(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132437
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】銅-セラミックス回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240920BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20240920BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240920BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20240920BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L23/12 D
H01L23/12 C
H05K1/03 610E
H05K1/03 610D
H05K3/06 A
H05K1/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043190
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】菅 峻史
(72)【発明者】
【氏名】結城 整哉
【テーマコード(参考)】
5E338
5E339
【Fターム(参考)】
5E338AA01
5E338AA02
5E338AA18
5E338CC08
5E338EE23
5E338EE60
5E339AB06
5E339AD01
5E339AD03
5E339BC02
5E339BD06
5E339BD11
5E339BE13
5E339CC01
5E339CD01
5E339CE12
5E339CE16
5E339CE18
5E339CF16
5E339CF17
5E339GG02
5E339GG10
(57)【要約】
【課題】従来より高い寸法精度(低い寸法ばらつき)に対応することができる、安価な銅-セラミックス回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板を用意し、セラミックス基板の一方の面と他方の面に、それぞれろう材を介して回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板の他方の面を接合した後、回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板のそれぞれの一方の面にそれぞれ回路パターン形状と放熱板パターン形状のエッチングレジストを形成して、それぞれ回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板の一部をエッチングすることにより、回路パターン形状の回路パターン銅板114と放熱板パターン形状の放熱板パターン銅板116がろう材118を介してセラミックス基板12に接合された銅-セラミックス回路基板を製造する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の回路パターン用銅板を用意し、この回路パターン用銅板の他方の面とセラミックス基板の一方の面とをろう材を介して接合した後、前記回路パターン用銅板の一方の面に回路パターン形状のエッチングレジストを形成して前記回路パターン用銅板の一部をエッチングして、回路パターン形状の回路パターン銅板を形成することを特徴とする、銅-セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記回路パターン用銅板の厚さが0.1~1.0mmであることを特徴とする、請求項1に記載の銅-セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記回路パターン用銅板が、銅板の一方の面をスキンパス圧延加工または化学研磨処理により表面粗さを小さくすることによって得られることを特徴とする、請求項1に記載の銅-セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記回路パターン用銅板の一方の面の算術平均粗さRaが0.07μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の銅-セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記回路パターン形状のエッチングレジストが、前記回路パターン用銅板の一方の面にエッチングレジストインクを印刷した後に硬化させることによって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の銅-セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記セラミックス基板が、窒化アルミニウム、窒化珪素またはアルミナからなることを特徴とする、請求項1に記載の銅-セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記ろう材が、銀および銅を含み、活性金属としてTiまたはZrを含むことを特徴とする、請求項1に記載の銅-セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記回路パターン用銅板の他方の面と前記セラミックス基板の一方の面とをろう材を介して接合する際に、前記セラミックス基板の他方の面にろう材を介して放熱板パターン用銅板を接合し、この放熱板パターン用銅板の表面に放熱板パターン形状のエッチングレジストを形成して前記放熱板パターン用銅板の一部をエッチングして、放熱板パターン形状の放熱板パターン銅板を形成することを特徴とする、請求項1に記載の銅-セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項9】
