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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132484
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】被研磨物保持具
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/32 20120101AFI20240920BHJP
   B24B 37/30 20120101ALI20240920BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B24B37/32 Z
B24B37/30 Z
H01L21/304 622G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043259
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】江見 浩一
(72)【発明者】
【氏名】河井 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】江澤 俊二
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AB04
3C158AC04
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA17
3C158EA12
3C158EA23
3C158EA25
3C158EB01
5F057AA03
5F057AA53
5F057BA11
5F057BB03
5F057CA11
5F057DA03
5F057EB07
5F057EC10
5F057EC24
5F057EC25
5F057FA13
5F057FA20
(57)【要約】
【課題】強化繊維の配向方向と交差する端面を有する場合においても、研磨中における前記端面からの前記強化繊維の脱落を薄層にて抑制することができる被研磨物保持枠を備える被研磨物保持具を提供する。
【解決手段】本発明に係る被研磨物保持具は、ベース基板と、該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠であって、内周面にて被研磨物を外周側から保持する被研磨物保持枠と、を備え、前記被研磨物保持枠は、強化繊維を含む樹脂材で構成されており、前記被研磨物保持枠の前記内周面には、光硬化性樹脂を含む光硬化性樹脂層が備えられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠であって、内周面にて被研磨物を外周面側から保持する被研磨物保持枠と、を備え、
前記被研磨物保持枠は、強化繊維を含む樹脂材で構成されており、
前記被研磨物保持枠の前記内周面には、光硬化性樹脂を含む光硬化性樹脂層が備えられている
被研磨物保持具。
【請求項2】
前記光硬化性樹脂は、ウレタンアクリレート樹脂である
請求項1に記載の被研磨物保持具。
【請求項3】
前記光硬化性樹脂層は、10μm以上100μm以下の厚さを有する
請求項1または2被研磨物保持具。
【請求項4】
ベース基板と、
該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠であって、内周面にて被研磨物を外周面側から保持する被研磨物保持枠と、を備え、
前記被研磨物保持枠は、強化繊維を含む樹脂材で構成されており、かつ、内周面を一端として前記内周面から外周面に向かう途中位置まで前記ベース基板の面方向と平行方向に延びる平坦面と、前記途中位置に位置する前記平坦面の他端から前記外周面に向けて先下がりとなるように傾斜して延びる傾斜面とを有していて、
前記被研磨物保持枠の前記傾斜面及び前記外周面には、光硬化性樹脂を含む光硬化性樹脂層が備えられている
被研磨物保持具。
【請求項5】
前記光硬化性樹脂は、エポキシアクリレート樹脂である
請求項4に記載の被研磨物保持具。
【請求項6】
前記光硬化性樹脂層は、前記傾斜面との直交方向の切断面が端縁側から中心側に向けて幅狭となる形状を有していて、
前記光硬化性樹脂層の厚さの最大値は200μm以下であり、
前記光硬化性樹脂層の厚さの最大値と前記光硬化性樹脂層の厚さの最小値との差が100μm以下である
請求項4または5に記載の被研磨物保持具。
【請求項7】
前記光硬化性樹脂層は、前記平坦面よりも上方に隆起した隆起部を有しており、
前記平坦面を基準としたときに、前記隆起部の高さの最大値は100μm以下であり、
前記平坦面を基準としたときに、前記隆起部の高さの最大値と前記隆起部の高さの最小値との差が30μm以下である
請求項6に記載の被研磨物保持具。
【請求項8】
ベース基板と、
該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠であって、内周面にて被研磨物を外周面側から保持する被研磨物保持枠と、を備え、
前記被研磨物保持枠は、強化繊維を含む樹脂材で構成されており、かつ、内周面を一端として前記内周面から外周面に向かう途中位置まで前記ベース基板の面方向と平行方向に延びる平坦面と、前記途中位置に位置する前記平坦面の他端から前記外周面に向けて先下がりとなるように傾斜して延びる傾斜面とを有していて、
前記被研磨物保持枠の前記内周面には、第1光硬化性樹脂を含む第1光硬化性樹脂層が備えらえており、前記被研磨物保持枠の前記外周面及び前記傾斜面には、第2光硬化性樹脂を含む第2光硬化性樹脂層が備えられている
被研磨物保持具。
【請求項9】
前記第1光硬化性樹脂はウレタンアクリレート樹脂であり、前記第2光硬化性樹脂はエポキシアクリレート樹脂である
請求項8に記載の被研磨物保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被研磨物保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェハのような半導体ウェハといった被研磨物を被研磨物保持具に保持させた状態で、研磨パッドを用いて前記被研磨物を研磨することが知られている(例えば、下記特許文献1)。
前記被研磨物保持具は、下記特許文献1に記載されているように、通常、ベース基板と、該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠(ガイドリング)であって、内周面にて被研磨物を外周面側から保持する被研磨物保持枠(ガイドリング)と、を備えている。
そして、前記被研磨物保持具においては、前記被研磨物保持枠は、研磨時における変形を抑制するために、通常、前記強化繊維を格子状に編むことによって得られた布状基材に前記樹脂を含浸させて得た樹脂含浸布状基材を複数枚積層させることにより得られる積層板(例えば、ガラスエポキシ積層板)などの十分な強度を有する材料で構成されている。
【0003】
そして、前記被研磨物保持具と前記研磨パッドとを用いた前記被研磨物の研磨は、例えば、円盤状をなすヘッドと、円盤状をなすとともに前記ヘッドと対向配置される下定盤とを備える研磨機を用いて、以下の手順にしたがって実施される。

(1)前記被研磨物保持枠内に前記被研磨物を保持させた状態で前記被研磨物保持具を前記研磨機の前記ヘッドの下面に貼り付けるとともに、前記研磨機の前記下定盤の上面に円盤状の研磨パッドを貼り付ける。
(2)前記ヘッドを下方に移動させるとともに前記下定盤を上方に移動させて、前記ヘッドの下面に貼り付けられた前記被研磨物保持枠内の前記被研磨物を前記下定盤の上面に貼り付けられた前記研磨パッドの研磨面(上面)に当接させる。
