(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132467
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】モーターの冷却構造
(51)【国際特許分類】
H02K 9/22 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02K9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043236
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 克博
(72)【発明者】
【氏名】成田 識
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP10
5H609QQ04
5H609RR01
5H609RR60
5H609RR62
(57)【要約】
【課題】効率的な冷却が可能なモーターの冷却構造を提供する。
【解決手段】モーターの冷却構造は、内部に冷媒を封入した第1ジャケット部(23)を有するモーター軸(20)と、モーター軸(20)に対して取り付けられ、第1ジャケット部(23)と連通する第2ジャケット部(43、143)を有する放熱部(40、140)とを備え、第1ジャケット部(23)には、第2ジャケット部(43、143)に向けて冷媒を流す第1通路(25)と、第2ジャケット部(43、143)から流れ出た冷媒が戻る第2通路(27)と、を含む複数の通路が形成され、第2ジャケット部(43、143)内に、モーター軸(20)の回転変動を利用した差圧発生機構(47、147)が配置され、第2通路(27)へ冷媒を環流する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷媒を封入した第1ジャケット部(23)を有するモーター軸(20)と、
前記モーター軸(20)に対して取り付けられ、前記第1ジャケット部(23)と連通する第2ジャケット部(43、143)を有する放熱部(40、140)とを備え、
前記第1ジャケット部(23)には、前記第2ジャケット部(43、143)に向けて前記冷媒を流す第1通路(25)と、前記第2ジャケット部(43、143)から流れ出た前記冷媒が戻る第2通路(27)と、を含む複数の通路が形成され、
前記第2ジャケット部(43、143)内に、前記モーター軸(20)の回転変動を利用した差圧発生機構(47、147)が配置され、前記第2通路(27)へ前記冷媒を環流する、
モーターの冷却構造。
【請求項2】
前記モーター軸(20)に支持されるローター(30)を備え、
前記ローター(30)には、前記第1通路(25)と前記第2通路(27)とを連通させる第3ジャケット部(31)が形成される、
請求項1に記載のモーターの冷却構造。
【請求項3】
前記第2ジャケット部(43、143)の前記冷媒の流量を規制する規制機構(22)を有し、
前記規制機構(22)は、前記冷媒の温度が所定の温度以下のときに前記規制をおこなう、
請求項1または2に記載のモーターの冷却構造。
【請求項4】
前記放熱部(140)は、前記モーター軸(20)とともに回転する回転部(140a)と、
前記回転部(140a)の内部に配置され、前記放熱部(140)の外部の固定部(160)に固定されて静止する自由回転部(140b)と、を有し、
前記第2ジャケット部(143)は、前記自由回転部(140b)に形成された静止通路(143b、143c)を有する、
請求項1に記載のモーターの冷却構造。
【請求項5】
前記固定部(160)は、前記自由回転部(140b)の固定と固定の解除とを切り替え可能であり、前記冷媒が第2の所定の温度以下のときに、前記自由回転部(140b)の固定を解除する、
請求項4に記載のモーターの冷却構造。
【請求項6】
前記第2ジャケット部(143)は、前記自由回転部(140b)と前記回転部(140a)との間に形成された環状通路(143d)を有し、
前記回転部(140a)には、前記環状通路(143d)に向けて突出する突起(147)が形成され、
前記突起(147)と対向する位置には、前記環状通路(143d)と前記第2通路(27)とをつなぐ流出口(143e)が形成されている、
請求項4または5に記載のモーターの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、熱を効率的に除去できる回転電機の構造を開示する。この回転電機の構造は、出力軸内に蒸発性液体を封入したヒートパイプを配置し、ローターで発生した熱をヒートパイプによってモーター軸に接するプーリや冷却ファンに移動させ、放熱を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにモーターの出力軸内にヒートパイプを設ける場合、がたつきの防止や効率的な放熱のためには、ヒートパイプの側面が出力軸に接触している必要がある。このため、ヒートパイプの外径と、出力軸に形成するヒートパイプを挿入するための孔の内径との管理が難しい。また、ヒートパイプを採用する場合、ヒートパイプが高価であるためコストがかかり、ヒートパイプの内部の冷媒によってはリサイクルが難しいことがある。
本発明は上述した事情を鑑みてなされたものであり、効率的な冷却が可能なモーターの冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
