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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132488
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】接合層、及び接合構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240920BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
H05K1/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043263
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】水戸瀬 智久
(72)【発明者】
【氏名】谷口 晋
【テーマコード(参考)】
5E336
5F044
【Fターム(参考)】
5E336AA04
5E336EE01
5E336GG12
5F044KK01
5F044LL01
5F044LL15
5F044QQ08
(57)【要約】
【課題】実装密度の向上に伴う基板電極の狭ピッチ化による、電子部品の二次実装やリペア等の後工程における端子間ショートを抑制することができる接合層、及び接合構造を提供する。
【解決手段】接合層20A,20Bは、少なくとも基板電極10A,10Bとの接合部30において基板電極10A,10Bの幅よりも狭い幅を有する。すなわち、接合後の状態において、接合部30での幅が接合相手の基板電極10A,10Bの幅よりは狭くなっている。この場合、二次実装やリペア等の後工程の場面において、荷重による変形、または溶融による接合層の変形が生じても、接合層20A,20Bの幅方向への広がりを抑制することができる。従って、変形後の接合層20Aが、他の基板電極10Bに対する接合層20Bと接触することを抑制できる。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と基板電極とを接合する接合層であって、
少なくとも前記基板電極との接合部において前記基板電極の幅よりも狭い幅を有する、接合層。
【請求項2】
前記基板電極は、バリア層を含み、
前記接合層は、前記接合部において前記バリア層の幅よりも狭い幅を有する、請求項1に記載の接合層。
【請求項3】
Snを含有する、請求項1に記載の接合層。
【請求項4】
前記基板電極は、バリア層を含み、
前記接合層は、本体部と、前記バリア層との間に形成される金属間化合物層と、を有し、
前記金属間化合物層は、前記本体部が含有する第1の金属元素、及び前記バリア層が含有する第2の金属元素からなる金属間化合物を含有する、請求項1に記載の接合層。
【請求項5】
電子部品と基板とを接合する接合構造であって、
前記電子部品と第1の基板電極とを接合する第1の接合層と、
前記第1の接合層から幅方向に離間した状態で隣り合うように配置され、前記電子部品と第2の基板電極とを接合する第2の接合層と、を備え、
前記第1の接合層及び前記第2の接合層の少なくとも一方の接合層は、一方の基板電極との接合部において、前記一方の基板電極よりも他方の接合層から前記幅方向に離間した位置に配置される、接合構造。
【請求項6】
前記一方の基板電極と他方の基板電極との間の前記幅方向における離間距離を第1の寸法とし、
前記一方の接合層の前記接合部と、前記他方の接合層との間の前記幅方向における離間距離を第2の寸法とした場合、
前記第2の寸法は、前記第1の寸法より大きい、請求項5に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合層、及び接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、薄型化に伴い、電子部品の高密度実装に対する要求が高まっている。高密度実装のために、半導体チップ等の電子部品を樹脂等で封止することなく裸の状態で、回路基板に直接搭載するフリップチップ実装が採用されている(例えば特許文献1)。近年、低コストで高密度実装に有利な方法として、半導体チップにめっき法で形成しためっきバンプや、金線の先端に形成した金ボールをパッド上に固定したスタッドバンプ等の金属バンプを用いた熱圧着接合、超音波接合等が注目されている。(例えば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-200289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電子部品の実装密度を向上させると、基板電極間のピッチが狭くなる。このように、基板電極の狭ピッチ化により、電子部品の二次実装やリペア等の後工程において、接合層を介した端子間ショートが発生する問題があった。
