(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132459
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】脈診システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20240920BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61B5/02 310P
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043227
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】522433535
【氏名又は名称】株式会社パルセック
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(72)【発明者】
【氏名】丸山 昌二
(72)【発明者】
【氏名】今中 健二
【テーマコード(参考)】
4C017
5E555
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AB02
4C017AC03
4C017BD04
4C017CC02
4C017EE01
4C017FF15
4C017FF17
5E555AA22
5E555BA21
5E555BA22
5E555BA38
5E555BB22
5E555BB38
5E555CB69
5E555DC25
5E555DC31
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】脈診手法を習得したい使用者のニーズを満足させることが可能な脈診システムを提供する。
【解決手段】脈診システム1は、使用者の手首の脈診位置Pにおける脈圧を検知する脈圧検知部7と、脈診位置Pに対する脈圧検知部7の押圧力を調整する調整部8と、脈圧及び押圧力に基づいて、脈の強さ、速さ及び深さの表示情報を設定する設定部15と、表示情報を表示する表示部16と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の手首の脈診位置における脈圧を検知する脈圧検知部と、
前記脈診位置に対する前記脈圧検知部の押圧力を調整する調整部と、
前記脈圧及び前記押圧力に基づいて、脈の強さ、速さ及び深さの表示情報を設定する設定部と、
前記表示情報を表示する表示部と、を備えていることを特徴とする脈診システム。
【請求項2】
請求項1に記載の脈診システムにおいて、
前記表示情報は、前記脈の強さ、速さ及び深さ毎に表示態様が異なっていることを特徴とする脈診システム。
【請求項3】
請求項2に記載の脈診システムにおいて、
前記表示態様は、図形の形状、前記図形の面積、前記図形の輪郭の太さ、及び、前記図形における前記輪郭以外の部分の濃度を含むことを特徴とする脈診システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の脈診システムにおいて、
前記設定部は、時間の経過に伴って変化する前記脈圧及び前記押圧力に基づいて、前記表示情報を変化させることを特徴とする脈診システム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載の脈診システムにおいて、
前記手首には、前記脈診位置として寸部、関部及び尺部が存在しており、
前記設定部は、前記寸部、前記関部及び前記尺部毎の前記表示情報を設定することを特徴とする脈診システム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1つに記載の脈診システムにおいて、
スピーカを更に備え、
前記設定部は、前記脈圧及び前記押圧力に基づいて、前記脈の強さ、速さ及び深さの音声情報を設定し、
前記スピーカは、前記音声情報を出力することを特徴とする脈診システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈診システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中国医学では、手首の脈の強さ、速さ及び深さから患者の健康状態等を診断する脈診が行われている。該脈診は、病院等において医師が自身の手の指を患者の手首の動脈に当てて行うのが一般的であるが、近年、自宅等において患者自身で脈診を行うことが可能な脈診装置が提案されている。例えば、特許文献1に開示されている脈診装置では、使用者の手首の脈診位置における脈圧を検知可能な圧力センサと、該圧力センサで検知した脈圧を表示する表示部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、脈診装置の使用者の中には、該脈診装置を用いて脈診手法を習得したいというニーズがある。