モーターの冷却構造は、内部に冷媒を封入した第1ジャケット部を有するモーター軸と、前記モーター軸に対して取り付けられ、前記第1ジャケット部と連通する第2ジャケット部を有する放熱部とを備え、前記第1ジャケット部には、前記第2ジャケット部に向けて前記冷媒を流す第1通路と、前記第2ジャケット部から流れ出た前記冷媒が戻る第2通路と、を含む複数の通路が形成され、前記第2ジャケット部内に、前記モーター軸の回転変動を利用した差圧発生機構が配置され、前記第2通路へ前記冷媒を環流する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、効率的な冷却が可能なモーターの冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1に係るモーターユニットの断面図。
【
図2】ローター側から見たモーターにおける回転部分の斜視図。
【
図3】放熱部側から見たモーターにおける回転部分の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の電動の四輪車両のモーターユニット1の断面図であり、車両前後方向に対して垂直な断面を示す。なお、
図1は四輪車両の右側の車輪のホイール3に取り付けられたモーターユニット1を車両前方から見た断面である。
図1中の符号LHは車幅方向左側を示す。以降の説明は、右側の車輪のホイール3に取り付けられたモーターユニット1の配置に準拠する。また、以後の説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。なお、モーターユニット1は、二輪車両または三輪車両に対して取り付けられていてもよい。
【0009】
モーターユニット1は、ケーシング2の内部に格納したモーター10による駆動力によって駆動軸8を回転させ、駆動軸8に固定されたホイール3を回転させる、いわゆるインホイールモーターである。モーターユニット1は、モーター10のモーター軸20の回転を所定の減速比で駆動軸8に伝達する減速装置5を有している。減速装置5は、モーター軸20の右端部に固定された歯車21から動力を伝達される2つの二段歯車7、9を有している。二段歯車9には、右方向に延びてケーシング2の外部に突出する駆動軸8が固定されている。減速装置5における減速比は、歯車21、二段歯車7、9の歯数比に相当する値となる。
【0010】
モーター10は、ステータ11と、ステータ11の内周側に対向したローター30と、ローター30を支持して左右方向に延びるモーター軸20と、を有する。ステータ11は、内部に導体の巻き線を有しており、ケーシング2に対して固定されている。モーター10は、外部からステータ11に供給される電力により、左右方向を軸としてローター30を回転させる。モーター軸20は、ケーシング2に軸受を介して左右方向を軸に回動可能に支持され、ローター30の回転とともに回転する。
【0011】
図2は、モーター10の回転部分を右側から見た斜視図である。
図3は、モーター10の回転部分を左側から見た斜視図である。
図2および
図3に示すように、ローター30が支持するモーター軸20の左端には、円盤状の放熱部40が固定されている。
【0012】
放熱部40は、ローター30およびモーター軸20において生じる熱を放出する。放熱部40は、ローター30およびモーター軸20を冷却する円盤状の構造体であり、モーター軸20と同軸に配置されている。放熱部40は、アルミダイカストによって形成された3枚の円盤状の部材と、2枚の円形のガスケットと、を有する。放熱部40は、円盤状の部材とガスケットとが左右方向に交互に重ねられ、4つのボルトで締結されて一体化されて形成される。また放熱部40は、中心に挿入された左右方向に延びるボルトにより、モーター軸20に対して固定されている。
【0013】
図3に示すように、放熱部40には複数の通風孔41が形成されている。通風孔41は、放熱部40を左右方向に貫通する孔であり、放熱部40を構成する各円盤状の部材およびガスケットにそれぞれ形成された孔が左右方向に繋がって形成される。
【0014】
放熱部40には、モーター軸20と同軸のクーリングファン50が固定されている。クーリングファン50は、いわゆる軸流式の送風機の羽根車に相当する部材であり、放熱部40の回転とともに回転し、空気を左右方向に送風する。なお、クーリングファン50は、四輪車両が前進するときに、放熱部40に向けて左方向に送風する向きに取り付けられている。
【0015】
図4は、
図1の拡大図であり、モーター10の断面図を示す。
図4に示すように、ケーシング2には、左右方向においてクーリングファン50および放熱部40を挟んで両側に、それぞれケーシング2の内外を連通させる開口である吸込口2aおよび吹出口2bが形成されている。吸込口2aは、クーリングファン50の右側に配置されており、右側(車体外側)に向けて開口している。吹出口2bは、放熱部40の左側に配置されており、左側(車体内側)に向けて開口している。四輪車両の前進時、クーリングファン50が回転することにより、外部の空気は吸込口2aからケーシング2の内部に吸い込まれ、放熱部40を通過して吹出口2bから外部に吹き出す。このとき、クーリングファン50による送風を受けることにより、放熱部40は熱を空気に放出して冷却され易くなる。また、放熱部40には左右に貫通する通風孔41が形成されているため、クーリングファン50による左方向に向けた送風は通風孔41を通る。このため、放熱部40の熱は空気に対して効率的に放出される。
【0016】
図4に示すように、モーター軸20の内部には、軸ジャケット部(第1ジャケット部)23が形成されている。軸ジャケット部23は、内部に冷媒としての水を封入した空間であり、それぞれモーター軸20に沿って左右方向に延びる第1通路25および第2通路27を有している。第1通路25および第2通路27は、それぞれモーター軸20の左端(軸方向内端)29に至るまで延びており、左端29において開口している。
