(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132478
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】自動車内装材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20240920BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60R13/08
G10K11/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043252
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】森本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】西尾 純
【テーマコード(参考)】
3D023
5D061
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BA02
3D023BA03
3D023BB01
3D023BB21
3D023BB29
3D023BB30
3D023BC01
3D023BD01
3D023BD02
3D023BD04
3D023BD28
3D023BE04
3D023BE05
3D023BE19
5D061AA06
5D061AA23
5D061BB21
(57)【要約】
【課題】十分な吸音性能を保持しつつ、人が触れる部分に適用した際にも蒸れ感が生じにくい自動車内装材の提供。
【解決手段】クッション層と、該クッション層の片側に接合した不織布層を備える自動車内装材であって、該自動車内装材の厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上50cc/cm2/sec以下であり、かつ、面内方向の通気度が40cc/cm2/sec以上である、自動車内装材、好ましくは、シート、天井、コンソール、アームレスト、ドアトリム、及びカーペットからなる群から選ばれる少なくとも1の用途に用いられる自動車内装材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション層と、該クッション層の片側に接合した不織布層を備える自動車内装材であって、該自動車内装材の厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上50cc/cm2/sec以下であり、かつ、面内方向の通気度が40cc/cm2/sec以上である、自動車内装材。
【請求項2】
前記自動車内装材の厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上10cc/cm2/sec以下である、請求項1に記載の自動車内装材。
【請求項3】
前記不織布層が車外側であり、かつ、前記クッション層が車室内側である、請求項1又は2に記載の自動車内装材。
【請求項4】
前記クッション層が、表層の編地と、裏層の編地と、該表層の編地と該裏層の編地を連結する連結糸と、から構成される立体編物である、請求項1又は2に記載の自動車内装材。
【請求項5】
前記自動車内装材に140gf/cm2の荷重をかけたときの厚み変形量が初期厚みの5%以上30%以下である、請求項1又は2に記載の自動車内装材。
【請求項6】
前記不織布層が、平均繊維径10μm以上30μm以下の繊維層と、平均繊維径が0.3μm以上7μm以下の繊維層とを備える、請求項1又は2に記載の自動車内装材。
【請求項7】
前記不織布層の厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上50cc/cm2/sec以下である、請求項1又は2に記載の自動車内装材。
【請求項8】
前記不織布層の厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上10cc/cm2/sec以下である、請求項7に記載の自動車内装材。
【請求項9】
シート、天井、コンソール、アームレスト、ドアトリム、及びカーペットからなる群から選ばれる少なくとも1の用途に用いられる、請求項1又は2に記載の自動車内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等が走行する際には、車両に搭載されるエンジン、モーター、及び駆動系からの騒音や走行中のロードノイズ、風切り音などの、種々の騒音が発生する。このような騒音が搭乗員に不快感を与えないように、シート部材、天井材、ドアトリム、キャブフロア等の壁面には、騒音対策として吸音材が適用される。自動車用内装材としては、従来から種々のものが知られており、例えば、以下の特許文献1には、フロアカーペットを構成する表皮部材及びフェルト材(原反部材)のうち、表皮部材の裏面に熱可塑性樹脂をフィルム層として形成し、さらにニードルパンチ加工を施すことで該フィルム層に開孔を形成し、吸音性能の低下を抑制しつつ剛性を高める技術が提案されている。
【0003】
また、以下の特許文献2には、フェルト,グラスウール等の繊維材、ウレタンフォーム等の発泡性合成樹脂材からなる第一吸音層及び第二吸音層と、所定の目付や通気度を有する不織布からなる中間層とからなる吸音タイプ防音材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-84104号公報
