(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132504
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】活物質、電極、二次電池、電池パック、及び車両
(51)【国際特許分類】
H01M 4/485 20100101AFI20240920BHJP
C01G 39/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M4/485
C01G39/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043293
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 一樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】植田 格弥
(72)【発明者】
【氏名】村田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】高見 則雄
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】優れた充放電効率およびサイクル寿命性能を示す二次電池を実現できる活物質を提供すること。
【解決手段】実施形態によると、単斜晶構造を有するニオブチタン酸化物相を含む活物質が提供される。ニオブチタン酸化物相は、その結晶格子において、頂点共有のみで構成された(Nb, Ti)O
6八面体サイトにおける結合角歪が0.8 σ
2 / deg
2以下である八面体サイトを、単位格子中に少なくとも1つ含む結晶構造を有する。ニオブチタン酸化物相の結晶子径は、85nm以上130nm以下の範囲内にある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単斜晶構造を有するニオブチタン酸化物相を含み、前記ニオブチタン酸化物相はその結晶格子において、頂点共有のみで構成された(Nb, Ti)O6八面体サイトにおける結合角歪が0.8 σ2 / deg2以下である八面体サイトを、単位格子中に少なくとも1つ含む結晶構造を有し、前記ニオブチタン酸化物相の結晶子径が85nm以上130nm以下の範囲内にある、活物質。
【請求項2】
前記ニオブチタン酸化物相の一次粒子を含み、前記一次粒子の平均粒子径D50は0.1μm以上10μm以下の範囲内にある、請求項1に記載の活物質。
【請求項3】
前記ニオブチタン酸化物相は、Nb2TiO7相およびNb10Ti2O29相からなる群より選択される少なくとも1つの相を含む、請求項1又は2に記載の活物質。
【請求項4】
前記少なくとも1つの相は、K,Zr,Sn,V,Ta,Mo,W,P,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni及びAlからなる群より選択される少なくとも1つを含有する、請求項3に記載の活物質。
【請求項5】
前記ニオブチタン酸化物相は空間群C2/mに属する単斜晶型結晶構造を有し、前記単斜晶型結晶構造にてInternational Tables Volume Aの対称性に記載された2aサイトにおける結合角歪が0.8 σ2 / deg2以下である、請求項1又は2に記載の活物質。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の活物質を含む電極。
【請求項7】
前記電極は、前記活物質を含む活物質含有層を含む請求項6に記載の電極。
【請求項8】
正極と、
負極と、
電解質と
を具備する二次電池であって、
前記負極は、請求項6に記載の電極である二次電池。
【請求項9】
請求項8に記載の二次電池を具備する電池パック。
【請求項10】
通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する請求項9に記載の電池パック。
【請求項11】
複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている請求項9に記載の電池パック。
【請求項12】
請求項9に記載の電池パックを搭載した車両。
【請求項13】
前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む請求項12に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、活物質、電極、二次電池、電池パック、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度電池として、リチウムイオン二次電池のような非水電解質二次電池などの二次電池の研究開発が盛んに進められている。非水電解質二次電池などの二次電池は、ハイブリッド電気自動車や電気自動車等の車両用、携帯電話基地局の無停電電源用などの電源として期待されている。そのため、二次電池は、高エネルギー密度に加えて、急速充放電性能、長期信頼性のような他の性能にも優れていることも要求されている。例えば、急速充放電が可能な二次電池は、充電時間が大幅に短縮されるだけでなく、ハイブリッド電気自動車等の車両の動力性能の向上や動力の回生エネルギーの効率的な回収も可能である。
【0003】
急速充放電を可能にするためには、電子及びリチウムイオンが正極と負極との間を速やかに移動できることが必要である。しかしながら、カーボン系負極を用いた電池は、急速充放電を繰り返すと、電極上に金属リチウムのデンドライト析出が生じ、内部短絡による発熱や発火の虞があった。
【0004】
そこで、炭素質物の代わりに金属複合酸化物を負極に用いた電池が開発された。中でも、チタン酸化物を負極に用いた電池は、安定的な急速充放電が可能であり、カーボン系負極を用いた場合に比べて寿命も長いという特性を有する。
【0005】
しかしながら、チタン酸化物は炭素質物に比べて金属リチウムに対する電位が高い、すなわち貴である。その上、チタン酸化物は、重量あたりの容量が低い。このため、チタン酸化物を負極に用いた電池は、エネルギー密度が低いという問題がある。
【0006】
例えば、チタン酸化物の電極電位は、金属リチウム基準で約1.5V(vs.Li/Li+)であり、カーボン系負極の電位に比べて高い(貴である)。チタン酸化物の電位は、リチウムを電気化学的に挿入脱離する際のTi3+とTi4+の間での酸化還元反応に起因するものであるため、電気化学的に制約されている。また、1.5V(vs.Li/Li+)程度の高い電極電位においてリチウムイオンの急速充放電が安定的に行えるという事実もある。従って、エネルギー密度を向上させるために電極電位を低下させることは従来困難であった。
【0007】
一方、単位重量あたりの容量については、二酸化チタン(アナターゼ構造)の理論容量は165mAh/g程度であり、Li4Ti5O12(TLO)のようなスピネル型リチウムチタン複合酸化物の理論容量も180mAh/g程度である。一方、一般的な黒鉛系電極材料の理論容量は385mAh/g以上である。このように、チタン酸化物の容量密度はカーボン系負極のものと比較して著しく低い。これは、チタン酸化物の結晶構造中に、リチウムを吸蔵するサイトが少ないことや、構造中でリチウムが安定化し易いため、実質的な容量が低下することによるものである。
【0008】
以上に鑑みて、Ti及びNbを含む新たな電極材料が検討されている。このようなニオブチタン酸化物材料は、高い充放電容量を有すると期待されている。特に、TiNb2O7で表される酸化物(TNO)は380mAh/gを超える高い理論容量を有する。それ故、ニオブチタン酸化物は、Li4Ti5O12に代わる高容量材料として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】International Tables for Crystallography (2006). 1st online ed. Chester: International Union of Crystallography.
