(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013248
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ヒートシール紙、および包装体
(51)【国際特許分類】
D21H 27/10 20060101AFI20240125BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20240125BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20240125BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
D21H27/10
B32B29/00
D21H19/20 A
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115179
(22)【出願日】2022-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】堀越 達也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 航希
(72)【発明者】
【氏名】紺屋本 博
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB85
4F100AK01B
4F100AK70B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CB03B
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4F100JM01B
4L055AG59
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4L055AH35
4L055AH50
4L055BE08
4L055CH13
4L055EA08
4L055EA09
4L055FA11
4L055GA05
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】製袋性に優れたヒートシール紙と、このヒートシール紙を用いた包装体を提供すること。
【解決手段】紙基材と、少なくとも一方の最表面にヒートシール層を有し、前記紙基材が、MD方向の破断伸びが2.0%以上5.5%以下であるヒートシール紙と、このヒートシール紙を用いた包装体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、少なくとも一方の最表面にヒートシール層を有し、
前記紙基材が、MD方向の破断伸びが2.0%以上5.5%以下であることを特徴とするヒートシール紙。
【請求項2】
前記紙基材の坪量が、70g/m2以上120g/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール紙。
【請求項3】
前記紙基材の密度が、0.6g/cm3以上0.8g/cm3以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートシール紙。
【請求項4】
前記ヒートシール層が、水分散性樹脂または水溶性樹脂の塗工層であることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートシール紙。
【請求項5】
請求項1または2に記載のヒートシール紙を用いた包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール紙と、これを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック廃棄物や地球温暖化等の環境問題に端を発して脱石油、脱プラスチックの風潮が高まっており、工業製品における化石資源に由来する樹脂材料や非生分解性の樹脂材料の使用量を極力低減することが望まれている。
このような風潮下において、包装体についても環境負荷の低減が望まれている。例えば、プラスチック製フィルムを用いた包装材の厚みを薄くする等の方法も考えられるが、このような薄い包装材は、包装体の形成工程等における取扱い性が低下し、熱圧着部での欠損や破れが発生しやすくなってしまう。また、樹脂の使用量は減少するものの、環境中に流出した場合に分解されずに半永久的に残存するという問題はそのままである。
【0003】
特許文献1、2には、紙基材にヒートシール層を積層したヒートシール紙を包装材に用いることが提案されている。これらは、ヒートシール性樹脂の種類によっては環境中で分解されるため、環境負荷を大幅に軽減することができる。しかし、ヒートシール紙は、プラスチック製フィルムと比較して物性が大きく異なるため、プラスチック製フィルムと同様の操業条件でヒートシール紙を製袋機に通すと、紙が蛇行する、破断する、得られた包装体に折れ・シワ・撓み等が発生する、所望の形状で製袋できない等の不具合が生じる場合があり、ラインスピードを遅くする等の操業条件を最適化する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-163675号公報
【特許文献2】特開2021-046234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製袋性に優れたヒートシール紙と、このヒートシール紙を用いた包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1.紙基材と、少なくとも一方の最表面にヒートシール層を有し、
前記紙基材が、MD方向の破断伸びが2.0%以上5.5%以下であることを特徴とするヒートシール紙。
2.前記紙基材の坪量が、70g/m2以上120g/m2以下であることを特徴とする1.に記載のヒートシール紙。
3.前記紙基材の密度が、0.6g/cm3以上0.8g/cm3以下であることを特徴とする1.または2.に記載のヒートシール紙。