【0017】
放熱部40は、モーター軸20の左端29に対して取り付けられ、モーター軸20と一体に回転する。放熱部40は、軸ジャケット部23の各通路25、27と連通する放熱ジャケット部(第2ジャケット部)43を有している。放熱ジャケット部43は、放熱部40の内部において水が流れる空間であり、軸ジャケット部23の各通路25、27どうしを連通させる。また、放熱ジャケット部43には、放熱部40の組み立ての際に放熱ジャケット部43内の空気を抜くためのジグルピン45が設けられている。
【0018】
図5は、
図4のV-V断面に対応する断面図であり、放熱部40の断面を示す。なお、
図5には、四輪車両が前進する際の放熱部40の回転方向である方向B、および、四輪車両が後進する際の放熱部40の回転方向である方向Aを示している。
【0019】
放熱ジャケット部43は、放熱部40の径方向内側において環状に形成された内側環状通路43bと、内側環状通路43bから径方向外側に向けて放射状に延びる複数の放射状通路43cと、各放射状通路43cの径方向外側の端部と接続する外側環状通路43dと、を有する。
【0020】
内側環状通路43bは、軸ジャケット部23の第1通路25に接続される流入口43aと接続されている。流入口43aは、第1通路25の左端から左側に延びている。放射状通路43cは、放熱部40の回転方向において等間隔に設けられている。また、外側環状通路43dは、流出口43eと接続されている。流出口43eは、外側環状通路43dから右側に延びた後、放熱部40の径方向内側に向かって延び、第2通路27に対して接続される。このように、放熱ジャケット部43は、順次接続された流入口43a、内側環状通路43b、放射状通路43c、外側環状通路43d、流出口43eにより、第1通路25と第2通路27とを連通している。
【0021】
放熱部40内の放射状通路43cは、モーター10の駆動で放熱部40が回転することによりモーター軸20の軸回りに回転する。放射状通路43c内の水には外側に向けた遠心力が作用し、放射状通路43cの外側に向けた水の流れが生じる。これにより、放射状通路43cから外側環状通路43dに向けた水の流れが生じ、外側環状通路43dから水が押し出されて流出口43eを介して第2通路27流出する。流出した水は循環して第1通路25の水を放熱ジャケット部43に向けて押し出す。このため、第1通路25の水は、順次に流入口43a、内側環状通路43b、放射状通路43c、外側環状通路43d、および流出口43eを流れ、第2通路27に流入する。すなわち、第1通路25は放熱ジャケット部43に向けて水を流す通路であり、第2通路27は放熱ジャケット部43から流れ出た水が戻る通路である。
【0022】
また、
図5に示すように、外側環状通路43dは、位置によって通路の幅が異なる形状に形成されている。具体的には、外側環状通路43dは、流出口43eとの接続部分において最大の幅を有し、方向Bに向けて幅が徐々に小さくなる。このため、車両の加速等によって放熱部40の方向Bに向けた回転の速度が増加した場合、外側環状通路43dにおいて、慣性で動く水に対して通路の幅が広くなるため、水は放射状通路43cから外側環状通路43dに対して流入し易くなる。
【0023】
図6は、
図5のVI-VI断面に対応する断面図である。
図5および
図6に示すように、放熱ジャケット部43には、突起(差圧発生機構)47が設けられている。突起47は、放熱部40において、外側環状通路43dの内部に突出する形状に形成された略円錐形状の突起である。より具体的には、突起47は、流出口43eに対向する位置に形成されており、先端が流出口43eに向けられている。
【0024】
外側環状通路43d内の水が放熱部40に対して、方向Aまたは方向Bに向けて相対回転するように流れている場合、
図6に示すように、水は突起47の側面47aに案内されて、第2通路27に連通する流出口43eに押し込まれる。これは、次のように説明することもできる。突起47は、側面47aに当たった水の外側環状通路43dに沿った方向の相対速度を低下させて圧力を高める。側面47aに当たって圧力を高められた外側環状通路43d内の水は、流出口43e内の水よりも圧力が高い、すなわち、両者の間には差圧が発生している。このため、高圧側の外側環状通路43d内の水は、低圧側の流出口43eに流入する。このように、突起47は、外側環状通路43d内の水と流出口43e内の水との間で差圧を発生させることにより、水を第2通路27に還流することができる。
【0025】
上述のように、車両の加速時には、放熱部40の方向Bに向けた回転の速度が増加するため、慣性によって流れる外側環状通路43d内の水は、放熱部40に対して方向Aに向けて相対回転する。また、車両の減速時には、放熱部40の方向Bに向けた回転の速度が低下するため、慣性によって流れる外側環状通路43d内の水は、放熱部40に対して方向Bに向けて相対回転する。このように、車両の加減速のためにモーター軸20の回転変動が生じると、外側環状通路43d内の水は、放熱部40に対して方向Aまたは方向Bに相対回転する。これに対し、突起47は、外側環状通路43d内の水が放熱部40に対して方向Aまたは方向Bのどちらに向けて相対回転するように流れている場合でも、水を第2通路27に還流することができる。このため、突起47は、車両の加速時または減速時のどちらの状況であるかにかかわらず、モーター軸20の回転変動によって、放熱ジャケット部43内の水を第2通路27に還流することができる。
【0026】
図7は、
図4のVII-VII断面の斜視図であり、左右方向に垂直なローター30の断面を示す。
図4および