【0005】
本発明は、実装密度の向上に伴う基板電極の狭ピッチ化による、電子部品の二次実装やリペア等の後工程における端子間ショートを抑制することができる接合層、及び接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る接合層は、電子部品と基板電極とを接合する接合層であって、少なくとも基板電極との接合部において基板電極の幅よりも狭い幅を有する。
【0007】
本発明に係る接合層は、少なくとも基板電極との接合部において基板電極の幅よりも狭い幅を有する。すなわち、接合後の状態において、接合部での幅が接合相手の基板電極の幅よりは狭くなっている。この場合、二次実装やリペア等の後工程の場面において、荷重による変形、または溶融による接合層の変形が生じても、接合層の幅方向への広がりを抑制することができる。従って、変形後の接合層が、他の基板電極に対する接合層と接触することを抑制できる。以上より、電子部品の二次実装やリペア等の後工程における端子間ショートを抑制することができる。
【0008】
基板電極は、バリア層を含み、接合層は、接合部においてバリア層の幅よりも狭い幅を有してよい。この場合、基板電極がバリア層を有している場合でも、上述と同様の効果を得ることができる。
【0009】
接合層は、Snを含有してよい。Snを含有する接合層は柔らかく、且つ融点が低い。従って、後工程において変形しやすく端子間ショートのリスクが高い。しかし、上記構造を有することで、後工程における端子間ショートを抑制することができる。
【0010】
基板電極は、バリア層を含み、接合層は、本体部と、バリア層との間に形成される金属間化合物層と、を有し、金属間化合物層は、本体部が含有する第1の金属元素、及びバリア層が含有する第2の金属元素からなる金属間化合物を含有してよい。この場合、バリア層の構成金属と接合層の構成金属からなる金属間化合物が存在することでバリア層と接合層の密着強度を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る接合構造は、電子部品と基板とを接合する接合構造であって、電子部品と第1の基板電極とを接合する第1の接合層と、第1の接合層から幅方向に離間した状態で隣り合うように配置され、電子部品と第2の基板電極とを接合する第2の接合層と、を備え、第1の接合層及び第2の接合層の少なくとも一方の接合層は、一方の基板電極との接合部において、一方の基板電極よりも他方の接合層から幅方向に離間した位置に配置される。
【0012】
本発明に係る接合構造において、第1の接合層及び第2の接合層の少なくとも一方の接合層は、一方の基板電極との接合部において、一方の基板電極よりも他方の接合層から幅方向に離間した位置に配置される。すなわち、接合後の状態において、接合部は、接続相手の基板電極より、他方の接合層から遠い位置に配置されている。この場合、二次実装やリペア等の後工程の場面において、荷重による変形、または溶融による接合層の変形が生じても、一方の接合層の幅方向への広がりを抑制することができる。従って、変形後の一方の接合層が、他方の接合層と接触することを抑制できる。以上より、電子部品の二次実装やリペア等の後工程における端子間ショートを抑制することができる。
【0013】
一方の基板電極と他方の基板電極との間の幅方向における離間距離を第1の寸法とし、一方の接合層の接合部と、他方の接合層との間の幅方向における離間距離を第2の寸法とした場合、第2の寸法は、前記第1の寸法より大きくてよい。この場合、一方の接合層が変形しても、他方の接合層と接触することを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実装密度の向上に伴う基板電極の狭ピッチ化による、電子部品の二次実装やリペア等の後工程における端子間ショートを抑制することができる接合層、及び接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る接合層、及び接合構造を備える実装基板を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る接合層、及び接合構造の具体例を示す概略断面図である。
図3】接合層付近の拡大図である。
図4】比較例に係る接合層、及び接合構造を備える実装基板を示す概略断面図である。
