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特開2024-132491活物質、電極、二次電池、電池パック、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132491
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】活物質、電極、二次電池、電池パック、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20240920BHJP
   C01G 39/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M4/485
C01G39/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043275
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 由美
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 一樹
(72)【発明者】
【氏名】保科 圭吾
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB29
5H050HA02
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】高い容量および優れたサイクル寿命性能を示すことができる二次電池を実現可能な活物質、この活物質を含む電極、この電極を具備する二次電池、この二次電池を具備する電池パック、及び、この電池パックが搭載されている車両を提供すること。
【解決手段】実施形態によると、活物質が提供される。活物質は、単斜晶構造を有するMo含有ニオブチタン酸化物を含む。該活物質のX線回折スペクトルにて、2θが23.5°から24.5°の範囲内に現れる第1ピークの強度I24に対する2θが25.0°から25.5°の範囲内に現れる第2ピークの強度I25の比I25/I24が0.5以上である。
【選択図】 図10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単斜晶構造を有するMo含有ニオブチタン酸化物を含み、
X線回折スペクトルにて2θが23.5°から24.5°の範囲内に現れる第1ピークの強度I24に対する2θが25.0°から25.5°の範囲内に現れる第2ピークの強度I25の比I25/I24が0.5以上である、活物質。
【請求項2】
前記比I25/I24が0.9以下である、請求項1に記載の活物質。
【請求項3】
前記Mo含有ニオブチタン酸化物は、一般式Tix-yMoyNb12-xO29+zで表され1.5≦ x ≦2.2,0< y ≦ 0.7x,及び-3≦ z ≦1である組成を有する、請求項1に記載の活物質。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の活物質を含む電極。
【請求項5】
前記電極は、前記活物質を含む活物質含有層を含む請求項4に記載の電極。
【請求項6】
正極と、
負極と、
電解質とを具備する二次電池であって、
前記負極は請求項4に記載の電極である、二次電池。
【請求項7】
請求項6に記載の二次電池を具備する電池パック。
【請求項8】
通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する請求項7に記載の電池パック。
【請求項9】
複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている請求項7に記載の電池パック。
【請求項10】
請求項7に記載の電池パックを搭載した車両。
【請求項11】
前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む請求項10に記載の車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、活物質、電極、二次電池、電池パック、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度電池として、リチウムイオン二次電池のような非水電解質二次電池などの二次電池の研究開発が盛んに進められている。非水電解質二次電池などの二次電池は、ハイブリッド電気自動車や電気自動車等の車両用、携帯電話基地局の無停電電源用などの電源として期待されている。そのため、二次電池は、高エネルギー密度に加えて、急速充放電性能、長期信頼性のような他の性能にも優れていることも要求されている。例えば、急速充放電が可能な二次電池は、充電時間が大幅に短縮されるだけでなく、ハイブリッド電気自動車等の車両の動力性能の向上や動力の回生エネルギーの効率的な回収も可能である。
【0003】
急速充放電を可能にするためには、電子及びリチウムイオンが正極と負極との間を速やかに移動できることが必要である。しかしながら、カーボン系負極を用いた電池は、急速充放電を繰り返すと、電極上に金属リチウムのデンドライト析出が生じ、内部短絡による発熱や発火の虞があった。
【0004】
そこで、炭素質物の代わりに金属複合酸化物を負極に用いた電池が開発された。中でも、チタン酸化物を負極に用いた電池は、安定的な急速充放電が可能であり、カーボン系負極を用いた場合に比べて寿命も長いという特性を有する。
【0005】
しかしながら、チタン酸化物は炭素質物に比べて金属リチウムに対する電位が高い、すなわち貴である。その上、チタン酸化物は、重量あたりの容量が低い。このため、チタン酸化物を負極に用いた電池は、エネルギー密度が低いという問題がある。
【0006】
例えば、チタン酸化物の電極電位は、金属リチウム基準で約1.5V(vs.Li/Li)であり、カーボン系負極の電位に比べて高い(貴である)。チタン酸化物の電位は、リチウムを電気化学的に挿入脱離する際のTi3+とTi4+の間での酸化還元反応に起因するものであるため、電気化学的に制約されている。また、1.5V(vs.Li/Li)程度の高い電極電位においてリチウムイオンの急速充放電が安定的に行えるという事実もある。従って、エネルギー密度を向上させるために電極電位を低下させることは従来困難であった。
【0007】
一方、単位重量あたりの容量については、二酸化チタン(アナターゼ構造)の理論容量は165mAh/g程度であり、Li4Ti512のようなスピネル型リチウムチタン酸化物の理論容量も180mAh/g程度である。一方、一般的な黒鉛系電極材料の理論容量は385mAh/g以上である。このように、チタン酸化物の容量密度はカーボン系負極のものと比較して著しく低い。これは、チタン酸化物の結晶構造中に、リチウムを吸蔵するサイトが少ないことや、構造中でリチウムが安定化し易いため、実質的な容量が低下することによるものである。
【0008】
以上に鑑みて、Ti及びNbを含む新たな電極材料が検討されている。このようなニオブチタン酸化物材料は、高い充放電容量を有すると期待されている。例えば、TiNb27で表される酸化物は380mAh/gを超える高い理論容量を有する。それ故、ニオブチタン酸化物は、Li4Ti512に代わる高容量材料として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第105633456号明細書
【特許文献2】特開2016-177972号公報
【特許文献3】特開2019-169343号公報
【特許文献4】特開2022-145421号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chunfu Lin, et. al., Chem. Commun., 2015, 51, 8970-8973, “TiNb6O17: a new electrode material for lithium-ion batteries”
【非特許文献2】Chunfu Lin, et. al., Small, 2017, 13, 1702903, “Intercalating Ti2Nb14O39 Anode Materials for Fast-Charging, High-Capacity and Safe Lithium-Ion Batteries”
【非特許文献3】Aghamohammadi Hamed, et. al., J. Alloys Compd., 2022, 911, 165117, “A Comprehensive Review Study on Pure Titanium Niobium Oxide as the Anode Material for Li-ion Batteries”
