(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132465
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】吸収性物品用不織布シート
(51)【国際特許分類】
D04H 1/54 20120101AFI20240920BHJP
D04H 1/4391 20120101ALI20240920BHJP
D04H 1/70 20120101ALI20240920BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
D04H1/54
D04H1/4391
D04H1/70
A61F13/511 100
A61F13/511 300
A61F13/511 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043234
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】和田 正
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀行
【テーマコード(参考)】
3B200
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA08
3B200BA09
3B200BA14
3B200BB05
3B200DC01
3B200DC02
3B200DC05
3B200DC06
3B200DC07
3B200EA07
4L047AA13
4L047AA19
4L047AA21
4L047AA27
4L047AB02
4L047BA08
4L047CA05
4L047CA07
4L047CA12
4L047CA13
4L047CA18
4L047CB02
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】クッション性に優れる吸収性物品用不織布シートを提供する。
【解決手段】熱可塑性繊維を含む不織布の片面上に、熱可塑性繊維を含む複数の繊維塊を有し、前記不織布と前記繊維塊とが繊維融着により結合している、吸収性物品用不織布シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性繊維を含む不織布の片面上に、熱可塑性繊維を含む複数の繊維塊を有し、
前記不織布と前記繊維塊とが繊維融着により結合している、
吸収性物品用不織布シート。
【請求項2】
前記繊維塊が、前記不織布の片面上において離散配置されている、請求項1記載の吸収性物品用不織布シート。
【請求項3】
前記繊維塊は、平均中心間距離が0.5mm以上15mm以下である、請求項1又は2記載の吸収性物品用不織布シート。
【請求項4】
前記繊維塊の平均個数密度が4千個/m2以上50万個/m2以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布シート。
【請求項5】
前記不織布の片面が凹凸形状を有し、該凹凸形状の凹部に前記繊維塊が配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布シート。
【請求項6】
前記繊維塊は、前記凹部の開口端に載置されて結合されている、請求項5記載の吸収性物品用不織布シート。
【請求項7】
不織布の片面上に繊維塊を載せ、熱風により前記不織布と前記繊維塊とを熱融着させる、吸収性物品用不織布シートの製造方法。
【請求項8】
前記不織布の片面が凹凸形状を有し、前記繊維塊を前記凹凸形状の凹部上に載せる、請求項7記載の吸収性物品用不織布シートの製造方法。
【請求項9】
未融着状態の繊維ウエブの片面上に繊維塊を載せ、熱風により前記繊維ウエブと前記繊維塊とを熱融着させる、吸収性物品用不織布シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品用不織布シートに関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、おむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の構成部材など様々な用途に用いられている。例えば、吸収性物品の表面シートとして用いられる不織布には様々な構造を備えたものがある。
例えば、特許文献1には、凹凸形状を有する繊維層内部にコットンの繊維塊を含む不織布が記載されている。該不織布では、内部のコットンが抜け落ちないよう含有量を、凸部領域よりも凹状領域で少なくしている。
特許文献2には、複数の繊維粒が立体的に絡まり、該繊維粒に含まれる熱融着性の繊維によって接着された繊維シートが記載されている。これにより内部の繊維粒が片寄ったりすることを防ぐことができるとされている。
特許文献3記載の吸収性物品には、不織布を切り出してなる繊維塊と、パルプ等の吸収性繊維とを内蔵する吸収体が記載されている。前記繊維塊は、吸収体内部での均一分散性の観点から、四角柱形状や円盤形状など相対向する2つの基本面を有するものが記載されている。
特許文献4には、2層以上の繊維層を有し、少なくとも1層に、厚みが扁平にされた繊維塊を内蔵するエアースルー不織布が記載されている。該エアースルー不織布は肌触りに優れると共に、前記繊維塊が模様のようになって視覚的効果が高められるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-69089号公報
【特許文献2】特開2016-94692号公報
【特許文献3】特開2020-96779号公報
【特許文献4】国際公開第2020/049747号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1~4記載の不織布や吸収体は、繊維塊を内蔵することで様々な機能を具備している。
