(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132426
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】比例弁制御装置、及び比例弁制御方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F16K31/06 310D
F16K31/06 305V
F16K31/06 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043178
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 新治
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA05
3H106DA13
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD03
3H106EE14
3H106FA03
3H106FB14
3H106GC14
3H106HH01
3H106KK04
(57)【要約】
【課題】流量制御の精度を向上できる比例弁制御装置、及び比例弁制御方法を提供する。
【解決手段】比例弁制御装置57は、バランス型の比例弁1においてコイル8を制御することにより、弁部の弁開度を設定する。比例弁制御装置57は、コイル8にパルス電圧Vplを印加してプランジャを駆動する駆動部58と、弁部の弁開度を制御する制御部59と、を備える。制御部59は、弁開度の指令値Vinに応じた振幅を有するパルス電圧Vplを駆動部58からコイル8に印加し、パルス電圧Vplに応じた電流をコイル8に流して、弁部の弁開度を制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの起磁力と弾性部の弾性力とに基づき動いて弁部を開閉させるプランジャに作用する圧力と、前記弁部に作用する圧力と、が同圧に設定されたバランス型の比例弁において、前記コイルを制御することにより、前記弁部の弁開度を設定する比例弁制御装置であって、
前記コイルにパルス電圧を印加して前記プランジャを駆動する駆動部と、
弁開度の指令値に応じた振幅を有する前記パルス電圧を前記駆動部から前記コイルに印加し、前記パルス電圧に応じた電流を前記コイルに流して、前記弁部の弁開度を制御する制御部と、を備えた比例弁制御装置。
【請求項2】
前記パルス電圧は、前記振幅に関係なく一定の周期を有する、請求項1に記載の比例弁制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、同じ電流であっても弁開度を大きくするときと弁開度を小さくするときとで弁開度が異なってしまう現象に対応する前記パルス電圧を前記駆動部に出力させる、請求項1に記載の比例弁制御装置。
【請求項4】
前記振幅は、前記弁部の全閉付近及び全開付近では小さく設定され、弁開度の中間付近では大きく設定されている、請求項1に記載の比例弁制御装置。
【請求項5】
前記駆動部は、一定電圧を出力するレギュレータと、前記レギュレータの出力を調整するための分圧回路と、を備え、
前記分圧回路は、一定の抵抗値を有する定抵抗と、前記制御部からの制御信号によって抵抗値を可変可能な可変抵抗と、を備え、
前記制御部は、前記指令値に基づいて前記可変抵抗の抵抗値を切り替えることにより、前記振幅を制御する、請求項1に記載の比例弁制御装置。
【請求項6】
前記可変抵抗は、デジタル信号の前記制御信号により抵抗値を可変可能なデジタルポテンショメータである、請求項5に記載の比例弁制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記振幅のボトム及びピークの一方を固定値として、これらの他方を可変の対象とする処理により、前記振幅を変化させる、請求項1に記載の比例弁制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記振幅のボトム及びピークの両方を可変の対象とする処理により、前記振幅を変化させる、請求項1に記載の比例弁制御装置。
【請求項9】
コイルの起磁力と弾性部の弾性力とに基づき動いて弁部を開閉させるプランジャに作用する圧力と、前記弁部に作用する圧力と、が同圧に設定されたバランス型の比例弁において、前記コイルを制御することにより、前記弁部の弁開度を設定する比例弁制御方法であって、
