(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132546
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電力系統管理システム及び電力系統管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20240920BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 130
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043356
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パンデイ ラビカント
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066FB01
5G066FB11
5G066HA13
5G066HB04
5G066HB06
5G066HB09
(57)【要約】
【課題】RESの導入拡大による電力系統の不安定性を鑑み、電力系統の安定性を評価し、SSO等の振動の発生を抑制するすること。
【解決手段】電力系統における電力負荷の予測を示す電力負荷予測情報と、電力系統における発電所によって発電される電力の予測を示す発電予測情報とを格納する記憶部と、電力負荷予測情報と発電予測情報とに基づいて、電力系統の安定性を評価するための安定性指標を示す安定性指標情報を計算する指標計算部と、電力系統における実際の電力負荷を示す電力負荷情報と、電力系統における発電所によって実際に発電される電力を示す発電情報とを通信ネットワークを介して電力系統から取得する電力情報取得部と、電力負荷情報と、発電情報とに基づいて、電力系統に関する安定性スコアを計算し、安定性スコアと、安定性指標情報とに基づいて、電力系統の安定性を示す安定性評価結果を生成する安定性評価部とを含む電力系統管理システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と、
電力系統を管理する電力系統管理装置と、
前記電力系統と前記電力系統管理装置との間で情報の通信を行うための通信ネットワークとを含む電力系統管理システムであって、
前記電力系統管理装置は、
プロセッサと、
メモリと、
前記電力系統における電力負荷の予測を示す電力負荷予測情報と、前記電力系統における発電所によって発電される電力の予測を示す発電予測情報とを格納する記憶部とを備え、
前記メモリは、
前記電力負荷予測情報と前記発電予測情報とに基づいて、前記電力系統の安定性を評価するための安定性指標を示す安定性指標情報を計算する安定性指標計算部と、
前記電力系統における実際の電力負荷を示す電力負荷情報と、前記電力系統における発電所によって実際に発電される電力を示す発電情報とを前記通信ネットワークを介して前記電力系統から取得する電力情報取得部と、
前記電力負荷情報と、前記発電情報とに基づいて、前記電力系統に関する安定性スコアを計算し、前記安定性スコアと、前記安定性指標情報とに基づいて、前記電力系統の安定性を示す安定性評価結果を生成する安定性評価部、
として前記プロセッサを機能させるための処理命令を含むことを特徴とする電力系統管理システム。
【請求項2】
前記電力系統は、
パワーエレクトロニクスシステム(PES)及び非PESが接続されている複数のバスを含み、
前記電力負荷情報は、
前記電力系統における前記バス毎に、前記PESに係るPES電力負荷と、前記PES及び前記非PESに係る総電力負荷とを含み、
前記発電情報は、
前記電力系統における前記バス毎に、前記PESに係るPES発電量と、前記PES及び前記非PESに係る総発電量とを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電力系統管理システム。
【請求項3】
前記安定性評価部は、
前記電力負荷情報と、前記発電情報とに基づいて、前記電力系統における各バスの前記PES電力負荷及び前記PES発電量の和を、前記電力系統における各バスの前記総電力負荷及び前記総発電量の和で除することで、前記電力系統におけるPES電力使用率を計算し、前記PES電力使用率を前記安定性スコアとする、
ことを特徴とする、請求項2に記載の電力系統管理システム。
【請求項4】
前記安定性指標計算部は、
前記電力負荷予測情報と、前記発電予測情報とに基づいて、安定性指標の対象範囲を判定し、
前記対象範囲における安定性指標毎に、前記電力系統における所定のバスについて、時間毎に予測される電圧を示すシミュレーション結果を生成し、
前記対象範囲における第1の安定性指標について、前記シミュレーション結果における前記電圧の時間当たりの変動が所定の変動閾値未満の場合、前記第1の安定性指標を安定と指定し、