一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の回路パターン銅板の他方の面がセラミックス基板の一方の面にろう材を介して接合されていることを特徴とする、銅-セラミックス回路基板。
【請求項10】
一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の放熱板パターン銅板の他方の面がセラミックス基板の他方の面にろう材を介して接合されていることを特徴とする、請求項9に記載の銅-セラミックス回路基板。
【請求項11】
前記回路パターン銅板の厚さが0.1~1.0mmであることを特徴とする、請求項9に記載の銅-セラミックス回路基板。
【請求項12】
前記回路パターン銅板の一方の面の算術平均粗さRaが0.07μm以下であることを特徴とする、請求項9に記載の銅-セラミックス回路基板。
【請求項13】
前記セラミックス基板が、窒化アルミニウム、窒化珪素またはアルミナからなることを特徴とする、請求項9に記載の銅-セラミックス回路基板。
【請求項14】
前記ろう材が、銀および銅を含み、活性金属としてTiまたはZrを含むことを特徴とする、請求項9に記載の銅-セラミックス回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅-セラミックス回路基板およびその製造方法に関し、特に、ろう材によりセラミックス基板に回路パターン銅板が接合された銅-セラミックス回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、電車、工作機械などの大電力を制御するために、パワーモジュールが使用されている。このようなパワーモジュール用の絶縁基板として、セラミックス基板の一方の面に所定の回路パターンを有するCuやAlなどからなる金属回路板を接合した金属-セラミックス回路基板が使用されている。このような金属-セラミックス回路基板では、金属回路板上にSi半導体のようなパワー半導体が搭載され、セラミックス基板の他方の面には、通常、金属放熱板が接合されている。
【0003】
近年、パワー半導体として、従来のSi半導体に代えて、SiC半導体やGaN半導体などのワイドバンドギャップ半導体が採用され始めている。このようなワイドバンドギャップ半導体は、オン抵抗が低いため、従来のSi半導体のチップと比べてより小型のチップでもSi半導体と同等の電力を制御することが可能になる。そのため、パワーモジュール用の金属-セラミックス回路基板の配線パターンのスペース(ラインアンドスペース(L/S))を従来よりも微細化することが求められている。
【0004】
また、金属-セラミックス回路基板の製造方法として、セラミックス基板の少なくとも一方の面にろう材を介して金属板を接合した後、金属板を所定形状にエッチングし、次いで、エッチングによって露出したろう材などをキレート試薬および過酸化水素水を含有する薬液またはキレート試薬、過酸化水素水およびアルカリを含有する薬液で除去することによって、セラミックス回路基板を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、絶縁体の少なくとも一方の面に金属層を形成して金属-絶縁体複合部材を得た後に、金属層の少なくとも一部をミリング加工することによりパターンを形成することによって、回路基板を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、セラミックス基板の一方の面の略全面に、活性金属含有ろう材を塗布し、この活性金属含有ろう材の上に金属板を配置して、セラミックス基板に金属板を接合した後、金属板の略全面にレジストを形成し、このレジストにレーザー照射することによりレジストの所定の部分を除去して回路パターン形成用レジストを形成し、金属板の不要な部分をエッチングした後、回路パターン形成用レジストを除去して複数の回路パターンを形成するとともに、活性金属含有ろう材の不要な部分を除去し、その後、セラミックス基板の一方の面の隣接する回路パターンの間にスクライブラインを形成し、このスクライブラインに沿ってセラミックス基板を分割することにより、複数の金属-セラミックス接合回路基板を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-60111号公報(段落番号0006)
【特許文献2】特開2004-296619号公報(段落番号0008)
【特許文献3】特開2019-67854号公報(段落番号0012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1および2の方法では、近年のパワーモジュール用の金属-セラミックス回路基板に求められている配線パターンのスペース(ラインアンドスペース(L/S))の微細化に対応するために、より高い寸法精度(低い寸法ばらつき)に対応することができなかった。また、特許文献2および3の方法では、製造工程が多く、生産性やコスト面で十分ではなかった。
【0009】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、従来より高い寸法精度(低い寸法ばらつき)に対応することができる、安価な銅-セラミックス回路基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の回路パターン用銅板を用意し、この回路パターン用銅板の他方の面とセラミックス基板の一方の面とをろう材を介して接合した後、前記回路パターン用銅板の一方の面に回路パターン形状のエッチングレジストを形成して前記回路パターン用銅板の一部をエッチングして、回路パターン形状の回路パターン銅板を形成することにより、従来より高い寸法精度(低い寸法ばらつき)に対応することができる、安価な銅-セラミックス回路基板を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明による銅-セラミックス回路基板の製造方法は、一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の回路パターン用銅板を用意し、この回路パターン用銅板の他方の面とセラミックス基板の一方の面とをろう材を介して接合した後、前記回路パターン用銅板の一方の面に回路パターン形状のエッチングレジストを形成して前記回路パターン用銅板の一部をエッチングして、回路パターン形状の回路パターン銅板を形成することを特徴とする。
