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特開2024-132444積層成形品の製造方法、装飾フィルム、および装飾フィルム積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132444
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】積層成形品の製造方法、装飾フィルム、および装飾フィルム積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/14 20060101AFI20240920BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240920BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20240920BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20240920BHJP
   B29C 51/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B32B37/14 Z
B32B27/00 E
B32B27/18 D
B29C51/10
B29C51/12
B29C51/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043204
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 丘雅
【テーマコード(参考)】
4F100
4F208
【Fターム(参考)】
4F100AK15
4F100AK25
4F100AK42
4F100AK51
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA13
4F100CA22
4F100CA22B
4F100CA22C
4F100CB00
4F100DD01
4F100DD01D
4F100EJ30C
4F100EJ37A
4F100EJ37B
4F100HB00
4F100HB00A
4F100JG03
4F100JG03A
4F100JG03B
4F100JL14
4F100JL14C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F208AB09
4F208AC03
4F208AD18
4F208AG03
4F208MA03
4F208MB01
4F208MC10
4F208MG04
4F208MH06
(57)【要約】
【課題】装飾フィルムに対し凹凸成形品に積層される側に微細な異物が付着し難く、加飾をともなう成形で装飾フィルムが延伸し薄肉化しても、外観が損なわれるのを防止できる、積層成形品の製造方法、装飾フィルム、および装飾フィルム積層体を提供する。
【解決手段】積層成形品の製造方法は、延伸可能なフィルム基材11を有する装飾フィルム10を、凹凸成形品1の表面に積層する方法であり、フィルム基材に対し凹凸成形品に積層される側に重ね合わされる層のうち、少なくとも一つに帯電防止剤を含ませておき、剥離可能な前記層として配置される剥離ライナー20と、装飾フィルムとを剥がす、または、互いに積層された装飾フィルム10A同士を剥がし、装飾フィルムを延伸させて、凹凸成形品の表面に積層する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸可能なフィルム基材を有する装飾フィルムを、凹凸成形品の表面に積層する積層成形品の製造方法であって、
前記フィルム基材に対し前記凹凸成形品に積層される側に重ね合わされる層のうち、少なくとも一つに帯電防止剤を含ませておき、
剥離可能な前記層として配置される剥離ライナーと、前記装飾フィルムとを剥がす、または、互いに積層された前記装飾フィルム同士を剥がし、
前記装飾フィルムを延伸させて、前記凹凸成形品の表面に積層する、積層成形品の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記フィルム基材に、帯電防止剤を含ませておく、請求項1に記載の積層成形品の製造方法。
【請求項3】
前記フィルム基材に対し、前記凹凸成形品に積層される側と反対側に、工程フィルムが配置されており、前記装飾フィルムの延伸前に、前記工程フィルムを剥がしておく、請求項1または請求項2に記載の積層成形品の製造方法。
【請求項4】
前記装飾フィルムと前記剥離ライナーとの剥離直後、または、積層された前記装飾フィルム同士の剥離直後、前記装飾フィルムにおいて前記凹凸成形品に積層される側の帯電電位の絶対値は、0.5kV以下である、請求項1または請求項2に記載の積層成形品の製造方法。
【請求項5】
延伸可能なフィルム基材、および前記フィルム基材に対し一方の面の側に重ね合わされる層を有するとともに、剥離可能な前記層として剥離ライナーを含んでおり、
前記層に帯電防止剤を含む、装飾フィルム。
【請求項6】
さらに、前記フィルム基材に帯電防止剤を含む、請求項5に記載の装飾フィルム。
【請求項7】
前記剥離ライナーが配置されている前記一方の面の側と反対側の面に、剥離可能な工程フィルムが配置されている、請求項5または請求項6に記載の装飾フィルム。
【請求項8】
前記剥離ライナーが剥離された状態において、前記一方の面の側の帯電電位の絶対値は、0.5kV以下である、請求項5または請求項6に記載の装飾フィルム。
【請求項9】
凹凸成形品の形状に合うよう延伸可能なフィルム基材を有する装飾フィルムが、複数積層されており、
前記装飾フィルムは、
