同じであり、かつセルのパターンが異なり、上記内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、上記外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)より小さく、上記排ガス入口側の端部において、上記外側領域の開口率は、上記内側領域の開口率より大きいことを特徴とするハニカムフィルタ。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、貫通孔の排ガス入口側の端部が開口され、かつ、排ガス出口側の端部が封止された排ガス導入セルと、
貫通孔の排ガス出口側の端部が開口され、かつ、排ガス入口側の端部が封止された排ガス排出セルとを備えてなるハニカムフィルタであって、
前記ハニカムフィルタは、ハニカム焼成体から構成されてなり、
前記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、内側領域と外側領域からなり、
前記内側領域及び前記外側領域は貫通孔のパターンが同じであり、かつ、セルのパターンが異なり、
前記内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、前記外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)より小さく、
前記排ガス入口側の端部において、前記外側領域の開口率は、前記内側領域の開口率より大きいことを特徴とするハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記内側領域及び前記外側領域の両方において、前記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きい、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記内側領域及び前記外側領域の両方において、セル断面積の大きい大容量セルと前記大容量セルのセル断面積より小さいセル断面積を有する小容量セルとを含む、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、前記小容量セルの断面形状は略四角形であり、前記大容量セルの断面形状は略八角形である請求項3に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記内側領域では、前記大容量セルが排ガス導入セルであり、前記小容量セルが排ガス排出セルであり、前記外側領域では、前記大容量セルの一部が排ガス排出セルであり、前記大容量セルの残りの一部と前記小容量セルが排ガス導入セルである請求項3に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、全てのセルの断面形状が略四角形である、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記内側領域及び前記外側領域の両方において、前記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きい、請求項6に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
前記内側領域において、前記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積と同じであり、
前記外側領域において、前記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きい、請求項6に記載のハニカムフィルタ。
【請求項9】
前記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、前記内側領域は、前記断面を構成するセル数の10~30%からなり、前記内側領域の重心と前記ハニカム焼成体の重心は略一致している、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項10】
前記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、前記内側領域の形状は略四角形である、請求項9に記載のハニカムフィルタ。
【請求項11】
前記ハニカムフィルタは、外周に外周壁を有する複数の前記ハニカム焼成体が接着材層を介して接着されることにより形成されている、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項12】
前記ハニカム焼成体は、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなる請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項13】
前記セル隔壁の厚さは、0.05~0.30mmである請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項14】
前記セル隔壁の気孔率は、30~65%である請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項15】
前記セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmである請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項16】
前記ハニカムフィルタの外周に外周コート層が形成されている請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、スス等のパティキュレート(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境又は人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、CO、HC又はNOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境又は人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、内燃機関と連結されることにより排ガス中のPMを捕集したり、排ガスに含まれるCO、HC又はNOx等の排ガス中の有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、コージェライトや炭化ケイ素等の多孔質セラミックからなるハニカム構造のフィルタ(ハニカムフィルタ)が種々提案されている。
【0004】
ハニカムフィルタに対しては、一定量のPMを堆積させた後にPMを燃焼させる再生処理が行われる。再生処理の際にはPMの燃焼に伴う熱が発生するため、熱応力又は熱衝撃によりハニカムフィルタにクラックが生じることがある。
通常は、クラックの発生を防止するために堆積させるPMの量を制御している。
【0005】
ハニカムフィルタは複数個のハニカム焼成体を組み合わせて使用される。各ハニカム焼成体はその長手方向に対して垂直方向の断面において内側領域(中央部)にPMが堆積しやすく、外側領域(外周部)にはPMが堆積しにくい。そして、PMの堆積量が内側領域と外側領域で異なると、再生時のPM燃焼量の違いから内側領域と外側領域の温度差が生じ、クラックの発生につながることがある。
【0006】
