(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132452
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】プレキャスト床版の防水構造およびプレキャスト床版の接合構造
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043216
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000232508
【氏名又は名称】日本道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500227978
【氏名又は名称】株式会社エスシー・プレコン
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】田中 博一
(72)【発明者】
【氏名】吉武 謙二
(72)【発明者】
【氏名】南 貴大
(72)【発明者】
【氏名】原 紘一朗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 英一
(72)【発明者】
【氏名】太田 智久
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 伸明
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】中山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】弓木 宏之
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG37
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】安価にかつ天候に影響されずにプレキャスト床版どうしを接合できるプレキャスト床版の防水構造およびプレキャスト床版の接合構造を提供する。
【解決手段】下側に設けられる本体部4と、本体部4の上面に設けられる防水部5と、を有するプレキャスト床版2の防水構造であって、防水部5は、設計基準強度100N/mm
2以上のコンクリートを材料として形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側に設けられる本体部と、
前記本体部の上面に設けられる防水部と、を有するプレキャスト床版の防水構造であって、
前記防水部は、設計基準強度100N/mm2以上のコンクリートを材料として形成されているプレキャスト床版の防水構造。
【請求項2】
前記本体部は、普通コンクリートを材料として形成されている請求項1に記載のプレキャスト床版の防水構造。
【請求項3】
水平方向に間隔をあけて配置される一対のプレキャスト床版と、
前記一対のプレキャスト床版の間に設けられ前記一対のプレキャスト床版を接合する接合部と、を有し、
前記一対のプレキャスト床版は、それぞれ、
下側に設けられる本体部と、
前記本体部の上面に設けられる防水部と、を有し、
前記防水部は、設計基準強度100N/mm2以上のコンクリートを材料として形成され、
前記防水部における前記接合部側の端面には、前記接合部側に突出する凸部と、前記接合部と離れる側に凹んだ凹部と、が交互に配列された凹凸部が形成され、
前記接合部は、
前記一対のプレキャスト床版の前記本体部の間、および前記防水部の間の両方にわたるように充填された接合材によって形成され、
前記接合材は、
設計強度120N/mm2以上の超高性能繊維補強セメント系複合材料であるプレキャスト床版の接合構造。
【請求項4】
前記凸部の突出寸法は、前記凸部の幅寸法の最大値よりも小さい請求項3に記載のプレキャスト床版の接合構造。
【請求項5】
前記凸部の幅寸法の最大値は、前記凸部の基端部の幅寸法の値である請求項4に記載のプレキャスト床版の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト床版の防水構造およびプレキャスト床版の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路のプレキャスト床版の防水構造としてNEXCO舗装施工管理要領に示す床版防水層・グレードIIが求められている。床版防水層・グレードIIなどは、降雨時に施工できないため、降雨が続くと工期が延長するという問題がある。特に、道路の改修工事の場合は、降雨が続くと交通規制解除時期に影響が及ぶという問題がる。