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特開2024-132499フィルム付き紙製トレイの製造方法ならびに基材構造およびフィルム付き紙製トレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132499
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】フィルム付き紙製トレイの製造方法ならびに基材構造およびフィルム付き紙製トレイ
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/56 20060101AFI20240920BHJP
   B65D 5/20 20060101ALI20240920BHJP
   B31B 50/74 20170101ALI20240920BHJP
   B31B 105/00 20170101ALN20240920BHJP
   B31B 110/35 20170101ALN20240920BHJP
   B31B 120/40 20170101ALN20240920BHJP
【FI】
B65D5/56 A
B65D5/20 Z
B31B50/74
B31B105:00
B31B110:35
B31B120:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043286
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 チエリ
【テーマコード(参考)】
3E060
3E075
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB12
3E060BB01
3E060BC04
3E060DA18
3E075AA08
3E075BA07
3E075BA13
3E075BA22
3E075BA28
3E075BB02
3E075CA01
3E075DE22
3E075GA05
(57)【要約】
【課題】フィルム付き紙製トレイにおける穴部のフィルムによる不具合を抑制する。
【解決手段】フィルム付き紙製トレイの製造方法は、底壁部3となる底壁シート片と側壁部4となる側壁シート片との間で切り込まれたスリットが設けられた平板状のブランクシートを準備する前工程と、前工程で準備されたブランクシートの底壁シート片に対して側壁シート片を折立線F1で折り立てて、脚部10を底壁部3よりも下方に突出させて折り出すとともに穴部40を出現させる折工程と、穴部40に対しブランクシートの一部をなす差込シート片50を差し込む差込工程と、差込工程で差込シート片50を穴部40に差し込むことでブランクシートから折り曲げられた基材1,2を得て、基材1,2にフィルム90を吸着させる内装工程と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁部に対して側壁部が折り立てられた状態をなす紙製の基材にフィルムが内装されたフィルム付き紙製トレイの製造方法であって、
前記底壁部となる底壁シート片と前記側壁部となる側壁シート片との間で互いに離間する折立線どうしを結ぶとともに前記底壁シート片の側に凸の形状で切り込まれたスリットが設けられた平板状のブランクシートを準備する前工程と、
前記前工程で準備された前記ブランクシートの前記底壁シート片に対して前記側壁シート片を前記折立線で折り立てて、前記スリットに対して前記側壁シート片の側に位置する端縁である側端縁と前記折立線どうしを仮想的に結ぶ仮想線とで区画される脚部を前記底壁部よりも下方に突出させて折り出すとともに、前記スリットに対して前記底壁シート片の側に位置する端縁である底端縁と前記仮想線とで区画される穴部を出現させる折工程と、
前記折工程で出現させられた前記穴部に対して前記ブランクシートの一部をなす差込シート片を差し込む差込工程と、
前記差込工程で前記差込シート片を前記穴部に差し込むことで前記ブランクシートから折り曲げられた前記基材を得て、前記基材に前記フィルムを吸着させる内装工程と、を備えた
ことを特徴とするフィルム付き紙製トレイの製造方法。
【請求項2】
前記前工程は、前記差込シート片が前記底壁部に対して前記脚部が突出する寸法よりも長く突出するように設計された前記ブランクシートを準備する
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム付き紙製トレイの製造方法。
【請求項3】
前記折工程で前記穴部に対して差し込まれた前記差込シート片を前記底壁シート片に沿って折り倒す折倒工程を備えた
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルム付き紙製トレイの製造方法。
【請求項4】
前記前工程は、前記差込シート片が前記底壁部に対して前記脚部が突出する寸法以下になるように設計された前記ブランクシートを準備する
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム付き紙製トレイの製造方法。
【請求項5】
前記前工程は、前記底壁シート片と前記側壁シート片との間で互いに離間する前記折立線どうしを結ぶ前記スリットが設けられた平板状の第一ブランクシートを準備する第一前工程と、前記第一ブランクシートとは別体であって前記差込シート片が設けられた第二ブランクシートを準備する第二前工程と、有し、
前記折工程は、前記第一ブランクシートから前記脚部を折り出すとともに前記穴部を出現させ、
前記差込工程は、前記折工程で出現させられた前記穴部に対して前記第二ブランクシートの前記差込シート片を差し込む
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のフィルム付き紙製トレイの製造方法。
【請求項6】
紙製の基材に対してフィルムが吸着された状態で内装されたフィルム付き紙製トレイの基材構造であって、
収容空間の下方に延在する底壁部と、
前記底壁部の外周端縁の一部に設けられた折立線で前記底壁部に対して折り立てられた状態をなす外側壁部と、
前記外側壁部における下端縁のうち前記折立線を除く領域の基端縁から前記底壁部よりも下方に突設された脚部と、
前記外周端縁のうち前記一部を除く他部と前記基端縁とで区画される穴部と、
前記外側壁部に対して前記収容空間の側である内側に重ね合わせられた内側壁部と、前記内側壁部から下方に突設されるとともに前記穴部に差し込まれた状態の凸部とが一体に設けられた重合部と、を備えた
ことを特徴とする基材構造。
【請求項7】
前記重合部のうち前記凸部は、前記脚部よりも下方に突出して設けられた
ことを特徴とする請求項6に記載の基材構造。
【請求項8】
前記重合部のうち前記凸部は、前記底壁部に沿って折り倒された状態であって前記底壁部に対して前記収容空間とは反対側の下側に重ね合わせられた
ことを特徴とする請求項6に記載の基材構造。
【請求項9】
前記重合部のうち前記凸部は、前記脚部よりも下方に突出せずに設けられた
ことを特徴とする請求項6に記載の基材構造。
【請求項10】
前記底壁部,前記外側壁部,前記脚部および前記穴部が設けられた第一基材と、
前記第一基材とは別体であって前記重合部が設けられた第二基材と、を備えた
ことを特徴とする請求項6に記載の基材構造。
【請求項11】
請求項6~10の何れか一項に記載の基材構造と、
前記基材構造の前記基材に対して吸着された状態で内装された前記フィルムとを備えた
ことを特徴とするフィルム付き紙製トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム付き紙製トレイの製造方法ならびに基材構造およびフィルム付き紙製トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