特許文献1には、ハニカム焼成体の内側領域と外側領域においてセルのパターンを変更することにより、外側領域(第2セル領域)の開口率を内側領域(第1セル領域)の開口率よりも高くする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-224542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された技術では、外側領域の開口率を高くすることにより外側領域におけるPMの堆積量を増やし、PM燃焼時の熱を接着材層の温度上昇に使うことで、温度差の発生を抑制するとしている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では内側領域と外側領域でのセルの断面形状が異なるという特殊な形状のハニカム焼成体を製造するために、領域の範囲を変更するたびに専用の金型を用意する必要がある。そのため、製造するハニカム焼成体の仕様の変更に対して柔軟に対応することが難しかった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、内側領域と外側領域におけるPMの堆積量の差を小さくすることで、クラックが発生することを抑制し、かつ、領域の範囲を変えるように仕様変更した場合でも、同じ金型で製造可能であるハニカムフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のハニカムフィルタは、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、貫通孔の排ガス入口側の端部が開口され、かつ、排ガス出口側の端部が封止された排ガス導入セルと、貫通孔の排ガス出口側の端部が開口され、かつ、排ガス入口側の端部が封止された排ガス排出セルとを備えてなるハニカムフィルタであって、上記ハニカムフィルタは、ハニカム焼成体から構成されてなり、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、内側領域と外側領域からなり、上記内側領域及び上記外側領域は貫通孔のパターンが同じであり、かつ、セルのパターンが異なり、上記内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、上記外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)より小さく、上記排ガス入口側の端部において、上記外側領域の開口率は、上記内側領域の開口率より大きいことを特徴とする。
【0012】
本発明のハニカムフィルタでは、内側領域と外側領域で貫通孔のパターンは同じであり、かつ、セルのパターンが異なる。
内側領域と外側領域で貫通孔のパターンを同じにすることで、仕様変更した場合でも同じ金型を使用しての押出成形によりハニカム成形体を得ることができる。
そして、ハニカム成形体を封止する際に、内側領域と外側領域で異なるセルのパターンにすることによって、内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)が、外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)より小さくなるようにしている。さらに、排ガス入口側の端部において、外側領域の開口率が内側領域の開口率よりも大きくなるようにしている。
外側領域及び内側領域における排ガス導入セルの数/排ガス排出セルの数の値、及び、排ガス入口側の端部における開口率がそれぞれ上記の関係を満たすことにより、内側領域と外側領域におけるPMの堆積量の差を小さくすることができる。PMの堆積量の差を小さくすることで、燃焼させた際に発生する熱によるハニカム焼成体内の温度差を小さくし、クラックが発生することを抑制することができる。
以上のことから、本発明によると、クラックの発生を抑制し、かつ、仕様変更した場合でも同じ金型で製造可能であるハニカムフィルタを提供することができる。
【0013】
本発明のハニカムフィルタでは、上記内側領域及び上記外側領域の両方において、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きいことが好ましい。
排ガス導入セルの総断面積を排ガス排出セルの総断面積より大きくすることによって、PMが堆積する表面積を大きくとることが可能となり、圧力損失を低く保つことができる。
【0014】
本発明のハニカムフィルタでは、上記内側領域及び上記外側領域の両方において、セル断面積の大きい大容量セルと上記大容量セルのセル断面積より小さいセル断面積を有する小容量セルとを含むことが好ましい。
また、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、上記小容量セルの断面形状は略四角形であり、上記大容量セルの断面形状は略八角形であることが好ましい。
また、上記内側領域では、上記大容量セルが排ガス導入セルであり、上記小容量セルが排ガス排出セルであり、上記外側領域では、上記大容量セルの一部が排ガス排出セルであり、上記大容量セルの残りの一部と上記小容量セルが排ガス導入セルであることが好ましい。
【0015】
本発明のハニカムフィルタでは、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、全てのセルの断面形状が略四角形であることが好ましい。
また、上記内側領域及び上記外側領域の両方において、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きいことが好ましい。
また、上記内側領域において、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積と同じであり、上記外側領域において、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きいことが好ましい。
【0016】
本発明のハニカムフィルタでは、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、上記内側領域は、上記断面を構成するセル数の10~30%からなり、上記内側領域の重心と上記ハニカム焼成体の重心は略一致していることが好ましい。
ハニカムフィルタがこのような構成であると、内側領域と外側領域におけるPMの堆積量の差をより小さくすることができる。また、排ガス入口側の端部において開口率の大きい外側領域の範囲を大きくすることで、ハニカム焼成体全体としての排ガス入口側の端部における開口率を大きくすることができる。
また、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、上記内側領域の形状は略四角形であることが好ましい。
このような構成であると、ハニカム焼成体でのPMの堆積の偏りをなくすことができるため、堆積したPMを燃焼した際の温度ムラを小さく抑えることができる。
【0017】
本発明のハニカムフィルタは、外周に外周壁を有する複数の上記ハニカム焼成体が接着材層を介して接着されることにより形成されていることが好ましい。
ハニカムフィルタがこのような構成であると、1つのハニカム焼成体に応力が生じた場合でも、その応力が接着材層により緩和され、他のハニカム焼成体に伝わりにくくなる。つまり、ハニカムフィルタに生じた応力を緩和させることができる。その結果、ハニカムフィルタが損傷することを防ぐことができる。
【0018】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記ハニカム焼成体は、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなることが好ましい。
炭化ケイ素及びケイ素含有炭化ケイ素は、耐熱性に優れた材料である。このため、上記構成のハニカムフィルタは、耐熱性に優れたハニカムフィルタとなる。
【0019】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記セル隔壁の厚さは、0.05~0.30mmであることが好ましい。
セル隔壁の厚さがこのような範囲であると、排ガス処理の初期において、排ガスがセル隔壁を通過しやすくなり、圧力損失を低減することができる。
セル隔壁の厚さが0.05mm未満であると、強度が低くなり破損しやすくなる。
セル隔壁の厚さが0.30mm以上であると、排ガスがセル隔壁を通過しにくくなり、排ガス処理の初期の圧力損失が低減されにくくなる。
【0020】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記セル隔壁の気孔率は、30~65%であることが好ましい。
気孔率をこのように設定することにより、セル隔壁は、排ガス中のPMを良好に捕集することができ、かつ、セル隔壁に起因する圧力損失の上昇を抑制することができる。
セル隔壁の気孔率が30%未満である場合、セル隔壁の気孔の割合が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過しにくくなり、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁の気孔率が65%を超える場合、セル隔壁の機械的特性が低くなり、再生時等において、クラックが発生し易くなる。
【0021】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmであることが好ましい。