【非特許文献2】「粉末X線解析の実際」初版(2002年)日本分析化学会X線分析研究懇談会編 中井泉、泉富士夫編著(朝倉書店)
【非特許文献3】Jian-Tao Han, Yun-Hui Huang and John B. Goodenough, Chem. Mater. 2011, 23, 8, 2027-2029
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
優れた充放電効率およびサイクル寿命性能を示す二次電池を実現できる活物質および電極、優れた充放電効率およびサイクル寿命性能を示す二次電池及び電池パック、並びに、この電池パックを備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態によると、単斜晶構造を有するニオブチタン酸化物相を含む活物質が提供される。ニオブチタン酸化物相は、その結晶格子において、頂点共有のみで構成された(Nb, Ti)O6八面体サイトにおける結合角歪が0.8 σ2 / deg2以下である八面体サイトを、単位格子中に少なくとも1つ含む結晶構造を有する。ニオブチタン酸化物相の結晶子径は、85nm以上130nm以下の範囲内にある。
【0013】
他の実施形態によると、上記実施形態に係る活物質を含む電極が提供される。
【0014】
さらに他の実施形態によると、正極と負極と電解質とを具備する二次電池が提供される。負極は、上記実施形態に係る電極である。
【0015】
またさらに他の実施形態によると、二次電池を具備する電池パックが提供される。電池パックの二次電池は、上記実施形態に係る二次電池を含む。
【0016】
ことさら他の実施形態によると、上記実施形態に係る電池パックが搭載されている車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ニオブチタン酸化物Nb
2TiO
7の結晶構造を示す模式図。
【
図2】
図1の結晶構造を他の方向から観察した場合を示す模式図。
【
図4】実施例に係る活物質の一例の放射光X線回折パターンを用いたリートベルト解析の結果を示すグラフ。
【
図5】実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図。
【
図6】
図5に示す二次電池のA部を拡大した断面図。
【
図7】実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図。
【
図8】
図7に示す二次電池のB部を拡大した断面図。
【
図9】実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図。
【
図10】実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図。
【
図11】
図10に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図。
【
図12】実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図。
【
図13】実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
TNOは、TLOと比べて充放電時の電位曲線の傾きが大きい。TNOを負極に用いた電池では、僅かながらSOCズレ(shift in operation window)によって正極電位が上昇し、サイクル寿命が急激に劣化する傾向が確認されている。TNO粒子内部のLiイオンの挿入脱離がスムーズに行われず、格子中にLiが残留して充放電効率が低下することに起因して、SOCズレが生じる。
【0019】
以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0020】
(第1の実施形態)
第1の実施形態によると、活物質が提供される。この活物質は、単斜晶型結晶構造を有するニオブチタン酸化物相を含む。係る結晶構造では、その結晶格子において、頂点共有のみで構成されたNbTiO6/TiO6八面体サイトにおける結合角歪が0.8 σ2 / deg2以下である八面体サイトを、単位格子中に少なくとも1つ含む。ニオブチタン酸化物相は、85nm以上130nm以下の結晶子径を有する。上記結晶構造は、Nb2TiO7型の結晶構造またはNb10Ti2O29型の結晶構造に代表される。言い換えると、上記ニオブチタン酸化物相の代表的な例は、Nb2TiO7相およびNb10Ti2O29相からなる群より選択される少なくとも1つの相を含む。
【0021】
係る活物質は、TNO粒子中のLiイオンの挿入脱離がスムーズに行われるよう、(Nb, Ti)O6八面体歪みに着目した結果、到達せしめたものである。従来の合成粉砕手法では、頂点共有する八面体の結合角歪み(結合角分散)が0.8よりも大きくなるため、格子中のLiイオンの拡散が阻害され充放電効率が低くなっている可能性が示唆された。そこで、薄膜旋回型高速ミキサを用いて粉砕時の粒子表面へのダメージを最小限にしたところ、結合角歪が大幅に緩和され、充放電効率およびセル寿命伸長が可能となった。
【0022】
また、合成により得られるニオブチタン酸化物相において、結晶子径を85nm以上130nm以下とする。このような範囲内の結晶子径を有するニオブチタン酸化物相では、充放電中に結晶格子中のLiイオンの移動が容易となり、且つ、サイクル寿命に優れた活物質を提供できる。結晶子径が85nmより小さいと、容量およびサイクル寿命が低くなる。結晶子径が130nmより大きいと、粒子径も粗大となり過ぎてリチウムイオンの拡散距離が長くなるため、レート性能が悪くなる。
【0023】
Nb2TiO7相について説明する。Nb2TiO7相は、例えば、一般式Nb2-xM1xTi1-yM2yO7で表すことができる。ここで、M1及びM2は、K,Zr,Sn,V,Ta,Mo,W,P,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つを含む。M1とM2とは、同じであってもよく、互いに異っていてもよい。添字x及びyはそれぞれ、0≦x<2及び0≦y<1の範囲内にある。添字xが1以下であることが好ましく、添字xが0.5以下であることがより好ましい。また、Nb2TiO7相にLiが挿入された場合の組成は、LiaNb2-xM1xTi1-yM2yO7で表すことができる。ここで、添字x及びyは上記のとおり、添字aは0≦a≦5の範囲内にある。
【0024】
ニオブチタン酸化物相が有する単斜晶型の結晶構造の例として、空間群C2/mの対称性を持つ単斜晶型Nb
2TiO
7の結晶構造の模式図を
図1から
図3に示す。ここでいう空間群C2/mとは、International Tables for Crystallography(非特許文献1)、具体的には、当該資料のVol.A: Space-group symmetry(第2オンライン版(2016);ISBN: 978-0-470-97423-0、 doi: 10.1107/97809553602060000114)に記載の空間群番号12の対称性を指す。
【0025】
図1に示すように、単斜晶型Nb
2TiO
7の結晶構造では、金属イオン101と酸化物イオン102が結晶構造の骨格構造部分として機能する八面体103を構成している。金属イオン101の位置には、NbイオンとTiイオンとがNb:Ti=2:1の比でランダムに配置されている。八面体103が三次元的に交互に配置されることで、八面体103同士の間に空隙部分104が存在する。この空隙部分104がリチウムイオンのホストとなる。リチウムイオンは、この結晶構造中に0モルから最大で5.0モルまで挿入され得る。従って、リチウムイオンが0~5.0モル挿入された場合の組成は、Li
aNb
2TiO
7(0≦a≦5)と表すことができる。
【0026】
図1において、領域105及び領域106は、[100]方向と[010]方向に2次元的なチャネルを有する部分である。それぞれ
図2に示すように、単斜晶型Nb
2TiO
7の結晶構造には、[001]方向に空隙部分107が存在する。この空隙部分107は、リチウムイオンの導電に有利なトンネル構造を有しており、領域105と領域106とを繋ぐ[001]方向の導電経路となる。この導電経路が存在することによって、リチウムイオンは領域105と領域106を行き来することが可能となる。また、ニオブチタン酸化物は、1.5V(対Li/Li
+)程度のリチウム吸蔵電位を有する。それ故、ニオブチタン酸化物を活物質として含む電極は、安定した繰り返し急速充放電が可能な電池を実現できる。
【0027】
更に、上記の結晶構造は、リチウムイオンが空隙部分104に挿入されたとき、骨格を構成する金属イオン101が3価に還元され、これによって結晶の電気的中性が保たれる。ニオブチタン酸化物においては、Tiイオンが4価から3価へ還元されるだけでなく、Nbイオンが5価から3価へと還元される。このため、活物質重量あたりの還元価数が大きい。それ故、多くのリチウムイオンが挿入されても結晶の電気的中性を保つことが可能である。このため、4価カチオンだけを含む酸化チタンのような化合物に比べて、エネルギー密度が高い。
【0028】
図3に、
図1の結晶構造のうち手前側((101)面側)2列分の八面体のみを含んだ模式図を示す。金属イオン101(Nbイオン又はTiイオン)のサイトのうち2aサイトを中心として構成される八面体113については、隣接する八面体123及び八面体143との酸化物イオン102の共有は頂点共有のみで構成されている。4iサイトを中心として構成されている複数の八面体のうち、八面体123についても同様に他の八面体との酸化物イオン102の共有は頂点共有のみ含むところ、八面体133、八面体143、及び八面体153は稜共有により酸化物イオン102を互いに共有している。なお、ここでいう2aサイト及び4iサイトとは、上述したInternational Tables Volume Aの対称性に記載されている金属イオンサイトを指す。
【0029】
次に、Nb10Ti2O29相について説明する。Nb10Ti2O29相の組成は、例えば、一般式Nb10-zM1zTi2-yM2yO29で表すことができる。ここで、M1及びM2はNb2TiO7相についてのものと同様である。添字zは0≦z≦5の範囲内にあり、添字yは0≦y<1の範囲内にある。また、Nb10Ti2O29相にリチウムイオンが挿入された場合の組成は、LibNb10-zM1zTi2-yM2yO29で表すことができる。ここで、添字z及びyは上記のとおり、添字bは0≦b≦22の範囲内にある。
【0030】
Nb
10Ti
2O
29相の基本的な骨格構造は、
図1から
図3に示した単斜晶型Nb
2TiO
7の結晶構造の類似構造である。但しNb
10Ti
2O
29相は、典型的には空間群C2/mで代表されるが、単位胞としては空間群A2/mに分類される報告例がある。リチウムイオンが空隙部分104に挿入されたとき、骨格を構成する金属イオン101が3価に還元され、これによって結晶の電気的中性が保たれる。Nb