紙製パッケージの一つとして、底壁部に対して側壁部が折り立てられた状態をなす紙製の基材にフィルムが内装されたフィルム付き紙製トレイが知られている。紙製トレイでは、紙製の基材によって構造的な定形性が確保され、フィルムによって内容物の密封性が確保される。このように強度を担う基材が剛な構成として外装されるのに対し、柔な構成としてフィルムが内装された複層構造によって、全域に亘って基材およびフィルムの複層構造が設けられた紙製トレイが製造される(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-172339号公報
【特許文献2】特開2001-206345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにフィルム付き紙製トレイの全域に複層構造が設けられていると、付属構造の追加や中身の視認性確保といったユーザビリティが不十分となりうる。そこで、フィルム付き紙製トレイの一部において基材を設けずにフィルムのみを設け、基材の穴部をフィルムで窓貼りしたような単層構造を採用することが考えられる。しかしながら、剛な基材に比較して柔なフィルムは強度が低い傾向にあることから、単層構造の領域が大きいほど単層構造をなす領域の強度を確保するのが困難である。そのため、基材の穴部に内装されたフィルムによる不具合を招くおそれがある。
よって、フィルム付き紙製トレイにおける穴部のフィルムによる不具合を抑制するうえで、改善の余地がある。
【0005】
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、フィルム付き紙製トレイにおける穴部のフィルムによる不具合を抑制することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示のフィルム付き紙製トレイの製造方法は、以下に記す(1)~(5)の構成を備えている。
(1)
底壁部に対して側壁部が折り立てられた状態をなす紙製の基材にフィルムが内装されたフィルム付き紙製トレイの製造方法であって、
前記底壁部となる底壁シート片と前記側壁部となる側壁シート片との間で互いに離間する折立線どうしを結ぶとともに前記底壁シート片の側に凸の形状で切り込まれたスリットが設けられた平板状のブランクシートを準備する前工程と、
前記前工程で準備された前記ブランクシートの前記底壁シート片に対して前記側壁シート片を前記折立線で折り立てて、前記スリットに対して前記側壁シート片の側に位置する端縁である側端縁と前記折立線どうしを仮想的に結ぶ仮想線とで区画される脚部を前記底壁部よりも下方に突出させて折り出すとともに、前記スリットに対して前記底壁シート片の側に位置する端縁である底端縁と前記仮想線とで区画される穴部を出現させる折工程と、
前記折工程で出現させられた前記穴部に対して前記ブランクシートの一部をなす差込シート片を差し込む差込工程と、
前記差込工程で前記差込シート片を前記穴部に差し込むことで前記ブランクシートから折り曲げられた前記基材を得て、前記基材に前記フィルムを吸着させる内装工程と、を備えた
ことを特徴とするフィルム付き紙製トレイの製造方法。
(2)
前記前工程は、前記差込シート片が前記底壁部に対して前記脚部が突出する寸法よりも長く突出するように設計された前記ブランクシートを準備する
ことを特徴とする(1)に記載のフィルム付き紙製トレイの製造方法。
(3)
前記折工程で前記穴部に対して差し込まれた前記差込シート片を前記底壁シート片に沿って折り倒す折倒工程を備えた
ことを特徴とする(2)に記載のフィルム付き紙製トレイの製造方法。
(4)
前記前工程は、前記差込シート片が前記底壁部に対して前記脚部が突出する寸法以下になるように設計された前記ブランクシートを準備する
ことを特徴とする(1)に記載のフィルム付き紙製トレイの製造方法。
(5)
前記前工程は、前記底壁シート片と前記側壁シート片との間で互いに離間する前記折立線どうしを結ぶ前記スリットが設けられた平板状の第一ブランクシートを準備する第一前工程と、前記第一ブランクシートとは別体であって前記差込シート片が設けられた第二ブランクシートを準備する第二前工程と、有し、
前記折工程は、前記第一ブランクシートから前記脚部を折り出すとともに前記穴部を出現させ、
前記差込工程は、前記折工程で出現させられた前記穴部に対して前記第二ブランクシートの前記差込シート片を差し込む
ことを特徴とする(1)~(4)の何れか一つに記載のフィルム付き紙製トレイの製造方法。
ここで開示の基材構造は、以下に記す(6)~(10)の構成を備えている。
(6)
紙製の基材に対してフィルムが吸着された状態で内装されたフィルム付き紙製トレイの基材構造であって、
収容空間の下方に延在する底壁部と、
前記底壁部の外周端縁の一部に設けられた折立線で前記底壁部に対して折り立てられた状態をなす外側壁部と、
前記外側壁部における下端縁のうち前記折立線を除く領域の基端縁から前記底壁部よりも下方に突設された脚部と、
前記外周端縁のうち前記一部を除く他部と前記基端縁とで区画される穴部と、
前記外側壁部に対して前記収容空間の側である内側に重ね合わせられた内側壁部と、前記内側壁部から下方に突設されるとともに前記穴部に差し込まれた状態の凸部とが一体に設けられた重合部と、を備えた
ことを特徴とする基材構造。
(7)
前記重合部のうち前記凸部は、前記脚部よりも下方に突出して設けられた
ことを特徴とする(6)に記載の基材構造。
(8)
前記重合部のうち前記凸部は、前記底壁部に沿って折り倒された状態であって前記底壁部に対して前記収容空間とは反対側の下側に重ね合わせられた
ことを特徴とする(6)に記載の基材構造。
(9)
前記重合部のうち前記凸部は、前記脚部よりも下方に突出せずに設けられた
ことを特徴とする(6)に記載の基材構造。
(10)
前記底壁部,前記外側壁部,前記脚部および前記穴部が設けられた第一基材と、
前記第一基材とは別体であって前記重合部が設けられた第二基材と、を備えた
ことを特徴とする(6)~(9)の何れか一つに記載の基材構造。
ここで開示のフィルム付き紙製トレイは、以下に記す(11)の構成を備えている。
(11)
(6)~(10)の何れか一項に記載の基材構造と、
前記基材構造の前記基材に対して吸着された状態で内装された前記フィルムとを備えた
ことを特徴とするフィルム付き紙製トレイ。
【発明の効果】
【0007】
本件によれば、フィルム付き紙製トレイにおける穴部のフィルムによる不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係るフィルム付き紙製トレイの分解斜視図である。
図2】第一実施形態に係るフィルム付き紙製トレイを示す斜視図である。
図3】第一実施形態に係る紙製トレイに用いられる第一基材の展開図であり、第一基材のブランクシートを示す平面図とも言える。
図4】第一実施形態に係る紙製トレイに用いられる第二基材の展開図であり、第二基材のブランクシートを示す平面図とも言える。
図5】第一実施形態に係る紙製トレイの要部を示す部分断面図である。
図6】第二実施形態に係る紙製トレイに用いられる第一基材の展開図であり、第一基材のブランクシートを示す平面図とも言える。
図7】第二実施形態に係る紙製トレイに用いられる第二基材の展開図であり、第二基材のブランクシートを示す平面図とも言える。
図8】第二実施形態に係る紙製トレイの要部を示す斜視図である。
図9】第三実施形態に係る紙製トレイに用いられる第一基材の展開図であり、第一基材のブランクシートを示す平面図とも言える。