図7に示すように、モーター軸20とローター30との間には、モーター軸20の軸回りに環状の第2接続通路28が設けられている。第2接続通路28は、モーター軸20の外周およびローター30の内周がそれぞれ全周に亘って凹んで形成されている。詳細には、モーター軸20の外周部には、外周部が狭まるようにして形成された凹溝状の軸側半路が形成される。また、ローター30の内周部には、軸側半路に対向して、径方向外側に凹んだ凹溝状のローター側半路が形成される。軸側半路と、ローター側半路とが互いに対向して一体となることで、軸回りに環状の第2接続通路28が形成される。第2接続通路28は、ローター30内における左側に設けられている。また、モーター軸20には、第2通路27の右端部からモーター軸20の側面に向けて延び、第2通路27と第2接続通路28とを連通させる第2通路接続口27aが形成されている。
【0027】
ローター30は、モーターコアとなる部分において、内部に水が流れるコアジャケット部(第3ジャケット部)31を有している。コアジャケット部31は、第2接続通路28に連通する複数の戻り通路37を有している。戻り通路37は、第2接続通路28からローター30内を径方向外側に向けて延び、中途部において分岐した形状に形成されている。また、戻り通路37は、分岐した部分が右側に向けて延びている。
【0028】
図4に示すように、第2接続通路28よりも右側には、モーター軸20とローター30との間には、モーター軸20の軸回りに環状の第1接続通路26が設けられている。第1接続通路26は、第2接続通路28と同様に、モーター軸20の外周およびローター30の内周がそれぞれ全周に亘って凹んで形成された環状の通路である。また、モーター軸20には、第1通路25からモーター軸20の側面に向けて延び、第1通路25と第1接続通路26とを連通させる第1通路接続口25aが形成されている。
【0029】
コアジャケット部31は、第1接続通路26に連通する複数の複数の供給通路35を有している。供給通路35は、第1接続通路26からローター30内を外周側に向けて延び、戻り通路37と同様に分岐している。分岐した供給通路35は、左側向けて延び、戻り通路37と接続される。
【0030】
このように、第2通路27は、順次接続された第2通路接続口27a、第2接続通路28、コアジャケット部31、第1接続通路26、第1通路接続口25aを介して、第1通路25と接続されている。このため、第1通路25、放熱ジャケット部43、第2通路27、コアジャケット部31は順次接続されて水の回路を形成している。上述したように、モーター10の駆動により、第1通路25から放熱ジャケット部43に流入し、放熱ジャケット部43から第2通路27に流入する水の流れが生じるため、各ジャケット部23、31、43により形成された回路内を水が循環する。このため、この回路を循環する水はモーター軸20およびローター30の内部において熱を受け取り、放熱部40の内部において放熱する。従って、モーター軸20およびローター30を効率的に冷却できる。
【0031】
ここまで、モーター10は、各ジャケット部23、31、43による回路内に水を循環させることにより、モーター軸20およびローター30の熱を効率的に放熱部40に移動させ、放熱できると説明した。しかし、水の循環のためにはモーター10の駆動力を利用するため、冷却が不要な状態においては水の循環を規制することが望ましい。以下では、水の温度に応じて、水の循環の規制を行う機構について説明する。
【0032】
図4に示すように、モーター軸20および放熱部40は、規制機構22を有している。規制機構22は、モーター軸20および放熱部40の内側に配置された水温感応サーモ22aと、放熱部40に形成され流入口43aおよび流出口43eを連通させるバイパス通路22bと、を有する。水温感応サーモ22aは、例えばバイメタル式の自動復帰型サーモスタットであり、水温感応部22a1と、バルブノーズ22a2とを有している。水温感応部22a1は、モーター軸20において第1通路25から分岐する形状に形成された水温感応用通路22cに接続される。水温感応部22a1の温度は、水温感応用通路22c内の水からの熱伝導により、水温感応用通路22c内の水温に近付く。
【0033】
バルブノーズ22a2は、水温感応サーモ22aのうち左端部に設けられている。バルブノーズ22a2は、水温感応部22a1の温度が所定の温度よりも高くなれば左側に向けて移動し、水温感応部22a1の温度が所定の温度よりも低くなれば、右側に向けて移動する。所定の温度は、例えば、モーター10に使用される絶縁物の許容最高温度よりも低い温度に設定される。
【0034】
バイパス通路22bは、バルブノーズ22a2によって開閉される。バイパス通路22bは、バルブノーズ22a2が左側に向けて移動したときに閉状態とされ、右側に向けて移動した時に開状態とされる。
【0035】
バイパス通路22bが開状態であるときには、流入口43aおよび流出口43eとは、バイパス通路22bによって連通される。このため、水温が所定の水温以下の場合には、流入口43a内の水は、内側環状通路43b、放射状通路43c、および外側環状通路43d、を経由せずに、バイパス通路22bを介して流出口43eに戻され易くなる。これにより、水温が所定の水温以下の場合にはコアジャケット部31、軸ジャケット部23、およびバイパス通路22bにおいて水が循環し易く、放熱ジャケット部43の内側環状通路43b、放射状通路43c、および外側環状通路43dにおける水は流れにくくなり流量が規制される。このように、規制機構22により、モーター軸20およびローター30の冷却が不要なときに、モーター10の駆動力が放熱ジャケット部43の水を流すために使われることを抑制でき、モーター10の消費電力を低減できる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態において、モーター10は、内部に水を封入した軸ジャケット部23を有するモーター軸20と、モーター軸20に対して取り付けられ、軸ジャケット部23と連通する放熱ジャケット部43を有する放熱部40とを備え、軸ジャケット部23には、放熱ジャケット部43に向けて水を流す第1通路25と、前記放熱ジャケット部43から流れ出た水が戻る第2通路27と、を含む複数の通路が形成され、放熱ジャケット部43内に、モーター軸20の回転変動を利用した差圧発生機構としての突起47が配置され、第2通路27へ水を環流する。