平均気孔径が上記範囲であると、圧力損失の増加を抑制しながら、高い捕集効率でPMを捕集することができる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が5μm未満であると、気孔が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が25μmを超えると、気孔が大きくなりすぎるので、PMの捕集効率が低下してしまう。
【0022】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記ハニカムフィルタの外周に外周コート層が形成されていることが好ましい。
外周コート層は、内部のセルを機械的に保護する役割を果たす。そのため、圧縮強度等の機械的特性に優れたハニカムフィルタとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明に係るハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明に係るハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図2に示すハニカム焼成体の排ガス入口側の端面図である。
図4図4は、貫通孔を封止していないハニカム成形体の端面図である。
図5図5は、図2に示すハニカム焼成体のA-A線断面図である。
図6図6は、本発明に係るハニカムフィルタの別の一例を構成するハニカム焼成体の排ガス入口側の端面の一例を模式的に示す端面図である。
図7図7は、本発明に係るハニカムフィルタの別の一例を構成するハニカム焼成体の排ガス入口側の端面の一例を模式的に示す端面図である。
図8図8は、PM堆積量とPM燃焼時のハニカムフィルタの最高温度との関係を示すグラフである。
図9図9は、PM堆積量とPM燃焼時のハニカムフィルタ内の最高温度勾配との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のハニカムフィルタの一例について、図面を用いて詳述する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係るハニカムフィルタは、内側領域及び外側領域の両方において、セル断面積の大きい大容量セルと大容量セルのセル断面積より小さいセル断面積を有する小容量セルとを含む。
また、内側領域及び外側領域の両方において、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きい。
【0025】
図1は、本発明に係るハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明に係るハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
図3は、図2に示すハニカム焼成体の排ガス入口側の端面図である。
図4は、貫通孔を封止していないハニカム成形体の端面図である。
図5は、図2に示すハニカム焼成体のA-A線断面図である。
【0026】
図1に示すハニカムフィルタ20では、複数個のハニカム焼成体10が接着材層15を介して結束されてセラミックブロック18を構成し、このセラミックブロック18の外周には、排ガスの漏れを防止するための外周コート層16が形成されている。なお、外周コート層16は、必要に応じて形成されていればよい。
【0027】
ハニカムフィルタ20では、複数個のハニカム焼成体10が接着材層15を介して結束されている。そのため、1つのハニカム焼成体10に応力が生じた場合でも、その応力が接着材層15により緩和され、他のハニカム焼成体10に伝わりにくくなる。つまり、ハニカムフィルタ20に生じた応力を緩和させることができる。その結果、ハニカムフィルタ20が損傷することを防ぐことができる。
接着材層15は、無機バインダと無機粒子とを含む接着材ペーストを塗布、乾燥させたものである。接着材層15は、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
接着材層15の厚さは、0.5~2.0mmが望ましい。
【0028】
外周コート層16は、内部のセルを機械的に保護する役割を果たす。そのため、ハニカムフィルタ20は、圧縮強度等の機械的特性に優れる。
なお、外周コート層16の材料は、接着材層15の材料と同じであることが望ましい。外周コート層16の厚さは、0.1~3.0mmが望ましい。
【0029】
なお、ハニカム焼成体10は、四角柱形状であるが、図3に示すように、端面における角部が曲線形状となるように面取りが施されており、これにより角部に熱応力が集中し、クラック等の損傷が発生するのを防止している。上記角部は、直線形状となるように面取りされていてもよい。
【0030】
図2に示すハニカム焼成体10は、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、排ガス入口側の端部10aが開口され、かつ、排ガス出口側の端部10bが目封止された排ガス導入セル(図2の手前側の端面で白で示すセル)と、排ガス出口側の端部10bが開口され、かつ、排ガス入口側の端部10aが目封止された排ガス排出セル(図2の手前側の端面で黒で示すセル)とを備えてなる。
また、このハニカム焼成体10の外周には、外周壁17が形成されている。
【0031】
なお、本発明のハニカムフィルタでは、排ガス導入セル及び排ガス排出セルを目封止する目封止材は、ハニカム焼成体と同じ材料であることが望ましい。
【0032】
ハニカムフィルタ20では、排ガス導入セル及び排ガス排出セルの長手方向に垂直方向の断面形状は、目封止部分を除き排ガス入口側の端部10aから排ガス出口側の端部10bにかけて、それぞれのセルにおいて同じである。
【0033】
図3を参照して、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面における、内側領域と外側領域での排ガス導入セルと排ガス排出セルの配置について説明する。
図3は、ハニカム焼成体を排ガス入口側の端部から見た端面図である。
図3には、内側領域を点線で囲んだ略四角形の領域として示している。内側領域以外の部分が外側領域である。
内側領域はハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面における中心を含む領域である。外側領域は内側領域の外側(外周壁側)に位置する領域である。
本発明のハニカムフィルタでは、内側領域と外側領域で排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比が異なるので、内側領域と外側領域の区別はセルのパターンを認識することで行うことができる。
また、一つの目安として、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、内側領域を、上記断面を構成するセル数の10~30%からなり、内側領域の重心とハニカム焼成体の重心が略一致する領域としてもよい。
【0034】
本発明のハニカムフィルタにおいて、ハニカム焼成体の内側領域と外側領域では、貫通孔のパターンは同じである。
「貫通孔のパターンが同じ」の意味について図4を参照して説明する。
図4は、貫通孔を封止していないハニカム成形体の端面図である。
図4には、ハニカム成形体30が大容量貫通孔31と小容量貫通孔32を有していることを示している。
この図から分かるように、貫通孔を封止していない状態では、貫通孔のパターンはハニカム成形体の端面の全体において同じである。
このように、貫通孔を封止していない状態のハニカム成形体の端面の形状から、貫通孔のパターンが同じであるかを判別することができる。また、ハニカム焼成体の貫通孔を封止していない部分における長手方向に垂直方向の断面形状からも判別することができる。
ハニカム成形体のセルのパターンを内側領域と外側領域で異ならせるようにして貫通孔を封止して、ハニカム成形体を焼成することにより、図3に示すような端面を有するハニカム焼成体が得られる。
【0035】
再度図3を参照して、内側領域と外側領域での排ガス導入セルと排ガス排出セルの配置について説明する。
【0036】
図3に示す内側領域では、セル断面積の大きい大容量セルと大容量セルのセル断面積より小さいセル断面積を有する小容量セルとを含んでいる。
排ガス導入セル52がセル断面積の大きい大容量セルであり、その断面形状が略八角形である。排ガス排出セル51がセル断面積の小さい小容量セルであり、その断面形状が略四角形(正方形)である。
排ガス導入セル52と排ガス排出セル51は交互に配置され、セル隔壁13により隔てられている。
【0037】
内側領域におけるセルのパターンは、排ガス導入セル52と排ガス排出セル51をそれぞれ2つずつ有するセル数2×2の領域(図3に一点鎖線で囲んだ領域Aとして示す)として考える。