図10】第三実施形態に係る紙製トレイに用いられる第二基材の展開図であり、第二基材のブランクシートを示す平面図とも言える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、紙製トレイに関する実施の形態を説明する。
紙製トレイは、紙製の基材がトレイ状に折り立てられたパッケージである。この紙製トレイにフィルムが内装されたパッケージは、フィルム付き紙製トレイである。
フィルムの有無にかかわらず紙製トレイには、トレイ状に折り立てられた基材が設けられている。基材は、平板状のブランクシートが折り曲げられて成形される。すなわち、基材の資材がブランクシートである。ブランクシートから成形された基材のなす構造は、紙製トレイにおける基材構造である。
【0010】
ブランクシートは、基材の各部位に対応した所定の形状に切り抜かれている。このブランクシートは、切れ込みや切り抜きの施されていない平板シート(いわば原紙)から製造される。平板シートを切れ込んだり切り抜いたりする加工を施してブランクシートが製造される。
【0011】
すなわち、平板シートに加工を施してブランクシートを製造する方法がブランクシートの製造方法であり、ブランクシートの折り曲げ加工を施した基材を用いて紙製トレイを製造する方法が紙製トレイの製造方法である。紙製トレイの製造方法において基材にフィルムを吸着したり圧空したりして内装する加工が施された製法は、フィルム付き紙製トレイの製造方法である。
【0012】
本実施形態では、水平方向を前方(図面では「F」で表記),後方(図面では「B」で表記),左方(図面では「L」で表記)および右方(図面では「R」で表記)の四方向に細別する。また、鉛直方向を下方(図面では「D」で表記)および上方(図面では「U」で表記)の二方向に細別する。
なお、下記の説明では、フィルム付き紙製トレイあるいはフィルムの内装されていない紙製トレイについて、フィルムの有無を区別せずに示す場合には、「トレイ」と略称したり、単に「紙製トレイ」と称したりする。
【0013】
[I.第一実施形態]
下記の第一実施形態では、トレイに関する構成を項目[1]で述べ、項目[1]の構成による作用および効果を項目[2]で述べる。
[1.構成]
本項目[1]では、小項目[1-1]でトレイの概要を説明し、小項目[1-2]でトレイの基本的な構成を述べる。それから、トレイの付加的な構成を小項目[1-3]で説明し、トレイに関する製法を小項目[1-4]で述べる。そして、トレイに用いられる材料について小項目[1-5]に付記する。
【0014】
[1-1.概要]
図1に示すように、トレイには、第一基材1および第二基材2が用いられ、これら二つの基材1,2が組み合わせられたうえでフィルム90が内装されている。ここでは、前後対称であって左右対称の基材1,2を例に挙げる。
ここで例示のトレイは、図2に示すように、八角錐台状の収容空間を囲む形状をなし、八角錐台における上底に対応する領域に開口80が位置している。
本トレイには、基本的な構成として下掲の部位3~5が延在して設けられている。
・底壁部3:収容空間に対して下方に設けられた壁状の部位
・側壁部4:収容空間の周囲に立設された壁状の部位
・フランジ部5:開口80から外側に向けて延出した鍔状の部位
【0015】
底壁部3は、八角錐台の下底に対応する部位であり、平面視で八角形状の概形をなす。フランジ部5は、平面視で周状に連続するとともに八角形が切り抜かれた形状をなす。底壁部3とフランジ部5との間には、側壁部4が立設されている。
底壁部3と側壁部4とは下境界を介して隣接しており、側壁部4とフランジ部5とは上境界を介して隣接している。
【0016】
下境界には、底壁部3の外周端縁3Dや側壁部4の下端縁4Dが延在している。上境界には、側壁部4の上端縁4Uやフランジ部5の内周端縁5U(内側の周端縁)が延在している。これらの端縁4U,端縁5Uによって開口80が囲繞され、端縁4U,端縁5Uで開口80が区画される。端縁4U,端縁5Uで開口80が囲繞される内側とは反対側の外側に向けて、側壁部4の上端縁4Uからフランジ部5が延在している。
【0017】
上記の底壁部3,側壁部4およびフランジ部5は、二つの基材1,2の少なくとも一方に設けられている。具体的に言えば、図1に示すように、第一基材1には底壁部3が設けられ、第二基材2にはフランジ部5が設けられ、側壁部4が二つの基材1,2に分散して設けられている。
分散配置される側壁部4には、収容空間の側(すなわち内側)に露出する(トレイの外側には露出しない)内側壁部6(第二側壁部)と、トレイの外側(収容空間とは反対側)に露出する外側壁部7との二種が設けられている。
【0018】
[1-2.基本的な構成]
本実施形態の例では、第二基材2に内側壁部6が設けられ、外側壁部7が基材1,2に分散して設けられている。以下、第一基材1に設けられた外側壁部を「第一外側壁部8」(第一側壁部)と称し、第二基材2に設けられた外側壁部を「第二外側壁部9」(第二側壁部)と称する。
すなわち、第一基材1には底壁部3および第一外側壁部8が設けられ、第二基材2にはフランジ部5ならびに内側壁部6および第二外側壁部9が設けられている。
【0019】
第一基材1には、図1図3に示すように、底壁部3が設けられるほか、底壁部3の外周端縁3Dにおける一部に設けられた折立線F1を介して第一外側壁部8が底壁部3と連設されている。すなわち、底壁部3に対して折立線F1(図3参照)で第一外側壁部8が折り立てられている。
第一外側壁部8は、底壁部3の外周端縁3Dのなす八角形の八辺のうち四辺(図3に示す例では前後左右の各辺)から折り立てられている。この第一外側壁部8の上端縁(側壁部4の上端縁4Uの一部)は、フランジ部5の内周端縁5U(図2参照)の一部に突き当てられた状態にされる。
【0020】
第二基材2には、図1図4に示すように、フランジ部5が設けられるほか、フランジ部5の内周端縁5Uに設けられた折倒線F2を介して内側壁部6および第二外側壁部9がフランジ部5と連設されている。すなわち、フランジ部5に対して折倒線F2で内側壁部6および第二外側壁部9が折り倒されている。第二外側壁部9は、第一基材1の第一外側壁部8(図2参照)に対して隣接して設けられる。
なお、図4において網点を付した領域は、第二基材2の資材が抜き落とされた領域である。
【0021】
図2に示すように、内側壁部6は、第一外側壁部8の内側に重ね合わせられ、第一外側壁部8で外側が覆われる。このように第一外側壁部8よりも内側壁部6のほうが小さく設定されることにより、内側壁部6の延在する領域が凸であって内側壁部6の延在していない領域が凹の凹凸が第一外側壁部8の内側(トレイの内表面)に形成される。ただし、内側壁部が第一外側壁部の外側に重ね合わせられてもよい。
ここで例示の内側壁部6には、穴あきの第一内側壁部61(図4では前後の二つ)や山型の第二内側壁部62(図4では左右の二つ)が設けられている。図2には、第二内側壁部62の先端が尖っておらず丸められた形状を例示する。
【0022】
第二外側壁部9は、図4に示すように、フランジ部5の内周端縁5Uのなす八角形の八辺のうち四辺(図4の例では前後左右の各辺を除いた各辺)から折り倒されている。この第二外側壁部9の下端縁は、図2に示すように、底壁部3の外周端縁3Dのうち第一外側壁部8が折り立てられた四辺を除いた一部に突き当てられた状態にされる。
上述のように底壁部3,側壁部4およびフランジ部5が設けられた基材1,2は、それぞれに対応したブランクシート1′,2′から得られる。
【0023】
図3に示すように、第一基材1に折り曲げられる第一ブランクシート1′には、第一基材1に設けられる各部位に対応する構成が設けられている。具体的には、第一基材1に設けられた底壁部3や第一外側壁部8といった各部位の名称のうち「部」を「シート片」と読み替えた構成が設けられ、折立線F1をなす罫線が設けられている。たとえば、第一ブランクシート1′には、底壁部3となる部位の底壁シート片3が設けられている。
