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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132536
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0338 20130101AFI20240920BHJP
【FI】
G06F3/0338 411
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043339
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 聡
【テーマコード(参考)】
5B087
【Fターム(参考)】
5B087BC02
5B087BC34
(57)【要約】
【課題】操作体の傾倒角度を可動電極の傾倒角度よりも大きく取りながら、可動電極の傾倒方向及び傾倒角度を検出しやすくすることができる入力装置を提供する。
【解決手段】入力装置1は、段部21を含む基体2と、基体2に固定された固定電極3と、段部21を介して固定電極3に対向し、固定電極3に対して傾倒可能な可動電極4と、操作体支点F及び押上部50を含み、操作体支点Fを中心にして揺動可能に基体2に保持され、押上部50が作用点Aとなって可動電極4を固定電極3に対して傾倒させる操作体5と、を備える。操作体5が操作力を受けたときは、操作力が押上部50によって可動電極4に伝えられ、可動電極4が、操作体支点Fを挟んで押上部50と反対側に存在する段部21を傾倒支点F1として傾倒して、固定電極3及び可動電極4間の静電容量を変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
段部を含む基体と、
前記基体に固定された固定電極と、
前記段部を介して前記固定電極に対向し、前記固定電極に対して傾倒可能な可動電極と、
操作体支点及び押上部を含み、前記操作体支点を中心にして揺動可能に前記基体に保持され、前記押上部が作用点となって前記可動電極を前記固定電極に対して傾倒させる操作体と、を備え、
前記段部が、前記操作体支点の両側に存在し、
前記押上部が、前記段部と前記操作体支点との間に存在し、
前記操作体が操作力を受けないときは、前記可動電極が、前記段部に接触し、前記固定電極と一定間隔をあけて配置され、
前記操作体が操作力を受けたときは、前記操作力が前記押上部によって前記可動電極に伝えられ、前記可動電極が、前記操作体支点を挟んで前記押上部と反対側に存在する前記段部を傾倒支点として傾倒して、前記固定電極及び前記可動電極間の静電容量を変化させる、
入力装置。
【請求項2】
前記基体が、前記段部を別体として含み、
前記段部が、前記固定電極に貼り付けられた絶縁シートである、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記段部が、第1段部であり、
前記基体が、前記第1段部と前記操作体支点との間に存在する第2段部を更に含み、
前記操作体が操作力を受けたときは、前記操作力が前記押上部によって前記可動電極に伝えられ、前記可動電極が、前記操作体支点を挟んで前記押上部と反対側に存在する前記第2段部を傾倒支点として傾倒して、前記固定電極及び前記可動電極間の静電容量を変化させ、
前記操作体が操作力を更に受けたときは、前記第2段部よりも外側に存在する第1段部を傾倒支点として前記可動電極が傾倒して、前記固定電極及び前記可動電極間の静電容量を更に変化させる、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項4】
前記固定電極が円形又は正多角形をなし、
前記段部が、前記固定電極の外周に沿って存在する、
請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記可動電極を前記固定電極に近づける向きに押し付ける弾性部材を更に備え、
請求項4に記載の入力装置。
【請求項6】
前記固定電極が、円環状に配置された複数の扇形電極を含み、
前記可動電極が、円環状をなす、
請求項5に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に入力装置に関し、より詳細には静電容量方式の入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静電容量式センサーが開示されている。この静電容量式センサーは、第1の基板と、第2の基板と、入力軸部と、を具備する。ここで、第1の基板は、片面に第1の電極部が配置されている。また第2の基板は、第1の基板と対向配設され、かつ、片面に90°角度間隔で配置された第2の電極部を有する。また入力軸部は、第1の基板に固定されている。
【0003】
そして、第1の電極部及び第2の電極部がそれぞれ熱膨張率の小さい非導電性薄膜で被覆されている。さらに第1の電極部側の非導電性薄膜と第2の電極部側の非導電性薄膜とを圧接させるべく、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方が付勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06-324801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の静電容量式センサーでは、入力軸部が操作されていない待機状態においては、第1の基板に配置された第1の電極部と、第2の基板に配置された第2の電極部との間の距離が比較的短い。そのため、第2の基板に対して第1の基板が傾倒する角度が小さい場合には、第1の基板の傾倒方向及び傾倒角度を検出しやすいと考えられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の静電容量式センサーでは、第2の基板に対して第1の基板が傾倒する角度には限界がある。つまり、入力軸部が傾倒できる角度には限界がある。換言すれば、第1の基板が傾倒可能な範囲内という制約の下で、入力軸部を傾倒させることができるに過ぎない。
【0007】
このように、特許文献1の静電容量式センサーでは、入力軸部の傾倒角度を大きく取ることが困難である。仮に入力軸部の傾倒角度を大きく取ろうとすると、待機状態における第1の電極部と第2の電極部との間の距離を長くせざるを得ない。ところが、第1の電極部と第2の電極部との間の距離が長くなるほど、第1の基板の傾倒方向及び傾倒角度を検出しにくくなると考えられる。
【0008】
本開示の目的は、操作体の傾倒角度を可動電極の傾倒角度よりも大きく取りながら、可動電極の傾倒方向及び傾倒角度を検出しやすくすることができる入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る入力装置は、段部を含む基体と、前記基体に固定された固定電極と、前記段部を介して前記固定電極に対向し、前記固定電極に対して傾倒可能な可動電極と、操作体支点及び押上部を含み、前記操作体支点を中心にして揺動可能に前記基体に保持され、前記押上部が作用点となって前記可動電極を前記固定電極に対して傾倒させる操作体と、を備える。前記段部が、前記操作体支点の両側に存在する。前記押上部が、前記段部と前記操作体支点との間に存在する。前記操作体が操作力を受けないときは、前記可動電極が、前記段部に接触し、前記固定電極と一定間隔をあけて配置される。前記操作体が操作力を受けたときは、前記操作力が前記押上部によって前記可動電極に伝えられ、前記可動電極が、前記操作体支点を挟んで前記押上部と反対側に存在する前記段部を傾倒支点として傾倒して、前記固定電極及び前記可動電極間の静電容量を変化させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、操作体の傾倒角度を可動電極の傾倒角度よりも大きく取りながら、可動電極の傾倒方向及び傾倒角度を検出しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る入力装置を示す斜視図である。