10Ti
2O
29相にリチウムイオンが挿入された場合の組成は、Li
xNb
10Ti
2O
29(0≦x≦22)と表すことができる。
【0031】
単斜晶型のニオブチタン酸化物相としては、上記Nb2TiO7相およびNb10Ti2O29相の他に、Nb14TiO37相およびNb24TiO64相などが知られている。Nb14TiO37相およびNb24TiO64相の結晶格子には、頂点共有のみで構成される(Nb, Ti)O6八面体サイトは含まれていない。結晶格子において、頂点共有のみの八面体サイトの周囲の部分は、稜共有などの他の共有も含む八面体サイトの周囲と比較して柔軟性が高い。そのため、頂点共有のみの八面体サイトを単位格子ごとに少なくとも1つ含んだNb2TiO7相やNb10Ti2O29相では、Liイオンの出し入れが容易であり、それにより充放電効率およびサイクル寿命性能が良好である。
【0032】
実施形態に係る活物質(ニオブチタン酸化物)の形態は、特に限定されない。活物質は、例えば、ニオブチタン酸化物相を含む粒子、又は、ニオブチタン酸化物相からなる粒子を含み得る。活物質は、例えば、Nb2TiO7相および/又はNb10Ti2O29相、並びにそのような単相または混相のニオブチタン酸化物相とさらに他の相を含む一次粒子の形態を有し得る。或いは、活物質は、Nb2TiO7相単相からなる一次粒子と、Nb10Ti2O29相単相からなる一次粒子とが混合された複数の粒子、若しくはそれら単相一次粒子の少なくとも一方と他の相からなる一次粒子との混合であってもよい。前述の各一次粒子は、凝集して二次粒子の形態を成していてもよい。ニオブチタン酸化物相の粒子は、一次粒子と、二次粒子との混合物でもよい。
【0033】
ニオブチタン酸化物相の一次粒子の平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下の範囲内にあることが好ましい。ここでいう平均粒子径は、後述するレーザー回折散乱法によって得られる粒度分布チャートにおいて、小粒子径側から体積累積頻度が50%となる粒子径D50を指す。粒度分布チャートは、活物質サンプルについてのヒストグラムに対応し得る。
【0034】
ニオブチタン酸化物相の粒子は、表面に炭素含有層を有していてもよい。炭素含有層は、一次粒子の表面に付着していてもよいし、二次粒子の表面に付着していてもよい。或いは、ニオブチタン酸化物相の粒子は、表面に炭素含有層が付着した一次粒子が凝集してなる二次粒子を含んでいてもよい。このような二次粒子は、一次粒子間に炭素が存在しているため、優れた導電性を示すことができる。このような二次粒子を含む態様では、活物質を用いた電極がより低い抵抗を示すことができるので、好ましい。
【0035】
<活物質の製造方法>
実施形態に係る活物質は、例えば、以下に説明する合成方法により製造することができる。
【0036】
まず、出発原料を混合する。ニオブ及びチタンを含む出発原料として、Nb及びTiを含む酸化物又は塩を準備する。例えば、出発原料としてNb2O5粒子及びTiO2粒子を使用することができる。これらの出発原料を、目的とするニオブチタン酸化物相の組成に応じて混合する。
【0037】
純水中に原料の混合物を投入し、湿式ビーズミル装置で1時間~3時間に亘り混合する。この際に、良好に分散するために各種分散剤を用いても良い。得られたスラリー状の混合物に対し、スプレードライヤー装置にて造粒乾燥を行う。この際に、造粒体の粒子径が5μm~30μm程度の大きさとなるようにする。5μm以上であれば合成反応時に凝集の進行を抑えることができ、30μm以下であれば後工程で行う薄膜旋回粉砕が容易となる。
【0038】
次に、得られた凝集物に仮焼成(第1の焼成)を行う。仮焼成は600℃~1100℃の温度で1時間~12時間に亘り行うことが望ましい。仮焼成を行うことにより、原料粉末に吸着している微量な不純物成分(例えば、水や有機物など)を除去することができる。仮焼成は省略してもよい。
【0039】
本焼成(第2の焼成)は、900℃~1200℃の温度で1時間~10時間に亘り焼成することが好ましい。950℃~1050℃の温度で2.5時間~3.5時間に亘り焼成することがより好ましい。
【0040】
得られた焼成済みの造粒体に対し、薄膜旋回型ミキサを用いて粉砕を行う。この際に目的の平均粒子径(D50)が0.1μm以上10μm以下となるように粉砕条件を設定する。
【0041】
<結晶構造測定>
活物質が含む結晶構造は、放射光X線測定およびその測定結果のリートベルト解析により確認することができる。放射光X線測定の設備としては、例えば、国立研究開発法人理化学研究所(理研)が運用する大型放射光施設SPring-8のBL19B2を利用することができる。
【0042】
活物質試料をリンデマンガラス(φ 0.3 mm)に充填し、波長0.8 Åで測定を行う。測定データを用いて、リートベルト解析を行う。リートベルト法では、あらかじめ推定した結晶構造モデルから回折パターンを計算する。この計算値と実測値とを全てフィッティングすることにより、結晶構造に関するパラメータ(格子定数、原子座標、占有率等)を精密に分析することができる。これにより、試料中に含まれる相の結晶構造の特徴を調べることができる。求めることができる結晶構造の特徴としては、結晶構造の対称性つまり結晶構造が属する空間群、並びに、結合角歪(σ2 / deg2)が含まれる。
【0043】
解析プログラムとしては、例えばRIETAN-FPを用いる。RIETAN-FPを用いた解析方法については、例えば、非特許文献2(「粉末X線解析の実際」日本分析化学会X線分析研究懇談会編 中井泉、泉富士夫編著(朝倉書店))の第9章「RIETAN-FPを使ってみよう」に詳細に説明されている。なお、RIETAN-FPは、その開発者のインターネット上のウェブページ(2023年1月現在閉鎖)にて無料配布されていたリートベルト解析用プログラムである。2023年3月現在は、当プログラムは下記ウェブアーカイブより入手可能である:
http://web.archive.org/web/20220209014122fw_/http://fujioizumi.verse.jp/download/download.html。
【0044】
図4に、一例の放射光X線回折パターンを用いたリートベルト解析の結果を示す。
図4に示す例は、TiNb
2O
7型結晶構造を想定して、空間群をC2/mとして解析を実施した結果である。空間群C2/mの計算ピーク11(実線)と観察ピーク12(プロット)の位置が何れも許容されるブラッグ反射14と一致しているとともに、計算ピーク11と観察ピーク12との間のピーク強度差13が少ないことが示すとおり、
図4には良好なフィッティングが得られた例を示す。Nb
10Ti
2O
29型結晶構造については、例えば、空間群をA2/mとして解析を実施する。
【0045】
電極に含まれる活物質について放射光X線回折測定を行う場合は、例えば、次のように試料を準備する。
【0046】
まず、活物質の結晶状態を把握するために、活物質からリチウムイオンが完全に離脱した状態にする。例えば、活物質が負極において用いられている場合、電池を完全に放電状態にする。例えば、電池を25℃環境において0.1C電流で定格終止電圧又は電池電圧が1.0Vに到達するまで放電させることを複数回繰り返し、放電時の電流値が定格容量の1/100以下となるようにすることで、電池を放電状態にすることができる。放電状態でも残留したリチウムイオンが存在することもある。
【0047】
次に、アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を分解し、電極を取り出して、適切な溶媒で洗浄する。適切な溶媒としては、例えばエチルメチルカーボネートを用いることができる。電極の洗浄が不十分であると、電極中に残留したリチウムイオンの影響で、炭酸リチウムやフッ化リチウムなどの不純物相が混入することがある。その場合は測定雰囲気を不活性ガス中で行える気密容器を用いるとよい。洗浄した電極を、放射光X線回折に用いるキャピラリーの直径と同程度の幅となるように短冊状に切断して測定試料とする。この試料を直接キャピラリーに挿入して測定を行う。
【0048】
このとき、集電体である金属箔、導電剤及び結着剤をあらかじめ測定して、それらに由来するピークを把握しておく。もちろん、これらを事前に把握できているのであれば、この操作は省略することができる。集電体のピークと活物質のピークとが重なる場合、集電体から活物質含有層を剥離して測定することが望ましい。これは、ピーク強度を定量的に測定する際、重なったピークを分離するためである。活物質含有層を物理的に剥離しても良いが、溶媒中で超音波をかけると剥離しやすい。集電体から活物質含有層を剥離するのに超音波処理を行った場合、溶媒を揮発させることで、電極合材粉末(活物質、導電剤、結着剤を含む)を回収することができる。回収した電極合材粉末を、キャピラリーに充填して測定することで、活物質の放射光X線回折測定を行うことができる。なお、超音波処理を行って回収した電極合材粉末は、放射光X線回折測定以外の各種分析に供することもできる。
【0049】
<結晶子径の確認>
結晶子径(結晶子サイズ)を求めるためには、通常の実験室で用いられる粉末X線回折装置にてCu‐Kα線を用いて測定を行える。
【0050】
まず、対象試料を平均粒子径が5μm程度となるまで粉砕する。平均粒子径はレーザー回折法によって求めることができる。粉砕した試料を、ガラス試料板上に形成された深さ0.2mmのホルダー部分に充填する。このとき、試料が十分にホルダー部分に充填されるように留意する。また、試料の充填不足によりひび割れ、空隙等がないように注意する。次いで、外部から別のガラス板を使い、充分に押し付けて平滑化する。この際、充填量の過不足により、ホルダーの基準面より凹凸が生じることのないように注意する。次いで、試料が充填されたガラス板を粉末X線回折装置に設置し、Cu-Kα線を用いてX線回折(XRD)パターンを取得する。
【0051】
電極に含まれる活物質を試料とする場合は、例えば、上述した電池の解体から超音波処理までを行って回収した電極合材粉末を用いることができる。或いは、電池の解体から電極の洗浄までを行い、洗浄した電極を粉末X線回折装置のホルダーの面積と同程度の面積となるように切断して測定試料とする。この試料を直接ガラスホルダーに貼り付けて測定を行う。
【0052】
粉末X線回折測定の装置としては、例えば、Rigaku社製SmartLabを用いる。測定条件は以下の通りとする:
X線源:Cuターゲット
出力:45kV 200mA
ソーラスリット:入射及び受光共に5°
ステップ幅(2θ):0.02deg
スキャン速度:20deg/分
半導体検出器:D/teX Ultra 250
測定範囲:5°≦2θ≦90°
試料板ホルダー:平板ガラス試料板ホルダー(厚さ0.5mm)。
【0053】
