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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013253
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/13 20060101AFI20240125BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20240125BHJP
   B41J 11/70 20060101ALI20240125BHJP
   B41J 3/36 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
B41J29/13
B41J29/00 E
B41J29/00 B
B41J11/70
B41J3/36 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115188
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 佳正
【テーマコード(参考)】
2C055
2C058
2C061
【Fターム(参考)】
2C055CC00
2C055CC01
2C058AC06
2C058AD06
2C058AE04
2C058AF06
2C058AF51
2C058LA03
2C058LA10
2C058LA26
2C058LB02
2C058LB09
2C058LB36
2C061AP05
2C061AQ04
2C061AS06
2C061CF01
2C061CG02
2C061CG15
(57)【要約】
【課題】異なるモデルの印刷装置にデザインの統一性を持たせること。
【解決手段】電動カッター70により被印刷媒体55をカットするオートカット機能を有する印刷装置1は、印刷装置1とはモデルが異なる他の印刷装置101であって前記オートカット機能の代わりに操作ボタン125の押し下げに伴って動作する手動カッター170により被印刷媒体155を切断するマニュアルカット機能を有する他の印刷装置101に類似する外観形状を有し、他の印刷装置101に搭載された部品と同一でないICチップ35又は通信用アンテナが操作ボタン125に対応する位置の内部空間に収容されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動カッターにより被印刷媒体をカットするオートカット機能を有する印刷装置であって、
前記印刷装置とはモデルが異なる他の印刷装置であって前記オートカット機能の代わりに操作ボタンの押し下げに伴って動作する手動カッターにより被印刷媒体を切断するマニュアルカット機能を有する前記他の印刷装置に類似する外観形状を有し、
前記他の印刷装置に搭載された部品と同一でない部品又は通信用アンテナが前記操作ボタンに対応する位置の内部空間に収容されている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
電動カッターにより被印刷媒体をカットするオートカット機能を有した印刷装置であって、
前記印刷装置とはモデルが異なる他の印刷装置であって前記オートカット機能の代わりに操作ボタンの押し下げに伴って動作する手動カッターにより被印刷媒体を切断するマニュアルカット機能を有する前記他の印刷装置に類似する外観形状を有し、
前記操作ボタンに対応する位置の頂部に、前記操作ボタンのストーロークよりも小さいストロークに設定される押しボタンが設けられている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記操作ボタンが凸状に設けられ、
前記操作ボタンに対応する前記位置に形成された凸部を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記操作ボタンは、その頂部が前記他の印刷装置の外面と面一となる位置、又は、その頂部が前記他の印刷装置の外面よりも低くなる位置まで押下可能である、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記操作ボタンは、前記他の印刷装置の前部に寄って配置され、
前記凸部は、前記印刷装置の前部に寄って配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
第1の内部空間を有する筐体と、
前記筐体の外面から突出し、前記筐体と一体形成され、前記筐体の前記第1の内部空間に通じる第2の内部空間を有する凸部と、
前記第2の内部空間に収容される通信用アンテナと、を備える、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
第1の内部空間を有する筐体と、