一方で、近年、吸収性物品に用いられる不織布シートにおいては、柔らかい風合いを保持しながら当接する肌への負担を軽減する観点から、繊維の坪量を過度に高めることなくクッション性を向上させることが求められるようになってきた。このような問題を解決することについて、上記の特許文献1~4には示されていない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、クッション性に優れる吸収性物品用不織布シートに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱可塑性繊維を含む不織布の片面上に、熱可塑性繊維を含む複数の繊維塊を有し、前記不織布と前記繊維塊とが繊維融着により結合している、吸収性物品用不織布シートを提供する。
【0007】
また、本発明は、不織布の片面上に繊維塊を載せ、熱風により前記不織布と前記繊維塊とを熱融着させる、吸収性物品用不織布シートの製造方法を提供する。
更に、本発明は、未融着状態の繊維ウエブの片面上に繊維塊を載せ、熱風により前記繊維ウエブと前記繊維塊とを熱融着させる、吸収性物品用不織布シートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品用不織布シートは、クッション性に優れたものとなる。本発明の吸収性物品用不織布シートの製造方法によれば、上記の本発明の吸収性物品用不織布シートを好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る吸収性物品用不織布シートの好ましい一実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示す吸収性物品用不織布シートのII-II線断面を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す吸収性物品用不織布シートにおける押圧力の分散作用を模式的に示す説明図である。
【
図4】
図1に示す吸収性物品用不織布シートの有する不織布が第2面側に凹凸形状を有する態様の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図1に示す吸収性物品用不織布シートの有する不織布が第2面側及び第1面側の両面に凹凸形状を有する態様の一例を示す断面図である。
【
図6】実施例1~3の吸収性物品用不織布シートの第2面側を示す図面代用写真である。
【
図7】実施例1、2及び比較例1の吸収性物品用不織布シートに関し、(A)は高荷重下(50gf/cm
2押圧下)における全厚み(TM)を示すグラフであり、(B)は加圧変化比(TM/T0)を示すグラフであり、実施例3及び比較例2の吸収性物品用不織布シートに関し、(C)は高荷重下(50gf/cm
2押圧下)における全厚み(TM)を示すグラフであり、(D)は加圧変化比(TM/T0)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る吸収性物品用不織布シートの好ましい一実施形態について、図面を参照しながら、以下に説明する。なお、本明細書において、吸収性物品用不織布シートを単に不織布シートということがある。
【0011】
本実施形態の不織布シート10は、
図1及び
図2に示すように、不織布1と、不織布1の片面上に配置された複数の繊維塊2とを有する。不織布シート10は、不織布1のある面を第1面10Tと称し、繊維塊2のある面を第2面10Bと称する。吸収性物品において、第1面10T、第2面10Bのいずれを肌面側としてもよい。後述のクッション性の観点から、第1面10Tを肌面側とすることが好ましい。特に、不織布シート10を吸収性物品の吸収体よりも肌面側のシート(例えば表面シート)とする場合、第1面側10Tが肌面側であると、クッション性に加え肌触りもより良好なものとなる。また、不織布シート10は、表面シートと吸収体との間に介在させるサブレイヤーとしても良好なクッション性する点で好ましい。その際も第1面10Tを肌面側とすることが好ましい。
なお、不織布シート10の肌面側とは、吸収性物品に適用した場合に着用者の肌に接触する側を意味し、その反対面を非肌面側という。これらは、着用者の肌に接触する面を有さない部材に関しても、吸収性物品の部材構成における相対的な位置関係を示す用語として用いる。
【0012】
不織布1及び繊維塊2は共に熱可塑性繊維を有し、両者が繊維融着により結合している。この結合は主に、不織布1の構成繊維と繊維塊2の構成繊維との交点部における熱融着によってなされる。前記交点部に加え、不織布1内部、繊維塊2内部にも繊維融着があってもよい。該繊維融着に関し、前記熱可塑性繊維同士が融着していてもよいし、片方の熱可塑性繊維が溶けて融着していてもよい。また、前記熱可塑性繊維が芯鞘型の複合繊維である場合、鞘の樹脂同士が融着していてもよいし、片方の鞘の樹脂が溶けて融着していてもよい。前記繊維融着により、不織布1と繊維塊2との結合強度が高く、外圧が加わったり液に濡れたりする状況でも、分離し難くなる。このことが、不織布シート10における後述のクッション性を高める。
【0013】
不織布1は、この種の物品において通常用いられるものを種々採用できる。例えば、繊維同士を融着させたもの(エアースルー不織布、スパンボンド不織布、ヒートロール不織布など)、バインダーによって繊維を接着させたもの(レジンボンド)、または流体や機械的な作用による絡み合い(スパンレース、スチームジェット、ニードルパンチなど)によって形成された繊維シートなどが挙げられる。
【0014】
不織布1は、構成繊維として熱可塑性繊維と共に他の繊維を含んでもよい。他の繊維としては、例えば、コットン、再生セルロース繊維、パルプ繊維が挙げられる。不織布1において、熱可塑性繊維が50質量%以上、100質量%以下含まれていることが好ましい。これにより、不織布1を介して繊維塊2への体液などの引き込み性が増す点で好ましい。
【0015】
繊維塊2とは、繊維が絡み合ったり、融着したりして粒状になっているものをいう。繊維塊2は、不織布1に比して相対的に繊維配向がランダムにされている。繊維塊2の繊維密度は、異物感を生じない程度に不織布1の繊維密度よりも高いことが好ましい。この点は後述する。