【非特許文献4】「粉末X線解析の実際」初版(2002年)日本分析化学会X線分析研究懇談会編 中井泉、泉富士夫編著(朝倉書店)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高い容量および優れたサイクル寿命性能を示すことができる二次電池を実現可能な活物質、この活物質を含む電極、この電極を具備する二次電池、この二次電池を具備する電池パック、及び、この電池パックが搭載されている車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態によると、活物質が提供される。活物質は、単斜晶構造を有するMo含有ニオブチタン酸化物を含む。該活物質のX線回折スペクトルにて、2θが23.5°から24.5°の範囲内に現れる第1ピークの強度I24に対する2θが25.0°から25.5°の範囲内に現れる第2ピークの強度I25の比I25/I24が0.5以上である。
【0013】
他の実施形態によると、上記実施形態に係る活物質を含む電極が提供される。
【0014】
他の実施形態によると、正極と負極と電解質とを具備する二次電池が提供される。負極は、上記実施形態に係る電極である。
【0015】
他の実施形態によると、上記実施形態に係る二次電池を具備する電池パックが提供される。
【0016】
他の実施形態によると、上記実施形態に係る電池パックが搭載されている車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図。
図2図1に示す二次電池のA部を拡大した断面図。
図3】実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図。
図4図3に示す二次電池のB部を拡大した断面図。
図5】実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図。
図6】実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図。
図7図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図。
図8】実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図。
図9】実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図。
図10】実施例1から4及び比較例1に係る活物質についてのX線回折スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
Tiは4価から3価まで1価還元することができる。これに対し、Nbは5価から3価まで2価還元することができる。そのため、Nb量論比が高い方が、理論的にはより多くのリチウムを挿入でき、容量が高いということになる。例えば、Wadsley-Roth相の結晶構造を有し一般式TiNbxO2+2.5xで表すことのできるニオブチタン酸化物の系統については、理論容量は403-5441/(133x+80) mAh/gとされており、Nb量論比を表す添字xの上昇に伴って最高理論値403 mAh/gに近づく。例えば、上記式より算出されるTiNb2O7(x=2)の理論容量は、387 mAh/gである。同様に、Ti2Nb6O19(x=3)の理論容量は392 mAh/gになり、Ti2Nb14O39(x=7)の理論容量は398 mAh/gになる。
【0019】
上述したとおり、高Nb組成のニオブチタン酸化物の理論容量は高い。しかし、高Nb組成化合物について報告されている容量は、TiNb2O7についてのそれに及ばない。
【0020】
以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0021】
(第1の実施形態)
第1の実施形態によると、活物質が提供される。活物質は、Mo含有ニオブチタン酸化物を含む。当該酸化物は、単斜晶構造の結晶構造を有する。係る活物質についてのX線回折スペクトルには、2θが23.5°から24.5°の範囲内に第1ピーク及び2θが25.0°から25.5°の範囲内に第2ピークがそれぞれ現れる。第1ピークの強度I24に対する第2ピークの強度I25の比I25/I24は、0.5以上である。
【0022】
係る活物質は、電池用活物質であり得る。活物質は、例えば、リチウムイオン電池や非水電解質電池等の二次電池の電極に用いられる電極活物質であり得る。活物質は、例えば、二次電池の負極に用いられる負極活物質であり得る。
【0023】
CuKα線をX線源とする広角X線回折(X‐Ray Diffraction:XRD)法によって得られるX線回折スペクトルにおいて、2θが23.5°から24.5°の範囲内に現れる第1ピークと、2θが25.0°から25.5°の範囲内に現れる第2ピークとの間の、ピーク強度比I25/I24が0.5以上であるMo含有ニオブチタン酸化物は、高Nb組成のニオブチタン酸化物と同等のサイクル寿命性能を維持しながら、高い容量を示すことができる。上記比I25/I24が0.9以下であることが望ましい。また、比I25/I24が0.85以下であることがより好ましい。
【0024】
第1ピークは、XRDスペクトルにて23.5°≦2θ≦24.5°の範囲内にピークトップを有する。第1ピークは、Moの有無に関わらず様々なニオブチタン酸化物についてのXRDスペクトルに観られる。第2ピークは、XRDスペクトルにて25.0°≦2θ≦25.5°の範囲内にピークトップを有する。第2ピークは、Moを含有するニオブチタン酸化物に観られる。
【0025】
広角X線回折法の実施方法は後述する。
【0026】
Moを含有するニオブチタン酸化物は、Moを含まないニオブチタン酸化物と比較して、より多くのリチウムイオン(Li+)を蓄えることができる。チタンの価数の上限+4及びニオブの価数の上限+5に対し、モリブデン(Mo)の価数の上限は+6である。そのため、より大きな価数変化が可能なMoを含むことで、酸化物に挿入できるLi+を多くし、電極活物質としての容量を高くできる。特に、Ti4+をMo6+で置き換えることで、高い容量を達成できる。
【0027】
係るMo含有ニオブチタン酸化物の組成は、例えば、一般式Tix-yMoyNb12-xO29+zで表され得る。一般式中の各添字は、それぞれ1.5≦ x ≦2.2,0< y ≦ 0.7x,及び-3≦ z ≦1の範囲内にある。当該一般式で表せることが示すとおり、係るMo含有ニオブチタン酸化物は、高Nb組成のニオブチタン酸化物におけるTiを部分的にMoで置換した化合物であり得る。添字yの上限値が示すとおり、当該酸化物はTiの半数までがMoで置換された化合物であり得る。
【0028】
次に、係る活物質についての形態、粒子径及び比表面積を説明する。
【0029】
<形態>
実施形態に係る活物質の形態は、特に限定されない。活物質は、例えば、上述したMo含有ニオブチタン酸化物の粒子、又は当該粒子を含んで成る粉末であり得る。Mo含有ニオブチタン酸化物の粒子は、例えば、一次粒子の形態をとることもできるし、一次粒子が凝集してなる二次粒子の形態をとることもできる。Mo含有ニオブチタン酸化物の粒子は、一次粒子と、二次粒子との混合物でもよい。
【0030】
Mo含有ニオブチタン酸化物の粒子は、表面に炭素含有層を有していてもよい。炭素含有層は、一次粒子の表面に付着していてもよいし、二次粒子の表面に付着していてもよい。或いは、活物質は、表面に炭素含有層が付着した一次粒子が凝集してなる二次粒子を含んでいてもよい。このような二次粒子は、一次粒子間に炭素が存在しているため、優れた導電性を示すことができる。このような二次粒子を含む態様は、それを含有する活物質含有層がより低い抵抗を示すことができるので、好ましい。
【0031】
<粒子径>
Mo含有ニオブチタン酸化物を含む一次粒子又は二次粒子である活物質粒子の平均粒子径は特に制限されない。活物質粒子の平均粒子径は、例えば0.1μm以上50μm以下の範囲内にある。平均粒子径は、求められる電池性能に応じて変化させることができる。例えば、急速充放電性能を高めるためには、平均粒子径を1.0μm以下とすることが好ましい。このようにすると、結晶中のリチウムイオンの拡散距離を小さくすることができるため、急速充放電性能を高めることができる。平均粒子径は、例えばレーザー回折法によって求めることができる。
【0032】
<BET比表面積>
活物質のBET(Brunauer, Emmett, Teller)比表面積は、特に制限されない。しかしながら、BET比表面積は、5m2/g以上、200m2/g未満であることが好ましい。
【0033】
比表面積が5m2/g以上であれば、電池に用いた際に電解質との接触面積を確保することができ、良好な放電レート性能が得られやすく、また充電時間を短縮できる。一方、比表面積が200m2/g未満であれば、電解質との反応性が高くなり過ぎず、寿命性能を向上させることができる。また、後述する電極の製造に用いる、活物質を含むスラリーの塗工性を良好なものにすることができる。
【0034】