図2図2は、同上の入力装置の分解斜視図である。
図3図3Aは、基体の平面図である。図3Bは、固定電極の平面図である。
図4図4は、同上の入力装置の待機状態を示す断面図である。
図5図5は、同上の入力装置の操作状態を示す断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る入力装置の基体の分解斜視図である。
図7図7は、同上の基体の平面図である。
図8図8は、同上の入力装置の待機状態を示す断面図である。
図9図9は、同上の入力装置の操作状態を示す断面図である。
図10図10は、第3実施形態に係る入力装置を示す斜視図(一部透視)である。
図11図11は、同上の入力装置の分解斜視図である。
図12図12Aは、基体の平面図である。図12Bは、固定電極の平面図である。
図13図13は、同上の入力装置の待機状態を示す断面図である。
図14図14は、同上の入力装置の第1操作状態を示す断面図である。
図15図15は、同上の入力装置の第2操作状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.概要
特許文献1の静電容量式センサーでは、入力軸部が、第1の基板に固定されているので、入力軸部の傾倒角度を大きくすると、必然的に第1の基板(第1の電極部)の傾倒角度も大きくなる。そうすると、第1の電極部が、第2の基板の第2の電極部から離れすぎてしまい、静電容量の変化が小さくなり、検出困難となる。一方、第1の基板の傾倒角度が大きくなると、第1の電極部と第2の電極部とが接触するおそれもある。
【0013】
そこで、本発明者は、以下のような入力装置1を開発した。すなわち、図4に示すように、入力装置1は、基体2と、固定電極3と、可動電極4と、操作体5と、を備える。そして、操作体5が操作力を受けないときは、可動電極4が、段部21に接触し、固定電極3と一定間隔をあけて配置される。一方、操作体5が操作力を受けたときは、図5に示すように、操作力が押上部50によって可動電極4に伝えられ、可動電極4が、操作体支点Fを挟んで押上部50と反対側に存在する段部21を傾倒支点F1として傾倒して、固定電極3及び可動電極4間の静電容量を変化させる。
【0014】
本実施形態では、可動電極4と操作体5とを分離し、可動電極4及び操作体5の各々の支点を別々に設けている。すなわち、可動電極4の支点は傾倒支点F1であり、操作体の支点は操作体支点Fである。これにより、可動電極4の傾倒角度を操作体5の傾倒角度よりも小さくすることができる。
【0015】
したがって、本実施形態によれば、操作体5の傾倒角度を可動電極4の傾倒角度よりも大きく取りながら、可動電極4の傾倒方向及び傾倒角度を検出しやすくすることができる。
【0016】
2.詳細
(1)第1実施形態
以下、第1実施形態に係る入力装置1について、図1図5を参照して説明する。各図における各方向を示す矢印は、入力装置1の使用時の方向を規定する趣旨ではなく、説明を理解しやすくするために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。上下方向は、入力装置1の待機状態において操作体5が延びる方向である。左右方向は、操作体5が揺動する方向である。前後方向は、上下方向及び左右方向に垂直な方向である。以下、上下方向に視ることを平面視といい、前後方向に視ることを正面視という。なお、水平面は、左右方向及び前後方向を含む平面であり、水平方向は、この平面内の任意の方向である。
【0017】
(1.1)構成
図1に本実施形態に係る入力装置1を示す。本実施形態に係る入力装置1は、二方向(本実施形態では左右方向)への入力が可能な装置である。つまり、操作体5が左右方向に揺動可能である。
【0018】
本実施形態に係る入力装置1は、図2に示すように、基体2と、固定電極3と、可動電極4と、操作体5と、カバー7と、を備える。
【0019】
<基体>
基体2は、樹脂とインサート部品とが一体化されたインサート成形品である。インサート部品は、固定電極3である(図3B参照)。
【0020】
基体2は、上方に開口し、左右方向に延びる直方体の箱状をなす。すなわち、基体2は、平面視矩形状をなす底部23と、底部23の四辺から上方に突出する4つの壁部24と、を含む。底部23と4つの壁部24とで囲まれて、直方体をなす収納空間25が形成されている。
【0021】
基体2の内底面230(底部23の上面)は、3つの面に分かれている(図3A参照)。3つの面は、それぞれ平面視矩形状をなし、左右方向に並んでいる。
【0022】
3つの面のうちの中央の面は転動面231である。転動面231は、樹脂製であって、平坦な面である。
【0023】
転動面231の左右両側に固定電極面300が存在する。固定電極面300は、固定電極3が上方に露出した平坦な面である。2つの固定電極面300は、左右対称である。2つの固定電極面300は、転動面231よりも一段高い位置にある(図4参照)。2つの固定電極面300の高さは同じである。
【0024】
前後方向に対向する2つの壁部24にはU字溝26が形成されている。U字溝26は、壁部24の左右方向の中央において、上方に開口するように形成されている。2つのU字溝26は前後方向に並んでいる。2つのU字溝26は、転動面231を挟んで存在している。2つのU字溝26の中心を、操作体支点F(後述)を含む軸線が通っている(図3A及び図4参照)。
【0025】
左右方向に対向する2つの壁部24には爪27が形成されている。爪27は外方に突出するように形成されている。
【0026】
基体2は、段部21(本実施形態では4つの段部21)を含む。段部21は、樹脂製である。段部21は、前後方向に対向する2つの壁部24の各々の内側面に2つずつ形成されている。4つの段部21のうちの2つの段部21は、前後方向に並んで、左側の固定電極面300を挟んで存在している。4つの段部21のうちの残りの2つの段部21は、前後方向に並んで、右側の固定電極面300を挟んで存在している。4つの段部21は、操作体支点Fを含む軸線を対称軸として、平面視において、左右対称な仮想上の長方形の各頂点に位置する(図3A参照)。
【0027】
4つの段部21は、固定電極面300よりも一段高い位置にある(図4参照)。4つの段部21の高さは同じである。
【0028】
<固定電極>
固定電極3は、可動電極4との間に生じる静電容量を検出するために用いられる。固定電極3は、上述のように、基体2に固定されている。本実施形態では、固定電極3は、2つの矩形電極31を含む(図3B参照)。一方の矩形電極31は、左側の固定電極面300を含み、他方の矩形電極31は、右側の固定電極面300を含む。2つの矩形電極31は、操作体支点Fを含む軸線を対称軸として、平面視において、左右対称である(図3A及び図3B参照)。
【0029】
2つの矩形電極31の各々は、前後方向に突出する2つの端子32を含む。計4つの端子32のうちの2つの端子32は、前方に位置する壁部24を貫通して前方に突出している。残り2つの端子32は、後方に位置する壁部24を貫通して後方に突出している。計4つの端子32は、制御基板(図示省略)の信号パターンと接続される。なお、制御基板には、静電容量を検出、演算、及び記憶できる制御回路が形成されている。
【0030】
<操作体>
操作体5は、操作力を受ける部材であり、金属鍛造品である。操作体5は、軸部56と、転動部57と、を含む。軸部56と転動部57とは一体化されている。
【0031】
軸部56は、左向き又は右向きに直接操作力を受ける部分である。軸部56は、一方向(待機状態では上下方向)に延びる棒状をなしている。平面視において、軸部56は、円形をなす。軸部56の下端の前後両側にはリブ58が形成されている。なお、待機状態とは、操作体5が操作力を受けていない状態である(例えば図4参照)。
【0032】
転動部57は、基体2の転動面231上を転動する部分である。転動部57は、基体2の収納空間25内に収納される。転動部57は、正面視左右対称である。
【0033】