前記コイルに電圧を印加して前記プランジャを駆動する駆動部から、弁開度の指令値に応じた振幅を有するパルス電圧を前記コイルに印加することにより、前記パルス電圧に応じた電流を前記コイルに流して、前記弁部の弁開度を制御する、比例弁制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比例弁制御装置、及び比例弁制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、ソレノイドを使用して流量や圧力を制御する電磁比例制御弁が周知である。特許文献1では、ソレノイドの励磁電流とスプールの変位位置との間に生じるヒステリシスについて問題が提起されている。ヒステリシスは、一般的に、同じ励磁電流でもスプールの変位位置が異なる現象を言う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヒステリシスは、流量の正確な制御を妨げる。よって、ヒステリシスをより低減することによって、より精度のよい流量制御が可能な技術の開発が望まれていた。
本発明の目的は、流量制御の精度を向上できる比例弁制御装置、及び比例弁制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する比例弁制御装置は、コイルの起磁力と弾性部の弾性力とに基づき動いて弁部を開閉させるプランジャに作用する圧力と、前記弁部に作用する圧力と、が同圧に設定されたバランス型の比例弁において、前記コイルを制御することにより、前記弁部の弁開度を設定する装置であって、前記コイルにパルス電圧を印加して前記プランジャを駆動する駆動部と、弁開度の指令値に応じた振幅を有する前記パルス電圧を前記駆動部から前記コイルに印加し、前記パルス電圧に応じた電流を前記コイルに流して、前記弁部の弁開度を制御する制御部と、を備えた。
【0006】
前記課題を解決する比例弁制御方法は、コイルの起磁力と弾性部の弾性力とに基づき動いて弁部を開閉させるプランジャに作用する圧力と、前記弁部に作用する圧力と、が同圧に設定されたバランス型の比例弁において、前記コイルを制御することにより、前記弁部の弁開度を設定する方法であって、前記コイルに電圧を印加して前記プランジャを駆動する駆動部から、弁開度の指令値に応じた振幅を有するパルス電圧を前記コイルに印加することにより、前記パルス電圧に応じた電流を前記コイルに流して、前記弁部の弁開度を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、比例弁において流量制御の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】パルス電圧の具体値と各パルス電圧で流れる電流とを示す波形図である。
【
図7】振幅を説明するためのパルス電圧の波形図である。
【
図9】比例弁の制御の流れを示すフローチャートである。
【
図10】各圧力における流体の流量変化曲線図である。
【
図11】別例のパルス電圧の決め方を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態を説明する。
(比例弁1)
図1に示すように、比例弁1は、流体の流路を切り替える弁部2と、弁部2を駆動するソレノイド3と、を備える。弁部2及びソレノイド3は、例えば、ボルトやねじ等を用いた取付構造(図示略)によって、一体的に取付けられている。比例弁1のハウジング4は、例えば、ソレノイド3のフレーム5と、弁部2のボディ6と、を有する。比例弁1は、ソレノイド3によって弁部2の開閉が電磁的に切り替えられる電磁比例弁である。流体は、例えば、正圧空気である。
【0010】
(ソレノイド3)
図1に示す通り、ソレノイド3は、コイル8、固定子9、及びプランジャ10を有する。コイル8、固定子9、及びプランジャ10は、フレーム5の内部に収容されている。コイル8は、筒状のボビン11に複数周巻回されている。コイル8は、磁性材料により構成された第1磁気フレーム12及び第2磁気フレーム13によってシールドされている。ボビン11は、コイル8の軸方向(
図1のX軸方向)に沿って延びる孔14を有する。
【0011】
第1磁気フレーム12は、例えば、両端が開口した略筒状に形成されるとともに、ボビン11を周方向から覆う。第2磁気フレーム13は、ボビン11の端部を覆うように第1磁気フレーム12の一方の開口部15に取付けられている。ボビン11と第2磁気フレーム13との間には、これらの隙間をシールするシール部16が取付けられている。
【0012】
固定子9は、ボビン11の孔14を閉じるように孔14の端部に取付けられている。固定子9は、端部に形成された螺着部17が第1磁気フレーム12の他方の開口に形成された被螺着部18に螺着されている。螺着部17は、例えば、雌ねじである。被螺着部18は、例えば、雄ねじである。
【0013】
プランジャ10は、ボビン11の孔14と第2磁気フレーム13の孔19との双方に、孔14、19の軸方向(