【0024】
また、図4に示すように、第二基材2に折り曲げられる第二ブランクシート2′には、第二基材2に設けられる各部位に対応する構成が設けられている。具体的には、第二基材2に設けられたフランジ部5や内側壁部6,第二外側壁部9といった各部位の名称のうち「部」を「シート片」と読み替えた構成が設けられ、折倒線F2をなす罫線が設けられている。たとえば、第二ブランクシート2′には、フランジ部5となる部位のフランジシート片5が設けられている。
【0025】
フランジシート片5に連設された内側壁シート片6および第二外側壁シート片9は、フランジシート片5で囲繞される内側に連設されていることから、複数の内側シート片6,9と称してもよい。
この第二ブランクシート2′には、フランジシート片5′で囲繞される側である内側(内側端縁5Uで囲まれる領域)においてシート片が抜き落とされた状態の空間をなす抜落部X′が設けられている。抜落部X′には、内側シート片6,9で囲まれる領域や第一内側壁部61の穴が含まれる。
【0026】
本実施形態で例示の第二ブランクシート2′では、内側シート片6,9の輪郭上(ただし折倒線F2をなす罫線上を除く)の切込部20′で線状に切り込まれている。そのうえ、切込部20′には内側シート片6,9どうしを切り離す切離部30′が含まれ、切離部30′を介して内側シート片6,9どうしが隣接して配置されている。ここでいう「切り離す」とは切離部30′のみを介して隣接する内側シート片6,9どうしを切り離すことを意味し、ここでいう「隣接」とは他の構成を介することなく隣り合うことを意味する。
図4には、内側壁シート片6と第二外側壁シート片9とを切り離す切離部30′を例示する。
【0027】
ここで例示の切込部20′には、切離部30′のほか、抜落部X′の輪郭上に切り込まれた切端部40′が設けられている。具体的には、切込部20′のうち切離部30′を除いた部位に切端部40′が延在している。切端部40′によって、抜落部X′が囲繞される。この抜落部X′は、第二ブランクシート2′の原紙(第二シート)からシート片(いわば「余剰シート片」)が抜き落とされた領域と換言できる。
上述の基材1,2に底壁部3,側壁部4およびフランジ部5が設けられたトレイには、つぎに説明する付加的な構成が設けられている。
【0028】
[1-3.付加的な構成]
本実施形態のトレイには、図5に示すように、付加的な構成として下掲の脚部10および穴部40が設けられている。
・脚部10:底壁部3よりも下方に突設された脚状の部位
・穴部40:第一基材1において貫通した部位
【0029】
脚部10および穴部40は、第一基材1に設けられ、第一基材1に折り曲げられる第一ブランクシート1′には設けられておらず、第一ブランクシート1′が折り曲げられると出現する部位である。
ここで、脚部10および穴部40を第一基材1に出現させるための第一ブランクシート1′に関する構成を説明する。
【0030】
図3に示すように、第一ブランクシート1′には、底壁シート片3と第一外側壁シート片8のそれぞれとの間の折立線F1が離間して設けられている。互いに離間する折立線F1どうしの間には、底壁シート片3の側に凸の形状で切り込まれたスリットS(一箇所のみに符号を付す)が設けられている。
このような第一ブランクシート1′によれば、折立線F1をなす罫線で底壁シート片3に対して第一外側壁シート片8が折り立てられると、脚部10および穴部40が出現する。
【0031】
詳細に言えば、第一ブランクシート1′において下記の側端縁S1と仮想線S2(一箇所のみに符号を付す)とで区画される部位が脚部10として折り立てられる。
・側端縁S1:スリットSに対して第一外側壁シート片8の側に位置する端縁
・仮想線S2:互いに離間する折立線F1どうしを仮想的に結ぶ直線状の仮想的な線
また、第一ブランクシート1′において、上記の仮想線S2とスリットSに対して底壁シート片3の側に位置する端縁である底端縁S3(一箇所のみに符号を付す)とで区画される領域が穴部40として出現する。すなわち、第一ブランクシート1′において脚部10として折り立てられる領域に穴部40が出現し、穴部40の出現と脚部10の折り立てとが連動している。
【0032】
図2図5に示すように、脚部10は、仮想線S2(図3参照)に対応する端縁(側壁部における下端縁のうち折立線を除く領域の基端縁)から下方に突設されている。穴部40は、底端縁S3(図3参照)に対応する端縁(底壁部の外周端縁のうち折立線が設けられた一部を除く他部)と仮想線S2に対応する端縁(側壁部の下端縁の一部)とで区画されている。
これらの脚部10および穴部40には、つぎに説明する第二基材2の凸部50が付設されている。
【0033】
図5に示すように、第二基材2には、第一内側壁部61から下方に突設されるとともに穴部40に差し込まれた状態の凸部50が設けられている。
凸部50は、第一内側壁部61と一体に設けられ、穴部40に差し込まれた状態であって脚部10に対して内側に重ね合わせられている。この凸部50は、穴部40に差し込まれることから、第二基材2の一部をなす差込部とも言える。
上記のように凸部50が脚部10に対して重ね合わせられ、既述のように第一内側壁部61が第一外側壁部8に対して重ね合わせられている。これらの凸部50および第一内側壁部61は、何れも重ね合わせられていることから、重合部と称してもよい。
【0034】
本実施形態で例示の凸部50は、脚部10よりも下方に突出せずに設けられている。換言すれば、脚部10が凸部50で底上げされることなく(いわば「ゲタ」をはかせることなく)、脚部10の一部に凸部50が重ね合わせられた二重構造をなす。
第二基材2に折り曲げられる第二ブランクシート2′には、図4に示すように、第一内側壁シート片61の先端から凸シート片50(基材の一部をなす差込シート片)が延設されている。この第二ブランクシート2′は、底壁部3に対して脚部10が突出する寸法以下になるように凸シート片50が設計されている。
【0035】
[1-4.製法]
以下、トレイに関する製造方法を説明する。
ここでは、はじめにブランクシート1′,2′を製造する方法を例説し、それからブランクシート1′,2′を用いたトレイを製造する方法を説明する。
第一ブランクシート1′の製造方法では、第一ブランクシート1′の原紙を、第一ブランクシート1′の輪郭(外形)に沿って切り離す工程と、スリットSを切れ込む工程とが実施される。なお、第一ブランクシート1′は、つぎに説明する第二ブランクシート2′の内側シート片6,9のように抜き落とされる領域が存在せず、切り離す工程や切れ込む工程を実施するだけで製造することができる。
【0036】
第二ブランクシート2′の製造方法では、下記の各工程が順次実施される。
・切込工程:第二ブランクシート2′の原紙を切れ込む工程
・抜落工程:切込工程で切れ込まれた原紙からシート片を抜き落とす工程
切込工程では、切れ込みの施されていない平板状の原紙に対して切込部20′を切れ込む。この切込部20′には、切離部30′のほか、切端部40′が含まれる。
【0037】
抜落工程では、切込工程で原紙に切込部20′が切れ込まれた原紙から、切込部20′のうち切端部40′で囲繞された余剰シート片を抜き落とす。
切込部20′の切れ込み前の原紙を「第一シート」とし、切込部20′が切れ込まれた原紙を「第二シート」とすれば、切込工程では第一シートが切れ込まれ、抜落工程では第二シートから余剰シート片が抜き落とされる。
【0038】
上記のようにして製造された第二ブランクシート2′を折り曲げることで、第二基材2が得られる。