転動部57は、軸部56の下端につながっている。転動部57は、平面視長方形をなす。待機状態において、軸部56の中心を上下方向に通る軸線は、平面視において転動部57の中心を通る。
【0034】
転動部57の前後両側にはボス59が形成されている。前後のボス59は、正面視において、同径の円形をなす。前後のボス59は、それぞれ前後の壁部24のU字溝26に嵌合する。ボス59は、U字溝26内において回転可能である。正面視において、ボス59の回転中心が、操作体支点Fを含む軸線と一致する。操作体支点Fを含む軸線と、軸部56の中心を通る軸線とは、垂直に交わる。
【0035】
このように、操作体5は、操作体支点Fを含む。操作体5は、操作体支点Fを中心にして揺動可能に基体2に保持されている。図4及び図5に示すように、段部21は、操作体5の揺動方向(本実施形態では左右方向)において、操作体支点Fの両側に存在する。
【0036】
さらに操作体5は、押上部50を含む。押上部50は、転動部57の一部である。押上部50は、操作体5を左に傾倒させた場合には可動電極4の右側を押し上げ、操作体5を右に傾倒させた場合には可動電極4の左側を押し上げる部分である。
【0037】
押上部50は、支持面500と、押上面501と、を含む。支持面500は、平坦な面であって、主として待機状態において、可動電極4を支持する面である。押上面501は、凸曲面であって、主として操作状態において、可動電極4を押し上げる面である。押上面501は、支持面500と滑らかにつながっている。操作状態とは、操作体5が操作力を受けている状態である(例えば図5参照)。
【0038】
押上部50は、操作体5の揺動方向(本実施形態では左右方向)において、段部21と操作体支点Fとの間に存在する(図4参照)。押上部50の支持面500は、待機状態において、段部21よりも高い位置に存在する。押上部50の押上面501は、待機状態において、支持面500よりも低い位置に存在し、押上面501の大部分は、段部21よりも高い位置に存在する。
【0039】
<可動電極>
可動電極4は、固定電極3に対向して静電容量を生じさせ、固定電極3に対して傾斜することにより静電容量を変化させる。
【0040】
可動電極4は、操作体5と分離されている。つまり、可動電極4と操作体5とは別体である。可動電極4は、基体2の収納空間25に収納される。
【0041】
可動電極4は、平面視において、左右方向に延びるほぼ長方形をなす板金部品である。可動電極4は、中央部41と、中央部41の左右両側の電極本体部42と、を含む。中央部41と電極本体部42とは一体化されている。
【0042】
中央部41は、操作体5の支持面500上に載置される。中央部41において支持面500に接触する面は平坦な面である。
【0043】
中央部41は、平面視矩形状をなす。中央部41の中央に厚さ方向(待機状態では上下方向)に貫通する開口部410が形成されている。開口部410は、平面視において、左右方向に延びる長円状をなす。開口部410の長径は、操作体5の軸部56の外径よりも長い。開口部410の短径は、操作体5の軸部56の外径と同じである。開口部410の前後両側には切欠411が形成されている。中央部41の下方から操作体5の軸部56が開口部410に挿入され、操作体5のリブ58が切欠411に嵌合する。これにより、可動電極4に対して、操作体5の前後方向の移動が規制される。
【0044】
ただし、本実施形態では、開口部410の長径が、操作体5の軸部56の外径よりも長いため、操作体5の左右方向への揺動は規制されていない。これにより、操作体5の傾倒角度と可動電極4との傾倒角度との間にずれを生じさせることができる。具体的には、操作体5の傾倒角度を可動電極4の傾倒角度よりも大きく取ることが容易になる。このように、操作体5の揺動によって、可動電極4は、固定電極3に対して傾倒可能である。
【0045】
電極本体部42は、固定電極面300に対向する部分である。2つの電極本体部42は、2つの固定電極面300に一対一に対応している。電極本体部42において固定電極面300に対向する面は平坦な面である。2つの電極本体部42は、左右対称である。2つの電極本体部42は、中央部41よりも一段低い位置にある(図4参照)。待機状態において、2つの電極本体部42の高さは同じである。
【0046】
可動電極4は、段部21を介して固定電極3に対向している(図4参照)。具体的には、待機状態において、各電極本体部42は、2つの段部21に接触し、対応する固定電極面300と一定間隔をあけて配置される。段部21は、可動電極4が固定電極3に接触するのを抑制する機能のほか、可動電極4が傾倒する際の支点(傾倒支点F1)としての機能も有する(図5参照)。傾倒支点F1については、後述する。
【0047】
<カバー>
カバー7は、基体2の収納空間25を覆う部材である。収納空間25には、可動電極4及び操作体5の一部が収納される。カバー7は、板金部品である。カバー7は、平面視矩形状をなす蓋部71と、蓋部71の四辺から下方に突出する4つの被せ片72と、を含む。
【0048】
蓋部71の中央には厚さ方向(待機状態では上下方向)に貫通する開口部710が形成されている。開口部710は、平面視において、左右方向に延びるほぼ長方形をなす。開口部710の左右方向の長さは、開口部410の長径よりも長い。開口部710の前後方向の長さは、開口部410の短径よりも長い。開口部710の前後両側には切欠711が形成されている。切欠711は、切欠411よりも左右方向に長い。蓋部71の下方から操作体5の軸部56が開口部710に挿入される。
【0049】
前後方向に対向する2つの被せ片72には端子73が形成されている。計2つの端子73は、制御基板(図示省略)のグランドパターンと接続される。
【0050】
左右方向に対向する2つの被せ片72には穴部720が形成されている。穴部720に基体2の爪27を引っ掛けることによって、カバー7を基体2に取り付けることができる。
【0051】
カバー7は、弾性部材6を含む。本実施形態では、弾性部材6は、2つの板バネ部61を含む。2つの板バネ部61は、蓋部71において、開口部710の左右両側に形成されている。2つの板バネ部61は、左右対称であり、弾性力も同じである。
【0052】
そして、待機状態及び操作状態において、弾性部材6は、可動電極4を固定電極3に近づける向きに押し付けている(図4及び図5参照)。具体的には、左側の板バネ部61は、可動電極4の左側の電極本体部42を、段部21に接触するまで、対応する固定電極面300に近づける向きに押し付けている。同様に、右側の板バネ部61は、可動電極4の右側の電極本体部42を、段部21に接触するまで、対応する固定電極面300に近づける向きに押し付けている。このように、弾性部材6(板バネ部61)によって、可動電極4とカバー7とが電気的に接続されている。
【0053】
(1.2)動作
次に本実施形態に係る入力装置1の動作について、図4及び図5を参照して説明する。
【0054】
<待機状態>
図4は入力装置1の待機状態を示す。待機状態は、上述のように、操作体5が操作力を受けていない状態である。このときは、可動電極4が、段部21に接触し、固定電極3と一定間隔をあけて配置される。
【0055】
すなわち、待機状態において、カバー7の弾性部材6(板バネ部61)が、可動電極4の左右両側の電極本体部42を下向きに押さえ付けることにより、左右両側の電極本体部42は、それぞれ2つの段部21に突き当たって、固定電極3の固定電極面300と平行を保ちながら一定間隔をあけて対向する。
【0056】
また操作体5の押上部50の支持面500は、可動電極4の中央部41を支持している。これにより、待機状態において、操作体5の軸方向が水平面に対して垂直となる中立姿勢が保持される。
【0057】
一方、制御基板(図示省略)に形成された制御回路は、待機状態において、固定電極3と可動電極4との間の静電容量(左側の固定電極面300と電極本体部42との間の静電容量、及び右側の固定電極面300と電極本体部42との間の静電容量)の値を検出し、リファレンス値として記憶する。
【0058】
<操作状態>