【0012】
この銅-セラミックス回路基板の製造方法において、回路パターン用銅板の厚さが0.1~1.0mmであるのが好ましく、回路パターン用銅板が、銅板の一方の面をスキンパス圧延加工または化学研磨処理により表面粗さを小さくすることによって得られるのが好ましい。また、回路パターン用銅板の一方の面の算術平均粗さRaが0.07μm以下であるのが好ましく、回路パターン形状のエッチングレジストが、回路パターン用銅板の一方の面にエッチングレジストインクを印刷した後に硬化させることによって形成されるのが好ましい。また、セラミックス基板が、窒化アルミニウム、窒化珪素またはアルミナからなるのが好ましく、ろう材が、銀および銅を含み、活性金属としてTiまたはZrを含むのが好ましい。また、回路パターン用銅板の他方の面とセラミックス基板の一方の面とをろう材を介して接合する際に、セラミックス基板の他方の面にろう材を介して放熱板パターン用銅板を接合し、この放熱板パターン用銅板の表面に放熱板パターン形状のエッチングレジストを形成して放熱板パターン用銅板の一部をエッチングして、放熱板パターン形状の放熱板パターン銅板を形成するのが好ましい。
【0013】
本発明による銅-セラミックス回路基板は、一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の回路パターン銅板の他方の面がセラミックス基板の一方の面にろう材を介して接合されていることを特徴とする。
【0014】
この銅-セラミックス回路基板において、一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の放熱板パターン銅板の他方の面がセラミックス基板の他方の面にろう材を介して接合されているのが好ましい。また、回路パターン銅板の厚さが0.1~1.0mmであるのが好ましく、回路パターン銅板の一方の面の算術平均粗さRaが0.07μm以下であるのが好ましい。また、セラミックス基板が、窒化アルミニウム、窒化珪素またはアルミナからなるのが好ましく、ろう材が、銀および銅を含み、活性金属としてTiまたはZrを含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来より高い寸法精度(低い寸法ばらつき)に対応することができる、安価な銅-セラミックス回路基板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による銅-セラミックス回路基板の実施の形態の製造工程において、ろう材を介して銅板をセラミックス基板に接合した状態(銅-セラミックス接合基板)を示す平面図である。
【
図2】
図1の銅-セラミックス接合基板のII-II千断面図である。
【
図3】本発明による銅-セラミックス回路基板の実施の形態の製造工程において、銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上に回路パターン形状のエッチングレジストを形成した状態を示す平面図である。
【
図4】本発明による銅-セラミックス回路基板の実施の形態の製造工程において、銅-セラミックス接合基板の放熱板パターン用銅板上に放熱板パターン形状のエッチングレジストを形成した状態を示す平面図である。
【
図5】本発明による銅-セラミックス回路基板の実施の形態により製造される銅-セラミックス回路基板の平面図である。
【
図6】
図5の銅-セラミックス接合基板のVI-VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明による銅-セラミックス回路基板およびその製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明による銅-セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態では、
図1および
図2に示すように、それぞれ一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16を用意し、これらの回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16のぞれぞれの他方の面をセラミックス基板12の各々の面にろう材18を介して接合することにより、銅-セラミックス接合基板10を作製する。
【0019】
次に、
図3に示すように、回路パターン用銅板14の一方の面に回路パターン形状のエッチングレジスト20を形成するとともに、
図4に示すように、放熱板パターン用銅板16の一方の面に放熱板パターン形状のエッチングレジスト22を形成する。
【0020】
次に、
図5および
図6に示すように、回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16の一部をエッチングして、回路パターン形状の回路パターン銅板114および放熱板パターン形状の放熱板パターン銅板116を形成することにより、本発明による銅-セラミックス回路基板の実施の形態として、ろう材118を介して回路パターン銅板114および放熱板パターン銅板116がセラミックス基板12に接合した銅-セラミックス回路基板100を作製する。
【0021】
セラミックス基板12は、その基板上の回路パターン間や基板の表裏間の絶縁性を維持する材料からなり、セラミックス基板12として、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス基板、窒化珪素を主成分とするセラミックス基板などの非酸化物系セラミックス基板、アルミナなどを主成分とする酸化物系セラミックス基板を使用することができる。セラミックス基板12の大きさは、長さ5~200mm、幅5~200mm、厚さ0.2~3.0mmの大きさであるのが好ましく、さらに、長さ10~100mm、幅10~100mm、厚さ0.25~2.0mmの大きさであるのが好ましい。