繊維塊2は、熱可塑性繊維を含み、コットン、再生セルロース繊維、パルプ繊維を含んでいてもよい。繊維塊2において、熱可塑性繊維が50質量%以上、100質量%以下が含まれていることが好ましい。これにより、クッション性に加え、吸収性も兼ね備えたものとなる点で好ましい。
繊維塊2の形状は不定形、球状、扁平、米粒状、円柱状であってもよい。後述のクッション性の観点から、繊維塊2は、団子のように丸められた形状であることが好ましく、球状であることがより好ましい。
【0016】
前記熱可塑性繊維の構成樹脂は、種々のものが用いられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(以下、PPともいう)、ナイロン、ポリエステルなどの樹脂が用いられる。熱可塑性繊維が芯鞘型やサイドバイサイドなどの複合繊維である場合、繊維の表面に位置する熱融着樹脂として、ポリエチレン、低融点ポリプロピレン(エチレン-プロピレン共重合体(ランダムPP、ブロックPP)、低立体配置アイソタクチック-シンジオタクチックPP、低融点ポリエチレンテレフタレートなどが好ましい。
【0017】
不織布1に含まれる熱可塑性繊維は繊維表面が親水油剤処理されたものを用いることが、吸収性物品における液体を素早く吸収できる点で好ましい。また、繊維塊2に含まれる熱可塑性繊維も繊維表面が親水油剤処理されたものを用いると不織布1から液体を次のシートに素早く移行できる点で好ましい。
【0018】
不織布シート10の厚み方向Zにおいて、第1面10T側の不織布1が繊維で満たされた層であるのに対し、第2面10B側では複数の繊維塊2、2間の隙間21があり、不織布1よりも疎な繊維層となっている。これにより、不織布シート10は、単に2つの繊維層を積層した場合に比べて繊維坪量が抑えられ、第1面10T側の不織布1の柔らかい風合いを保持できる。
加えて、不織布シート10はクッション性が高い。これは、繊維融着によって不織布1と一体化された複数の繊維塊2それぞれが、押圧力を受けて厚みを減じながら隙間21に向けて広がるように変形し、同時に押圧力を多方向に分散させる作用をすることによる。例えば
図3に示すように、押圧力Fが第1面10T側から加わった場合、その押圧力Fは、不織布1で面状に受け止められた後、第2面10B側の複数の繊維塊2に分散される。個々の繊維塊2はそれぞれ、分散され軽減された押圧力F1で適度に厚みを減じ、隙間21に向けて広がるように変形する。そればかりか、個々の繊維塊2はそれぞれ、前記変形に伴い、押圧力F1を厚み方向Zだけでなく多方向に放射状に分散させる。この繊維塊21の変形及び押圧力Fの分散作用(F→F1→F2)により、不織布シート10は、押圧力Fによる衝撃を軽減することができる。加えて、個々の繊維塊2は前記変形に伴い、分散され軽減された押圧力F2に応じて他の部材9との接触面積を適度に増やし、衝撃の吸収力をより高める。一方で、繊維塊2と他の部材9との接触面積は、不織布1のようなシート状の場合と異なり、繊維塊2の粒の範囲に限定される。しかも、2段階に分散された押圧力F2で繊維塊2の潰れの程度が軽減される。これにより、不織布シート10は、他の部材9と密着するように潰れてしまうことが抑えられ、嵩高さで柔らかな風合いが保持されやすく、この状態の下で衝撃吸収をすることが可能となる。このようにして、不織布シート10は、クッション性が高められる。
上記クッション性の観点から、繊維塊2は、ランダムに配向していると扁平に押しつぶされるような変形が生じ難く好ましい。同様に、繊維塊2は、団子のように丸められた形状が好ましく、球状であることがより好ましい。
【0019】
更に不織布シート10は、第2面10B側に隙間21があることで、第1面10T側から第2面10B側への液透過性に優れる。加えて、不織布シート10は、前述のクッション性で隙間21が保持されやすく、第2面10B側から第1面10Tへの液の戻りが抑制される。例えば、不織布シート10を吸収性物品の吸収体よりも肌面側のシートとして用いた場合に、該吸収性物品は、クッション性ばかりでなく、体液の液透過性及び液戻り防止性に優れたものとなる。
【0020】
繊維塊2による押圧力Fの分散作用を更に高める観点から、繊維塊2が、不織布1の片面上において離散配置されていることが好ましい。また、離散配置により、繊維塊2、2間の隙間21がより明確になって、疎な繊維層が保持されやすくなる。これにより、第1面10T側の不織布1の柔らかい風合いをより保持しやすくなり、前述の吸収性物品における体液の液透過性及び液戻り防止性をより高めることができる。
上記作用を有意に発現させ得る限り、繊維塊2は、一部に互いに接しているものがあってもよい。互いに接しているものの割合は、全体の繊維塊2のうち30%以下、5%以上であることが好ましい。
【0021】
上記と同様の観点から、繊維塊2は、後述する平均中心間距離が0.5mm以上15mm以下であることが好ましい。
前記下限以上とすることで、繊維塊2が密になり過ぎずに不織布シート10の剛性を抑えて嵩高くでき、押圧力Fをより分散させやすい。前記上限以下とすることで、隙間21が広がり過ぎることで生じる第1面10T側の不織布1が部分的に落ち込んで窪むような変形を抑え、前述のクッション性をより効果的に発現させることができる。
この観点から、前記平均中心間距離は、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、また、15mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0022】
不織布シート10において、繊維塊2の平均個数密度が4千個/m2以上50万個/m2以下であることが好ましい。これは、不織布シート10の第2面10B側の平面領域における繊維塊2が配置される割合を示めす。前記下限以上とすることで、隙間2が広がり過ぎることで生じる第1面10T側の不織布1が部分的に落ち込んで窪むような変形を抑え、前述のクッション性をより効果的に発現させることができる。前記上限以下とすることで、繊維塊2が密になり過ぎずに不織布シート10の剛性を抑えてより嵩高くでき、押圧力Fをより分散させやすい。