前記フィルム基材に対し前記凹凸成形品に積層される側に重ね合わされる層のうち、少なくとも一つに帯電防止剤を含むとともに、
積層方向に隣り合う前記装飾フィルムと直接接し、当該直接接する装飾フィルムとの間のみで剥離可能に積層されている、または、
前記凹凸成形品に積層される側とは反対側の面に、剥離可能な工程フィルムが配置されており、積層方向に隣り合う前記装飾フィルムに配置された前記工程フィルムと剥離可能に直接接して積層されている、装飾フィルム積層体。
【請求項10】
前記装飾フィルムは、さらに前記フィルム基材に帯電防止剤を含む、請求項9に記載の装飾フィルム積層体。
【請求項11】
前記装飾フィルムに、前記工程フィルムが配置されている、請求項9または請求項10に記載の装飾フィルム積層体。
【請求項12】
前記装飾フィルムは、前記凹凸成形品に積層される側に重ね合わされる前記層として、接着剤層を介して剥離不能に積層された樹脂層を有する、請求項9または請求項10に記載の装飾フィルム積層体。
【請求項13】
前記装飾フィルム積層体から剥離された前記装飾フィルムにおいて、前記凹凸成形品に積層される側に生じる帯電電位の絶対値は、0.5kV以下である、請求項9または請求項10に記載の装飾フィルム積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層成形品の製造方法、装飾フィルム、および装飾フィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元形状からなる表面の加飾法として、例えば特許文献1に開示されているように凹凸成形品の表面に沿って装飾フィルムを接着する、真空圧空成形が知られている。
【0003】
真空圧空成形によれば、装飾フィルムが、例えば真空下で延伸しつつ凹凸成形品の表面に積層され、その表面に良好に追従するため、凹凸成形品の表面を綺麗に加飾できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-214559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が、真空圧空成形によって装飾フィルムを凹凸成形品に積層すると、装飾フィルムの表面に、微細な異物形状が浮き出し、外観不良が生ずることがあった。
【0006】
そこで、本発明者がその要因について検討したところ、装飾フィルムでは、使用前に剥離ライナーが剥がされたり、複数の装飾フィルムの積層体から個々の装飾フィルムが分離され、凹凸成形品に積層される側に剥離帯電が生じるのにともない、例えば微細な塵や埃等の異物が、装飾フィルムに対し凹凸成形品に積層される側に付着し、そのような微細な異物が装飾フィルムに付着したまま、真空圧空成形が実施されると、真空圧空成形による装飾フィルムの延伸および薄肉化をきっかけとして、装飾フィルムの表面に、微細な異物形状が浮き出てくることが明らかとなった。
【0007】
実際、本発明者が、装飾フィルムを延伸させることなく単に凹凸成形品に貼付して積層しただけでは、外観不良は生じなかったが、真空圧空成形によって装飾フィルムが延伸し薄肉化すると、微細な異物形状が浮き出し、外観不良が生じることがあった。また、同様の事は、真空圧空成形に限定されず、例えば、フィルムインサート成形、インモールド成形、プレス成形等、装飾フィルムを用いた加飾をともなう他の成形方法においても起こりうる。
【0008】
本発明は、そのような本発明者が見出した新たな課題を解決するためになされたものであり、装飾フィルムに対し凹凸成形品に積層される側に微細な異物が付着し難く、加飾をともなう成形で装飾フィルムが延伸し薄肉化しても、外観が損なわれるのを防止できる、積層成形品の製造方法、装飾フィルム、および装飾フィルム積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の積層成形品の製造方法は、以下の構成を有する。
【0010】
1.延伸可能なフィルム基材を有する装飾フィルムを、凹凸成形品の表面に積層する方法であり、前記フィルム基材に対し前記凹凸成形品に積層される側に重ね合わされる層のうち、少なくとも一つに帯電防止剤を含ませておき、剥離可能な前記層として配置される剥離ライナーと、前記装飾フィルムとを剥がす、または、互いに積層された前記装飾フィルム同士を剥がし、前記装飾フィルムを延伸させて、前記凹凸成形品の表面に積層する、積層成形品の製造方法。
【0011】
2.さらに、前記フィルム基材に、帯電防止剤を含ませておく、1.に記載の積層成形品の製造方法。
【0012】
3.前記フィルム基材に対し、前記凹凸成形品に積層される側と反対側に、工程フィルムが配置されており、前記装飾フィルムの延伸前に、前記工程フィルムを剥がしておく、1.または2.に記載の積層成形品の製造方法。
【0013】
4.前記装飾フィルムと前記剥離ライナーとの剥離直後、または、積層された前記装飾フィルム同士の剥離直後、前記装飾フィルムにおいて前記凹凸成形品に積層される側の帯電電位の絶対値は、0.5kV以下である、1.~3.のいずれかに記載の積層成形品の製造方法。
【0014】
5.延伸可能なフィルム基材、および前記フィルム基材に対し一方の面の側に重ね合わされる層を有するとともに、剥離可能な前記層として剥離ライナーを含んでおり、前記層に帯電防止剤を含む、装飾フィルム。
【0015】
6.さらに、前記フィルム基材に帯電防止剤を含む、5.に記載の装飾フィルム。
【0016】
7.前記剥離ライナーが配置されている前記一方の面の側と反対側の面に、剥離可能な工程フィルムが配置されている、5.または6.に記載の装飾フィルム。
【0017】
8.前記剥離ライナーが剥離された状態において、前記一方の面の側の帯電電位の絶対値は、0.5kV以下である、5.~7.のいずれかに記載の装飾フィルム。
【0018】