ここで、比表面積の測定は、粉体粒子表面に吸着占有面積が既知である分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法を用いる。最も良く利用されるのが不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法である。このBET法は、単分子層吸着理論であるLangmuir理論を多分子層吸着に拡張した、比表面積の計算方法として最も有名な理論であるBET理論に基づく方法である。これにより求められた比表面積のことをBET比表面積と称する。
【0035】
<製造方法>
実施形態に係る活物質は、以下に説明する合成方法により製造することができる。
【0036】
出発原料としてチタン源、ニオブ源およびモリブデン源を酸性溶液に溶解した後、溶液を中和して得られるゲルを乾燥させることで前駆体を得る。前駆体に対し熱処理を行うことで、Mo含有ニオブチタン酸化物を得る。
【0037】
チタン源としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド(C12H28O4Ti)を用いることができる。ニオブ源としては、例えば、シュウ酸ニオブアンモニウム水和物(C4H4NNbO9・xH2O)を用いることができる。モリブデン源としては、例えば、モリブデン酸アンモニウム((NH4)6Mo7O244H2O)を用いることができる。これらTi源、Nb源およびMo源を溶解させる酸性溶液としては、例えば、シュウ酸水溶液を用いることができる。中和処理には、例えば、アンモニア水を用いることができる。中和後のゲルの乾燥には、例えば、大気中加熱法、スプレードライ法等を適用できる。
【0038】
前駆体を熱処理して酸化物を得る際に、適正な開口部を有する容器に前駆体を高密度充填する。このように密度を高くすることにより、前駆体の十分な酸化を促しつつMoの揮散を抑制する。熱処理では、本焼成の前に仮焼成(第1の焼成)を行う。仮焼成は、200℃以上400℃以下の温度で1時間以上12時間以下に亘り行うことが望ましい。仮焼成を行うことにより、前駆体に吸着している微量な不純物成分(例えば、水や有機物など)を除去することができる。仮焼成は省略してもよい。本焼成(第2の焼成)は、900℃以上1500℃以下の温度で1時間以上40時間以下に亘り焼成することが好ましい。
【0039】
上記液相合成法の他、例えば一般的な固相反応法によっても実施形態に係る活物質を得ることができる。具体例として、酸化チタン(TiO2)、酸化ニオブ(Nb2O5,あるいはNbO2)および酸化モリブデン(MoO3,あるいはMoO2)を乳鉢あるいはボールミル等により混合し、大気中で焼成することによって、実施形態に係わる活物質を得ることができる。
【0040】
<活物質の粉末X線回折測定及びピーク強度比I25/I24の算出>
活物質の粉末X線回折測定は、例えば次のように行うことができる。
【0041】
まず、対象試料を平均粒子径が5μm程度となるまで粉砕する。粉砕した試料を、ガラス試料板上に形成された深さ0.2mmのホルダー部分に充填する。このとき、試料が十分にホルダー部分に充填されるように留意する。また、ひび割れ、空隙等が生じないように、過不足ない量の試料を充填するように注意する。次いで、外部から別のガラス板を押し付けて、ホルダー部分に充填された試料の表面を平らにする。充填量の過不足により、ホルダーの基準面より凹凸が生じることのないように注意する。
【0042】
次いで、試料が充填されたガラス板を粉末X線回折装置に設置し、Cu-Kα線を用いて回折パターン(XRDパターン)を取得する。
【0043】
なお、試料の粒子形状により粒子の配向が大きくなる場合がある。試料の配向性が高い場合は、試料の充填の仕方によってピークの位置がずれたり、強度比が変化したりする可能性がある。このように配向性が著しく高い試料は、ガラスキャピラリを用いて測定する。具体的には、試料をキャピラリに挿入し、このキャピラリを回転式試料台に載置して測定する。このような測定方法により、配向性を緩和することができる。ガラスキャピラリとしては、直径1mm~6mmφのリンデマンガラス製キャピラリを用いることが好ましい。
【0044】
電極に含まれる活物質について粉末X線回折測定を行う場合は、例えば以下のように行うことができる。
【0045】
まず、活物質の結晶状態を把握するために、活物質からリチウムイオンが完全に離脱した状態にする。例えば、活物質が負極において用いられている場合、電池を完全に放電状態にする。例えば、電池を25℃環境において0.1C電流で定格終止電圧又は電池電圧が1.0Vに到達するまで放電させることを複数回繰り返し、放電時の電流値が定格容量の1/100以下となるようにすることで、電池を放電状態にすることができる。放電状態でも残留したリチウムイオンが存在することもある。
【0046】
次に、アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を分解し、電極を取り出して、適切な溶媒で洗浄する。適切な溶媒としては、例えばエチルメチルカーボネートを用いることができる。電極の洗浄が不十分であると、電極中に残留したリチウムイオンの影響で、炭酸リチウムやフッ化リチウムなどの不純物相が混入することがある。その場合は測定雰囲気を不活性ガス中で行える気密容器を用いるとよい。洗浄した電極を、粉末X線回折装置のホルダーの面積と同程度の面積となるように切断して測定試料とする。この試料を直接ガラスホルダーに貼り付けて測定を行う。
【0047】
このとき、集電体である金属箔、導電剤及びバインダなどに由来するピークを、XRDを用いてあらかじめ測定して把握しておく。もちろん、これらを事前に把握できているのであれば、この操作は省略することができる。集電体のピークと活物質のピークとが重なる場合、集電体から活物質含有層を剥離して測定することが望ましい。これは、ピーク強度を定量的に測定する際、重なったピークを分離するためである。活物質含有層を物理的に剥離しても良いが、溶媒中で超音波をかけると剥離しやすい。集電体から活物質含有層を剥離するのに超音波処理を行った場合、溶媒を揮発させることで、電極体粉末(活物質、導電剤、バインダを含む)を回収することができる。回収した電極体粉末を、例えばリンデマンガラス製キャピラリ等に充填して測定することで、活物質の粉末X線回折測定を行うことができる。なお、超音波処理を行って回収した電極体粉末は、粉末X線回折測定以外の各種分析に供することもできる。
【0048】
粉末X線回折測定の装置としては、例えば、Rigaku社製SmartLabを用いる。測定条件は以下の通りとする:
X線源:Cuターゲット
出力:45kV、200mA
ソーラスリット:入射及び受光共に5°
ステップ幅(2θ):0.01deg
スキャン速度:2deg/分
半導体検出器:D/teX Ultra 250
試料板ホルダー:平板ガラス試料板ホルダー(厚さ0.5mm)
測定範囲:5°≦2θ≦90°。
【0049】
その他の装置を使用する場合は、粉末X線回折用標準Si粉末を用いた測定を行う。上記と同等の測定結果が得られるように、上記装置によって得られる結果と同等のピーク強度、半値幅及び回折角の測定結果が得られる条件を見つけ、その条件に調整して試料の測定を行う。
【0050】
上記粉末X線回折測定の条件は、リートベルト解析に適用できるXRDパターンを取得できる条件とする。リートベルト解析用のデータを収集するには、具体的にはステップ幅が回折ピークの最小半値幅の1/3-1/5となるようにし、最強度反射のピーク位置における強度が5000cps以上となるように適宜、測定時間またはX線強度を調整する。例えば、非特許文献4に詳述されている方法に基づいて、リートベルト解析を行うことができる。
【0051】
以上の方法により、測定対象の活物質の結晶構造に関する情報を得ることができる。例えば、実施形態に係る活物質を上記のように測定した場合、測定対象の活物質が、単斜晶構造を有する酸化物を含んでいることが分かる。また、上記のように測定することにより、例えば単斜晶系などの、測定対象の結晶構造の結晶性や対称性を調べることができる。
【0052】
また、得られる回折スペクトルにおいて、2θが23.5°から24.5°の範囲内にピークトップを有する第1ピークのピーク強度I24を決定する。また、当該回折スペクトルおいて、2θが25.0°から25.5°の範囲内にピークトップを有する第2ピークのピーク強度I25を決定する。そして、ピーク強度比I25/I24を算出する。
【0053】
<ニオブチタン酸化物の組成の測定方法>
活物質中のニオブチタン酸化物の組成は、誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES分析)により求めることができる。
【0054】
まず、対象試料を粉砕する。これを酸に溶解して誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES分析)に供する。ICP-AESにより、活物質中に含まれる元素の種類及び濃度を測定することができる。