得られた第二基材2と第一基材1とを組み合わせる組合工程を実施すれば、トレイを製造することができる。すなわち、フィルムの内装されていない紙製トレイを製造する方法では、第二ブランクシート2′の製造方法で製造された第二ブランクシート2′から第二基材2を準備するとともに第一基材1を準備する前工程と、これらの基材1,2を組み合わせる組合工程とが少なくとも実施される。
【0039】
つぎに、フィルム付きの紙製トレイを製造する方法を説明する。
ここで例示するトレイの製造方法では、下掲の各工程が順次実施される。
・前工程:ブランクシート1′,2′を準備する工程
・折工程:前工程で準備されたブランクシート1′,2′を折り曲げる工程
・差込工程:折工程で折り曲げられた第二ブランクシート2′の一部を差し込む工程
・内装工程:差込工程で得られた基材1,2にフィルム90を内装する工程
【0040】
前工程では、第一ブランクシート1′を準備する第一前工程と、第二ブランクシート2′を準備する第二前工程とが実施される。第二前工程では、底壁部3に対して脚部10が突出する寸法以下になるように凸シート片50が設計された第二ブランクシート2′を準備する。第一前工程および第二前工程は、任意の順序で実施することができ、並行して実施してもよい。例えば、ブランクシート1′,2′を折り曲げながら差し込むことで、折工程と差込工程とを並行して実施することができる。
【0041】
折工程では、第一前工程で準備された第一ブランクシート1′の底壁シート片3に対して第一外側壁シート片8を折立線F1で折り立てて、底壁部3よりも下方に脚部10を突出させて折り出すとともに、穴部40を出現させる。
差込工程では、折工程で出現させられた穴部40に対して第二ブランクシート2′の凸シート片50を差し込む。
折工程や差込工程によって、ブランクシート1′,2′どうしが組み合わせられる。そのため、「折工程」や「差込工程」を「組合工程」と称してもよい。
【0042】
内装工程では、ブランクシート1′,2′から折り曲げられた基材1,2を得たうえで、基材1,2にフィルム90を密着させる。基材1,2にフィルム90を密着させる手法としては、任意の公知手法を用いることができる。たとえば、フィルム90を基材1,2に対して吸い付ける吸着や吸引といった手法が挙げられ、フィルム90を基材1,2に対して吸い付けるだけでなく圧縮空気などで押し付ける圧空などの手法も挙げられる。
【0043】
なお、内装工程でフィルム90が基材1,2に密着されると、凸シート片50で穴部40が閉塞されない限り、穴部40にフィルム90のみが設けられた単層構造の部分(いわば窓部)が設けられる。
トレイにおいて単層構造の部分以外には、フィルム90に基材1,2が内装された複層構造が設けられる。
【0044】
[1-5.材料]
以下、トレイに用いられる材料について付記しておく。
基材1,2やブランクシート1′,2′に用いられる紙材料としては、一般的に用いられている紙であれば特に限定されず、植物由来のパルプを主成分とする紙であることが好ましく、木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。
具体的には、クラフト紙,上質紙,白板紙,紙器用原紙,ミルクカートン原紙,カップ原紙,ライナ紙,塗工紙,片艶紙,グラシン紙,グラファン紙などが挙げられる。これらのなかでもクラフト紙,上質紙,白板紙,紙器用原紙,カップ原紙,片艶紙が好ましい。剛性の面から、白板紙の中では高級板紙,特殊板紙,カップ原紙,クラフト紙がより好ましい。クラフト紙は、晒クラフト紙,未晒クラフト紙および片艶晒クラフト紙が挙げられ、印刷適性や衛生面から、晒クラフト紙および片艶晒クラフト紙が好ましい。
また、ライナと中芯とライナの三層で構成された段ボールを使用してもよく、特に強度と成形加工性の両立の観点から、段ボールの厚みの小さいマイクロフルートが好ましい。
【0045】
紙には、種々の添加剤が含有されてよく、内添サイズ剤としては、ロジン系,アルキルケテンダイマー系,アルケニル無水コハク酸系,スチレン-アクリル系,高級脂肪酸系,石油樹脂系などが挙げられる。内添サイズ剤以外に、公知のその他の内添剤を添加してもよい。内添剤としては、填料,紙力増強剤,歩留り向上剤,pH調整剤,濾水性向上剤,耐水化剤,柔軟剤,帯電防止剤,消泡剤,スライムコントロール剤,染料・顔料などが挙げられる。
【0046】
填料としては、二酸化チタン,カオリン,タルク,炭酸カルシウムなどが挙げられる。
紙の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。
抄紙機としては、長網抄紙機,ギャップフォーマー型抄紙機,円網式抄紙機,短網式抄紙機などが挙げられる。
抄紙機によって形成された紙層は、たとえば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
上記のようにして得られた紙に、カレンダーによる表面処理を施して厚さやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
なお、基材1,2やブランクシート1′,2′に用いる材料は、上記のものに限らず種々の紙製資材を用いることができる。
【0047】
フィルム90に用いる材料には、付与する機能に応じた性質を有するシート材が用いられる。たとえば、基材1,2にフィルム90を内装させる際にフィルム90が伸長することを加味した延伸性や、バリア性、耐水性,耐熱性,熱融着性などの機能をもつプラスチックシートがフィルムに採用される。なお、バリア性とは、主に酸素および水蒸気から選択される少なくとも1つに対するガスバリア性を意味し、他のガスに対してもバリア性を有していてもよい。本実施形態のトレイは、少なくとも水蒸気バリア性を有することが好ましく、これに加え、酸素バリア性を有することも好ましい。
フィルム90に用いるシートは、延伸性やバリア性を含む樹脂積層体であることが好ましい。樹脂積層体は、中間層にバリア層を含み、基材1,2の内面に接する層は、基材1,2にヒートシールされることが好ましいため、熱可塑性樹脂からなる層を含む樹脂積層体であることがより好ましい。すなわち、樹脂積層体は、中間層にバリア層を含み、基材1,2の内面に接する層に熱可塑性樹脂からなる層を含むフィルム層であることがより好ましい。なお、樹脂積層体は、基材1,2の内面側の表面に接着層を設けてもよい。
【0048】
上記のバリア層は、樹脂に限られず、金属箔等でもよいが、紙基材層の印刷面を視認できるようにし、意匠性を高める観点から、樹脂から構成されることが好ましく、透明の樹脂から構成されることがより好ましい。
バリア層を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコール,エチレン-ビニルアルコール共重合体およびポリ塩化ビニリデン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つが好ましく、ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一つがより好ましい。
ポリアミド系樹脂としては、芳香族ポリアミドが好ましく、ポリアミドMXD6がより好ましい。
【0049】
樹脂積層体で基材1,2の内面に接する層を構成する樹脂としては、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂,ナイロン6などの脂肪族ポリアミド系樹脂,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂が挙げられる。
トレイにおいて収容空間側(すなわち内側)を向いた層は、たとえばポリプロピレン(PP)樹脂、具体的には、ホモポリプロピレン,ランダムポリプピレン共重合体,ブロックポリプロピレン共重合体であり、特に、ランダムポリプロピレン共重合体を用いるのが好ましい。