内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、領域Aに存在する排ガス排出セル51の数に対する排ガス導入セル52の数として考えればよく、2/2=1である。
また、内側領域では、排ガス導入セルの総断面積(内側領域における全ての排ガス導入セルの断面積の合計)は排ガス排出セルの総断面積(内側領域における全ての排ガス排出セルの断面積の合計)より大きくなっている。
【0038】
図3には、内側領域を点線で囲んだ略四角形の領域として示しているが、厳密には内側領域の外周を示す辺は排ガス導入セル52の外周形状と排ガス排出セル51の外周形状に沿って凸凹になっている辺である。
そして、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、内側領域の形状は略四角形であることが好ましい。
このような構成であると、ハニカム焼成体でのPMの堆積の偏りをなくすことができるため、堆積したPMを燃焼した際の温度ムラを小さく抑えることができる。
【0039】
また、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、内側領域は、上記断面を構成するセル数の10~30%からなり、内側領域の重心とハニカム焼成体の重心は略一致(図3で重心gとして示す)していることが好ましい。
このような構成であると、内側領域と外側領域におけるPMの堆積量の差をより小さくすることができる。また、排ガス入口側の端部において開口率の大きい外側領域の範囲を大きくすることで、ハニカム焼成体全体として排ガス入口側の端部における開口率を大きくすることができる。
【0040】
図3に示す外側領域では、セル断面積の大きい大容量セルと大容量セルのセル断面積より小さいセル断面積を有する小容量セルとを含んでいる。
大容量セルの一部が排ガス排出セルであり、大容量セルの残りの一部と小容量セルが排ガス導入セルである。
大容量貫通孔が封止される位置の違いにより、大容量セルは排ガス排出セル61と第2排ガス導入セル64の2種類のセルとなる。
大容量貫通孔が排ガス入口側の端部で封止された大容量セルは排ガス排出セル61となり、大容量貫通孔が排ガス出口側の端部で封止された大容量セルは第2排ガス導入セル64となる。
小容量貫通孔が排ガス出口側の端部で封止された小容量セルは第1排ガス導入セル62となる。
排ガス排出セル61と第2排ガス導入セル64はその断面形状が略八角形である。
第1排ガス導入セル62の断面形状は略四角形(正方形)である。
【0041】
外側領域では、排ガス排出セル61の周囲にはセル隔壁13を隔てて第1排ガス導入セル62と第2排ガス導入セル64とがそれぞれ4つずつ交互に配置されて排ガス排出セル61を包囲してなる。
また、排ガス排出セル61を包囲している4つの第2排ガス導入セル64の断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、排ガス排出セル61の断面形状からなる図形領域を通過する2本の線分の交点は、排ガス排出セル61の断面形状である八角形の幾何学的な重心と一致してなり、かつ、4つの第2排ガス導入セル64の断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、排ガス排出セル61の断面形状からなる図形領域を通過しない4本は、四角形を構成し、その各辺の中点は排ガス排出セル61を包囲している4つの第1排ガス導入セル62の断面形状である各四角形の幾何学的な重心と一致する。
【0042】
また、ハニカム焼成体10では、角部以外の外周壁17の厚さが均一になるように、セルの長手方向に垂直な断面における外周壁17に隣接する排ガス導入セルの外周壁に接する辺は、外周壁17の外壁をなす辺と平行かつ直線的に形成されている。
従って、外周壁17に隣接する第2排ガス導入セル64Aの断面は、一部がカットされているため、八角形から六角形に変化している。外周壁17に隣接する第1排ガス導入セル62Aの形状断面は、一部カットされた形状でもよいが、第1排ガス導入セル62の断面形状と合同であることが望ましい。
【0043】
ハニカム焼成体10の角部に存在する第2排ガス導入セル64Bは、八角形から、曲線からなる面取り部40を有する略五角形に変化している。図3に示す第2排ガス導入セル64Bの面取り部40は、面取り部分が曲線を有するように面取りされているが、面取り部分が直線となるように面取りされていてもよい。
【0044】
また、ハニカム焼成体10では、セル隔壁13は、隣り合う第1排ガス導入セル62及び第2排ガス導入セル64を隔てる第1セル隔壁13aと、第1排ガス導入セル62及び排ガス排出セル61を隔てる第2セル隔壁13bと、第2排ガス導入セル64及び排ガス排出セル61を隔てる第3セル隔壁13cとを含む。
【0045】
第2セル隔壁13bを隔てて対面する、第1排ガス導入セル62の断面形状を構成する辺と排ガス排出セル61の断面形状を構成する辺とは平行である。また、第3セル隔壁13cを隔てて対面する、排ガス排出セル61の断面形状を構成する辺と第2排ガス導入セル64の断面形状を構成する辺とは平行である。そして、第1セル隔壁13aを隔てて対面する、第1排ガス導入セル62の断面形状を構成する辺と第2排ガス導入セル64の断面形状を構成する辺とは平行である。
【0046】
外側領域におけるセルのパターンは、第1排ガス導入セル62を2つ、第2排ガス導入セル64を1つ、排ガス排出セル61を1つ有するセル数2×2の領域(図3に一点鎖線で囲んだ領域Bとして示す)として考える。
外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、は、領域Bに存在する排ガス排出セル61の数に対する排ガス導入セルの数(第1排ガス導入セル62の数と第2排ガス導入セル64の数の合計)として考えればよく、(1+2)/1=3である。
また、外側領域では、排ガス導入セルの総断面積(外側領域における全ての排ガス導入セルの断面積の合計)は排ガス排出セルの総断面積(外側領域における全ての排ガス排出セルの断面積の合計)より大きくなっている。
【0047】
図3に示す形態のハニカム焼成体において、内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は1であり、外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は3である。
そのため、内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)より小さいといえる。
【0048】
また、本発明のハニカムフィルタが備えるハニカム焼成体では、排ガス入口側の端部において、外側領域の開口率は、内側領域の開口率より大きくなる。
なお、本明細書において開口率は排ガス入口側の端面での開口率を意味する。
排ガス入口側の端部において外側領域の開口率が内側領域の開口率より大きくなるためには、以下の関係(1)が成り立てばよい。
領域Bにおける排ガス導入セルの断面積>領域Aにおける排ガス導入セルの断面積・・(1)
ここで、領域Bにおいて「排ガス導入セルの断面積=小容量セル2つの断面積+大容量セル1つの断面積」であり、領域Aにおいて「排ガス導入セルの断面積=大容量セル2つの断面積」であることから、以下の関係(2)が成り立てばよい。
小容量セル2つの断面積>大容量セル1つの断面積・・(2)
上記(2)の関係が成り立つように、小容量セルと大容量セルの断面積(小容量貫通孔と大容量貫通孔の断面積)が調整される。
【0049】
外側領域及び内側領域における排ガス導入セルの数/排ガス排出セルの数の値、及び、排ガス入口側の端部における開口率がそれぞれ上記の関係を満たすことにより、内側領域と外側領域におけるPMの堆積量の差を小さくすることができる。PMの堆積量の差を小さくすることで、燃焼させた際に発生する熱によるハニカム焼成体内の温度差を小さくし、クラックが発生することを抑制することができる。
【0050】
また、内側領域及び外側領域の両方において、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きくなっている。
排ガス導入セルの総断面積を排ガス排出セルの総断面積より大きくすることによって、PMが堆積する表面積を大きくとることが可能となり、圧力損失を低く保つことができる。
【0051】
ハニカム焼成体10では、セル隔壁の厚さは、0.05~0.30mmであることが好ましく、0.15~0.30mmであってもよく、0.05~0.25mmであってもよく、0.15~0.25mmであってもよい。