その問題を解決する方法として、NEXCO舗装施工管理要領に示す床版防水層・グレードIIを満足するプレキャスト床版の防水層としてUFC(超高強度繊維補強コンクリート)を打設するとともに、隣り合うプレキャスト床版の間に間隔を設けて、この間隔にもUFCを打設してプレキャスト床版どうしを接合する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されている圧縮強度が200N/mm2程度の上記のUFCで構成される床版防水層、接続部は高価であり、また、確実な接合を行うため防水層端部の楔形突出部の接続軸方向の突出長さ寸法が根元部における接続軸横断方向の突出幅寸法以上であるため製作時、施工時の欠損の懸念がある、さらに繊維の架橋のための目荒しが必要である等の課題がある。
【0005】
本発明は、NEXCO舗装施工管理要領に示す床版防水層・グレードIIを満足でき、より安価にかつ天候に影響されずにプレキャスト床版どうしを接合できるプレキャスト床版の防水構造およびプレキャスト床版の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレキャスト床版の防水構造は、下側に設けられる本体部と、前記本体部の上面に設けられる防水部と、を有するプレキャスト床版の防水構造であって、前記防水部は、設計基準強度100N/mm2以上のコンクリートを材料として形成されている。
【0007】
本発明では、プレキャスト床版に設計基準強度100N/mm2以上のコンクリートを材料として形成された防水部が設けられていることにより、高い防水性能と耐久性を確保できる。本発明では、NEXCO舗装施工管理要領に示す床版防水層・グレードIIを満足できる。これにより、プレキャスト床版の上に現場において防水層を設ける必要がないため、安価にかつ天候に影響されずにプレキャスト床版どうしを接合できる。
【0008】
また、本発明に係るプレキャスト床版の防水構造では、前記本体部は、普通コンクリートを材料として形成されていてもよい。
【0009】
このような構成とすることにより、プレキャスト床版は、普通コンクリートを材料として形成された本体部と、設計基準強度100N/mm2以上のコンクリートを材料として形成され防水層と鉄筋コンクリートにおける鉄筋のかぶり部を兼ねている防水部とが一体となって応力部材を形成できる。また、プレキャスト床版にプレストレスを導入すればより一体となった応力部材を形成できる。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレキャスト床版の接合構造は、水平方向に間隔をあけて配置される一対のプレキャスト床版と、前記一対のプレキャスト床版の間に設けられ前記一対のプレキャスト床版を接合する接合部と、を有し、前記一対のプレキャスト床版は、それぞれ、下側に設けられる本体部と、前記本体部の上面に設けられる防水部と、を有し、前記防水部は、設計基準強度100N/mm2以上のコンクリートを材料として形成され、前記防水部における前記接合部側の端面には、前記接合部側に突出する凸部と、前記接合部と離れる側に凹んだ凹部と、が交互に配列された凹凸部が形成され、前記接合部は、前記一対のプレキャスト床版の前記本体部の間、および前記防水部の間の両方にわたるように充填された接合材によって形成され、前記接合材は、設計強度120N/mm2以上の超高性能繊維補強セメント系複合材料である。
【0011】
本発明では、プレキャスト床版に設計基準強度100N/mm2以上のコンクリートを材料として形成された防水部が設けられているとともに、接合材が設計強度120N/mm2以上の超高性能繊維補強セメント系複合材料(Ultra High Performance Fiber Reinforced cement-based Composites、以下UHPFRCと称する)であることにより、高い防水性能と耐久性を確保できる。本発明では、NEXCO舗装施工管理要領に示す床版防水層・グレードIIを満足できる。これにより、プレキャスト床版および接合部の上に現場において防水層を設ける必要がないため、安価にかつ天候に影響されずにプレキャスト床版どうしを接合できる。
防水部の接合部側の端面に凹凸部が形成されていることにより、防水部と接合材との定着を良好にすることができ、接合強度と防水性能を向上できる。
【0012】
また、本発明に係るプレキャスト床版の接合構造では、前記凸部の突出寸法は、前記凸部の幅寸法の最大値よりも小さくてもよい。
【0013】