4.前記ヒートシール層が、水分散性樹脂または水溶性樹脂の塗工層であることを特徴とする1.または2.に記載のヒートシール紙。
5.1.または2.に記載のヒートシール紙を用いた包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明のヒートシール紙は、従来の樹脂製フィルムからなる包装材の代替として用いることができる。本発明のヒートシール紙は、従来のプラスチック製フィルムの製袋に用いる製袋機に通し、所望の形状で製袋することができる。
本発明のヒートシール紙は、紙を主体としているため樹脂材料の使用量を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「ヒートシール紙」
ヒートシール紙は、紙基材と、少なくとも一方の最表面にヒートシール層を有する。
・紙基材
紙基材は、その少なくとも一方の面にヒートシール層が形成される基材である。紙基材は、主としてパルプからなるシートであり、パルプ、填料、各種助剤等を含む紙料を抄紙して得られる原紙をそのまま、または、原紙の少なくとも一面上に、目止め層、インク受容層、耐水層、耐油層、水蒸気バリア層、ガスバリア層等の機能層を1層または2層以上形成したもの等を用いることができる。
【0009】
本発明の紙基材は、MD方向の破断伸びが2.0%以上5.5%以下である。本発明の紙基材は、この破断伸びが2.0%以上5.5%以下であることにより、製袋性、耐衝撃性に優れている。この破断伸びが2.0%未満では、包装体とした際に破れやすくなるとともに、製袋機を通る際のテンション(張力)を大きくすることができず、所定のとおりに搬送できずに裁断間隔のずれ等が生じる場合がある。この破断伸びが5.5%を超えると、紙基材の伸びにヒートシール層が追従できず、ヒートシール層に微細なひび割れが生じてしまい、ヒートシール強度が低下する場合があり、また、裁断後の縮み量が大きくなり、特に、センターシール部にシワが生じやすくなる。このMD方向の破断伸びは、2.5%以上であることがより好ましく、3%以上であることがさらに好ましく、また、5%以下であることがより好ましく、4.5%以下であることがさらに好ましく、4%以下であることがよりさらに好ましい。紙基材の破断伸びは、JIS P8113:2011に準拠して測定される。
【0010】
本発明の紙基材は、CD方向の破断伸びとMD方向の破断伸びとの比(CD/MD)が、1.0以上2.5以下であることが好ましい。この破断伸びの比(CD/MD)がこの範囲内であると、破断伸びの縦横方向でのバランスがよいため、破れにくくなり、耐衝撃性が向上する。この破断伸びの比(CD/MD)は、2.2以下であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましい。なお、紙は、MD方向にパルプが配向するためCD方向に伸びやすく、CD方向の破断伸びがMD方向の破断伸びよりも大きくなる。
【0011】
本発明の紙基材は、厚さ100μm以上160μm以下であることが好ましい。紙基材は、プラスチック製フィルムと比較して強度に劣るが、厚さが100μm以上160μm以下である紙基材を用いることにより、強度に優れた包装体とすることが容易となる。紙基材の厚さは、110μm以上であることが好ましく、120μm以上であることがより好ましく、また、155μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。紙基材の厚さは、JIS P8118:2014に準拠して測定される。
【0012】
本発明の紙基材は、坪量70g/m2以上120g/m2以下であることが、強度、形態維持性、柔軟性等の観点から好ましい。紙基材の坪量は、75g/m2以上であることがより好ましく、80g/m2以上であることがさらに好ましく、また、110g/m2以下であることがより好ましく、100g/m2以下であることがさらに好ましい。紙基材の坪量は、JIS P8124:2011に準拠して測定される。
【0013】
本発明の紙基材は、密度0.6g/cm3以上0.8g/cm3以下であることが、強度、形態維持性、柔軟性等の観点から好ましい。紙基材の密度は、0.62g/cm3以上であることがより好ましく、また、0.75g/cm3以下であることがより好ましく、0.7g/cm3以下であることがさらに好ましい。紙基材の厚さは、密度と坪量から算出される。
【0014】
本発明の紙基材は、MD方向の引張こわさが、450kN/m以上850kN/m以下であることが、形態維持性と衝撃吸収性等の点から好ましい。紙基材の引張こわさは、ISO/DIS 1924-3に準拠して測定される。
本発明の紙基材は、CD方向の曲げ抵抗が65mN以上100mN以下であることが、製袋性、形態維持性等の点から好ましい。紙基材の曲げ抵抗は、ISO 2493に準拠して測定される。
【0015】
パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白パルプ(NUKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプなどの木材繊維、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維などを用いることができ、2種以上を混合して用いることもできる。これらの中で、未漂白パルプを用いることが好ましい。未漂白パルプは、漂白パルプと比較して、繊維長及び繊維幅が長く、かつ太いため、原紙強度を向上させることができる。具体的には、全パルプに対するLUKP、NUKP等の未漂白化学パルプの配合量が80重量%以上であることが好ましく、未漂白化学パルプの配合量が100重量%であることがより好ましい。また、全未漂白パルプに対するNUKPの配合量が、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、100重量%であることがさらに好ましい。また、紙基材は、MD方向の引張こわさが、450kN/m以上850kN/m以下であればよく、未漂白化学パルプを主たるパルプとする未晒クラフト紙、クルパック紙、セミクルパック紙等を用いることもできる。