このような厚さのセル隔壁は、充分な機械的強度を有するとともに、圧力損失の増加を効果的に抑制することができる。
なお、内側領域におけるセル隔壁13の厚さと、外側領域における第1セル隔壁13a、第2セル隔壁13b、第3セル隔壁13cの厚さがいずれも同じであることが好ましい。
【0052】
ハニカム焼成体10に排ガスが流入してPMが捕集される場合、図5に示すように、排ガス導入セル52、第1排ガス導入セル62及び第2排ガス導入セル(図5においては第2排ガス導入セルは図示していない)に流入した排ガスG(図5中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス排出セルと排ガス導入セルを隔てるセル隔壁13を通過した後、排ガス排出セル51又は排ガス排出セル61から流出するようになっている。排ガスGがセル隔壁13を通過する際に、排ガス中のPM等が捕集されるため、セル隔壁13は、フィルタとして機能する。
【0053】
本明細書において、「長さ」、「厚さ」、「断面積」等の測定は、電子顕微鏡写真を用いて行うことが望ましい。電子顕微鏡写真の撮影は、例えば、電子顕微鏡(FE-SEM:日立ハイテクノロジーズ社製 高分解能電界放出型走査電子顕微鏡 S-4800)にて行うことができる。
また、電子顕微鏡写真の拡大倍率は、セルを構成するセル隔壁の表面(内壁)の粒子や気孔の凹凸が、セルの断面形状の特定や、辺の長さ、隔壁厚さ及びセルの断面積の計測に支障にならない程度の倍率であり、かつセルの断面形状の特定や、辺の長さ、セル隔壁の厚さ及びセルの断面積の計測が可能となる倍率を採用することが必要であり、拡大倍率30倍の電子顕微鏡写真を用いて計測することが最適である。
すなわち、上述したセルの長さやセル隔壁の厚さの定義に基づき、電子顕微鏡写真のスケールを利用してセルの各辺の長さを測定して、その値を求め、断面積については、得られたセルの長さ等の値に基づき、算術的に求める。また、断面積について算術的に計測することが煩雑な場合は、電子顕微鏡写真のスケールから単位面積に相当する正方形(スケール長さを1辺とする正方形)を切り取り、この重量を測定、一方でセルの断面形状に沿ってセル断面を切り取り(多角形の場合に頂点部分が曲線となっている場合にはその曲線に沿って切り取り)、その切り取った部分の重量を測定する。重量比率からセルの断面の断面積を計算することができる。
【0054】
また、このような人手による計測の他に、電子顕微鏡写真を画像データとして取り込むか、電子顕微鏡から直接取り込んだ画像データを用い、写真のスケールを入力して、電子的な計測に置き換えて測定することも可能である。もちろん、人手による計測方法も電子化した計測方法も電子顕微鏡画像のスケールに基づいた計測であって、同一原理に基づいており、両者の計測結果に齟齬が発生しないことは言うまでもない。
【0055】
電子的な計測としては、画像解析式粒度分布ソフトウェア(株式会社マウンテック(Mountech)製)MAC-View(Version3.5)なる計測ソフトウェアを用いることができる。このソフトウェアでは電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込むか、電子顕微鏡から直接取り込んだ画像データを用い、当該写真のスケールを入力し、セルの内壁に沿って範囲を指定することで断面積を計測できる。また、画像中の任意の点間距離も電子顕微鏡写真のスケールを基に計測できる。
電子顕微鏡によりセル断面を撮影する際には、セルの長手方向に垂直にフィルタを切断し、その切断面が入るように、1cm×1cm×1cmのサンプルを準備し、サンプルを超音波洗浄するか、もしくは樹脂で包埋して、電子顕微鏡写真を撮影する。樹脂による包埋を行っても、セルの辺の長さ及びセル隔壁の厚さの計測には影響を与えない。
【0056】
ハニカム焼成体10では、セル隔壁13の気孔率は、30~65%であることが望ましい。
気孔率をこのように設定することにより、セル隔壁13は、排ガス中のPMを良好に捕集することができ、かつ、セル隔壁13に起因する圧力損失の上昇を抑制することができる。
セル隔壁の気孔率が30%未満である場合、セル隔壁の気孔の割合が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過しにくくなり、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁の気孔率が65%を超える場合、セル隔壁の機械的特性が低くなり、再生時等において、クラックが発生し易くなる。
【0057】
ハニカム焼成体10では、セル隔壁13に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmであることが望ましい。
平均気孔径が上記範囲であると、圧力損失の増加を抑制しながら、高い捕集効率でPMを捕集することができる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が5μm未満であると、気孔が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が25μmを超えると、気孔が大きくなりすぎるので、PMの捕集効率が低下してしまう。
【0058】
なお、本明細書において、「セル隔壁の気孔径」及び「セル隔壁の気孔率」は水銀圧入法にて接触角を130°、表面張力を485mN/mの条件で測定した値を意味する。
【0059】
ハニカム焼成体10の材料は、多孔質材から構成されていれば特に限定されないが、ハニカム焼成体10の構成材料としては、例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック、ケイ素含有炭化ケイ素等が挙げられる。これらのなかでは、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素が好ましい。炭化ケイ素及びケイ素含有炭化ケイ素は、耐熱性に優れた材料である。このため、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなるハニカム焼成体10は耐熱性に優れる。
なお、ケイ素含有炭化ケイ素は、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたものであり、炭化ケイ素を60wt%以上含むケイ素含有炭化ケイ素が好ましい。
【0060】
ハニカム焼成体10の断面におけるセルの単位面積あたりの数は、31~93個/cm(200~600個/inch)であることが望ましい。
セルの単位面積あたりの数は、全ての種類の排ガス導入セル及び排ガス排出セルの合計数から求める。各図面には、ハニカム焼成体の端面の面積に対して第1排ガス導入セル、第2排ガス導入セル及び排ガス排出セルの面積を説明のために模式的に大きく描いており、ハニカム焼成体の断面におけるセルの単位面積あたりの数が上記の範囲である場合、ハニカム焼成体1つあたりのセルの数は各図面におけるセルの数よりもかなり多くなる。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るハニカムフィルタは、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、全てのセルの断面形状が同じである。具体的には、全てのセルの断面形状が略四角形である。
以下には、図6及び図7を参照して、第2実施形態に係るハニカムフィルタの一例につき、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面における、内側領域と外側領域での排ガス導入セルと排ガス排出セルの配置について説明する。
以下に説明していない点は第1実施形態に係るハニカムフィルタと同様にすることができる。
【0062】
(第2実施形態のハニカムフィルタの第1の態様)
図6は、本発明に係るハニカムフィルタの別の一例を構成するハニカム焼成体の排ガス入口側の端面の一例を模式的に示す端面図である。
図6には、ハニカム焼成体110の内側領域を点線で囲んだ略四角形の領域として示している。内側領域以外の部分が外側領域である。
【0063】
図6に示す内側領域では、排ガス導入セル152と排ガス排出セル151の断面形状は同じである。排ガス導入セル152と排ガス排出セル151の断面形状はいずれも略四角形(正方形)である。
排ガス導入セル152と排ガス排出セル151は一定のパターンで配置され、セル隔壁13により隔てられている。