【0055】
電極に含まれる活物質について組成を測定する場合は、例えば以下のように行うことができる。 まず、上述した粉末X線回折の方法と同様の手順でLiを完全に離脱させた状態の活物質を準備する。これを140℃の温度で24時間に亘り真空乾燥に供する。次いで、この活物質の全重量を乾燥雰囲気中で測定する。これを酸に溶解して誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES分析)に供する。ICP-AESにより、活物質中に含まれる元素の種類及び濃度を測定することができる。
【0056】
第1の実施形態によると、単斜晶構造を有するMo含有ニオブチタン酸化物を含む活物質が提供される。当該活物質について得られるX線回折スペクトルでは、2θ=23.5°-24.5°にある第1ピークの強度I25と、2θ=25.0°-25.5°にある第2ピークの強度I25とは、比I25/I24が0.5以上という関係にある。係る活物質は、高容量および優れたサイクル寿命性能を示すことができる二次電池を実現することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によると、電極が提供される。
【0058】
第2の実施形態に係る電極は、第1の実施形態に係る活物質を含む。この電極は、第1の実施形態に係る活物質を電池用活物質として含む電池用電極であり得る。電池用電極としての電極は、例えば、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む負極であり得る。
【0059】
係る電極は、集電体と活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。活物質含有層は、活物質と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。
【0060】
活物質含有層は、第1の実施形態に係る活物質を単独で含んでもよく、第1の実施形態に係る活物質を2種類以上含んでもよい。さらに、第1の実施形態に係る活物質を1種又は2種以上と、更に1種又は2種以上の他の活物質とを混合した混合物を含んでもよい。第1の実施形態に係る活物質(上述したMo含有ニオブチタン酸化物)と他の活物質との総質量に対する第1の実施形態に係る活物質の含有割合が10質量%以上100質量%以下であることが望ましい。
【0061】
例えば、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む場合は、他の活物質の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi37、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi512、0≦x≦3)、二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、五酸化ニオブ(Nb25)、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型(orthorhombic)チタン複合酸化物、及び他の単斜晶型ニオブチタン酸化物が挙げられる。
【0062】
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+a 2-bTi6-cII d14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、Mは、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。MIIはZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti614(0≦a≦6)が挙げられる。
【0063】
上記単斜晶型ニオブチタン酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2z7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
【0064】
単斜晶型ニオブチタン酸化物の他の例として、LixTi1-yM3y+zNb2-z7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,及びTaより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0065】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
【0066】
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0067】
活物質含有層中の活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、電極の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、電極を二次電池の負極として用いる場合は、活物質(負極活物質)、導電剤及び結着剤を、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0068】
集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、活物質が負極活物質として用いられる場合は、集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0069】
また、集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
【0070】
電極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。
【0071】
或いは、電極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、電極を得ることができる。
【0072】
第2の実施形態に係る電極は、第1の実施形態に係る活物質を含んでいる。そのため、係る電極は、高い容量および優れた寿命性能を示すことができる。
【0073】
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、負極と、正極と、電解質とを含む二次電池が提供される。この二次電池は、負極として、第2の実施形態に係る電極を含む。つまり、第3の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る活物質を電池用活物質として含む電極を、負極として含む。
【0074】
係る二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。
【0075】
また、係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
【0076】
さらに、係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
【0077】
係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
【0078】
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
【0079】
1)負極
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極集電体及び負極活物質含有層は、それぞれ、第2の実施形態に係る電極が含むことのできる集電体及び活物質含有層であり得る。負極活物質含有層は、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む。
【0080】
負極の詳細のうち、第2の実施形態について説明した詳細と重複する部分は、省略する。
【0081】
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
【0082】
負極は、例えば、第2の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
【0083】
2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
【0084】
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
【0085】
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoy2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV25)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnz2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0086】
