(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132519
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】パネル構造
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20240920BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20240920BHJP
E04C 2/34 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B32B3/30
F16B5/07 E
F16B5/07 C
E04C2/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043316
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】神内 直寛
【テーマコード(参考)】
2E162
3J001
4F100
【Fターム(参考)】
2E162CB01
2E162CD04
2E162GB07
3J001FA03
3J001GA01
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA08
3J001HA09
3J001JD32
3J001KA19
3J001KA21
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DD04A
4F100DD04B
4F100GB51
(57)【要約】
【課題】パネル構造において、剪断方向の剛性を高め、且つ製造性を向上させる。
【解決手段】パネル構造11は、面材12と、面材13と、を備えている。面材12は、厚さ方向に凸となり幅方向に延びる凸部14がパターン形成されている。面材13は、厚さ方向に凸となり幅方向と直交する縦方向に延びる凸部15がパターン形成されている。凸部14及び凸部15同士を互い違いに嵌め合わせて面材12と面材13とが接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に凸となり第一の面方向に延びる凸部がパターン形成された第一の面材と、
厚さ方向に凸となり第一の面方向と直交する第二の面方向に延びる凸部がパターン形成された第二の面材と、を備え、
前記第一の面材の前記凸部と前記第二の面材の前記凸部とを互い違いに嵌め合わせて前記第一の面材と前記第二の面材とが接合されていることを特徴とするパネル構造。
【請求項2】
前記第一の面材の前記凸部、及び前記第二の面材の前記凸部は、長手方向の並びを列とし、短手方向の並びを行とし、一行おきに各列が長手方向に半周期分だけずれた千鳥配置にされていることを特徴とする請求項1に記載のパネル構造。
【請求項3】
前記第一の面材の前記凸部、及び前記第二の面材の前記凸部は、長手方向の間隔が短手方向の寸法に対応し、短手方向における一行おきの間隔が長手方向の寸法に対応していることを特徴とする請求項2に記載のパネル構造。
【請求項4】
前記第一の面材の前記凸部、及び前記第二の面材の前記凸部は、パターンが同一であることを特徴とする請求項1に記載のパネル構造。
【請求項5】
前記第一の面材の前記凸部、及び前記第二の面材の前記凸部は、先端に向かうほど細くなるように、長手方向の両端面及び短手方向の両端面が傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のパネル構造。
【請求項6】
前記第一の面材の前記凸部、及び前記第二の面材の前記凸部は、エンボスであることを特徴とする請求項1に記載のパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたパネル構造は、いわゆるサンドイッチパネルであり、蜂の巣状に形成されたコア材の両側に二枚の面材を貼り合わせることで、軽量、高強度、高剛性の構造体としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サンドイッチパネルの場合、面材を互い違いにスライドさせようとする剪断力に弱く、またコア材に面材を接着させているため製造性が悪い。