前記筐体の外面から突出し、前記筐体と一体形成され、前記筐体の前記第1の内部空間に通じる第2の内部空間を有する凸部と、
所定のストロークで往復運動する可動刃を有し、前記筐体の前記第1の内部空間に収容され、前記可動刃により被印刷媒体をカットする電動カッターと、
前記凸部の頂部に設けられ、前記可動刃の前記ストロークよりも小さなストロークで押下可能であり、前記電動カッターを作動させる押しボタンと、を備える
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、帯状の被印刷媒体にサーマルヘッドにより印刷するとともに、印刷後の被印刷媒体をカッターによりカットするラベルプリンターが開示されている。このカッターは、手動と電動のどちらでも動作する。
【0003】
一方、電動式カッターを有さず手動式カッターを有した印刷装置が市販され、手動式カッターを有さず電動式カッターを有した印刷装置が市販されている。これら印刷装置が同一製造業者によって販売される場合、後者の印刷装置が前者の印刷装置よりも高機能であるため、後者の印刷装置が上位モデルとして設定され、前者の印刷装置が下位モデルとして設定される。前者の印刷装置の場合、手動式カッターを動かすために、使用者によって操作される例えばレバー、ハンドル及びボタン等のような操作子が設けられることから、その操作子は前者の印刷装置のデザインに大きな影響を及ぼす。後者の印刷装置の場合、そのような操作子を必要としないことから、後者の印刷装置のデザインと前者の印刷装置のデザインは大幅に相違する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-1036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、異なるモデルの印刷装置にデザインの統一性を持たせることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、電動カッターにより被印刷媒体をカットするオートカット機能を有する印刷装置であって、前記印刷装置とはモデルが異なる他の印刷装置であって前記オートカット機能の代わりに操作ボタンの押し下げに伴って動作する手動カッターにより被印刷媒体を切断するマニュアルカット機能を有する前記他の印刷装置に類似する外観形状を有し、前記他の印刷装置に搭載された部品と同一でない部品又は通信用アンテナが前記操作ボタンに対応する位置の内部空間に収容されている、ことを特徴とする印刷装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異なるモデルの印刷装置にデザインの統一性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、上位モデルの印刷装置の外観を示す。
図2図2は、テープ未切断時の上位モデルの印刷装置の内部構造を示す。
図3図3は、テープ切断時の上位モデルの印刷装置の内部構造を示す。
図4図4は、下位モデルの印刷装置の外観を示す。
図5図5は、テープ未切断時の下位モデルの印刷装置の内部構造を示す。
図6図6は、テープ切断時の下位モデルの印刷装置の内部構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に開示された実施形態に限定されない。図面は例示のみのために提供されるため、本発明の範囲は図面の例示に限定されない。
【0010】
[1. 印刷装置セット]
図1は、印刷装置1の外観を示す斜視図である。図2及び図3は、印刷装置1の内部を示す断面図である。図4は、印刷装置1と姉妹機の関係にある第2の印刷装置101の外観を示す斜視図である。図5及び図6は、印刷装置101の内部を示す断面図である。印刷装置1,101は携帯型のラベルプリンターである。印刷装置1と印刷装置101は互いに姉妹機の関係にあり、印刷装置1と印刷装置101は外観形状が部分的に共通して、類似する。印刷装置101は下位モデルであり、印刷装置1は印刷装置101よりも多機能な又は高機能な上位モデルである。具体的には、印刷装置1はオートカット機能を有するところ、印刷装置101はオートカット機能の代わりにマニュアルカット機能を有する。なお、印刷装置1と印刷装置101からなる組を印刷装置セットという。
【0011】
[2. 上位モデルの印刷装置]
図1図2及び図3を参照して、上位モデルの印刷装置1について詳細に説明する。
印刷装置1は、筐体10、凸部20、回路基板30、押しスイッチ32~34、ICチップ35、フレキシブル配線36、中継基板37、フレキシブル配線38、メインボード39、搬送モーター40、カセット50、サーマルヘッド60、プラテンローラー65及び電動カッター70を備える。
【0012】
・ 筐体
筐体10は、丸みを帯びた直方体箱状に成している。筐体10の幅が筐体10の奥行き及び高さよりも小さく、筐体10の高さが筐体10の奥行きよりも小さい。筐体10の奥行き方向、幅方向及び高さ方向は互いに直交し、奥行き方向が前後方向でもあり、幅方向は左右方向でもあり、高さ方向が上下方向でもある。上下方向は必ずしも鉛直方向ではない。