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoy2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnz2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
【0087】
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
【0088】
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0089】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0090】
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0091】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0092】
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0093】
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0094】
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0095】
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0096】
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0097】
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0098】
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
【0099】
正極は、例えば、正極活物質を用いて、第2の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
【0100】
3)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
【0101】
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0102】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0103】
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
【0104】
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
【0105】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0106】
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
【0107】
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。ここでいうLiイオン伝導性を有するとは、25℃で1×10-6 S/cm以上のリチウムイオン伝導度を示すことを指す。無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、又は硫化物系固体電解質を挙げることができる。無機固体電解質の具体例は、下記のとおりである。
【0108】
酸化物系固体電解質としては、NASICON(Sodium (Na) Super Ionic Conductor)型構造を有し、一般式Li1+xMα2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMαは、例えば、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、及びカルシウム(Ca)からなる群より選択される1以上である。添字xは、0≦x≦2の範囲内にある。
【0109】
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3で表され0.1≦x≦0.5であるLATP化合物;Li1+xAlyMβ2-y(PO4)3で表されMβはTi,Ge,Sr,Zr,Sn,及びCaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦1及び0≦y≦1である化合物;Li1+xAlxGe2-x(PO4)3で表され0≦x≦2である化合物;及び、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3で表され0≦x≦2である化合物;Li1+x+yAlxMγ2-xSiy3-y12で表されMγはTi及びGeからなる群より選択される1以上であり0<x≦2、0≦y<3である化合物;Li1+2xZr1-xCax(PO4)3で表され0≦x<1である化合物を挙げることができる。
【0110】
また、酸化物系固体電解質としては、上記リチウムリン酸固体電解質の他にも、LixPOyzで表され2.6≦x≦3.5、1.9≦y≦3.8、及び0.1≦z≦1.3であるアモルファス状のLIPON化合物(例えば、Li2.9PO3.30.46);ガーネット型構造のLa5+xxLa3-xMδ212で表されAはCa,Sr,及びBaからなる群より選択される1以上でMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦0.5である化合物;Li3Mδ2-x212で表されMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上でありLはZrを含み得0≦x≦0.5である化合物;Li7-3xAlxLa3Zr312で表され0≦x≦0.5である化合物;Li5+xLa3Mδ2-xZrx12で表されMδはNb及びTaから成る群より選択される1以上であり0≦x≦2であるLLZ化合物(例えば、Li7La3Zr212);及びペロブスカイト型構造を有しLa2/3-xLixTiO3で表され0.3≦x≦0.7である化合物が挙げられる。
【0111】
上記化合物のうち1以上を固体電解質として用いることができる。上記固体電解質を2以上用いてもよい。
【0112】
或いは、非水電解質の代わりに、液状水系電解質又はゲル状水系電解質を電解質として用いることができる。液状水系電解質は、溶質として、例えば、上記電解質塩を水系溶媒に溶解することにより調製される。ゲル状水系電解質は、液状水系電解質と上記高分子材料とを複合化することにより調製される。水系溶媒としては、水を含む溶液を用い得る。水を含む溶液とは、純水であってもよく、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
【0113】
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
【0114】
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
【0115】
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
【0116】
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0117】
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0118】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
【0119】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0120】
6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
【0121】
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0122】
次に、実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0123】
図1は、二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
【0124】
図1及び図2に示す二次電池100は、図1に示す袋状外装部材2と、図1及び図2に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
