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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132537
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】鋼管杭の施工方法及び鋼管杭基礎
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/22 20060101AFI20240920BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E02D7/22
E02D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043340
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100224926
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 雄久
(72)【発明者】
【氏名】大前 憲盛
(72)【発明者】
【氏名】阿形 淳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】戸田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】澤石 正道
(72)【発明者】
【氏名】東海林 智之
(72)【発明者】
【氏名】長浦 崇晃
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA11
2D041CB06
2D041FA14
2D050AA06
2D050BB04
2D050CB23
(57)【要約】
【課題】支持層への根入れ深さが短い場合であっても必要な支持力を確保できる鋼管杭の施工方法を提供する。
【解決手段】実施形態における鋼管杭の施工方法は、先端部が開放された鋼管本体と、鋼管本体1Aの先端部の内面に閉塞促進部材5を備える鋼管杭1を地盤に貫入する鋼管杭の施工方法であって、鋼管本体1Aの先端が地盤Gの支持層G2に到達するまでは鋼管本体1Aの管内土量を調整するための管内土量調整装置3を制御し、鋼管本体1Aの外径寸法の0.7倍以上の深さまで、鋼管本体1Aの先端を支持層G2に貫入する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が開放された鋼管本体と、前記鋼管本体の先端部の内面に閉塞促進部材を備える鋼管杭を地盤に貫入する鋼管杭の施工方法であって、
前記鋼管本体の先端が前記地盤の支持層に到達するまでは、前記鋼管本体の管内土量を調整するための管内土量調整手段を制御し、
前記鋼管本体の外径寸法の0.7倍以上の深さまで、前記鋼管本体の先端を前記支持層に貫入すること
を特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼管杭の施工方法であって、
前記鋼管本体の管内土の天端が閉塞促進部材の上端よりも上方に位置されるように前記管内土量調整手段を制御すること
を特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項3】
請求項1に記載の鋼管杭の施工方法であって、
前記閉塞促進部材は、前記鋼管本体の先端から前記鋼管本体の外径寸法の2倍の範囲内に設けられること
を特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項4】
請求項1に記載の鋼管杭の施工方法であって、
前記閉塞促進部材は、
前記鋼管本体の内面が目粗されて形成される目粗し部、
棒状部材により形成される棒状突起部、
前記鋼管本体の鋼管軸に対して直交して配置される板材により形成されるとともに鋼管軸方向から見たときにリング状に配置される板状部材、及び
前記鋼管本体の鋼管断面を仕切るように配置される仕切り板、
の少なくとも何れかで構成されること
を特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項5】
請求項1に記載の鋼管杭の施工方法であって、
前記鋼管杭を回転圧入によって地盤に貫入すること
を特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項6】
請求項1に記載の鋼管杭の施工方法であって、
前記鋼管杭は、前記鋼管本体の先端よりも下方に突出して固定された掘削用ビットを有すること
を特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項7】
請求項2に記載の鋼管杭の施工方法であって、
前記管内土量調整手段を制御する際、
前記鋼管本体の管内土の天端の位置を測定し、
測定した前記天端の位置が前記閉塞促進部材の上端の位置に基づいて予め設定された管理範囲の下限よりも低い場合には、前記管内土量調整手段により前記鋼管本体に土砂を投入し、
測定した前記天端の位置が前記管理範囲の上限よりも高い場合には、前記管内土量調整手段により前記鋼管本体から土砂を排出すること