【0064】
内側領域におけるセルのパターンは、排ガス導入セル152を5つ、排ガス排出セル151を4つ有するセル数3×3の領域(図6に一点鎖線で囲んだ領域Cとして示す)として考える。
内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、領域Cに存在する排ガス排出セル151の数に対する排ガス導入セル152の数として考えればよく、5/4である。
内側領域では、排ガス導入セルの総断面積(内側領域における全ての排ガス導入セルの断面積の合計)は排ガス排出セルの総断面積(内側領域における全ての排ガス排出セルの断面積の合計)より大きくなっている。
【0065】
図6に示す外側領域では、排ガス導入セル162と排ガス排出セル161の断面形状は同じである。排ガス導入セル162と排ガス排出セル161の断面形状はいずれも略四角形(正方形)である。
排ガス導入セル162と排ガス排出セル161は、排ガス導入セル162、排ガス導入セル162、排ガス排出セル161の順に連続的に配置され、セル隔壁13により隔てられている。
【0066】
外側領域におけるセルのパターンは、排ガス導入セル162を6つ、排ガス排出セル161を3つ有するセル数3×3の領域(図6に一点鎖線で囲んだ領域Dとして示す)として考える。
外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、領域Dに存在する排ガス排出セル161の数に対する排ガス導入セル162の数として考えればよく、6/3=2である。
外側領域では、排ガス導入セルの総断面積(外側領域における全ての排ガス導入セルの断面積の合計)は排ガス排出セルの総断面積(外側領域における全ての排ガス排出セルの断面積の合計)より大きくなっている。
【0067】
図6に示す形態のハニカム焼成体において、内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は5/4(=1.25)であり、外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は2である。
そのため、内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)より小さいといえる。
【0068】
また、図6に示す形態のハニカム焼成体では、内側領域及び外側領域の両方において、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きくなっている。
【0069】
また、図6に示す形態のハニカム焼成体では、排ガス入口側の端部における外側領域の開口率は、内側領域の開口率より大きくなる。
【0070】
(第2実施形態のハニカムフィルタの第2の態様)
図7は、本発明に係るハニカムフィルタの別の一例を構成するハニカム焼成体の排ガス入口側の端面の一例を模式的に示す端面図である。
図7には、ハニカム焼成体120の内側領域を点線で囲んだ略四角形の領域として示している。内側領域以外の部分が外側領域である。
【0071】
図7に示す内側領域では、排ガス導入セル152と排ガス排出セル151の断面形状は同じである。排ガス導入セル152と排ガス排出セル151の断面形状はいずれも略四角形(正方形)である。
排ガス導入セル152と排ガス排出セル151は交互に配置され、セル隔壁13により隔てられている。
【0072】
内側領域におけるセルのパターンは、排ガス導入セル152を2つ、排ガス排出セル151を2つ有するセル数2×2の領域(図7に一点鎖線で囲んだ領域Eとして示す)として考える。
内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、領域Eに存在する排ガス排出セル151の数に対する排ガス導入セル152の数として考えればよく、2/2=1である。
内側領域では、排ガス導入セルの総断面積(内側領域における全ての排ガス導入セルの断面積の合計)は排ガス排出セルの総断面積(外側領域における全ての排ガス排出セルの断面積の合計)と同じになっている。
【0073】
図7に示す外側領域では、排ガス導入セル162と排ガス排出セル161の断面形状は同じである。排ガス導入セル162と排ガス排出セル161の断面形状はいずれも略四角形(正方形)である。
排ガス導入セル162と排ガス排出セル161が交互に配置された列と排ガス導入セル162が連続して配置された列が交互に配置され、それぞれのセルは、セル隔壁13により隔てられている。
【0074】
外側領域におけるセルのパターンは、排ガス導入セル162を3つ、排ガス排出セル161を1つ有するセル数2×2の領域(図7に一点鎖線で囲んだ領域Fとして示す)として考える。
外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、領域Fに存在する排ガス排出セル161の数に対する排ガス導入セル162の数として考えればよく、3/1=3である。
外側領域では、排ガス導入セルの総断面積(外側領域における全ての排ガス導入セルの断面積の合計)は排ガス排出セルの総断面積(外側領域における全ての排ガス排出セルの断面積の合計)より大きくなっている。
【0075】
図7に示す形態のハニカム焼成体において、内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は1であり、外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は3である。
そのため、内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)より小さいといえる。
【0076】
また、図7に示す形態のハニカム焼成体では、内側領域において、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積と同じであり、外側領域において、ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きくなっている。
【0077】
また、図7に示す形態のハニカム焼成体では、外側領域の開口率は、内側領域の開口率より大きくなる。
【0078】
第2実施形態のハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体では、外側領域と内側領域において全てのセルの断面形状が同じであるので、排ガス入口側の端部において、外側領域と内側領域での開口率の違いは、排ガス入口側の端部が封止されたセルの数の割合の違いに起因する。
第2実施形態のハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体では、排ガス入口側の端部で封止する貫通孔の数の割合を内側領域において外側領域よりも多くすることによって、排ガス入口側の端部における外側領域の開口率を内側領域の開口率よりも大きくしている。
【0079】
第2実施形態のハニカムフィルタにおいても、第1実施形態のハニカムフィルタと同様に、内側領域と外側領域で貫通孔のパターンは同じであり、かつ、セルのパターンが異なる。
内側領域と外側領域で貫通孔のパターンを同じにすることで、仕様変更した場合でも同じ金型を使用しての押出成形によりハニカム成形体を得ることができる。
そして、ハニカム成形体を封止する際に、内側領域と外側領域で異なるセルのパターンにすることによって、内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)が、外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)より小さくなるようにしている。さらに、排ガス入口側の端部における外側領域の開口率が内側領域の開口率よりも大きくなるようにしている。
外側領域及び内側領域における排ガス導入セルの数/排ガス排出セルの数の値、及び、排ガス入口側の端部における開口率がそれぞれ上記の関係を満たすことにより、内側領域と外側領域におけるPMの堆積量の差を小さくすることができる。PMの堆積量の差を小さくすることで、燃焼させた際に発生する熱によるハニカム焼成体内の温度差を小さくし、クラックが発生することを抑制することができる。
以上のことから、クラックの発生を抑制し、かつ、仕様変更した場合でも同じ金型で製造可能であるハニカムフィルタを提供することができる。
【0080】
次に、本発明に係るハニカムフィルタの製造方法について説明する。
なお、以下においては、セラミック粉末として、炭化ケイ素を用いる場合について説明する。
【0081】