【0125】
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0126】
図1に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、図2に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
【0127】
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図2に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
【0128】
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
【0129】
図1に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
【0130】
実施形態に係る二次電池は、図1及び図2に示す構成の二次電池に限らず、例えば図3及び図4に示す構成の電池であってもよい。
【0131】
図3は二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図4は、図3に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
【0132】
図3及び図4に示す二次電池100は、図3及び図4に示す電極群1と、図3に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
【0133】
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0134】
電極群1は、図4に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
【0135】
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
【0136】
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分を含む。この部分は、負極集電タブ3cとして働く。図4に示すように、負極集電タブ3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ3cは、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
【0137】
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ3cと同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ3cに対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
【0138】
第3の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る活物質を負極に含んでいる。そのため、係る二次電池は、高い容量および優れた寿命性能を示すことができる。
【0139】
(4の実施形態)
第4の実施形態によると、組電池が提供される。係る組電池は、第3の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
【0140】
係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
【0141】
次に、実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0142】
図5は、組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図5に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、第3の実施形態に係る二次電池である。
【0143】
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図5の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
【0144】
5つの単電池100a~100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a~100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
【0145】
第4の実施形態に係る組電池は、第3の実施形態に係る二次電池を具備する。したがって、高い容量および優れた寿命性能を示すことができる。
【0146】
(第5の実施形態)
第5の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第4の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第4の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第3の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
【0147】
係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
【0148】
また、係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0149】
次に、実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0150】
図6は、電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図7は、図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0151】
図6及び図7に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
【0152】
図6に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
【0153】
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
【0154】
複数の単電池100の少なくとも1つは、第3の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、図7に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
【0155】
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
【0156】
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
【0157】
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
【0158】
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
【0159】
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
【0160】
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
【0161】
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
【0162】
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
【0163】
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
【0164】
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
【0165】
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
【0166】
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
【0167】
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子350の正側端子352と負側端子353としてそれぞれ用いてもよい。
【0168】
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
【0169】