(3)前記被研磨物を前記研磨パッドに当接させた状態で、前記研磨パッドの研磨面(上面)に研磨用スラリーを供給しつつ、前記ヘッド及び前記下定盤を回転させる。これにより、前記研磨パッドによって前記被研磨物を研磨する。
【0004】
ところで、前記強化繊維を含む樹脂材は、ガラス繊維などの強化繊維を布状に編んで重ねたものにエポキシなどの樹脂を含浸させて構成されるリジッドな材料である。
そのため、前記強化繊維を含む樹脂材で前記被研磨物保持枠を構成した場合、前記被研磨物保持枠の内周面及び外周面と交差する方向に前記強化繊維が配向するようになる。
したがって、前記被研磨物保持枠が前記強化繊維を含む樹脂材で構成されている場合に、上記の手順にしたがって前記被研磨物を研磨すると、研磨中に、前記被研磨物保持枠の内周面及び外周面といった端面から前記強化繊維の一部が脱落してしまうことがある。
【0005】
また、前記被研磨物保持枠が、前記強化繊維を含む樹脂材で構成されていて、かつ、内周面を一端として前記内周面から外周面に向かう途中位置まで水平方向に延びる平坦面と、前記途中位置に位置する前記平坦面の他端から前記外周面に向けて先下がりとなるように傾斜して延びる傾斜面とを有している場合、すなわち、前記被研磨物保持枠の外周端側が面取り加工されているような場合、前記強化繊維は前記傾斜面とも交差するように配向されるようになる。
したがって、前記被研磨物保持枠が端面として上記のような傾斜面を備えている場合においても、上記の手順にしたがって前記被研磨物を研磨すると、内周面や外周面の場合と同様に、研磨中に、前記被研磨物保持枠の前記傾斜面から前記強化繊維の一部が脱落してしまうことがある。
【0006】
そして、前記内周面、前記外周面、及び、前記傾斜面といった端面から前記強化繊維の一部が脱落してしまうと、脱落した前記強化繊維の一部が前記被研磨物の被研磨面に付着するようになって、研磨中に前記被研磨物の被研磨面にスクラッチが入ってしまうことがある。
【0007】
そのため、下記特許文献1には、前記被研磨物保持枠の外周面及び傾斜面から前記強化繊維の一部が脱落することを抑制するために、前記外周面及び前記傾斜面にエポキシ樹脂を含むエポキシコーティング層を設けることが記載されている。
また、下記特許文献2には、前記被研磨物保持枠の内周面から前記強化繊維の一部が脱落することを抑制するために、前記被研磨物保持枠の内周面に接着剤層を介して軟質ゴムなどの弾性体で構成された緩衝材を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2022-551610号公報
【特許文献2】特開2009-154280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1には、前記外周面及び前記傾斜面に設ける前記エポキシコーティング層の厚さを数mm程度(1mm~5mm)とすることが記載されている。
前記エポキシコーティング層は、通常、熱硬化させた状態で前記外周面や前記傾斜面に設けられるが、前記エポキシコーティング層を上記のような厚さとした場合、該エポキシコーティング層を熱硬化させたときに硬化収縮の程度が大きくなる。
このように、硬化収縮の程度が大きくなると、前記エポキシコーティング層の機械的強度が低下するようになるので、研磨中に前記エポキシコーティング層が破損してしまって前記外周面及び前記傾斜面から剥離してしまうことが懸念される。
また、上記特許文献2では、前記強化繊維の一部の脱落を接着剤層と緩衝剤層との2層構造で抑制していることから、例えば、100μm以下の厚みを有する薄層として構成することは、必ずしも容易ではない。
【0010】
一方で、近年、前記被研磨物保持枠において、内周面、外周面、及び、傾斜面などの端面において、薄層で構成したコーティング層にて端面を保護することにより、研磨中における前記端面からの強化繊維の脱落を抑制することが要望されているものの、これについての検討は、未だ十分になされているとは言い難い。
【0011】
そこで、本発明は、強化繊維の配向方向と交差する端面を有する場合においても、研磨中における前記端面からの前記強化繊維の脱落を薄層にて抑制することができる被研磨物保持枠を備える被研磨物保持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る被研磨物保持具は、
ベース基板と、
該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠であって、内周面にて被研磨物を外周側から保持する被研磨物保持枠と、を備え、
前記被研磨物保持枠は、強化繊維を含む樹脂材で構成されており、
前記被研磨物保持枠の前記内周面には、光硬化性樹脂を含む光硬化性樹脂層が備えられている。
【0013】
本発明に係る被研磨物保持具は、
ベース基板と、
該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠であって、内周面にて被研磨物を外周側から保持する被研磨物保持枠と、を備え、
前記被研磨物保持枠は、強化繊維を含む樹脂材で構成されており、かつ、内周面を一端として前記内周面から外周面に向かう途中位置まで水平方向に延びる平坦面と、前記途中位置に位置する前記平坦面の他端から前記外周面に向けて先下がりとなるように傾斜して延びる傾斜面とを有していて、
前記被研磨物保持枠の前記傾斜面及び前記外周面には、光硬化性樹脂を含む光硬化性樹脂層が備えられている。
【0014】
本発明に係る被研磨物保持具は、
ベース基板と、
該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠であって、内周面にて被研磨物を外周側から保持する被研磨物保持枠と、を備え、
前記被研磨物保持枠は、強化繊維を含む樹脂材で構成されており、かつ、内周面を一端として前記内周面から外周面に向かう途中位置まで水平方向に延びる平坦面と、前記途中位置に位置する前記平坦面の他端から前記外周面に向けて先下がりとなるように傾斜して延びる傾斜面とを有していて、
前記被研磨物保持枠の前記内周面には、第1光硬化性樹脂を含む第1光硬化性樹脂層が備えらえており、前記被研磨物保持枠の前記外周面及び前記傾斜面には、第2光硬化性樹脂を含む第2光硬化性樹脂層が備えられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、強化繊維の配向方向と交差する端面を有する場合においても、研磨中における前記端面からの前記強化繊維の脱落を薄層にて抑制することができる被研磨物保持枠を備える被研磨物保持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る被研磨物保持具の構成を示す概略断面図。
図2】本実施形態に係る被研磨物保持具における被研磨物保持枠の上面視を示す平面図。
図3A図1のA部分を拡大して示した一の概略断面図。
図3B図1のA部分を拡大して示した他の概略断面図。
図4】本実施形態に係る被研磨物保持具の使用状態を示す概略断面図。
図5A】被研磨物保持具の他の例の構成を示す概略断面図。
図5B】被研磨物保持具のさらに他の例の構成を示す概略断面図。
図5C】被研磨物保持具のさらに他の例の構成を示す概略断面図。
図6A】研磨試験前における比較例1に係る被研磨物保持枠の内周面のSEM画像。
図6B】研磨試験後における比較例1に係る被研磨物保持枠の内周面のSEM画像。
図6C】研磨試験前における実施例1に係る被研磨物保持枠の内周面のSEM画像。
図6D】研磨試験後における実施例1に係る被研磨物保持枠の内周面のSEM画像。