(1)セラミック粉末とバインダとを含む湿潤混合物を押出成形することによってハニカム成形体を作製する成形工程を行う。
具体的には、まず、セラミック粉末として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末と、有機バインダと、液状の可塑剤と、潤滑剤と、水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0082】
上記湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらの中では、アルミナバルーンが望ましい。
【0083】
続いて、上記湿潤混合物を押出成形機に投入し、押出成形することにより所定の形状のハニカム成形体を作製する。
この際、例えば図3又は図6に示すセル構造(セルの断面形状及びセルの配置)を有する断面形状が作製されるような金型を用いてハニカム成形体を作製する。なお、セル構造は図3又は図6に示す構造に限定されるものではない。
【0084】
(2)ハニカム成形体を所定の長さに切断し、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させた後、所定のセルに封止材となる封止材ペーストを充填して上記セルを目封止する目封止工程を行う。
この目封止工程の際に、内側領域と外側領域において目封止の位置を異ならせるようにする。
ここで、封止材ペーストとしては、上記湿潤混合物を用いることができる。
【0085】
(3)ハニカム成形体を脱脂炉中、300~650℃に加熱し、ハニカム成形体中の有機物を除去する脱脂工程を行った後、脱脂されたハニカム成形体を焼成炉に搬送し、2000~2200℃に加熱する焼成工程を行うことにより、図2に示したようなハニカム焼成体を作製する。
なお、セルの端部に充填された封止材ペーストは、加熱により焼成され、目封止材となる。
また、切断工程、乾燥工程、目封止工程、脱脂工程及び焼成工程の条件は、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0086】
(4)支持台上で複数個のハニカム焼成体を接着材ペーストを介して順次積み上げて結束する結束工程を行い、ハニカム焼成体が複数個積み上げられてなるハニカム集合体を作製する。
接着材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着材ペーストは、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0087】
上記接着材ペーストに含まれる無機粒子としては、例えば、炭化物粒子、窒化物粒子等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子の中では、熱伝導性に優れる炭化ケイ素粒子が望ましい。
【0088】
上記接着材ペーストに含まれる無機繊維及び/又はウィスカとしては、例えば、シリカ-アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等からなる無機繊維及び/又はウィスカ等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維の中では、アルミナファイバが望ましい。また、無機繊維は、生体溶解性ファイバであってもよい。
【0089】
さらに、上記接着材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。
【0090】
(5)次に、ハニカム集合体を加熱することにより接着材ペーストを加熱固化して接着材層とし、四角柱状のセラミックブロックを作製する。
接着材ペーストの加熱固化の条件は、従来からハニカムフィルタを作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0091】
(6)セラミックブロックに切削加工を施す切削工程を行う。
具体的には、ダイヤモンドカッターを用いてセラミックブロックの外周を切削することにより、外周が略円柱状に加工されたセラミックブロックを作製する。
【0092】
(7)略円柱状のセラミックブロックの外周面に、外周コート材ペーストを塗布し、乾燥固化して外周コート層を形成する外周コート層形成工程を行う。
ここで、外周コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストを使用することができる。なお、外周コート材ペーストとして、上記接着材ペーストと異なる組成のペーストを使用してもよい。
なお、外周コート層は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。
外周コート層を設けることによって、セラミックブロックの外周の形状を整えて、円柱状のハニカムフィルタとすることができる。
以上の工程によって、ハニカム焼成体を含む本発明に係るハニカムフィルタを作製することができる。
【0093】
上記工程では、切削工程を行うことにより所定形状のハニカムフィルタを作製していたが、ハニカム焼成体を作製する工程において、外周全体に外周壁を有する複数形状のハニカム焼成体を作製し、それら複数形状のハニカム焼成体を接着材層を介して組み合わせることにより円柱等の所定形状となるようにしてもよい。この場合には、切削工程を省略することができる。
【0094】
また、これまでに説明したハニカムフィルタでは、ハニカム焼成体の外周壁が、角部以外で一定の厚さであり、ハニカム焼成体の最外周にある排ガス導入セルの断面の形状が一部カットされていた。
しかし、本発明のハニカムフィルタでは、ハニカム焼成体の最外周にある排ガス導入セルの断面形状はカットされておらず、外周壁の厚さが一定の厚さでなくてもよい。
【0095】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0096】
本開示(1)は、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、貫通孔の排ガス入口側の端部が開口され、かつ、排ガス出口側の端部が封止された排ガス導入セルと、貫通孔の排ガス出口側の端部が開口され、かつ、排ガス入口側の端部が封止された排ガス排出セルとを備えてなるハニカムフィルタであって、上記ハニカムフィルタは、ハニカム焼成体から構成されてなり、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、内側領域と外側領域からなり、上記内側領域及び上記外側領域は貫通孔のパターンが同じであり、かつ、セルのパターンが異なり、上記内側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)は、上記外側領域における排ガス排出セルの数に対する排ガス導入セルの数の比(排ガス導入セル数/排ガス排出セル数)より小さく、上記排ガス入口側の端部において、上記外側領域の開口率は、上記内側領域の開口率より大きいことを特徴とするハニカムフィルタである。
【0097】
本開示(2)は、上記内側領域及び上記外側領域の両方において、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きい、本開示(1)に記載のハニカムフィルタである。
【0098】
本開示(3)は、上記内側領域及び上記外側領域の両方において、セル断面積の大きい大容量セルと上記大容量セルのセル断面積より小さいセル断面積を有する小容量セルとを含む、本開示(1)又は(2)に記載のハニカムフィルタである。
【0099】
本開示(4)は、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、上記小容量セルの断面形状は略四角形であり、上記大容量セルの断面形状は略八角形である本開示(3)に記載のハニカムフィルタである。
【0100】
本開示(5)は、上記内側領域では、上記大容量セルが排ガス導入セルであり、上記小容量セルが排ガス排出セルであり、上記外側領域では、上記大容量セルの一部が排ガス排出セルであり、上記大容量セルの残りの一部と上記小容量セルが排ガス導入セルである本開示(3)又は(4)に記載のハニカムフィルタである。
【0101】
本開示(6)は、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、全てのセルの断面形状が略四角形である、本開示(1)に記載のハニカムフィルタである。
【0102】
本開示(7)は、上記内側領域及び上記外側領域の両方において、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きい、本開示(6)に記載のハニカムフィルタである。