第5の実施形態に係る電池パックは、第3の実施形態に係る二次電池又は第4の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、高い容量および優れた寿命性能を示すことができる。
【0170】
(第6の実施形態)
第6の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第5の実施形態に係る電池パックを搭載している。
【0171】
係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
【0172】
車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
【0173】
車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
【0174】
車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
【0175】
次に、実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0176】
図8は、車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
【0177】
図8に示す車両400は、車両本体40と、第5の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図8に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
【0178】
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
【0179】
図8では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
【0180】
次に、図9を参照しながら、実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
【0181】
図9は、車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。図9に示す車両400は、電気自動車である。
【0182】
図9に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
【0183】
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図9に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
【0184】
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
【0185】
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a~300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a~200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a~200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
【0186】
組電池200a~200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第3の実施形態に係る二次電池である。組電池200a~200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
【0187】
電池管理装置411は、組電池監視装置301a~301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a~200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
【0188】
電池管理装置411と組電池監視装置301a~301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a~301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
【0189】
組電池監視装置301a~301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a~200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
【0190】
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば図9に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a~200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a~200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
【0191】
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
【0192】
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
【0193】
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
【0194】
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
【0195】
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
【0196】
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
【0197】
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
【0198】
第6の実施形態に係る車両は、第5の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、高パフォーマンス及び高い信頼性を示すことができる。
【実施例0199】
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明する。
【0200】
<合成方法>
(実施例1)
モリブデン含有ニオブチタン酸化物を、次のとおり合成した。
【0201】
水にシュウ酸を溶かし、1Mシュウ酸水溶液を調製した。このシュウ酸水溶液にチタンテトライソプロポキシド(C12H28O4Ti)を溶解させ、ここにシュウ酸ニオブアンモニウム水和物(C4H4NNbO9・xH2O)とモリブデン酸アンモニウム((NH4)6Mo7O244H2O)を溶解させた。これらTi源(C12H28O4Ti)、Nb源(C4H4NNbO9・xH2O)及びMo源((NH4)6Mo7O244H2O)の割合は、それぞれ7.4質量%、91.6質量%及び1質量%とした。その後、溶液にアンモニア水を滴下することで中和し、白色のゲルを得た。このゲルをスプレードライヤーにより乾燥し、前駆体を得た。この前駆体をアスペクト比1前後の円柱型アルミナるつぼの上端まで投入し、タッピングにより高密度に充填した。電気炉を用いて大気中300℃で1hの仮焼と900℃で4hの熱処理を連続して行い、実施例1の活物質を得た。
【0202】
(実施例2)
Ti源、Nb源およびMo源の割合を、5.3質量%、92.1質量%及び2.6質量%にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、実施例2の活物質を得た。
【0203】
(実施例3)
Ti源、Nb源およびMo源の割合を、3.5質量%、92.6質量%及び3.9質量%にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、実施例3の活物質を得た。
【0204】
(実施例4)
Ti源、Nb源およびMo源の割合を、8.1質量%、90.7質量%及び1.2質量%にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、実施例4の活物質を得た。
【0205】
(実施例5)
Ti源、Nb源およびMo源の割合を、9.1質量%、88.9質量%及び2.0質量%にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、実施例5の活物質を得た。
【0206】
(実施例6)
Ti源、Nb源およびMo源の割合を、8.0質量%、89.2質量%及び2.8質量%にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、実施例6の活物質を得た。