【特許文献2】特開2003-19930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの技術では、積層体としての通気度が低く、シートなど人に触れる部分への適用を視野に入れると、人から発せられる水蒸気が当該積層体を透過することができず、結果として蒸れ感などの不快感が発現する可能性がある。
【0006】
前記した従来技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、十分な吸音性能を保持しつつ、人が触れる部分に適用した際にも蒸れ感が生じにくい自動車内装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、不織布層とクッション層を備え、厚み方向の通気度と面内方向の通気度が所定範囲である自動車内装材であれば、前記課題を解決しうることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]クッション層と、該クッション層の片側に接合した不織布層を備える自動車内装材であって、該自動車内装材の厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上50cc/cm2/sec以下であり、かつ、面内方向の通気度が40cc/cm2/sec以上である、自動車内装材。
[2]前記自動車内装材の厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上10cc/cm2/sec以下である、前記[1]に記載の自動車内装材。
[3]前記不織布層が車外側であり、かつ、前記クッション層が車室内側である、前記[1]又は[2]に記載の自動車内装材。
[4]前記クッション層が、表層の編地と、裏層の編地と、該表層の編地と該裏層の編地を連結する連結糸と、から構成される立体編物である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の自動車内装材。
[5]前記自動車内装材に140gf/cm2の荷重をかけたときの厚み変形量が初期厚みの5%以上30%以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の自動車内装材。
[6]前記不織布層が、平均繊維径10μm以上30μm以下の繊維層と、平均繊維径が0.3μm以上7μm以下の繊維層とを備える、前記[1]~[5]のいずれかに記載の自動車内装材。
[7]前記不織布層の厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上50cc/cm2/sec以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の自動車内装材。
[8]前記不織布層の厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上10cc/cm2/sec以下である、前記[7]に記載の自動車内装材。
[9]シート、天井、コンソール、アームレスト、ドアトリム、及びカーペットからなる群から選ばれる少なくとも1の用途に用いられる、前記[1]~[8]のいずれかに記載の自動車内装材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動車内装材は、吸音性能に優れ、かつ蒸れ感が生じにくいため、好ましくは、シート、天井、コンソール、アームレスト、ドアトリム、及びカーペットからなる群から選ばれる少なくとも1の用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の自動車内装材は、クッション層と、該クッション層の片側に接合した不織布層を備える自動車内装材であって、該自動車内装材の厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上50cc/cm2/sec以下であり、かつ、面内方向の通気度が40cc/cm2/sec以上である、自動車内装材であることを特徴とする。
【0011】
<自動車内装材>
本実施形態の自動車内装材は、クッション層と、該クッション層の片側に接合した不織布層と不織布層を備える。かかる構成により、自動車内装材は、クッション層由来のクッション性及び通気性と、不織布層由来の吸音性を得ることができ、さらに、積層構造により吸音性が向上する。クッション層と不織布層の接合方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、クッション層及び/又は不織布層の融着性を利用して融着する方法、ニードルパンチなどにより絡合する方法、接着剤によって接着する方法、あるいはホットメルト樹脂を塗布し、熱圧縮よって一体化する方法を用いることができる。
【0012】
本実施形態の自動車内装材は、不織布層側の面から反対側のクッション層側の面に透過する厚み方向の通気度が0.1~50cc/cm2/secであり、好ましくは0.1~30cc/cm2/secであり、より好ましくは0.1~10cc/cm2/secである。前記厚み方向の通気度はJIS-L-1096、1018通気性試験方法(A法空気量)に準じて、フラジール型試験機にて行う。これらの範囲内にあることにより、多孔質吸音効果と面振動吸音効果の両側面の効果を発現することで、低周波、中周波、高周波の広い領域での吸音効果を発現できる。