しかし、特許文献1の如き脈診装置は、表示部に脈動が表示されるだけであるので、例えば、脈診位置に対して圧力センサを比較的弱く押圧した状態において脈が最も触れる「浮」であるのか、或いは、比較的強く押圧した状態において脈が最も触れる「沈」であるのかというのを把握するのが困難であり、上記脈診手法を習得したい使用者のニーズを充分に満足させることができないおそれがあった。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、脈診手法を習得したい使用者のニーズを満足させることが可能な脈診システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、脈診位置における脈圧及び脈診位置に対する脈圧検知部の押圧力に基づいて設定した脈の強さ、速さ及び深さの表示情報を表示するようにしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、脈診システムを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明では、使用者の手首の脈診位置における脈圧を検知する脈圧検知部と、前記脈診位置に対する前記脈圧検知部の押圧力を調整する調整部と、前記脈圧及び前記押圧力に基づいて、脈の強さ、速さ及び深さの表示情報を設定する設定部と、前記表示情報を表示する表示部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、前記表示情報は、前記脈の強さ、速さ及び深さ毎に表示態様が異なっていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明では、第2の発明において、前記表示態様は、図形の形状、前記図形の面積、前記図形の輪郭の太さ、及び、前記図形における前記輪郭以外の部分の濃度を含むことを特徴とする。
【0011】
第4の発明では、第1から第3の発明のいずれか1つにおいて、前記設定部は、時間の経過に伴って変化する前記脈圧及び前記押圧力に基づいて、前記表示情報を変化させることを特徴とする。
【0012】
第5の発明では、第1から第3の発明のいずれか1つにおいて、前記手首には、前記脈診位置として寸部、関部及び尺部が存在しており、前記設定部は、前記寸部、前記関部及び前記尺部毎の前記表示情報を設定することを特徴とする。
【0013】
第6の発明では、第1から第3の発明のいずれか1つにおいて、スピーカを更に備え、前記設定部は、前記脈圧及び前記押圧力に基づいて、前記脈の強さ、速さ及び深さの音声情報を設定し、前記スピーカは、前記音声情報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、脈診位置における脈圧及び脈診位置に対する脈圧検知部の押圧力に基づいて設定された脈の強さ、速さ及び深さの表示情報が表示部に表示されるようになる。使用者が表示部に表示された表示情報を視認することで、特許文献1の如き脈動を視認する場合に比べて容易に脈の状態を把握することができる。これにより、例えば、使用者は、中医師による脈診結果と上記表示部に表示された脈の強さ、速さ及び深さの表示情報とを比較することで、中医師がどのような判断基準に基づいて脈診しているのかを把握することができる。したがって、使用者は、表示部に表示された表示情報を用いて脈診手法の訓練を行うことが可能となるので、脈診手法を習得したい使用者のニーズを満足させることができる。
【0015】
第2の発明では、表示部に表示される脈の強さ、速さ及び深さの表示情報は、表示態様がそれぞれ異なっているので、脈の強さ、速さ及び深さの表示態様が全て同一である場合に比べて使用者の表示情報の視認性を高めることができる。
【0016】
第3の発明では、脈の強さ、速さ及び深さの表示情報が表示部において図形の形状、図形の面積、図形の輪郭の太さ、及び、図形における前記輪郭以外の部分の濃度によって表示されるようになるので、使用者の表示情報の視認性をより高めることができる。
【0017】
第4の発明では、時間の経過に伴って脈圧及び押圧力が変化すると、表示部に表示される脈の強さ、速さ及び深さの表示情報が変化するようになる。これにより、例えば、使用者は、表示情報を視認することで、刻一刻と変化する脈の状態を把握することができる。
【0018】
第5の発明では、脈診位置(寸部、関部及び尺部)毎の脈の強さ、速さ及び深さが表示部に表示されるようになるので、使用者は脈診位置毎の脈の状態を表示部から把握することができる。
【0019】