を特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項8】
請求項1に記載の鋼管杭の施工方法であって、
前記鋼管本体の先端を前記支持層に貫入する際、前記管内土量調整手段による管内土量の調整を終了すること
を特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の鋼管杭の施工方法によって地盤に貫入して構築されることを特徴とする鋼管杭基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の施工方法及び鋼管杭基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管杭の施工方法に関する技術として、例えば特許文献1が開示されている。
【0003】
特許文献1の鋼管杭の施工方法は、先端部が開放した鋼管本体と、鋼管本体の先端縁よりも下方に突出した掘削用ビットとを有する鋼管杭を支持層に到達するまで地盤に貫入し、杭径寸法の3倍程度以上の深さまで支持層に回転圧入し、当該鋼管本体の先端部を削孔した支持層の硬質な土で閉塞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-255695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の開示技術では、鋼管の外形寸法の3倍程度以上の深さまで支持層に回転圧入されることによって支持力が確保される。しかしながら、鋼管杭の支持層がかなり硬質な地盤である場合や、鉛直方向の圧入抵抗が大きくなる鋼管杭の外径が大きい場合、支持層に深く根入れすることが難しい場合がある。このような場合、所定の到達目標深度まで貫入することができずに浅止まりとなってしまい、杭先端部の閉塞度を十分に確保することができないおそれがある。その結果、到達目標深度までの根入れを確保するために、より出力の大きな重機が必要となることに加え、施工時間の増大など施工性が低下してしまうという問題がある。したがって、支持層への根入れ深さが短い場合であっても、必要な支持力を確保できる技術が求められる。
【0006】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、支持層への根入れ深さが短い場合であっても必要な支持力を確保できる鋼管杭の施工方法及び鋼管杭基礎を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る鋼管杭の施工方法は、先端部が開放された鋼管本体と、前記鋼管本体の先端部の内面に閉塞促進部材を備える鋼管杭を地盤に貫入する鋼管杭の施工方法であって、前記鋼管本体の先端が前記地盤の支持層に到達するまでは、前記鋼管本体の管内土量を調整するための管内土量調整手段を制御し、前記鋼管本体の外径寸法の0.7倍以上の深さまで、前記鋼管本体の先端を前記支持層に貫入することを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る鋼管杭の施工方法は、第1発明において、前記鋼管本体の管内土の天端が前記閉塞審部材の上端よりも上方に位置されるように前記管内土量調整手段を制御することを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る鋼管杭の施工方法は、第1発明において、前記閉塞促進部材は、前記鋼管本体の先端から前記鋼管本体の外径寸法の2倍の範囲内に設けられることを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る鋼管杭の施工方法は、第1発明において、前記閉塞促進部材は、前記鋼管本体の内面が目粗されて形成される目粗し部、棒状部材により形成される棒状突起部、前記鋼管本体の鋼管軸に対して直交して配置される板材により形成されるとともに鋼管軸方向から見たときにリング状に配置される板状部材、及び前記鋼管本体の鋼管断面を仕切るように配置される仕切り板、の少なくとも何れかで構成されることを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る鋼管杭の施工方法は、第1発明において、前記鋼管杭を回転圧入によって地盤に貫入することを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る鋼管杭の施工方法は、第1発明において、前記鋼管杭は、前記鋼管本体の先端よりも下方に突出して固定された掘削用ビットを有することを特徴とする。
【0013】
第7発明に係る鋼管杭の施工方法は、第2発明において、前記管内土量調整手段を制御する際、前記鋼管本体の管内土の天端の位置を測定し、測定した前記天端の位置が前記閉塞促進部材の上端の位置に基づいて予め設定された管理範囲の下限よりも低い場合には、前記管内土量調整手段により前記鋼管本体に土砂を投入し、測定した前記天端の位置が前記管理範囲の上限よりも高い場合には、前記管内土量調整手段により前記鋼管本体から土砂を排出することを特徴とする。
【0014】
第8発明に係る鋼管杭の施工方法は、第1発明において、前記鋼管本体の先端を前記支持層に貫入する際、前記管内土量調整手段による管内土量の調整を終了することを特徴とする。