9.凹凸成形品の形状に合うよう延伸可能なフィルム基材を有する装飾フィルムが、複数積層されており、
前記装飾フィルムは、
前記フィルム基材に対し前記凹凸成形品に積層される側に重ね合わされる層のうち、少なくとも一つに帯電防止剤を含むとともに、
積層方向に隣り合う前記装飾フィルムと直接接し、当該直接接する装飾フィルムとの間のみで剥離可能に積層されている、または、
前記凹凸成形品に積層される側とは反対側の面に、剥離可能な工程フィルムが配置されており、積層方向に隣り合う前記装飾フィルムに配置された前記工程フィルムと剥離可能に直接接して積層されている、装飾フィルム積層体。
【0019】
10.前記装飾フィルムは、さらに前記フィルム基材に帯電防止剤を含む、9.に記載の装飾フィルム積層体。
【0020】
11.前記装飾フィルムに、前記工程フィルムが配置されている、9.または10.に記載の装飾フィルム積層体。
【0021】
12.前記装飾フィルムは、前記凹凸成形品に積層される側に重ね合わされる前記層として、接着剤層を介して剥離不能に積層された樹脂層を有する、9.~11.のいずれかに記載の装飾フィルム積層体。
【0022】
13.前記装飾フィルム積層体から剥離された前記装飾フィルムにおいて、前記凹凸成形品に積層される側に生じる帯電電位の絶対値は、0.5kV以下である、9.~12.のいずれかに記載の装飾フィルム積層体。
【0023】
上記目的を達成するための本発明の装飾フィルム積層体の一実施形態においては、凹凸成形品の形状に合うよう延伸可能なフィルム基材を有する装飾フィルムが、複数積層されている。前記装飾フィルムは、前記フィルム基材に対し前記凹凸成形品に積層される側に重ね合わされる層のうち、少なくとも一つに帯電防止剤を含むとともに、積層方向に隣り合う前記装飾フィルムと直接接し、当該直接接する装飾フィルムとの間のみで剥離可能に積層されている、または、前記凹凸成形品に積層される側と反対側の面に、剥離可能な工程フィルムが配置されており、積層方向に隣り合う前記装飾フィルムに配置された前記工程フィルムと剥離可能に直接接して積層されている。
【発明の効果】
【0024】
上記構成を有する発明では、装飾フィルムの凹凸成形品に積層される側で、帯電防止剤によって効果的に剥離帯電が抑制されるため、微細な異物が、装飾フィルムに対し凹凸成形品に積層される側に付着し難く、加飾をともなう成形で装飾フィルムが延伸し薄肉化しても、外観が損なわれるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態の装飾フィルムを示す側面図である。
図2】真空圧空成形装置を第1実施形態の装飾フィルムとともに示す概略図である。
図3】成形開始前の真空圧空成形装置内を示す概略図である。
図4】成形が開始された真空圧空成形装置内を示す概略図である。
図5】凹凸成形品への真空圧空成形による装飾フィルムの積層を示す概略図である。
図6】余分な装飾フィルムを切除して整形された積層成形品を示す側面図である。
図7】成形の失敗例を示す概略図である。
図8】第2実施形態の装飾フィルムを示す側面図である。
図9】装飾フィルム積層体の一例を示す側面図である。
図10】装飾フィルム積層体の他の例を示す側面図である。
図11】第2実施形態の装飾フィルムおよびその成形に用いられる成形装置示す概略図である。
図12】第2実施形態の装飾フィルムの成形を示す概略図である。
図13】余分な箇所を切除して整形された第2実施形態の装飾フィルムを示す側面図である。
図14】成形後の第2実施形態の装飾フィルムが配置された射出成形型を開いた状態で示す概略図である。
図15】成形後の第2実施形態の装飾フィルムが配置された射出成形型を閉じた状態で示す概略図である。
図16】成形後の第2実施形態の装飾フィルムが配置された射出成形型内への樹脂の射出を示す概略図である。
図17】射出成形型からの積層成形品の取り出しを示す概略図である。
図18】実施例1の装飾フィルムを示す側面図である。
図19】実施例2の装飾フィルムおよびその積層体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0027】
<<第1実施形態の装飾フィルム10>>
図1に示すように、第1実施形態の装飾フィルム10は、フィルム基材11と、接着剤層12とを積層方向にこの順序で有する。また、接着剤層12に、剥離ライナー20が剥離可能に配置されている。
【0028】
<フィルム基材11>
フィルム基材11は、延伸可能である。フィルム基材11の厚みは特に限定されないが、延伸前の状態で例えば10μm以上10000μm以下、延伸した状態で1μm以上1000μm以下である。
【0029】
フィルム基材11を形成する延伸性に優れる樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、およびポリウレタン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、フィルム基材としては、ウレタン樹脂またはウレタンアクリル樹脂であることがより好ましく、アクリルウレタン樹脂であることがさらにより好ましい。また、フィルム基材11は、成形品表面を加飾するための装飾性を有する。
【0030】