図5は入力装置1の操作状態を示す。操作状態は、上述のように、操作体5が操作力を受けている状態である。操作体5を左向きに傾倒させる場合を例に挙げて説明する。操作体5が左向きに操作力を受けると、操作体支点Fを中心にして操作体5が左に傾倒する。上記の操作力が右側の押上部50によって可動電極4に伝えられる。このとき押上部50の押上面501における前後方向に延びる稜線が、可動電極4の中央部41の下面に線接触しながら、可動電極4の右側を押し上げて可動電極4を傾倒させる。上記の稜線上に作用点Aが存在する。操作体5の傾倒角度が大きくなるほど、上記の稜線は右側に移動する。そのため、可動電極4の傾倒角度は、操作体5の傾倒角度ほど大きくはならない。
【0059】
また可動電極4は、操作体支点Fを挟んで、右側の押上部50と反対側(左側)に存在する段部21を傾倒支点F1として傾倒して、固定電極3及び可動電極4間の静電容量を変化させる。すなわち、固定電極3及び可動電極4間の間隔が変化することで、静電容量が変化する。傾倒支点F1の左側では、固定電極3及び可動電極4間の間隔が狭くなって、静電容量が大きくなる。傾倒支点F1の右側では、傾倒支点F1の左側に比べて、固定電極3及び可動電極4間の間隔が広くなって、静電容量が小さくなる。
【0060】
このように、操作体5は、押上部50が作用点Aとなって可動電極4を固定電極3に対して傾倒させる。
【0061】
そして、制御回路は、操作体支点Fを挟んで左右の固定電極3及び可動電極4間の静電容量の値を検出し、リファレンス値との差分を傾倒操作による静電容量の出力とし、この出力から傾倒角度及び傾倒方向を検出する。リファレンス値との差分をとるのは、寄生容量を排し、可動電極4の動きによる静電容量の変化を検出するためである。
【0062】
(1.3)作用効果
本実施形態では、可動電極4と操作体5とを分離し、可動電極4及び操作体5の各々の支点を別々に設けている。すなわち、可動電極4の支点は傾倒支点F1であり、操作体の支点は操作体支点Fである。これにより、可動電極4の傾倒角度を操作体5の傾倒角度よりも小さくすることができる。
【0063】
また傾倒支点F1と作用点Aは、操作体支点Fを挟んで逆側にあることから、傾倒支点F1から作用点Aまでの距離は、操作体支点Fから作用点Aまでの距離よりも長くなり、操作体5の傾倒角度に対して可動電極4の傾倒角度を小さくすることができる。さらに、操作体支点Fと作用点Aとの距離を、傾倒支点F1と操作体支点Fとの距離よりも小さく設計することで、操作体5の傾倒角度に対して可動電極4の傾倒角度をより小さくすることができる。このことは、固定電極3と可動電極4とが広がりすぎて静電容量の変化が検出困難となることを防ぐ。
【0064】
したがって、本実施形態によれば、操作体5の傾倒角度を可動電極4の傾倒角度よりも大きく取りながら、可動電極4の傾倒方向及び傾倒角度を検出しやすくすることができる。
【0065】
(2)第2実施形態
次に第2実施形態に係る入力装置1について、図6図9を参照して説明する。各図における各方向を示す矢印は、第1実施形態の場合と同様に、入力装置1の使用時の方向を規定する趣旨ではなく、説明を理解しやすくするために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0066】
平面視及び正面視の定義については、第1実施形態における平面視及び正面視の定義と同様である。
【0067】
第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0068】
(2.1)構成
第2実施形態は、基体2が、段部21を別体として含む点で第1実施形態と相違する(図6及び図7参照)。第2実施形態に係る入力装置1の外観は、第1実施形態に係る入力装置1の外観(図1参照)と同様である。第2実施形態における固定電極3、可動電極4、操作体5、及びカバー7は、それぞれ第1実施形態における固定電極3、可動電極4、操作体5、及びカバー7と同様である。
【0069】
<基体>
基体2は、段部21(本実施形態では2つの段部21)を別体として含む(図6及び図7参照)。すなわち、基体2は、第1実施形態と同様に、樹脂とインサート部品(固定電極3)とが一体化されたインサート成形品であるが、第2実施形態における段部21は、インサート成形時に形成されるものではなく、インサート成形後に設置されるものである。
【0070】
具体的には、段部21は、絶縁シート210である。つまり、本実施形態では、基体2は、2つの絶縁シート210を別体として含む。
【0071】
絶縁シート210は、電気絶縁性を有する。絶縁シート210は、平面視矩形状をなし、一定の厚さを有する。絶縁シート210の左右方向の長さは、固定電極面300の左右方向の長さよりもわずかに短い(図7参照)。絶縁シート210の前後方向の長さは、固定電極面300の前後方向の長さとほぼ同じである。2つの絶縁シート210は、同形同寸である。2つの絶縁シート210の誘電率は同じである。
【0072】
2つの絶縁シート210は、操作体支点Fを含む軸線を対称軸として、平面視において、左右対称に配置されている(図7参照)。絶縁シート210は、固定電極3に貼り付けられている。2つの絶縁シート210の各々は、対応する固定電極面300の大部分を被覆している。
【0073】
図8に示すように、待機状態において、左側の絶縁シート210の左端は、可動電極4の左側の電極本体部42の左端よりも外側(左側)に存在し、右側の絶縁シート210の右端は、可動電極4の右側の電極本体部42の右端よりも外側(右側)に存在する。
【0074】
2つの絶縁シート210の上面は、固定電極面300よりも一段高い位置にある(図8参照)。2つの絶縁シート210の厚さは同じである。つまり、固定電極面300に貼り付けられた2つの絶縁シート210の高さは同じである。
【0075】
(2.2)動作
次に本実施形態に係る入力装置1の動作について、図8及び図9を参照して説明する。
【0076】
<待機状態>
図8は入力装置1の待機状態を示す。このときは、可動電極4が、段部21(絶縁シート210)に接触し、固定電極3と一定間隔をあけて配置される。
【0077】
すなわち、待機状態において、カバー7の弾性部材6(板バネ部61)が、可動電極4の左右両側の電極本体部42を下向きに押さえ付けることにより、左右両側の電極本体部42は、それぞれ2つの段部21(絶縁シート210)に突き当たって、固定電極3の固定電極面300と平行を保ちながら一定間隔をあけて対向する。
【0078】
また操作体5の押上部50の支持面500は、可動電極4の中央部41を支持している。これにより、待機状態において、操作体5の軸方向が水平面に対して垂直となる中立姿勢が保持される。
【0079】
一方、制御基板(図示省略)に形成された制御回路は、待機状態において、固定電極3と可動電極4との間の静電容量(左側の固定電極面300と電極本体部42との間の静電容量、及び右側の固定電極面300と電極本体部42との間の静電容量)の値を検出し、リファレンス値として記憶する。
【0080】
<操作状態>
図9は入力装置1の操作状態を示す。操作体5を左向きに傾倒させる場合を例に挙げて説明する。操作体5が左向きに操作力を受けると、操作体支点Fを中心にして操作体5が左に傾倒する。上記の操作力が右側の押上部50によって可動電極4に伝えられる。このとき押上部50の押上面501における前後方向に延びる稜線が、可動電極4の中央部41の下面に線接触しながら、可動電極4の右側を押し上げて可動電極4を傾倒させる。上記の稜線上に作用点Aが存在する。操作体5の傾倒角度が大きくなるほど、上記の稜線は右側に移動する。そのため、可動電極4の傾倒角度は、操作体5の傾倒角度ほど大きくはならない。
【0081】
また可動電極4は、操作体支点Fを挟んで、右側の押上部50と反対側(左側)に存在する段部21(絶縁シート210)を傾倒支点F1として傾倒して、固定電極3及び可動電極4間の静電容量を変化させる。傾倒支点F1は、可動電極4の左側の電極本体部42が段部21(絶縁シート210)の上面に線接触する稜線上に存在する。