【0015】
第9発明に係る鋼管杭基礎は、第1発明~第8発明の何れかの鋼管杭の施工方法によって地盤に貫入して構築されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明~第9発明では、鋼管本体の先端が地盤の支持層に到達するまでは管内土量調整手段を制御し、鋼管本体の外径寸法Dの0.7倍以上の深さまで、鋼管本体の先端を支持層に貫入する。これにより、鋼管本体の先端が支持層に到達した際、例えば管内土量が明らかに少ないと判断される場合には、管内土量調整装置を制御して管内土を投入することができる。このため、鋼管本体の外径寸法Dの0.7倍以上の深さまで、鋼管本体の先端を支持層に貫入した際、閉塞促進部材により効果的に鋼管本体の先端部を閉塞できる。その結果、鋼管本体の支持層への根入れ深さが短い場合であっても、必要な支持力を確保できる。
【0017】
特に、第2発明では、管内土量調整手段を制御する際、鋼管本体の管内土の天端が閉塞促進部材の上端よりも上方に位置されるようにする。これにより、鋼管本体の先端が支持層に到達した際、管内土量が不足するのを抑制できる。このため、閉塞促進部材に更に効果的に鋼管本体の先端部を閉塞できる。
【0018】
特に、第3発明では、閉塞促進部材は、鋼管本体の先端から鋼管本体の外径寸法の2倍の範囲に取り付けられる。これにより、効率的かつ経済的に閉塞促進部材の効果を得ることができる。このため、支持層への根入れ深さが短くなった場合であっても、必要な支持力を確保できる。
【0019】
特に、第4発明では、閉塞促進部材は、鋼管本体の内面が目粗されて形成される目粗し部、棒状部材により形成される棒状突起部、鋼管本体の鋼管軸に対して直交して配置される板材により形成されるとともに鋼管軸方向から見たときにリング状に配置される板状部材、及び鋼管本体の鋼管断面を仕切るように配置される仕切り板、の少なくとも何れかで構成される。このため、鋼管本体の先端部の閉塞度を高めることができ、先端閉塞を促進できる。
【0020】
特に、第5発明では、鋼管杭を回転圧入によって地盤へ貫入する。これにより、周辺への騒音や振動を抑制して施工できる。
【0021】
特に、第6発明では、鋼管本体の先端よりも下方に突出して固定された掘削用ビットを有する。これにより、地盤を掘削しながら乱すので鋼管本体を貫入するのに必要な圧入力を小さくすることができる。このため、鋼管杭を地盤に貫入する際の施工負荷を低減でき、貫入速度を更に高めることができる。
【0022】
特に、第7発明では、管内土量調整手段を制御する際、鋼管本体の管内土の天端の位置を測定し、測定した天端の位置が閉塞促進部材の上端の位置に基づいて予め設定された管理範囲の下限よりも低い場合には、管内土量調整手段により鋼管本体に土砂を投入する。これにより、十分な支持力を発揮するのに必要な杭先端部の閉塞度を確保することができる。更に、鋼管本体の管内土の天端が閉塞促進部材よりも下方に位置されるのを抑制できる。このため、必要な支持力をより確実に確保できる。
【0023】
また、特に、第7発明では、管内土量調整手段を制御する際、鋼管本体の管内土の天端の位置を測定し、測定した天端の位置が管理範囲の上限よりも高い場合には、管内土量調整手段により鋼管本体から土砂を排出する。これにより、鋼管杭を地盤に貫入する際の施工負荷を低減でき、貫入速度を一層高めることができ、円滑に施工できる。
【0024】
特に、第8発明では、鋼管本体の先端を支持層に貫入する際、管内土量調整手段による管内土量の調整を終了する。すなわち、鋼管本体の先端を支持層に貫入した後に、管内に土砂を投入したり、管内から土砂を排出する工程を行う必要がない。このため、円滑に施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態において用いられる鋼管杭の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態における鋼管杭の施工方法において鋼管杭を地盤に貫入する工程を説明する図である。
図3図3は、実施形態における鋼管杭の施工方法において鋼管杭を地盤に貫入する工程を説明する図である。
図4図4は、実施形態における鋼管杭の施工方法において鋼管杭を地盤に貫入する工程を説明する図である。
図5図5は、実施形態における鋼管杭の施工方法において鋼管杭を支持層に貫入する工程を説明する図である。
図6図6(a)は、実施形態において用いられる鋼管杭の第1変形例を示す図であり、図6(b)は、実施形態において用いられる鋼管杭の第2変形例を示す図である。
図7図7は、実施形態において用いられる鋼管杭の第3変形例を示す図である。
図8図8(a)は、実施形態において用いられる鋼管杭の第4変形例を示す図であり、図8(b)は、図8(a)の鋼管杭を鋼管軸方向から見た図である。
図9図9(a)は、実施形態において用いられる鋼管杭の第5変形例を示す図であり、図9(b)は、図9(a)の鋼管杭を鋼管軸方向から見た図である。
図10図10(a)は、実施形態において用いられる鋼管杭の第6変形例を示す図であり、図10(b)は、図10(a)の鋼管杭の鋼管軸方向に沿う断面図である。