【0013】
本実施形態の自動車内装材は、内装材側面から表面に透過する面内方向の通気度が40cc/cm2/sec以上であり、好ましくは45cc/cm2/sec以上、より好ましくは50cc/cm2/sec以上である。前記面内方向の通気度はJIS L1096、1018通気性試験方法(A法)の吸引条件に準じて、自動車内装材の通気性を測定する際に、自動車内装材の試験片サイズを15cm角とし、クッション層側の面を下側にして通気性試験機の開口部に置き、不織布層側の面には厚さ3mm、20cm角のシリコンラバープレートを重ねることで不織布層側の面を透過する空気を遮断し、自動車内装材の4辺の断面から入り自動車内装材の内部を通ってクッション層側の面を透過する空気の通気度のことをいう。面内方向の通気度が40cc/cm2/sec以上であることにより、人から発せられる水蒸気が面内方向の低湿度方向に向かって移動し、人と自動車内装材の接触部分に水蒸気がとどまらないため、蒸れ感が抑制される。蒸れ感の抑制の観点では面内方向の通気度は高い方が好ましいため、上限は特に限定されないが、400cc/cm2/sec以下であることにより、不織布層の背後空気層として有効に機能するため、吸音性が向上する。
【0014】
本実施形態の自動車内装材は、不織布層が車外側であり、クッション層が車室内側に設置されることが好ましい。これによって、エンジン、モーター、及び駆動系からの騒音や走行中のロードノイズ、風切り音などの音の振動エネルギーを不織布層において効果的に熱エネルギーに変換し、背後のクッション層で干渉させることにより、広い周波数領域での吸音効果を発現できる。さらに車室内側にクッション層があることにより、人が触ったり座ったりしたときの快適性を保つことができる。
【0015】
<クッション層>
本実施形態の自動車内装材を構成するクッション層は、140gf/cm2の荷重をかけたときの厚み変形量が初期厚みの5%以上30%以下であることが好ましく、より好ましくは7%~27%であり、さらに好ましくは10%~25%である。厚み変形量が初期厚みの5%以上であれば、着座時や接触時の変形が十分に大きいため軟らかさを感じ、不快感を感じにくい。前記厚み変形量が初期厚みの30%以下であれば、着座時や接触時の変形が大きすぎることがなく、十分な通気が確保できるため、蒸れ感を感じにくい。
【0016】
クッション層の厚みは、目的に応じて任意に設定できるが、1mm以上が好ましく、より好ましくは2mm以上であり、また、15mm以下が好ましく、より好ましくは10mm以下である。厚みが1mm以上であれば、クッション性が十分であり、15mm以下であれば、内装空間を圧迫しにくい。
【0017】
クッション層は、織物、編物、皮革、不織布、樹脂シート、樹脂製3次元造形物、および立体編物からなる群から選択される少なくとも1つであることができる。その中でも、人が触ったり座ったりした際にも十分な通気性が維持できる立体編物が好適である。
【0018】
<立体編物>
クッション層は、表層の編地と、裏層の編地と、該表層の編地と該裏層の編地を連結する連結糸と、から構成される立体編物であることが好ましい。かかる立体編物は、好ましくは9~28ゲージの、相対する2列の針床を有する経編機、丸編機、横編機等により編成されることができる。
【0019】
立体編物の連結糸には、モノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸を使用できるが、シート表皮材の圧縮弾性率を適度な範囲とし、圧縮回復性を良好にする点からモノフィラメント糸を用いることが好ましい。連結糸に用いる繊維素材としては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等、任意の素材の繊維を用いることができる。このうち、ポリエチレンテレフタラート繊維を用いると、自動車内装材のリサイクル性が向上するため好ましい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型、不定形なものでもよいが、丸型断面が自動車内装材のクッション性の耐久性を向上させる上で好ましい。また、自動車内装材が圧縮される際に連結糸どうしが擦れ合って発生する耳障りな音を防止するには、連結糸にモノフィラメント糸とマルチフィラメント糸を、交編、糸複合等により併用し、マルチフィラメント糸を緩衝材として利用することが好ましい。
【0020】
連結糸にモノフィラメント糸を用いる場合には任意の繊度のものが使用可能であるが、ソフトな弾力感を得るためには50~600デシテックスの繊度が好ましく、より好ましくは80~500デシテックスである。連結糸は表層の編地、及び/又は、裏層の編地の中にループ状の編目を形成してもよく、表層の編地、及び/又は、裏層の編地に挿入状態やタック状態で引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表層の編地及び裏層の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜してクロス状(X状)、又はトラス状に連結することが、立体編物の形態安定性を向上させる上で好ましい。この際、クロス状、トラス状共に連結糸が2本の連結糸で構成されていてもよく、1本の同一の連結糸が表または裏面で折り返し、見かけ上2本となっている場合であってもよい。