このような構成とすることにより、凸部の突出寸法が幅寸法よりも小さくなり、突出部の製作不良や破損を抑制できるとともに、接合材の充填性を向上できる。その結果、防水部と接合材との定着を良好にすることができ、接合強度と防水性能を向上できる。凸部の突出寸法とは、凸部が防水部から接合部側に突出する方向の寸法を示す。凸部の幅寸法とは、凸部が防水部から接合部側に突出する方向に直交する方向の寸法を示す。
【0014】
また、本発明に係るプレキャスト床版の接合構造では、前記凸部の幅寸法の最大値は、前記凸部の基端部の幅寸法の値であってもよい。
【0015】
このような構成とすることにより、防水部と接合材との定着を良好にすることができ、接合強度と防水性能を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、NEXCO舗装施工管理要領に示す床版防水層・グレードIIを満足でき、より安価にかつ天候に影響されずにプレキャスト床版どうしを接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態によるプレキャスト床版の防水構造および接合構造の鉛直断面図である。
【
図2】第1実施形態によるプレキャスト床版の防水構造および接合構造の平面図である。
【
図3】第2実施形態によるプレキャスト床版の防水構造および接合構造の平面図である。
【
図4】実施形態の第1変形例によるプレキャスト床版の防水構造および接合構造の平面図である。
【
図5】実施形態の第2変形例によるプレキャスト床版の防水構造および接合構造の平面図である。
【
図6】実施形態の第3変形例によるプレキャスト床版の防水構造および接合構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態によるプレキャスト床版の防水構造およびプレキャスト床版の接合構造について、
図1-
図2に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態によるプレキャスト床版の防水構造および接合構造1は、桁上(不図示)に設けられる鉄筋コンクリート製のプレキャスト床版2の防水構造およびプレキャスト床版2,2どうしの接合構造である。以下では、桁の長さ方向を橋軸方向Aと表記する。橋軸方向Aは、略水平方向である。橋軸方向Aに直交する水平方向を幅方向Bと表記する。図面では、橋軸方向Aを矢印Aで示し、幅方向Bを矢印Bで示す。
【0019】
複数のプレキャスト床版2は、橋軸方向Aに間隔をあけて設けられている。
図1には、橋軸方向Aに隣り合う一対のプレキャスト床版2,2が示されている。接合構造1は、一対のプレキャスト床版2,2と、接合部3と、を有する。接合部3は、一対のプレキャスト床版2,2の間に設けられている。接合部3は、一対のプレキャスト床版2,2の間に接合材31が充填されることで形成される。接合部3は、一対のプレキャスト床版2,2を接合している。本実施形態の桁、プレキャスト床版2および接合部3は、道路を構築する。
【0020】
プレキャスト床版2は、本体部4と、防水部5と、を有する。本体部4は、プレキャスト床版2の下部側に設けられている。防水部5は、本体部4の上に設けられている。本体部4と防水部5とは、一体に形成されている。以下は、プレキャスト床版2、本体部4および防水部5の高さ寸法の一例である。プレキャスト床版2の高さ寸法が220mmであり、防水部5の高さ寸法が40mmであり、本体部4の高さ寸法が180mmである。
本体部4は、例えば、設計基準強度50N/mm2以上の普通コンクリートを材料として形成されている。防水部5は、設計基準強度100N/mm2以上の高強度コンクリートを材料として形成されている。
プレキャスト床版2は、予め工場などで製作される。本体部4と防水部5とは一体に製作される。複数のプレキャスト床版2には、適宜鉄筋が設けられている。プレキャスト床版2は、プレストレスが導入されている。
【0021】
図2に示すように、防水部5における橋軸方向Aの端面5a、すなわち接合部3側の端面5aには、接合部3側に突出する凸部51と、接合部3と離れる側に凹んだ凹部52と、が交互に配列された凹凸部53が幅方向B全体にわたって形成されている。凸部51の平面形状と凹部52の平面形状とは、橋軸方向Aに対称となる形状である。本実施形態の凸部51および凹部52の平面形状は、台形である、凸部51における橋軸方向Aの寸法を突出寸法Hと表記する。凹部52における橋軸方向Aの寸法を深さ寸法Hと表記する。凸部51および凹部52における幅方向Bの寸法を幅寸法と表記する。凸部51の先端部の幅寸法W
1は、基端部の幅寸法W