【0082】
上記のように可動電極4が傾倒して、固定電極3及び可動電極4間の間隔が変化することで、静電容量が変化する。傾倒支点F1から右側に向かうに従って、固定電極3及び可動電極4間の間隔が広くなって、静電容量が小さくなる。
【0083】
このように、操作体5は、押上部50が作用点Aとなって可動電極4を固定電極3に対して傾倒させる。
【0084】
そして、制御回路は、操作体支点Fを挟んで左右の固定電極3及び可動電極4間の静電容量の値を検出し、リファレンス値との差分を傾倒操作による静電容量の出力とし、この出力から傾倒角度及び傾倒方向を検出する。
【0085】
(2.3)作用効果
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、操作体5の傾倒角度を可動電極4の傾倒角度よりも大きく取りながら、可動電極4の傾倒方向及び傾倒角度を検出しやすくすることができる。
【0086】
さらに本実施形態では、基体2が、段部21(絶縁シート210)を別体として含む。これにより、例えば、誘電率又は厚さの異なる絶縁シート210を用意しておけば、絶縁シート210を取り替えるだけで、その他の部品の設計変更を行わずに、入力装置1の検出感度を調整することが可能になる。
【0087】
(3)第3実施形態
次に第3実施形態に係る入力装置1について、図10図15を参照して説明する。各図における各方向を示す矢印は、入力装置1の使用時の方向を規定する趣旨ではなく、説明を理解しやすくするために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。上下方向は、入力装置1の待機状態において操作体5が延びる方向である。左右方向は、上下方向に垂直な一方向である。前後方向は、上下方向及び左右方向に垂直な方向である。なお、上(Z+)、下(Z-)、左(X-)、右(X+)、前(Y+)、及び後(Y-)とする。
【0088】
平面視及び正面視の定義については、第1~2実施形態における平面視及び正面視の定義と同様である。
【0089】
第3実施形態では、第1~2実施形態と同様の構成要素には第1~2実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0090】
(3.1)構成
図10に本実施形態に係る入力装置1を示す。本実施形態に係る入力装置1は、多方向(特に全方位)への入力が可能な装置である。入力装置1の具体例として、ジョイスティックが挙げられる。
【0091】
本実施形態に係る入力装置1は、図11に示すように、基体2と、固定電極3と、可動電極4と、操作体5と、弾性部材6と、カバー7と、操作ノブ8と、制御基板9と、を備える。
【0092】
<基体>
基体2は、樹脂とインサート部品とが一体化されたインサート成形品である。インサート部品は、固定電極3である(図12B参照)。
【0093】
基体2は、上方に開口する箱状をなす。すなわち、基体2は、底部23と、底部23から上方に突出する筒状をなす壁部24と、を含む。底部23と壁部24とで囲まれて、円柱状をなす収納空間25が形成されている。
【0094】
底部23の中央には円形をなす開口部232が上下方向に貫通している(図12A参照)。底部23の下面には、ボス235が形成されている(図11参照)。ボス235は、下方に突出している。
【0095】
開口部232の周囲に円筒リブ233が形成されている。円筒リブ233は、上方に突出している。円筒リブ233の内面は、凹曲面234を含む。凹曲面234は、操作体支点Fを中心とする仮想上の球面に沿った形状をなしている(図13図15参照)。
【0096】
円筒リブ233の周囲に固定電極面300が存在する(図12A参照)。すなわち、固定電極面300は、平面視において、円筒リブ233と壁部24とで囲まれた円環状の領域に存在する。固定電極面300は、固定電極3が上方に露出した平坦な面である。固定電極面300は、4等分されて円環状をなしている。
【0097】
壁部24には爪27が形成されている。爪27は外方に突出するように形成されている。壁部24の上面には、ボス236が形成されている。ボス236は、上方に突出している。
【0098】
基体2は、段部21(本実施形態では第1段部21)と、第2段部22と、を含む。第1段部21及び第2段部22は、樹脂製である。
【0099】
第1段部21は、壁部24の内側面に沿って円環状に形成されている(図12A参照)。換言すれば、第1段部21は、円形をなす固定電極3の外周に沿って存在する。第1段部21は、固定電極面300よりも高い位置にある(図13参照)。
【0100】
第2段部22は、円筒リブ233の外側面に沿って円環状に形成されている(図12A参照)。第2段部22は、第1段部21と操作体支点Fとの間に存在する(図13参照)。第2段部22は、固定電極面300よりも高く、第1段部21よりも低い位置にある。
【0101】
図12Aに示すように、平面視において、円筒リブ233の外周、固定電極面300の内周及び外周、第1段部21の内周、第2段部22の外周、壁部24の内周は、点Cを中心とする同心円状に配置されている。なお、平面視において、点Cは、操作体支点Fと一致する。
【0102】
<固定電極>
固定電極3は、可動電極4との間に生じる静電容量を検出するために用いられる。固定電極3は、上述のように、基体2に固定されている。本実施形態では、固定電極3は、複数(本実施形態では4つ)の扇形電極30を含む。4つの扇形電極30の各々の中心角は90°である。4つの扇形電極30は、点Cを中心として、円環状に配置されている(図12A及び図12B参照)。4つの扇形電極30は、基体2の開口部232を囲んでいる。4つの扇形電極30は、それぞれ4方向(X+,X-,Y+,Y-)に対応する電極である。
【0103】
4つの扇形電極30の各々は、端子32を含む。端子32は、壁部24を貫通して下方に突出している。端子32は、制御基板9の信号パターンと接続される。
【0104】
<操作体>
操作体5は、操作力を受ける部材である。操作体5の一部は、基体2の収納空間25に収納される。本実施形態の操作体5は、第1部材51と、第2部材52と、第3部材53と、第4部材54と、第5部材55と、を含む。
【0105】
≪第1部材≫
第1部材51は、任意の向きに直接操作力を受ける部材である。第1部材51は、一方向(以下「軸方向」といい、待機状態では上下方向)に延びる筒状をなしている。第1部材51は、樹脂部品である。第1部材51は、平面視円形をなす。ただし、第1部材51の上部は、平面視において、非円形をなす。
【0106】
第1部材51には、軸方向に貫通する軸穴510が形成されている。第1部材51の下面には、下方に開口する凹部511が形成されている(図13参照)。平面視において、凹部511は、非円形をなし、軸穴510よりも大きい。軸穴510は、凹部511と連通している。なお、操作体支点Fは、軸方向上に存在する。
【0107】
≪第2部材≫
第2部材52は、樹脂部品である。第2部材52は、筒部520と、半球部521と、を含む。筒部520と半球部521とは一体化されている。
【0108】
筒部520は、軸方向に延びている。平面視において、筒部520の上部は、第1部材51の凹部511と同形同寸の非円形をなす。筒部520の上部は、第1部材51の凹部511に、軸方向に摺動可能に嵌合される。つまり、第1部材51は、第2部材52に対して、軸方向に摺動可能であるが、軸方向を回転軸とする回転は規制される。
【0109】
筒部520には、軸方向に貫通する小径孔522が形成されている。平面視において、小径孔522の内径は、軸穴510の内径よりも大きい。
【0110】
半球部521は、筒部520の下端から下に向かうほど放射状に広がる凸曲面523を含む。具体的には、凸曲面523は、操作体支点Fを中心とする仮想上の球面に沿った形状をなしている(図13図15参照)。なお、凸曲面523を含む仮想上の球体と、上述の凹曲面234を含む仮想上の球体とは、いずれも操作体支点Fを中心としているが、前者の球体の方が後者の球体よりも大きい。
【0111】
