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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132541
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】気体用殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20240920BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20240920BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20240920BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L9/00 C
A61L9/16 F
F24F8/22
F24F8/80 100
F24F8/80 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043346
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幹雄
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180AA17
4C180AA19
4C180CC03
4C180DD03
4C180DD09
4C180EA34X
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH19
4C180LL11
(57)【要約】
【課題】コンパクトで殺菌効率が高い気体用殺菌装置を提供する。
【解決手段】所定の間隔を開けて対向して第1基板10および第2基板20が配置され、第1基板10と第2基板20の間の空間を仕切板30で仕切って螺旋形の流路90を形成している。第1基板10には、螺旋形の流路90に沿って、所定の間隔で複数の貫通孔11が設けられている。第3基板は、第1基板の外側の面に固定され、複数の発光素子50が搭載されている。発光素子50は、第1基板10の貫通孔11内に突出している。これにより、発光素子50から流路90内の気体に直接紫外線を照射することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を開けて対向して配置された第1基板および第2基板と、前記第1基板と第2基板との間の空間を仕切って流路を形成する仕切板と、前記流路内の空間に紫外線を照射する複数の発光素子と、複数の前記発光素子が搭載された第3基板とを有し、
前記仕切板は、前記第1基板および第2基板と平行な断面が、螺旋形であり、中心から外周まで周回を繰り返しながら周回半径が大きくなる螺旋形の流路を前記第1基板と第2基板の間の空間に形成し、
前記第1基板には、前記螺旋形の流路に沿って、所定の間隔で複数の貫通孔が設けられ、
前記第3基板は、前記第1基板の外側の面に固定され、複数の前記発光素子は、前記第1基板の前記貫通孔が設けられた位置に対応する位置の前記第3基板上に、前記第1基板に向かって突出するように搭載され、前記第1基板の前記貫通孔内に挿入されていることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気体用殺菌装置であって、前記螺旋形の仕切板の間隔は、中心から外周まで一定であることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項3】
請求項1に記載の気体用殺菌装置であって、前記螺旋形の仕切板の中心部の位置の前記第2基板には、第2開口が設けられ、
前記螺旋形の仕切板の最外周には、前記第1基板と第2基板と最外周の前記仕切板と、最外周の一つ内側の周の前記仕切板とにより囲まれた第1開口が設けれ、前記第1開口および第2開口のうちの一方が、気体流入口として用いられ、他方が気体流出口として用いられることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項4】
請求項1に記載の気体用殺菌装置であって、前記第1基板と前記第3基板が接する面には、前記貫通孔の周囲を気密に塞ぐ気密構造が設けられていることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項5】
請求項1に記載の気体用殺菌装置であって、前記発光素子の先端は、前記第1基板よりも流路側には突出していないことを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項6】