【0050】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン69,ナイロン610,ナイロン612,ナイロン11,ナイロン12などの脂肪族ポリアミド重合体,ナイロン6-66(ナイロン6とナイロン66の共重合体を表す。以下同様に表記する),ナイロン6-10,ナイロン6-12,ナイロン6-69,ナイロン6-610,ナイロン66-69などの脂肪族ポリアミド共重合体を例示することができる。なかでも、脂肪族ポリアミド共重合体が好ましく、特にナイロン6-66,ナイロン6-10またはナイロン6-12が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0051】
ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂,ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂,プロピレン-エチレン共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体,アイオノマー樹脂,エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体,エチレン-(メタ)アクリル酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体などの各種共重合体が挙げられる。好ましくは、ポリエチレン系樹脂であり、特に好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレンである。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0052】
ポリエステル系樹脂としては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート/イソフタレート)、ポリ(エチレングリ
コール/シクロへキサンジメタノール/テレフタレート)などが代表格としてあげられ、更にこれらの重合体に共重合成分としてエチレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオールなどのジオール類、あるいはイソフタール類、ベンゾフェノンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、プロピレンビス(フェニルカルボン酸)、ジフェニルオキサイドジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、サバチン酸、ジエチルコハク酸などのジカルボン酸を含有せしめたものが使用できる。
フィルム90に用いるシートは、上記の構成の他、種々を組み合わせた多層構成としてもよい。
【0053】
また、フィルム90に用いるシートは、環境負荷低減の観点から、ポリ乳酸(PLA),ポリグリコール酸(PGA),ポリブチレンサクシネート(PBS)などの生分解性樹脂を用いることも好ましい。
フィルム90に用いるシート(すなわちフィルム層)の厚さは、好ましくは10~300μmであり、より好ましくは15~200μmであり、更に好ましくは20~100μmであり、特に好ましくは30~50μmである。
フィルム90に用いるシートは、それぞれドライラミネート法により積層してもよいが、同時に溶融押出しする、共押出し法により形成することが好ましい。
なお、フィルム90は、基材1,2の内側を向いた面に設けられる構造に限らず、基材1,2の外側を向いた面に設けてもよい。
【0054】
[2.作用および効果]
本実施形態は、上述の構成を備えるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
本項目[2]では、第二ブランクシート2′に関する第一の作用および効果を小項目[2-1]で述べ、トレイの脚部10や穴部40に関する第二の作用および効果を小項目[2-2]で述べ、基材1,2の側壁部4に関する第三の作用および効果を小項目[2-3]で述べる。
【0055】
[2-1.第一の作用および効果]
(1A)本実施形態に係る第二ブランクシート2′によれば、周状に連続するフランジシート片5のほかに、フランジシート片5で囲繞される内側に複数の内側シート片6,9が連設されている。そのため、フランジシート片のみが設けられた第二ブランクシートと比較して、第二ブランクシート2′の資材効率を高めることができる。
【0056】
仮に、第二ブランクシートにフランジシート片のみ設けられる場合は、フランジシート片の部分が細長く延在するため、折れや切れなどを招くおそれがある。これに対し、本実施形態の第二ブランクシート2′には、フランジシート片5に加えて内側シート片6,9も設けられているため、折れや切れの発生を抑制できる。よって、トレイの生産効率を高めることができる。
さらに、第二ブランクシート2′のフランジシート片5と内側シート片6,9との間の折倒線F2によれば、第一基材1に対して第二基材2が位置決めされ(言わば第一基材1に対して第二基材2の相対的な移動が制限されることで固定される)。この点からも、トレイの生産性を高めることができる。
【0057】
また、第二ブランクシート2′には、内側シート片6,9の輪郭上に切り込まれた線状の切込部20′に内側シート片6,9どうしを切り離す切離部30′が設けられている。この切離部30′を介して内側シート片6,9どうしが隣接して配置されていることから、内側シート片6,9どうしの間に抜き落とすべき余剰領域が存在せず、ブランクシートに切り抜かれる原紙(資材)から抜き落とされる余剰シート片(換言すれば余剰領域)の形状を簡素化できる。したがって、第二ブランクシート2′に切り抜かれる原紙から余剰シート片を抜き落とす作業性の低下を抑制することができる。
よって、第二ブランクシート2′の資材効率と第二ブランクシート2′に切り抜かれる原紙の抜き落とし作業性の向上とを両立することができる。
【0058】
(2A)本実施形態に係る切込部20′には、内側壁シート片6と第二外側壁シート片9とを切り離す切離部30′が設けられていることから、フランジシート片5′から延出している二種の内側シート片6,9が切離部30′で切り離される。よって、第二ブランクシート2′において外周側(フランジシート片5に近い側)に余剰シート片が生じるのを抑えられる。この点からも、第二ブランクシート2′に切り抜かれる原紙(資材)の抜き落とし作業性の向上に資する。
【0059】
(3A)ここで例示の切込部20′には、抜落部X′の輪郭上に切り込まれた切端部40′が設けられ、第二ブランクシート2′には抜落部X′が設けられている。このことから、第二ブランクシート2′の原紙には、抜き落される余剰シート片が必然的に存在する。この余剰シート片の抜き落とし作業性は、上記の(1A)や(2A)のようにして高められる。
(4A)なお、第二ブランクシート2′を用いた紙製トレイによれば、上記の(1A)~(3A)と同様の作用および効果を得ることができる。
【0060】
(5A)従来の第一ブランクシートのように、第一外側壁シート片だけでなく第二外側壁シート片も延出して設けられている構成では、第一外側壁シート片と第二外側壁シート片との間に底壁シート片へ向けて鋭角に尖ったシート片を切り離すことになる。このようなシート片は、鋭角に尖っている部分が切り離されずに残るおそれがあり、切り離し作業性の低下を招くおそれがある。
これに対し、第二ブランクシート2′に第二外側壁シート片9が設けられていることから、第一ブランクシート1′には、第二外側壁シート片9が設けられておらず、第一外側壁シート片8が設けられている。そのため、従来の第一ブランクシートに設けられていた第二外側壁シート片が第一ブランクシート1′から省略されている。よって、第一ブランクシート1′の原紙を切り離す作業性を確保することができる。