【0013】
筐体10は樹脂製である。筐体10は、第1の内部空間としての中空17をその内側に有する。筐体10は、その前面12の上下方向中央部に排出口18を有する。印刷済みの帯状のテープ55がこの排出口18から筐体10の外に排出される。
【0014】
筐体10は、その内側にカセット50を収容する。筐体10の一部が筐体10の他の部分に対して開閉可能又は着脱可能に設けられている。筐体10の一部が筐体10の他の部分に対して開かれ、又は外されると、カセット50が露出される。そのため、カセット50の着脱及び交換が可能となる。
【0015】
・ 凸部
筐体10は、その上面11に樹脂製の凸部20を有する。凸部20は、筐体10の上面11に筐体10と一体形成されていて、筐体10の上面11から上方に突出する。凸部20は、筐体10の上面11のうち、その上面11の前の縁に寄って配置されている。凸部20が筐体10に形成される位置は、後述の印刷装置101の操作ボタン125が筐体110に設けられる位置に対応する位置である。凸部20は、直方体型又は四角錐台型に成している。凸部20は、第2の内部空間としての中空27をその内側に有する。凸部20の中空27と筐体10の中空17は互いに連なって一体化されている。凸部20は、後述の印刷装置101の操作ボタン125を模した擬似的なものである。凸部20は押下不能である。
【0016】
凸部20は、押下可能な3つの操作子22~24をその頂部21に有する。操作子22~24が後述の押しスイッチ32~34の上にそれぞれ配置される。操作子22と押しスイッチ32の組みは印刷装置1の電源のオン・オフ用の押しボタン92であり、操作子23と押しスイッチ33の組は印刷装置1の無線通信機能のオン・オフ用の押しボタン93であり、操作子24と押しスイッチ34の組は印刷装置1のオートカット機能を作動させるための押しボタン94である。
【0017】
押しボタン92~94のストロークは、後述の操作ボタン125のストロークよりも小さい。押しボタン92~94のストロークは、後述の可動刃72のストロークよりも小さい。押しボタン92~94のストロークとは、操作子22~24が最も上にある場合の操作子22~24の位置から、操作子22~24が最も下にある場合の操作子22~24の位置までの距離のことをいう。可動刃72のストロークとは、可動刃72が直線的に往復運動するところその可動刃72の可動範囲のことをいう。
【0018】
・ 回路基板、押しスイッチ及びICチップ
回路基板30、押しスイッチ32~34及びICチップ35は、凸部20の中空27に収容されている。回路基板30は、凸部20の頂部21の下方において頂部21に対向するよう凸部20の内側に取り付けられている。押しスイッチ32~34は、回路基板30に実装されている。押しスイッチ32~34はそれぞれ操作子22~24の下に配置される。操作子22が押下されると、押しスイッチ32が操作子22によって押され、操作子23が押下されると、押しスイッチ33が操作子23によって押され、操作子24が押下されると、押しスイッチ34が操作子24によって押される。押しスイッチ32~34は、例えばタクタイルスイッチ、モーメンタリースイッチ、ドームスイッチ、メンブレンスイッチ又は感圧スイッチである。なお、図2及び図3において、操作子24及び押しスイッチ34はそれぞれ操作子22及び押しスイッチ32の背後に隠れている。
【0019】
ICチップ35は、回路基板30に実装されている。このICチップ35は、後述の電動カッター70の動力源となるモーターを制御する。ICチップ35は下位モデルの印刷装置101に搭載された部品の何れとも同一ではなく、ICチップ35に相当する回路は、下位モデルの印刷装置101に搭載されていない。つまり、ICチップ35の型番と同じ型番のICチップは下位モデルの印刷装置101に搭載されていない。型番とは、それに対応づけられた部品の種類を特定するものである。
【0020】
回路基板30はアンテナを有する。アンテナは回路基板30にパターニングされているか、表面実装されている。アンテナは、例えば無線LAN規格及びBluetooth(登録商標)規格等のような所定規格の電波を送受する。このアンテナを通じた他の機器との無線通信は、他の機器から印刷装置1への印刷データの転送と、印刷装置1から他の機器へのデータの転送と、他の機器による印刷装置1の設定とに利用される。
【0021】
回路基板30は、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)、リード線及びワイヤーハーネス等のようなフレキシブル配線36、中継基板37及びフレキシブル配線38等を介してメインボードに接続されている。フレキシブル配線36、中継基板37、フレキシブル配線38及びメインボード39は筐体10に収容されている。