第6の発明では、脈の強さ、速さ及び深さの音声情報がスピーカから出力されるようになるので、例えば、視力が比較的低い使用者であってもスピーカから出力された音声情報により、脈の状態を把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る脈診システムを示すブロック図である。
【
図2】脈診装置が使用者の左手首に装着された状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線における概略断面図である。
【
図4】使用者の左手首における脈診位置を示す斜視図である。
【
図7】設定部の制御処理を示すフローチャートです。
【
図10】表示部に表示された表示情報の一例である。
【
図11】表示部に表示された表示情報の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る脈診システム1を示す。該脈診システム1は、脈診装置2、コンピュータ3及びディスプレイ4を備えている。
【0023】
脈診装置2は、使用者が自身の手首に装着して、使用者自身で脈診を行う際に用いられるようになっている。
図2では、脈診装置2が使用者の左手首LWに装着されている例を示している。なお、図示されていないが、脈診装置2を使用者の右手首に装着して使用者自身で脈診を行うことも可能である。
【0024】
また、脈診装置2は、厚みを有する略矩形板状をなす本体ケース部5と、該本体ケース部5に固定されたバンド部6とを備えている。さらに、脈診装置2は、本体ケース部5の裏面が左手首LWに直接接触する姿勢で該左手首LWに装着されるようになっている。本実施形態では、説明の便宜上、本体ケース部5の厚み方向を単に「厚み方向」といい、該本体ケース部5の長手方向を単に「長手方向」といい、該長手方向に直交するよう交差する方向を単に「交差方向」というものとする。
【0025】
バンド部6は、一対のバンド6aを備えている。各バンド6aは、帯状をなし、かつ、その長手方向の一端が本体ケース部5の厚み方向他側面、つまり、底面に固定されるようになっている。バンド6a同士は、例えば、面ファスナーにより、着脱自在に構成されている。また、バンド部6は、
図3に示すように、各バンド6aを使用者の左手首LWに巻き付けて筒形状の形態とすることにより、脈診装置2が使用者の左手首LWに着脱自在に装着されるようになっている。また、脈診装置2が使用者の左手首LWから取り外された状態では、各バンド6aは、その長手方向が交差方向にそれぞれ延びるように構成されている。
【0026】
使用者の左手首LWには、
図3及び
図4に示すように、左手首LWにおける骨BOの外周側、つまり、手の平側かつ親指側の位置において肘側から指先側に向かって延びる動脈(橈骨動脈)Aが存在している。
【0027】
また、該左手首LWには、
図4に示すように、動脈Aに沿って、「尺部」、「関部」及び「寸部」と呼ばれる3つの脈診位置Pが肘側から指先側に向かって順に存在している。なお、図示しない右手首の脈診位置(「尺部」、「関部」及び「寸部」)は、左手首LWの脈診位置Pと略対称の位置に存在している。
【0028】
本体ケース部5の厚み方向他側の面側、つまり、裏面側には、
図5に示すように、3つの脈圧検知部7が長手方向に沿って、かつ、互いに所定の間隔をあけて並設されている。換言すると、バンド部6を用いて本体ケース部5を左手首LWに装着した状態において、3つの脈圧検知部7が各脈診位置P(「尺部」、「関部」及び「寸部」)にそれぞれセットされるように、その位置及び間隔が設定されている。
【0029】
脈圧検知部7は、例えば、ピエゾフィルムセンサであって、図示しないピエゾフィルムが伸縮変形した際の応力によって電圧を発生させる特性を利用して各脈診位置Pにおける脈圧を検知するように構成されている。例えば、脈診装置2が左手首LWにセットされた状態において、動脈Aが脈を打つと、各脈診位置Pにセットされた脈圧検知部7のピエゾフィルムが伸縮変形して電圧を出力するようになっている。脈圧検知部7は、上記出力された電圧から各脈診位置Pの脈圧が検知可能となっている。本実施形態では、脈圧検知部7が検知した脈圧の情報は、コンピュータ3に送信されるようになっている。
【0030】
本体ケース部5の内部には、
図3及び
図5に示すように、調整部8が収容されている。該調整部8は、駆動モータ9、駆動ギヤ10、従動ギヤ11、直動体12、被固定部13及び軟性部材14を備えていて、各脈診位置Pに対する脈圧検知部7の押圧力を調整するように構成されている。本実施形態では、調整部8の押圧力の情報は、コンピュータ3に送信されるようになっている。なお、
図5では、便宜上、駆動モータ9及び駆動ギヤ10を省略している。
【0031】
駆動モータ9は、例えば、回転運動を出力可能かつ停止状態を保持可能なステッピングモータである。
【0032】