図5】変形例に係る接合層、及び接合構造を備える実装基板を示す概略断面図である。
図6】変形例に係る接合層、及び接合構造を備える実装基板を示す概略断面図である。
図7】変形例に係る接合層、及び接合構造を備える実装基板を示す概略断面図である。
図8】変形例に係る接合層、及び接合構造を備える実装基板を示す概略断面図である。
図9】変形例に係る接合層、及び接合構造を備える実装基板を示す概略断面図である。
図10】変形例に係る接合層、及び接合構造を備える実装基板を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る接合層20A,20B、及び接合構造100について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る接合層20A,20B、及び接合構造100を備える実装基板1を示す概略断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る接合層20A,20B、及び接合構造100の具体例を示す概略断面図である。
【0017】
図1に示すように、実装基板1は、電子部品2と、基板3とを備える。実装基板1は、電子部品2を接合構造100を介して基板3に実装することによって構成される。
【0018】
電子部品2は、本体部6と、第1の端子7Aと、第2の端子7Bと、を備える。本体部6は、電子部品2としての機能を発揮するための部材である。端子7A,7Bは、本体部6の主面に形成された金属製の部分である。端子7A,7Bは、幅方向D1に離間した状態で隣り合うように配置される。端子7の材料は、Au、Cu、Ni、Ag、Pdの何れかの金属、またはこれらの少なくとも二つから選択される合金であってよい。電子部品2は、例えばマイクロLEDなどによって構成される。マイクロLEDは、基板3からの入力に応じて発光する部品である。
【0019】
基板3は、基材8と、第1の基板電極10Aと、第2の基板電極10Bと、を備える。基材8は、基板3の平板状の本体部である。基板電極10A,10Bは、基材8の主面に形成された金属製の部分である。基板電極10A,10Bは、幅方向D1に離間した状態で隣り合うように配置される。図2に示す例では、基板電極10A,10Bは、基板3上に形成される電極層11と、電極層11の上面に形成されるバリア層12と、を備える。電極層11の材料として、Ni、Cu、Ti、Cr,Al、Mo、Pt,Auや、これらの少なくとも二つから選択される合金などが採用される。バリア層12は、第2の金属元素を含有する。第2の金属元素として、Ti,Cu,Ni,Al,Mo,Cr,Agなどが採用される。
【0020】
接合構造100は、第1の接合層20Aと、第2の接合層20Bと、を備える。第1の接合層20Aは、電子部品2と第1の基板電極10Aとを接合する層である。第2の接合層20Bは、電子部品2と第2の基板電極10Bとを接合する層である。第2の接合層20Bは、第1の接合層20Aから幅方向D1に離間した状態で隣り合うように配置される。
【0021】
図2に示す例では、接合層20A,20Bは、本体部21と、金属間化合物層22と、を有する。本体部21は、電子部品2と基板電極10A,10Bとを接合させるための部分である。組立前においては、基板3は、基板電極10A,10Bの上面に配置された状態の本体部21を備えてよい。本体部21は、はんだとして機能する。組立時において、基板電極10A,10Bと本体部21と端子7A,7Bとが積層された後にはんだ接合が行われる。本体部21は、第1の金属元素を含有する。本体部21は、接合前後において、電子部品側の端子やバリア層からの元素の拡散の有無があるため、「接合前の本体部21」と、「接合後の本体部21」とでは、含まれる材料の種類が異なる。具体的に、接合前の本体部21の第1の金属元素として、Sn、Bi、In、Au、Cu、Al、Agなどが採用される。接合後の本体部21の第1の金属元素として、Sn、Bi、In、Au、Cu、Al、Ag、Ni、Ti、Mo、Crなどが採用される。
【0022】
金属間化合物層22は、本体部21と、バリア層12との間に形成される層である。金属間化合物層22は、本体部21が含有する第1の金属元素、及びバリア層12が含有する第2の金属元素からなる金属間化合物を含有する。金属間化合物層22は、組立時において、バリア層12上に本体部21の金属材料を配置したときに、本体部21に対してバリア層12の金属材料が拡散することによって形成される。あるいは、組立前に金属間化合物層22を形成した後に、本体部21(上述の「接合後の本体部21」)を取り付けてもよい。