図7A】研磨試験前における比較例1に係る被研磨物保持枠の外周面のSEM画像。
図7B】研磨試験後における比較例1に係る被研磨物保持枠の外周面のSEM画像。
図7C】研磨試験前における実施例1に係る被研磨物保持枠の外周面のSEM画像。
図7D】研磨試験後における実施例1に係る被研磨物保持枠の外周面のSEM画像。
図8A】実施例2、実施例3、及び、比較例2の被研磨物保持具を用いて研磨試験を実施したときの研磨レートを示すグラフ。
図8B】実施例2、実施例3、及び、比較例2の被研磨物保持具を用いて研磨試験を実施したときのプラテンの負荷電圧を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
なお、以下では、本発明の一実施形態を、単に、本実施形態と称することがある。
【0018】
[被研磨物保持具]
図1に示したように、本実施形態に係る被研磨物保持具10は、ベース基板1と、ベース基板1の一表面に配される被研磨物保持枠2と、を備える。
本実施形態に係る被研磨物保持具10において、被研磨物保持枠2は、内周面2aと外周面2bとを備えていて、内周面2aにて被研磨物保持枠2内に収容された被研磨物を外周面側から保持する。
本実施形態に係る被研磨物保持具10においては、被研磨物保持枠2は、内周面2aを一端として該内周面2aから外周面2bに向かう途中位置までベース基板1の面方向Sと平行方向に延びる平坦面2cと、前記途中位置に位置する該平坦面2cの他端から外周面2bに向けて先下がりとなるように傾斜して延びる傾斜面2dと、を有する。
前記被研磨物としては、例えば、シリコンウェハなどの半導体ウェハが挙げられる。
なお、図1に示したように、被研磨物保持具10においては、ベース基板1の外周端と被研磨物保持枠2の外周端とは、通常、上面視において略一致している。
すなわち、ベース基板1の外周面と被研磨物保持枠2の外周面2bとは、通常、面一となっている。
【0019】
傾斜面2dは、直線状に傾斜していてもよいし、上方に凸となるような円弧を描くように傾斜していてもよいし、下方に凸となる円弧を描くように傾斜していてもよい。
なお、図1では、傾斜面2dが直線状に傾斜している例を示している。
【0020】
被研磨物保持枠2は、前記被研磨物が収容される保持穴4を有している。
被研磨物保持枠2は、図2に示したように、上面視において円形状をなしている。詳しくは、被研磨物保持枠2は、上面視において同心円状をなしている。
被研磨物保持枠2は、両面接着テープや接着剤で構成された粘着層を介してベース基板1に取り付けられる。
なお、図1においては、前記粘着層の図示は省略している。
【0021】
本実施形態に係る被研磨物保持具10では、前記被研磨物が水など液体を介することにより発生する表面張力を利用して、ベース基板1と前記被研磨物の保持界面との間で負圧を発生させることにより、前記被研磨物が保持穴4内で吸着されて保持される。
そのため、図4に示したような、定盤(下定盤)100とヘッド200とを備える研磨機1000において、前記被研磨物を保持した状態で被研磨物保持具10をヘッド200に貼り付けた場合においても、具体的には、前記被研磨物の被研磨面が下方を向くように配された場合においても、被研磨物保持具10は、前記被研磨物を落下させることなく十分に保持することができる。
【0022】
傾斜面2dは、被研磨物保持枠2の外周端部分を面取り加工することにより形成されていることが好ましい。
傾斜面2dは、平坦面2cに対して、3°以上の角度をなして傾斜していてもよいし、5°以上の角度をなして傾斜していてもよいし、6°以上の角度をなして傾斜していてもよい。
傾斜面2dは、平坦面2cに対して、20°以下の角度をなして傾斜していてもよいし、15°以下の角度をなして傾斜していてもよいし、10°以下の角度をなして傾斜していてもよい。
傾斜面2dは、同心円領域CA(図2参照)において、外周端(外周面2b)から1/3以下までの領域に形成されていてもよいし、1/4以下までの領域に形成されていてもよいし、1/5以下までの領域に形成されてもよい。
【0023】
本実施形態に係る被研磨物保持具10においては、被研磨物保持枠2は、強化繊維を含む樹脂材で構成されている。
前記強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、及び、カーボン繊維などが挙げられる。
前記樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及び、シリコン樹脂などが挙げられる。
前記強化繊維を含む樹脂材は、前記強化繊維を格子状に編むことによって得られた布状基材に前記樹脂を含浸させて得た樹脂含浸布状基材を複数枚積層させることにより得られる積層板であってもよい。
なお、前記強化繊維がガラス繊維であり、前記樹脂がエポキシ樹脂である前記積層板は、ガラスエポキシ積層板と称される。
【0024】
本実施形態に係る被研磨物保持具10においては、被研磨物保持枠2は、内周面2aに第1光硬化性樹脂を含む第1光硬化性樹脂層5が備えられており、外周面2b及び傾斜面2dに第2光硬化性樹脂を含む第2光硬化性樹脂層6が備えられている。
【0025】
ここで、内周面2a、外周面2b、及び、傾斜面2dに2液型エポキシ樹脂を用いてコーティング層を設ける場合、2液型エポキシ樹脂は一の液体であるエポキシ樹脂と他の液体である硬化剤とを混合させて混合溶液を得て、該混合溶液を内周面2a、外周面2b、及び、傾斜面2dに塗布して塗布層を形成した後、該塗布層を熱硬化させることによってコーティング層とされる。
そして、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との混合溶液を塗布して得られる塗布層は、通常、硬化させるのに比較的長い時間を要する。
そのため、硬化中に前記塗布層の形状が崩れないようにするためには、前記塗布層が流動することを抑制するために、前記混合溶液として比較的粘度が高いものを用いる必要がある。
このように、比較的高粘度の混合溶液を用いて前記塗布層を形成すると、該塗布層の厚さは、通常、数mm程度と比較的厚くなる。
また、比較的高粘度の混合溶液を用いて前記塗布層を形成すると、該塗布層の厚さに偏りが生じ易くなる。
これに対し、光硬化性樹脂を含む光硬化性樹脂組成物を用いて前記塗布層を形成すると、該塗布層に所定量の光(例えば、活性エネルギー線など)を照射させることにより、前記塗布層を速やかに硬化させることができる。
このように、前記塗布層を速やかに硬化させることができると、前記塗布層が流動することが原因となって前記塗布層の形状が崩れることを懸念する必要がなくなるので、前記光硬化性樹脂組成物として低粘度のものを用いることができる。
そして、前記光硬化性樹脂組成物として低粘度のものを用いることにより、前記塗布層を数10μm~数100μm程度の厚さを有する薄層とすることができる。
また、前記塗布層が薄層となることにより、前記塗布層の厚さに偏りが生じることを抑制できる。
【0026】
上記のように、本実施形態に係る被研磨物保持具10においては、被研磨物保持枠2の内周面2a、外周面2b、及び、傾斜面2dに設けられるコーティング層は、光硬化性樹脂を含む光硬化性樹脂層であるので、数10μm~数100μm程度の薄層でコーティング層を形成することができる。
すなわち、本実施形態に係る被研磨物保持具10は、被研磨物保持枠2の内周面2a、外周面2b、及び、傾斜面2dに、薄層のコーティング層(光硬化性樹脂層)を備えるものとなる。