この観点から、繊維塊2の平均個数密度は、4千個/m2以上が好ましく、1万個/m2以上がより好ましく、また、50万個/m2以下が好ましく、30万個/m2以下がより好ましい。
【0023】
(繊維塊2の平均個数密度及び平均中心間距離の測定方法)
不織布シート10の第2面10B側を平面視して、繊維塊2の中心点を、繊維塊2の外周表面から最も長くなる長辺の中間点として特定する。繊維塊2の表面は、繊維表面が毛羽立っている場合は、繊維塊2の内部表面と毛羽の先端までの中間点を外径とする。前記「内部表面」とは、不織布シート10の表面側から平面視して、繊維塊2の表面側の繊維密度が繊維塊2の内部とほぼ同じとなりはじめる境界(繊維塊2の画像より繊維の濃淡として、濃淡が繊維塊2の内部/2となる境界)として求められる。
次いで、100mm四方の領域内の繊維塊2の数をカウントし、その中に含まれる繊維塊2の個数を前記100mm四方の面積で割ることで、繊維塊2の個数密度(個/mm2)が求められる。100mm四方の切片上に位置する繊維塊2については、繊維塊2の上記中心点が切片上のものと切片から内側のものをカウントする。不織布シート10の異なる3つの位置にて測定し、その平均値を求め平均個数密度とする。繊維塊2が正方形の格子状に均一配列していると仮定して、下記式(I)により繊維塊2の平均中心間距離が求められる。
【0024】
【0025】
繊維塊2の平均中心間距離は、不織布シート10の第2面10B側において、いずれの配列方向において均等であってもよく、配列方向によって異なってもよい。
配列方向によって異なる場合、例えば、一方向Yよりも該一方向に直交する方向Xで繊維塊2の平均中心間距離を広くする態様が挙げられる。この場合、不織布シート10は、一方向Yではシートとしての形状をある程度保持しながら緩やかに撓るような変形性を備え、一方向に直交する方向Xでは相対的に大きく湾曲しやすい変形性を備える。
上記の一方向Yと該一方向に直交する方向Xは、不織布シート10の平面方向に沿う面内において、不織布シート10の目的に応じて適宜設定することができる。例えば、不織布シート10の製造工程における機械流れ方向(Machine Direction;MD)と該機械流れ方向に直交する幅方向(Cross Drection;CD)のそれぞれに沿う不織布シート10の方向、すなわち不織布シートの長手方向と幅方向を前述の一方向Y及び一方向に直交する方向Xとすることが好ましい。また、不織布シート10を吸収性物品における表面シート等の構成部材とする場合に、一方向Yを吸収性物品の長手方向とし、一方向Yに直交する方向Xは吸収性物品の幅方向とすることが好ましい。すなわち、緩やかに撓る一方向Yを吸収性物品の長手方向とすると、股下部から前後方向に延びる方向での着用者の身体の曲面に前記吸収性物品を沿わせやすくできる。湾曲しやすい方向Xを吸収性物品の幅方向とすると、股下部の左右からの圧力に対して吸収性物品が柔軟に縮まるように変形しやすくできる。これらの観点から、繊維塊2の平均中心間距離は、一方向Yと前記一方向に直交する方向Xの少なくとも一方向の配列方向において均等であることが好ましい。
【0026】
上記の観点から、繊維塊2が一方向Y(Y方向ともいう)、前記一方向に直交する方向X(X方向ともいう)の両方向においてそれぞれの平均中心間距離にて均等に配列している場合、一方向Yに沿う繊維塊2のY方向平均中心間距離(K1)と、前記一方向に直交する方向Xに沿う繊維塊2のX方向平均中心間距離(K2)との差(K2-K1)は、前者のY方向平均中心間距離(K1)に対する割合(((K2-K1)/K1)×100)として、0%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。
また、前記割合((K2-K1)/K1)は、吸収性能の異方性を適度に調整し、吸収性物品の幅方向(X方向)における液の拡散性を抑える観点から、300%以下が好ましく、250%以下がより好ましく、150%以下が更に好ましい。
【0027】
(繊維塊2のY方向平均中心間距離(K1)及びX方向平均中心間距離(K2)の測定方法)
繊維塊2が一方向Yと前記一方向に直交する方向Xのそれぞれに均等に配列している場合は、一方向Yに配列している11個分の両端に位置する繊維塊2の中心点間の距離を10で割り、それを異なる3箇所にて測定しその平均値をY方向平均中心間距離(K1)(mm)とする。次に、繊維塊2の前記一方向に直交する方向Xに配列している5列分の列を抽出し、5列分の両端に位置する繊維塊2の中心点間の距離を4で割り、それを異なる3箇所にて測定しその平均値をX方向平均中心間距離(K2)(mm)とする。
【0028】
繊維塊2の平均繊維密度は、より潰れ難くする観点から、0.03g/cm3以上が好ましく、0.04g/cm3以上がより好ましく、0.05g/cm3以上が更に好ましい。
また、繊維塊2の平均繊維密度は、繊維塊2の剛性を抑えて適度な変形を可能にし、不織布シート10のクッション性をより高める観点、不織布シート10の柔らかい風合いをより保持しやすくする観点、押圧時に繊維塊2が不織布1を介して第1面10T側へ突き出ることを防止する観点から、0.080g/cm3以下が好ましく、0.075g/cm3以下がより好ましく、0.070g/cm3以下が更に好ましい。
【0029】
不織布1の平均繊維密度(M1)に対する繊維塊2の平均繊維密度(M2)の比(M2/M1)は、不織布シート10における前述のクッション性をより高める観点から、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
また、前記比(M2/M1)は、繊維塊2の剛性を抑えて適度な変形を可能にし、不織布シート10全体の柔らかい風合いをより保持しやすくする観点、押圧時に繊維塊2が不織布1を介して第1面10T側へ突き出ることを防止する観点から、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。