【0021】
立体編物の表層の編地及び裏層の編地に用いる繊維は、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維等の任意の繊維が挙げられる。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型、不定形なものでもよい。繊維の形態は、原糸、紡績糸、撚糸、仮撚加工糸、エアー交絡糸、流体噴射加工糸等の嵩高加工糸のいずれのものを採用してもよい。連結糸がモノフィラメント糸である場合、該連結糸が編地表面へ露出しないように被覆率を上げるには、マルチフィラメント糸の仮撚加工糸、紡績糸等の嵩高糸を用いることが好ましい。この場合のマルチフィラメント糸の繊度は、通常150~1000デシテックスであり、フィラメント数は任意に設定できる。表層及び裏層の編地の編地に用いる繊維がマルチフィラメントである場合、その単糸繊度は0.5~6.0デシテックスが好ましいが、単糸の強力がより高くなる1.0~5.0デシテックスがより好ましい。
【0022】
立体編物の表層の編地及び裏層の編地の編組織は同一である必要は無く、異なる編組織、異なる伸長特性のものであってもよいが、裏層の編地の外側面の動摩擦係数の標準偏差が表層の編地の外側面の動摩擦係数の標準偏差より小さい方が、表皮材としての貼り付け等が容易になり好ましい。
【0023】
立体編物の表層の編地及び裏層の編地のコース/ウェル数は、18/18~43/28個/2.54cmが好ましく、より好ましくは25/20~40/24個/2.54cmである。コース/ウェル数がこの範囲であると、通気度を維持したまま熱コンダクタンスや放熱性値を高くすることが可能であり、また、接触冷感も高くすることができる。所定のコース/ウェル数とするには、編み機ゲージ、機上コース、ヒートセット条件等を適宜選択することにより達成できる。
【0024】
<不織布層>
本実施形態の自動車内装材を構成する不織布層は、ニードルパンチ法、水流交絡法、エアレイ法により交絡処理された不織布であることができる。特に、ニードルパンチ法や水流交絡法により交絡処理された不織布が剥離強力の観点から好ましい。
【0025】
不織布層に含まれる繊維の種類は特に限定されず、例えば、化学繊維及び天然繊維のいずれであってもよく、また、有機繊維及び無機繊維のいずれであってもよいが、合成繊維であることが好ましい。合成繊維としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなど)、芳香族ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート)、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリD-乳酸、ポリL-乳酸、D-乳酸とL-乳酸との共重合体、D-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D-乳酸とL-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、これらのブレンド体など)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、共重合ポリアミドなど)、ポリフェニレンサルファイド樹脂などを含む繊維が挙げられ、特に、耐熱性、耐水性などに優れる芳香族ポリエステル系樹脂を含む繊維が好ましく用いられる。また、芳香族ポリエステル系樹脂は、エステルを形成する酸成分としてイソフタル酸やフタル酸等が重合又は共重合されたポリエステルであってもよい。なお環境配慮の観点からは、上記の樹脂は石油由来よりも植物由来であることが好ましい。また、リサイクル性の観点より、不織布層に含まれる素材はクッション層に含まれる素材と同一又は類似であることが好ましい。
【0026】
不織布層は、長繊維不織布を含むことが好ましく、特にスパンボンド不織布を含むことが好ましい。不織布層がスパンボンド不織布を含む場合、不織布層は少なくとも1層のスパンボンド層と、少なくとも1層の極細繊維層とが積層されることが好ましく、1層の極細繊維層が2層のスパンボンド層に挟まれて積層された、いわゆるSMS型であることがより好ましい。
【0027】
不織布層の目付は、20~100g/m2が好ましく、より好ましくは、20~70g/m2である。不織布層の目付が20g/m2以上であると、十分に緻密構造を持ちやすいため、クッション層と不織布層の固定が強固となる。不織布層の目付が100g/m2以下であると、過剰な緻密化を抑制できるため、クッション層まで音を侵入させやすく内装材全体での吸音効果を得やすい。
【0028】
不織布層が、スパンボンド層と極細繊維層とが積層されている場合、平均繊維径10μm以上30μm以下の少なくとも1層のスパンボンド層と、平均繊維径0.3μm以上7μm以下の少なくとも1層の極細繊維層とが積層されていることが好ましい。平均繊維径を上記範囲とすることにより、吸音効果と取り扱い性を両立しやすく、さらに、ニードルパンチ、水流交絡などの交絡の際に、極細繊維層の孔の拡大をスパンボンド層が防止することができるため、吸音性が高まる。