本発明の目的は、パネル構造において、剪断方向の剛性を高め、且つ製造性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るパネル構造は、第一の面材と、第二の面材と、を備えている。第一の面材は、厚さ方向に凸となり第一の面方向に延びる凸部がパターン形成されている。第二の面材は、厚さ方向に凸となり第一の面方向と直交する第二の面方向に延びる凸部がパターン形成されている。第一の面材の凸部と第二の面材の凸部とを互い違いに嵌め合わせて第一の面材と第二の面材とが接合されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、互いに直交する方向に延びた凸部同士が嵌まり合っているため、剪断方向の剛性を高めることができる。第一の面材と第二の面材とを接合しているだけの構造なので、製造性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】第一実施形態におけるパネル構造の断面図である。
【
図5】第一実施形態におけるパネル構造の断面図である。
【
図10】第二実施形態におけるパネル構造の断面図である。
【
図11】第二実施形態におけるパネル構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《第一実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、縦方向、幅方向、及び厚さ方向とする。
図1は、第一実施形態のパネル構造11を示す図である。
図中の(a)は、パネル構造11の一方の面を示し、図中の(b)は、パネル構造11の他方の面を示している。パネル構造11は、面材12(第一の面材)と、面材13(第二の面材)と、を備えている。面材12には、面直角方向である厚さ方向に凸となり幅方向(第一の面方向)に延びる凸部14がパターン形成されている。面材13には、面直角方向である厚さ方向に凸となり縦方向(第二の面方向)に延びる凸部15がパターン形成されている。
【0010】
図2は、第一実施形態の面材12を示す図である。
図中の(a)は、面材12の内側を示し、図中の(b)は、面材12の外側を示している。面材12は金属製であるが、これに限定されるものではなく、樹脂製でもよい。凸部14は、エンボスであり、面材12を外側から見ると、厚さ方向に凹となる凹部である。凸部14は、厚さ方向から見て幅方向に細長い長方形であり、長手方向の寸法Laと短手方向の寸法Lbとの比が、ここでは約3:1である。凸部14は、長手方向の両端面同士及び短手方向の両端面同士が略平行であり、面材12を内側から見ると、略四角柱状に形成されている。凸部14は、長手方向の並びを列とし、短手方向の並びを行とし、一行おきに各列が長手方向に半周期分だけずれた千鳥配置にされている。長手方向の間隔Dbが短手方向の寸法Lbに対応しているが、厳密にはDb>Lbの関係となるように設定されている。短手方向における一行おきの間隔Daが長手方向の寸法Laに対応しているが、厳密にはDa>Laの関係となるように設定されている。
【0011】
図3は、第一実施形態の面材13を示す図である。
図中の(a)は、面材13の内側を示し、図中の(b)は、面材13の外側を示している。面材13は金属製であるが、これに限定されるものではなく、樹脂製でもよい。凸部15は、エンボスであり、面材13を外側から見ると、厚さ方向に凹となる凹部である。凸部15は、厚さ方向から見て幅方向に細長い長方形であり、長手方向の寸法Laと短手方向の寸法Lbとの比が、ここでは約3:1である。凸部15は、長手方向の両端面同士及び短手方向の両端面同士が略平行であり、面材12を内側から見ると、略四角柱状に形成されている。凸部15は、長手方向の並びを列とし、短手方向の並びを行とし、一行おきに各列が長手方向に半周期分だけずれた千鳥配置にされている。長手方向の間隔Dbが短手方向の寸法Lbに対応しているが、厳密にはDb>Lbの関係となるように設定されている。短手方向における一行おきの間隔Daが長手方向の寸法Laに対応しているが、厳密にはDa>Laの関係となるように設定されている。
【0012】
面材12及び面材13は、プレス加工によって成形される。具体的には、表面に凹凸のあるエンボスロールを素材に圧接させ、連続加工された面材から必要なパターンを切り出すか、又は切り出した素材に位置合わせをしてエンボスを付与する。パネル構造11は、凸部14及び凸部15を互い違いに嵌め合わせて、面材12と面材13とを接合することで構成される。面材12と面材13との接合は、一方における各凸部の天面を他方の内面に接着させたり、溶接したり、ボルトやリベットによって締結したりして、任意の方法を採用できる。パネル構造11は、電機盤や自動販売機等、強度が必要な主に内部構造のパネルに適用される。
【0013】
図4は、第一実施形態におけるパネル構造11の断面図である。