【0030】
繊維塊2の平均質量は、0.0002g/個以上0.010g/個以下が好ましい。前記下限以上とすることにより繊維塊2を均一に分散させやすくなり、前記上限以下とすることにより、繊維塊2、2間の平均中心間距離を広げずに好適な隙間21を形成しやすくなる。すなわち、上記の範囲とすることにより、繊維塊2をできるだけ小さく均一に分布させることができるので、肌に触れた際、粒々感がなく、滑らかな風合いが得られる。
上記の観点から、繊維塊2の平均質量は、0.0010g/個以上がより好ましく、0.0020g/個以上が更に好ましく、また、0.0050g/個以下がより好ましく、0.0040g/個以下が更に好ましい。
【0031】
繊維塊2の平均直径は、0.5mm以上5mm以下が好ましい。前記下限以上とすることにより、不織布シート10の厚みをより嵩高くして前述のクッション性を発現させやすくでき、前記上限以下とすることにより、不織布シート10の厚み方向Zにおける凹凸感を抑えてより滑らなか肌触りにすることができる。
上記の観点から、繊維塊2の平均直径は、1.0mm以上がより好ましく、1.5mm以上が更に好ましく、また、5.0mm以下がより好ましく、3.0mm以下が更に好ましい。
【0032】
(繊維塊2の平均質量、平均直径、平均繊維密度の測定方法)
(1)平均質量
不織布シート10から、融着している繊維塊2をハサミなどでカットして切り離す。次いで、0.1mgまで秤量可能な電子天秤により、10個の繊維塊の質量を測定し、その質量を10で割った値を繊維塊の質量とする。これを異なる塊について3回行い、その平均値を繊維塊2の平均質量とする。
(2)平均直径
前記(1)で切り出した繊維塊2について、株式会社キーエンス社製のマイクロスコープ「VHX-7000」(商品名)を用いて最小単位を0.1mmとして計測する。繊維塊2を平面視したときの面積から、この面積に等しくなる真円の直径を求め繊維塊の直径とする。繊維塊2の表面が毛羽立っている場合は、繊維塊2の内部表面と毛羽の先端までの中間点を外径とする。繊維塊20個の直径の平均値を繊維塊2の平均直径とする。
(3)平均繊維密度
前記(1)及び(2)に基づき、下記式(II)により、繊維塊2の平均繊維密度を算出する。
平均繊維密度=平均質量/(π×(平均直径/2)3×4/3) (II)
【0033】
繊維塊2の平均繊維直径(R2)は、不織布1の平均繊維直径(R1)よりも大きいことが好ましい。これにより、相対的に太い繊維を有する繊維塊2の繊維間距離が不織布1に比べ相対的に大きくなり、不織布シート10は、体重などで押圧された際のクッション性が増し、より良好な風合いとなる。
この観点から、不織布1の平均繊維直径(R1)に対する繊維塊2の平均繊維直径(R2)の比(R2/R1)は、1.5以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。
また、比(R2/R1)は、繊維塊2の柔軟性を保持して不織布シート10の風合いをより高める観点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。
【0034】
(不織布1及び繊維塊2の平均繊維直径の測定方法)
不織布1の任意の場所から、また、任意の繊維塊2から走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJCM-5100)を用いて100倍率にて3か所拡大観察する。
1mm2面積範囲内の繊維直径を測定する。繊維直径の測定は1か所につき各異なる繊維につき20点測定し平均値を平均繊維直径とする。繊維の断面が真円でない場合は、繊維の断面を繊維の長手方向から観察し、短辺と長辺の平均値を平均繊維直径とする。なお、不織布1や繊維塊2における繊維径の振れ幅は、上記走査電子顕微鏡で観察しても確認し難いほどの微差であることが通常である。例えば一般的には、繊維径の振れ幅としては繊維の規格からすれば6%程度のものである。したがって、上記のように20点測定し平均した値であれば、平均繊維直径とすることができる。
【0035】
不織布シート10において、
図4に示すように、不織布1の片面である第2面10B側が凹凸形状3を有し、凹凸形状3の凹部32に繊維塊2が配置されていてもよい。これにより、繊維塊2の向きが安定化し、前述の押圧力Fの分散性(F→F1→F2)がより安定的に生じやすい。また、不織布シート10は、嵩高さによる柔らかい風合いをより高めると共に、不織布1の凹凸形状3と繊維塊2とが組み合わさって前述のクッション性がより高められる。更に、不織布1の凹凸形状3における凸部31と凹部32の配列において、凹部32に配置される繊維塊2と凸部31とが2段階の特有のクッション性を奏することになる。
【0036】
図4に示すように、繊維塊2は、凹部32の開口端33に載置されて結合されていることが好ましい。凹部32の開口端33とは、凹部32の第2面10B側における開口を縁取る繊維層部分を言う。言い換えると、凹部32の空間を区画する壁面繊維層の第2面10B側の端部を意味する。繊維塊2が開口端33に載置されているとは、凹部32の空間を囲む開口端33に引っ掛かるようにして嵌め込まれた状態を意味する。この状態で、繊維塊2は、凹部32よりも第2面10B側に突出する。これにより不織布シート10のクッション性が更に高められる。この状態で、繊維塊2の一部が凹部32内に入り込んでいてもよい。繊維塊2の一部が凹部32内に入り込んでいる場合でも、入り込んでいない場合でも、凹部32と繊維塊2との間に空間34があることがクッション性を更に高める観点から好ましい。
【0037】
図5に示すように、不織布1の第1面10Tにも凹凸形状4を有することが好ましい。これにより、不織布シート10のクッション性、嵩高さによる柔らかい風合いを更に高めることができる。
【0038】