請求項1に記載の気体用殺菌装置であって、前記流路の内壁面を構成する、前記第1基板と前記第2基板と前記仕切板の壁面には、光反射層が配置されていることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項7】
請求項6に記載の気体用殺菌装置であって、前記光反射層には、光触媒反応を生じる物質が含有されていることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項8】
請求項1に記載の気体用殺菌装置であって、前記発光素子は、発する光の波長が異なる第1発光素子と第2発光素子とを含み、前記第1発光素子と前記第2発光素子は、前記流路に沿って交互に配置されていることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項9】
請求項3に記載の気体用殺菌装置であって、前記第1開口および第2開口には、少なくとも一方にファンが配置され、前記流路内に所定の方向に気体を流すことを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項10】
請求項3に記載の気体用殺菌装置であって、前記第1開口および第2開口には、少なくとも一方には、気体中の微粒子を集めるフィルタが配置されていることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項11】
請求項10に記載の気体用殺菌装置であって、前記フィルタは、前記第2基板の中心部の前記第2開口に設けられ、
前記第1基板の前記貫通孔は、前記第2開口と向かい合う位置も配置され、前記貫通孔内に前記発光素子が配置され、前記フィルタに向かって紫外線を照射することを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項12】
請求項1に記載の気体用殺菌装置であって、前記発光素子は、螺旋形の前記仕切板の間隔の中心線に沿って並べられていることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項13】
請求項1に記載の気体用殺菌装置であって、前記発光素子は、螺旋形の前記仕切板の間隔の中心線よりも所定の距離だけ外周寄りの線に沿って並べられていることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項14】
請求項1に記載の気体用殺菌装置であって、螺旋形の前記仕切板の間隔の中心線よりも所定の距離だけ外周寄りに、螺旋形の前記流路内の前記中心線よりも外周寄り空間を流れる空気を、前記中心線よりも内周寄りの空間に向かわせるフィンが、前記流路内に配置されていることを特徴とする気体用殺菌装置。
【請求項15】
請求項9に記載の気体用殺菌装置であって、前記螺旋の中心部の前記第2基板に設けられた前記第2開口は、螺旋形の前記流路を流れる気体を排出する排出口であり、
前記第2開口には、前記ファンが配置され、前記ファンの回転方向は、螺旋形の前記流路を周回しながら流れる気体の回転の方向と一致していることを特徴とする気体用殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の気体を殺菌する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を照射して水や空気等の流体を殺菌する装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明なチューブをらせん状に巻いて筐体内に配置して、チューブ内に水を流し、筐体内壁に配置した半導体発光素子からチューブ内を流れる水に紫外線を照射して殺菌する装置が開示されている。チューブの材質としては、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂が用いられている。
【0004】
また、特許文献2には、筐体の側面下部に流入口を設け、筐体の上面に排出口を設け、筐体の上部にファンを配置し、筐体内の空間の中央に柱状の紫外線ランプを配置した流体殺菌装置が開示されている。この装置は、ファンを回転させると、下部の流入口から気体が筐体内に取り込まれて、柱状の紫外線ランプの周囲を上昇し、その間に紫外線の照射を受けて殺菌される。殺菌された気体は、筐体の上面の排出口から外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-148938号公報
【特許文献2】特開2022-63592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の殺菌装置は、チューブを通して、内部を流れる流体に紫外線を照射する構造であるため、チューブの紫外線透過率により殺菌効果が低減される。また、紫外線を照射され続けることにより、チューブが劣化するとともに、透過率が低減するため、殺菌効果を長期間にわたって維持することは難しい。