また、被研磨物の内周面2aに備えられる第1光硬化性樹脂層5、並びに、外周面2b及び傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6が、薄層となることにより、第1光硬化性樹脂層5の厚さ及び第2光硬化性樹脂層6の厚さに偏りが生じることを抑制することができる。
【0027】
前記第1光硬化性樹脂は、光の照射によって硬化する特性を有するものであれば、どのようなものでも用いることができる。
前記第1光硬化性樹脂は、活性エネルギー線の照射によって硬化する特性を有するものであることが好ましい。
前記活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、または、X線などが挙げられる。これらの各種活性エネルギー線の中でも、紫外線を用いることが好ましい。すなわち、前記第1光硬化性樹脂は、紫外線の照射によって硬化する特性を示す紫外線硬化樹脂であることが好ましい。
前記第1光硬化性樹脂としては、各種公知の光硬化性樹脂を用いることができる。
これら各種公知の光硬化性樹脂の中でも、前記第1光硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート樹脂を用いることが好ましい。
なお、前記ウレタンアクリレート樹脂は、紫外線硬化樹脂に分類される。
また、前記ウレタンアクリレート樹脂としては、ポリイソシアネート類または遊離のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに活性水素原子を有する(メタ)アクリレートを反応させることによって得られた、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることができる。
前記ウレタンアクリレート樹脂は、光硬化させた後において適度な弾性を示す。
そして、第1光硬化性樹脂層5は、光照射(紫外線照射)されて硬化された状態で、内周面2aに備えられている。
そのため、第1光硬化性樹脂層5に含ませる前記第1光硬化性樹脂として前記ウレタンアクリレート樹脂を用いることにより、第1光硬化性樹脂層5は適度な弾性を有するものとなる。
これにより、研磨パッドを用いて被研磨物保持枠2内に保持した前記被研磨物を研磨しているときに、前記被研磨物の外周部分に過度な応力が集中することにより、前記外周部分に破損が生じることを抑制できる。
また、前記被研磨物によって、被研磨物保持枠2の内周面2aに過度な応力が集中して被研磨物保持枠2の内周面2aから強化繊維の一部が脱落することを抑制できる。
【0028】
第1光硬化性樹脂層5は、光重合開始剤を含んでいてもよい。
前記光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、及び、アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0029】
第1光硬化性樹脂層5は、前記第1光硬化性樹脂と前記光重合開始剤とを含む第1光硬化性樹脂組成物を調製して、前記第1光硬化性樹脂組成物を被研磨物保持枠2の内周面2aに所定の厚さで塗布して塗布層を形成した後、活性エネルギー線などの光を前記塗布層に所定量照射して前記塗布層を硬化させることにより得ることができる。
例えば、前記活性エネルギー線としては波長320~400nmの紫外線を用いることができ、前記活性エネルギー線が紫外線である場合には、積算光量は6000mJ/cm以上とすることができる。
【0030】
被研磨物の外周と均一に当接させるために、第1光硬化性樹脂層5の露出面(被研磨物と当接する面)は、平坦面であることが好ましい。
第1光硬化性樹脂層5の露出面にフラット加工を施すことにより、第1光硬化性樹脂層5の露出面を平坦面とすることができる。
【0031】
第1光硬化性樹脂層5の厚さは、10μm以上であることが好ましい。
また、第1光硬化性樹脂層5の厚さは、20μm以上であってもよいし、30μm以上であってもよい。
さらに、第1光硬化性樹脂層5の厚さは、100μm以下であることが好ましい。
また、第1光硬化性樹脂層5の厚さは、80μm以下であってもよいし、60μm以下であってもよい。
第1光硬化性樹脂層5の厚さは、ワンショット3D形状測定機(キーエンス社製、型式「VR-5000」)を用いたXY画像計測により求めることができる。
なお、上記XY画像計測は、測定倍率25倍で実施する。
ここで、第1光硬化性樹脂層5が露出面にフラット加工を施されたものでない場合には、第1光硬化性樹脂層5の厚さとは、内周面2aを基準としたときに、第1光硬化性樹脂層の露出面において最も隆起している部分までの高さを意味する。
【0032】
第1光硬化性樹脂層5は、アスカーD硬度計を用いて測定されたアスカーD硬度の値が30度以上50度以下であることが好ましい。
このようなアスカーD硬度の値を有することにより、研磨パッドを用いて被研磨物保持枠2内に保持した前記被研磨物を研磨しているときに、前記被研磨物の外周部分に過度な応力が集中することが原因となって、前記外周部分に破損が生じることをより一層抑制することができる。
また、前記被研磨物によって、被研磨物保持枠2の内周面2aに過度な応力が集中して被研磨物保持枠2の内周面2aから強化繊維の一部が脱落することをより一層抑制することができる。
【0033】
前記第2光硬化性樹脂も、光の照射によって硬化する特性を有するものであれば、どのようなものでも用いることができる。
前記第2光硬化性樹脂も、活性エネルギー線の照射によって硬化する特性を有するものであることが好ましい。
前記活性エネルギー線としては、上記したものが挙げられる。前記活性エネルギー線の中でも、紫外線を用いることが好ましい。すなわち、前記第2光硬化性樹脂も、紫外線の照射によって硬化する特性を示す紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。
前記第2光硬化性樹脂としては、各種公知の光硬化性樹脂を用いることができる。
これら各種公知の光硬化性樹脂の中でも、前記第2光硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート樹脂を用いることが好ましい。
なお、前記エポキシアクリレート樹脂は、紫外線硬化樹脂に分類される。
前記エポキシアクリレート樹脂としては、各種公知のエポキシアクリレート樹脂を用いることができる。
例えば、前記エポキシアクリレート樹脂としては、エポキシ樹脂と、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、または、エステル化合物などとの付加反応により合成される樹脂が挙げられる。
このようなエポキシアクリレート樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、ノボラック型エポキシアクリレート樹脂、ポリメチレン型エポキシアクリレート樹脂、ポリエチレンオキシド型エポキシアクリレート樹脂、または、ポリプロピレンオキシド型エポキシアクリレート樹脂などが挙げられる。
また、前記エポキシアクリレート樹脂は、二種またはそれ以上のエポキシ骨格を有するエポキシアクリレート樹脂であってもよいし、分岐エポキシアクリレート樹脂であってもよい。
【0034】
前記エポキシアクリレート樹脂は、光硬化させた後において、被研磨物保持枠2を構成する強化繊維を含む樹脂材(例えば、ガラスエポキシ積層板)と同程度の硬度を有するようになる。すなわち、光硬化後の前記エポキシアクリレート樹脂は、比較的高い硬度を示すものとなる。
そして、第2光硬化性樹脂層6は、光照射(紫外線照射)された硬化された状態で、外周面2b及び傾斜面2dに備えられている。
そのため、第2光硬化性樹脂層6に含ませる前記第2光硬化性樹脂として前記エポキシアクリレート樹脂を用いることにより、第2光硬化性樹脂層6は、十分な硬度を示すものとなる。