その他の装置を使用する場合は、粉末X線回折用標準Si粉末を用いた測定を行って、上記装置によって得られる結果と同等のピーク強度、半値幅及び回折角の測定結果が得られる条件を見つけ、その条件で試料の測定を行う。
【0054】
XRD測定の条件は、リートベルト解析に適用できるXRDパターンを取得できる条件とする。リートベルト解析用のデータを収集するには、具体的にはステップ幅が回折ピークの最小半値幅の1/3-1/5となるようにし、最強度反射のピーク位置における強度が5000cps以上となるように適宜、測定時間および/又はX線強度を調整する。
【0055】
得られたX線回折スペクトルにおける最も回折強度の強い回折ピークを選定する。例えば、Nb2TiO7相については、(110)面のピークを測定する。得られたピークの半値幅から、結晶子サイズを算出することができる。ここでは、下記式1及び式2で示すシェラーの式から結晶子サイズを算出する。
【0056】
結晶子サイズ(nm)= Kλ/βcosθ (1)
β = (βe
2-βo
2)1/2 (2)
ここで、KはScherrer定数で0.9とし、λはX線の波長で0.15406nmとし、θはブラッグ角で、βは回折ピークの積分幅であり、βe:回折ピークの半値幅、及びβo:半値幅の補正値(0.07°)である。
【0057】
<ニオブチタン酸化物相の組成の測定>
活物質中のニオブチタン酸化物相の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光法を用いて分析することができる。
【0058】
電池に組み込まれている活物質における組成をICP発光分光法により測定するには、具体的には以下の手順により行う。
【0059】
まず、先に説明した手順により、二次電池から、活物質を含んだ電極を取り出し、洗浄する。洗浄した電極を適切な溶媒中に入れて超音波を照射する。例えば、ガラスビーカー中に入れたエチルメチルカーボネートに電極を入れ、超音波洗浄機中で振動させることで、集電体から活物質含有層を剥離させることができる。
【0060】
次に、減圧乾燥を行い、剥離した活物質含有層を乾燥する。得られた活物質含有層を乳鉢などで粉砕することで、対象とする活物質、導電剤、結着剤などを含む粉末となる。この粉末を、酸で溶解することで、活物質を含む液体サンプルを作成できる。このとき、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素などを使用できる。この液体サンプルをICP発光分光分析に供することで、活物質中の成分、例えばニオブチタン酸化物相の組成を知ることができる。
【0061】
<平均粒子径測定>
前述の放射光X線回折測定の項で説明した電極合材粉末を焼成し、導電剤及び結着剤を焼失させる。残った活物質粒子をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒に分散させて、超音波処理を施して二次粒子や他の凝集を解することで、粒度分布測定用サンプルとしての活物質一次粒子の分散溶液を得る。この分散溶液について、レーザー回折式分布測定装置を用いて構成粒子の粒度分布測定を実施する。測定装置としては、例えばマイクロトラック・ベル株式会社製 マイクロトラックMT3100IIを使用することができる。
【0062】
上記分散溶媒を得る際の超音波処理は、レーザー回折式分布測定装置に付随する試料供給システムにより実施する。超音波処理は、例えば、40Wの出力で300秒に亘って実施する。上記レーザー回折散乱法によって得られる粒度分布チャートにおける、小粒子径側から体積累積頻度が50%となる粒子径D50を平均一次粒子径とする。
【0063】
第1の実施形態によると、活物質が提供される。係る活物質は、単斜晶構造のニオブチタン酸化物相を含み、頂点共有のみで構成された(Nb, Ti)O6八面体サイトにおける結合角歪が0.8 σ2 / deg2以下である八面体サイトを、単位格子中に少なくとも1つ含む。ニオブチタン酸化物相の結晶子径が85nm以上130nm以下である。係る活物質は、優れた充放電効率およびサイクル寿命性能を示す二次電池を実現することができる。
【0064】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によると、電極が提供される。
【0065】
第2の実施形態に係る電極は、第1の実施形態に係る活物質を含む。この電極は、第1の実施形態に係る活物質を、電池用活物質として含む電池用電極であり得る。電池用電極としての電極は、例えば、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む負極であり得る。
【0066】
係る電極は、集電体と活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。活物質含有層は、活物質と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。
【0067】
活物質含有層は、第1の実施形態に係る活物質を単独で含んでもよく、第1の実施形態に係る活物質を2種類以上含んでもよい。さらに、第1の実施形態に係る活物質を1種又は2種以上と、更に1種又は2種以上の他の活物質とを混合した混合物を含んでもよい。
【0068】
例えば、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む場合は、他の活物質の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi3O7、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、五酸化ニオブ(Nb2O5)、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型(orthorhombic)チタン含有複合酸化物、及び頂点共有のみで構成された(Nb, Ti)O6八面体サイトを含まない単斜晶型ニオブチタン酸化物が挙げられる。
【0069】
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aMI
2-bTi6-cMII
dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、MIは、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。MIIはZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
【0070】
頂点共有のみで構成されたNbO6八面体サイトやTiO6八面体サイトを含まない単斜晶型ニオブチタン酸化物の一例として、LixNb14TiO37で表され0≦x≦29である化合物が挙げられる。他の例として、LixNb24TiO64で表され0≦x≦49である化合物が挙げられる。これらの化合物の結晶構造では、何れの八面体サイトにおいても、例えば、稜共有のような頂点共有以外の共有が形成されている。
【0071】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
【0072】
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0073】
活物質含有層中の活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、電極の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、電極を二次電池の負極として用いる場合は、活物質(負極活物質)、導電剤及び結着剤を、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0074】
集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、活物質が負極活物質として用いられる場合は、集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0075】
また、集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
【0076】
電極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。
【0077】
或いは、電極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、電極を得ることができる。
【0078】
第2の実施形態に係る電極は、第1の実施形態に係る活物質を含んでいる。そのため、係る電極は、優れた充放電効率およびサイクル寿命性能を示す二次電池を実現することができる。
【0079】
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、負極と、正極と、電解質とを含む二次電池が提供される。この二次電池は、負極として、第2の実施形態に係る電極を含む。つまり、第3の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る活物質を電池用活物質として含む電極を、負極として含む。
【0080】
係る二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。
【0081】
また、係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
【0082】
さらに、係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
【0083】
係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
【0084】
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
【0085】
1)負極
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極集電体及び負極活物質含有層は、それぞれ、第2の実施形態に係る電極が含むことのできる集電体及び活物質含有層であり得る。負極活物質含有層は、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む。
【0086】
負極の詳細のうち、第2の実施形態について説明した詳細と重複する部分は、省略する。
【0087】
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上3.5g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.5g/cm3以上2.9g/cm3以下であることがより好ましい。
【0088】