この構成によれば、水がモーター軸20および放熱部40の内部を通して循環するため、モーター軸20の熱を受け取った水は、放熱部40において放熱する。また、差圧発生機構としての突起47によって放熱ジャケット部43内の水を第2通路27に還流できるため、水の循環を促進できる。このため、モーター軸20の熱を放熱部40に移動させやすくなり、モーター10の効率的な冷却が可能となる。
【0037】
本実施の形態では、モーター軸20に支持されるローター30を備え、ローター30には、第1通路25と第2通路27とを連通させるコアジャケット部31が形成される。
この構成によれば、水がローター30、モーター軸20、および放熱部40の内部を通して循環するため、ローター30の内部の熱を受け取った水は、放熱部40において放熱する。このため、ローター30内部で発生した熱を積極的に放熱部40に移動させることが可能となり、モーター10の効率的な冷却が可能となる。
【0038】
本実施の形態では、モーター10は、2ジャケット部43の水の流量を規制する規制機構22を有し、規制機構22は、水の温度が所定の温度以下のときに規制をおこなう。
この構成によれば、冷却が不要な状態において、放熱部40内の水の流量を規制できるため、モーター10を必要以上に冷却することを抑制でき、軸受やケーシング2の温度を適切な範囲に収めることが可能となる。このため、低温環境においては、軸受の温度上昇を促進し、早期に軸受のクリアランスを適正値にすることができ、長時間運転時などにおいては、モーター10からの発熱を速やかに放熱することができ、モーター10の駆動時の消費エネルギーを抑制できる。
【0039】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2について、以下に説明する。なお、以下では、実施の形態1と異なる点についてのみ説明し、実施の形態1と同じ点については、説明を省略する。実施の形態2のモーター10は、規制機構22を有しておらず、主に放熱部140の構成が実施の形態1と異なる。具体的には、実施の形態1では、放熱部40は、その全体がモーター軸20と一体となって回転する構成であった。一方で、実施の形態2では、放熱部140は、モーター軸20と一体となって回転する回転部140aと、モーター軸20に対して相対回転可能な自由回転部140bと、を有するという点で、実施の形態1の放熱部40と異なる。
【0040】
図8は、実施の形態2におけるモーター10の断面図である。
図8に示すように、実施の形態2の放熱部140は、モーター軸20の左端29に対して固定される円盤状の回転部140aと、回転部140aの内側の空間に設けられた円盤状の自由回転部140bとを有する。
【0041】
自由回転部140bは、ベアリング141を介して、回転部140aに対して左右方向を軸として、回転部140aと同軸で回転可能に取り付けられている。自由回転部140bは、回転部140aから左側に向けて露出した第1クランク爪142を有している。第1クランク爪142は、自由回転部140bに対して固定されており、左側に向けた歯状の凹凸を有している。
【0042】
実施の形態2のケーシング2には、自由回転部140bをケーシング2に対して固定する固定部160が設けられている。固定部160は、歯状の凹凸を有する第2クランク爪161を有している。第2クランク爪161の凹凸は右側に向けて設けられており、第1クランク爪142に設けられた凹凸と噛み合う。また、第2クランク爪161は、ケーシング2に対して左右方向を中心とした回転が不能であり、左右方向に沿って進退が可能である。このため、第2クランク爪161が右方向に移動し、第1クランク爪142と第2クランク爪161とが噛み合っているとき、自由回転部140bはケーシング2に対して回転せず静止する。また、ケーシング2は車体に対して回転しないため、第1クランク爪142と第2クランク爪161とが噛み合っているとき、自由回転部140bは車両に対して回転せずに静止する。すなわち、固定部160による固定により、自由回転部140bは、モーター軸20に対して相対的に回転する。
【0043】
また、固定部160は、車両のECU(Electronic Control Unit)によって制御されるソレノイドアクチュエータ163を有している。ソレノイドアクチュエータ163は、ケーシング2の内部に挿入されて左右方向に進退する可動鉄芯163aを有しており、可動鉄芯163aによって第2クランク爪161を押し引きすることにより、第2クランク爪161を左右方向に進退させる。従って、ソレノイドアクチュエータ163の駆動により、第1クランク爪142と第2クランク爪161とが噛み合った状態と、噛み合っていない状態と、を切り替えることができる。換言すれば、固定部160は、ソレノイドアクチュエータ163の動作により、自由回転部140bがケーシング2および車両に対して回転可能な状態と、回転できない状態と、を切り替えることができる。
【0044】
図9は、
図8のIX-IX断面図であり、実施の形態2の放熱部140の断面を示す。