フィルム基材11に対しどのようにして装飾性を付与するかは、特に限定されず、例えば、フィルム基材11が着色剤を含有してもよい。着色剤としては、特に制限はなく従来公知の知見が適宜参照され、例えば、キナクリドン系、アンスラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、不溶性アゾ系、ナフトール系、フラバンスロン系、アンスラピリミジン系、キノフタロン系、ピランスロン系、ピラゾロン系、チオインジゴ系、アンスアンスロン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、インダンスロン系等の有機顔料;ニッケルジオキシンイエロー、銅アゾメチンイエロー等の金属錯体;酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物;硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩;カーボンブラック、アルミニウム材料、パール顔料、ガラス材料等の顔料などが挙げられる。
【0031】
また、フィルム基材11は、構成材料自体に装飾性を付与する形態に限定されず、フィルム基材11上に直接装飾層を設ける形態;フィルム基材上に支持基材を設け、当該支持基材の面に装飾層が形成されている等、他の形態であってもよい。
【0032】
後者の形態では、支持基材として、樹脂フィルムが好ましい。ここで、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂などの樹脂からなるフィルム、発泡フィルム、またはそれらの積層フィルム等を使用することができる。これらのうち、ポリ塩化ビニルからなるフィルムは、曲面追従性に優れる点から好ましい。支持基材が樹脂フィルムからなる場合、支持基材は不透明であっても、透明であってもよい。また、必要に応じて、支持基材に貫通孔が形成されていてもよい。
【0033】
支持基材表面に形成される装飾層は、支持基材が不透明な場合、支持基材の表面側に設けられるが、支持基材が透明な場合、支持基材のいずれの面(表面、裏面)に設けられてもまたは両面に設けられてもよい。
【0034】
装飾層は、特に制限されず、一色であってもあるいは二色以上の色分け模様を表示するものであってもよい。また、模様は、所定の柄であってもよいし、写真であってもよいし、文字であってもよいし、数字であってもよい。装飾層の形成方法は特に制限されず、例えば、印刷、印字、塗料の塗布、転写シートからの転写、蒸着、スパッタリング等の方法によって装飾層を形成することができる。支持基材には、装飾層を形成するための易接着コート、あるいはグロス調整用コート等のアンダーコート層が形成されていてもよいし、ハードコート、汚染防止コート、表面粗さおよび鏡面光沢度調整用コート等のトップコート層が形成されていてもよい。また、それら装飾層、アンダーコート層またはトップコート層は、支持基材の全面に形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。
【0035】
<接着剤層12>
接着剤層12は、接着剤を含む層である。接着剤層12に含まれる接着剤の具体的な構成については、特に制限はない。また、接着剤の選定の際には、被着体の材質を考慮するとよく、接着剤または粘着剤のいずれも用いられうる。本発明において、接着剤は粘着剤(感圧性接着剤)を含むものとする。
【0036】
接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、ポリエステル系、ホットメルト型接着剤などが挙げられ、また、これらの接着剤は、溶剤型またはエマルジョン型のいずれであってもよい。
【0037】
あるいは、化学反応型接着剤を使用してもよい。ここで、化学反応型接着剤とは、構成成分が化学反応により高分子化して固化するタイプの接着剤のことであり、その具体例としては、外部から熱を与えることにより化学反応を開始する加熱硬化型接着剤、可視光、紫外線、電子線等の照射により化学反応を開始する光・電子線硬化型接着剤等が挙げられる。加熱硬化型接着剤の具体例としては、エポキシ系接着剤等が挙げられ、光・電子線硬化型接着剤の具体例としては、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0038】
接着剤層12の厚みは特に制限されないが、好ましくは5~100μmであり、より好ましくは15~50μmである。接着剤層12の厚みは、被着面である成形品表面の凹凸の大きさによって適宜選択して設定される。
【0039】
接着剤層12は、従来公知のその他の添加剤をさらに含みうる。かような添加剤としては、例えば、粘着付与剤、充填剤、酸化防止剤などが挙げられる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂などの天然樹脂、C5系、C9系、ジシクロペンタジエン系などの石油樹脂、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。充填剤としては、例えば、亜鉛華、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。なお、二酸化チタンもまた、充填剤として機能しうる。
【0040】
<剥離ライナー20>
剥離ライナー20は、基材層21、および帯電防止層22を、積層方向にこの順序で有する。本実施形態では、接着剤層12側に基材層21が設けられているが、それとは逆に、接着剤層12側から、帯電防止層22、および基材層21の順序で積層されていてもよい。接着剤層12側から、帯電防止層22、および基材層21の順序で積層される形態は好適な一態様である。剥離ライナー20における接着剤層12側の面には、剥離性向上のため、例えばシリコーンなどの剥離剤の層(不図示)が形成されてもよい。
【0041】
基材層21は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムによって形成されるが、これらに限定されず、例えば、グラシン紙、クラフト紙、上質紙、クレーコート紙などの紙基材によって形成されてもよい。
【0042】