パルプのろ水度(カナダ式標準ろ水度:CSF)は、紙基材の強度等の点から、600ml以下であることが好ましく、550ml以下であることがより好ましく、500ml以下であることがさらに好ましい。
【0016】
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの無機填料、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール系樹脂、微小中空粒子等の有機填料等の製紙用として公知の填料を使用することができる。なお、填料は、必須材料ではなく、使用しなくてもよい。
【0017】
各種助剤としては、ロジン、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)などのサイズ剤、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、嵩高剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が例示可能であり、必要に応じて適宜選択して使用可能である。
【0018】
原紙の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、ギャップフォーマー型、ハイブリッドフォーマー型(オントップフォーマー型)等のツインワイヤー抄紙機等、公知の製造(抄紙)方法、抄紙機が選択可能であり、クルパック装置を備えたギャップフォーマー型抄紙機を用い、クルパック処理を施すこともできる。また、抄紙時のpHは酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれでもよく、酸性領域で抄紙した後、紙層の表面にアルカリ性薬剤を塗工してもよい。また、原紙は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
【0019】
さらに、原紙の表面を各種薬剤で処理することが可能である。使用される薬剤としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これらの各種薬剤と顔料を併用してもよい。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
原紙の表面処理の方法は特に限定されるものではないが、ロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いることができる。
【0020】
さらに、原紙の少なくとも一面上に、目止め層、インク受容層、耐水層、耐油層、水蒸気バリア層、ガスバリア層等の機能層の1層または2層以上を形成することができる。機能層は、塗工層、ラミネート層のいずれでもよいが、塗工層であることが、紙基材の柔軟性を保持する点から好ましい。
【0021】
・ヒートシール層
ヒートシール層とは、ヒートシール適性を付与する層であり、具体的には、加熱・加圧することで接着対象に接着することができる層である。本発明のヒートシール紙は、ヒートシール適性を有することにより、包装体への成形や、包装体とした際の形状の維持、密封性の確保などが容易となる。
【0022】
ヒートシール層は、ヒートシール紙の少なくとも一方の最表面に設けられる。ヒートシール層は、塗工層、ラミネート層のいずれでもよいが、塗工層であることが、変形追従性に優れるため好ましい。
ヒートシール層が含む熱可塑性樹脂は特に制限されず、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル酸エステル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等のヒートシール用途に用いられる熱可塑性樹脂を特に制限することなく使用することができる。これらの中で、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル酸エステル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂が、ヒートシール強度の点から好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等の生分解性樹脂が、ゴミとして流出した場合の環境負荷軽減の点から好ましい。
ヒートシール層は、アンチブロッキング剤、シランカップリング剤、消泡剤等の添加剤を含むことができる。アンチブロッキング剤としては、顔料、ワックス、金属石鹸等を特に制限することなく使用することができる。本発明のヒートシール紙において、ヒートシール層が塗工層である場合、消泡剤を含むことが好ましい。消泡剤を含むことにより、均一な塗工層が得られるため、ヒートシール性が向上する。
【0023】
ヒートシール層が塗工層である場合、ヒートシール層の乾燥重量は、片面あたり3g/m2以上20g/m2以下であることが好ましい。乾燥重量が3g/m2未満では、ヒートシール適性が低下する場合がある。また、乾燥重量が20g/m2を超えてもヒートシール適性はほとんど向上せず、コストが増加する。ヒートシール層は、1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。ヒートシール層を2層以上の多層で構成することにより、単層の場合と比較して塗工ムラ等の欠陥を少なくすることができる。ヒートシール層を2層以上の多層で構成する場合は、全てのヒートシール層を合計した乾燥重量を上記範囲とすることが好ましく、また、1層あたりの乾燥重量の塗工量が2g/m2以上であることが好ましい。
ヒートシール層がラミネート層である場合、ヒートシール層の厚さは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。厚さが20μm未満では、ヒートシール性を確保できない場合がある。また、厚さが100μmを超えるとコストの観点から好ましくない。