図9に示すように、放熱部140は、軸ジャケット部23の各通路25、27を連通する放熱ジャケット部143を有している。放熱ジャケット部143は、第1通路25に連通する流入口143aと、第2通路27に連通する流出口143eと、を有している。流入口143aおよび流出口143eは、それぞれ回転部140aに形成されている。
【0045】
また、放熱ジャケット部143は、それぞれ自由回転部140bに形成された内側環状通路(静止通路)143b、放射状通路(静止通路)143cと、回転部140aと自由回転部140bとの間に形成された外側環状通路(環状通路)143dと、を有する。
【0046】
内側環状通路143bは環状の通路であり、自由回転部140bが固定部160に固定されて回転部140aと自由回転部140bとが相対回転した場合でも、回転部140aの流入口143aと常に連通される。放射状通路143cは、自由回転部140b内において内側環状通路143bから外側に延び、外側環状通路143dに連通する。
【0047】
自由回転部140bが固定部160に固定されている場合、自由回転部140bに形成された内側環状通路143bおよび放射状通路143cは、ローター30のコアジャケット部31およびモーター軸20の軸ジャケット部23に対して相対回転する。このため、各ジャケット部23、31、143における冷媒の循環が促進される。
【0048】
外側環状通路143dは、放射状通路143cの外径側の端部と接続する環状の通路であり、流出口143eに連通している。外側環状通路143dは、回転部140aに形成された回転部側通路143d1と、自由回転部140bに形成された自由回転部側通路143d2と、によって構成される。
【0049】
回転部側通路143d1は、回転部140a内の自由回転部140bが設けられる空間において、円盤状の自由回転部140bの外径よりも径方向の外側に拡がった部分である。回転部側通路143d1は、流出口143eとの接続部分において最大の幅を有しており、流出口143eから方向Bに移動するにつれて幅が徐々に小さくなる。また、回転部側通路143d1と流出口143eとの接続部分から方向Bに向けて180度程度回転した地点において、自由回転部140bの外径と回転部140aの形成する空間の内径とが略一致する。
【0050】
自由回転部側通路143d2は、円盤状の自由回転部140bの側面の全周に亘って形成された溝であり、放射状通路143cの外径側の端部と連通している。
【0051】
このように外側環状通路143dは、回転部側通路143d1と自由回転部側通路143d2とにより、回転部140aと自由回転部140bとの間において、自由回転部140bの全周に亘って形成されている。このため、固定部160が自由回転部140bを固定しているとき、回転部140aと自由回転部140bとの相対回転により、外側環状通路143d内の水は、壁面との摩擦によって回転部140aおよび自由回転部140bに対して相対運動する。従って、放熱ジャケット部143において、軸ジャケット部23およびコアジャケット部31に対する相対的な水の流れが生じ易く、各ジャケット部23、31,143における水の循環が促進される。
【0052】
図10は、
図9のX-X断面に対応する断面図である。
図10に示すように、外側環状通路143dにおいて、回転部140aには、外側環状通路143dの内部に向けて突出する突起(差圧発生機構)147が形成されている。突起147は、流出口143eに対向する位置に設けられ、先端は流出口143eに向けられている。突起147は外側環状通路143dに沿った断面において三角形状の断面を有する。突起147は、外側環状通路143dに沿った方向における外側から中央に向かう方向側が流出口143e側(右側)に向かって傾斜した2つの案内面147aを有する。
【0053】
上述したように、外側環状通路143d内の水は、回転部140aと自由回転部140bとの相対回転により、回転部140aおよび自由回転部140bに対して相対運動する。このため、外側環状通路143d内の水は突起147の案内面147aに遮られ、流出口143eに向けて押し出される。換言すれば、突起147は、外側環状通路143d内の水の圧力を流出口143e内の水の圧力よりも高めて差圧を発生させ、外側環状通路143d内の水を、第2通路27に連通する流出口143eに流入させる。このように、外側環状通路143dを流れる水を突起147によって流出口143eに排出し、第2通路27に還流できるため、各ジャケット部23、31、143における水の循環が促進される。
【0054】
また、回転部140aに対する外側環状通路143d内の水の相対的な流れの方向は、車両の加速時および減速時においてそれぞれ逆方向となる。本実施の形態では、外側環状通路143d内の水の回転部140aに対する相対的な流れの方向にかかわらず、突起147の2つの案内面147aによって、外側環状通路143d内の水を流出口143eに押し込むことができる。このため、車両の加速および減速にかかわらず、モーター軸20の回転変動によって一方向に水を流し易くなり、各ジャケット部23、31、143における水の循環が促進される。
【0055】
このように、本実施の形態では、固定部160が自由回転部140bを固定することにより、各ジャケット部23、31、143における水の循環を促進することができる。一方で、例えばモーター10の冷却が不要な状態においてジャケット部23、31、143内の水を循環させることは、モーター10の駆動力の損失につながる。本実施の形態では、水が低温の場合には水の循環を抑制してモーター10の消費電力を抑制し、水が高温の場合には水の循環を促進してモーター10の冷却を効率的に行う。
【0056】
具体的には、本実施の形態では、モーター10は第1通路25内の水温を検知する温度センサ165(