帯電防止層22は、帯電防止剤を含む層である。帯電防止剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基などのカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性イオン型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤;上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体;ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子等が挙げられ、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子等の導電性ポリマー等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
帯電防止層22は、フィルムの延伸性を考慮すると、帯電防止コート層であることが好ましい。このような帯電防止コート層の形成方法としては、帯電防止剤を溶剤に溶解・分散させたコート液を用いることで形成することができる。例えば、ポリピロール系導電性高分子は、ピロール(モノマー)を乳化重合して得られる水分散性導電性高分子として使用することができ、当該水分散性導電性高分子に、必要によりバインダ樹脂を加えて塗布液を調製し、塗布液を塗布し、加熱し乾燥することで、帯電防止層を形成することができる。
【0044】
また、帯電防止層22は、バインダ樹脂を含んでもよい。該バインダ樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。また、架橋剤を併用してもよい。架橋剤としては、例えば、メチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系化合物、尿素系化合物、グリオキザール系化合物、アクリルアミド系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物等が挙げられる。
【0045】
帯電防止層22は、例えば、0.01μm~5μmの厚みを有するが、帯電防止効果を発揮できればよく、帯電防止層22の厚みは、特に限定されない。また、帯電防止層22は、必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、等の添加剤の少なくとも1種を含有していてもよい。
【0046】
<<第1実施形態の積層成形品の製造方法>>
第1実施形態の積層成形品の製造方法では、装飾フィルム10と剥離ライナー20とが剥がされ、その後、装飾フィルム10が、真空圧空成形によって、加飾対象である成形品の表面に積層して接着される。
【0047】
具体的に図2に示すように、本実施形態では、装飾フィルム10は、剥離ライナー20の剥離後、真空圧空成形の実施される成形装置100にセットされ、加飾対象である凹凸成形品1の表面に積層して接着される。凹凸成形品1の形成材料は、例えば、ポリプロピレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の樹脂であるが、これらに限定されず、金属であってもよい。
【0048】
成形装置100は、下型101、上型102、テーブル103、加熱手段104、加圧手段105、および真空手段110を有する。下型101および上型102は、互いに近接離隔可能である。テーブル103は、下型101の内部に設けられており、下型101内を上下方向に移動可能である。加熱手段104は、上型102の内部に設けられている。加圧手段105は、上型102の内部において、加熱手段104の下方に設けられている。真空手段110は、例えば真空ポンプであり、下型101および上型102のそれぞれの内部と連通している。
【0049】
図3に示すように、成形装置100にセットされた装飾フィルム10は、端部で下型101および上型102によって挟み込まれ、凹凸成形品1から離隔して展張した状態で保持される。この状態で真空圧空成形が実施され、装飾フィルム10は、凹凸成形品1の表面に積層して接着される。
【0050】
成形装置100で実施される真空圧空成形は、成形装置100内を真空にし、装飾フィルム10を軟化させ、装飾フィルム10と凹凸成形品1との間の空間とは反対側の空間を加圧して、装飾フィルム10を凹凸成形品1に圧着して成形する方法である。
【0051】
図4に示すように、本実施形態では、真空手段110が成形装置100内を真空引きし、テーブル103が上方に移動して装飾フィルム10と凹凸成形品1とを近接させた状態で、加熱手段104が、装飾フィルム10を加熱して軟化させる。また、加圧手段105が、上型102内に空気または不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)を導入し、上型102内の空間を、下型101内の空間よりも高圧になるよう加圧する。
【0052】
その結果、図5に示すように、装飾フィルム10は、延伸し薄肉化しつつ、凹凸成形品1の形状に沿って積層される。凹凸成形品1の形状に十分追従できる程度まで装飾フィルム10が軟化する加熱条件は、フィルム基材11および接着剤層12などの材料によって適宜設定され、特に限定されないが、例えば、加熱温度が50~200℃、加熱時間が0.1~10分である。
【0053】
凹凸成形品1への装飾フィルム10の積層後、上型102内への空気または不活性ガスの導入が停止され、上型102と下型101とを離隔させて、凹凸成形品1が装飾フィルム10とともに取り出される。
【0054】
その後、図6に示すように、装飾フィルム10のうち、凹凸成形品1からはみ出した余分な部分が、サーモカッター、カッター等の適当な切断手段を用いて切り取られ、凹凸成形品1上に装飾フィルム10が接着された積層成形品2が出来上がる。