図中の(a)は、パネル構造11を縦方向の一方から見た状態を示している。図中の(b)は、パネル構造11における厚さ方向の中心を通り、縦方向及び幅方向に沿ったA‐A断面を、面材12の側から見た状態を示している。縦方向に延びる凸部14と、幅方向に延びる凸部15とは、全て同一のパターンである。面材12に対する凸部14の始点や終点、及び面材13に対する凸部15の始点や終点は、異なっているため、面材12と面材13とは同一品ではないが、一方に対して他方を厚さ方向回りに90度だけ回転させたパターンが形成されている。
【0014】
図5は、第一実施形態におけるパネル構造11の断面図である。
図中の(a)は、パネル構造11を厚さ方向の一方から見た状態を示している。図中の(b)は、凸部14における短手方向の中心を通り、幅方向及び厚さ方向に沿ったB‐B断面を、縦方向の一方から見た状態を示している。図中の(c)は、凸部15における長手方向の中心を通り、縦方向及び厚さ方向に沿ったC‐C断面を、幅方向の一方から見た状態を示している。凸部14及び凸部15は、一方における長手方向の間隔Dbに対して他方の短手方向が嵌まり合い、短手方向の両側に隙間Gbが空くように設定されている(Db=Gb+Lb+Gb)。凸部14及び凸部15は、一方の短手方向における一行おきの間隔Daに対して他方の長手方向が嵌まり合い、長手方向の両側に隙間Gaが空くように設定されている(Da=Ga+La+Ga)。隙間Ga及び隙間Gbは、夫々、例えば0.2~1.0mm程度である。
【0015】
《作用効果》
次に、第一実施形態の主要な作用効果について説明する。
パネル構造11は、面材12と、面材13と、を備えている。面材12は、厚さ方向に凸となり幅方向に延びる凸部14がパターン形成されている。面材13は、厚さ方向に凸となり幅方向と直交する縦方向に延びる凸部15がパターン形成されている。凸部14と凸部15とを互い違いに嵌め合わせて面材12と面材13とが接合されている。このように、互いに直交する方向に延びた凸部14及び凸部15同士が嵌まり合っていることで、軽量でありながら剪断方向の剛性を高めることができる。すなわち、面材12と面材13とを互い違いにスライドさせようとすると、凸部14及び凸部15は、一方における長手方向の端面と他方における短手方向の端面とが互いに干渉して、剪断方向に作用する荷重を受けることができる。また、面材12と面材13とを接合しているだけの構造なので、製造性も向上する。
【0016】
面材12の凸部14、及び面材13の凸部15は、長手方向の並びを列とし、短手方向の並びを行とし、一行おきに各列が長手方向に半周期分だけずれた千鳥配置にされている。これにより、面材12では、幅方向のどの位置でも凸部14が存在することになり幅方向の曲げ剛性が向上し、面材13では、縦方向のどの位置でも凸部15が存在することになり縦方向の曲げ剛性が向上する。したがって、面材12及び面材13を接合したパネル構造11は、軽量でありながら縦方向及び幅方向の双方で曲げ剛性が向上する。
面材12の凸部14、及び面材13の凸部15は、長手方向の間隔Dbが短手方向の寸法Lbに対応し、短手方向における一行おきの間隔Daが長手方向の寸法Laに対応している。これにより、面材12と面材13とを互い違いにスライドさせようとすると、凸部14及び凸部15が互いに干渉して、剪断方向の剛性を高めることができる。
面材12の凸部14、及び面材13の凸部15は、パターンが同一である。これにより、エンボスロールを共通化でき、製造コストの上昇を抑制することができる。
面材12の凸部14、及び面材13の凸部15は、エンボスである。これにより、エンボスロールを用いて容易にパターン形成することができる。
【0017】
次に、比較例について説明する。
図6は、比較例を示す図である。
図中の(a)は、サンドイッチパネル21を面方向から見た状態を示している。図中の(b)は、サンドイッチパネル21における厚さ方向の中心を通り、面方向に沿ったD‐D断面を示している。サンドイッチパネル21は、面材22と、面材23と、コア材24と、を備えている。コア材24は、蜂の巣状に形成されたハニカム構造であり、コア材24の両側に、面材22及び面材23を接着剤25で貼り合わせてある。このようなサンドイッチパネル21は、軽量、高強度、高剛性の構造体となるが、面材22及び面材23を互い違いにスライドさせようとする剪断力に弱く、またコア材24に面材22及び面材23を接着させているため製造性が悪く、改善の余地があった。
【0018】
《変形例》
第一実施形態では、面材12の凸部14及び面材13の凸部15のパターンを同一にしているが、これに限定されるものではない。例えば、凸部14及び凸部15の一方を長手方向に沿って複数に分割して形成してもよい。要は、凸部14及び凸部15が干渉して、互いに縦方向及び幅方向の変位を抑止することができれば、異なるパターンを形成してあってもよい。