図11図11(a)は、実施形態において用いられる鋼管杭の第7変形例を示す図であり、図11(b)は、実施形態において用いられる鋼管杭の第8変形例を示す図であり、図11(c)は、実施形態において用いられる鋼管杭の第9変形例を示す図である。
図12図12(a)は、実施形態において用いられる鋼管杭の第10変形例を示す図であり、図12(b)は、実施形態において用いられる鋼管杭の第11変形例を示す図である。
図13図13は、管内土押し抜き試験を説明するための図である。
図14図14は、実施例1の管内土押し抜き試験の結果を、0.1D押し込み時の押し抜き抵抗力度を縦軸とし、取り付け範囲を横軸として示す。
図15図15は、実施例2の解析結果を、押し抜き抵抗力度を縦軸とし、支持層への根入れ深さを横軸として示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用した鋼管杭の施工方法及び鋼管杭基礎を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1に示すように、鋼管杭1は、先端部が開放された鋼管本体1Aと、鋼管本体1Aの先端部の内面に閉塞促進部材5を備える鋼管杭であって、地盤に貫入される。鋼管杭1は、閉塞促進部材5を有することにより、鋼管杭1を支持層に貫入した際に、鋼管本体1Aの先端部の閉塞を促進させることができる。鋼管本体1Aの外径寸法Dは、例えば400mm~3000mm程度である。
【0028】
閉塞促進部材5は、例えば棒鋼等の棒状部材が深さ方向(上方から見たときに図中の下方)に向かって時計回りのらせん状に形成される棒状突起部で構成される。この場合、管内土と鋼管本体1Aの内面との間に発生する管内摩擦力が向上するため、鋼管本体1Aの先端部の閉塞を促進させることができる。閉塞促進部材5は、例えば鋼管本体1Aの先端から連続的に形成される。
【0029】
また、閉塞促進部材5は、例えば鋼管本体1Aの先端から鋼管本体1Aの外径寸法Dの2倍(2D)の範囲に取り付けられることが好ましい。これにより、鋼管本体1Aの先端部の閉塞を効率的かつ経済的に促進させることができる。一方、鋼管本体1Aの先端から鋼管本体1Aの外径寸法Dの2倍(2D)を超えた範囲に取り付けられた場合、閉塞促進部材5による閉塞促進効果が飽和する傾向にあると考えられる。また、鋼管本体1Aの先端から鋼管本体1Aの外径寸法Dの2倍(2D)を超えた範囲に取り付けられた場合、閉塞促進部材5の取り付け長さが長くなることから、製造の負荷が増大するおそれがある。
【0030】
鋼管杭1は、例えばスパイラル鋼管のように、予め閉塞促進部材5が形成された圧延コイルを筒状にすることにより形成されてもよい。鋼管杭1は、予め筒状に形成された鋼管の内面に棒鋼を溶接する、もしくは溶接金属を盛り上げることにより棒状突起部で構成される閉塞促進部材5が後付けされて形成されてもよい。このように、閉塞促進部材5の設置の順序は、任意である。
【0031】
鋼管杭1は、鋼管本体1Aの先端よりも下方に突出して固定された掘削用ビット1Bを更に有してもよい。掘削用ビット1Bを有することにより、地盤Gを掘削しながら乱すので鋼管本体1Aを貫入するのに必要な圧入力を小さくすることができる。このため、鋼管杭1を貫入する際の施工負荷を低減でき、貫入速度を更に高めることができる。
【0032】
掘削用ビット1Bは、鋼管本体1Aの外面から径方向への突出量が12mm以下となることが好ましい。これにより、貫入に伴い掘削用ビットが杭周面の地盤を乱すことを抑制し、鋼管杭1の周面摩擦に与える影響を少なくできる。
【0033】
なお、掘削用ビット1Bは、鋼管本体1Aの外面に固定されてもよいし、鋼管本体1Aの内面に固定されてもよいし、鋼管本体1Aの鋼管先端面に固定されてもよい。掘削用ビット1Bは、鋼管本体1Aの鋼管円環部の接線方向に対して平行に延伸されるように固定されてもよいし、当該接線方向に対して傾斜して延伸されるように固定されてもよい。掘削ビット1Bの形状は、任意の形状とすることができ、地盤条件に応じて適宜変更してもよい。
【0034】
<鋼管杭の施工方法の一例>
次に、鋼管杭の施工方法の一例について説明する。図2に示すように、鋼管杭の施工方法は、鋼管杭1を回転圧入装置2により回転させるとともに下方に圧入される回転圧入工法によって地盤Gに貫入する。これにより、周辺への騒音や振動を抑制して施工できる。本発明では、鋼管杭1の地盤への貫入は、例えば振動や打撃を加える工法により行われてもよい。
【0035】
鋼管杭1を施工する地盤Gとしては、例えば地表側から比較的軟弱な軟弱層G1と、軟弱層G1の下側に位置する硬質な支持層G2とから構成される。
【0036】
ここで、支持層G2とは、構造物を支持できるだけの十分な強度及び剛性を有する層をいい、一般的には事前に構造物が構築される敷地内で入手したボーリングデータを基に選定することができる。また、設計の段階で事前に支持層を定めても、ボーリング未実施個所において支持層の起伏や未確認の地層の存在によって地盤強度に差異が生じるため、施工中に改めて支持層を選定し直す場合もある。各種設計指針に応じて、支持層に求められる地盤強度の条件は異なっているが、例えば「道路橋示方書・同解説(平成29年)」によれば、一般的な支持層の目安として、粘性土層であればN値が20程度以上、砂層・砂礫層であればN値が30程度以上あれば支持層とみなしてよいとされる。軟弱層G1は、支持層G2でない比較的軟弱な地盤である。