【0055】
本実施形態では、真空圧空成形によって、装飾フィルム10が凹凸成形品1の表面に積層して接着されるが、これに限定されない。装飾フィルム10は、例えば、真空成形または圧空成形によって、凹凸成形品1の表面に積層して接着されてもよい。
【0056】
真空圧空成形では、熱せられて軟化した装飾フィルム10に対し、凹凸成形品1側の減圧、および、凹凸成形品1側と反対側からの加圧を行ったが、真空成形では、同加圧を行わず、凹凸成形品1側の減圧によって、装飾フィルム10が凹凸成形品1の表面に積層して接着される。一方、圧空成形では、熱せられて軟化した装飾フィルム10に対し、凹凸成形品1側を減圧せず、凹凸成形品1側と反対側からの加圧によって、装飾フィルム10を凹凸成形品1の表面に積層して接着する。
【0057】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0058】
本実施形態では、装飾フィルム10の使用前に剥離ライナー20が剥がされるが、本実施形態と異なり剥離ライナー20に帯電防止剤を含ませていなければ、装飾フィルム10において凹凸成形品1に積層される側に剥離帯電が生じ、例えば微細な塵や埃等の異物が、装飾フィルム10に対し凹凸成形品1に積層される側に付着し易い。
【0059】
図7に示すように、微細な異物Aが付着したまま装飾フィルム10が凹凸成形品1に積層されたとしても、装飾フィルム10の厚みが厚ければ、異物Aの形状が浮き出てき難いが、装飾フィルム10は、真空圧空成形によって延伸し薄肉化するため、同図に示すように異物Aの形状が浮き出し易い。特に、異物Aの直径が例えば20μm以上になると、異物Aの形状が浮き出し易くなり、外観が損なわれる虞がある。
【0060】
一方、本実施形態では、剥離ライナー20に帯電防止剤が含まれており、これによって、装飾フィルム10では、凹凸成形品1に積層される側で効果的に剥離帯電が抑制されるため、微細な異物Aが、装飾フィルム10に対し凹凸成形品1に積層される側に付着し難く、真空圧空成形によって装飾フィルム10が延伸し薄肉化しても、外観が損なわれるのを防止できる。
【0061】
異物Aの付着が抑制されるのであれば、装飾フィルム10において凹凸成形品1に積層される側の帯電電位の絶対値は、特に限定されないが、例えば0.5kV以下であり、0.3kV以下であってもよく、0.1kV以下であってもよい。
【0062】
例えば、装飾フィルム10と剥離ライナー20との剥離直後、剥離ライナー20が装飾フィルム10の一方の面から剥離された状態において、その一方の面側(凹凸成形品1に積層される側(接着剤層12側))の帯電電位の絶対値が、0.5kV以下であれば、例えば20μm以上の大きさを有するような形状の浮き出し易い異物Aが、装飾フィルム10の接着剤層12側に付着し難く、外観が損なわれるのをより効果的に防止できる。
【0063】
次に、第2実施形態の装飾フィルム10Aおよび装飾フィルム積層体1000、ならびに第2実施形態の積層成形品の製造方法について述べる。
【0064】
<<第2実施形態の装飾フィルム10A、および装飾フィルム積層体1000>>
図8に示すように、第2実施形態の装飾フィルム10Aは、樹脂層30が剥離ライナー20の代わりに積層されている点で、第1実施形態と異なるとともに、フィルム基材11と接着剤層12との間に、帯電防止層40が設けられている点で、第1実施形態と異なる。フィルム基材11および接着剤層12は、第1実施形態と同じである。
【0065】
樹脂層30は、接着剤層12を介してフィルム基材11の一方の面の側に接着固定されており、第1実施形態の剥離ライナー20とは異なり、剥離不能である。樹脂層30の形成材料は、加熱溶融により凹凸成形品1に接着できる樹脂であれば、特に限定されないが、具体的には、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリエステル等の樹脂である。
【0066】
帯電防止層40は、帯電防止剤を含む層であり、フィルム基材11に対して凹凸成形品1に積層される側に設けられている。帯電防止層40は、フィルム基材11と一体的に設けられており、剥離不能である。帯電防止層40の構成材料および厚みは、例えば第1実施形態の帯電防止層22と同様である。
【0067】
図9に示すように、本実施形態の装飾フィルム積層体1000は、装飾フィルム10Aが積層された構成を有する。積層された複数の装飾フィルム10A同士は、それらの間にフィルム等を介さず直接接して積層されている。各装飾フィルム10Aにおいて積層されているフィルム基材11、帯電防止層40、接着剤層12、および樹脂層30は、互いに剥離不能であるため、装飾フィルム積層体1000においては、装飾フィルム10A同士の間のみで、装飾フィルム10Aを剥がすことができる。
【0068】
装飾フィルム積層体1000では、枚葉紙状の装飾フィルム10Aが積層されているが、本発明はこの形態に限定されない。例えば図10に示す変形例のように、長尺な装飾フィルム10Aが巻回されたロール状の装飾フィルム積層体1000Aも本発明の範囲に含まれる。
【0069】
<<第2実施形態の積層成形品の製造方法>>
本実施形態では、フィルムインサート成形によって、積層成形品が作製される。フィルムインサート成形では、装飾フィルム10Aの成形と、凹凸成形品1への装飾フィルム10Aの積層とが、第1実施形態のように同時に行われるのではなく、装飾フィルム10Aの成形が先に行われ、その後、成形された装飾フィルム10Aが凹凸成形品1と一体に積層される。
【0070】
図11に示すように、装飾フィルム10Aの成形に用いられる成形装置100Aは、第1実施形態と異なる下型101Aを有する。他の構成については、成形装置100Aは、第1実施形態の成形装置100と略同様であり、共通する構成については第1実施形態と同様の符号を付して重複する説明を省略する。