【0029】
不織布層が極細繊維層を含む場合は、低コストで細い繊維径を得るという観点から、極細繊維層はメルトブロー法によって製造されることが好ましい。
【0030】
不織布層は、厚み方向の通気度が0.1~50cc/cm2/secであることが好ましく、0.1~30cc/cm2/secであることがより好ましく、0.1~10cc/cm2/secであることがさらに好ましい。厚み方向の通気度が0.1cc/cm2/sec以上であると、遮音効果を示さないため、吸音効果が向上する。他方、厚み方向の通気度が0.5cc/cm2/sec以下であると、低周波域の吸音が向上する。
【0031】
<用途>
本実施形態の自動車内装材は、人が触れたり、着座したときにも十分なクッション性と通気性を有し、さらに吸音特性が高いため、シート、天井、コンソール、アームレスト、ドアトリム、カーペットなどとして好適に用いることができる。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例等における各物性は、下記方法により測定して得られたものである。尚、本発明の各種物性は原則的に下記方法により測定されるが、下記方法により測定できない事情がある場合は、適宜合理的な代替方法によって測定することが可能である。
【0033】
(1)厚み方向の通気度(cc/cm2/sec)
JIS-L-1096、1018通気性試験方法(A法空気量)に準じて、自動車内装材の不織布層側の面から反対側のクッション層側の面に透過する通気度を高山リード社製の通気性試験機FX3300ラボエアーIVを用いて測定する。
【0034】
(2)面内方向の通気度(cc/cm2/sec)
高山リード社製の通気性試験機FX3300ラボエアーIVを用い、試験片サイズ15cm角の自動車内装材のクッション層側の面を下側にして通気性試験機の開口部に置き、不織布層側の面に厚さ3mm、20cm角のシリコンラバープレートを重ね、その上から通気性試験機のテストヘッドを押し当ててクランプで固定し、JIS L1096、1018通気性試験方法(A法)に準じた吸引条件で、自動車内装材の4辺の断面の連結層から入り表側編地を透過する通気度を測定する。
【0035】
(3)圧縮時の厚み変形量(%)
カトーテック社製のKES-G5圧縮試験機を用い、試験片サイズ10cm角の自動車内装材をφ3.5の円形圧縮子にて速度5mm/sにて圧縮する。140gf/cm2荷重がかかった時の試料変形量T140(mm)と試料の初期厚みT0(mm)を用いて、下記式:
圧縮時の厚み変形量(%)={(T0-T140)/T0}×100(%)
により140gf/cm2の荷重をかけたときの厚み変形量を算出する。
【0036】
(4)平均繊維径(μm)
キーエンス社製のマイクロスコープVHX-700Fを用いて500倍の拡大写真を撮り、観察視野においてピントの合った繊維10本の平均値で求める。
【0037】
(5)厚み(mm)
JIS L 1913 B法に準拠した。荷重0.02kPaの圧力の厚みを3カ所以上測定し、その平均値を求める。
【0038】
(6)目付(g/m2)
不織布層の目付は、JIS L 1913に準拠して測定する。
【0039】
(7)吸音性能(吸音率(%))
JIS A 1405に準拠し、垂直の入射法の測定機(ブリュエル・ケアー社製Type4206T)を用いて、試作した自動車内装材に背後空気10mmを設けた条件で測定し、代表値として周波数3000Hz、及び5000Hzでの吸音率(%)を求める。
【0040】
(8)蒸れ感
自動車内装材を、自動車用座席シートの座部のウレタンパッド上に張り、座席シートの人体に接する座面が自動車内装材で形成された座席シートを作製した。座席シートを30℃、50%RHの温湿度環境に設置し、モニターが本環境で30分間安勢にした後、座席シートに10分間着座した。この際、着座前に対して10分後にモニターが蒸れを感じたかどうかを、以下の5段階の評価基準で官能評価させ、最頻値を評価結果とした。
5:快適である
4:やや快適である
3:どちらとも言えない
2:やや不快である
1:不快である。
【0041】
[実施例1]
不織布層として、SMS型の不織布(プレシゼ(登録商標)、旭化成社製、型番C5210、目付70.5g/m2、厚み0.23mm)を用いた。
次に、6枚筬を装備した22ゲージ、釜間6mmのダブルラッセル編機を用い、表層の編地を形成する2枚の筬(L2、L3)から167デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を2本引き揃えて1アウト1イン(L2)と1イン1アウト(L3)の配列で供給し、連結部を形成する1枚の筬(L4)から110デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを1アウト1インの配列で供給し、更に、裏層の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)から167デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をいずれもオールインの配列で供給した。
以下に示す編組織で、打ち込み35コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして、オーバーフィード率0%で175℃×1分で乾熱セットし、クッション層となる立体編物を得た。