負極は、例えば、第2の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
【0089】
2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
【0090】
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
【0091】
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0092】
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
【0093】
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
【0094】
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0095】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0096】
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0097】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0098】
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0099】
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0100】
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0101】
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0102】
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0103】
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0104】
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
【0105】
正極は、例えば、正極活物質を用いて、第2の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
【0106】
3)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
【0107】
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0108】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0109】
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
【0110】
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
【0111】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0112】
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
【0113】
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。ここでいうLiイオン伝導性を有するとは、25℃で1×10-6 S/cm以上のリチウムイオン伝導度を示すことを指す。無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、又は硫化物系固体電解質を挙げることができる。無機固体電解質の具体例は、下記のとおりである。
【0114】
酸化物系固体電解質としては、NASICON(Sodium (Na) Super Ionic Conductor)型構造を有し、一般式Li1+xMα2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMαは、例えば、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、及びカルシウム(Ca)からなる群より選択される1以上である。添字xは、0≦x≦2の範囲内にある。
【0115】
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3で表され0.1≦x≦0.5であるLATP化合物;Li1+xAlyMβ2-y(PO4)3で表されMβはTi,Ge,Sr,Zr,Sn,及びCaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦1及び0≦y≦1である化合物;Li1+xAlxGe2-x(PO4)3で表され0≦x≦2である化合物;及び、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3で表され0≦x≦2である化合物;Li1+x+yAlxMγ2-xSiyP3-yO12で表されMγはTi及びGeからなる群より選択される1以上であり0<x≦2、0≦y<3である化合物;Li1+2xZr1-xCax(PO4)3で表され0≦x<1である化合物を挙げることができる。
【0116】
また、酸化物系固体電解質としては、上記リチウムリン酸固体電解質の他にも、LixPOyNzで表され2.6≦x≦3.5、1.9≦y≦3.8、及び0.1≦z≦1.3であるアモルファス状のLIPON化合物(例えば、Li2.9PO3.3N0.46);ガーネット型構造のLa5+xAxLa3-xMδ2O12で表されAはCa,Sr,及びBaからなる群より選択される1以上でMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦0.5である化合物;Li3Mδ2-xL2O12で表されMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上でありLはZrを含み得0≦x≦0.5である化合物;Li7-3xAlxLa3Zr3O12で表され0≦x≦0.5である化合物;Li5+xLa3Mδ2-xZrxO12で表されMδはNb及びTaから成る群より選択される1以上であり0≦x≦2であるLLZ化合物(例えば、Li7La3Zr2O12);及びペロブスカイト型構造を有しLa2/3-xLixTiO3で表され0.3≦x≦0.7である化合物が挙げられる。
【0117】
上記化合物のうち1以上を固体電解質として用いることができる。上記固体電解質を2以上用いてもよい。
【0118】
電解質は、水を含んだ水系電解質であってもよい。
【0119】
水系電解質は、水系溶媒と電解質塩とを含む。水系電解質は、例えば、液状である。液状水系電解質は、溶質としての電解質塩を水系溶媒に溶解することにより調製される水溶液である。水系溶媒は、例えば、水を50体積%以上含む溶媒である。水系溶媒は、純水であってもよい。
【0120】
水系電解質は、水系電解液と高分子材料とを複合化したゲル状の水系電解質であってもよい。高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0121】
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
【0122】
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
【0123】
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
【0124】
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0125】
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0126】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
【0127】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0128】
6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
【0129】
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0130】
次に、実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0131】
図5は、二次電池の一例を概略的に示す断面図である。
図6は、
図5に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
【0132】
図5及び
図6に示す二次電池100は、
図5に示す袋状外装部材2と、
図5及び
図6に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
【0133】
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0134】
図5に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、
図6に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
【0135】
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、
図6に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
【0136】
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
【0137】
図5に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
【0138】
実施形態に係る二次電池は、
図5及び
図6に示す構成の二次電池に限らず、例えば
図7及び
図8に示す構成の電池であってもよい。
【0139】
図7は、二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。
図8は、
図7に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
【0140】
図7及び
図8に示す二次電池100は、
図7及び
図8に示す電極群1と、
図7に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
【0141】
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0142】