図8参照)を有しており、四輪車両のECUに対して温度の検知信号を送信している。ECUは、温度センサ165による水温の検出値が第2の所定の温度よりも低温であるときに、固定部160のソレノイドアクチュエータ163を制御し、可動鉄芯163aによって第2クランク爪161と第1クランク爪142とを離間させる。これにより、固定部160は自由回転部140bを固定しなくなり、自由回転部140bはローター30の回転に伴って回転する状態となる。すなわち、外側環状通路143d内の水が回転部140aの回転に追従しようとすると、外側環状通路143d内の水から自由回転部140bに摩擦力が作用し、自由回転部140bは摩擦力によって回転部140aとともに回転することになる。従って、温度センサ165による水温の検出値が第2の所定の温度よりも低温であるときには各ジャケット部23、31、143における水の循環を抑制でき、モーター10の消費電力を抑制できる。なお、第2の所定の温度は、例えば、モーター10に使用される絶縁物の許容最高温度よりも低い温度に設定される。
【0057】
また、ECUは、温度センサ165による水温の検出値が第2の所定の温度よりも高温であるときに、固定部160のソレノイドアクチュエータ163を制御し、可動鉄芯163aによって第2クランク爪161と第1クランク爪142とを噛み合わせる。これにより、固定部160は自由回転部140bを固定する状態となり、自由回転部140bは回転しない状態となる。従って、温度センサ165による水温の検出値が第2の所定の温度よりも高温であるときには各ジャケット部23、31、143における水の循環が促進され、モーター10の冷却を効率的に行うことができる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態において、放熱部140は、モーター軸20とともに回転する回転部140aと、回転部140aの内部に配置され、放熱部140の外部の固定部160に固定されて静止する自由回転部140bと、を有し、放熱ジャケット部143は、自由回転部140bに形成された内側環状通路143b、放射状通路143cを有する。
この構成によれば、自由回転部140bと回転部140aとの相対的な回転により、水の循環を促進し易くなる。このため、モーター10の効率的な冷却が可能となる。
【0059】
本実施の形態では、固定部160は、自由回転部140bの固定と固定の解除とを切り替え可能であり、水が第2の所定の温度以下のときに、自由回転部140bの固定を解除する。
この構成によれば、冷却が不要な状態では自由回転部140bの固定を解除できるため、水の循環の促進を停止でき、モーター10の駆動時の消費電力を抑制できる。
【0060】
本実施の形態では、放熱ジャケット部143は、自由回転部140bと回転部140aとの間に形成された外側環状通路143dを有し、回転部140aには、外側環状通路143dに向けて突出する突起147が形成され、突起147と対向する位置には、外側環状通路と第2通路27とをつなぐ流出口143eが形成されている。
この構成によれば、外側環状通路143d内の水が回転部140aに対してどちらの回転方向に相対回転していても、水を突起によって流出口143eに向けて押し出すことができる。このため、水の循環を促進でき、モーターの効率的な冷却が可能となる。
【0061】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0062】
上記実施の形態において、モーター10は、四輪車両のモーターユニット1に設けられていると説明したが、これは一例である。モーター10が設けられるモーターユニット1は、鞍乗り型車両などの、四輪車両以外の車両に設けられていてもよい。また、上記実施の形態では、モーターユニット1の駆動軸8にはホイール3が接続されるインホイールモーターであると説明したが、これは一例である。例えば、駆動軸8にはホイール3の代わりにスプロケットが接続されており、スプロケットに巻き掛けられたチェーンを介してホイールに動力を伝達する構成としてもよい。
【0063】
上記実施の形態では、軸ジャケット部23には、第1通路25および第2通路27が形成されると説明したが、これは一例である。軸ジャケット部23には、放熱部40に向けて冷媒が流れる通路と、放熱部40から流出した冷媒が戻る流路が形成されていればよい。このため、例えば、モーター軸20に沿って延びる一つ以上の冷媒の通路が各通路25、27に加えて形成されていてもよい。
【0064】
上記実施の形態では、冷媒は、軸ジャケット部23、放熱ジャケット部43、143、および、コアジャケット部31を循環すると説明したが、これは一例である。例えば、冷媒は、軸ジャケット部23と放熱ジャケット部43、143とにおいて循環し、コアジャケット部31は形成されていない構成としてもよい。この場合、第1通路25と第2通路27とは、モーター軸20の内部において直接的に連通する。この場合であっても、モーター軸20の熱を放熱部40に対して効率的に移動させることができ、モーター軸20の効率的な冷却が可能である。
【0065】
上記実施の形態では、冷媒は水であると説明したが、これは一例である。冷媒は、LLC(Long Life Coolant)等の、各ジャケット部23、43、31を液体として循環できるものであればよい。
【0066】
実施の形態1では、水温感応サーモ22aの水温感応部22a1は、第1通路25にから分岐した水温感応用通路22cの水温と等しい温度になると説明した。また、実施の形態2では、温度センサ165は、第1通路25の水温を検知すると説明したが、これらは一例である。水温感応サーモ22a、固定部160は、ジャケット部23、31、43のいずれの箇所に設けられていてもよい。また、水温感応サーモ22a、温度センサ165は、冷媒の温度ではなく、モーター軸20、ローター30等の構造体の温度によって動作する構成であってもよい。