【0007】
また、特許文献2の構造は、筐体内部の空間を気体が上昇する間に紫外線を照射する構造であるため、殺菌効果を高めるには、筐体の高さを大きくし、紫外線が照射される時間を延ばす必要がある。そのため、装置が大型化するという問題がある。また、気体が、筐体内部の流入口から排出口まで到達するまでに通過する経路は、一様ではなく、気体の殺菌率にばらつきが生じやすい。
【0008】
本発明の目的は、コンパクトで殺菌効率が高い気体用殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の気体用殺菌装置は、所定の間隔を開けて対向して配置された第1基板および第2基板と、第1基板と第2基板との間の空間を仕切って流路を形成する仕切板と、流路内の空間に紫外線を照射する複数の発光素子と、複数の発光素子が搭載された第3基板とを有する。仕切板は、第1基板および第2基板と平行な断面が、螺旋形であり、中心から外周まで周回を繰り返しながら連続する螺旋形の流路を第1基板と第2基板の間の空間に形成している。第1基板には、螺旋形の流路に沿って、所定の間隔で複数の貫通孔が設けられている。第3基板は、第1基板の外側の面に固定され、複数の発光素子は、第1基板の貫通孔が設けられた位置に対応する位置の第3基板上に、第1基板に向かって突出するように搭載され、第1基板の貫通孔内に挿入されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、薄くコンパクトな構成でありながら、内部にらせん状の流路が形成され、流路内の気体に直接紫外線を照射することができるため殺菌効率が高い気体用殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1の気体用殺菌装置1の斜視図である。
図2】実施形態1の気体用殺菌装置1の正面図である。
図3】実施形態1の気体用殺菌装置1のA-A断面図である。
図4】実施形態1の気体用殺菌装置1内の気体の流れを示す図である。
図5】実施形態1の気体用殺菌装置1の部品の形状を示す図である。
図6】実施形態1の気体用殺菌装置1の部品の形状を示す図である。
図7】実施形態2の気体用殺菌装置の構造を示す図である。
図8】実施形態3の気体用殺菌装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について以下に説明する。
【0013】
<<実施形態1>>
実施形態1の気体用殺菌装置1について図1図6を用いて説明する。図1図2および図3は、気体用殺菌装置1の斜視図、正面図および断面図である。図4は、気体用殺菌装置1内の気体の流れを示す図である。図5および図6は、気体用殺菌装置1を構成する部品の形状を示す図である。
【0014】
図1図6に示すように、気体用殺菌装置1は、所定の間隔(幅T)を開けて対向して配置された第1基板10および第2基板20の間に、仕切板30を挟み、仕切板30によって第1および第2基板20の間の空間を仕切って流路90を形成した構成である。
【0015】
第1基板10、第2基板20および仕切板30は、例えば樹脂または金属により形成されている。
【0016】
仕切板30は、幅Tの帯状であり、中心から外周まで周回を繰り返しながら周回半径が徐々に大きくなる螺旋形に巻かれている。仕切板30の幅方向の一方の端面は、第1基板10に図3のように接着層31により気密に固定され、他方の端面は、第2基板20に接着層32により気密に固定されている。
【0017】
すなわち、仕切板30の第1基板10および第2基板20と平行な断面が、螺旋形である。螺旋形の仕切板30の間隔は、中心から外周まで一定である。
【0018】
これにより、仕切板30は、中心から外周まで周回を繰り返しながら周回半径が徐々に大きくなる螺旋形の流路90を第1基板10と第2基板20の間の空間に形成している。螺旋形の流路90の幅は、中心から外周まで一定であるため、一様な流速で流路90内に気体を流すことができる。
【0019】
なお、接着層31または32の少なくとも一方を、溶着等の他の固着方法により固定することも可能である。
【0020】
螺旋形の仕切板30の最外周には、第1開口70が設けられている。第1開口70は、第1基板10と、第2基板20と、最外周の仕切板30と、最外周の一つ内側の周の仕切板30とにより囲まれている。
【0021】
仕切板30は、最外周の端部の一部が直線状に延ばされた延長部33を備えている。直線状の延長部33を設けたことにより、仕切板30の螺旋の径方向の第1開口70の開口径を、大きく確保している。
【0022】