電極群1は、
図8に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
【0143】
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
【0144】
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分を含む。この部分は、負極集電タブ3cとして働く。
図8に示すように、負極集電タブ3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ3cは、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
【0145】
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ3cと同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ3cに対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
【0146】
第3の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含んでいる。そのため、係る二次電池は、優れた充放電効率およびサイクル寿命性能を示すことができる。
【0147】
(第4の実施形態)
第4の実施形態によると、組電池が提供される。係る組電池は、第3の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
【0148】
係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
【0149】
次に、実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0150】
図9は、組電池の一例を概略的に示す斜視図である。
図9に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、第3の実施形態に係る二次電池である。
【0151】
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、
図9の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
【0152】
5つの単電池100a~100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a~100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
【0153】
第4の実施形態に係る組電池は、第3の実施形態に係る二次電池を具備する。従って、係る組電池は、優れた充放電効率およびサイクル寿命性能を示すことができる。
【0154】
(第5の実施形態)
第5の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第4の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第4の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第3の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
【0155】
係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
【0156】
また、係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0157】
次に、実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0158】
図10は、電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。
図11は、
図10に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0159】
図10及び
図11に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
【0160】
図10に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
【0161】
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
【0162】
複数の単電池100の少なくとも1つは、第3の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、
図11に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
【0163】
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
【0164】
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
【0165】
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
【0166】
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
【0167】
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
【0168】
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
【0169】
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
【0170】
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
【0171】
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
【0172】
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
【0173】
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
【0174】
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
【0175】
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子350の正側端子352と負側端子353としてそれぞれ用いてもよい。
【0176】
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
【0177】
第5の実施形態に係る電池パックは、第3の実施形態に係る二次電池又は第4の実施形態に係る組電池を備えている。従って、係る電池パックは、優れた充放電効率およびサイクル寿命性能を示すことができる。
【0178】
(第6の実施形態)
第6の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第5の実施形態に係る電池パックを搭載している。
【0179】
係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
【0180】
車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
【0181】
車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
【0182】
車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
【0183】
次に、実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0184】
図12は、車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
【0185】
図12に示す車両400は、車両本体40と、第5の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。
図12に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
【0186】
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
【0187】
図12では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
【0188】
次に、
図13を参照しながら、実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
【0189】
図13は、車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。
図13に示す車両400は、電気自動車である。
【0190】
図13に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
【0191】
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、
図13に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
【0192】
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
【0193】
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a~300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a~200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a~200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
【0194】
組電池200a~200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第3の実施形態に係る二次電池である。組電池200a~200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
【0195】