図1のX軸方向)に沿って往復移動可能に収容されている。プランジャ10は、固定子9と同軸上に配置されている。プランジャ10の先端は、第2磁気フレーム13の孔19から弁部2に向かって所定量突出している。
【0014】
ソレノイド3は、プランジャ10を固定子9から離間する方向(
図1の矢印+X方向)に移動させる弾性部20を備える。弾性部20は、例えば、ばね(円錐ばね等)である。弾性部20の一端は、例えば、第1磁気フレーム12の端面に支持されている。弾性部20の他端は、例えば、プランジャ10の先端の突起21に支持されている。
【0015】
(弁部2)
図1に示す通り、ボディ6は、プランジャ10の先端を収容する第1孔23と、第1孔23に同軸上に配置された第2孔24と、を有する。ボディ6は、例えば、非磁性材料により形成されている。ボディ6と第1磁気フレーム12との間には、隙間を封止するためのシール部25が設けられている。シール部25は、例えば、Oリングである。ボディ6は、比例弁1の内部に流体を供給する供給ポート26と、比例弁1から流体を出力する出力ポート27と、を有する。
【0016】
弁部2は、ソレノイド3によって弁開度が設定される弁28を備える。弁部2は、第2孔24に嵌合されたプラグ29を備える。弁28の略中央から先端は、第1孔23に収容されている。弁28の略中央から基端は、プラグ29に設けられた空間30に収容されている。第2孔24の基端は、プラグ29によって封止されている。
【0017】
弁28は、例えば、弁座31から直角方向(
図1のX軸方向)に移動するポペット弁である。本例の場合、弁座31は、例えば、プラグ29の先端である。よって、弁座31は、プラグ29の開口に沿って周方向に形成されている。弁28は、弁座31を開閉するための開閉部32を有する。開閉部32は、例えば、弁28の軸周りに沿って周方向に形成されている。ポペット型の弁28は、ソレノイド3の駆動により、直角方向に直線移動する。
【0018】
弁28は、弁28の本体となる柱状の弁棒34を有する。開閉部32は、弁棒34の先端寄りの位置に形成されるとともに、第2孔24に収容されている。開閉部32は、弁棒34の外周面に形成された突状の座35と、座35に取付けられた弁体36と、を有する。弁体36は、弁棒34の周方向に環状に形成されている。
【0019】
弁棒34は、プラグ29の空間30に摺動可能に収容された摺動部37を有する。摺動部37は、弁棒34の基端寄りの位置に配置されている。摺動部37は、弁棒34の外周面の周方向に形成された形状、いわゆる、フランジ状に形成されている。プラグ29と摺動部37との間には、隙間を封止するためのシール部38が設けられている。シール部38は、例えば、Oリングである。弁28が軸方向(
図1のX軸方向)に直線移動するとき、シール部38は、プラグ29の空間30の内周面を摺動する。
【0020】
弁28の先端は、例えば、第1孔23と第2孔24との境界に設けられた段状の支持部39によって、軸方向(
図1のX軸方向)に相対移動可能に支持されている。弁28の基端は、例えば、プラグ29の空間30の内周面によって、摺動部37が軸方向(
図1のX軸方向)に相対移動可能に支持されている。
【0021】
図2に示すように、プラグ29は、外周面から所定量凹設された凹部40を有する。凹部40は、プラグ29の外周面の周方向に形成されている。プラグ29は、内部の空間30を供給ポート26に連通する孔41を有する。孔41は、プラグ29の凹部40に形成されている。凹部40の周方向には、複数の孔41が所定間隔で形成されている。
【0022】
プラグ29には、凹部40の両側に、プラグ29とボディ6との間の隙間を封止する一対のシール部42が取付けられている。シール部42は、例えば、Oリングである。プラグ29は、基端に設けられた螺着部43を、ボディ6の第2孔24に形成された被螺着部44に螺着することにより、ボディ6に取付けられている。螺着部43は、例えば、雄ねじである。被螺着部44は、例えば、雌ねじである。
【0023】
図1に示す通り、プラグ29は、弁28を手動で操作するための手動操作軸46を有する。手動操作軸46は、プラグ29の端部に形成された貫通孔47に取付けられている。手動操作軸46と貫通孔47との間には、隙間を封止するためのシール部48が設けられている。
【0024】
比例弁1は、弁28によって開閉される弁室49を備える。本例の場合、弁室49は、例えば、ボディ6の内面と、弁28と、プラグ29の内面と、によって囲まれる領域である。弁室49は、流体を取り込むために供給ポート26と連通されている。弁室49は、弁28とプラグ29との隙間がシール部38によって封止される。弁室49は、ボディ6とプラグ29との間の隙間がシール部42によって封止される。弁28は、開閉部32が弁座31から離れると開弁状態となり、開閉部32が弁座31に接触すると、閉弁状態となる。