2よりも小さい。凸部51の幅寸法Wは、先端部から基端部に向かって漸次大きくなり、基端部の幅寸法W
2が凸部51の幅寸法の最大値である。凸部51の突出寸法Hは、凸部51の基端部側の幅寸法よりも小さい。凹部52の底部の幅寸法W
1は、凹部52の開口端の幅寸法W
2よりも小さい。凹部52の幅寸法は、底部から開口側に向かって漸次大きくなり、開口端の幅寸法W
2が凹部52の幅寸法の最大値である。凹部52の深さ寸法Hは、凹部52の開口端の幅寸法W
2よりも小さい。
【0022】
本体部4の橋軸方向Aの端面41、すなわち接合部3側の端面41は、平坦面に形成されている。本体部4の接合部3側の端面41には、防水部5のような凹凸部が形成されていない。本体部4の接合部3側の端面41は、下側から上側に向かって漸次、接合部3と離れる側に向かう傾斜面に形成されている。防水部5の凸部51の先端部と、本体部4の接合部3側の端面41とは、同一平面上に設けられている。本体部4の上面42のうち、防水部5の凹部52の下側に配置される部分43は、防水部5に覆われていない。本体部4の上面42のうち、防水部5の凹部52の下側に配置される部分43以外は、防水部5に覆われている。
【0023】
一対のプレキャスト床版2,2のうちの一方のプレキャスト床版2の防水部5の凹凸部53の形状と、他方のプレキャスト床版2の防水部5の凹凸部53の形状とは、橋軸方向Aに対称となる形状である。すなわち、一方のプレキャスト床版2の防水部5の凸部51と、他方のプレキャスト床版2の防水部5の凸部51と、は、橋軸方向Aに対向する位置に配置されている。一方のプレキャスト床版2の防水部5の凹部52と、他方のプレキャスト床版2の防水部5の凹部52と、は、橋軸方向Aに対向する位置に配置されている。
【0024】
接合材31は、設計強度120N/mm2以上のUHPFRCである。上述しているように、接合部3は、一対のプレキャスト床版2,2の間に接合材31が充填されることで形成される。接合材31は、一対のプレキャスト床版2,2の本体部4の間に充填されている。接合材31は、一対のプレキャスト床版2,2の防水部5の間に充填されている。接合材31は、防水部5の凹凸部53の凹部52にも充填されている。
【0025】
本実施形態による接合構造1の施工方法は、以下のように行われる。
プレキャスト床版2を予め工場などで製作する。プレキャスト床版2を、本体部4の上に防水部5が一体に設けられた状態に製作する。
続いて、プレキャスト床版2を桁上に据え付ける。橋軸方向Aに隣り合うプレキャスト床版2,2の間には、接合部3を形成するための間隔を設ける。
橋軸方向Aに隣り合うプレキャスト床版2,2の間隔に接合材31充填して接合部3を形成する。接合材31を防水部5の凹部52にも行き渡らせる。接合部3の接合材31を硬化させて、橋軸方向Aに隣り合うプレキャスト床版2,2が接合する。
【0026】
次に、本実施形態による接合構造の作用・効果について説明する。
本実施形態による接合構造では、プレキャスト床版2,2に設計基準強度100N/mm2以上のコンクリートを材料として形成された防水部5が設けられているとともに、接合材31が設計強度120N/mm2以上のUHPFRCであることにより、高い防水性能を確保できる。これにより、プレキャスト床版2,2および接合部3の上に現場において防水層を設ける必要がないため、天候に影響されずにプレキャスト床版2,2どうしを接合できる。設計強度120N/mm2以上のUHPFRCは、透水係数が小さく、高い耐久性を有する。本発明で使用するUHPFRCには、細骨材に加えて粗骨材を混合することが好ましい。セメントペーストの収縮率に比べ粗骨材の収縮率が非常に低いことから、全体の収縮率を低減して、収縮ひび割れを抑制することができる。骨材の配合割合は、粗骨材が多すぎると鉄筋が密に配置されている場合の間隙通過性が低くなるため、細骨材率80%から90%程度、粗骨材率10%から20%程度が好ましい。
また、UHPFRCには鋼繊維が混入されているが、ひび割れ発生強度向上と過密配筋となる接合部3の施工性確保の観点から鋼繊維の混入率を1%から1.3%程度にするのが好ましい。
防水部5の橋軸方向Aの端面に凹凸部53が形成されていることにより、防水部5と接合材31との定着を良好にすることができ、接合強度と防水性能を向上できる。
【0027】
また、本発明に係る接合構造では、本体部4は、普通コンクリートを材料として形成されている。