半球部521には、軸方向に貫通する大径孔524が形成されている。平面視において、大径孔524の内径は、小径孔522の内径よりも大きい。大径孔524は、小径孔522と連通している。
【0112】
半球部521の下端において直交する2方向の両側にはリブ525が形成されている(図11参照)。
【0113】
≪第3部材≫
第3部材53は、樹脂部品である。第3部材53は、筒部530と、半球部531と、を含む。筒部530と半球部531とは一体化されている。
【0114】
筒部530は、軸方向に延びている。平面視において、筒部530の外周は、第2部材52の大径孔524の内周と同形同寸の円形をなす。筒部530の上部は、第2部材52の大径孔524に圧入嵌合されている。つまり、第3部材53は、第2部材52に固定される。
【0115】
筒部530には、軸方向に貫通する軸穴532が形成されている。平面視において、軸穴532の内径は、第1部材51の軸穴510の内径と同じである。
【0116】
半球部531は、押上部50と、凸曲面533と、を含む。
【0117】
押上部50は、例えば、操作体5を左に傾倒させた場合には可動電極4の右側を押し上げ、操作体5を右に傾倒させた場合には可動電極4の左側を押し上げる部分である。なお、本実施形態に係る入力装置1は、多方向への入力が可能であるため、操作体5の傾倒方向は左右方向に限定されない。すなわち、操作体5は、全方位に傾倒可能である。
【0118】
押上部50は、フランジ状をなしている。すなわち、平面視において、押上部50の外周は、筒部530の外周がなす円形よりも一回り大きな円形をなす。両者は、平面視において、操作体支点Fを中心とする同心円である。
【0119】
押上部50は、支持面500と、押上面501と、を含む。支持面500は、平坦な面であって、主として待機状態において、可動電極4を支持する面である(図13参照)。押上面501は、凸曲面であって、主として操作状態において、可動電極4を押し上げる面である(図14及び図15参照)。押上面501は、支持面500と滑らかにつながっている。
【0120】
押上部50は、基体2の第2段部22と操作体支点Fとの間に存在する(図13参照)。押上部50の支持面500は、待機状態において、第1段部21及び第2段部よりも高い位置に存在する。押上部50の押上面501は、待機状態において、支持面500よりも低い位置に存在し、押上面501は、第1段部21及び第2段部22よりも高い位置に存在する(図14及び図15参照)。
【0121】
凸曲面533は、押上部50の下端から下に向かうほど細くなるような形状をなしている。具体的には、凸曲面533は、操作体支点Fを中心とする仮想上の球面に沿った形状をなしている(図13図15参照)。すなわち、半球部531の凸曲面533は、基体2の円筒リブ233の凹曲面234に合致する。これにより、第3部材53は、円筒リブ233の内面に摺動可能に保持される。
【0122】
第3部材53の下面には、下方に開口する凹部534が形成されている(図13参照)。平面視において、凹部534は、円形をなし、軸穴532よりも大きい。軸穴532は、凹部534と連通している。
【0123】
≪第4部材≫
第4部材54は、コイルバネ540である。コイルバネ540は、第2部材52の小径孔522内において軸方向に収納されている。コイルバネ540は、第1部材51と第3部材53との間に介在し、第1部材51及び第3部材53にプリロードを掛けている。これにより、待機状態において、第1部材51と第3部材53とは、軸方向にわずかに離れている(図13参照)。
【0124】
≪第5部材≫
第5部材55は、金属部品である。第5部材55は、軸部550と、先端部551と、を含む。
【0125】
軸部550は、軸方向に延びる棒状をなす部分である。平面視において、軸部550の外径は、第1部材51の軸穴510の内径、及び第3部材53の軸穴532の内径に等しい。軸部550は、第1部材51の軸穴510に圧入嵌合されている。つまり、第5部材55は、第1部材51に固定されている。
【0126】
軸部550は、第4部材54であるコイルバネ540を貫通し、第3部材53の軸穴532に嵌合されている。軸部550は、第3部材53に対して摺動可能である。これにより、第5部材55は、第1部材51とともに、コイルバネ540の反発力に抵抗しながら、軸方向に沿って下方に移動させることができる。
【0127】
先端部551は、軸部550の下端に形成されている。先端部551は、第3部材53の凹部534に収納されている。先端部551は、軸部550よりも太い。これにより、第5部材55の第3部材53からの抜け止めがなされている。
【0128】
<可動電極>
本実施形態においても、可動電極4は、操作体5と分離されている。可動電極4は、基体2の収納空間25に収納される。
【0129】
可動電極4は、平面視において、円環状をなす板金部品である。可動電極4は、中央部41と、周壁部43と、電極本体部42と、外縁部44と、を含む。中央部41と、周壁部43と、電極本体部42と、外縁部44とは一体化されている。
【0130】
中央部41は、操作体5(第3部材53)の支持面500上に載置される。中央部41において支持面500に接触する面は平坦な面である。
【0131】
中央部41は、平面視円形をなす。中央部41の中央に厚さ方向(待機状態では上下方向)に貫通する開口部45が形成されている(図11参照)。開口部45は、平面視において、操作体5(第3部材53)の筒部530の外周がなす円形よりも一回り大きく、押上部50の外周がなす円形よりも一回り小さい円形をなす。開口部45には、下方から操作体5(第3部材53)の筒部530が挿入されている。
【0132】
周壁部43は、中央部41の外周から下方に突出している。周壁部43は、中央部41と滑らかにつながっている。平面視において、周壁部43の内径は、基体2の円筒リブ233の外径よりもわずかに大きい。周壁部43は、円筒リブ233に嵌合することにより、可動電極4の水平方向への移動は規制されるが、可動電極4の揺動は規制されない。
【0133】
電極本体部42は、固定電極面300に対向する部分である。電極本体部42は、平面視円環状をなす。具体的には、電極本体部42は、周壁部43の下端から外方に向けてフランジ状に形成されている。このように、電極本体部42は、中央部41よりも一段低い位置にある(図13参照)。電極本体部42は、周壁部43と滑らかにつながっている。電極本体部42において固定電極面300に対向する面は平坦な面である。
【0134】
外縁部44は、電極本体部42の外周に形成されている。外縁部44は、電極本体部42よりも高く、中央部41よりも低い位置にある(図13参照)。外縁部44は、電極本体部42と滑らかにつながっている。
【0135】
中央部41の上下両面、電極本体部42の上下両面、及び外縁部44の上下両面は平行である。
【0136】
可動電極4は、第2段部22を介して固定電極3に対向している(図13参照)。具体的には、待機状態において、電極本体部42の内周側は、第2段部22に接触し、固定電極面300と一定間隔をあけて配置される。電極本体部42の外周側(外縁部44)は、第1段部21と隙間を介して対向している。
【0137】
第2段部22は、可動電極4が固定電極3に接触するのを抑制する機能のほか、可動電極4が傾倒する際の支点(傾倒支点F2)としての機能も有する(図14参照)。傾倒支点F2については、後述する。
【0138】
なお、第1段部21も、可動電極4が固定電極3に接触するのを抑制する機能のほか、可動電極4が傾倒する際の支点(傾倒支点F1)としての機能も有する(図15参照)。
【0139】
<カバー>
カバー7は、基体2の収納空間25を覆う部材である。収納空間25には、可動電極4、操作体5の一部、及び弾性部材6が収納される。カバー7は、板金と樹脂とが一体化されたアウトサート成形品である。カバー7は、樹脂製の保持部74と、平面視多角形(本実施形態では八角形)をなす蓋部71と、蓋部71の各辺から下方に突出する複数(本実施形態では8つ)の被せ片72と、を含む。保持部74以外は板金である。