駆動モータ9の出力軸の先端には、駆動ギヤ10が取り付けられている。該駆動ギヤ10は、従動ギヤ11と常時噛合している。該従動ギヤ11は、駆動ギヤ10よりも大径かつ歯数が多くなっている。これにより、駆動ギヤ10及び従動ギヤ11により構成された減速ギヤ機構によって、駆動モータ9の出力したトルクが増大されるようになっている。
【0033】
また、従動ギヤ11は、その中央部分に図示しない螺子孔部が設けられている。該螺子孔部には、直動体12がその長手方向が本体ケース部5の厚み方向に延びる姿勢で挿通されている。
【0034】
該直動体12は、その外周面に螺子山部12aが設けられている。該螺子山部12aが従動ギヤ11の図示しない螺子孔部と常時噛合することにより、螺子機構を構成している。該螺子機構は、その螺進動作或いは螺退動作により、従動ギヤ11の回転運動を直動体12の延び方向一側或いは他側の直線運動、つまり、本体ケース部5の厚み方向一側或いは他側の直線運動に変換するようになっている。
【0035】
直動体12の長手方向一端には、略逆T字状をなす被固定部13が取り付けられている。該被固定部13と脈圧検知部7との間には軟性部材14が介設されている。換言すると、脈圧検知部7は、軟性部材14を介して被固定部13と一体的に移動可能に取り付けられている。
【0036】
ここで、駆動モータ9を正方向に回転させると、上記螺子孔部の螺進動作により、直動体12が本体ケース部5の厚み方向一側、つまり、左手首LWの脈診位置Pに近づく方向に直線移動するようになる。これにより、直動体12に固定された被固定部13、軟性部材14及び脈圧検知部7が上記厚み方向一側に移動して、該各脈診位置Pに対する脈圧検知部7の押圧力が増加するようになる。
【0037】
一方、駆動モータ9を逆方向に回転させると、上記螺子孔部の螺退動作により、直動体12が本体ケース部5の厚み方向他側、つまり、左手首LWの脈診位置Pから遠ざかる方向に直線移動するようになる。これにより、直動体12に固定された被固定部13、軟性部材14及び脈圧検知部7が上記厚み方向他側に移動して、該各脈診位置Pに対する脈圧検知部7の押圧力が減少するようになる。本実施形態では、調整部8は、各脈診位置Pに対する脈圧検知部7の押圧力を個別に調整することが可能となっており、例えば、尺部に対する脈圧検知部7の押圧力を関部や寸部に対する脈圧検知部7の押圧力よりも高くすることや低くすることが可能となっている。
【0038】
次に、コンピュータ3及びディスプレイ4について説明する(
図1参照)。
【0039】
コンピュータ3は、設定部15を備えている。該設定部15は、脈圧検知部7が送信した各脈診位置Pにおける脈圧の情報、及び、調整部8が送信した各脈診位置Pに対する脈圧検知部7の押圧力の情報を受信するようになっている。
【0040】
設定部15は、図示しないプロセッサが備えられており、該プロセッサが上記脈圧及び上記押圧力に基づいて脈の強さ、速さ及び深さの表示情報を設定する制御処理を実行するように構成されている。本実施形態において、表示情報は、中医師の脈診の感覚(例えば、中医師毎に異なる脈診の判断基準)を視覚的に表現すべく、脈の強さ、速さ及び深さを視覚的に表現したものとなっている。そして、上記表示情報を使用者が視認することにより、脈圧検知部7から得られる脈動(周期的に変化する脈圧)の情報のみでは把握することが困難な中医師の脈診の感覚を使用者が把握することが可能となっている。
【0041】
設定部15が設定した表示情報は、ディスプレイ4に送信されるようになっている。ディスプレイ4には、使用者が視認可能な表示部16が設けられている。該表示部16は、設定部15から送信された表示情報を受信可能となっており、該受信した表示情報を表示するように構成されている。
【0042】
表示部16には、
図6に示すように、左手に対応する表示情報を表示する第1表示領域A1と、右手に対応する表示情報を表示する第2表示領域A2とが備えられている。
【0043】
第1表示領域A1及び第2表示領域A2の各々には、3つの脈診位置P(「寸部」、「関部」、「尺部」)の表示情報が表示されるようになっている。該表示情報は、脈の強さ、速さ及び深さ毎に表示態様が異なっており、本実施形態では、脈圧の情報及び押圧力の情報に基づいて、円形の面積、円形の輪郭の太さ、及び、円形における輪郭以外の部分の濃度を変更するようになっている。また、本実施形態では、脈圧が強い場合はそうでないときよりも円形の面積を大きくし、脈の速さが速い場合はそうでないときよりも円形の輪郭を細くし、及び、脈が深い(調整部8による押圧力が大きい状態において脈圧の振幅が最大となる)場合はそうでないときよりも円形における輪郭以外の部分の濃度を濃くするようになっている。
【0044】
次に、
図7を用いて、コンピュータ3の設定部15の表示情報の設定処理について説明する。