【0025】
(比例弁1の電気回路51)
図1に示す通り、比例弁1は、ソレノイド3に電流を流す電気回路51を備える。電気回路51は、各種素子が実装された基板52を有する。基板52は、ハウジング4に取付けられたケース53によって閉じられている。ケース53には、電気回路51を外部に電気接続するためのコネクタ54が設けられている。比例弁1は、電気回路51からソレノイド3に流される電流の大きさに応じた弁開度に設定される。
【0026】
(バランス型の比例弁1)
図1に示す通り、比例弁1は、弁部2に作用する圧力とソレノイド3に作用する圧力とが同圧となったバランス型である。ところで、比例弁1の動作時、弁室49における流体の圧力は、弁28の開閉部32と、弁28の摺動部37と、に作用する。バランス型の比例弁1の場合、弁28は、開閉部32で流体の圧力を受ける面積と、摺動部37で流体の圧力を受ける面積と、が同じとなっている。このため、開閉部32で受ける圧力と、摺動部37で受ける圧力と、が相殺される。このように、プランジャ10に作用する圧力と、弁部2に作用する圧力と、が同圧に設定されると、プランジャ10と弁28との間に差圧が発生しなくなる。
【0027】
バランス型の比例弁1の場合、ソレノイド3に電流が流れるとき、流体の圧力に関係なく、開弁するタイミングは一致する。すなわち、流量と電流との間の変化特性は、開弁するタイミングが一致する波形をとる。このように、バランス型の場合、流体の圧力に応じて、開弁のタイミングが変化してしまう波形変化をとらずに済む。なお、流量と電流との間の変化特性は、圧力が高くなるに連れて、傾きが大きくなる波形をとる。
【0028】
(比例弁1の開閉動作)
図1に示す通り、コイル8が励磁された場合、プランジャ10は、コイル8によって吸引されることにより、弾性部20の弾性力に抗して、弁28から離れる方向(
図1の矢印-X方向)に直線移動する。このとき、弁28の開閉部32は、弁座31から離間する。そして、弁28は、コイル8に流れる電流に応じた位置に配置される。よって、弁28は、コイル8に流れる電流に応じた開度をとる。
【0029】
一方、
図3に示すように、プランジャ10は、コイル8が非励磁の場合、弾性部20の弾性力により、弁28に近づく方向(
図3の矢印+X方向)に直線移動する。このとき、弁28の開閉部32が弁座31に接触する。よって、弁28は、閉状態となる。
【0030】
(比例弁1のヒステリシス)
図4に示すように、比例弁1は、コイル8に流れる電流に応じてプランジャ10の移動量を調整して弁開度を設定するが、プランジャ10の摺動抵抗(摩擦抵抗)により、移動方向に損失が発生する。このため、弁28が全閉から開状態へ、或いは全開から閉状態へ移動を開始するとき、摺動抵抗の損失分、移動開始に遅れが発生する。よって、比例弁1には、弁開度を制御する際にヒステリシスが生じる。
【0031】
ヒステリシスが生じた場合、同じ電流であっても、全閉→弁開の動作と、全開→弁閉の動作とで、流量に差(応差)が生じてしまう。特に、応差は、弁開の開始時と終了時とで小さくなり、弁開の中心付近で大きくなる。弁開度を制御する場合、このような応差(ヒステリシス)が発生してしまうと、制御の精度が低下するため、対策が必要となる。
【0032】
(比例弁制御装置57)
図6に示すように、比例弁1は、比例弁1の動作を制御する比例弁制御装置57を備える。比例弁制御装置57は、バランス型の比例弁1において、コイル8を制御することにより、弁部2の弁開度を設定する。比例弁制御装置57は、コイル8にパルス電圧Vplを印加してプランジャ10を駆動する駆動部58と、駆動部58を介して弁部2の弁開度を制御する制御部59と、を備える。駆動部58及び制御部59は、例えば、電気回路51の基板52に実装される各種素子によって構成されている。
【0033】
(比例弁制御装置57の回路構成)
図6に示す通り、駆動部58は、一定電圧を出力するレギュレータ60と、レギュレータ60の出力を調整するための分圧回路61と、を備える。レギュレータ60は、例えば、昇降圧レギュレータである。レギュレータ60は、入力端子60a、出力端子60b、フィードバック端子60c、及びグランド端子60dを備える。入力端子60aは、主電源端子62に接続されている。主電源端子62には、主電源の電源電圧Vccが印加されている。出力端子60bは、コイル8及び分圧回路61に接続されている。フィードバック端子60cは、分圧回路61の中点63に接続されている。
【0034】