【0207】
(比較例1)
Ti源、Nb源およびMo源の割合を、7.8質量%、92.2質量%及び0質量%にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、比較例1の活物質を得た。
【0208】
実施例1から6及び比較例1にてそれぞれ合成した活物質の組成を測定した結果を下記表1にまとめる。表1には、活物質組成と共に、当該組成を一般式Tix-yMoyNb12-xO29+zで表した場合の添字x、y及びzを示す。表1に示す活物質組成は、該一般式に必ずしも直接に対応しないが、一般式に当てはまるよう換算した場合に各添字が表記したものとなる。
【0209】
【表1】
【0210】
<粉末X線回折測定及びピーク強度比I25/I24の算出>
実施例1から6及び比較例1で得られた活物質粉末について、サンプリング間隔0.01°、スキャン速度2°/minの条件で、第1の実施形態において説明した粉末X線回折測定を行った。得られた回折スペクトルにおいて、ピーク強度比I25/I24を算出した。
【0211】
一例として、実施例1から4及び比較例1に係る活物質についての粉末X線回折により得られた回折スペクトルを図10に示す。図示するとおり、実施例1から4に係る活物質の何れについても、X線回折曲線は23.5°から24.5°の範囲内の第1ピークP1と25.0°から25.5°の範囲内の第2ピークP2との両方を含んでいた。比較例1に係る活物質については、第1ピークP1が観られたものの、25.0°から25.5°の範囲にはピークが観られなかった。比較例1についての回折曲線においても第1ピークP1より広角側にピークP0が含まれていたが、当該ピークP0のピークトップは2θ<25.0°の位置にあった。
【0212】
<電気化学測定>
まず、各例で得られた活物質粉末100質量%、導電剤としてアセチレンブラック10質量%、及び、カーボンナノファイバー5質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量%をN-メチルピロリドン(NMP)を加えて混合してスラリーを得た。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の片面に塗布し、乾燥後プレスすることにより電極密度2.4g/cm3の電極を作製した。
【0213】
次に、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:2で混ぜた混合溶媒に、LiPF支持塩を1mol/Lの濃度で溶解させることにより電解液を調製した。
【0214】
得られた電極を作用極とし、対極及び参照極をLi金属とし、電解液を用いたガラスセルを作製して電気化学性能を評価した。
【0215】
本実施例において、この測定用のガラスセルでは、リチウム金属を対極としているため、実施例および比較例の電極電位は対極に比して貴となるため正極として作動する。このため、実施例および比較例の電極を負極として用いたときの充放電の定義は反対になる。ここで、混乱を避けるため、本実施例では、電極にリチウムイオンが挿入される方向を充電、脱離する方向を放電という呼称で統一する。なお、本実施形態の活物質は、公知の正極材料と組み合わせることで負極として作動する。
【0216】
作製した電気化学測定セルを、金属リチウム電極基準で0.7V以上3.0V以下の電位範囲で充放電させた。充放電電流値を0.2C(時間放電率)とし、室温にて0.2C放電容量の確認を行った。0.2C放電容量の値は、エネルギー密度の指標となる。
【0217】
次に、各例のセルに、金属リチウム電極基準で0.7V以上3.0V以下の電位範囲で1C充放電を繰り返す寿命試験を室温で行った。この条件で100サイクル繰り返し充放電を行い(充電及び放電で1サイクルとする)、再度0.2C放電容量を測定した。100サイクル後の放電容量をサイクル前の放電容量で除することで、サイクル容量維持率を算出した(サイクル容量維持率=(100サイクル後の0.2C放電容量/100サイクルする前の0.2C放電容量)×100%)。
【0218】
以上の結果を表2にまとめる。具体的には、各例のXRDスペクトルにおけるピーク強度比I25/I24、0.2C放電容量、及び100サイクル充放電した際のサイクル容量維持率をそれぞれ示す。
【0219】
【表2】
【0220】
表2に示すとおり、実施例1から6のXRDスペクトルでは、ピーク強度比I25/I24が何れも0.5以上だった。対して、比較例1では25.0°から25.5°の回折角2θの範囲内に第2ピークが現れなかった。電気化学測定の結果としては、実施例1から6に係る電気化学測定セルでは、比較例1に係るセルと同等以上のサイクル容量維持率を示しながら、より高い放電容量が得られた。これらの結果から、ピーク強度比I25/I24が何れも0.5以上であるMo含有ニオブチタン酸化物では、優れたサイクル寿命性能を維持しながらも、容量が向上していることがわかる。
【0221】
以上説明した少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、活物質が提供される。係る活物質は、単斜晶構造を有するMo含有ニオブチタン酸化物を含む。係る活物質についてのX線回折スペクトルでは、23.5°≦2θ≦24.5°の範囲内に現れる第1ピークの強度I24に対する25.0°≦2θ≦25.5°の範囲内に現れる第2ピークの強度I25の比I25/I24が、0.5以上である。この活物質は、高い容量および優れたサイクル寿命性能を示すことができる二次電池を実現することができる。
【0222】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0223】
以下に、本発明に係る幾つかの実施形態を附記する。
[1] 単斜晶構造を有するMo含有ニオブチタン酸化物を含み、
X線回折スペクトルにて2θが23.5°から24.5°の範囲内に現れる第1ピークの強度I24に対する2θが25.0°から25.5°の範囲内に現れる第2ピークの強度I25の比I25/I24が0.5以上である、活物質。
[2] 前記比I25/I24が0.9以下である、[1]に記載の活物質。
[3] 前記Mo含有ニオブチタン酸化物は、一般式Tix-yMoyNb12-xO29+zで表され1.5≦ x ≦2.2,0< y ≦ 0.7x,及び-3≦ z ≦1である組成を有する、[1]又は[2]に記載の活物質。
[4] [1]から[3]の何れか1つに記載の活物質を含む電極。
[5] 前記電極は、前記活物質を含む活物質含有層を含む[4]に記載の電極。
[6] 正極と、
負極と、
電解質とを具備する二次電池であって、
前記負極は[4]又は[5]に記載の電極である、二次電池。
[7] [6]に記載の二次電池を具備する電池パック。
[8] 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する[7]に記載の電池パック。
[9] 複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[7]又は[8]に記載の電池パック。
[10] [7]から[9]の何れか1つに記載の電池パックを搭載した車両。
[11] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む[10]に記載の車両。
【符号の説明】
【0224】
1…電極群、2…外装部材、3…負極、3a…負極集電体、3b…負極活物質含有層、3c…負極集電タブ、4…セパレータ、5…正極、5a…正極集電体、5b…正極活物質含有層、6…負極端子、7…正極端子、21…バスバー、22…正極側リード、22a…他端、23…負極側リード、23a…他端、24…粘着テープ、31…収容容器、32…蓋、33…保護シート、34…プリント配線基板、35…配線、40…車両本体、41…車両用電源、42…電気制御装置、43…外部端子、44…インバータ、45…駆動モータ、100…二次電池、200…組電池、200a…組電池、200b…組電池、200c…組電池、300…電池パック、300a…電池パック、300b…電池パック、300c…電池パック、301a…組電池監視装置、301b…組電池監視装置、301c…組電池監視装置、342…正極側コネクタ、343…負極側コネクタ、345…サーミスタ、346…保護回路、342a…配線、343a…配線、350…通電用の外部端子、352…正側端子、353…負側端子、348a…プラス側配線、348b…マイナス側配線、400…車両、411…電池管理装置、412…通信バス、413…正極端子、414…負極端子、415…スイッチ装置、416…電流検出部、417…負極入力端子、418…正極入力端子、L1…接続ライン、L2…接続ライン、W…駆動輪。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10