【0045】
ステップS1では、脈圧検知部7から受信した脈圧の情報に基づいて、脈の強さが所定値以上であるか判断する。該判断がYesの場合はステップS2に進む一方、ステップS1の判断がNoの場合はステップS3に進む。本実施形態では、ステップS1において、脈の強さは、脈圧の振幅の大きさに基づいて判断され、ステップS1の判断がYesの場合は「実」の脈、ステップS1の判断がNoの場合は「虚」の脈となるように、ステップS1の所定値が設定されている。
【0046】
ステップS2では、円形の面積を大に設定した後、ステップS4に進む。一方、ステップS3では、円形の面積を小に設定した後、ステップS4に進む。
【0047】
ステップS4では、脈圧検知部7から受信した脈圧の情報に基づいて、脈の速さが所定値以上であるか否かを判断する。該判断がYesの場合はステップS5に進む一方、ステップS4の判断がNoの場合はステップS6に進む。本実施形態では、ステップS4において、脈の速さは、1分間あたりの脈の回数に基づいて判断され、ステップS4の判断がYesの場合は「数」の脈、ステップS4の判断がNoの場合は「遅」の脈となるように、ステップS4の所定値(例えば、50回)が設定されている。
【0048】
ステップS5では、円形の輪郭を細く設定した後、ステップS7に進む。一方、ステップS6では、円形の輪郭を太く設定した後、ステップS7に進む。
【0049】
ステップS7では、調整部8から受信した各脈診位置Pに対する脈圧検知部7の押圧力の情報に基づいて、脈の深さが第1所定値以上であるか否かを判断する。該判断がYesの場合はステップS8に進む一方、ステップS7の判断がNoの場合はステップS11に進む。
【0050】
ステップS8では、上記押圧力の情報に基づいて、脈の深さが第2所定値以上であるか否かを判断する。該判断がYesの場合はステップS9に進む一方、ステップS8の判断がNoの場合はステップS10に進む。
【0051】
本実施形態では、ステップS7及びS8において、脈の深さは、上記押圧力及び脈圧の大きさに基づいて判断される。例えば、脈の深さは、上記押圧力を変化させた際における上記脈圧の振幅が最大となる押圧力の大きさに基づいて判断される。「浮」は上記押圧力が比較的大きい場合において脈圧の振幅が最大となる状態、「平」は上記押圧力が中程度の場合において脈圧の振幅が最大となる状態、「沈」は上記押圧力が比較的小さい場合において脈圧の振幅が最大となる状態である。
【0052】
また、ステップS7の判断がNoの場合は「浮」の脈、ステップS8の判断がYesの場合は「沈」の脈、ステップS8の判断がNoの場合は「平」の脈となるように、第1所定値及び第2所定値が設定されている。つまり、第2所定値は第1所定値よりも大きな値が設定されている。
【0053】
ステップS9では、円形における輪郭以外の部分の濃度を高に設定した後、エンドに進む。一方、ステップS10では、円形における輪郭以外の部分の濃度を中に設定した後、エンドに進む。また、ステップS11では、円形における輪郭以外の部分の濃度を低に設定した後、エンドに進む。
【0054】
上記エンドに進んだ後、再びステップS1から
図7に示す処理をスタートする。このように、設定部15の表示情報の設定処理は、繰り返し実行される、つまり、継続して設定処理が実行されるようになる。したがって、設定部15において設定される表示情報は、時間の経過に伴って変化する脈圧及び押圧力に基づいて変化するようになる。
【0055】
次に、
図6及び
図8~
図11を用いて、表示部16に表示される表示情報の例について説明する。
図6及び
図8~
図10は、脈診装置2が左手首LWに装着されている例、
図11は、脈診装置2が図示されていない右手首に装着されている例を示している。
【0056】
図6の例では、第1表示領域A1に表示される「寸部」、「関部」及び「尺部」の表示情報が全て同一となっている。また、
図6の例では、表示情報が、円形の面積が「小」、円形の輪郭が「細」及び円形における輪郭以外の部分の濃度が「低」に設定されている。換言すると、
図6に示す表示情報では、脈の強さが「虚」、脈の速さが「数」及び脈の深さが「浮」の状態を表している。
【0057】
図8の例では、第1表示領域A1に表示される「寸部」、「関部」及び「尺部」の表示情報が全て同一となっており、かつ、
図6の例よりも押圧力が高められた場合の表示情報を表示している。また、
図8の例では、表示情報が、円形の面積が「小」、円形の輪郭が「細」及び円形における輪郭以外の部分の濃度が「中」に設定されている。換言すると、
図8に示す表示情報では、脈の強さが「虚」、脈の速さが「数」及び脈の深さが「平」の状態を表している。
【0058】
図9の例では、第1表示領域A1に表示される「寸部」、「関部」及び「尺部」の表示情報が全て同一となっており、かつ、