【0022】
回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16は、無酸素銅板(C1020)などからなる圧延銅板であるのが好ましく、それらの一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下であるのが好ましく、0.07μm以下であるのがさらに好ましい。また、回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16の他方の面の算術平均粗さRaは、0.1μm以下でもよく、0.07μm以下でもよい。なお、パワーモジュール用の銅-セラミックス接合基板10に使用される回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16の厚さは、0.1~1.0mm程度であるが、このような圧延銅板の表面(板面)の算術平均粗さRaは0.1μmを超えており、通常は0.15~0.3μm程度である。すなわち、通常の圧延工程でこのような圧延銅板の表面(板面)の算術平均粗さRaを0.1μmにすることはできないので、このような圧延銅板を、それぞれ一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16として使用する場合には、回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16のそれぞれの一方の面の表面粗さを、スキンパス圧延加工などの調質圧延加工や、化学研磨処理などにより小さくして平滑な表面にする必要がある。このように、それぞれ一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16を使用し、回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16のぞれぞれの他方の面をセラミックス基板12の各々の面にろう材18を介して接合し、回路パターン用銅板14の一方の面に回路パターン形状のエッチングレジスト20を形成するとともに、放熱板パターン用銅板16の一方の面に放熱板パターン形状のエッチングレジスト22を形成した後、回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16の一部をエッチングして、回路パターン形状の回路パターン銅板114および放熱板パターン形状の放熱板パターン銅板116を形成すれば、非常に高い寸法精度(著しく低い寸法ばらつき)の回路パターン銅板114および放熱板パターン銅板116を得ることができる。なお、回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16のそれぞれ一方の面の算術平均粗さRaは、製造コストの面から、0.01μm以上であるのが好ましい。
【0023】
セラミックス基板12と回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16とを接合する接合材としてのろう材18は、主成分としてAgとCuを含有し、活性金属としてTiまたはZrを含有する、所謂Ag-Cu-Ti系またはAg-Cu-Zr系の活性金属含有ろう材であるのが好ましい。Ag-Cu-Ti系またはAg-Cu-Zr系の活性金属含有ろう材を使用する場合、ろう材中のAgの含有量(ろう材に含まれる金属成分の総質量に対するAgの質量の割合)は、特に限定されないが、接合強度などの信頼性を向上させる観点から、30~95質量%であるのが好ましく、50~90質量%であるのがさらに好ましく、65~90質量%であるのが最も好ましい。また、ろう材中の活性金属成分の含有量(ろう材に含まれる金属成分の総質量に対する活性金属成分の質量の割合)は、1.0~7.0質量%であるのが好ましく、1.5~6.5質量%であるのがさらに好ましい。このようなろう材を使用することにより、セラミックス基板12と回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16との接合強度を向上させることができる。なお、活性金属含有ろう材として、Ag-Cu系の活性金属含有ろう材を使用する場合には、Agと活性金属成分以外の(残部の)金属成分の含有量がCuの含有量になる。また、ろう材18としてペースト状や箔状のろう材を使用することができるが、製造コストや作業性の観点から、ペースト状のろう材を使用するのが好ましい。ペースト状のろう材を使用する場合は、例えば、スクリーン印刷法などにより、セラミックス基板12上に塗布した後、大気中または不活性ガス雰囲気中において200℃以下で乾燥させることにより、セラミックス基板12上にろう材18を形成することができる。ろう材18の厚さは、特に限定されないが、銅-セラミックス接合基板10の耐熱衝撃性および接合強度を確保する観点から、3~50μmであるのが好ましく、5~20μmであるのがさらに好ましい
【0024】
回路パターン形状のエッチングレジスト20および放熱板パターン形状のエッチングレジスト22は、例えば、スクリーン印刷法、ラミネート法、フォトマスク法などの公知の方法により印刷して硬化させることにより形成するのが好ましいが、生産性の観点から、エッチングレジストインクをスクリーン印刷により印刷して硬化させることにより形成するのが好ましい。エッチングレジストインクとしては、紫外線硬化アルカリ剥離型のエッチングレジストインクを使用するのが好ましい。
【0025】
回路パターン用銅板14および放熱板パターン用銅板16の一部(不要な部分)(エッチングレジストが形成されていない回路パターン銅板114および放熱板パターン銅板116の部分)をエッチングは、公知のエッチング液、例えば、塩化第二銅、塩化鉄または過酸化水素水を含有するエッチング液を除去し、次いで、フッ化水素酸やキレート剤などを使用して、(回路パターン銅板114および放熱板パターン銅板116の周囲のセラミックス基板12の表面に残存する)不要なろう材を除去することにより、所望の回路パターン銅板114および放熱板パターン銅板116を形成して、銅-セラミックス回路基板100を製造する。なお、このようにして製造された銅-セラミックス回路基板100の回路パターン銅板114や放熱板パターン銅板116の表面を、無電解Ni-Pめっきや電気Niめっきなどによりめっきしてもよい。