これにより、研磨パッドを用いて被研磨物保持枠2内に保持した前記被研磨物を研磨しているときに、被研磨物保持枠2の外周面2b及び傾斜面2dから前記強化繊維が脱落することを抑制できる。
また、上で説明したように、光硬化後の前記エポキシアクリレート樹脂は被研磨物保持枠2を構成する強化繊維を含む樹脂材と同程度の硬さを有しているので、研磨時において、露出面となっている平坦面2cと第2光硬化性樹脂層6で覆われている傾斜面2dとの境界において硬度が急激に変化することが原因となって、平坦面2cまたは傾斜面2dのいずれかの面に過度な応力集中が生じることを抑制することができる。
【0035】
第2光硬化性樹脂層6も、光重合開始剤を含んでいてもよい。
前記光重合開始剤としては、上記したものが挙げられる。
【0036】
第2光硬化性樹脂層6は、第2光硬化性樹脂と光重合開始剤とを含む第2光硬化性樹脂組成物を調製して、前記第2光硬化性樹脂組成物を被研磨物保持枠2の外周面2b及び傾斜面2dに所定の厚さで塗布して塗布層を形成した後、所定強度を有する活性エネルギー線などの光を前記塗布層に所定時間照射して前記塗布層を硬化させることにより得ることができる。
なお、上記のように、第2光硬化性樹脂組成物を被研磨物保持枠2の外周面2b及び傾斜面2dに塗布して塗布層を形成すると、該塗布層は、通常、端縁側から中心側に向けて幅狭となる形状を有するようになる。
すなわち、このようにして形成された塗布層を硬化させることにより得られる第2光硬化性樹脂層6は、後述するように、幅狭となる形状を有するように盛り上がったものとなる。
なお、第2光硬化性樹脂組成物の塗布量を少なくしたり、第2光硬化性樹脂組成物を塗布することによって形成された塗布層を短時間で硬化させたりすることにより、第2光硬化性樹脂層6が上記のような盛り上がった形状を有するようになることを抑制できる。
また、第1光硬化性樹脂層5と同様に、第2光硬化性樹脂層6の露出面にフラット加工を施すことによっても、第2光硬化性樹脂層6が上記のような盛り上がった形状を有するようになることを抑制できる。
【0037】
上で説明した各種手当を施さない限りにおいては、傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6は、通常、図3A及び図3Bに示したように、傾斜面2dとの直交方向の切断面が端縁側から中心側に向けて幅狭となる形状を有している。
すなわち、傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6は、通常、傾斜面2dから離れる方向に向けて幅狭となる形状を有するように盛り上がっている。
【0038】
ここで、本実施形態に係る被研磨物保持具10を用いて被研磨物を研磨する場合、前記被研磨物は、通常、上方部分が被研磨物保持枠2の上端から突出するように、被研磨物保持枠2に保持される。
一方、前記被研磨物を研磨するための研磨パッドは、通常、ポリウレタン発泡体などの弾性が高い材料を用いて構成されていることから、前記被研磨物の研磨時においては、前記研磨パッドの研磨面は、前記被研磨物の被研磨面のみならず、被研磨物保持枠2の上端部分にも当接されるようになる。
しかしながら、上記のように、傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6が傾斜面2dから離れる方向に向けて幅狭となる形状を有するように盛り上がっている場合には、第2光硬化性樹脂層6が平坦面に形成されている場合に比べて、第2光硬化性樹脂層6の特定箇所(例えば、角部)に前記研磨パッドによる応力が集中することを抑制できる。
【0039】
前記幅狭となる形状は、三角形状や台形形状などの多角形状であってもよいし、円弧形状であってもよい。
なお、図3A及び図3Bに示した例では、前記幅狭となる形状は、円弧状となっている。
【0040】
傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6が上記のような幅狭となる形状を有している場合、傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6の厚さの最大値Tmaxは、1000μm以下であってもよいし、800μm以下であってもよいし、600μm以下であってもよいし、400μm以下であってもよいし、200μm以下であってもよい。
厚さの最大値Tmaxは200μm以下であることが好ましい。
厚さの最大値Tmaxは200μm以下であることにより、第2光硬化性樹脂層6に前記研磨パッドによる応力集中が生じることをより一層抑制することができる。
厚さの最大値Tmaxは、20μm以上であってもよいし、50μm以上であってもよいし、100μm以上であってもよい。
傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6の厚さは、傾斜面2dを基準とした幅狭となる形状の頂部までの距離を意味する。
例えば、幅狭となる形状が台形形状である場合には、傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6の厚さは、傾斜面2dと台形形状の上辺との間の距離を意味し、幅狭となる形状が円弧形状である場合には、傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6の厚さは、傾斜面2dと円弧の頂部との間の距離を意味する。
【0041】
傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6が上記のような幅狭となる形状を有している場合、傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6の厚さの最大値Tmaxと傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6の厚さの最小値Tminとの差は、300μm以下であってもよいし、200μm以下であってもよいし、100μm以下であってもよい。
厚さの最大値Tmaxと厚さの最小値Tminとの差は、100μm以下であることが好ましい。
厚さの最大値Tmaxと厚さの最小値Tminとの差が100μm以下であることにより、第2光硬化性樹脂層6は比較的均一な形状を有するものとなる。
このように、比較的均一な形状を有するものとなることにより、第2光硬化性樹脂層6に前記研磨パッドによる応力集中が生じることをより一層抑制することができる。
厚さの最大値Tmaxと厚さの最小値Tminとの差は、20μm以上であってもよいし、40μm以上であってもよいし、60μm以上であってもよいし、80μm以上であってもよい。
【0042】
厚さの最小値Tminは、600μm以下であってもよいし、400μm以下であってもよいし、200μm以下であってもよいし、100μm以下であってもよいし、80μm以下であってもよいし、60μm以下であってもよい。
厚さの最小値Tminは、10μm以上であってもよいし、30μm以上であってもよいし、50μm以上であってもよい。
【0043】
傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6の厚さは、X線CT法により測定することができる。
前記X線CT法による測定は、測定装置としてX線CTスキャン装置(例えば、ヤマト科学社製の型式「TDM100H-1」)を用い、画像解析ソフトとしてVOLUME GRAPHICS社製の商品名「VG Studio MAX2.1」を用いて、以下の手順にしたがって実施することができる。