【0023】
図1に示すように、接合層20A,20Bは、少なくとも基板電極10A,10Bとの接合部30において基板電極10A,10Bの幅よりも狭い幅を有する。図1に示す図においては、接合層20A,20Bは、上下方向の全域において基板電極10A,10Bの幅よりも狭い幅を有する。図2に示す例のように、基板電極10A,10Bがバリア層12を有する場合、接合層20A,20Bは、接合部30においてバリア層12の幅よりも狭い幅を有する。
【0024】
また、第1の接合層20A(一方の接合層)は、第1の基板電極10A(一方の基板電極)との接合部30において、第1の基板電極10Aよりも第2の接合層20B(他方の接合層)から幅方向D1に離間した位置に配置される。第2の接合層20Bは、第2の基板電極10Bとの接合部30において、第2の基板電極10Bよりも第1の接合層20Aから幅方向D1に離間した位置に配置される。
【0025】
電子部品2の幅方向D1における中心線CLを設定した場合、中心線CLに近付く側を幅方向D1の内側と称し、中心線CLから遠ざかる側を幅方向D1の外側と称する。第1の接合層20Aの接合部30の幅方向D1の内側の端部30aは、第1の基板電極10Aの幅方向D1の内側の端部10aよりも、幅方向D1の外側に配置される。第2の接合層20Bの接合部30の幅方向D1の内側の端部30aは、第2の基板電極10Bの幅方向D1の内側の端部10aよりも、幅方向D1の外側に配置される。これにより、基板電極10A,10Bの幅方向D1の内側の端部10a付近には、接合層20A,20Bから露出する段差面15が形成される。
【0026】
本実施形態では、第1の接合層20Aの接合部30の幅方向D1の外側の端部30bは、第1の基板電極10Aの幅方向D1の外側の端部10bよりも、幅方向D1の内側に配置される。第2の接合層20Bの接合部30の幅方向D1の外側の端部30bは、第2の基板電極10Bの幅方向D1の外側の端部10bよりも、幅方向D1の内側に配置される。これにより、基板電極10A,10Bの幅方向D1の外側の端部10b付近には、接合層20A,20Bから露出する段差面16が形成される。
【0027】
図3を参照して、接合層20A,20Bと基板電極10A,10Bとの大きさの関係について更に詳細に説明する。なお、図3では第1の接合層20Aが示されているが、第2の接合層20Bでも同趣旨の説明が成り立つ。
【0028】
第1の基板電極10Aの幅W1は、第1の基板電極10Aの端部10aと端部10bとの間の幅方向D1における寸法によって定義される。端部10aは、第1の基板電極10Aの上面のうち、最も幅方向D1における内側の位置に設定される。端部10bは、第1の基板電極10Aの上面のうち、最も幅方向D1における外側の位置に設定される。第1の接合層20Aの接合部30は、第1の基板電極10に対する第1の接合層20Aの境界部である。接合部30における幅W2は、接合部30の端部30aと端部30bとの間の幅方向D1における寸法によって定義される。端部30aは、接合部30のうち、最も幅方向D1における内側の位置に設定される。端部30bは、接合部30のうち、最も幅方向D1における外側の位置に設定される。本実施形態では、金属間化合物層22の下面が接合部30となる。このように幅W1及び幅W2を定義した場合、「幅W1>幅W2」の関係が成り立つ。また、W2/W1≦0.88であれば、上部がはみ出していても二次実装やリペア等の後工程の場面において、荷重による変形、または溶融による接合層の変形が生じても、バリア層上に接合層が濡れ広がっていくため、内側へ膨らみづらくなりショート抑制につながる。より好ましくはW2/W1≦0.77である。
【0029】
図3に示すように、第1の基板電極10Aの端部10aを通過して上下方向に延びる基準線SL1を設定する。第1の接合層20Aの下端(ここでは接合部30)を通過して幅方向D1に延びる基準線SL2を設定する。第1の接合層20Aの上端を通過して幅方向D1に延びる基準線SL3を設定する。第1の接合層20Aの下端を基準とした高さ方向における領域を説明するため、基準線SL2の位置を0%の位置とし、基準線SL2から基準線SL3の範囲を100%の領域とする。また、基準線SL2と基準線SL3との間に任意に設定した基準線SL4をした場合、基準線SL2から基準線SL4の範囲をX%の領域とする。第1の基板電極10Aの端部10bを通過して上下方向に延びる基準線SL5を設定する。
【0030】