このような本実施形態の不織布シート10は、前述の構造を有することにより下記に示す優れた摩擦特性、粗さ特性及び圧縮特性を有する。
【0039】
[圧縮特性]
不織布シート10は、圧縮特性の線形性(LC)が大きいほど押圧時の厚みが残りやすく手等の肌で押した際の戻りの反発性、すなわちクッション性がよいと感じ得る。この観点から、圧縮特性の線形性(LC)は、0.25以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。また、初期はソフトな力で変形し、圧縮量が増すにつれ反発力が高くなるものが良いと感じる傾向にあることから、圧縮特性の線形性(LC)は、0.6以下が好ましく、0.55以下がより好ましい。
【0040】
不織布シート10は、圧縮エネルギー(WC)が高すぎず低すぎないことで、手で押した際の変形量に対する抵抗力が適度になりふんわりした風合いのものとなる。この観点から、圧縮エネルギー(WC)は、1gfcm/cm2以上が好ましく、2gfcm/cm2以上がより好ましい。また、反発力を抑えて適度な風合いを維持する観点から、凸部4における圧縮エネルギー(WC)は、10gfcm/cm2以下が好ましく、8gfcm/cm2以下であることがより好ましい。
【0041】
さらに、不織布シート10は、回復エネルギー(WC’)が大きいと、手等の肌で押した際の戻りの反発性、すなわちクッション性が適度になり風合いに優れるものとなる。この観点から、回復エネルギー(WC’)は、0.6gfcm/cm2以上が好ましく、2gfcm/cm2以上がより好ましい。また、反発力を抑えて適度な風合いを維持する観点から、凸部1における回復エネルギー(WC’)は、5gfcm/cm2以下が好ましく、3gfcm/cm2以下であることがより好ましい。
【0042】
不織布シート10の押圧前の初期状態(0.5gf/cm2荷重下)における全厚み(T0)は、加圧による変形量を大きくしてより柔らかい触感を感じ得るものとする観点から、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が更に好ましい。 また、不織布シート10の0.5gf/cm2荷重下における全厚み(T0)は、全厚みが高すぎると各繊維層の部分的な目付が低くなり加圧時に潰れやすくなる傾向があるため、それを防止する観点から、15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、6mm以下が更に好ましい。なお、「全厚み」とは、見かけ厚みとも言い、平板間に不織布シート10を挟んで測定される表裏面間の厚みを意味する。
不織布シート10は、押圧前の初期状態(0.5gf/cm2荷重下)における全厚み(T0)が前述の範囲にあることで、押圧時の変形量を大きくすることが可能となり、より柔らかい感触を感じ得る。
【0043】
不織布シート10の高荷重下(50gf/cm2荷重下)における全厚み(TM)は、安定感のある厚みやクッション性を感じ得るものとなり、風合いに優れたものとする観点から、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.4mm以上が更に好ましい。
また、不織布10の高荷重下(50gf/cm2荷重下)における全厚み(TM)は、加圧による変形量(T0-TM)を大きくしてより柔らかい触感を得られるようにする点において、押圧前の初期状態(0.5gf/cm2荷重下)における全厚み(T0)よりも小さいことが好ましい。この観点から、前記全厚み(TM)は、1.2mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.8mm以下が更に好ましい。
不織布シート10は、高荷重下(50gf/cm2押圧下)における全厚み(TM)が前述の範囲にあることで、高荷重時でも潰れてしまうことが抑えられ、塑性変形(へたり)が少ないと感じ得る。
【0044】
不織布シート10は、厚みの変形量(T0-TM)が大きいほど、より柔らかい感触を有するものとなる。この観点から、厚みの変形量(T0-TM)は、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上であることが更に好ましい。また、厚みの変形量(T0-TM)は、特に上限はないが目付が100g/m2以下の場合、変形量が小さいほど繊維間の距離が広くなりすぎることを防ぎ、クッション性や強度に優れたものとすることができる。この観点から、7mm以下が好ましく、6mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることが更に好ましい。荷重を加えたときの変形量は、その値が大きいほど、柔らかいと感じる。
【0045】
また、不織布シート10は、加圧変形比TM/T0が高いほど加圧により潰れにくくなり、体液などのウエットバック吸収性能に優れるものとなる。この観点から、加圧変形比TM/T0は0.1以上が好ましく、0.15以上が更に好ましい。加圧変形比TM/T0が高すぎないことで不織布シート10の硬化を防ぐことができる。この観点から、0.40以下が好ましく、0.30以下がさらに好ましい。
【0046】
(圧縮特性の測定方法)
これらの圧縮特性は、以下の方法により測定することができる。すなわち、自動圧縮試験機(カトーテック株式会社製のKES FB3-AUTO-A)を用い、速度0.05mm/s、測定子面積2cm2にて、圧縮荷重0.5gf/cm2以上50gf/cm2以下の範囲において、測定子によりシートを圧縮し、最大荷重を加えた後にただちに回復方向に移動させたときの厚みとその時の荷重を測定する。荷重が0.5gf/cm2荷重下での不織布厚みをT0とし、50gf/cm2荷重下での不織布厚みをTMとする。圧縮特性の線形性をLC、圧縮エネルギーをWC、回復エネルギーをWC’、圧縮のレジリエンスをRC(WC’/WC×100)、変形量「T0-TM」及び加圧変形比「TM/T0」を求める。測定面は表面側が測定子側となるようにする。それぞれの測定値はシートを5点測定して、その平均値とする。
【0047】