分圧回路61は、一定の抵抗値を有する定抵抗65と、制御部59からの制御信号Vsによって抵抗値を可変可能な可変抵抗66と、を備える。可変抵抗66は、例えば、デジタル信号の制御信号Vsにより抵抗値を可変可能なデジタルポテンショメータである。デジタルポテンショメータは、例えば、デジタル信号によって抵抗値を変更可能なデジタル式の可変抵抗器である。
【0035】
制御部59は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)、各種メモリから構成されている。制御部59は、例えば、第1入力端子59a、第2入力端子59b、第3入力端子59c、第1出力端子59d、第2出力端子59e、及びグランド端子59f、を有する。第1入力端子59aは、主電源端子62に繋がる抵抗R1と、電源端子67に繋がるダイオードD1と、の中点68に接続されている。電源端子67には、電源電圧Vccよりも低い所定の電圧Vout1が印加されている。第1入力端子59aは、制御部59に電源が供給されているか否かを確認するための端子である。
【0036】
第2入力端子59bは、電源端子67と電圧変換回路69との中点70に接続されている。電圧変換回路69は、例えば、3端子レギュレータである。電圧変換回路69は、主電源端子62の電源電圧Vccを、制御部59を駆動するための一定の駆動電圧Vaに変換するとともに、制御部59に出力する。第2入力端子59bは、電圧変換回路69から駆動電圧Vaを入力するための端子である。
【0037】
第3入力端子59cは、ユーザの目標流量に応じた電圧に設定される流量設定端子71に接続されている。第3入力端子59cは、流量設定端子71から流量の指令値Vinを入力するための端子である。指令値Vinは、流量設定端子71の電圧、すなわち、ユーザの目標流量に応じた電圧値である。
【0038】
第1出力端子59dは、分圧回路61の可変抵抗66に接続されている。第1出力端子59dは、ユーザによって設定された流量に応じた値の制御信号Vsを可変抵抗66に出力することにより、可変抵抗66の抵抗値を調整する。制御信号Vsは、例えば、可変抵抗66であるデジタルポテンショメータの抵抗値を制御するためのデジタル状の電圧信号である。
【0039】
分圧回路61は、可変抵抗66の抵抗値に応じたレギュレータ調整電圧Vrを、中点63からレギュレータ60のフィードバック端子60cに出力する。レギュレータ60は、フィードバック端子60cに入力されたレギュレータ調整電圧Vrに応じた電圧を出力する。レギュレータ60の電圧出力は、フィードバック端子60cの電圧が中点63よりも低いと減少し、フィードバック端子60cの電圧が中点63よりも高いと増加する。このように、レギュレータ60は、分圧回路61から入力するレギュレータ調整電圧Vrに応じた波形のパルス電圧Vplをコイル8に出力する。これにより、コイル8には、パルス電圧Vplに応じた電流がコイル8に流れる。よって、弁部2の弁開度は、パルス電圧Vplに応じた開度に設定される。
【0040】
第2出力端子59eは、コイル8の配線経路上に配置されたスイッチング回路72に接続されている。本例の場合、スイッチング回路72は、例えば、フォトカプラを用いたオンオフ切替回路である。第2出力端子59eは、オンとオフとを切り替えるためのオンオフ切替信号Vtをスイッチング回路72に出力することにより、比例弁1への電圧供給と電圧遮断とを切り替える。
【0041】
(制御部59の動作の特徴)
図5に示すように、制御部59は、弁開度の指令値Vinに応じた振幅Axを有するパルス電圧Vplを駆動部58からコイル8に印加し、パルス電圧Vplに応じた電流をコイル8に流して、弁部2の弁開度を制御する。具体的には、制御部59は、指令値Vinに基づいて可変抵抗66の抵抗値を切り替えることにより、振幅Axを制御する。本例の場合、制御部59は、デジタルポテンショメータの抵抗値を調整することにより、レギュレータ60の出力であるパルス電圧Vplを調整する。
【0042】
制御部59は、同じ電流であっても弁開度を大きくするときと弁開度を小さくするときとで弁開度が異なってしまう現象(ヒステリシス)に対応するパルス電圧Vplを駆動部58に出力させる。本例の場合、パルス電圧Vplの振幅Axは、弁部2の全閉付近及び全開付近では小さく設定され、弁開度の中間付近では大きく設定されている。
【0043】
図7に示すように、コイル8に流れる電流は、例えば、振幅AxのボトムBtと、振幅AxのピークPkと、ボトムBt及びピークPkの差と、から決まる。コイル8に流れる電流は、例えば、ボトムBt及びピークPkを上げていけば、大きくなる。また、コイル8に流れる電流は、ボトムBt及びピークPkがともに比較的低い値をとる場合、減少し、ボトムBt及びピークPkがともに比較的高い値をとる場合、増加する。
【0044】