第1の接合層20Aの幅方向D1の内側の側面20aの一部は、基準線SL1から幅方向D1の内側へはみ出してもよい。ただし、接合部30付近の領域では、側面20aが基準線SL1からはみ出ていないことが好ましい。例えば、側面20aは、基準線SL2から50%の領域において基準線SL1からはみ出ないことが好ましく、10%の領域において基準線SL1からはみ出ないことが好ましく、50%の領域において基準線SL1からはみ出ないことがより好ましい。なお、幅方向D1の外側の側面20bと基準線SL5との間でも同様の関係が成り立つ。
【0031】
次に、本実施形態に係る接合層20A,20B、及び接合構造100の作用・効果について説明する。
【0032】
まず、図4を参照して、比較例に係る接合層120A,120B、及び接合構造200について説明する。接合層120A,120Bは、基板電極10A,10Bと同じ幅を有している。そのため、接合後の接合層120A,120Bは、幅方向D1の内側において互いに接近した状態となる。図4において二点鎖線で示すように、二次実装やリペア等の後工程の場面において、荷重による変形、または溶融による接合層の変形が生じたら、接合層120A,120Bの幅方向への広がりが更に大きくなる。これにより、変形後の接合層120Aが、他の基板電極10Bに対する接合層120Bと接触し、端子間ショートが生じてしまう。
【0033】
これに対し、本実施形態に係る接合層20A,20Bは、少なくとも基板電極10A,10Bとの接合部30において基板電極10A,10Bの幅よりも狭い幅を有する。すなわち、接合後の状態において、接合部30での幅が接合相手の基板電極10A,10Bの幅よりは狭くなっている。この場合、二次実装やリペア等の後工程の場面において、荷重による変形、または溶融による接合層の変形が生じても、接合層20A,20Bの幅方向への広がりを抑制することができる。従って、変形後の接合層20Aが、他の基板電極10Bに対する接合層20Bと接触することを抑制できる。以上より、電子部品2の二次実装やリペア等の後工程における端子間ショートを抑制することができる。
【0034】
基板電極10A,10Bは、バリア層12を含み、接合層20A,20Bは、接合部30においてバリア層12の幅よりも狭い幅を有してよい。この場合、基板電極10A,10Bがバリア層12を有している場合でも、上述と同様の効果を得ることができる。
【0035】
接合層20A,20Bは、Snを含有してよい。Snを含有する接合層20A,20Bは柔らかく、且つ融点が低い。従って、後工程において変形しやすく端子間ショートのリスクが高い。しかし、上記構造を有することで、後工程における端子間ショートを抑制することができる。
【0036】
基板電極10A,10Bは、バリア層12を含み、接合層20A,20Bは、本体部21と、バリア層12との間に形成される金属間化合物層22と、を有し、金属間化合物層22は、本体部21が含有する第1の金属元素、及びバリア層12が含有する第2の金属元素からなる金属間化合物を含有してよい。この場合、バリア層12の構成金属と接合層20A,20Bの構成金属からなる金属間化合物が存在することでバリア層12と接合層20A,20Bの密着強度を向上させることができる。
【0037】
本実施形態に係る接合構造100は、電子部品2と基板3とを接合する接合構造100であって、電子部品2と第1の基板電極10Aとを接合する第1の接合層20Aと、第1の接合層20Aから幅方向D1に離間した状態で隣り合うように配置され、電子部品2と第2の基板電極10Bとを接合する第2の接合層20Bと、を備え、第1の接合層20Aは、第1の基板電極10Aとの接合部30において、第1の基板電極10Aよりも第2の接合層20Bから幅方向D1に離間した位置に配置される。
【0038】
本実施形態に係る接合構造100において、第1の接合層20Aは、第1の基板電極10Aとの接合部30において、第1の基板電極10Aよりも第2の接合層20Bから幅方向D1に離間した位置に配置される。すなわち、接合後の状態において、接合部30は、接続相手の第1の基板電極10Aより、第2の接合層20Bから遠い位置に配置されている。この場合、二次実装やリペア等の後工程の場面において、荷重による変形、または溶融による第2の接合層20Bの変形が生じても、第1の接合層20Aの幅方向D1への広がりを抑制することができる。従って、変形後の第1の接合層20Aが、第2の接合層20と接触することを抑制できる。以上より、電子部品2の二次実装やリペア等の後工程における端子間ショートを抑制することができる。なお、当該説明は、第1の接合層20Aを請求項における「一方の接合層」とみなしたものであるが、第2の接合層20Bを請求項における「一方の接合層」とみなしても同様の作用・効果を得ることができる。