図8の例よりも押圧力が高められた場合の表示情報を表示している。また、
図9の例では、表示情報が、円形の面積が「大」、円形の輪郭が「細」及び円形における輪郭以外の部分の濃度が「高」に設定されている。換言すると、
図9に示す表示情報では、脈の強さが「実」、脈の速さが「数」及び脈の深さが「沈」の状態を表している。
【0059】
図10の例では、第1表示領域A1に表示される「寸部」、「関部」及び「尺部」毎の表示情報が異なっている。
【0060】
また、
図10の例では、第1表示領域A1における「寸部」の表示情報が、円形の面積「小」、円形の輪郭が「細」及び円形における輪郭以外の部分の濃度が「低」に設定されている。換言すると、
図10に示す「寸部」の表示情報では、脈の強さが「虚」、脈の速さが「数」及び脈の深さが「浮」の状態を表している。
【0061】
また、
図10の例では、第1表示領域A1における「関部」の表示情報が、円形の面積「小」、円形の輪郭が「細」及び円形における輪郭以外の部分の濃度が「中」に設定されている。換言すると、
図10に示す「関部」の表示情報では、脈の強さが「虚」、脈の速さが「数」及び脈の深さが「平」の状態を表している。
【0062】
また、
図10の例では、第1表示領域A1における「尺部」の表示情報が、円形の面積「大」、円形の輪郭が「細」及び円形における輪郭以外の部分の濃度が「高」に設定されている。換言すると、
図10に示す「尺部」の表示情報では、脈の強さが「実」、脈の速さが「数」及び脈の深さが「沈」の状態を表している。
【0063】
図11の例では、第2表示領域A2に表示される「寸部」、「関部」及び「尺部」の表示情報が全て同一となっている。また、
図11の例では、表示情報が、円形の面積が「小」、円形の輪郭が「太」及び円形における輪郭以外の部分の濃度が「低」に設定されている。換言すると、
図11に示す表示情報では、脈の強さが「虚」、脈の速さが「遅」及び脈の深さが「浮」の状態を表している。
【0064】
以上より、本実施形態によれば、脈診位置Pにおける脈圧及び脈診位置Pに対する脈圧検知部7の押圧力に基づいて設定された脈の強さ、速さ及び深さの表示情報が表示部16に表示されるようになる。本実施形態における脈診システム1の使用者が表示部16に表示された表示情報を視認することで、特許文献1の如き脈動を視認する場合に比べて容易に脈の状態を把握することができる。これにより、例えば、上記使用者は、中医師による脈診結果と上記表示部16に表示された脈の強さ、速さ及び深さの表示情報とを比較することで、中医師がどのような判断基準に基づいて脈診しているのかを把握することができる。したがって、上記使用者は、表示部16に表示された表示情報を用いて脈診手法の訓練を行うことが可能となるので、脈診手法を習得したい使用者のニーズを満足させることができる。
【0065】
また、表示部16に表示される脈の強さ、速さ及び深さの表示情報は、表示態様がそれぞれ異なっているので、脈の強さ、速さ及び深さの表示態様が全て同一である場合に比べて上記使用者の表示情報の視認性を高めることができる。
【0066】
また、脈の強さ、速さ及び深さの表示情報が表示部16において図形の形状、図形の面積、図形の輪郭の太さ、及び、図形における前記輪郭以外の部分の濃度によって表示されるようになるので、上記使用者の表示情報の視認性をより高めることができる。
【0067】
また、時間の経過に伴って脈圧及び押圧力が変化すると、表示部16に表示される脈の強さ、速さ及び深さの表示情報が変化するようになる。これにより、例えば、使用者は、表示情報を視認することで、刻一刻と変化する脈の状態を把握することができる。
【0068】
また、脈診位置P(寸部、関部及び尺部)毎の脈の強さ、速さ及び深さが表示部16に表示されるようになるので、上記使用者は脈診位置P毎の脈の状態を表示部16から把握することができる。
【0069】
また、上記使用者は、脈診装置2を自身の手首に装着して表示部16に表示情報を表示する状態と、該脈診装置2を手首が外して自身の手で脈診する状態と、を繰り返し行うことで、中医師による脈診結果が無くても脈診システム1を用いて脈診手法の訓練を行うことができる。
【0070】
また、上記使用者は、定期的(例えば、毎日一回)に脈診装置2を自身の手首に装着するとともに、表示部16に表示された表示情報を視認することで、該表示情報から自身の体調管理を行うことが可能となる。該体調管理の例として、食生活の状態や薬の効き具合などがある。
【0071】
なお、本実施形態では、設定部15において設定された脈の強さ、速さ及び深さの表示情報がディスプレイ4の表示部16に表示されていたが、設定部15において、上記表示情報に加えて、脈の強さ、速さ及び深さの音声情報を設定するとともに、該音声情報を設定部15と通信可能に接続されたスピーカ17(