螺旋形の仕切板30の中心部の位置の第2基板20には、第2開口80が設けられている。
【0023】
第2開口80および第1開口70のうちの一方が、流路90への気体流入口として用いられ、他方が気体流出口として用いられる。ここでは、一例として、外周の第1開口70を流入口として用い、中心部の第2開口80を排出口として用いているが、逆でもよい。
【0024】
第1基板10の外縁の形状は、図6のように、螺旋形の仕切板30の最外周の形状にほぼ一致している。第2基板20の外縁の形状は、第1基板10の外周の形状と同形状である。
【0025】
第1基板10には、図3および図6に示すように、螺旋形の流路90に沿って、所定の間隔で複数の貫通孔11が設けられている。貫通孔11は、螺旋形の仕切板30の間隔の中心線に沿って並べられている。すなわち、貫通孔11は、流路90の幅方向の中心線に沿って並べられている。
【0026】
第1基板10の外側の面には、第3基板40が、接着層60により固定されている。第3基板40は、絶縁層に配線層41およびビア42を設けた実装回路基板である。第3基板40には、第1基板10の貫通孔11が設けられた位置に対応する位置に、複数の発光素子50が搭載されている。複数の発光素子50は、第1基板10に向かって突出するように第3基板40上に搭載されている。発光素子50は、第1基板10の貫通孔11内に挿入されている。
【0027】
発光素子50は、紫外光を出射する。ここでは、発光素子50として、パッケージングされたLEDを用いる。貫通孔11のサイズおよび形状は、発光素子50が挿入可能なサイズおよび形状に設計されている。
【0028】
このように、第1基板10に、流路90の中心線に沿って所定の間隔で貫通孔11を設け、発光素子50が貫通孔11内に挿入されるように第3基板40を、第1基板10に固定することにより。発光素子50から紫外線を照射することにより、流路90内の空間に発光素子50から直接紫外光を照射することができる。発光素子50の流路90に沿った間隔は、流路90内の空間に連続的に紫外光が照射されるように、発光素子50の照射する紫外線の広がり角を考慮して設計することが好ましい。
【0029】
また、貫通孔11を備えた第1基板10が、実装基板である第3基板40よりも流路90側に位置するため、第1基板10は、発光素子50が発した紫外線が、第3基板40に直接照射されるのを防ぐ。これにより、第1基板10は、第3基板40を紫外線から保護している。
【0030】
発光素子50は、貫通孔11に挿入されているが、第1基板10の表面よりも流路90内に突出していないことが望ましい。流路90内に突出していると、流路抵抗が大きくなるためである。
【0031】
また、第1基板10と第3基板40を接着する接着層60は、気密性を有し、貫通孔11の周囲を気密に塞ぐ気密構造として機能している。これにより、貫通孔11を介して、紫外光を流路90内に直接照射できる構成でありながら、貫通孔11から外気が流路90内に流入するのを防ぎ、流路90の気密性を保っている。なお、気密構造は、接着層60に限られず、気密性を有する弾性部材(例えば、Oリング)等を貫通孔11の周囲に配置してもよい。この構造の場合、第1基板10と第3基板40とをねじ等の気密性のない固定方法により固定することができる。
【0032】
発光素子50が発する光の紫外線の波長は、殺菌したい対象(細菌、ウイルス、カビおよび原生動物の種類)によって選択される。波長は、例えば、265nm、365nm等である。
【0033】
また、この後説明するように、光反射層100が光触媒性の粒子(酸化チタン)を含む場合には、光触媒性反応を生じさせる波長(例えば365nm)が選択される。
【0034】
ここでは、細菌やウイルス全般に対して殺菌効果の高い波長265nmの発光素子と、酸化チタンに光触媒反応を生じさせる波長365nmの発光素子とを用い、流路90に沿って交互に配置されるように、第3基板40上に実装している。
【0035】
発光素子50への給電は、第3基板40内に配置されてビア42と、第3基板40の裏面に配置された配線層41とを介して行われる。
【0036】
流路90の内壁面には、光反射層100が配置されていることが好ましい。具体的には、第1基板10と第2基板20と仕切板30の流路90側の壁面に、光反射層100を配置することが好ましい。これにより、発光素子50から流路90内の空間に向かって照射した紫外光のうち、空間を通り抜けて流路90の内壁面に到達した光を、光反射層100によって反射して、再び流路90内の空間に向かって照射することができる。よって、紫外線による殺菌効率を向上させることができる。
【0037】
光反射層100を配置することにより、第1基板10,第2基板20および仕切板30に直接紫外光が照射されるのを防ぐことができるため、これらの劣化を防ぐことができる。