【0022】
なお、回路基板30、アンテナ、押しスイッチ32~34及びICチップ35以外の部品が凸部20に収容されてもよい。凸部20に収容される部品は下位モデルの印刷装置101に搭載された部品の何れとも同一ではなく、凸部20に収容される部品に相当する部品は下位モデルの印刷装置101に搭載されていないことが好ましい。
【0023】
・ 搬送モーター
搬送モーター40は筐体10内に取り付けられている。搬送モーター40は伝動機構を介してトルクを後述のプラテンローラー65及び巻き取りリール58に出力する。
【0024】
・ カセット
カセット50は、筐体10に対して着脱可能である。カセット50は、カセットケース51、元巻きリール52、元巻きリール53、巻き取りリール58、テープロール54及びリボンロール56を有する。
【0025】
リール52,53,58はこれらの中心軸が互いに平行となって、カセットケース51内に回転可能に取り付けられている。元巻きリール52がテープロール54の中央に装着されており、そのテープロール54がカセットケース51に収容されている。テープロール54は、被印刷媒体としてのテープ55が巻回されたものである。テープ55は、テープロール54からカセットケース51の上面の外側まで案内されている。テープ55は、基材、粘着材及びテープ本体が順にラミネートされたラミネートであり、粘着材は、基材から剥離可能である。元巻きリール53がリボンロール56の中央に装着されており、そのリボンロール56がカセットケース51に収容されている。リボンロール56は、熱転写用のインクリボン57が巻回されたものである。インクリボン57は、リボンロール56からカセットケース51の外側に案内されて、カセットケース51の外側においてテープ55に重ねられて、そこからカセットケース51の内側の巻き取りリール58まで案内されている。
【0026】
カセット50が筐体10内に収容されると、リール52,53,58が後ろから前へ順に配列され、テープ55がテープロール54から排出口18まで案内されるとともに、リール巻き取りリール58が伝動機構を介して搬送モーター40に接続される。搬送モーター40が巻き取りリール58を回転駆動すると、インクリボン57が元巻きリール53から巻き取りリール58の方へ引き出されて、巻き取りリール58に巻き取られる。
【0027】
・ サーマルヘッド及びプラテンローラー
サーマルヘッド60及びプラテンローラー65は筐体10の内側において排出口18から後ろに離れた箇所に取り付けられている。プラテンローラー65がサーマルヘッド60の上に配置されて、バネ等によってサーマルヘッド60に押し当てられる。カセット50が筐体10内に収容されると、テープ55とインクリボン57の互いに重なった部分がプラテンローラー65とサーマルヘッド60との間に挟まれる。
【0028】
プラテンローラー65が伝動機構を介して搬送モーター40に接続されている。搬送モーター40がプラテンローラー65を回転駆動すると、搬送力がプラテンローラー65からテープ55及びインクリボン57に与えられて、テープ55が排出口18の方へ搬送されるとともに、インクリボン57が巻き取りリール58の方へ搬送される。
【0029】
サーマルヘッド60は、プラテンローラー65の回転軸に対して平行な方向に配列された複数の発熱体を有する。これら発熱体が個別に発熱することによって、発熱体によって加熱されたインクがインクリボン57からテープ55に転写される。これにより文字、数字、記号及び絵文字等の像がテープ55に、特にテープ本体の表面に印刷される。
【0030】
・ 電動カッター
電動カッター70は、筐体10の内側において排出口18の近傍に設置されている。電動カッター70は、テープ55を切断する。ここで、電動カッター70はフルカット機能若しくはハーフカット機能又はこれら両方の機能を有する。フルカット機能とは、電動カッター70がテープ55の表面から裏面までテープ55に切り込みを入れることをいう。ハーフカット機能とは、電動カッター70がテープ55のテープ本体の表面から粘着層まで切り込みを入れることをいう。
【0031】
電動カッター70は、固定刃71と、少なくとも1つの可動刃72と、駆動機構73とを有する。固定刃71は、カセット50と排出口18の間において筐体10に固定されている。可動刃72は、カセット50と排出口18の間においてガイドを介して筐体10に取り付けられている。可動刃72は、固定刃71との間にテープ55を置いて固定刃71の上に配置され、ガイドによって上下に案内される。ガイドによる可動刃72の可動範囲、つまり可動刃72のストロークは、押しボタン92~94のストロークよりも大きい。駆動機構73は、固定刃71に対して可動刃72を接離させるよう可動刃72を上下動させる。駆動機構73は、モーターと、モーターの回転運動を可動刃72の上下運動に変換する伝動機構と、を有する。駆動機構73が可動刃72を固定刃71の方へ往動させると、テープ55が可動刃72及び固定刃71によって切断される。駆動機構73が可動刃72を固定刃71から復動させると、可動刃72が固定刃71から上方に離れる。なお、電動カッター70がフルカット機能とハーフカット機能のどちらかを有する場合、可動刃72の数が1である。電動カッター70がフルカット機能とハーフカット機能の両方を有する場合、可動刃72の数が2であり、一方の可動刃72がフルカット用であり、他方の可動刃72がハーフカット用であり、駆動機構73がクラッチを用いて2つの可動刃72のうちどちらかを選択的に上下動させる。