【0037】
先ず、鋼管杭の施工方法では、鋼管杭1を回転圧入装置2に取り付け、地盤Gの軟弱層G1に貫入する。
【0038】
図3及び図4に示すように、鋼管杭の施工方法では、鋼管本体1Aの先端が地盤Gの支持層G2に到達するまでは、鋼管本体1Aの管内土の天端S1が閉塞促進部材5の上端よりも上方に位置されるように管内土量調整装置3を制御する。
【0039】
管内土量調整装置3は、鋼管本体1Aの管内土量を調整するものであって、鋼管本体1Aの管内から土砂を排出でき、鋼管本体1Aの管内に土砂を投入できる。管内土量調整装置3は、例えばバケットが用いられる。バケットは、ワイヤが取り付けられ、ワイヤは図示しないクレーン等の揚重装置に接続される。バケットは、揚重装置により昇降され、揚重装置に吊り下げられた状態で開閉可能に構成される。
【0040】
鋼管杭の施工方法では、管内土量調整装置3を制御する際、鋼管本体1Aの管内土の天端S1の位置を測定する。管内土の天端S1の位置は、例えば鋼管本体1A内にメジャー等の長さ測定器を吊るして直接測定することができる。管内土の天端S1の位置は、鋼管本体1Aの先端から管内土の天端S1までの距離である管内土高さHとして算出されてもよい。管内土高さHは、鋼管本体1Aの全長から鋼管本体1Aの天端から吊るしたメジャー等の長さ測定器により測定された値を減算することによって算出できる。
【0041】
そして、鋼管杭の施工方法では、測定した天端S1の位置が閉塞促進部材5の上端の位置に基づいて予め設定された管理範囲外である場合には、管内土量調整装置3により鋼管本体1Aに土砂を投入及び排出の少なくとも何れかを行う。
【0042】
ここで、鋼管本体1Aの先端から閉塞促進部材5の上端までの長さPとし、余裕代αとする。例えば管内土高さHの管理範囲の下限Q1として、長さPよりも余裕代αだけ長い長さ(Q1=P+α)を予め設定しておく。余裕代αは、例えば200mm等適宜設定できる。余裕代αを有することにより、管内土の天端S1が閉塞促進部材5の上端よりも下方に位置されるのを抑制できる。
【0043】
また、管内土高さHの管理範囲の上限Q2として、下限Q1よりも大きな値を予め設定する。上限Q2は、例えば下限Q1+鋼管本体1Aの外径寸法D(Q2=Q1+D)であってもよい。このほか上限Q2は、例えば鋼管本体1Aの外径寸法Dの3倍(3D)であってもよい。
【0044】
鋼管杭の施工方法では、測定した天端S1の位置が管理範囲の下限Q1よりも低い場合には、管内土量調整装置3により鋼管本体1Aに土砂を投入して天端S1が管理範囲内に位置されるようにし、鋼管本体1Aの地盤Gへの貫入を継続する。鋼管杭の施工方法では、測定した天端S1の位置が管理範囲の上限Q2よりも高い場合には、管内土量調整装置3により鋼管本体1Aから土砂を排出して天端S1が管理範囲内に位置されるようにし、鋼管本体1Aの地盤Gへの貫入を継続する。
【0045】
一方、鋼管杭の施工方法では、測定した天端S1の位置が管理範囲内(Q1≦H≦Q2)である場合には、管内土量調整装置3による土砂の投入及び排出を行わずに、そのまま鋼管本体1Aを地盤Gに貫入のみを継続する。このように、管内土量調整装置3による制御は、鋼管本体1Aに土砂を投入する場合と、鋼管本体1Aから土砂の排出する場合と、鋼管本体1Aに対して土砂の投入及び排出を行わない場合と、を含む。
【0046】
このように、鋼管杭の施工方法では、鋼管本体1Aの先端が地盤Gの支持層G2に到達するまでは、鋼管本体1Aの管内土の天端S1が閉塞促進部材5の上端よりも上方に位置されるように鋼管本体1Aの管内土量調整装置3を制御する。そして、鋼管杭の施工方法では、鋼管本体1Aの先端が地盤Gの支持層G2に到達した際に、鋼管本体1Aの管内土の天端S1の位置が閉塞促進部材5よりも上方に位置されるようにする。
【0047】
次に、図5に示すように、鋼管杭の施工方法では、鋼管本体1Aの先端が支持層G2に到達した後、管内土量調整装置3による管内土量の調整を終了する。すなわち、鋼管本体1Aの先端が支持層G2に到達した後には、管内土量調整装置3による土砂の投入及び排出を行わずに鋼管本体1Aの貫入のみを行う。そして、鋼管杭の施工方法では、鋼管本体1Aの先端が支持層G2に到達した後、鋼管本体1Aの外径寸法Dの0.7倍以上の深さまで、鋼管本体1Aの先端を支持層G2に貫入して鋼管本体1Aの先端部を閉塞する。
【0048】
鋼管本体1Aの支持層G2への根入れ深さは、鋼管本体1Aの外径寸法Dの0.7倍以上、外径寸法Dの2.5倍以下であることが好ましい。これにより、支持層G2への根入れ深さを従来よりも短くでき、施工をより容易に行うことができる。
【0049】
以上により、鋼管杭の施工方法の一例が完了する。鋼管杭の施工方法によれば、鋼管杭1が地盤Gに貫入して構築された鋼管杭基礎を構築できる。
【0050】
ここで、管内土の天端S1が閉塞促進部材5の上端よりも下方に位置された状態で鋼管本体1Aの先端の支持層G2に貫入した場合には、管内土量の不足によって鋼管本体1Aの先端部の閉塞度が不十分となるおそれがある。このほか、支持層G2への到達判定を実施する際に、鉛直方向・回転方向の抵抗が小さく、抵抗値の変化が微小となり、支持層G2への到達判断が難しくなるおそれがある。