図12参照)から出力するようにしてもよい。このようにすることで、脈の強さ、速さ及び深さの音声情報がスピーカ17から出力されるようになるので、例えば、視力が比較的低い使用者であってもスピーカ17から出力された音声情報により、脈の状態を把握することが可能となる。さらに、参考例として、設定部15は表示情報及び音声情報を設定するのではなく、音声情報のみを設定し、該設定した音声情報をスピーカ17から出力するようにしてもよい。なお、スピーカ17は、例えば、空気を振動させる形式の空気伝導式スピーカ、或いは、骨を振動させる形式の骨伝導式スピーカである。
【0072】
また、本実施形態では、脈診システム1は、脈診装置2、コンピュータ3及びディスプレイ4が備えられていたが、脈診装置2に脈圧検知部7及び調整部8を備えるとともにコンピュータ(例えば、スマートフォンなどの携帯端末)に設定部15及び表示部16を備えることで、脈診装置2及びコンピュータにより脈診システム1を構成するようにしてもよく、或いは、脈診装置2に脈圧検知部7、調整部8、設定部15及び表示部16を備えることで、脈診装置2により脈診システム1を構成するようにしてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、脈圧が強い場合はそうでないときよりも円形の面積を大きくし、脈の速さが速い場合はそうでないときよりも円形の輪郭を細くし、及び、脈が深い(押圧力が大きい状態において脈圧の振幅が最大となる)場合はそうでないときよりも円形における輪郭以外の部分の濃度を濃くするようになっていたが、脈圧の強さ、速さ及び深さ毎に表示態様が異なっていれば、それぞれの表示態様を任意に変更してもよい。換言すると、脈圧の強さに応じて円形の輪郭の太さ或いは円形における輪郭以外の部分の濃度を変更するようにしてもよく、脈の速さに応じて円形の面積或いは円形における輪郭以外の部分の濃度を変更するようにしてもよく、又は、脈の深さに応じて円形の面積或いは円形の輪郭を変更するようにしてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、表示情報は、脈の強さ、速さ及び深さ毎に表示態様が異なっていたが、脈の強さ、速さ及び深さの表示態様を同一にしてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、表示情報は、2次元の円形の図形が用いられていたが、2次元の円形以外の図形(多角形、星形、菱形等)、3次元の図形、或いは、図形以外(例えば、文字)であってもよい。
【0076】
また、本実施形態では、設定部15は、寸部、関部及び尺部毎の表示情報を設定していたが、これらの少なくとも1つ(例えば、寸部)の表示情報を設定するようにしてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、表示態様として、寸部、関部及び尺部毎の表示情報の色について言及していなかったが、寸部、関部及び尺部毎の表示情報の色を異なる色(例えば、寸部の表示情報を緑色、関部の表示情報を黄土色、尺部の表示情報を紫色)にしてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、設定部15は、脈の強さ、速さ及び深さを各所定値と比較することより、設定する表示情報を切り替える(例えば、円形の面積の大小)の切り替えるようにしていたが、脈の強さ、速さ及び深さに応じて表示情報を変更するようにしてもよい。例えば、脈の深さが大きいほど円形の面積を大きくし、脈の速さが早いほど円形の輪郭を細くし、及び、脈が深いほど、円形における輪郭以外の部分の濃度を濃くするようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、表示部16には、2つの表示領域(第1表示領域A1及び第2表示領域A2)が備えられていたが、表示領域を1つにしてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、表示部16には、設定部15が脈診位置Pにおける脈圧及び脈診位置Pに対する脈圧検知部7の押圧力に基づいて設定した脈の強さ、速さ及び深さの表示情報が表示されるようになっていたが、脈の強さ、速さ及び深さの表示情報に加えて、設定部15が上記脈圧及び押圧力の少なくとも一方に基づいて設定した他の脈の状態(例えば、脈の流暢度、太さ、緊張度、長さ及びリズム)の表示情報を表示部16に表示するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、脈診システムに適している。
【符号の説明】
【0082】
1 脈診システム
7 脈圧検知部
8 調整部
15 設定部
16 表示部
17 スピーカ