【0026】
なお、回路パターン形状のエッチングレジスト20を、例えばスクリーン印刷法により形成する場合に、回路パターン用銅板14の表面の凹凸が大きいと、エッチングレジストインクの広がりの差が場所により大きくなり、エッチングレジスト20と回路パターン銅板114の寸法ばらつきが増大すると考えられる。
【0027】
上記の本発明による銅-セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態に製造された本発明による銅-セラミックス回路基板の実施の形態では、一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の回路パターン銅板の他方の面がセラミックス基板の一方の面にろう材を介して接合されているとともに、好ましくは、一方の面の算術平均粗さRaが0.1μm以下の放熱板パターン銅板の他方の面がセラミックス基板の他方の面にろう材を介して接合されている。
【0028】
この銅-セラミックス回路基板の実施の形態において、回路パターン銅板114の厚さが0.1~1.0mmであるのが好ましく、回路パターン銅板114の一方の面の算術平均粗さRaが0.07μm以下であるのが好ましい。また、セラミックス基板12が、窒化アルミニウム、窒化珪素またはアルミナからなるのが好ましく、ろう材18が、銀および銅を含み、活性金属としてTiまたはZrを含むのが好ましい。
【実施例0029】
以下、本発明による銅-セラミックス回路基板およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0030】
[実施例1]
セラミックス基板として、68mm×68mm×0.38mmの大きさの窒化アルミニウム(AlN)基板)を用意した。このAlN基板には、34mm×34mm×0.38mmの大きさの4つの基板に分割することができるように、分割ライン(分割溝)が設けられていた。
【0031】
また、回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板として、70mm×70mm×0.15mmの大きさの無酸素銅板(C1020-1/2H)を用意し、(圧延ロールの表面粗さと圧延時の負荷を調整して)スキンパス圧延加工を行うことによって、銅板の表面粗さを小さくした。この銅板の一方の面の表面粗さをJIS B0601(2001)に基づいて、レーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製のVK-X1000)により、カットオフ値λs=2.5μm、λc=0.8mm、(水平)測定距離=200μmとして測定したところ、銅板の一方の面の算術平均粗さRaは0.028μmであった。
また、セラミックス基板と銅板を接合するためのろう材として、活性金属としてTiを含有するAg-Cu-Ti系のろう材ペースト(質量比Ag:Cu:Ti=88:10:2)を用意した。
【0032】
次に、上記のセラミックス基板の両面の略全面に上記のろう材をスクリーン印刷により塗布し、大気中でろう材を乾燥して、セラミックス基板の両面にろう材を形成した。
【0033】
次に、上記のセラミックス基板の両面のろう材上に、上記の回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板をそれぞれ銅板の他方の面がろう材に当接するように配置して積層体とし、この積層体を830℃の真空炉中で加熱した後、冷却して、セラミックス基板の両面にろう材を介してそれぞれ回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板が接合した銅-セラミックス接合基板を作製した。
【0034】
次に、上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板の表面に、それぞれ回路パターン形状および放熱板パターン形状の紫外線硬化型アルカリ剥離エッチングレジストインクをスクリーン印刷により塗布し、紫外線により硬化して、回路パターン用銅板上および放熱板パターン用銅板上にエッチングレジストを形成した。
【0035】
次に、回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板の不要部分(エッチングレジストで被覆されていない部分)を、塩化銅を含むエッチング液によりエッチング除去した後、水酸化ナトリウム水溶液によりエッチングレジストを剥離除去して、回路パターン銅板および放熱板パターン銅板を形成した。
【0036】
次に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むエッチング液により、セラミックス基板上の回路パターン銅板および放熱板パターン銅板の周囲に残存する不要なろう材をエッチング除去した後、セラミックス基板に設けられた分割ラインに沿って4つに分割して、セラミックス基板の両面にそれぞれ回路パターン銅板および放熱板パターン銅板が接合した4つの銅-セラミックス回路基板を作製した。
【0037】
なお、上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上および放熱板パターン用銅板上にエッチングレジストを形成した後、回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板の不要部分をエッチング除去する前に、回路パターン用銅板上のエッチングレジストの密着性を評価するために、上記の銅-セラミックス接合基板を10個用意し、それぞれの銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの表面に、カッターにより2mm角の25個の升目を形成した後、粘着テープ(ニチバン製のセロハンテープ)を貼り付けて、JIS H8504に準じてクロスカットテープピーリングテストを行い、エッチングレジストの剥離の有無を目視によって評価したところ、10個の銅-セラミックス接合基板のいずれも、エッチングレジストの25個の升目の全てが剥離しておらず、エッチングレジストの密着性が非常に良好であった。