【0051】
この点、本実施形態では、鋼管本体1Aの先端が地盤Gの支持層G2に到達するまでは、管内土量調整装置3を制御し、鋼管本体1Aの外径寸法Dの0.7倍以上の深さまで、鋼管本体1Aの先端を支持層G2に貫入して鋼管本体1Aの先端部を閉塞する。
【0052】
これにより、鋼管本体1Aの先端が支持層G2に到達した際、仮に管内土量が少ないと判断される場合には、管内土量調整装置3を制御して管内土を投入することができる。このため、鋼管本体1Aの外径寸法Dの0.7倍以上の深さまで、鋼管本体1Aの先端を支持層G2に貫入した際、閉塞促進部材5により効果的に鋼管本体1Aの先端部を閉塞できる。このため、鋼管本体1Aの支持層G2への根入れ深さが短い場合であっても、必要な支持力を確保できる。
【0053】
本実施形態では、鋼管本体1Aの管内土の天端S1が閉塞促進部材5の上端よりも上方に位置されるように管内土量調整装置3を制御する。これにより、鋼管本体の先端が支持層に到達した際、管内土量が不足するのを抑制できる。このため、閉塞促進部材に更に効果的に鋼管本体の先端部を閉塞できる。
【0054】
本実施形態では、閉塞促進部材5は、鋼管本体1Aの先端から鋼管本体1Aの外径寸法Dの2倍(2D)の範囲に取り付けられる。これにより、効率的かつ経済的に閉塞促進部材の効果を得ることができる。このため、支持層G2への根入れ深さが短くなった場合であっても、必要な支持力を確保できる。
【0055】
本実施形態では、閉塞促進部材5は、棒状部材により形成される棒状突起部である。これにより、管内土と鋼管本体1Aの内面との間に発生する管内摩擦力が向上する。このため、鋼管本体1Aの先端部の閉塞度を高めることができ、先端閉塞を促進できる。
【0056】
本実施形態では、鋼管杭1を回転圧入によって地盤へ貫入する。これにより、周辺への騒音や振動を抑制して施工できる。
【0057】
本実施形態では、鋼管本体1Aの先端よりも下方に突出して固定された掘削用ビット1Bを有する。これにより、地盤Gを掘削しながら乱すので鋼管本体1Aを貫入するのに必要な圧入力を小さくすることができる。このため、鋼管杭1を地盤Gに貫入する際の施工負荷を低減でき、貫入速度を更に高めることができる。
【0058】
本実施形態では、管内土量調整装置3を制御する際、鋼管本体1Aの管内土の天端S1の位置を測定し、測定した天端S1の位置が閉塞促進部材5の上端の位置に基づいて予め設定された管理範囲の下限Q1よりも低い場合には、管内土量調整装置3により鋼管本体1Aに土砂を投入する。これにより、十分な支持力を発揮するのに必要な杭先端部の閉塞度を確保することができる。更に、鋼管本体1Aの管内土の天端S1が閉塞促進部材5よりも下方に位置されるのを抑制できる。このため、必要な支持力をより確実に確保できる。
【0059】
本実施形態では、管内土量調整装置3を制御する際、鋼管本体1Aの管内土の天端S1の位置を測定し、測定した天端S1の位置が管理範囲の上限Q2よりも高い場合には、管内土量調整装置3により鋼管本体1Aから土砂を排出する。これにより、鋼管杭1を地盤Gに貫入する際の施工負荷を低減でき、貫入速度を一層高めることができ、円滑に施工できる。
【0060】
本実施形態では、鋼管本体1Aの先端を支持層G2に貫入する際、管内土量調整装置3による管内土量の調整を終了する。すなわち、鋼管本体1Aの先端を支持層G2に貫入した後に、管内に土砂を投入したり管内から土砂を排出する工程を行う必要がない。このため、円滑に施工できる。
【0061】
本実施形態においては、管内土量調整装置3としては、バケットを使用する方法を説明した。本発明では、例えば、スクリュー付きのロッドを使用する方法であってもよい。この場合、鋼管本体1Aの内部に設けられたスクリュー付きのロッドを回転させることで、鋼管本体1Aの管内土量の調整ができる。
【0062】
また、本発明では、管内土量調整装置3としては、例えばエアーリフト装置を使用する方法であってもよい。この場合、鋼管本体1Aの内部に設けられたエアーリフト装置のロッドを介して管内から土砂を排出することで、鋼管本体1Aの管内土量の調整ができる。このエアーリフト装置は、例えば鋼管杭1の地上側の端部に設けられたエアーポンプと、このエアーポンプに連結された中空筒状のロッドと、ロッドで吸い上げた管内土を外部に排出する排出部とを有して構成されていてもよい。
【0063】
本実施形態においては、管内土の天端S1の位置を測定する方法として、メジャーを用いる方法を説明した。本発明では、管内土量調整装置3がバケットの場合、管内土の天端S1の位置は、バケットの先端におけるとある初期位置と、管内土の天端S1に接触したときにおけるバケットの先端の位置とに基づいて、バケットの先端の移動距離を算出し、算出した移動距離に基づいて測定することもできる。
【0064】
また、本発明では、管内土量調整装置3がエアーリフト装置の場合、管内土の天端S1の位置は、エアーリフト装置のロッドの先端におけるとある初期位置と、管内土の天端S1に接触したときにおけるエアーリフト装置のロッドの先端の位置とに基づいて、エアーリフト装置のロッドの先端の移動距離を算出し、算出した移動距離に基づいて測定することもできる。