図5に示す通り、制御部59は、振幅AxのボトムBt及びピークPkの一方を固定値として、これらの他方を可変の対象とする処理により、振幅Axを変化させる。本例の場合、コイル8に印加するパルス電圧Vplが電源電圧Vccの中央値未満のとき、ボトムBtを固定してピークPkを上昇させることにより、電流を調整する。一方、コイル8に印加するパルス電圧Vplが電源電圧Vccの中央値以上のとき、ピークPkを固定してボトムBtを上昇させることにより、電流を調整する。
【0045】
図8に示すように、パルス電圧Vplは、振幅Axに関係なく一定の周期を有する。このように、パルス電圧Vplは、振幅Axが一定周期で変化する周期信号である。制御部59は、振幅Axが一定周期で変化するパルス電圧Vplをレギュレータ60からコイル8に印加することにより、比例弁1の開度を制御する。
【0046】
次に、本実施形態の比例弁制御装置57(比例弁制御方法)の作用について説明する。
(比例弁1の制御の流れ)
図9は、流量調整時に制御部59が実行するフローチャートである。制御部59は、例えば、流量設定端子71でユーザの目標流量が設定された場合、その設定に基づく指令値Vinを、第3入力端子59cで入力すると、処理を開始する。
【0047】
ステップ101において、制御部59は、入力した指令値Vinを、コイル8に印加する電圧値に換算する。電源電圧Vccが例えば「12V」の場合、指令値Vinは、「0V~12V」の間の値に換算される。
【0048】
ステップ102において、制御部59は、換算した電圧値が、制御内容の切り替わりの所定電圧値未満か否かを判定する。本例の場合、電源電圧Vccが「12V」であり、そして、この中央値である「6V」で制御内容が切り替えられるので、換算した電圧値が6V未満か否かが判定される。
【0049】
ステップ102の判定において、換算した電圧値が6V未満であると判定された場合、ステップ103に移行する。ステップ102の判定において、換算した電圧値が6V以上であると判定された場合、ステップ112に移行する。
【0050】
ステップ103において、制御部59は、コイル8に印加するパルス電圧VplのボトムBt及びピークPkを設定する。換算した電圧値が6V未満の場合、制御部59は、ボトムBtを「0[V]」とし、ピークPkを「Y=aX[V]」とする。なお、「a」は、補正係数である。補正係数「a」は、例えば、比例弁1のヒステリシスから算出する実験係数である。「X」は、ユーザにより設定された目標流量、すなわち、指令値Vinの電圧換算値である。補正係数「a」は、例えば、指令値Vinの電圧換算値に応じた値をとる可変値である。
【0051】
ステップ104において、制御部59は、ピークPkが電源電圧Vccの最大値未満(本例は、12[V]未満)か否かを判定する。ステップ105において、ピークPkが電源電圧Vccの電圧値未満の場合、ステップ106に移行する。ステップ105において、ピークPkが電源電圧Vccの最大値以上の場合、ステップ110に移行する。
【0052】
ステップ105において、制御部59は、パルス電圧VplのボトムBt及びピークPkの組み合わせを、ボトムBtを「0[V]」、ピークPkを「Y=aX[V]」に決定する。
【0053】
ステップ106において、制御部59は、ステップ105で設定されたボトムBtとピークPkをとるパルス電圧Vplをコイル8に出力する処理を実行する。
ステップ107において、制御部59は、パルス電圧Vplの出力の処理として、まず、ステップ105で決定されたボトムBtに対応する制御信号Vsを可変抵抗66に出力することにより、可変抵抗66の抵抗値を、レギュレータ60からコイル8に0[V]を所定時間出力可能な値に設定する。これにより、レギュレータ60からコイル8に0[V]が所定時間出力される。
【0054】
ステップ108において、続いて制御部59は、パルス電圧Vplの出力の処理として、ステップ105で決定されたピークPkに対応する制御信号Vsを可変抵抗66に出力することにより、可変抵抗66の抵抗値を、レギュレータ60からコイル8にY=aX[V]を所定時間出力可能な値に設定する。これにより、レギュレータ60からコイル8にY=aX[V]が所定時間出力される。
【0055】
そして、ステップ109において、前述のステップ107及びステップ108の処理を繰り返すことにより、コイル8に一定周期のパルス電圧Vplを印加する。これにより、ステップ105で設定したボトムBt及びピークPkの組み合わせに基づく電流がコイル8に流され、結果、この電流に応じた開度で弁28が開く。
【0056】
ステップ110に移行した場合、制御部59は、パルス電圧VplのボトムBt及びピークPkの組み合わせを、ボトムBtを「0[V]」、ピークPkを「12[V]」に決定する。
【0057】