【0032】
・ 印刷装置の動作
印刷装置1の印刷動作が開始すると、搬送モーター40がプラテンローラー65及び巻き取りリール58を回転駆動する。そうすると、テープ55がテープロール54から排出口18へ搬送され、インクリボン57がリボンロール56から巻き取りリール58へ搬送される。テープ55及びインクリボン57の搬送中、サーマルヘッド60がインクリボン57からテープ55に像を熱転写することによって、像がテープ55に印刷される。その後、搬送モーター40が停止して、テープ55及びインクリボン57の搬送が止まる。その後、駆動機構73が可動刃72を固定刃71の方へ移動させて、テープ55が固定刃71及び可動刃72によって切断される。その後、駆動機構73が可動刃72を固定刃71から離間させる。これにより印刷装置1の印刷動作が終了する。
【0033】
なお、印刷装置1が印刷動作を行っていない時に、使用者が押しボタン94を押した場合、駆動機構73が可動刃72を固定刃71に近づけた後に固定刃71から離間させる。これにより、テープ55が切断される。
【0034】
[3. 下位モデルの印刷装置]
図4図5及び図6を参照して、下位モデルの印刷装置101について詳細に説明する。なお、印刷装置101と印刷装置1の間で互いに対応する構成要素の参照符号は、下二桁が共通する。
【0035】
印刷装置101は、筐体110、操作ボタン125、回路基板130,押しスイッチ132,133、メインボード139、搬送モーター140、カセット150、サーマルヘッド160、プラテンローラー165及び手動カッター170を備える。
【0036】
・ 筐体、操作ボタン、押しボタン及び押しスイッチ
筐体110は、その上面111に装着口119を有する。装着口119は、筐体110の上面111の前の縁に寄って配置されている。
【0037】
操作ボタン125は装着口119に嵌め込まれている。操作ボタン125の一部が装着口119から上方に突出し、操作ボタン125の一部が筐体110内に配置されている。操作ボタン125は、その下端の外周に外方向に突出するフランジ126を有する。操作ボタン125が筐体110内のバネ128の弾性力によって上方に付勢され、操作ボタン125のフランジ126が装着口119の縁に引っ掛かることによって操作ボタン125が最も上の位置に保持されている。操作ボタン125がバネ128の弾性力に抗して押下されると、操作ボタン125が下に移動する。操作ボタン125は、その頂部が筐体110の上面111と面一となる位置、又は、その頂部が筐体110の上面111よりも低くなる位置まで押下可能である。操作ボタン125の上下動のストロークは、上位の印刷装置1における押しボタン92~94のストロークよりも大きい。操作ボタン125のストロークとは、操作ボタン125が最も上にある場合の操作ボタン125の位置から、操作ボタン125が最も下にある場合の操作ボタン125の位置までの距離のことをいう。
【0038】
印刷装置101の筐体110と印刷装置1の筐体10は、次の点で外観上類似し、又は共通している。筐体110,10は、共に、丸みを帯びた直方体箱状に成している。筐体110,10共に、排出口118,18が筐体110,10の前面112,12の上下方向中央部にそれぞれ形成されている。筐体110,10は、共に、幅が奥行き及び高さよりも小さい。筐体110,10は、共に、高さが奥行きよりも小さい。筐体110の奥行き、幅及び高さの比率は筐体10の奥行き、幅及び高さに比率に等しく、ここでいう“等しい”とは、完全に等しいことと、ほぼ等しいことを含む意である。なお、筐体110の奥行き、幅及び高さは筐体10の奥行き、幅及び高さにそれぞれ等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
印刷装置101の筐体110及び操作ボタン125と印刷装置1の筐体10及び凸部20は、次の点で外観上類似し、又は共通している。筐体110に対する操作ボタン125の相対的な位置と、筐体10に対する凸部20の相対的な位置とは、同一又は近似する。筐体110に対する操作ボタン125の大きさと、筐体10に対する凸部20の相対的な大きさとは、同一又は近似する。
【0040】