第一実施形態では、凸部14が幅方向に延び、凸部15が縦方向に延びている構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、凸部14の延びる方向と凸部15の延びる方向とが直交していれば、夫々、幅方向及び縦方向に対して傾いていてもよい。また、第一の方向である幅方向、及び第二の方向である縦方向だけでなく、さらに第三の方向や第四の方向に延びる凸部を組み合わせてもよい。
【0019】
第一実施形態では、一行おきに各列を長手方向に半周期分だけずらして、凸部14及び凸部15を千鳥配置にしてあるが、これに限定されるものではない。すなわち、複数行おきに各列の周期をずらしてもよい。
第一実施形態では、長手方向の寸法La、短手方向の寸法Lb、長手方向の間隔Db、及び短手方向における一行おきの間隔Daを、全て一定にしてあるが、これに限定されるものではない。すなわち、一つの面材に、長手方向の寸法Laや短手方向の寸法Lbが異なる凸部があったり、長手方向の間隔Dbや短手方向における一行おきの間隔Daが異なるパターンがあったりしてもよい。
【0020】
《第二実施形態》
《構成》
第二実施形態は、凸部14及び凸部15の他の態様を示し、先端に向かうほど細くなるように側面を傾斜させたものである。それ以外の構成については、前述した第一実施形態と同様であるため、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図7は、第二実施形態のパネル構造11を示す図である。
図中の(a)は、パネル構造11の一方の面を示し、図中の(b)は、パネル構造11の他方の面を示している。
【0021】
図8は、第二実施形態の面材12を示す図である。
図中の(a)は、面材12の内側を示し、図中の(b)は、面材12の外側を示している。凸部14は、先端に向かうほど細くなるように、長手方向の両端面及び短手方向の両端面をテーパ状に傾斜させてあり、面材12を内側から見ると、いわゆる四角錐体の頂点側を底面と平行な面で切断して取り除いた略四角錐台状に形成されている。
図9は、第二実施形態の面材13を示す図である。
図中の(a)は、面材13の内側を示し、図中の(b)は、面材13の外側を示している。凸部15は、先端に向かうほど細くなるように、長手方向の両端面及び短手方向の両端面をテーパ状に傾斜させてあり、面材13を内側から見ると、いわゆる四角錐体の頂点側を底面と平行な面で切断して取り除いた略四角錐台状に形成されている。
図10は、第二実施形態におけるパネル構造11の断面図である。
図中の(a)は、パネル構造11を縦方向の一方から見た状態を示している。図中の(b)は、パネル構造11における厚さ方向の中心を通り、縦方向及び幅方向に沿ったA‐A断面を、面材12の側から見た状態を示している。
【0022】
図11は、第二実施形態におけるパネル構造11の断面図である。
図中の(a)は、パネル構造11を厚さ方向の一方から見た状態を示している。図中の(b)は、凸部14における短手方向の中心を通り、幅方向及び厚さ方向に沿ったB‐B断面を、縦方向の一方から見た状態を示している。図中の(c)は、凸部15における長手方向の中心を通り、縦方向及び厚さ方向に沿ったC‐C断面を、幅方向の一方から見た状態を示している。凸部14及び凸部15は、テーパ状にしたことで、厚さ方向の位置に応じて、長手方向の間隔Db、短手方向の寸法Lb、短手方向における一行おきの間隔Da、及び長手方向の寸法Laが変化する。すなわち、間隔Db及びDaは、先端で最大値となり、基端で最小値となり、寸法Lb及びLaは、先端で最小値となり、基端で最大値となる。したがって、厚さ方向の全ての位置で、Db=Gb+Lb+Gb、且つDa=Ga+La+Gaの関係を維持するように設定されている。
その他の構成については、前述した第一実施形態と同様である。
【0023】
《作用効果》
次に、第二実施形態の主要な作用効果について説明する。
面材12の凸部14、及び面材13の凸部15は、先端に向かうほど細くなるように、長手方向の両端面及び短手方向の両端面が傾斜している。これにより、凸部14及び凸部15同士を嵌め合わせるときに、より嵌め合わせやすくなり、製造性が向上する。
共通した構成によってもたらされる他の作用効果については、前述した第一実施形態と同様である。
【0024】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0025】
11…パネル構造、12…面材、13…面材、14…凸部、15…凸部、21…サンドイッチパネル、22…面材、23…面材、24…コア材、25…接着剤