そして、ステップ111において、制御部59は、レギュレータ60からコイル8に、0[V]と12[V]とが交互に印加されるように、制御信号Vsによって可変抵抗66を調整する。これにより、ステップ110で設定したボトムBt及びピークPkの組み合わせに基づく電流がコイル8に流され、結果、この電流に応じた開度で弁28が開く。
【0058】
ステップ112に移行した場合、制御部59は、ボトムBtを「Y=a(X-6)0[V]」とし、ピークPkを「12[V]」とする。
ステップ113において、制御部59は、ボトムBtが電源電圧Vccの最大値未満(本例は、12V未満)か否かを判定する。ステップ113において、ボトムBtが電源電圧Vccの最大値未満の場合、ステップ114に移行する。ステップ113において、ボトムBtが電源電圧Vccの最大値以上の場合、ステップ116に移行する。
【0059】
ステップ114において、制御部59は、パルス電圧VplのボトムBt及びピークPkの組み合わせを、ボトムBtを「Y=a(X-6)[V]」、ピークPkを「12[V]」に決定する。
【0060】
そして、ステップ115において、制御部59は、レギュレータ60からコイル8に、Y=a(X-6)[V]と12[V]とが交互に印加されるように、制御信号Vsによって可変抵抗66を調整する。これにより、ステップ114で設定したボトムBt及びピークPkの組み合わせに基づく電流がコイル8に流され、結果、この電流に応じた開度で弁28が開く。
【0061】
ステップ116に移行した場合、制御部59は、パルス電圧VplのボトムBt及びピークPkの組み合わせを、ボトムBt及びピークPkの両方とも、「12[V]」に決定する。
【0062】
そして、ステップ117において、制御部59は、レギュレータ60からコイル8に、12[V]が常時印加されるように、制御信号Vsによって可変抵抗66を調整する。これにより、ステップ117で設定したボトムBt及びピークPkの組み合わせに基づく電流がコイル8に流され、結果、この電流に応じた開度で弁28が開く。
【0063】
(本例の比例弁制御の利点)
図8に示す通り、コイル8に電流を流すためにレギュレータ60からコイル8に印加される電圧は、所定周期でオンオフを繰り返すパルス電圧Vplである。これにより、プランジャ10が動くとき、微振動を発生させることが可能となるため、プランジャ10に発生する摺動抵抗(摩擦抵抗)が低減される。よって、弁28の開時と閉時との流量差、いわゆる応差(ヒステリシス)を小さく抑えることが可能となる。
【0064】
特に、
図5に示す通り、本例のパルス電圧Vplは、弁28の開閉時の応差(ヒステリシス)が大きくなるところ程、振幅Axが大きくなるように設定されている。具体的には、プランジャ10の移動範囲が中間位置付近ほど、振幅Axを大きくする。このため、応差が大きくなる領域では、プランジャ10の微振動量が大きくなるので、その分、応差を小さく抑えることが可能となる。よって、比例弁1の流量を精度よく制御することが可能となる。
【0065】
図10は、「Pa」、「Pb」、「Pc」の各圧力における流体の流量変化曲線Lである。
図10の場合、圧力がPa(>Pb)の流量変化曲線Lが「L1」であり、圧力がPb(>Pc)の流量変化曲線Lが「L2」であり、圧力がPcの流量変化曲線Lが「L3」である。本例の場合、「Pa」~「Pc」のいずれにおいても、応差が小さく抑えられていることが分かる。よって、流体の圧力が変化しても、応差を小さくできることが分かる。
【0066】
(実施形態の効果)
上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)比例弁1は、コイル8の起磁力と弾性部20の弾性力とに基づき動いて弁部2を開閉させるプランジャ10に作用する圧力と、弁部2に作用する圧力と、が同圧に設定されたバランス型である。比例弁制御装置57は、バランス型の比例弁1においてコイル8を制御することにより、弁部2の弁開度を設定する。比例弁制御装置57は、コイル8にパルス電圧Vplを印加してプランジャ10を駆動する駆動部58と、弁部2の弁開度を制御する制御部59と、を備える。制御部59は、弁開度の指令値Vinに応じた振幅Axを有するパルス電圧Vplを駆動部58からコイル8に印加し、パルス電圧Vplに応じた電流をコイル8に流して、弁部2の弁開度を制御する。
【0067】
本構成によれば、弁開度に応じた振幅Axを有するパルス電圧Vplをコイル8に印加して弁28を開閉させるので、弁開度に応じた微振動をプランジャ10に発生させることが可能となる。これにより、プランジャ10の移動時の摺動抵抗の影響を抑制することが可能となる。よって、流量制御の精度を向上することができる。
【0068】