【0061】
(6A)そのほか、第二内側壁部62の先端が尖っておらず丸められた形状であることから、先端が尖った形状の第二内側壁部と比較して、抜落部X′の抜き落とし作業性の向上に資する。
【0062】
(7A)第二ブランクシート2′を製造する方法では、切れ込みの施されていない平板状の原紙に対して切離部30′や切端部40′といった切込部20′を切れ込む切込工程を実施する。そして、切込工程で原紙に切込部20′が切れ込まれた原紙から、切込部20′のうち切端部40′で囲繞された余剰シート片を抜き落とす抜落工程が実施される。
本製法によれば、切込工程において内側シート片6,9どうしを切り離す切離部30′が切れ込まれることから、第二ブランクシート2′に切り抜かれる原紙(資材)の抜き落とし作業性を向上させることができる。切込部20′の切り込みによって、フランジシート片5′から延出する二種の内側シート片6,9が切り出されることから、第二ブランクシート2′の資材効率を高めることもできる。
(8A)なお、第二ブランクシート2′の製造方法を用いたトレイの製造方法においても、上記の(7A)と同様の作用および効果を得ることができる。
【0063】
[2-2.第二の作用および効果]
(1B)本実施形態に係るトレイの製造方法によれば、差込工程によって凸シート片50が穴部40に差し込まれたうえで、基材1,2にフィルム90が内装工程で吸着させられる。そのため、穴部に何も差し込まれずに製造されたトレイと比較して、穴部40においてフィルム90のみが設けられた単層構造の領域を小さくすることができる。
よって、穴部40のフィルム90(すなわち単層構造)による不具合を抑制したトレイを製造することができる。
【0064】
なお、トレイの穴部40によれば、中身の視認性確保や脚部10の付設といったユーザビリティを確保することができる。トレイが電子レンジで加熱されることを考えれば、穴部40から適度に放熱されることにより、内容物の過熱を抑制することが可能である。そのほか、穴部40によってフィルム90の基材1,2への吸着性を高めることができる。また、脚部10は、トレイを持ち運ぶユーザの手を添える好適な箇所として利用することもできる。
【0065】
(2B)本トレイの製造方法によれば、底壁部3に対して脚部10が突出する寸法以下になるように凸シート片50が設計された第二ブランクシート2′が準備される。これより、脚部10を凸部50で補強することができる。このようにしてトレイの強度を高めることにより、穴部40のフィルム90(すなわち単層構造)による不具合の一例として挙げられる強度低下を抑制可能である。
【0066】
(3B)本トレイの製造方法によれば、穴部40が設けられる第一基材1の第一ブランクシート1′と、穴部40に差し込まれる凸シート片50が設けられる第二ブランクシート2′とのそれぞれが前工程で準備される。よって、穴部40に凸シート片50を差し込むため前処理を簡略化でき、凸シート片50をはじめとした各部位の設計自由度を確保するのに資する。
【0067】
(4B)本実施形態の係るトレイの基材構造では、第一外側壁部8に第一内側壁部61が重ね合わせられ、脚部10に重ね合わせられた凸部50が穴部40に差し込まれている。この凸部50によれば、穴部に何も差し込まれていないトレイと比較して、穴部40においてフィルム90のみが設けられた単層構造の領域を小さくすることができる。
よって、穴部40のフィルム90(すなわち単層構造)による不具合を抑制することができる。
【0068】
(5B)さらに、第一内側壁部61および凸部50が一体に設けられている重合部によれば、第一内側壁部61の重ね合わせられた第一外側壁部8や凸部50の重ね合わせられた脚部10を補強することができる。このようにしてトレイの強度を高めることにより、穴部40のフィルム90(すなわち単層構造)による不具合の一例として挙げられる強度低下の抑制に資する。
なお、凸部50が脚部10よりも下方に突出せずに設けられていることから、脚部10を凸部50で補強することができる。
【0069】
(6B)トレイに二つの基材1,2が設けられていることから、上記の(3B)と同様に、凸部50をはじめとした各部位の設計自由度を確保するのに資する。
(7B)なお、本基材構造の基材1,2に対して吸着された状態で内装されたフィルム90を備えたフィルム付き紙製トレイによっても、上記の(4A)や(5A)と同様の作用および効果を得ることができる。
【0070】
[2-3.第三の作用および効果]
(1C)本実施形態に係るトレイによれば、第一基材1には第一外側壁部8が設けられ、第二基材2には周状に連続するフランジ部5のほか第二外側壁部9が設けられている。
一方、周状に連続するフランジに対応するシート片のみが設けられたブランクシートでは、シート片で囲まれた全領域が抜き落とされるため、ブランクシートの資材効率が十分ではない。
【0071】
これに対し、第二基材2において、フランジ部5だけでなく第二外側壁部9が設けられている。そのため、第二基材2に折り曲げられる第二ブランクシート2′で抜き落とされた領域を小さくすることができる。
よって、第二ブランクシート2′から組み立てられる紙製トレイの資材効率を確保することができ、上述の(1A)と同様の効果を得ることもできる。
【0072】
(2C)この第二基材2には、フランジ部5のほかに第二外側壁部9が設けられるだけでなく内側壁部6も設けられている。よって、第二ブランクシート2′の資材効率を高めることができる。第二基材2の内側壁部6は、第一基材1の第一外側壁部8に対して重ね合わせられることから、第一外側壁部8を補強することができ、トレイの強度向上に資する。
(3C)さらに、内側壁部6によって形成された凹凸に沿ってフィルム90が内装されることにより、フィルム90の密着性を向上することができる。また、第二基材2に内側壁部6が設けられ、この内側壁部6と第一基材1とが重ね合わせられたうえで、フィルム90で密着させるため、第一基材1と第二基材2との密着性を高めることができる。
【0073】
[II.第二実施形態]
つぎに、第二実施形態のトレイに関して説明する。
第二実施形態は、第一基材のスリットの長さ,第二基材の内側壁シート片や第二外側壁シート片の形状,第二基材の凸部が脚部から突き出す点が第一実施形態と相違する。なお、ここで説明する点を除いては、第一実施形態と同様の構成となっている。これらの構成については、同様の符号を付し、各部の説明を省略する。
【0074】
[1.構成]
図6に示すように、第二実施形態の第一基材1Aには、第一実施形態よりもやや短く切り込まれたスリットSが設けられている。
図7に示すように、第二実施形態の第二基材2Aには、四つの内側壁部6Aが設けられている。ここで例示の内側壁部6Aには、第一実施形態で上述の第一内側壁部61のように穴あきのものが用いられ、凸部50Aが付設されていない第一内側壁部61A(図7では前後の二つ)と、凸部50Aが付設された第二内側壁部62A(図7では左右の二つ)とが設けられている。
【0075】
本実施形態の凸部50Aは、図8に示すように、第二内側壁部62Aの先端から突設され、第一実施形態と同様に設けられた脚部10よりも下方に突出して設けられている。換言すれば、脚部10が凸部50Aで底上げされ(いわば「ゲタ」をはかせられ)、脚部10から突き出す形態で凸部50Aが重ね合わせられた二重構造をなす。
上述のようなトレイを製造する方法では、凸部50Aに対応する凸シート片(差込シート片)が底壁部3に対して脚部10が突出する寸法よりも長く突出するように設計された第二ブランクシートが前工程において準備される。