[測定サンプルの準備]
上述した各測定にあたり、吸収性物品から不織布シート10(サンプル)を準備する場合、ホットメルト接着剤で接着されているものについてはコールドスプレー等を用いて、不織布シート10(サンプル)へのダメージが少ないようにして吸収性物品から不織布シート10(サンプル)を剥がして準備する。なお、各測定において特に指定のない場合は、無作為に選んだ箇所を測定する。
【0048】
次に本発明の吸収性物品用不織布シートの製造方法の好ましい実施形態について説明する。
第1実施形態の不織布シートの製造方法は、不織布1の片面上に繊維塊2を載せ、熱風により不織布1と繊維塊2とを熱融着させる。これにより、熱可塑性繊維の溶融によって、繊維塊2内の繊維融着がなされると同時に、不織布1と繊維塊2とが繊維融着して結合する。このようにして不織布シート10を製造することができる。不織布1と繊維塊2とが繊維融着する直前の繊維塊2内の融着繊維に関して、不織布1の片面に載置する繊維塊2は構成繊維同士が融着されたものであってもよく、未融着のものであってもよい。第1実施形態においては、不織布1は既に繊維交点が結合されたものであるので、該不織布1の片面上においては、繊維塊2の配置を好適に制御しやすく好ましい。
不織布1及び繊維塊2の素材は、熱可塑性繊維を含む限り、前述のようにこの種の物品において通常用いられるものを種々採用できる。
繊維塊2は、種々の方法により形成することができる。例えば、粒わた(ノップス)用のカード機を用いて、原綿をつぶ状に加工することができる。カード機は複数台用いて複数回加工してもよい。あるいは、カーディングによりウエブを作成し、該ウエブを必要な繊維量となるよう所定の大きさに切り出し、螺旋状に巻かれた配管内に気流と一緒に流すことによって丸めて粒状に成形する。好ましくは繊維融着を防ぐ観点から100℃以下の冷風で行うことが好ましい。
熱風の吹き付けは、繊維塊2の載置した面(第2面10Bとなる面)から行ってもよく、反対面(第1面10Tとなる面)から行ってもよい。繊維塊2をウエブ上に均等に配置した状態で熱融着を行う観点から、第2面10Bとなる面から行うことが好ましい。
熱風の吹き付け条件としては次のようにすることが好ましい。
繊維間における融着点の形成によって繊維塊2が不織布シート10から脱落しにくくする観点、また不織布シート10の硬化を防ぐ観点から、熱風の吹き付け温度は、繊維の融着樹脂(鞘側の樹脂)の融点に対して5℃から15℃高い温度で行い、熱風の風速は0.5m/sから5m/s、好ましくは1.5m/sから3m/sにて、熱処理時間は2秒から10秒で行うことが好ましい。
【0049】
第1実施形態の不織布シートの製造方法において、不織布1としては、繊維塊2を載置する片面が平坦面のものを用いてもよく、前述の凹凸形状3を有するものを用いてもよい。後者の場合、繊維塊2を凹凸形状3の凹部32上に載せるように配置することができる。凹部32の開口径と繊維塊2の直径との関係を適宜設定することで、繊維塊2を凹部32の開口端33に載置するようにすることができる。これにより、載置操作が行いやすくなり、繊維塊2の配列が安定化して制御しやすくなる。
不織布1は、凹凸形状3を有する場合に、反対面(第1面10Tとなる面)に凹凸形状4を有するものであってもよい。
不織布1として片面の凹凸形状3を有するものを用いる場合、両面の凹凸形状3及び凹凸形状4を有するものを用いる場合のいずれであっても、繊維塊2を載置する前に、熱風回復処理を行っておくことが好ましい。これにより、不織布1の厚みが増すことで凹凸形状3がより明確になり、繊維塊2の凹部32への載置操作を行いやすくなる。
【0050】
次に、第2実施形態の不織布シートの製造方法は、未融着状態の繊維ウエブの片面上に未融着状態の繊維塊2を載せ、熱風により繊維ウエブと繊維塊2とを熱融着させる。これにより、熱可塑性繊維の溶融によって、前記繊維ウエブ内及び繊維塊2内の繊維融着がなされると同時に、不織布1と繊維塊2とが繊維融着して結合する。これにより不織布シート10を製造することができる。第2実施形態においては、熱風の風圧により、未融着状態の繊維ウエブ中に未融着状態の繊維塊2が入り込みやすくなり、不織布1と繊維塊2との接触面積が増して液の吸収速度が増す点で好ましい。
前記繊維ウエブは不織布1の原料として熱可塑性繊維を含む。前記「繊維ウエブ」とは、熱可塑性繊維を含む構成繊維が融着固定されずに緩やかに交絡し、それ自体ではシートとしての保形性を有さない繊維集合体のことである。すなわち、不織布化される前の繊維集合体である。そのため、繊維ウエブにおける繊維間の移動性は高い。このような繊維ウエブは所定の厚さとなるようカード機(図示せず)から供給され得る。
【0051】
本発明の吸収性物品用不織布シートは各種の吸収性物品に用いることができる。前記各種の吸収性物品には、成人用や乳幼児用のおむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の身体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0052】
本発明の吸収性物品用不織シートを有する吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。前記吸収性物品において、本発明の吸収性物品用不織布シートは、種々の構成部材として用いることが出来る、例えば吸収体よりも肌面側の構成部材として用いることができる、肌面側の構成部材としては、例えば、着用者の肌に当接する表面シートや、表面シートと吸収体との間に介在させるサブレイヤーとして用いることができる。その他、本発明の吸収性物品用不織布シートは、吸収体の被覆シート(コアラップシート)、吸収性物品のギャザー、外装シート、ウイングとして用いることもできる。
【実施例0053】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」は、特に断らない限りいずれも質量基準である。「-」は、その項目に該当する値等が無いことを意味する。