(編組織)
L1:-
L2:1011/2322/
L3:2322/1011/
L4:3410/4367/
L5:0001/1110/
L6:2234/2210/
次に不織布の片面にアクリル酸エステルのバインダー溶液(濃度18.3質量%)を160g/m2付与して立体編物と接合し、乾燥機で乾燥させることにより、自動車内装材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0042】
[実施例2]
不織布をSMS型の不織布(プレシゼ(登録商標)、旭化成社製、型番C1200、目付41.3g/m2、厚み0.23mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様に自動車内装材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0043】
[実施例3]
不織布をSMS型の不織布(プレシゼ(登録商標)、旭化成社製、型番C1140、目付24.6g/m2、厚み0.23mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様に自動車内装材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0044】
[実施例4]
不織布をスパンボンド不織布(エルタス(登録商標)、型番E05070、旭化成社製、目付70.0g/m2、厚み0.21mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様に自動車内装材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0045】
[実施例5]
6枚筬を装備した22ゲージ、釜間6mmのダブルラッセル編機を用い、表層の編地を形成する2枚の筬(L2、L3)から167デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を2本引き揃えて1アウト1イン(L2)と1イン1アウト(L3)の配列で供給し、連結部を形成する1枚の筬(L4)から110デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを1アウト1インの配列で供給し、更に、裏層の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)から167デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をいずれもオールインの配列で供給した。
以下に示す編組織で、打ち込み35コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を15%幅出ししてオーバーフィード率0%で175℃×1分で乾熱セットし立体編物を得た。この立体編物を用いたこと以外は、実施例1と同様に自動車内装材を得た。その特性を以下の表1に示す。
(編組織)
L1:糸供給なし
L2:1011/1233/4544/4322/
L3:4544/4322/1011/1233/
L4:3410/3245/2145/2310/
L5:0001/1110/
L6:2234/2210/
【0046】
[実施例6]
クッション層として、立体編物の代わりにトリコット編地目付286g/m2、厚さ1.2mmを用いたこと以外は、実施例1と同様に自動車内装材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0047】
[比較例1]
不織布層として、繊度4.3dtex(繊維径:20μm)で繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート繊維(融点:260℃)をカーディングして得られた目付質量50g/m2の短繊維不織布を用いたこと以外は、実施例5と同様に自動車内装材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0048】
[比較例2]
クッション層として、立体編物の代わりにトリコット編地目付200g/m2、厚さ0.8mmを用いたこと以外は、実施例1と同様に自動車内装材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0049】
[比較例3]
不織布層として、繊度4.3dtex(繊維径:20μm)で繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート繊維(融点:260℃)をカーディングして得られた目付50g/m2の短繊維不織布を、クッション層として、トリコット編地目付95g/m2、厚さ0.4mmを用いたこと以外は、実施例1と同様に自動車内装材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0050】
本発明に係る自動車内装材は、十分な吸音性能を保持しつつ、高い通気性を有していることから、人が触れる部分に適用した際にも蒸れ感を感じにくいため、自動車内のシート、天井、コンソール、アームレスト、ドアトリム、カーペットなどの人に触れる部分に好適に利用可能である。