【0065】
また、本発明では、管内土量調整装置3がスクリュー付きのロッドの場合、管内土の天端S1の位置は、スクリュー付きのロッドの先端におけるとある初期位置と、管内土の天端S1に接触したときにおけるスクリュー付きのロッドの先端の位置とに基づいて、スクリュー付きのロッドの先端の移動距離を算出し、算出した移動距離に基づいて測定することもできる。
【0066】
また、本発明では、管内土量調整装置3がワイヤに接続されてクレーン等の揚重装置により昇降できる場合、管内土量調整装置3の移動距離は、例えばワイヤの外周面をカメラ等の撮像装置で所定撮影間隔にて連続的に撮影し、撮像した画像に基づいて例えばワイヤの縒り目の移動個数をカウントすることで算出する方法を採用することもできる。
【0067】
また、本発明では、管内土量調整装置3がスクリュー付きのロッドやエアーリフト装置のロッドが把持される杭打機等の把持部に設けられたロールの回転数に基づいて、移動距離を測定することができる。
【0068】
本実施形態においては、閉塞促進部材5は、鋼管本体1Aの先端から鋼管本体1Aの外径寸法Dの2倍の範囲に、鋼管本体1Aの先端から連続して設けられる場合について説明した。本発明では、図6(a)に示すように、閉塞促進部材5は、鋼管本体1Aの先端から鋼管本体1Aの外径寸法Dの2倍の範囲に、鋼管本体1Aの先端から離間して設けられてもよい。本発明では、図6(b)に示すように、閉塞促進部材5は、鋼管本体1Aの先端から鋼管本体1Aの外径寸法Dの2倍の範囲に、鋼管本体1Aの先端から離間して、断続的に1本もしくは複数設けられてもよい。
【0069】
図7に示すように、閉塞促進部材5は、例えば棒鋼等の棒状部材が深さ方向(図中の下方)に対して直交する方向にリング状に形成される棒状突起部で構成されてもよい。この場合、管内土と鋼管本体1Aの内面との間に発生する管内摩擦力が向上するため、鋼管本体1Aの先端部の閉塞を促進させることができる。閉塞促進部材5は、例えば1本もしくは鋼管本体1Aの先端から離間して、複数形成される。
【0070】
なお、図示は省略するが、閉塞促進部材5は、例えば鋼管本体1Aの内面が目粗されて形成される目粗し部で構成されてもよい。この場合であっても、管内土と鋼管本体1Aの内面との間に発生する管内摩擦力が向上するため、鋼管本体1Aの先端部の閉塞を促進させることができる。
【0071】
図8及び図9に示すように、閉塞促進部材5は、例えば鋼管本体1Aの鋼管軸に対して直交して配置される板材により形成されるとともに鋼管軸方向から見たときにリング状に配置される板状部材で構成されてもよい。この場合、杭先端の管内土の締固めを促すことができるため、鋼管本体1Aの先端部の閉塞を促進させることができる。閉塞促進部材5は、例えば1本もしくは鋼管本体1Aの先端から離間して、複数形成される。
【0072】
図8(a)に示すように、閉塞促進部材5は、鋼管本体1Aの周方向に連続して形成される1枚の板状部材が、鋼管軸方向に異なる位置に取り付けられて構成されてもよい。この場合であっても、図8(b)に示すように、鋼管軸方向から見たときにリング状に配置される。
【0073】
また、図9(a)に示すように、閉塞促進部材5は、鋼管本体1Aの周方向に位置を異ならせて配置される複数枚の板状部材が、鋼管軸方向に異なる位置に取り付けられて構成されてもよい。この場合であっても、図9(b)に示すように、鋼管軸方向から見たときにリング状に配置される。
【0074】
図10図11及び図12に示すように、閉塞促進部材5は、鋼管本体1Aの鋼管断面を仕切るように配置される仕切り板で構成されてもよい。ここで、閉塞のしやすさは杭径に反比例し、杭径が小さいほど先端閉塞が発現しやすいとされる。閉塞促進部材5が仕切り板の場合、仕切り板で分割された各部分がそれらの断面積に等しい小口径の鋼管のように振舞うため、鋼管本体1Aの先端部の閉塞を促進させることができる。
【0075】
図10(a)に示すように、閉塞促進部材5は、例えば鋼管軸に直交する鋼管断面を2等分に仕切るように配置される。また、図10(b)に示すように、仕切り板には、貫通孔51が設けられてもよい。これにより、管内土と鋼管本体1Aの内面との間に発生する摩擦力を向上させることができる。
【0076】
図11(a)に示すように、閉塞促進部材5は、例えば鋼管軸に直交する鋼管断面鋼管断面を4等分に仕切るように配置される。図11(b)に示すように、閉塞促進部材5は、例えば鋼管軸に直交する鋼管断面を3等分に仕切るように配置される。図11(c)に示すように、閉塞促進部材5は、例えば鋼管軸に直交する鋼管断面を6等分に仕切るように配置される。
【0077】
図12に示すように、閉塞促進部材5は、鋼管本体1Aよりも外径寸法が小さい筒状部52と、鋼管本体1Aの内面と筒状部52とを繋ぐ繋ぎ板部53と、で構成される。図12(a)に示すように、繋ぎ板部53は、例えば4つ配置されてもよい。図12(b)に示すように、繋ぎ板部53は、例えば3つ配置されてもよい。
【0078】