従って、印刷装置1と印刷装置101は統一性のある外観形状を有しており、印刷装置1と印刷装置101は外観形状が互いに類似する。印刷装置1,101の外観形状が互いに類似するとは、これらの外観形状が統一性のあるものと需要者に感じさせることをいう。なお、印刷装置1の外観上の色又は模様は印刷装置101の外観上の色又は模様と同一又は類似してもよいし、非類似であってもよい。
【0041】
操作子122,123は、前後に並んで、筐体110の上面111に設けられている。
押しスイッチ132,133は、操作子122,123の下にそれぞれ配置されている。押しスイッチ132,133は、筐体110内に収容された回路基板130に搭載されている。押しスイッチ132と操作子122の組が印刷装置101の電源のオン・オフ用のボタン192であり、押しスイッチ133と操作子123の組が印刷装置1の無線通信機能のオン・オフ用のボタンである。操作子122が押下されると、押しスイッチ132が操作子122によって押され、操作子123が押下されると、押しスイッチ133が操作子123によって押される。
【0042】
・ メインボード、搬送モーター、サーマルヘッド、プラテンローラー及びカセット
印刷装置1のメインボード39、搬送モーター40、サーマルヘッド60及びプラテンローラー65が筐体10の内側に取り付けられるのと同様にして、印刷装置101のメインボード139、搬送モーター140、サーマルヘッド160及びプラテンローラー165が筐体110の内側に取り付けられる。
【0043】
印刷装置1では、アンテナが回路基板30に搭載されているのに対して、印刷装置101では、アンテナがメインボード139に搭載されている。また、印刷装置1では、押しスイッチ32~34が搭載された回路基板30が凸部20の中空27に収容されているのに対して、印刷装置101では、押しスイッチ132,133が搭載された回路基板130が筐体110の中空117に収容されている。それ以外については、印刷装置1のメインボード39と印刷装置101のメインボード139は同様である。
【0044】
印刷装置101の搬送モーター140、サーマルヘッド160及びプラテンローラー165は、印刷装置1の搬送モーター40、サーマルヘッド60及びプラテンローラー65とそれぞれ同様である。
【0045】
印刷装置1のカセット50が筐体10に収容されるのと同様にして、印刷装置101のカセット150が筐体110に収容される。印刷装置1のカセット50は印刷装置101に用いることができ、印刷装置101のカセット150は印刷装置1に用いることができる。カセット150はカセット50と同様である。そのため、カセット150のカセットケース151、元巻きリール152、元巻きリール153、巻き取りリール158、テープロール154、テープ155、リボンロール156及びインクリボン157の説明は省略される。
【0046】
・ 手動カッター
手動カッター170は、筐体110の内側且つ操作ボタン125の下方において排出口118の近傍に設置されている。手動カッター170は、操作ボタン125の押下に伴って切断動作をする。
【0047】
手動カッター170は、固定刃171と、少なくとも1つの可動刃172と、連結部材174とを有する。固定刃171及び可動刃172の取り付け位置は、印刷装置1における固定刃71及び可動刃72の取り付け位置と同じである。可動刃172は、ガイドによって上下に案内される。可動刃172は、連結部材174に連結され、連結部材174は、操作ボタン125に連結されている。
【0048】
使用者がバネ128の弾性力に抗して操作ボタン125を押下すると、可動刃172が固定刃171の方へ移動し、テープ155が可動刃172及び固定刃171によって切断される。使用者が操作ボタン125の押し込みを解除すると、操作ボタン125、可動刃172及び連結部材174が上に移動する。
【0049】
[4. 有利な効果]
(1) 共通の一貫したデザインコンセプトが印刷装置1,101に採用され、印刷装置1,101は統一性のある外観形状を有し、印刷装置1,101は外観形状が互いに類似する。具体的には、印刷装置1の筐体10に対する凸部20の相対的な位置及び大きさと、印刷装置101の筐体110に対する操作ボタン125の相対的な位置及び大きさとは、同一又は近似する。共通のデザインコンセプトを有した印刷装置1,101は付加価値が高い。
【0050】
(2) 共通のデザインコンセプトが印刷装置1,101に採用されるため、印刷装置1,101の外観形状は印刷装置1,101の結びつき及び共通性を需要者に感じさせるとともに、需要者に対する訴求力を高める。例えば、下位モデルの印刷装置101を購入した使用者は、印刷装置101を気に入れば、印刷装置101と共通のデザインコンセプトを有した印刷装置1の購入意欲を持つ。
【0051】
(3) 印刷装置1,101が共通のデザインコンセプトを有し、印刷装置1,101の外観形状が互いに類似するため、印刷装置1,101が姉妹機の関係にあることが需要者に明確に伝わる。