【0054】
[実施例1]
繊維として、芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を親水油剤によって処理された繊度3.3dex、繊維長51mmのものを用い、ローラーカード機により繊維ウエブを作製し、熱風温度140℃、ウエブの搬送速度10m/min、熱風の風速2m/sの条件でエアースルー処理を行い不織布化し不織布1を得た。不織布1の目付は10g/m
2であった。
繊維塊2用の繊維として、芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を親水油剤によって処理された繊度1.8dex、繊維長51mmのものを用い、ローラーカード機により目付15g/m
2の繊維ウエブを作製し、その繊維ウエブを1.5cm角にカットした後、粒状にした。
粒状にした未融着状態の繊維塊2を、不織布1におけるエアースルーの熱風が吹き付けられる面側の上の15cm×20cm四方の領域におよそ15mm間隔(平均中心間距離)で、MD方向及びCD方向に沿って格子状に並べた。
次いで、エアースルー処理を、繊維塊2側から、熱風温度140℃、ウエブの搬送速度5m/min、熱風の風速1m/sの条件で行い、繊維塊2と不織布1とを繊維融着により結合した。同時に、繊維塊2内においても繊維融着して繊維同士を結合した。
これにより、実施例1の不織布シート10を作製した(
図6(A)参照)。
【0055】
[実施例2]
繊維として、芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を親水油剤によって処理された繊度3.3dex、繊維長51mmのものを用い、ローラーカード機によりで未融着状態の繊維ウエブを作製した。この繊維ウエブの目付は10g/m
2であった。
繊維塊2用として芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を親水油剤によって処理された繊度1.8dex、繊維長51mmのものを用い、ローラーカード機で未融着状態の繊維ウエブを作製し、その繊維ウエブを1.5cm角にカットした後、粒状にした。
粒状にした未融着状態の繊維塊2を前記未融着状態の繊維ウエブの上の15cm×20cm四方の領域におよそ15mm間隔(平均中心間距離)で、MD方向及びCD方向に沿って格子状に並べた。
次いで、エアースルー処理を、繊維塊2側から、熱風温度140℃、ウエブの搬送速度5m/min、熱風の風速1m/sの条件で行い、前記繊維ウエブを不織布化(不織布1を形成)すると同時に、繊維塊2と不織布1とを繊維融着により結合した。また、繊維塊2内においても繊維融着して繊維同士を結合した。
これにより、実施例2の不織布シート10を作製した(
図6(B)参照)。
【0056】
[実施例3]
特開2019-44320号公報の実施例1に記載の両面凹凸形状の不織布(条件熱風温度140℃、ウエブの搬送速度5m/min、熱風の風速1m/sの条件で熱風回復させたもの)を不織布1とした。不織布1の目付は30g/m
2であった。
繊維塊2用として芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を親水油剤によって処理された繊度1.8dex、繊維長51mmのものを用い、ローラーカード機で未融着状態の繊維ウエブを作製し、その繊維ウエブを1.5cm角にカットした後、粒状にした。
粒状にした繊維塊2を、不織布1の上(特開2019-44320号公報記載のZ1側から見た14 谷部)の15cm×20cm四方の領域にMD方向に5mm間隔、CD方向に10mm間隔(平均中心間距離)で、MD方向及びCD方向に沿って格子状に並べた。
次いで、エアースルー処理を繊維塊2側から、熱風温度140℃、ウエブの搬送速度5m/min、熱風の風速1m/sの条件で行い、繊維塊2と不織布1とを繊維融着により結合した。同時に、繊維塊2内においても繊維融着して繊維同士を結合した。
これにより、実施例3の不織布シート10を作製した(
図6(C)参照)。
【0057】
[比較例1]
繊維として、芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を親水油剤によって処理された繊度3.3dex、繊維長51mmのものを用い、ローラーカード機によりウエブを作製し、熱風温度140℃、ウエブの搬送速度10m/min、熱風の風速2m/sの条件でエアースルー処理を行い不織布化し目付25g/cm2の不織布1を得た。これを比較例1の不織布シート試料とした。
【0058】
[比較例2]
実施例3で用いた両面凹凸形状の不織布1を比較例2の不織布シート試料とした。
【0059】
実施例及び比較例の不織布試料について、圧縮特性の線形性(LC)、圧縮エネルギー(WC)、圧縮のレジリエンス(RC)、押圧前の初期状態(0.5gf/cm2荷重下)における全厚み(T0)、高荷重下(50gf/cm2押圧下)における全厚み(TM)、変形量(T0-TM)及び加圧変形比(TM/T0)を測定した。これらは、前述の(圧縮特性の測定方法)に基づいて行った。
【0060】
【0061】
【0062】
表1~3並びに
図7(A)~(D)に示す通り、実施例1~3の不織布シート試料は、比較例1及び2の不織布シート試料に比して、高荷重下(50gf/cm
2押圧下)における加圧変形比(TM/T0)が高い値を示しており、クッション性に優れることが分かった。また、実施例1~3の不織布シート試料は、比較例1及び2の不織布シート試料に比して、高荷重下(50gf/cm
2押圧下)における全厚み(TM)が高いことにより良好なクッション性を有しながら荷重下において潰れにくいことも示された。
更に、表2に示すように、実施例1及び2は、LC、WC及びWC’が比較例1に比して高く、クッション性が適度に高く、ふんわりした風合いを実現できていた。同様に、表3に示すように、実施例3は、LC、WC及びWC’が比較例2に比して高く、クッション性が適度に高く、ふんわりした風合いを実現できていた。