以上、この発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、この発明は、上記の実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記の実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【実施例0079】
本実施例では、押し抜き抵抗力度を評価した。押し抜き抵抗力は、鋼管内周面と管内土の間に作用する摩擦により管内土の押し抜けに抵抗する力であり、その摩擦を実際に測定することは難しい。そこで、本実施例では、管内土押し抜き試験を行い、管内土押し抜き試験の載荷荷重を押し抜き抵抗力として測定した。また、測定した押し抜き抵抗力を鋼管の閉塞断面積で割り戻すことで押し抜き抵抗力度を評価した。本実施例では、閉塞促進部材としての棒状突起部(棒鋼)の取り付け範囲を異ならせた。
【0080】
本実施例では、模型の鋼管を供試体として作製した。図13に示すように、管内土押し抜き試験は、鋼管の内部の下方に円柱体を設け、円柱体の上方に地盤となる砂を設け、らせん状の棒状突起部の始端を円柱体の天端から0.5D離間させておく。その後、鋼管を上方から載荷して、鋼管を0.5D下方に押し込むまでの押し抜き抵抗力度を測定した。鋼管杭の外径寸法Dを101.6mmとし、鋼管杭の板厚を5.7mmとし、地盤高さを350mmとした。
【0081】
図14は、実施例1の結果を、0.1D押し込み時の押し抜き抵抗力度を縦軸とし、閉塞促進部材の取り付け範囲を横軸として示す。
【0082】
閉塞促進部材の取り付け範囲が大きくなるにつれて、0.1D押し込み時の押し抜き抵抗力度が向上することが確認できた。取り付け範囲が1.0Dの場合の0.1D押し込み時の押し抜き抵抗力度は、取り付け範囲が0.5Dの場合と比較し2割程度増加した。また、取り付け範囲が1.5Dの場合の0.1D押し込み時の押し抜き抵抗力度は、取り付け範囲が0.5Dの場合と比較し8割程度増加した。一方、取り付け範囲が2.0Dの場合の0.1D押し込み時の押し抜き抵抗力度は、取り付け範囲が1.5Dの場合と比較し0.7程度増加し、押し抜き抵抗力度の上昇はわずかであった。
【0083】
このように、取り付け範囲が0.5D以上2.0D以下の場合、押し抜き抵抗力度を効果的に発揮できる。そして、取り付け範囲が2.0Dにおいて、押し抜き抵抗力度の上昇率の低下及びピーク値を迎えるような関係性が確認できることから、鋼管本体の先端から鋼管本体の外径寸法Dの2倍(2D)を超えた範囲に取り付けられた場合、閉塞促進部材による閉塞促進効果が飽和する傾向にあると考えられる。以上の結果より、閉塞促進部材を取り付けるコストを抑制するためにも、閉塞促進部材を鋼管本体の先端から鋼管本体の外径寸法Dの2倍の範囲内に取り付けることが望ましい。
【0084】
また、いずれのケースにおいても、らせん状の突起が鋼管の先端部近傍に取り付けられている。管内土の応力は鋼管杭の下端に近づくにつれ大きくなるため、らせん状の突起を取り付ける範囲も先端付近に集中させることで効率よく押し抜き抵抗力を発揮することができる。
【実施例0085】
本実施例では、閉塞促進部材を有する杭の根入れ深さと支持力性能の関係性について、FEM解析を行った。解析には、鋼管の外径寸法Dを1000mm、板厚25mmの鋼管を使用した。管内の閉塞促進部材の有無及び根入れ深さが支持力性能に与える影響を検証した。閉塞促進部材としてリング状の棒状突起部を設定した。閉塞促進部材は、鋼管の先端から0.5Dの位置と、1.0Dの位置と、に配置した。閉塞促進部材を有する杭(本発明例)については、根入れ深さを1.3D(本発明例1)、2.7D(本発明例2)、4D(本発明例3)の3ケースで検証した。閉塞促進部材を有しない素管の杭(参考例)については、根入れ深さを3Dとした。
【0086】
図15は、杭の支持層への根入れ深さと押し抜き抵抗力度の関係を示すグラフである。なお、図15における点線丸印は、外挿である。閉塞促進部材を有する鋼管については解析を行った3ケースをプロットし、3つのプロットについて近似曲線(図15における実線の曲線)を引いた。本解析における近似曲線を参照すると、根入れ深さが3Dである参考例と同等の押し抜き力度を発現させるためには、閉塞促進部材を有する杭においては、根入れ深さが0.66D程度必要であることがわかる(図15における点線丸印参照)。また、本解析における近似曲線を参照すると、閉塞促進部材を有する杭については、根入れ深さが1Dの場合の押し抜け抵抗力度は、根入れ深さが3Dである参考例の押し抜け抵抗力度よりも大きいことがわかる。
【0087】
以上の解析結果から、閉塞促進部材を有する杭においては、支持層への根入れを0.7D以上とすることで、管内土の閉塞度が上昇して、素管の鋼管杭の支持層への根入れ深さを3D程度以上とした場合と同等又はより高い支持力性能を得ることができ、必要な鋼管杭の支持力を確保することができることが判明した。
【符号の説明】
【0088】
1 :鋼管杭
1A :鋼管本体
1B :掘削用ビット
2 :回転圧入装置
3 :管内土量調整装置
5 :閉塞促進部材
D :外径寸法
G :地盤
G1 :軟弱層
G2 :支持層
S1 :管内土の天端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15