【0024】
ヒートシール層が塗工層である場合、塗工方法は特に限定されるものではなく、公知の塗工装置および塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター等が挙げられる。
塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工のいずれでもよいが、安全衛生上の観点から水系塗工であることが好ましい。水系塗工する場合、熱可塑性樹脂としては、水分散性樹脂、または水溶性樹脂を用いるため、ヒートシール層は、水分散性樹脂または水溶性樹脂の塗工層であることが好ましい。
ヒートシール層がラミネート層である場合、その形成方法は特に限定されるものではなく、例えば、押出しラミネート法、ウェットラミネート法、ドライラミネート法等の各種方法を適宜使用して積層することができる。
【0025】
「包装体」
本発明の包装体は、上記した本発明であるヒートシール紙を用いる。
包装体の形状は特に制限されず、縦ピロー包装袋、横ピロー包装袋、サイドシール袋、二方シール袋、三方シール袋、ガゼット袋、底ガゼット袋、スタンド袋等とすることができる。本発明の包装体は、紙を主体としているため、従来の樹脂製の包装材を用いたものと比較して破りやすい。
【実施例0026】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0027】
実施例および比較例で使用した原材料は、以下の通りである。
【0028】
[実施例1]
<ヒートシール層塗料の調製>
エチレン-アクリル酸共重合体(三井化学(株)製、ケミパールS500、固形分43%の水分散体)100部、消泡剤(BASF製、Formstar SI 2213、固形分100%)0.2部を混合し、固形分濃度が33%になるよう水を加えて撹拌し、ヒートシール層塗料(濃度33%)を得た。
<ヒートシール紙の製造>
得られたヒートシール層塗料を、坪量91.1g/m2の未晒クラフト紙(新東海製紙(株)製、厚み143μm)にヒートシール層の乾燥後の塗工量が6.0g/m2となるように、エアナイフコーターで塗工し、ヒートシール層を形成した。
【0029】
[実施例2]
紙基材を坪量85.6g/m2の未晒クラフト紙(新東海製紙(株)製、厚み130μm)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
[実施例3]
紙基材を坪量96.7g/m2の未晒クラフト紙(新東海製紙(株)製、厚み149μm)に変更し、ヒートシール層の乾燥後の塗工量を7.5g/m2とした以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
[実施例4]
紙基材を坪量96.0g/m2の未晒クラフト紙(新東海製紙(株)製、厚み146μm)に変更し、ヒートシール層の乾燥後の塗工量を7.5g/m2とした以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0030】
[比較例1]
紙基材を坪量88.6g/m2の未晒クラフト紙(新東海製紙(株)製、厚み130μm)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0031】
[比較例2]
紙基材を坪量99.4g/m2の未晒クラフト紙(新東海製紙(株)製、厚み143μm)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0032】
得られた紙基材、または、ヒートシール紙について、下記評価を行った。結果を表1に示す。
・引張こわさ
ISO/DIS1924-3:に準拠して、L&W引張試験器にて測定した。
・破断伸び
JIS P8113:2006に従い、第二部定速伸張法に準拠して、L&W引張試験器にて測定した。
・曲げ抵抗値
ISO 2493に準拠し、L&W BENDING TESTERを用いて測定した。
【0033】
・ヒートシール強度
得られたヒートシール紙から1辺100mmの正方形の試験片を2枚切り出し、塗工層同士を接触させて、加圧温度130℃、加圧圧力2kgf/cm2、加圧時間0.5秒でヒートシールした。
ヒートシールした試験片を手で剥離させた際の、剥離部分を目視で観察した。
1:紙基材内で剥離する(紙基材が破壊される)。
2:大部分が紙基材内で剥離する(紙基材が破壊される)。
3:塗工層間で剥離する。
【0034】
得られたヒートシール紙を幅310mmに裁断してロール状に巻回した。これを横ピロー包装機(大森機械工業社、S-5000X BX)を用いて、横ピロー包装機を製袋器間口の幅100mm×高さ40mmに設定し、カットピッチ150mm、回転数60cpm、センターシール、トップシール温度160℃の条件で横ピロー袋を900個作成し、下記基準で評価した。なお、製造中にヒートシール紙が破断したものは、その時点で製造を中止した。
【0035】
・搬送性
OK:所定のとおりにヒートシール紙を搬送することができる。
NG:ヒートシール紙の搬送にズレが生じる。
・センターシール部分のしわ(N=100)
1:しわがない、または注視しなければ気づかない程度の僅かなしわが発生している。
2:小さなしわは発生しているものの局所的であり、外観上問題とならない(実用OK)。
3:ひと目で気付く大きさのしわが発生しているものがある(実用NG)。
【0036】
【0037】
本発明である実施例1~4のヒートシール紙は、実用に耐えるヒートシール強度を有し、また、製袋機内を所定の通りに搬送することができ、センターシール部のしわが実用OKレベルの横ピロー袋を製造することができた。
比較例1のヒートシール紙は、ヒートシール強度に劣り、得られた横ピロー袋には、センターシール部に大きなしわが生じているものが存在した。
比較例2のヒートシール紙は、所定のとおりに搬送することができず、150mm間隔で裁断されないものが発生した。