(1)傾斜面2dに第2光硬化性樹脂層6が備えられた被研磨物保持枠2の一箇所を鉛直方向に切断して、被研磨物保持枠2と第2光硬化性樹脂層6との積層体の切断面を得る。
(2)前記X線CTスキャン装置を用いて、前記積層体の切断面の全体を撮像して、該切断面についての二次元CTデータを取得する。
(3)前記画像解析ソフトを用いて、前記切断面についての二次元CTデータを2値化処理して、被研磨物保持枠2に相当する部分と第2光硬化性樹脂層6に相当する部分とを明確に分ける。
(4)傾斜面2dと平行をなす平行線を用いて、傾斜面2dを基準とした第2光硬化性樹脂層6に相当する部分おける最大高さ位置を求める。
(5)傾斜面2dに直交する垂線を用いて、傾斜面2dと前記最大高さ位置との間の距離を求め、その値を傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6の厚さとする。
【0044】
傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6が上記のような幅狭となる形状を有している場合、傾斜面2dに備えられる第2光硬化性樹脂層6は、通常、第2光硬化性樹脂層6を形成するための光硬化性樹脂組成物の表面張力の影響と、前記光硬化性樹脂組成物によって形成された塗布層を硬化させるときの硬化収縮の影響とによって、平坦面2cよりも上方に隆起した隆起部Rを有するようになる。
ここで、隆起部Rの値が大きすぎると、研磨時において、前記研磨パッドによって隆起部Rにかかる応力が大きくなり過ぎるので好ましくない。
そして、隆起部Rの値は、傾斜面2dに備えられるコーティング層の厚さが厚くなればなるほど大きくなる。
しかしながら、本実施形態に係る被研磨物保持具10においては、傾斜面2dに備えられるコーティング層を第2光硬化性樹脂層6で構成しているので、比較的厚さを薄くすることができる。
そのため、隆起部Rの大きさを比較的小さくすることができる。
【0045】
平坦面2cを基準としたときに、隆起部Rの高さの最大値Hmaxは、100μm以下であってもよいし、80μm以下であってもよいし、60μm以下であってもよいし、40μm以下であってもよいし、20μm以下であってもよい。
高さの最大値Hmaxは、20μm以下であることが好ましい。
高さの最大値Hmaxは、5μm以上であってもよいし、10μm以上であってもよいし、15μm以上であってもよい。
平坦面2cを基準としたときの隆起部Rの高さは、平坦面2cを基準とした隆起部Rの頂部までの距離を意味する。
【0046】
平坦面2cを基準としたときに、隆起部Rの高さの最大値Hmaxと隆起部Rの高さの最小値Hminとの差は、60μm以下であってもよいし、50μm以下であってもよいし、45μm以下であってもよいし、40μm以下であってもよいし、30μm以下であってもよいし、20μm以下であってもよいし、17μm以下であってもよい。
高さの最大値Hmaxと高さの最小値Hminとの差は、17μm以下であることが好ましい。
高さの最大値Hmaxと高さ最小値Hminとの差は、5μm以上であってもよいし、10μm以上であってもよいし、15μm以上であってもよい。
【0047】
高さの最小値Hminは、1μm以上であってもよいし、5μm以上であってもよいし、10μm以上であってもよいし、15μm以上であってもよい。
【0048】
隆起部Rの高さは、デジマチックインジケータ(ミツトヨ社製、型式「ID-C112B」)を用いて、平坦面2cから隆起部Rの頂部までの距離を測定することにより求めることができる。
【0049】
外周面2bに備えられる第2光硬化性樹脂層6の露出面(外周面2bの反対面)は、第1光硬化性樹脂層5の露出面と同様に、平坦面であることが好ましい。
外周面2bに備えられる第2光硬化性樹脂層6の露出面にフラット加工を施すことにより、外周面2bに備えられる第2光硬化性樹脂層6の露出面を平坦面とすることができる。
【0050】
外周面2bに備えられる第2光硬化性樹脂層6の厚さは、内周面2aに備えられる第1光硬化性樹脂層5の厚さと同程度であることが好ましい。
外周面2bに備えられる第2光硬化性樹脂層6の厚さは、第1光硬化性樹脂層5の厚さと同様にして測定することができる。
【0051】
ベース基板1は、前記被研磨物を下面側から支持する。
ベース基板1は、弾性体で構成されていることが好ましい。前記弾性体としては、一般的に、高分子発泡体である湿式凝固多孔質フィルムが用いられる。
【0052】
[被研磨物保持具の使用例]
本実施形態に係る被研磨物保持具10は、図4に示したように、定盤(下定盤)100及びヘッド200を備える研磨機1000において、被研磨物20の被研磨面20aを研磨するために用いられる。
本実施形態においては、研磨機1000は、定盤100及びヘッド200に加えて、研磨スラリーを供給するためのスラリー供給部300を備えている。
また、本実施形態においては、研磨機1000のヘッド200は、被研磨物20を保持するための保持材(上定盤)200aを備えている。
本実施形態に係る被研磨物保持具10は、図4に示したように、被研磨物20を保持した状態でヘッド200の保持材200aに貼り付けられる。
具体的には、本実施形態に係る被研磨物保持具10は、両面テープなどを用いてヘッド200の保持材200aに貼り付けられる。
また、図4に示したように、研磨機1000の定盤(下定盤)100には、研磨パッド30が貼り付けられる。
【0053】
上のように、被研磨物20を保持した状態の被研磨物保持具10をヘッド200に貼り付けて、研磨パッド30を定盤(下定盤)100に貼り付けた後に、ヘッド200を下方に移動させるとともに、定盤(下定盤)100を上方に移動させて、被研磨物保持具10に保持された被研磨物20の被研磨面20aを研磨パッド30の研磨面(上面)30aに当接させる。
そして、被研磨物20の被研磨面20aを研磨パッド30の研磨面30aに当接させた状態で、研磨パッド30の研磨面30aに研磨用スラリーを供給しつつ、ヘッド200及び定盤(下定盤)100を回転させる。
これにより、被研磨物20の被研磨面20aが研磨パッド30の研磨面30aによって研磨される。
すなわち、本実施形態に係る被研磨物保持具10に被研磨物20を保持させた状態で、被研磨物20を研磨することができる。
【0054】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0055】
(1)
ベース基板と、
該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠であって、内周面にて被研磨物を外周側から保持する被研磨物保持枠と、を備え、
前記被研磨物保持枠は、強化繊維を含む樹脂材で構成されており、
前記被研磨物保持枠の前記内周面には、光硬化性樹脂を含む光硬化性樹脂層が備えられている
被研磨物保持具。
【0056】
(2)
前記光硬化性樹脂は、ウレタンアクリレート樹脂である
上記(1)に記載の被研磨物保持具。
【0057】
(3)
前記光硬化性樹脂層は、10μm以上100μm以下の厚さを有する
上記(1)または(2)に記載の被研磨物保持具。
【0058】
(4)
ベース基板と、
該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠であって、内周面にて被研磨物を外周側から保持する被研磨物保持枠と、を備え、
前記被研磨物保持枠は、強化繊維を含む樹脂材で構成されており、かつ、内周面を一端として前記内周面から外周面に向かう途中位置まで前記ベース基板の面方向と平行方向に延びる平坦面と、前記途中位置に位置する前記平坦面の他端から前記外周面に向けて先下がりとなるように傾斜して延びる傾斜面とを有していて、