【0067】
上記実施の形態で説明した放熱部40、140に形成された放熱ジャケット部43、143の構成は一例であり、上記実施の形態と異なる構成であってもよい。例えば、実施の形態2の放熱ジャケット部143を、内側環状通路143bおよび放射状通路143cが形成されていない構成に変更してもよい。この場合、例えば、流入口143aは放熱部140内を径方向外側に延びて直接的に外側環状通路143dに連通する。この場合であっても、外側環状通路143d内の水は回転部140aおよび自由回転部140bと相対回転するように流れる。このため、回転部140aの突起147により外側環状通路143d内の水を流出口143eに押し込むことができ、各ジャケット部23、31、143での水の循環を促進できる。
【0068】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0069】
(構成1)内部に冷媒を封入した第1ジャケット部を有するモーター軸と、前記モーター軸に対して取り付けられ、前記第1ジャケット部と連通する第2ジャケット部を有する放熱部とを備え、前記第1ジャケット部には、前記第2ジャケット部に向けて前記冷媒を流す第1通路と、前記第2ジャケット部から流れ出た前記冷媒が戻る第2通路と、を含む複数の通路が形成され、前記第2ジャケット部内に、前記モーター軸の回転変動を利用した差圧発生機構が配置され、前記第2通路へ前記冷媒を環流する、モーターの冷却構造。
この構成によれば、冷媒がモーター軸および放熱部の内部を通して循環するため、モーター軸の熱を受け取った冷媒は、放熱部において放熱する。また、差圧発生機構によって第2ジャケット部内の冷媒を第2通路に還流できるため、冷媒の循環を促進できる。このため、モーター軸の熱を放熱部に移動させやすくなり、モーターの効率的な冷却が可能となる。
【0070】
(構成2)前記モーター軸に支持されるローターを備え、前記ローターには、前記第1通路と前記第2通路とを連通させる第3ジャケット部が形成される、構成1に記載のモーターの冷却構造。
この構成によれば、冷媒がローター、モーター軸、および放熱部の内部を通して循環するため、ローターの内部の熱を受け取った冷媒は、放熱部において放熱する。このため、ローター内部で発生した熱を積極的に放熱部に移動させることが可能となり、モーターの効率的な冷却が可能となる。
【0071】
(構成3)前記第2ジャケット部の前記冷媒の流量を規制する規制機構を有し、前記規制機構は、前記冷媒の温度が所定の温度以下のときに前記規制をおこなう、構成1または2に記載のモーターの冷却構造。
この構成によれば、冷却が不要な状態において、放熱部内の冷媒の流量を規制できるため、モーターを必要以上に冷却することを抑制でき、軸受やケーシングの温度を適切な範囲に収めることが可能となる。このため、低温環境においては、軸受けの温度上昇を促進し、早期に軸受のクリアランスを適正値にすることができ、長時間運転時などにおいては、モーターからの発熱を速やかに放熱することができ、モーターの駆動時の消費エネルギーを抑制することができる。
【0072】
(構成4)前記放熱部は、前記モーター軸とともに回転する回転部と、前記回転部の内部に配置され、前記放熱部の外部の固定部に固定されて静止する自由回転部と、を有し、前記第2ジャケット部は、前記自由回転部に形成された静止通路を有する、構成1から3のいずれかに記載のモーターの冷却構造。
この構成によれば、自由回転部と回転部との相対的な回転により、冷媒の循環を促進し易くなる。このため、モーターの効率的な冷却が可能となる。
【0073】
(構成5)前記固定部は、前記自由回転部の固定と固定の解除とを切り替え可能であり、前記冷媒が第2の所定の温度以下のときに、前記自由回転部の固定を解除する、構成4に記載のモーターの冷却構造。
この構成によれば、冷却が不要な状態では自由回転部の固定を解除できるため、冷媒の循環の促進を停止でき、モーターの駆動時の消費エネルギーを抑制できる。
【0074】
(構成6)前記第2ジャケット部は、前記自由回転部と前記回転部との間に形成された環状通路を有し、前記回転部には、前記環状通路に向けて突出する突起が形成され、前記突起と対向する位置には、前記環状通路と前記第2通路とをつなぐ流出口が形成されている、構成4または5に記載のモーターの冷却構造。
この構成によれば、環状通路内の冷媒が回転部に対してどちらの回転方向に相対回転していても、冷媒を突起によって流出口に向けて押し出すことができる。このため、冷媒の循環を促進でき、モーターの効率的な冷却が可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1 モーターユニット
10 モーター
11 ステータ
20 モーター軸
22 規制機構
23 軸ジャケット部(第1ジャケット部)
25 第1通路
27 第2通路
30 ローター
31 コアジャケット部(第3ジャケット部)
40 放熱部
43 放熱ジャケット部(第2ジャケット部)
47 突起(差圧発生機構)
50 クーリングファン
140 放熱部
140a 回転部
140b 自由回転部
141 ベアリング
142 第1クランク爪
143 放熱ジャケット部(第2ジャケット部)
143a 流入口
143b 内側環状通路(静止通路)
143c 放射状通路(静止通路)
143d 外側環状通路(環状通路)
143e 流出口
147 突起(差圧発生機構)
160 固定部
161 第2クランク爪
163 ソレノイドアクチュエータ
163a 可動鉄芯
165 温度センサ
A 方向
B 方向