電池管理装置411は、組電池監視装置301a~301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a~200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
【0196】
電池管理装置411と組電池監視装置301a~301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a~301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
【0197】
組電池監視装置301a~301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a~200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
【0198】
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば
図13に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a~200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a~200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
【0199】
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
【0200】
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
【0201】
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
【0202】
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
【0203】
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
【0204】
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
【0205】
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
【0206】
第6の実施形態に係る車両は、第5の実施形態に係る電池パックを搭載している。従って、係る電池パックを搭載することで、高パフォーマンスを示すことができ信頼性の高い車両を提供することができる。
【実施例0207】
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明する。
【0208】
<合成方法>
(実施例1)
ニオブチタン酸化物を、以下に説明する固相合成法により合成した。
【0209】
まず、Nb2TiO7相が得られるように、Nb2O5粒子とTiO2粒子を1:1のモル比で湿式ビーズミルにより2時間混合した。得られた混合スラリーに対し、スプレードライヤー装置を用いて造粒乾燥を行った。得られた造粒粒子を、800℃の温度で12時間に亘り仮焼成(第1の焼成)した。仮焼成後、得られた粉末を白金坩堝に入れ1050℃で3時間に亘り本焼成(第2の焼成)した。得られた焼成済みの造粒体に対し、プライミクス株式会社製の薄膜旋回型高速ミキサ「フィルミックス80型」を用いて、平均粒子径D50が1.0μmから3.5μmの範囲となるように粉砕を行い、実施例1の活物質を得た。
【0210】
(実施例2)
ニオブチタン酸化物を、以下に説明する固相合成法により合成した。
【0211】
まず、Nb2TiO7相が得られるように、Nb2O5粒子とTiO2粒子を1:1のモル比で乾式ボールミルを用いて混合した。得られた混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、800℃の温度で12時間に亘り仮焼成(第1の焼成)を行った。仮焼成後、得られた粉末を白金坩堝に入れ、1200℃で5時間に亘り本焼成(第2の焼成)を行った。本焼成後、粉末をめのう乳鉢で軽く粉砕し、25μmのメッシュのふるいを通して粗粒を取り除き、実施例2の活物質を得た。
【0212】
(実施例3)
実施例2で得た本焼成後の粒子を、薄膜旋回型高速ミキサを用いて実施例1と同様の強度で粉砕した以外は、実施例2に記載の方法と同様にして実施例3の活物質を得た。
【0213】
(実施例4)
ニオブチタン酸化物を得るために、非特許文献3(Chem. Mater. 2011, 23, 8, 2027-2029)に記載のゾルゲル法を用いて合成を実施した。具体的には、次のとおり合成を行った。なお、粉砕は焼成粉の凝集を解くための軽い程度のものに留めた。
【0214】
Nb2O5、フッ化水素酸水溶液(HF:H2O = 40:70)、Ti(OC3H7)4、アンモニア、及びクエン酸一水和物を出発原料に用いた。先ず、Nb2O5をフッ化水素酸に溶解させて透明な溶液を得た。溶液からFイオンを取り除くために、アンモニアを添加して白いNb(OH)5沈殿物を得た。沈殿物を洗浄および乾燥させた後、Nb(OH)5をクエン酸に溶解してNb(V)クエン酸溶液を得た。この溶液に、アンモニアを加えることで溶液のpHを調整しながらTi(OC3H7)4を含んだ水-エタノール溶液を加えた。このNb(V)及びTi(IV)イオンを含んだ最終混合物を90℃で撹拌してクエン酸ゲルを形成し、ゲルを140℃まで加熱することで前駆体を得た。前駆体を1500℃で本焼成に供して、85nmを超える高い結晶子サイズを有するニオブチタン酸化物の粉末を得た。焼成後、粉末をめのう乳鉢で軽く粉砕し、25μmのメッシュのふるいを通して粗粒を取り除き、実施例4の活物質を得た。
【0215】
(実施例5)
本焼成後に薄膜旋回型高速ミキサを用いて粒子を粉砕した以外は、実施例4に記載の方法と同様にして実施例5の活物質を得た。
【0216】
(実施例6から11)
原料のNb2O5粒子とTiO2粒子以外の添加元素について、下記表1に記載の組成となるよう所定の割合で原料を混合したことを除いて、実施例1に記載の方法と同様に実施例6から11の活物質を得た。
【0217】
(実施例12)
Nb10Ti2O29相が得られるように、Nb2O5粒子とTiO2粒子のモル比を2.5:1としたことを除いて、実施例1に記載の方法と同様にして実施例12の活物質を得た。
【0218】
(比較例1)
ニオブチタン酸化物を、以下に説明する固相合成法により合成した。まず、Nb2TiO7が得られるように、Nb2O5粒子とTiO2粒子のモル比を1:1として乾式ボールミルによる混合を行った。得られた粉末をアルミナ坩堝に入れ、800℃の温度で12時間に亘り仮焼成(第1の焼成)を行った。仮焼成後、得られた粉末を白金坩堝に入れ1200℃で5時間に亘り本焼成(第2の焼成)を行った。本焼成後、乾式ビーズミルを用いて平均粒子径D50が1.0μmから3.5μmの範囲となるまで焼成粉を粉砕混合し、比較例1の活物質を得た。
【0219】
(比較例2)
実施例1で得られた焼成済みの造粒体を、乾式ボールミルを用いて平均粒子径D50が1.0μmから3.5μmの範囲となるまで粉砕した以外は、実施例1と同様の方法で比較例2の活物質を得た。
【0220】
(比較例3)
非特許文献3(Chem. Mater. 2011, 23, 8, 2027-2029)に記載のゾルゲル法を用いて合成を実施して、比較例3の活物質を得た。具体的には、次のとおり合成を行った。なお、粉砕は焼成粉の凝集を解くための軽い程度のものに留めた。
【0221】
Nb2O5、フッ化水素酸水溶液(HF:H2O = 40:70), Ti(OC3H7)4、アンモニア、及びクエン酸一水和物を出発原料に用いた。先ず、Nb2O5をフッ化水素酸に溶解させて透明な溶液を得た。溶液からFイオンを取り除くために、アンモニアを添加して白いNb(OH)5沈殿物を得。沈殿物を洗浄および乾燥させた後、Nb(OH)5をクエン酸に溶解してNb(V)クエン酸溶液を得た。この溶液に、アンモニアを加えることで溶液のpHを調製しながらTi(OC3H7)4を含んだ水-エタノール溶液を加えた。このNb(V)及びTi(IV)イオンを含んだ最終混合物を90℃で撹拌してクエン酸ゲルを形成し、ゲルを140℃まで加熱することで前駆体を得た。前駆体を900℃で本焼成に供して、ニオブチタン酸化物の粉末を得た。焼成後、粉末をめのう乳鉢で軽く粉砕し、25μmのメッシュのふるいを通して粗粒を取り除き、比較例3の活物質を得た。
【0222】
(比較例4)
比較例3で得られた焼成済み粉末を、乾式ビーズミルを用いて比較例2と同等の強度で粉砕した以外は、比較例3と同様の方法で比較例4の活物質を得た。
【0223】
<物性評価>
各例にて得られた活物質について、結晶構造、結晶子径、及び平均粒子径(D50)をそれぞれ評価した。結晶構造については、上述した放射光X線回折測定を実施して、ニオブチタン酸化物相が属する空間群を確認し、頂点共有のみの八面体サイトの確認を行い、当該八面体サイトについての結合角歪(σ2/deg2)をリートベルト解析結果から抽出した。また、通常(実験室レベル)の粉末X線回折測定を実施し、得られたX線スペクトルのリートベルト解析結果を用いて上述した方法で結晶子径を求めた。平均粒子径は、上述したとおりレーザー回折散乱法に基づいて測定した。これらの結果を、下記表2にまとめる。
【0224】
<電気化学測定>
各例にて得られた活物質を使用して、以下の手順で電気化学測定用セルを作製した。
【0225】
各例で得られた活物質粉末100質量%、導電剤としてアセチレンブラック10質量%、及び、カーボンナノファイバー5質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量%をN-メチルピロリドン(NMP)に加えて混合してスラリーを得た。このスラリーを厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体の片面に塗布し、乾燥後プレスすることにより電極密度2.4g/cm3(集電体を除く)の電極を作製した。
【0226】
一方、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:2で混ぜた混合溶媒に、LiPF6支持塩を1mol/Lの濃度で溶解させることにより液状電解質を調製した。
【0227】
得られた電極を作用極とし、対極及び参照極をLi金属とし、調製した液状電解質を用いた三電極式ビーカーセルを作製して、後述の通り電気化学性能を評価した。
【0228】
本評価において、この測定用の三電極式ビーカーセルでは、リチウム金属を対極としているため、作製電極の電極電位は対極に比して貴となるので係る電極は正極として作動する。このため、各例の活物質を用いた電極を負極として使用したときの充放電の定義は反対になる。ここで、混乱を避けるため、本評価では、電極にリチウムイオンが挿入される方向を充電、脱離する方向を放電という呼称で統一する。なお、第1の実施形態に係る活物質は、公知の正極材料と組み合わせることで負極活物質として作動する。