【0038】
光反射層100は、光反射性が高く、紫外線に対して劣化しにくいポリプロピエレン層やフッ素系樹脂層を用いることができる。また、光散乱性の高い粒子(例えば、酸化チタン粒子)を焼結して層状にしたものや、光散乱性の高い粒子分散させた樹脂層を光反射層100として用いることができる。光散乱性の高い粒子分散させる樹脂層としては、紫外線に対して劣化しにくいポリプロピエレンやフッ素系樹脂を用いることが好ましい。また、光反射層100として、アルミ層等の光反射性の高い金属層を用いることも可能である。
【0039】
光反射層100として、光触媒反応を生じる物質が含有されたものを用いることも可能である。これにより、流路90を流れる気体の匂いの成分を光触媒反応により酸化し分解して脱臭する効果や、ウイルスを酸化する効果や、流路90の内壁をセルフクリーニングする効果を得ることができる。例えば、光触媒反応を生じる酸化チタン粒子の焼結体、または、酸化チタン粒子を含有する樹脂により光反射層100を構成する。
【0040】
光反射層100が光触媒反応を生じる物質を含有する場合、発光素子50としては、上述の通り、光触媒性反応を生じさせる波長(例えば365nm)の紫外線を出射する発光素子が発光素子50の少なくとも一部に含まれるようにする。
【0041】
また、光反射層100は、流路90の内壁のみならず、貫通孔11の内壁にも配置してもよい。光反射層100を貫通孔11の内壁にも配置することにより、第1基板10、接着層60および第3基板の端面に、発光素子50が配置した紫外線が到達して、端面を劣化させるのを防ぐことができる。
【0042】
第1開口70および第2開口80には、少なくとも一方にファン73,83が配置されている。これにより、一方の開口(ここでは、第1開口70)から流路90内に所定の方向に気体を取り込んで流し、他方の開口(ここでは第2開口80)から排出することができる。
【0043】
また、第1開口70および第2開口80の両方にファン73,83を配置することも好ましい。第1開口70および第2開口80の両方にファン73,83を配置することにより、一つだけファンを配置した場合と比較して、流入口から排出口までの流路90における流速の変化を低減し、一定の流速で気体を流すことができる。
【0044】
また、ファン73,83の回転数を調整することにより、流速を所望の値に調整することができる。これにより、気体に含まれる菌やウイルスの種類に応じて、また、所望する殺菌度合に応じて、必要な時間だけ紫外線が照射されるように、流路90の気体の通過時間を流速によって設定することができる。
【0045】
また、第2開口80にファン83を配置する場合、ファンの回転方向は、螺旋形の流路90を周回しながら流れる気体の回転の方向と一致していることが好ましい。これにより、第2開口80付近における乱流の発生を抑制することができるため、第2開口80が排出口である場合には、排出効率を向上させることができる。第2開口80が吸入口である場合には、吸入効率を高めることができる。
【0046】
第2開口80および第1開口70には、少なくとも一方には、気体中の微粒子を集めるフィルタ71,81を配置し、フィルタカバー72,82により着脱可能に固定することが可能である。フィルタ71,81としては、例えばHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)が好適である。フィルタ71,81を配置することにより、気体中のウイルス、花粉、微小粒子状物質(例えばPM2.5)等の粒子を捕集することができる。
【0047】
特に、中心部の第2開口80にフィルタ81を配置した場合、第2開口80と対向する位置の第1基板10に貫通孔11を設け、貫通孔11内に発光素子50を配置することが好ましい。これにより、フィルタ81に対して、発光素子50から紫外光を直接照射することができるため、フィルタ81に付着したウイルスを紫外線により不活化することができる。また、フィルタ81に付着した花粉や微小粒子状物質等の、アレルゲンとしての活性を不活化することができる。
【0048】
本実施形態の気体用殺菌装置1を組み立てる手順を、図5図6を用いて説明する。
【0049】
まず、第2開口80が設けられ、内壁に光反射層100が設けられた第2基板20に、表面に光反射層100が設けられ、螺旋形に巻き回された第3基板40の端面を接着層32等により固定する。
【0050】
次に、内側の面に光反射層100が設けられ、貫通孔11が設けられた第1基板10を第3基板40の逆側の端面に接着層31等により固定する。
【0051】
さらに、発光素子50が予め実装された第3基板40を、接着層60により第1基板10の外側の面に固定する。
【0052】