【0038】
また、上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上および放熱板パターン用銅板上にエッチングレジストを形成した後、回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板の不要部分をエッチング除去する前に、回路パターン用銅板上のエッチングレジストの寸法ばらつきを評価するために、上記の銅-セラミックス接合基板を10個用意し、隣接するエッチングレジストの間(回路パターン間)の寸法を高精度画像寸法測定器(株式会社キーエンス製の高精度画像寸法測定器LM-1000)を用いて測定したところ、隣接するエッチングレジストの間(回路パターン間)の寸法(狙い値は0.5mm)の平均は0.533mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.007mm、標準偏差は0.003mmであり、エッチングレジストの寸法ばらつきは非常に小さかった。
【0039】
また、作製した銅-セラミックス回路基板の回路パターン銅板上の回路パターンの寸法ばらつきを評価するために、上記の銅-セラミックス回路基板を10個用意し、隣接する回路パターン間の寸法を高精度画像寸法測定器(株式会社キーエンス製の高精度画像寸法測定器LM-1000)を用いて測定したところ、隣接する回路パターンの間の寸法(狙い値は0.8mm)の平均は0.828mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.026mm、標準偏差は0.009mmであり、回路パターンの寸法ばらつきは非常に小さかった。
【0040】
[実施例2]
セラミックス基板として、34mm×34mm×0.64mmの大きさの4つの基板に分割することができるように分割ライン(分割溝)が設けられた68mm×68mm×0.64mmの大きさの窒化アルミニウム(AlN)基板を使用し、回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板として、70mm×70mm×0.25mmの大きさの無酸素銅板(C1020-1/2H)を使用し、銅板の一方の面の算術平均粗さRaが0.038μmになるように、スキンパス圧延加工を行うことによって銅板の表面粗さを小さくした以外は、実施例1と同様の方法により、銅-セラミックス接合基板を作製し、銅-セラミックス回路基板を作製した。
【0041】
上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの密着性を実施例1と同様の方法により評価したところ、10個の銅-セラミックス接合基板のいずれも、エッチングレジストの25個の升目の全てが剥離しておらず、エッチングレジストの密着性が非常に良好であった。
【0042】
また、上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの寸法ばらつきを実施例1と同様の方法により評価したところ、隣接するエッチングレジストの間(回路パターン間)の寸法(狙い値は0.5mm)の平均は0.532mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.008mm、標準偏差は0.004mmであり、エッチングレジストの寸法ばらつきは非常に小さかった。
【0043】
また、上記の銅-セラミックス回路基板の回路パターン銅板上の回路パターンの寸法ばらつきを実施例1と同様の方法により評価したところ、隣接する回路パターンの間の寸法(狙い値は0.8mm)の平均は0.829mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.036mm、標準偏差は0.011mmであり、回路パターンの寸法ばらつきは非常に小さかった。
【0044】
[実施例3]
セラミックス基板として、34mm×34mm×1.0mmの大きさの4つの基板に分割することができるように分割ライン(分割溝)が設けられた68mm×68mm×1.0mmの大きさの窒化アルミニウム(AlN)基板を使用し、回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板として、70mm×70mm×0.40mmの大きさの無酸素銅板(C1020-1/2H)を使用し、銅板の一方の面の算術平均粗さRaが0.047μmになるように、スキンパス圧延加工を行うことによって銅板の表面粗さを小さくした以外は、実施例1と同様の方法により、銅-セラミックス接合基板を作製し、銅-セラミックス回路基板を作製した。
【0045】
上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの密着性を実施例1と同様の方法により評価したところ、10個の銅-セラミックス接合基板のいずれも、エッチングレジストの25個の升目の全てが剥離しておらず、エッチングレジストの密着性が非常に良好であった。
【0046】
また、上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの寸法ばらつきを実施例1と同様の方法により評価したところ、隣接するエッチングレジストの間(回路パターン間)の寸法(狙い値は0.5mm)の平均は0.528mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.011mm、標準偏差は0.004mmであり、エッチングレジストの寸法ばらつきは非常に小さかった。
【0047】