【0076】
[2.作用および効果]
本実施形態は、上述の構成を備えるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
(1D)脚部10よりも下方に突出して凸部50Aが設けられていることから、脚部10を凸部50Aで底上げすることができ、トレイの載置面に対してより上方に底壁部3を離間させることができる。
【0077】
更に言えば、第二内側壁部62の先端から突設される凸部50Aの寸法を変更することで、トレイの載置面に対して上方に底壁部3を離間させる寸法を調整することができる。凸部50Aが第一内側壁部61から突設された寸法(突出寸法)の異なる複数の第二基材2Aを用意すれば、共通の第一基材1Aに対して組み合わせる第二基材2Aごとにトレイの底上げ高さを設定することができる。
【0078】
(2D)本実施形態に係るトレイの製造方法によれば、前工程において、底壁部3に対して脚部が突出する寸法よりも長く突出するように凸シート片50Aが設計された第二ブランクシート2A′が準備される。よって、上記の(1D)と同様の作用および効果が得られるトレイを製造可能である。
(3D)なお、第二実施形態のトレイに関する構成のうち第一実施形態と共通の構成によれば、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0079】
[III.第三実施形態]
つぎに、第三実施形態のトレイに関して説明する。
第三実施形態は、第一基材にスリットが設けられていない点,第二基材に凸部が設けられていない点が第一実施形態および第二実施形態と相違する。なお、ここで説明する点を除いては、第一実施形態,第二実施形態と同様の構成となっている。これらの構成については、同様の符号を付し、各部の説明を省略する。
【0080】
[1.構成]
図9に示すように、第三実施形態の第一基材1Bには、第一実施形態や第二実施形態のように切り込まれたスリットSが設けられておらず、底壁シート片3と第一外側壁シート片8のそれぞれとの間の折立線F1が連続して設けられている。この第一基材1Bには、上述の脚部10や穴部40は設けられておらず、トレイの全域に複層構造が設けられる。
図10に示すように、第三実施形態の第二基材2Bは、第二実施形態の第二基材2Aから凸部50Aを除いた構成をなす。
【0081】
[2.作用および効果]
本実施形態のトレイは、上述のように脚部10,穴部40,凸部50といった付加的な構造が設けられていないことから、構造や製造工程を簡素化することができる。脚部10の折り立てに連動して出現する穴部40による不具合も原理的に回避できる。
なお、第三実施形態のトレイに関する構成のうち第一実施形態や第二実施形態と共通の構成によれば、第一実施形態や第二実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0082】
[IV.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0083】
たとえば、第二ブランクシートにおいてフランジシート片に連設される内側シート片としてさまざまな形状を採用することができ、内側シート片の形状に応じて種々の切離部が設けられる。
具体例を挙げれば、内側壁シート片と凸シート片とが切離部(第一切離部)を介して隣接する第一の形態や内側壁シート片どうしが切離部(第二切離部)を介して隣接する第二の形態をなす形状の内側シート片を採用してもよい。第一の形態をなす形状の内側シート片が採用された場合には、内側壁シート片と凸シート片とを切り離す切離部が設けられる。第二の形態をなす形状の内側シート片が採用された場合には、内側壁シート片どうしを切り離す切離部が設けられる。これらの切離部によれば、フランジシート片で囲繞される領域のうち中央でシート片どうしを切り離すことができる。このようにして第二ブランクシートには分断された複数の抜落部が設けられうる。そのため、切り抜きにくい複雑な輪郭形状を有する一つの抜落部に抜き落とす作業に照らして、第二ブランクシートに切り抜かれる原紙から余剰シート片を抜き落とす作業性の低下を抑制することができる。
【0084】
また、第二ブランクシートの切込部には、少なくとも切離部が設けられていればよく、切端部は設けられていなくてもよい。すなわち、第二ブランクシートのフランジシート片に対して内側に抜落部が設けられることなく、フランジシート片の内側が内側シート片で埋め尽くされていてもよい。このような第二ブランクシートは、第二ブランクシートの原紙を切れ込むだけで(原理的に余剰シート片を抜き落とすことなく)得ることができる。よって、第二ブランクシート2′に切り抜かれる原紙(資材)の抜き落とし作業を回避することができる。
【0085】
そのほか、トレイの製造方法において、折工程で穴部に差し込まれた凸シート片を底壁シート片に沿って折り倒す折倒工程を実施してもよい。折倒工程を含む方法で製造されたトレイの凸部は、底壁部に沿って折り倒された状態であって、底壁部に対して下側(収容空間と反対側)に重ね合わせられる。このようなトレイによれば、折り倒された凸部によって穴部が閉塞され、穴部のフィルム(すなわち単層構造)による不具合が回避される。
【0086】
なお、トレイには少なくとも基材が設けられていればよく、基材の各部どうしを貼合する糊代片など基材に設ければ、フィルムはトレイに必須の構成ではない。また、トレイの基材は、二つが組み合わせられた構成に限らず、三つ以上が組み合わせられていてもよく、一つだけであってもよい。同様に、ブランクシートの数も任意である。
トレイに一つのみの基材が設けられる場合には、一つの基材に底壁部,側壁部,フランジ部などの各部位が設けられる。このような一つの基材についての具体的な一例を挙げれば、たとう箱のように底壁部に対して外側壁部,フランジ部,内側壁部,凸部がこの順に連設され、フランジ部で折り返されることにより、外側壁部に内側壁部が重ね合わせられ、凸部が穴部に差し込まれる。
【0087】
第一実施形態のように凸部が脚部よりも短い形態や第二実施形態のように凸部が脚部よりも長い形態に限らず、凸部と脚部とが同じ長さの形態であってもよい。すなわち、底壁部に対して脚部10が突出する寸法と等しい寸法で突出する凸部が設けられていてもよい。
あるいは、第二基材から内側壁部や凸部を省略してもよい。すなわち、第二ブランクシートから内側壁シート片や凸シート片を省略してもよい。この場合には、外側に露出する側壁部のみがトレイに設けられるため、内側壁部による凹凸が収容空間を向く内面に形成されず、トレイの内面では平面が突き合わせられる。このような内面は、内側壁部が第一外側壁部の外側に重ね合わせられた形態によっても得られる。凹凸の形成されていない内面をもつトレイの収容空間に食品が封入されることを想定すれば、箸やフォークなどが内面に引っ掛かるのを抑制でき、トレイのユーザビリティ向上に資する。
【符号の説明】
【0088】
1 第一基材
1′ 第一ブランクシート
2 第二基材
2′ 第二ブランクシート
3 底壁部,底壁シート片
3D 外周端縁
4 側壁部,側壁シート片
4D 下端縁
4U 上端縁
5 フランジ部,フランジシート片
5U 内周端縁
6 内側壁部
7 外側壁部
8 第一外側壁部(第一側壁部)
9 第二外側壁部(第二側壁部)
10 脚部
20′ 切込部
30′ 切離部
40 穴部
40′ 切端部
50 凸部,凸シート片(差込シート片)
61 第一内側壁部
62 第二内側壁部
80 開口
90 フィルム
F1 折立線
F2 折倒線
S スリット
S1 側端縁
S2 仮想線
S3 底端縁
X′ 抜落部(余剰シート片)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10