【0103】
本開示(8)は、上記内側領域において、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積と同じであり、上記外側領域において、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面での排ガス導入セルの総断面積は、排ガス排出セルの総断面積より大きい、本開示(6)に記載のハニカムフィルタである。
【0104】
本開示(9)は、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、上記内側領域は、上記断面を構成するセル数の10~30%からなり、上記内側領域の重心と上記ハニカム焼成体の重心は略一致している、本開示(1)~(8)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0105】
本開示(10)は、上記ハニカム焼成体の長手方向に対して垂直方向の断面において、上記内側領域の形状は略四角形である、本開示(1)~(9)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0106】
本開示(11)は、上記ハニカムフィルタは、外周に外周壁を有する複数の上記ハニカム焼成体が接着材層を介して接着されることにより形成されている、本開示(1)~(10)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0107】
本開示(12)は、上記ハニカム焼成体は、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなる本開示(1)~(11)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0108】
本開示(13)は、上記セル隔壁の厚さは、0.05~0.30mmである本開示(1)~(12)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0109】
本開示(14)は、上記セル隔壁の気孔率は、30~65%である本開示(1)~(13)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0110】
本開示(15)は、上記セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmである本開示(1)~(14)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【0111】
本開示(16)は、上記ハニカムフィルタの外周に外周コート層が形成されている本開示(1)~(15)のいずれかに記載のハニカムフィルタである。
【実施例0112】
(実施例1)
平均粒子径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末54.6重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末23.4重量%とを混合し、得られた混合物に対して、有機バインダ(メチルセルロース)4.4重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)2.6重量%、グリセリン1.2重量%、及び、水13.8重量%を加えて混練して湿潤混合物を得た後、図4に示す形状に押出成形する成形工程を行い、ハニカム成形体を作製した。
【0113】
次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を乾燥させることにより、ハニカム成形体の乾燥体を作製した。その後、ハニカム成形体の乾燥体の所定のセルに封止材ペーストを充填してセルの目封止を行った。
具体的には、排ガス入口側の端部が図3に示す形状となるように、また、排ガス出口側の端部が図3に示す形状に対応する形状となるようにセルの目封止を行った。この時、ハニカム成形体の一辺のセル数は25セルであり、内側領域を、その重心がハニカム成形体の重心と重なるようにして、一辺のセル数を13セルの正方形とし、その周囲に6セルずつの外側領域を配置した。
なお、上記湿潤混合物を封止材ペーストとして使用した。セルの目封止を行った後、封止材ペーストを充填したハニカム成形体の乾燥体を再び乾燥機を用いて乾燥させた。
【0114】
続いて、セルの目封止を行ったハニカム成形体の乾燥体を400℃で脱脂する脱脂処理を行い、さらに、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成処理を行った。
これにより、実施例1に係るハニカム焼成体を作製した。
【0115】
実施例1に係るハニカム焼成体において、小容量セルの長手方向に垂直な断面の形状は、辺の長さが0.95mmの正方形であり、大容量セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.05mmの長辺と、長さが0.28mmの短辺とが4つずつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
実施例1に係るハニカム焼成体において、セル隔壁の厚さは0.17mmであり、ハニカム焼成体の最外周のセル隔壁(外周壁)の壁厚は0.30mmであった。
また、実施例1に係るハニカム焼成体は、気孔率が38%、平均気孔径が12μm、大きさが34.3mm×34.3mm×177.8mmであった。
出来上がったハニカム焼成体を、SiC粒子、シリカゾル、アルミナファイバの混合物からなる接着材ペーストを用いて複数個結束させ、外周を加工し、外周に接着材ペーストと同じ材料からなるコート層を設けて、φ143.8mm×177.8mmの円筒状のハニカムフィルタを作製した。
【0116】
(比較例1)
製造されるハニカム焼成体の端面全体を実施例1における外側領域と同じセルのパターンとなるように封止した以外は、実施例1と同様に比較例1に係るハニカムフィルタを製造した。
【0117】
(PMの堆積及び燃焼シミュレーション)
実施例1及び比較例1に係るハニカムフィルタの排ガス入口側の端部から、ガス温度を250℃、ガス流量を150kg/hr、PM排出量を8g/hrでガスを流入させPMを5g/L、6g/L、7g/L、8g/L、9g/Lと堆積させた。
次いで、PMが堆積したハニカムフィルタの排ガス入口側の端部から、ガスの最高温度を630℃、酸素濃度を13%、ガス流量を流入開始から60秒まで60kg/hr、60秒から220秒まで100kg/hr、220秒から700秒まで20kg/hrとして流入させ、堆積したPMを燃焼するシミュレーションを実施した。
このとき、ハニカムフィルタの最高温度と、ハニカムフィルタの断面内において最大となる最高温度と最低温度の差を測定し、その最高温度のポイントとその最低温度のポイントの距離で除したものを最高温度勾配とした。
なお、シミュレーションに用いたソフトは、「Exothermia-suite」であった。
図8は、PM堆積量とPM燃焼時のハニカムフィルタの最高温度との関係を示すグラフであり、図9は、PM堆積量とPM燃焼時のハニカムフィルタ内の最高温度勾配との関係を示すグラフである。
【0118】
図8及び図9に示すように、実施例1に係るハニカムフィルタでは、比較例1のハニカムフィルタに比べて、PM燃焼時のハニカムフィルタの最高温度が低く、ハニカムフィルタ内の最高温度勾配が小さいことがわかる。これは、内側領域と外側領域におけるPMの堆積量の差を小さくすることができたためであり、これによりクラックが発生することを抑制することができると考えられる。
【符号の説明】
【0119】
10、110、120 ハニカム焼成体
10a 排ガス入口側の端部
10b 排ガス出口側の端部
13 セル隔壁
13a 第1セル隔壁
13b 第2セル隔壁
13c 第3セル隔壁
15 接着材層
16 外周コート層
17 外周壁
18 セラミックブロック
20 ハニカムフィルタ
30 ハニカム成形体
31 大容量貫通孔
32 小容量貫通孔
40 面取り部
51、151 内側領域の排ガス排出セル
52、152 内側領域の排ガス導入セル
61、161 外側領域の排ガス排出セル
62、62A 外側領域の第1排ガス導入セル
64、64A、64B 外側領域の第2排ガス導入セル
162 外側領域の排ガス導入セル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9