【0229】
作製した電気化学測定用セルを、金属リチウム電極基準で1.0V~3.0V(vs.Li/Li+)の電位範囲で充放電させた。充放電電流値を0.2C(時間放電率)とし、室温にて0.2C放電容量の確認を行った。0.2C放電容量の値は、エネルギー密度の指標となる。
【0230】
また、充放電サイクル中の充放電に伴うクーロン効率を測定した。初回充放電時のクーロン効率は電極と電解質との反応などの影響を受けるため、充放電サイクルが安定する10サイクル目における充電容量と放電容量からクーロン効率を調べた。10サイクル目の充電容量をCc、放電容量をCdとし、クーロン効率をCd/Cc×100%として求めた。
【0231】
次に、電池のレート性能及びサイクル寿命性能を調べるために、各例で得られた活物質粉末を使用して、次の手順で非水電解質電池(定格容量1000mAh)を作製した。
【0232】
(負極の作製)
各例で得られた活物質粉末100質量%、導電剤としてアセチレンブラック10質量%、及び、カーボンナノファイバー5質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量%をN-メチルピロリドン(NMP)を加えて混合してスラリーを得た。このスラリーを厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、真空下130℃で12時間に亘り乾燥して積層体を得た。その後、活物質含有層の密度が2.4g/cm3(集電体を除く)となるように積層体を圧延して負極を得た。
【0233】
(正極の作製)
市販のコバルト酸リチウム(LiCoO2)90質量部に、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部の割合で混合して、混合物を得た。次に、この混合物をNMP中に分散して、分散液を得た。この分散液に、結着剤としてのPVdFをコバルト酸リチウムに対して5質量部の割合で混合し、正極スラリーを調製した。このスラリーを、ブレードを用いて、12μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。これを真空下130℃で12時間乾燥して積層体を得た。その後、活物質含有層の密度が2.2g/cm3(集電体を除く)となるように積層体を圧延して正極を得た。
【0234】
(電極群の作製)
以上のようにして作製した正極と負極とを、これらの間にポリエチレン製セパレータを挟んで積層し、積層体を得た。次いで、この積層体を捲回し、更にプレスすることにより、扁平形状の捲回型電極群を得た。この電極群に正極端子及び負極端子を接続した。
【0235】
(非水電解質の調製)
混合溶媒として、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)を準備した。この溶媒中に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1Mの濃度で溶解させた。かくして、液状の非水電解質を調製した。
【0236】
(非水電解質電池の組立て)
以上のようにして作製した電極群をアルミニウムラミネートフィルム製の電池外装に入れ、非水電解質を注入した後、ヒートシールで封口することで非水電解質電池を作製した。
【0237】
(充放電試験)
得られたラミネート型電池を用いて、放電レート試験を行った。セル電圧が3.0Vとなるように0.2Cレートで充電を行い、0.05C相当の電流値となった時点で充電を終了した。先ず0.2Cレートにおける放電容量C0.2を測定したのち、5Cにて放電レート容量C5を測定した。0.2C放電容量に対する5C放電容量の割合(C5/C0.2)×100%を5C放電容量維持率として求めた。
【0238】
次に、45℃で加速寿命試験を行った。充放電試験は、セル電圧で1.5V~3.0Vの電位範囲で、充放電電流値を0.2C(時間放電率)として、500サイクル繰り返し充放電を行い(充電及び放電で1サイクルとする)、500サイクル後の放電容量維持率を調べた。500サイクル後の放電容量を初回放電容量で除して100を掛けることにより、初回放電容量を100%とした場合のサイクル容量維持率(%)を算出した。
【0239】
以上の結果を下記表1から表3にまとめる。表1には、各例で合成したニオブチタン酸化物の結晶相の組成およびその合成方法を示す。表2には、物性評価により求められた各例の活物質におけるニオブチタン酸化物相が属する空間群、頂点共有のみで構成された八面体サイト、当該八面体サイトにおける結合角歪、及び結晶子径、並びに、活物質一次粒子の平均粒子径(D50)を示す。表3には、各例の活物質を用いた三電極式ビーカーセルの電気化学測定により求められた0.2C放電容量およびクーロン効率(充放電効率)、並びに各例の活物質を負極に用いたラミネート型非水電解質電池の電気化学測定により求められた5C放電容量維持率(レート性能)及びサイクル容量維持率(寿命性能)を示す。
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
各例で合成した活物質が含むニオブチタン酸化物相は、表2に示すとおり何れも頂点共有のみで構成された八面体サイトを単位格子中に少なくとも一つ含んでいた。実施例1から12の活物質については何れも、当該八面体サイトの結合角歪が0.8σ2/deg2以下に留まるとともに、ニオブチタン酸化物相の結晶子径が85nm以上であった。対して、比較例1,2及び4では頂点共有のみの八面体サイトの結合角歪が0.8σ2/deg2を超えており、比較例3ではニオブチタン酸化物相の結晶子径が85nm未満であった。各例の活物質を用いたビーカーセルは表3に示すとおり同程度の低レート(0.2C)放電容量を示し、各例の活物質を用いた非水電解質電池の高レート(50C)放電における容量維持率も同程度であった。しかし、ビーカーセルのクーロン効率および非水電解質電池のサイクル容量維持率については、実施例1から12の活物質を用いた測定用セルの方が比較例1から4の活物質を用いたセルと比較して優れた性能を示した。
【0244】
以上説明した少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、活物質が提供される。当該活物質は、頂点共有のみで構成された(Nb, Ti)O6八面体サイトにおける結合角歪が0.8 σ2 / deg2以下である八面体サイトを単位格子中に少なくとも1つ含む単斜晶型結晶構造を有するニオブチタン酸化物相を含む。ニオブチタン酸化物相の結晶格子系は、85nm以上130nm以下の範囲内にある。係る活物質は、優れた充放電効率およびサイクル寿命性能を示すことができる二次電池を実現することができる。
【0245】
以下に、本発明に係る幾つかの実施形態を附記する。
[1] 単斜晶構造を有するニオブチタン酸化物相を含み、前記ニオブチタン酸化物相はその結晶格子において、頂点共有のみで構成された(Nb, Ti)O6八面体サイトにおける結合角歪が0.8 σ2 / deg2以下である八面体サイトを、単位格子中に少なくとも1つ含む結晶構造を有し、前記ニオブチタン酸化物相の結晶子径が85nm以上130nm以下の範囲内にある、活物質。
[2] 前記ニオブチタン酸化物相の一次粒子を含み、前記一次粒子の平均粒子径D50は0.1μm以上10μm以下の範囲内にある、[1]に記載の活物質。
[3] 前記ニオブチタン酸化物相は、Nb2TiO7相およびNb10Ti2O29相からなる群より選択される少なくとも1つの相を含む、[1]又は[2]に記載の活物質。
[4] 前記少なくとも1つの相は、K,Zr,Sn,V,Ta,Mo,W,P,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni及びAlからなる群より選択される少なくとも1つを含有する、[3]に記載の活物質。
[5] 前記ニオブチタン酸化物相は空間群C2/mに属する単斜晶型結晶構造を有し、前記単斜晶型結晶構造にてInternational Tables Volume Aの対称性に記載された2aサイトにおける結合角歪が0.8 σ2 / deg2以下である、[1]から[4]の何れか1つに記載の活物質。
[6] [1]から[5]の何れか1つに記載の活物質を含む電極。
[7] 前記電極は、前記活物質を含む活物質含有層を含む[6]に記載の電極。
[8] 正極と、
負極と、
電解質と
を具備する二次電池であって、
前記負極は、[6]又は[7]に記載の電極である二次電池。
[9] [8]に記載の二次電池を具備する電池パック。
【0246】
[10] 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する[9]に記載の電池パック。
[11] 複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[9]又は[10]に記載の電池パック。
[12] [9]から[11]の何れか1つに記載の電池パックを搭載した車両。
[13] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む[12]に記載の車両。
【0247】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…電極群、2…外装部材、3…負極、3a…負極集電体、3b…負極活物質含有層、3c…負極集電タブ、4…セパレータ、5…正極、5a…正極集電体、5b…正極活物質含有層、6…負極端子、7…正極端子、21…バスバー、22…正極側リード、23…負極側リード、24…粘着テープ、31…収容容器、32…蓋、33…保護シート、34…プリント配線基板、35…配線、40…車両本体、41…車両用電源、42…電気制御装置、43…外部端子、44…インバータ、45…駆動モータ、100…二次電池、101…金属イオン、102…酸化物イオン、103…八面体、104…空隙部分、105…領域、106…領域、107…空隙部分、113…八面体、123…八面体、133…八面体、143…八面体、153…八面体、200…組電池、200a…組電池、200b…組電池、200c…組電池、300…電池パック、300a…電池パック、300b…電池パック、300c…電池パック、301a…組電池監視装置、301b…組電池監視装置、301c…組電池監視装置、342…正極側コネクタ、343…負極側コネクタ、345…サーミスタ、346…保護回路、342a…配線、343a…配線、350…通電用の外部端子、352…正側端子、353…負側端子、348a…プラス側配線、348b…マイナス側配線、400…車両、411…電池管理装置、412…通信バス、413…正極端子、414…負極端子、415…スイッチ装置、416…電流検出部、417…負極入力端子、418…正極入力端子、L1…接続ライン、L2…接続ライン、W…駆動輪。