【0071】
本実施形態の下型101Aは、第1実施形態のように凹凸成形品1を備えておらず、凹凸成形品1と同一形状の凸部106Aを有する。下型101Aは、上型102とともに、装飾フィルム10Aを挟んで展張した状態で保持する。
【0072】
図12に示すように、装飾フィルム10Aは、真空手段110によって成形装置100A内が真空にされた状態で、加熱手段104による加熱によって軟化するとともに、上型102側から導入される空気または不活性ガスによって加圧され、延伸しつつ凸部106Aに密着させて成形される。
【0073】
このような真空圧空成形に限定されず、装飾フィルム10Aは、上型102側からの加圧を行うことなく、下型101A側から真空引きする真空成形によって凸部106Aに密着させてもよいし、下型101A側からの真空引きを行うことなく、上型102側から加圧する圧空成形によって、凸部106Aに密着させてもよい。
【0074】
装飾フィルム10Aの成形後、下型101Aと上型102とが相対的に離隔して開き、成形された装飾フィルム10Aは、成形装置100Aから取り出される。
【0075】
図13に示すように、取り出された成形後の装飾フィルム10Aは、加飾に用いられない余分な部分が、サーモカッター、カッター等の適当な切断手段を用いて切り取られ、形が整えられる。
【0076】
その後、図14に示すように、装飾フィルム10Aは、射出成形型200にセットされる。射出成形型200は、相対的に近接離隔する第1の型210と第2の型220とを有する。
【0077】
第1の型210には、成形された装飾フィルム10Aの外形と同様の形状を有する凹部211が設けられている。第2の型220には、凸部221が設けられているとともに、樹脂の注入されるランナー222が設けられている。
【0078】
第1の型210と第2の型220とが開いた状態で、装飾フィルム10Aは凹部211に配置され、装飾フィルム10Aのセット後、第1の型210と第2の型220とは、相対的に近接して閉じる。
【0079】
図15に示すように、第1の型210と第2の型220とが閉じると、装飾フィルム10Aと凸部221との間に、ランナー222と連通する空隙であるキャビティ201が形成される。キャビティ201の形成後、射出成形が行われる。
【0080】
図16に示すように、射出成形では、加熱溶融された樹脂202が、ランナー222からその先のキャビティ201へと充填され、その後、キャビティ201内に充填された樹脂202が、冷却されて硬化することによって、凹凸成形品1が形作られる。
【0081】
凹凸成形品1は、射出成形によって形作られるとともに、装飾フィルム10Aと剥離不能に一体となって積層される。装飾フィルム10Aにおいて、凹凸成形品1と接する樹脂層30を、凹凸成形品1と同様の樹脂によって形成しておけば、凹凸成形品1と装飾フィルム10Aとの接着強度を効果的に高められるため、好ましい。凹凸成形品1および樹脂層30を形成する樹脂は、例えばポリプロピレンであるが、これに限定されない。
【0082】
射出成形後、図17に示すように、第1の型210と第2の型220とが相対的に離隔して開けられ、凹凸成形品1と装飾フィルム10Aとが積層されて一体となった積層成形品2が、取り出される。
【0083】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0084】
装飾フィルム10Aは、装飾フィルム積層体1000(1000A)から剥がして使用されるが、帯電防止層40に帯電防止剤を含んでおり、装飾フィルム積層体1000(1000A)から剥がした際、凹凸成形品1に積層される側で効果的に剥離帯電が抑制されるため、微細な異物が、凹凸成形品1に積層される側に付着し難い。従って、成形の際に装飾フィルム10Aが延伸し薄肉化しても、微細な異物に起因する外観不良を防止できる。
【0085】
微細な異物の付着が抑制されるのであれば、装飾フィルム10Aにおいて凹凸成形品1に積層される側の帯電電位の絶対値は、特に限定されないが、例えば0.5kV以下であり、0.3kV以下であってもよく、0.1kV以下であってもよく、これによって得られる効果は、第1実施形態と同様である。
【0086】
本実施形態では、装飾フィルム10Aに樹脂層30が設けられており、装飾フィルム10Aが射出成形で射出される樹脂202と良好に接着するため、凹凸成形品1と装飾フィルム10Aとの接着強度を高められる。
【0087】
次に、実施例および比較例について述べる。
【0088】
<実施例1および比較例1>
図18に示すように、実施例1の装飾フィルム50は、フィルム基材51、帯電防止層52、接着剤層53(アクリル系粘着剤、厚さ30μm)、および剥離ライナー54を、積層方向にこの順序で有する。また、実施例1の装飾フィルム50は、フィルム基材51に対し、凹凸成形品に積層される側と反対側に、工程フィルム55を有する。
【0089】
フィルム基材51は、アクリルウレタン(厚さ170m)によって形成されている。剥離ライナー54は、ポリエチレンテレフタレート(PET)(厚さ50μm)によって形成されており、接着剤層53側の面にシリコーン処理が施されている。
【0090】
帯電防止層52は、ピロール(モノマー)を乳化重合して得られたポリピロール系導電性高分子(100質量部(固形分))を含有するエマルションに対して、バインダ樹脂としてのブチル化メラミン樹脂(2質量部、DIC社製、製品名「スーパーベッカミン(登録商標)J820-60」)を添加し、十分に混合することで帯電防止層形成用の塗液を得た後、フィルム基材の片面にコロナ照射を行い、同一の面に上記の帯電防止層形成用の塗液を塗布し、加熱により乾燥させることで、厚さ50nmの帯電防止層を形成する。