【0039】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0040】
各層における構造は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、図5に示すように、図4に示す構成から、金属間化合物層22を省略した構成が採用されてもよい。
【0041】
また、図6に示すように、図5に示す構成に対し、単一の層に係る基板電極10A,10Bを採用してもよい。例えば、基板電極10A,10Bを電極層11で単一の層としてもよく、バリア層12で単一の層としてもよい。
【0042】
上述の実施形態では、接合層20A,20Bの幅方向D1の外側の端部が、基板電極10A,10Bの幅方向D1の外側の端部よりも、幅方向D1の内側に配置されていたが、図7に示すように、当該関係が成り立っていなくともよい。すなわち、後工程における接合層20A,20Bの広がりを抑制する構造は、端子間ショートの可能性が高い、幅方向D1の内側だけで採用されていればよい。
【0043】
なお、図8に示すように、図7に示す構成から、金属間化合物層22を省略してもよく、単一の層に係る基板電極10A,10Bを採用してもよい。
【0044】
また、図2図5図8に示す構成では、第1の接合層20A及び第2の接合層20Bの両側において、端子間ショートを抑制するための構造が採用されていた。しかし、第1の接合層20A及び第2の接合層20Bの少なくとも一方において端子間ショートを抑制するための構造が採用されていればよい。例えば、図9に示すように、第1の接合層20Aの幅方向D1の内側には端子間ショートを抑制する構造が採用され、第2の接合層20Bの幅方向D1の内側には端子間ショートを抑制する構造が採用されていなくともよい。
【0045】
この場合、第1の基板電極10Aと第2の基板電極10Bとの間の幅方向D1における離間距離を第1の寸法d1とし、第1の接合層20Aの接合部30と、第2の接合層20Bとの間の幅方向D1における離間距離を第2の寸法d2とした場合、第2の寸法d2は、第1の寸法d1より大きくてよい。この場合、第1の接合層20Aが変形しても、第2の接合層20Bと接触することを抑制できる。なお、第2の接合層20Bの幅方向D1の内側に端子間ショートを抑制する構造が採用され、第1の接合層20Aの幅方向D1の内側には端子間ショートを抑制する構造が採用されていなくともよい。
【0046】
なお、図10に示すように、図9に示す構成から、金属間化合物層22を省略してもよく、単一の層に係る基板電極10A,10Bを採用してもよい。
【0047】
[形態1]
電子部品と基板電極とを接合する接合層であって、
少なくとも前記基板電極との接合部において前記基板電極の幅よりも狭い幅を有する、接合層。
[形態2]
前記基板電極は、バリア層を含み、
前記接合層は、前記接合部において前記バリア層の幅よりも狭い幅を有する、形態1に記載の接合層。
[形態3]
Snを含有する、形態1又は2に記載の接合層。
[形態4]
前記基板電極は、バリア層を含み、
前記接合層は、本体部と、前記バリア層との間に形成される金属間化合物層と、を有し、
前記金属間化合物層は、前記本体部が含有する第1の金属元素、及び前記バリア層が含有する第2の金属元素からなる金属間化合物を含有する、形態1~3の何れか一項に記載の接合層。
[形態5]
電子部品と基板とを接合する接合構造であって、
前記電子部品と第1の基板電極とを接合する第1の接合層と、
前記第1の接合層から幅方向に離間した状態で隣り合うように配置され、前記電子部品と第2の基板電極とを接合する第2の接合層と、を備え、
前記第1の接合層及び前記第2の接合層の少なくとも一方の接合層は、一方の基板電極との接合部において、前記一方の基板電極よりも他方の接合層から前記幅方向に離間した位置に配置される、接合構造。
[形態6]
前記一方の基板電極と他方の基板電極との間の前記幅方向における離間距離を第1の寸法とし、
前記一方の接合層の前記接合部と、前記他方の接合層との間の前記幅方向における離間距離を第2の寸法とした場合、
前記第2の寸法は、前記第1の寸法より大きい、形態5に記載の接合構造。
【符号の説明】
【0048】
2…電子部品、3…基板、10A…第1の基板電極、10B…第2の基板電極、11…電極層、12…バリア層、20A…第1の接合層、20B…第2の接合層、21…本体部、22…金属間化合物層、30…接合部、100…接合構造。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10