【0052】
(4) 印刷装置1が印刷装置101の上位になるため、印刷装置1は印刷装置101に非搭載の部品を備えることになる。例えば、印刷装置1は押しスイッチ34及びICチップ35を備えるところ、押しスイッチ34及びICチップ35に相当する部品が印刷装置101に搭載されていない。印刷装置101に非搭載の部品が凸部20に収容されているため、印刷装置1の筐体10が印刷装置101に筐体110と比して大型化することを抑えられる。そのため、印刷装置1,101に共通のデザインコンセプトを採用することができる。
【0053】
(5) 凸部20が筐体10に対して相対的に動かないため、凸部20の中空27を有効利用することができる。上述のように、凸部20の中空27を回路基板30、アンテナ、押しスイッチ32~34及びICチップ35の搭載スペースに有効利用することができる。
【0054】
(6) 凸部20が筐体10の外面から上方に突出するため、凸部20の周囲はその下方を除いて空間とされている。そのため、アンテナで送受する電波が干渉されない上、アンテナの受信感度が高い。
【0055】
(7) 印刷装置1の押しボタン92~94のストロークが印刷装置101の操作ボタン125のストロークよりも小さい。そのため、印刷装置1は印刷装置101よりも使い勝手がよい。
【0056】
(8) カッター70が電動式であり、押しボタン93のストロークが可動刃72のストロークよりも小さい。そのため、カッター70の可動刃72を容易に動作させることができる。
【0057】
[5. 付言]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態及び図示例に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
<付記>
<請求項1>
電動カッターにより被印刷媒体をカットするオートカット機能を有する印刷装置であって、
前記印刷装置とはモデルが異なる他の印刷装置であって前記オートカット機能の代わりに操作ボタンの押し下げに伴って動作する手動カッターにより被印刷媒体を切断するマニュアルカット機能を有する前記他の印刷装置に類似する外観形状を有し、
前記他の印刷装置に搭載された部品と同一でない部品又は通信用アンテナが前記操作ボタンに対応する位置の内部空間に収容されている、
ことを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
電動カッターにより被印刷媒体をカットするオートカット機能を有した印刷装置であって、
前記印刷装置とはモデルが異なる他の印刷装置であって前記オートカット機能の代わりに操作ボタンの押し下げに伴って動作する手動カッターにより被印刷媒体を切断するマニュアルカット機能を有する前記他の印刷装置に類似する外観形状を有し、
前記操作ボタンに対応する位置の頂部に、前記操作ボタンのストーロークよりも小さいストロークに設定される押しボタンが設けられている、
ことを特徴とする印刷装置。
<請求項3>
前記操作ボタンが凸状に設けられ、
前記操作ボタンに対応する前記位置に形成された凸部を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記操作ボタンは、その頂部が前記他の印刷装置の外面と面一となる位置、又は、その頂部が前記他の印刷装置の外面よりも低くなる位置まで押下可能である、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記操作ボタンは、前記他の印刷装置の前部に寄って配置され、
前記凸部は、前記印刷装置の前部に寄って配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
<請求項6>
第1の内部空間を有する筐体と、
前記筐体の外面から突出し、前記筐体と一体形成され、前記筐体の前記第1の内部空間に通じる第2の内部空間を有する凸部と、
前記第2の内部空間に収容される通信用アンテナと、を備える、
ことを特徴とする印刷装置。
<請求項7>
第1の内部空間を有する筐体と、
前記筐体の外面から突出し、前記筐体と一体形成され、前記筐体の前記第1の内部空間に通じる第2の内部空間を有する凸部と、
所定のストロークで往復運動する可動刃を有し、前記筐体の前記第1の内部空間に収容され、前記可動刃により被印刷媒体をカットする電動カッターと、
前記凸部の頂部に設けられ、前記可動刃の前記ストロークよりも小さなストロークで押下可能であり、前記電動カッターを作動させる押しボタンと、を備える
ことを特徴とする印刷装置。
【符号の説明】
【0058】
1 印刷装置
20 凸部
35 ICチップ
70 電動カッター
92,93,94 押しボタン
101 第2の印刷装置(他の印刷装置)
125 操作ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6