【0140】
保持部74は、操作体5を揺動可能に保持する部分である。保持部74は、開口部710を含み、平面視円環状をなす(図11参照)。開口部710には、下方から操作体5の第2部材52が挿入されている。保持部74の内面は、凹曲面740を含む。凹曲面740は、操作体支点Fを中心とする仮想上の球面に沿った形状をなしている(図13図15参照)。すなわち、凹曲面740は、操作体5(第3部材53)の凸曲面523に合致する。これにより、第3部材53は、保持部74の内面に摺動可能に保持される。
【0141】
保持部74の凹曲面740において、直交する2方向には溝部741が形成されている(図11参照)。溝部741は、凹曲面740に沿って上下方向に形成されている。溝部741には、操作体5(第2部材52)のリブ525が嵌合される。これにより、操作体5(第2部材52)は、保持部74に対して、揺動可能であるが、軸方向を回転軸とする回転は規制される。
【0142】
蓋部71は、保持部74の周囲に形成されている。蓋部71には厚さ方向(待機状態では上下方向)に貫通する位置合せ穴712が形成されている(図11参照)。位置合せ穴712に基体2のボス236を挿入することで、カバー7と基体2との位置合わせを行うことができる。
【0143】
左右方向に対向する2つの被せ片72及び前後方向に対向する2つの被せ片72には端子73が形成されている。計4つの端子73は、制御基板9のグランドパターンと接続される。
【0144】
左右方向に対向する2つの被せ片72及び前後方向に対向する2つの被せ片72には穴部720が形成されている。穴部720に基体2の爪27を引っ掛けることによって、カバー7を基体2に取り付けることができる。
【0145】
<弾性部材>
本実施形態では、弾性部材6は、円錐コイルバネ62である。円錐コイルバネ62は、可動電極4とカバー7との間に介在し、可動電極4及びカバー7にプリロードを掛けている。すなわち、待機状態及び操作状態において、弾性部材6は、可動電極4を固定電極3に近づける向きに押し付けている(図13図15参照)。具体的には、待機状態において、円錐コイルバネ62は、可動電極4の電極本体部42を、第2段部22に接触するまで、固定電極面300に近づける向きに押し付けている。なお、待機状態では、可動電極4は、第1段部21には接触していない。
【0146】
平面視において、円錐コイルバネ62の内側には、可動電極4の中央部41、及び操作体5が存在する。平面視において、円錐コイルバネ62の周囲を基体2の壁部24が取り囲んでいる。これにより、円錐コイルバネ62は、水平方向への移動が規制される。
【0147】
円錐コイルバネ62は、可動電極4の電極本体部42の上面、及びカバー7の蓋部71の下面と接触している。つまり、円錐コイルバネ62は、可動電極4とカバー7とを電気的に接続している。
【0148】
<操作ノブ>
操作ノブ8は、傘状をなしている。操作ノブ8の下面には、下方に開口する凹部80が形成されている(図11参照)。平面視において、凹部80は、操作体5(第1部材51)の上部と同形同寸の非円形をなす。操作体5の上部は、操作ノブ8の凹部80に嵌合される。つまり、軸方向を回転軸とする操作ノブ8の回転が規制される。なお、図10では説明を理解しやすくするため、操作ノブ8を透明な部材として図示している。
【0149】
<制御基板>
制御基板9には、信号パターン及びグランドパターンが形成されている。
【0150】
信号パターンは、固定電極3と電気的に接続されている。具体的には、制御基板9には端子用孔901が形成されており、端子用孔901に固定電極3の端子32を挿入して固定することで、固定電極3を信号パターンに電気的に接続することができる。
【0151】
グランドパターンは、可動電極4と電気的に接続されている。具体的には、制御基板9には端子用孔902が形成されており、端子用孔902にカバー7の端子73を挿入して固定することで、可動電極4をグランドパターンに電気的に接続することができる。
【0152】
制御基板9の上面には、プッシュスイッチ90が設置されている。平面視において、プッシュスイッチ90は、基体2の開口部232の中心(点C)に位置する(図12参照)。軸方向において、プッシュスイッチ90は、操作体5(第5部材55)の先端部551と対向している。
【0153】
プッシュスイッチ90を囲むように、制御基板9の上面には裏板91が固定されている(図11図13図15参照)。裏板91は、円板状をなす板金部品である。裏板91は、グランドパターンと電気的に接続されている。裏板91は、カバー7とともに外部電界からのシールドとしての機能を有する。
【0154】
裏板91の中央には開口部910が形成されている。開口部910の内側にプッシュスイッチ90が設置されている。開口部910の内縁から開口部910の中心に向かって、板バネ部921が突出している。板バネ部921は、プッシュスイッチ90と、操作体5の先端部551との間に介在している。先端部551が板バネ部921を介してプッシュスイッチ90を押すことで、プッシュスイッチ90がON状態となる。板バネ部921は、操作体5の揺動によって先端部551がプッシュスイッチ90を誤って押すのを防いでいる。なお、裏板91は、開口部920が形成された両面テープ92によって基体2の下面と接着されている。開口部920は、裏板91の開口部910と同形同寸である。
【0155】
制御基板9には、位置合せ穴900が形成されている。位置合せ穴900に基体2のボス235を挿入することで、基体2と制御基板9との位置合わせを行うことができる。なお、図13図15において、制御基板9及び操作ノブ8は図示省略している。
【0156】
(3.2)動作
次に本実施形態に係る入力装置1の動作について、図13図15を参照して説明する。
【0157】
<待機状態>
図13は入力装置1の待機状態を示す。待機状態は、上述のように、操作体5が操作力を受けていない状態である。このときは、可動電極4が、第2段部22に接触し、固定電極3と一定間隔をあけて配置される。なお、可動電極4は、第1段部21とは接触していない。
【0158】
すなわち、待機状態において、弾性部材6(円錐コイルバネ62)が、可動電極4の電極本体部42を下向きに押さえ付けることにより、電極本体部42は、第2段部22に突き当たって、固定電極3の固定電極面300と平行を保ちながら一定間隔をあけて対向する。
【0159】
また操作体5(第3部材53)の押上部50の支持面500は、可動電極4の中央部41を支持している。これにより、待機状態において、操作体5の軸方向が水平面に対して垂直となる中立姿勢が保持される。
【0160】
一方、制御基板9に形成された制御回路は、待機状態において、4方向(X+,X-,Y+,Y-)に対応する固定電極3(4つの扇形電極30)と可動電極4との間の静電容量の値を検出し、リファレンス値として記憶する。
【0161】
<第1操作状態>
図14は入力装置1の第1操作状態を示す。第1操作状態は、最初に操作体5が操作力を受ける状態である。操作体5を右向きに傾倒させる場合を例に挙げて説明する。操作体5が右向きに操作力を受けると、操作体支点Fを中心にして操作体5が右に傾倒する。上記の操作力が左側の押上部50によって可動電極4に伝えられる。このとき押上部50の押上面501における周方向に延びる稜線が、可動電極4の中央部41の下面に接触しながら、可動電極4の左側を押し上げて可動電極4を傾倒させる。上記の稜線上に作用点Aが存在する。操作体5の傾倒角度が大きくなるほど、上記の稜線は左側に移動する。そのため、可動電極4の傾倒角度は、操作体5の傾倒角度ほど大きくはならない。
【0162】
また可動電極4は、操作体支点Fを挟んで、左側の押上部50と反対側(右側)に存在する第2段部22を傾倒支点F2として傾倒して、固定電極3及び可動電極4間の静電容量を変化させる。すなわち、固定電極3及び可動電極4間の間隔が変化することで、静電容量が変化する。傾倒支点F2の左側では、固定電極3及び可動電極4間の間隔が広くなって、静電容量が小さくなる。傾倒支点F2の右側では、傾倒支点F2の左側に比べて、固定電極3及び可動電極4間の間隔が狭くなって、静電容量が大きくなる。