(2)パルス電圧Vplは、振幅Axに関係なく一定の周期を有する。この構成によれば、一定の周期でパルス電圧Vplを印加すればよいため、簡素な制御で済む。
(3)制御部59は、同じ電流であっても弁開度を大きくするときと弁開度を小さくするときとで弁開度が異なってしまう現象に対応するパルス電圧Vplを駆動部58に出力させる。この構成によれば、同一電流値であっても開弁時と閉弁時とで弁開度に差が生じる現象、いわゆるヒステリシスの現象を、抑制することができる。
【0069】
(4)振幅Axは、弁部2の全閉付近及び全開付近では小さく設定され、弁開度の中間付近では大きく設定されている。この構成によれば、プランジャ10が弁開度の中間付近に位置する場合に摺動抵抗が大きくなってしまう現象に好適に対処できる。
【0070】
(5)駆動部58は、一定電圧を出力するレギュレータ60と、レギュレータ60の出力を調整するための分圧回路61と、を備える。分圧回路61は、一定の抵抗値を有する定抵抗65と、制御部59からの制御信号Vsによって抵抗値を可変可能な可変抵抗66と、を備える。制御部59は、指令値Vinに基づいて可変抵抗66の抵抗値を切り替えることにより、振幅Axを制御する。この構成によれば、駆動部58の構成を、レギュレータ60及び分圧回路61を用いた簡易な構成とすることができる。また、分圧回路61が有する可変抵抗66の抵抗値を切り替えるという簡易な制御により、パルス電圧Vplの振幅Axを変化させることができる。
【0071】
(6)可変抵抗66は、デジタル信号の制御信号Vsにより抵抗値を可変可能なデジタルポテンショメータである。この構成によれば、制御部59から出力されるデジタル信号によって、可変抵抗66の抵抗値を簡易に調整することができる。
【0072】
(7)制御部59は、振幅AxのボトムBt及びピークPkの一方を固定値として、これらの他方を可変の対象とする処理により、振幅Axを変化させる。この構成によれば、パルス電圧Vplの振幅Axを簡易に設定できる。
【0073】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0074】
・
図11に示すように、制御部59は、振幅AxのボトムBt及びピークPkの両方を可変の対象とする処理により、振幅Axを変化させてもよい。この構成によれば、パルス電圧Vplの振幅Axの決め方を多様化することが可能となるので、最適な振幅Axを設定するのに有利である。
【0075】
・駆動部58は、レギュレータ60及び分圧回路61で構成されることに限定されない。例えば、駆動部58は、制御信号Vsに基づいて出力電圧が変化するICなどで構成されてもよい。
【0076】
・可変抵抗66は、デジタルポテンショメータに限らず、機械式の可変抵抗器でもよい。
・パルス電圧Vplは、周期が一定の信号に限らず、周期が変化する信号でもよい。
【0077】
・弁28は、ポペット弁に限定されず、例えば、スプール弁としてもよい。
・比例弁1は、例えば、供給ポート26及び出力ポート27を有する2ポートタイプに限定されず、これらの他に排気ポートも有する3ポートタイプでもよい。
【0078】
・比例弁1は、例えば、FA(Factory Automation)機器、医療機器に適用可能である。また、比例弁1は、食品工業に用いる流体制御装置や、薬品を梱包する加熱装置や、半導体製造に関するガス制御装置に利用されてもよい。
【0079】
・制御部59は、[1]コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサによって構成されてもよいし、[2]そのようなプロセッサと、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路との組み合わせによって構成されてもよい。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード、又は指令を格納している。メモリ(コンピュータ可読媒体)は、汎用、又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。或いは、上記プロセッサを含むコンピュータに代えて、各種処理の全てを実行する1つ以上の専用のハードウェア回路によって構成された処理回路が用いられてもよい。
【0080】
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0081】
1…比例弁、2…弁部、8…コイル、10…プランジャ、20…弾性部、57…比例弁制御装置、58…駆動部、59…制御部、60…レギュレータ、61…分圧回路、65…定抵抗、66…可変抵抗、Vpl…パルス電圧、Vin…指令値、Ax…振幅、Vs…制御信号、Bt…ボトム、Pk…ピーク。