前記被研磨物保持枠の前記傾斜面及び前記外周面には、光硬化性樹脂を含む光硬化性樹脂層が備えられている
被研磨物保持具。
【0059】
(5)
前記光硬化性樹脂は、エポキシアクリレート樹脂である
上記(4)に記載の被研磨物保持具。
【0060】
(6)
前記光硬化性樹脂層は、前記傾斜面との直交方向の切断面が端縁側から中心側に向けて幅狭となる形状を有していて、
前記光硬化性樹脂層の厚さの最大値は200μm以下であり、
前記光硬化性樹脂層の厚さの最大値と前記光硬化性樹脂層の厚さの最小値との差が100μm以下である
上記(4)または(5)に記載の被研磨物保持具。
【0061】
(7)
前記光硬化性樹脂層は、前記平坦面よりも上方の隆起した隆起部を有しており、
前記平坦面を基準としたときに、前記隆起部の高さの最大値は100μm以下であり、
前記平坦面を基準としたときに、前記隆起部の高さの最大値と前記隆起部の高さの最小値との差が30μm以下である、
上記(6)に記載の被研磨物保持具。
【0062】
(8)
ベース基板と
該ベース基板の一表面に配される被研磨物保持枠であって、内周面にて被研磨物を外周側から保持する被研磨物保持枠と、を備え、
前記被研磨物保持枠は、強化繊維を含む樹脂材で構成されており、かつ、内周面を一端として前記内周面から外周面に向かう途中位置まで前記ベース基板の面方向と平行方向に延びる平坦面と、前記途中位置に位置する前記平坦面の他端から前記外周面に向けて先下がりとなるように傾斜して延びる傾斜面とを有していて、
前記被研磨物保持枠の前記内周面には、第1光硬化性樹脂を含む第1光硬化性樹脂層が備えられており、前記被研磨物保持枠の前記外周面及び前記傾斜面には、第2光硬化性樹脂を含む第2光硬化性樹脂層が備えられている
被研磨物保持具。
【0063】
(9)
前記第1光硬化性樹脂はウレタンアクリレート樹脂であり、前記第2光硬化性樹脂はエポキシアクリレート樹脂である
上記(8)に記載の被研磨物保持具。
【0064】
なお、本発明に係る被研磨物保持具は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る被研磨物保持具は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る被研磨物保持具は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
上記実施形態では、被研磨物保持具10について、被研磨物保持枠2の内周面2aに第1光硬化性樹脂層5を設け、被研磨物保持枠2の外周面2b及び傾斜面2dに第2光硬化性樹脂層6を設ける例、すなわち、被研磨物保持枠2において、内周面2a、外周面2b、及び、傾斜面2dの全てに光硬化性樹脂層を設ける例について説明したが、被研磨物保持枠2に光硬化性樹脂層を設ける例はこれに限られるものではない。
例えば、被研磨物保持枠2は、図5Aに示したように、内周面2aに第1光硬化性樹脂層5を備えるものの、外周面2b及び傾斜面2dに第2光硬化性樹脂層6を備えていないものであってもよい。
また、被研磨物保持枠2は、図5Bに示したように、傾斜面2dに第2光硬化性樹脂層6を備えているものの、内周面2aに第1光硬化性樹脂層5を備えておらず、外周面2bに第2光硬化性樹脂層6を備えていないものであってもよい。
さらに、被研磨物保持枠2は、図5Cに示したように、外周面2bに第2光硬化性樹脂層6を備えているものの、内周面2aに第1光硬化性樹脂層5を備えておらず、傾斜面2dに第2光硬化性樹脂層6を備えていないものであってもよい。
また、被研磨物保持枠2は、外周面2b及び傾斜面2dに第2光硬化性樹脂層6を備えているものの、内周面2aに第1光硬化性樹脂層5を備えていないものであってもよい(図示は省略)。
要すれば、被研磨物保持枠2は、内周面2a、外周面2b、及び、傾斜面2dの少なくとも一つの面に光硬化性樹脂層を備えていればよい。
【実施例0066】
次に、実施例、及び、比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0067】
(実施例1)
ガラスエポキシ積層板で構成された被研磨物保持枠を準備した。
そして、前記被研磨物保持枠を図1に示した構成を有するものとすべく、前記被研磨物保持枠の外周端部分に面取り加工を施した。
前記面取り加工は、傾斜面2dが平坦面2cに対して6°の角度で傾斜するように実施した。
また、傾斜面2dは、図2に示した同心円領域CAにおいて、外周端(外周面2b)から1/5までの領域に形成した。
そして、面取り加工を施した前記被研磨物保持枠の内周面に、厚さ50μmでウレタンアクリレート樹脂を含むウレタンアクリレート樹脂層を設けるとともに、面取り加工を施した前記被研磨物保持枠の外周面に厚さ50μmでエポキシアクリレート樹脂を含むエポキシ樹脂層を設けた。
前記ウレタンアクリレート樹脂層は、以下の手順にしたがって、面取り加工を施した前記被研磨物保持枠の内周面に設けた。

(1)ウレタンアクリレート樹脂と光重合開始剤とを含む樹脂組成物を面取り加工を施した前記被研磨物保持枠の内周面に厚さ100μmで塗布して塗布層を形成する。
(2)前記塗布層に波長385nmの紫外線を積算光量7500mJ/cmで照射して、前記塗布層を紫外線硬化させる。
(3)紫外線硬化させた前記塗布層の表面にフラット加工を施す。

なお、ウレタンアクリレート樹脂としては、DIC社製のウレタンアクリレート樹脂(商品名「LUXYDIR」)を用いた。
また、前記エポキシアクリレート樹脂層は、ウレタンアクリレート樹脂をエポキシアクリレート樹脂(DIC社製、商品名「LUXYDIR」)に変えた以外は、前記ウレタンエポキシ樹脂層と同様にして、面取り加工を施した前記被研磨物保持枠の外周面に設けた。
そして、上のようにして得た、内周面にウレタンアクリレート樹脂層を備え、かつ、外周面にエポキシアクリレート樹脂層を備える被研磨物保持枠(以下、実施例1に係る被研磨物保持枠という)を、ベース基板たる保持パッド(ニッタ・デュポン社製、製品名「R601A」)の一表面に貼り付けた。
これにより、実施例1に係る被研磨物保持具を得た。
なお、前記保持パッドの一表面への実施例1に係る被研磨物保持枠の貼り付けは、両面テープを用いて実施した。
そして、実施例1に係る被研磨物保持具を用いて、以下の表1の条件にて研磨試験を実施した。
【0068】
【表1】
【0069】
(比較例1)
前記被研磨物保持枠をベース基板たる保持パッド(ニッタ・デュポン社製、製品名「R601A」)の一表面に両面テープを用いて貼り付けて、比較例1に係る被研磨物保持具を得た。
そして、比較例1に係る被研磨物保持具を用いて、実施例1と同条件にて研磨試験を実施した。
【0070】
研磨試験を実施する前後において、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて各例に係る被研磨物保持具における第1被研磨物保持枠の内周面及び外周面を観察した。
その観察結果を図6A~6Dに示した。
図6Aは、研磨試験前における比較例1に係る被研磨物保持枠の内周面のSEM画像であり、図6Bは、研磨試験後における比較例1に係る被研磨物保持枠の内周面のSEM画像であり、図6Cは、研磨試験前の実施例1に係る被研磨物保持枠の内周面のSEM画像であり、図6Dは、研磨試験後の実施例1に係る被研磨物保持枠の内周面のSEM画像である。
また、図7Aは、研磨試験前における比較例1に係る被研磨物保持枠の外周面のSEM画像であり、図7Bは、研磨試験後における比較例1に係る被研磨物保持枠の外周面のSEM画像であり、図7Cは、研磨試験前の実施例1に係る被研磨物保持枠の外周面のSEM画像であり、図7Dは、研磨試験後の実施例1に係る被研磨物保持枠の外周面のSEM画像である。