【0163】
このように、操作体5は、左側の押上部50が作用点Aとなって可動電極4を固定電極3に対して傾倒させる。
【0164】
そして、制御回路は、4方向(X+,X-,Y+,Y-)に対応する固定電極3(4つの扇形電極30)及び可動電極4間の静電容量の値を検出し、リファレンス値との差分を傾倒操作による静電容量の出力とし、この出力から傾倒角度及び傾倒方向を検出する。
【0165】
4方向の出力をCX+、CX-、CY+、CY-とすると、傾倒方向及び傾倒量(傾倒角度)は、以下の式により算出される。
【0166】
【数1】
【0167】
<第2操作状態>
図15は入力装置1の第2操作状態を示す。第2操作状態は、第1操作状態に続く状態である。すなわち、第2操作状態は、第1操作状態から操作体5が操作力を更に受ける状態である。操作体5を引き続き右向きに傾倒させる場合を例に挙げて説明する。
【0168】
操作体5が右向きに操作力を更に受けると、操作体支点Fを中心にして操作体5が右に更に傾倒する。第1操作状態では、可動電極4は、操作体支点Fを挟んで、左側の押上部50と反対側(右側)に存在する第2段部22を傾倒支点F2として傾倒していたが、第2操作状態では、可動電極4は、第2段部22から離れる。そして、可動電極4は、第2段部22よりも外側(右側)に存在する第1段部21を傾倒支点F1として傾倒して、固定電極3及び可動電極4間の静電容量を更に変化させる。このように、第1操作状態から第2操作状態に移行すると、可動電極4が傾倒する支点が、傾倒支点F2から傾倒支点F1に交替する。これにより、可動電極4を固定電極3に対して更に傾倒させることが可能になる。
【0169】
<第3操作状態>
第3操作状態は、操作体5が軸方向に操作力を受ける状態である。操作体5が、第1部材51を第2部材52に近づける向きに操作力を受けると、第5部材55の先端部551が板バネ部921を介してプッシュスイッチ90を押すことで、プッシュスイッチ90がON状態となる。
【0170】
(3.3)作用効果
本実施形態においても、第1~2実施形態と同様に、操作体5の傾倒角度を可動電極4の傾倒角度よりも大きく取りながら、可動電極4の傾倒方向及び傾倒角度を検出しやすくすることができる。
【0171】
しかも本実施形態では、第1操作状態から第2操作状態に移行すると、可動電極4が傾倒する支点が、傾倒支点F2から傾倒支点F1に交替することから、可動電極4を固定電極3に対して更に傾倒させることが可能になる。
【0172】
また本実施形態では、多方向(特に全方位)の検出ができるだけでなく、プッシュスイッチのON/OFF状態を切り替えることもできる。
【0173】
3.変形例
第3実施形態では、固定電極3が円形をなしているが、固定電極3は正多角形をなしていてもよい。例えば、固定電極3を正八角形とする場合には、第1段部21の内周及び第2段部22の外周を正八角形とする。第1段部21の内周がなす正八角形は、第2段部22の外周がなす正八角形よりも大きい。両者の正八角形は、同心であり、各辺同士は平行である。これにより、特に八方向の検出がしやすくなる。
【0174】
4.態様
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0175】
第1の態様は、入力装置(1)であって、段部(21)を含む基体(2)と、前記基体(2)に固定された固定電極(3)と、前記段部(21)を介して前記固定電極(3)に対向し、前記固定電極(3)に対して傾倒可能な可動電極(4)と、操作体支点(F)及び押上部(50)を含み、前記操作体支点(F)を中心にして揺動可能に前記基体(2)に保持され、前記押上部(50)が作用点(A)となって前記可動電極(4)を前記固定電極(3)に対して傾倒させる操作体(5)と、を備える。前記段部(21)が、前記操作体支点(F)の両側に存在する。前記押上部(50)が、前記段部(21)と前記操作体支点(F)との間に存在する。前記操作体(5)が操作力を受けないときは、前記可動電極(4)が、前記段部(21)に接触し、前記固定電極(3)と一定間隔をあけて配置される。前記操作体(5)が操作力を受けたときは、前記操作力が前記押上部(50)によって前記可動電極(4)に伝えられ、前記可動電極(4)が、前記操作体支点(F)を挟んで前記押上部(50)と反対側に存在する前記段部(21)を傾倒支点(F1)として傾倒して、前記固定電極(3)及び前記可動電極(4)間の静電容量を変化させる。
【0176】
この態様によれば、操作体(5)の傾倒角度を可動電極(4)の傾倒角度よりも大きく取りながら、可動電極(4)の傾倒方向及び傾倒角度を検出しやすくすることができる。
【0177】
第2の態様は、第1の態様に基づく入力装置(1)である。第2の態様では、前記基体(2)が、前記段部(21)を別体として含む。前記段部(21)が、前記固定電極(3)に貼り付けられた絶縁シート(210)である。
【0178】
この態様によれば、絶縁シート(210)を取り替えるだけで、その他の部品の設計変更を行わずに、入力装置(1)の検出感度を調整することが可能になる。
【0179】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づく入力装置(1)である。第3の態様では、前記段部(21)が、第1段部(21)である。前記基体(2)が、前記第1段部(21)と前記操作体支点(F)との間に存在する第2段部(22)を更に含む。前記操作体(5)が操作力を受けたときは、前記操作力が前記押上部(50)によって前記可動電極(4)に伝えられ、前記可動電極(4)が、前記操作体支点(F)を挟んで前記押上部(50)と反対側に存在する前記第2段部(22)を傾倒支点(F2)として傾倒して、前記固定電極(3)及び前記可動電極(4)間の静電容量を変化させる。前記操作体(5)が操作力を更に受けたときは、前記第2段部(22)よりも外側に存在する第1段部(21)を傾倒支点(F1)として前記可動電極(4)が傾倒して、前記固定電極(3)及び前記可動電極(4)間の静電容量を更に変化させる。
【0180】
この態様によれば、可動電極(4)及び固定電極(3)間の間隔が狭くなって両者が接触する前に、可動電極(4)が傾倒する支点を、傾倒支点(F2)から傾倒支点(F1)に交替させることで、可動電極(4)を更に傾倒させることが可能になる。
【0181】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか一つに基づく入力装置(1)である。第4の態様では、前記固定電極(3)が円形又は正多角形をなす。前記段部(21)が、前記固定電極(3)の外周に沿って存在する。
【0182】
この態様によれば、多方向の傾倒方向及び傾倒角度の検出を行うことができる。
【0183】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか一つに基づく入力装置(1)である。第5の態様では、前記可動電極(4)を前記固定電極(3)に近づける向きに押し付ける弾性部材(6)を更に備える。
【0184】
この態様によれば、固定電極(3)に対する可動電極(4)の傾倒を安定して行うことができる。
【0185】
第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか一つに基づく入力装置(1)である。第6の態様では、前記固定電極(3)が、円環状に配置された複数の扇形電極(30)を含む。前記可動電極(4)が、円環状をなす。
【0186】
この態様によれば、全方位の検出がしやすくなる。
【符号の説明】
【0187】
1 入力装置
2 基体
21 段部(第1段部)
210 絶縁シート
22 第2段部
3 固定電極
30 扇形電極
4 可動電極
5 操作体
50 押上部
6 弾性部材
A 作用点
F 操作体支点
F1 傾倒支点
F2 傾倒支点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15