このような構成とすることにより、プレキャスト床版2,2は、普通コンクリートを材料として形成された本体部4と、設計基準強度100N/mm2以上のコンクリートを材料として形成され防水層と鉄筋コンクリートにおける鉄筋のかぶり部を兼ねている防水部5とが一体となって応力部材を形成できる。また、プレキャスト床版にプレストレスを導入すればより一体となった応力部材を形成できる。
【0028】
さらに、凸部51の突出寸法Hを、凸部51の基端部の幅寸法W2よりも小さくすることにより、凸部51の製作時、施工時の欠損の懸念を小さくするとともに、接合材31を凹部52に行き渡らせることが容易になり、接合部3への接合材31の充填性が高くなる。
【0029】
(第2実施形態)
第2実施形態による接合構造1Bは、第1実施形態による接合構造1と凹凸部53Bの形状が異なっている。第1実施形態による接合構造1の凸部51および凹部52の平面形状は、台形である。これに対し、第2実施形態による接合構造1Bの凸部51Bおよび凹部52Bの平面形状は、先端部を丸くした略三角形状である。
凸部51Bの幅寸法は、先端部から基端部に向かって漸次大きくなり、基端部の幅寸法W2が凸部51Bの幅寸法の最大値である。凸部51Bの突出寸法Hは、凸部51Bの基端部側の幅寸法W2の略1/2である。凹部52Bの幅寸法は、底部から開口側に向かって漸次大きくなり、開口端の幅寸法W2が凹部52Bの幅寸法の最大値である。凹部52Bの深さ寸法Hは、凹部52Bの開口端の幅寸法W2の略1/2である。
【0030】
第2実施形態による接合構造1Bでは、第1実施形態による接合構造と同様の効果を奏する。
第2実施形態による接合構造では、接合部3と防水部5との接触面を滑らかな形状にできる。これにより、凹部への接合材31の充填性が高められ、防水部5と接合材31との定着を良好にすることができ、接合強度と防水性能を向上できる。
【0031】
以上、本発明による接合構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の第1実施形態では、防水部5の高さ寸法は40mmとしたが、必要条件に応じて20mmから50mmの間で変更可能である。
また、防水部5の材料である設計基準強度100N/mm
2以上の高強度コンクリートは、少なくともセメント、水、細骨材、粗骨材を混合した設計基準強度100N/mm
2以上の材料ということであって、さらに鋼繊維等の繊維や混和材が混入されていてもよい。UHPFRCに混入される繊維は、鋼繊維でなく他の材質の繊維であってもよい。
さらに、上記の実施形態では、桁上に据え付けられる一対のプレキャスト床版2の接合に採用されているが、桁上に以外に設けられる一対のプレキャスト床版2の接合に採用されてもよい。
上記の第1実施形態では、防水部5の橋軸方向Aの端面5aに形成された凹凸部53の凸部51および凹部52の平面視形状が台形であり、第2実施形態では、防水部5の橋軸方向Aの端面5aに形成された凹凸部53Bの凸部51Bおよび凹部52Bの平面形状が略三角形状である。防水部5の橋軸方向Aの端面5aに形成される凹凸部の凸部および凹部の平面視形状は、適宜設定されてよい。例えば、
図3に示す凸部51Bおよび凹部52Bの平面形状の略三角形の先端部は丸くなくとも良い。凸部51Bの突出寸法Hは基端部の幅寸法W
2よりも小さければよい。また、
図4に示す接合構造1Cのように、凸部51Cの平面形状が、突出するに従って幅が大きくなる形状であってもよい。
図5に示す接合構造1Dの凸部51Dのように、突出方向が基端部に対して直交方向でなく傾斜しているような形状であってもよい。さらに、
図6に示す接合構造1Eのように、凸部51Eが略T字形の形状をしていてもよい。加えて突出面に傾斜があるような形状でもよい。凸部51Eの幅寸法の最大値は、凸部51Eの先端部の幅寸法W
1の値であってもよい。凸部の幅寸法の最大値は、凸部の突出方向の中間部の幅寸法の値であってもよい。
【0032】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。
本実施形態に係る接合構造は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「12.つくる責任 つかう責任」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0033】
1,1B-1E 接合構造
2 プレキャスト床版
3 接合部
4 本体部
5 防水部
5a 端面
31 接合材
51,51B-51E 凸部
52,52B-52E 凹部
H 凸部の突出寸法 又は 凹部の深さ寸法
W1 凸部の先端部の幅寸法 又は 凹部の底部の幅寸法
W2 凸部の基端部の幅寸法 又は 凹部の開口端の幅寸法