最後に、外周の第1開口70と、中心の第2開口80に、それぞれ、フィルタ71,81,フィルタカバー72,82、および、ファン73,83を必要に応じて取り付ける。
【0053】
以上により、本実施形態の気体用殺菌装置1を製造することができる。
【0054】
上述してきたように、本実施形態の気体用殺菌装置1は、第1開口70から吸入した気体が、図4のように螺旋形の流路90を通過している間に、紫外線を発光素子50から直接照射して殺菌し、第2開口80から排出することができる。
【0055】
気体用殺菌装置1は、第1基板10と第2基板20とが対向した隙間(幅T)の空間に、仕切板30により螺旋形の流路90を形成しているため、小型、薄型である。しかも、小型、薄型でありながら、螺旋形の流路90の長さは長く、流路90を流れている最中に連続して発光素子50から紫外線を照射し続けることができるため、除菌効果が高い。
【0056】
また、ファン73,83の回転速度を調整することにより、気体の流路90の通過時間を調整できる。よって、気体に紫外線が照射される時間を、ファン73,83の回転速度により調整でき、必要とする殺菌性能を得ることができる。
【0057】
また、花粉、PM2.5などのアレルゲンも、フィルタ71,81で集じんでき、有効に抑制することができる。フィルタ71,81に集じんされた花粉、PM2.5などのアレルゲンに、紫外線を照射して、不活化することも可能である。
【0058】
第1開口70と第2開口80は、どちらを気体の吸入口にするかは、ファン73,83の回転方向によって自由に選択できる。よって、使用場所や、殺菌したい気体の供給位置、集じんの要否も考慮して、第1開口70と第2開口80をどちらにするかを選択すればよい。また、集じんのためのフィルタ71,81も吸入口か排出口のどちらにでも装着可能である。両方にフィルタをつけることもできる。
【0059】
また、本実施形態の気体用殺菌装置1は、殺菌効果が優れた構造であるのもかかわらず、構造が簡単であるため、低コストに製造することができる。
【0060】
また、使用場所や、要求される殺菌性能に合わせて、螺旋形の流路90を長くまたは短くすることができ、設計変更が容易である。
【0061】
また、発光素子50から発せられる光は、外から直接見えない構造であり、安全性も高い。
【0062】
<<実施形態2>>
実施形態2の気体用殺菌装置を図7を用いて説明する。
【0063】
図7の気体用殺菌装置は、実施形態1の気体用殺菌装置と同様の構成であるが、貫通孔11および発光素子50の位置が、実施形態1とは異なる。
【0064】
螺旋形の流路90内を空気が流れる場合、遠心力により、空気は、流路90の中心線よりも外側を多く流れることが予想される。
【0065】
そのため、実施形態2では、除菌性能を高める為、流路90の中心線91よりも外側に貫通孔11および発光素子50を配置する。図7の黒丸の位置に貫通孔11および発光素子50を配置する。これにより、効率的に流路90に侵入した空気を除菌することができる。
【0066】
なお、図7では、最外周の一部のみの貫通孔11および発光素子50の位置を示しているが、流路90の全体にわたって、中心線91よりも外側に貫通孔11および発光素子50を配置することが可能である。また、一部領域のみで中心線91よりも外側に配置してもよい。
【0067】
実施形態2の気体用殺菌装置の他の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0068】
<<実施形態3>>
実施形態3の気体用殺菌装置を図8を用いて説明する。
【0069】
図8の気体用殺菌装置は、実施形態1の気体用殺菌装置と同様の構成であるが、流路90内にフィン92を追加した構成である。
【0070】
フィン92により、螺旋形の流路90の中心線91よりも外側を流れる空気を、中心線91よりも内側に通過するように整流する。
【0071】
実施形態3の気体用殺菌装置の他の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0072】
<利用分野>
本実施形態の気体用殺菌装置は、例えば、空気除菌装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 気体用殺菌装置
10 第1基板
11 貫通孔
20 第2基板
30 仕切板
31 接着層
32 接着層
33 延長部
40 第3基板
41 配線層
42 ビア
50 発光素子
60 接着層
71 フィルタ
72 フィルタカバー
73 ファン
81 フィルタ
82 フィルタカバー
83 ファン
90 流路
91 中心線
92 フィン
100 光反射層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8