【0091】
工程フィルム55は、剥離ライナー54とは反対側で、フィルム基材51に剥離可能に配置されている。工程フィルム55は、ポリエチレンテレフタレート(PET)によって形成されており、100μmの厚みを有する。
【0092】
工程フィルム55が備えられることによって、フィルム基材51が保護されるため、フィルム基材51に傷等がつき難く、装飾性が損なわれるのを防止できる。工程フィルム55は、装飾フィルム50が凹凸成形品に積層される前に剥がされる。
【0093】
実施例1の装飾フィルム50との比較のため、本発明者は、装飾フィルム50から帯電防止層52を除いた比較例1の装飾フィルムを用意した。帯電防止層52の有無以外は、実施例1と比較例1とで同様である。
【0094】
実施例1では、本発明者は、装飾フィルム50から剥離ライナー54を剥がし、その後、凹凸成形品に積層される側(接着剤層53側)の帯電電位を測定した。また、比較例2でも、同様に帯電電位を測定した。帯電電位の測定には、シムコジャパン社製の静電気測定器 FMX-003を用いた。下の表1に、測定結果を示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示したように、実施例1では比較例1に比べて帯電電位が大幅に低減されており、帯電防止層52を設けることによって、剥離ライナー54を剥がした際、装飾フィルム50の凹凸成形品に積層される側で、剥離帯電を効果的に抑制できることが確認できた。
【0097】
<実施例2および比較例2>
図19に示すように、実施例2では、本発明者は、装飾フィルム10Bの積層体1000Bを用い、そこから装飾フィルム10Bを剥がした際に生じる剥離帯電の低減効果を確認した。
【0098】
装飾フィルム10Bは、第2実施形態に準じた構成を有しており、フィルム基材11、帯電防止層40、接着剤層12、および樹脂層30を、積層方向にこの順序で有する。また、装飾フィルム10Bは、それらに加えてさらに、工程フィルム55Bを有する。
【0099】
工程フィルム55Bは、フィルム基材11に対し、凹凸成形品に積層される側(樹脂層30側)とは反対側で、フィルム基材11に剥離可能に配置されている。工程フィルム55Bは、ポリエチレンテレフタレート(PET)によって形成されている。
【0100】
実施例2との比較のため、本発明者は、装飾フィルム10Bから帯電防止層40を除いた比較例2の装飾フィルムを用意し、また、それを積層した装飾フィルム積層体を用意した。帯電防止層40の有無以外は、実施例2と比較例2とで同様である。
【0101】
実施例1では、本発明者は、装飾フィルム積層体1000Bの積層方向上端に位置する装飾フィルム10Bを1枚剥がし、剥がした装飾フィルム10Bの凹凸成形品に積層される側(樹脂層30側)の帯電電位を測定した。また、比較例2でも同様に帯電電位を測定した。下の表2に、測定結果を示す。
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示したように、実施例2では比較例2に比べて帯電電位が大幅に低減されており、帯電防止層40を設けることによって、装飾フィルム積層体1000Bから装飾フィルム10Bを剥がした際、装飾フィルム10Bの凹凸成形品に積層される側(樹脂層30側)で、剥離帯電を効果的に抑制できることが確認できた。
【0104】
本発明は、上述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変できる。
【0105】
例えば、凹凸成形品の形状は、上記実施形態のようなドーム状に限定されず、他の3次元形状であってもよい。また、凹凸成形品がどのような用途で使用される物品かも、特に限定されない。
【0106】
また、帯電防止剤は、フィルム基材に対し凹凸成形品に積層される側に重ね合わされる層に含まれていればよく、上記実施形態や実施例で開示された帯電防止層22、40、52に加えてさらに、あるいはそれらを設けることなく、例えば、接着剤層12、53、樹脂層30、剥離ライナー54等の他の層に帯電防止剤を含ませてもよい。
【0107】
さらに、上記実施形態および実施例において、フィルム基材11、51にも帯電防止剤を含ませた形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0108】
フィルム基材11、51にも帯電防止剤を含ませるようにすれば、凹凸成形品に積層される側と反対の表側で、静電気が効果的に抑えられ、汚れや空気中のゴミ等が付着し難くなるため、装飾フィルムを表面に有する物品の外観を綺麗な状態に保つことができる。
【0109】
また、フィルム基材11、51にも帯電防止剤を含ませることによって、凹凸成形品に積層される側と反対の表側で、静電気が効果的に抑えられれば、人体への放電を効果的に防止できる。
【符号の説明】
【0110】
1 凹凸成形品、
2 積層成形品、
10、10A、10B、50 装飾フィルム、
11、51 フィルム基材、
12、53 接着剤層、
20、54 剥離ライナー、
21 基材層、
22、40、52 帯電防止層、
30 樹脂層、
55、55B 工程フィルム、
100、100A 成形装置、
101、101A 下型、
102 上型、
103 テーブル、
104 加熱手段、
105 加圧手段、
106A 凸部、
110 真空手段、
200 射出成形型、
202 樹脂、
210 第1の型、
211 凹部、
220 第2の型、
221 凸部、
222 ランナー、
1000、1000A、1000B 装飾フィルム積層体、
A 微細な異物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19