また、上記の銅-セラミックス回路基板の回路パターン銅板上の回路パターンの寸法ばらつきを実施例1と同様の方法により評価したところ、隣接する回路パターンの間の寸法(狙い値は0.8mm)の平均は0.830mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.042mm、標準偏差は0.013mmであり、回路パターンの寸法ばらつきは非常に小さかった。
【0048】
[実施例4]
セラミックス基板として、34mm×34mm×0.32mmの大きさの4つの基板に分割することができるように分割ライン(分割溝)が設けられた68mm×68mm×0.32mmの大きさの窒化珪素基板を使用し、回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板として、70mm×70mm×0.80mmの大きさの無酸素銅板(C1020-1/2H)を使用し、銅板の一方の面の算術平均粗さRaが0.092μmになるように、スキンパス圧延加工を行うことによって銅板の表面粗さを小さくした以外は、実施例1と同様の方法により、銅-セラミックス接合基板を作製し、銅-セラミックス回路基板を作製した。
【0049】
上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの密着性を実施例1と同様の方法により評価したところ、10個の銅-セラミックス接合基板のいずれも、エッチングレジストの25個の升目の全てが剥離しておらず、エッチングレジストの密着性が非常に良好であった。
【0050】
また、上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの寸法ばらつきを実施例1と同様の方法により評価したところ、隣接するエッチングレジストの間(回路パターン間)の寸法(狙い値は0.5mm)の平均は0.535mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.013mm、標準偏差は0.005mmであり、エッチングレジストの寸法ばらつきは非常に小さかった。
【0051】
また、上記の銅-セラミックス回路基板の回路パターン銅板上の回路パターンの寸法ばらつきを実施例1と同様の方法により評価したところ、隣接する回路パターンの間の寸法(狙い値は0.8mm)の平均は0.836mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.052mm、標準偏差は0.014mmであり、回路パターンの寸法ばらつきは非常に小さかった。
【0052】
[比較例1]
回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板として、70mm×70mm×0.25mmの大きさで表面の算術平均粗さRaが0.146μmの無酸素銅板(C1020-1/2H)を使用し、銅板の表面のスキンパス圧延加工を行わなかった以外は、実施例2と同様の方法により、銅-セラミックス接合基板を作製し、銅-セラミックス回路基板を作製した。
【0053】
上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの密着性を実施例1と同様の方法により評価したところ、10個の銅-セラミックス接合基板のいずれも、エッチングレジストの25個の升目の全てが剥離しておらず、エッチングレジストの密着性が非常に良好であった。
【0054】
また、上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの寸法ばらつきを実施例1と同様の方法により評価したところ、隣接するエッチングレジストの間(回路パターン間)の寸法(狙い値は0.5mm)の平均は0.552mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.060mm、標準偏差は0.014mmであり、エッチングレジストの寸法ばらつきは大きかった。
【0055】
また、上記の銅-セラミックス回路基板の回路パターン銅板上の回路パターンの寸法ばらつきを実施例1と同様の方法により評価したところ、隣接する回路パターンの間の寸法(狙い値は0.8mm)の平均は0.850mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.103mm、標準偏差は0.020mmであり、回路パターンの寸法ばらつきは非常に大きかった。
【0056】
[比較例2]
回路パターン用銅板および放熱板パターン用銅板として、70mm×70mm×0.25mmの大きさで表面の算術平均粗さRaが0.246μmの無酸素銅板(C1020-1/2H)を使用し、銅板の表面のスキンパス圧延加工を行わなかった以外は、実施例2と同様の方法により、銅-セラミックス接合基板を作製し、銅-セラミックス回路基板を作製した。
【0057】
上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの密着性を実施例1と同様の方法により評価したところ、10個の銅-セラミックス接合基板のいずれも、エッチングレジストの25個の升目の全てが剥離しておらず、エッチングレジストの密着性が非常に良好であった。
【0058】
また、上記の銅-セラミックス接合基板の回路パターン用銅板上のエッチングレジストの寸法ばらつきを実施例1と同様の方法により評価したところ、隣接するエッチングレジストの間(回路パターン間)の寸法(狙い値は0.5mm)の平均は0.550mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.092mm、標準偏差は0.021mmであり、エッチングレジストの寸法ばらつきは大きかった。
【0059】
また、上記の銅-セラミックス回路基板の回路パターン銅板上の回路パターンの寸法ばらつきを実施例1と同様の方法により評価したところ、隣接する回路パターンの間の寸法(狙い値は0.8mm)の平均は0.855mm、最大値と最小値の差(ばらつき範囲)は0.180mm、標準偏差は0.030mmであり、回路パターンの寸法ばらつきは非常に大きかった。