なお、図6A図6B図7A、及び、図7B中に確認される複数の白色点状物は、ガラス繊維である。
【0071】
図6A図6Bとを比較すると、比較例1に係る被研磨物保持枠の内周面では、研磨試験前(図6A)よりも研磨試験後(図6B)の方が、白色点状物が明確に視認できることが把握される。
このことから、研磨試験によって、比較例1に係る被研磨物保持枠の内周面が保持している被研磨物によって削れてガラス繊維の露出の程度が高くなっていることが把握される。
これに対し、図6C図6Dとを比較すると、実施例1に係る被研磨物保持枠の内周面では、研磨試験前(図6C)及び研磨試験後(図6D)のいずれにおいても、白色点状物が視認されない。
すなわち、実施例1に係る被研磨物保持枠の内周面では、研磨試験後においても、ガラス繊維が露出していないことが把握される。
また、図7A図7Bとを比較した場合、及び、図7C図7Dとを比較した場合においても、上記と同様のことが把握される。
このことから、実施例1に係る被研磨物保持枠を用いて被研磨物を研磨した場合においては、被研磨物保持枠の内周面及び外周面からのガラス繊維の脱落を十分に抑制できることが分かる。
【0072】
上記は、被研磨物保持枠の内周面及び外周面に紫外線硬化性樹脂層を設けた場合の結果であるが、被研磨物保持枠の傾斜面に紫外線硬化性樹脂層を設けた場合においても、ガラス繊維の脱落に関して同様の効果が得られることが予想される。
【0073】
(実施例2)
実施例1に係る被研磨物保持枠と同じ被研磨物保持枠を準備した。
すなわち、実施例1と同様に、図1に示したような面取り加工を施した被研磨物保持枠を準備した。
そして、面取り加工を施した前記被研磨物保持枠の傾斜面に、エポキシアクリレート樹脂を含むエポキシアクリレート樹脂層を設けた。
なお、前記エポキシアクリレート樹脂層は、傾斜面から離れる方向に向けて幅狭となる形状(具体的には、円弧状)を有し、かつ、平坦面よりも上方に隆起した隆起部を有するように形成した。
前記エポキシアクリレート樹脂層は、以下の手順にしたがって、前記被研磨物保持枠の傾斜面に設けた。

(1)エポキシアクリレート樹脂と光重合開始剤とを含む樹脂組成物を前記被研磨物保持枠の傾斜面に塗布して塗布層を形成する。
(2)前記塗布層に波長385nmの紫外線を積算光量7500mJ/cmで照射して、前記塗布層を紫外線硬化させる。

なお、エポキシアクリレート樹脂としては、太陽インキ社製のエポキシアクリレート樹脂(商品名「UVR-150」)を用いた。
そして、上のようにして得た、傾斜面にエポキシアクリレート樹脂層を備える被研磨物保持枠(以下、実施例2に係る被研磨物保持枠という)を、ベース基板たる保持パッド(ニッタ・デュポン社製、製品名「R601A」)の一表面に貼り付けた。
なお、傾斜面に形成した塗布層については、フラット加工を実施しなかった。すなわち、傾斜面に形成した塗布層は、図3A及び図3Bに示したように、傾斜面から離れる方向に向けて幅狭となる形状を有するように盛り上がったものであった。
これにより、実施例2に係る被研磨物保持具を得た。
なお、前記保持パッドの一表面への実施例2に係る被研磨物保持枠の貼り付けは、両面テープを用いて実施した。
実施例2に係る被研磨物保持具について、厚さの最大値Tmaxと厚さの最小値Tminとを含むような任意の8箇所について、傾斜面を基準としたエポキシアクリレート樹脂層の厚さを測定した。
傾斜面を基準としたエポキシアクリレート層の厚さは、実施形態の項で説明したようにして測定した。
また、実施例2に係る被研磨物保持具について、高さの最大値Hmaxと高さの最小値Hminとを含むような任意の8箇所について、平坦面を基準としたエポキシアクリレート層の隆起部の高さを測定した。
平坦面を基準としたエポキシアクリレート層の隆起部の高さは、実施形態の項で説明したようにして測定した。
傾斜面を基準としてエポキシアクリレート層の厚さを測定した結果を表2に示すとともに、平坦面を基準としたエポキシアクリレート層の隆起部の高さを測定した結果を以下の表3に示した。
【0074】
(実施例3)
エポキシアクリレート樹脂としてDIC社製のエポキシアクリレート樹脂(商品名「LUXYDIR」)を用いた以外は、実施例2と同様にして、傾斜面にエポキシアクリレート樹脂層を設けた被研磨物保持枠(以下、実施例3に係る被研磨物保持枠という)を得た。
次に、実施例3に係る被研磨物保持枠をベース基板たる保持パッド(ニッタ・デュポン社製、製品名「R601A」)の一表面に両面テープを用いて貼り付けて、実施例3に係る被研磨物保持具を得た。
実施例3に係る被研磨物保持具についても、実施例2と同様にして、傾斜面を基準としたエポキシアクリレート樹脂層の厚さを測定するとともに、平坦面を基準としたエポキシアクリレート樹脂層の隆起部の高さを測定した。
厚さの測定結果については下記表2に示し、隆起部の高さの測定結果については下記表3に示した。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
(比較例2)
実施例1に係る被研磨物保持枠と同じ被研磨物保持枠を準備した。
すなわち、実施例1と同様に、図1に示したような面取り加工を施した被研磨物保持枠を準備した。
次に、面取り加工を施した前記被研磨物保持枠をベース基板たる保持パッド(ニッタ・デュポン社製、製品名「R601A」)の一表面に両面テープを用いて貼り付けて、比較例2に係る被研磨物保持具を得た。
【0078】
実施例2に係る被研磨物保持具、実施例3に係る被研磨物保持具、及び、比較例2に係る被研磨物保持具を用いて、以下の表4の条件にて研磨試験を実施した。
【0079】
【表4】
【0080】
そして、各例に係る被研磨物保持具を用いて研磨試験を実施したときの被研磨物の研磨速度(Si-RR)を求めるとともに、各例に係る被研磨物保持具を用いて研磨試験を実施しているときのプラテンの負荷電圧(Platen load)を求めた。
被研磨物の研磨速度(Si-RR)の測定結果を図8Aに示すとともに、プラテンの負荷電圧(Platen load)の測定結果を図8Bに示した。
【0081】
図8Aより、いずれの被研磨物保持具を用いて研磨試験を実施した場合でも、被研磨物の研磨速度に有意な差は認められないことが分かった。
一方で、図8Bを見ると、実施例2に係る被研磨物保持具及び実施例3に係る被研磨物保持具は、比較例2に係る被研磨物保持具に比べて、研磨試験を実施しているときのプラテンの負荷電圧が小さくなることが認められた。
そして、特に、実施例3に係る被研磨物を用いた研磨試験において、プラテンの負荷電圧が有意に小さくなることが認められた。
この結果から、実施例2に係る被研磨物保持具及び実施例3に係る被研磨物保持具を用いることにより、研磨の初期段階に実施するダミー研磨を効率的に実施することができるようになることが把握される。
また、プラテンの負荷電圧が小さくなることにより、研磨パッドにかかる負荷を低減できるので、研磨パッドのパッドライフを長くできることも把握される。
【符号の説明】
【0082】
1 ベース基板、2 被研磨物保持枠、4 保持穴、5 第1光硬化性樹脂層、6 第2光硬化性樹脂層、10 被研磨物保持具、20 被研磨物、30 研磨パッド、100 定盤、200 ヘッド、300 スラリー供給部、1000 研磨機、
2a 内周面、2b 外周面、2c 平坦面、2d 傾斜面、20a 被研磨面、30a 研磨面、200a 保持材。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B