前記対象範囲における第2の安定性指標について、前記シミュレーション結果における前記電圧の時間当たりの変動が所定の変動閾値以上の場合、前記第2の安定性指標を不安定と指定することで、前記対象範囲における各安定性指標が安定か不安定かを示す前記安定性指標情報を生成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電力系統管理システム。
【請求項5】
前記安定性評価部は、
前記安定性スコアを、前記安定性指標情報に比較した結果、前記安定性スコアが、前記第1の安定性指標に対応すると判定した場合、前記電力系統が安定していることを示す安定性評価結果を生成し、
前記安定性スコアを、前記安定性指標情報に比較した結果、前記安定性スコアが、前記第2の安定性指標に対応すると判定した場合、前記電力系統が不安定になる可能性があることを示す安定性評価結果を生成する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の電力系統管理システム。
【請求項6】
前記電力系統管理装置は、
前記電力系統が不安定になる可能性があると判定した場合、PES発電量の抑制を要求するPES発電量抑制要求を前記電力系統における発電所に対して送信する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電力系統管理システム。
【請求項7】
処理命令を格納するメモリと、
プロセッサとを含むコンピュータシステムにおいて、
前記メモリに格納されている前記処理命令は、
電力系統における電力負荷の予測を示す電力負荷予測情報と、前記電力系統における発電所によって発電される電力の予測を示す発電予測情報とを取得する工程と、
前記電力負荷予測情報と、前記発電予測情報とに基づいて、前記電力系統の安定性を評価するための安定性指標の対象範囲を判定する工程と、
前記対象範囲における安定性指標毎に、前記電力系統における所定のバスについて、時間毎に予測される電圧を示すシミュレーション結果を生成する工程と、
前記対象範囲における第1の安定性指標について、前記シミュレーション結果における前記電圧の時間当たりの変動が所定の変動閾値未満の場合、前記第1の安定性指標を安定と指定する工程と、
前記対象範囲における第2の安定性指標について、前記シミュレーション結果における前記電圧の時間当たりの変動が所定の変動閾値以上の場合、前記第2の安定性指標を不安定と指定することで、前記対象範囲における各安定性指標が安定か不安定かを示す安定性指標情報を生成する工程と、
前記電力系統におけるバス毎に、パワーエレクトロニクスシステム(PES)に係るPES電力負荷と、前記PES及び非PESに係る総電力負荷とを含む電力負荷情報と、前記電力系統における前記バス毎に、前記PESに係るPES発電量と、前記PES及び前記非PESに係る総発電量とを含む発電情報とを前記電力系統から取得する工程と、
前記電力負荷情報と、前記発電情報とに基づいて、前記電力系統における各バスの前記PES電力負荷及び前記PES発電量の和を、前記電力系統における各バスの前記総電力負荷及び前記総発電量の和で除することで、PES電力使用率を前記電力系統に関する安定性スコアとして計算する工程と、
前記安定性スコアを、前記安定性指標情報に比較した結果、前記安定性スコアが、前記第1の安定性指標に対応すると判定した場合、前記電力系統が安定していることを示す安定性評価結果を生成する工程と、
前記安定性スコアを、前記安定性指標情報に比較した結果、前記安定性スコアが、前記第2の安定性指標に対応すると判定した場合、前記電力系統が不安定になる可能性があることを示す安定性評価結果を生成する工程と、
前記電力系統が不安定になる可能性があると判定した場合、PES発電量の抑制を要求するPES発電量抑制要求を前記電力系統における発電所に対して送信する工程と、
を前記プロセッサに実行させることを特徴とする電力系統管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統管理システム及び電力系統管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーの需要が増加するにつれて、再生可能エネルギー発電システム(RES:Renewable Energy Systems)の電力系統への導入が拡大している。RESによって発電される電力量は、日照時間や風向き等、様々な原因により変動するため、電力系統への供給が不安定となりやすい。このため、RESの普及により、電力系統の安定性に関する懸念が生じている。
【0003】
従来から、電力系統の安定性を監視することを目的とした提案がなされている。
例えば、米国特許第10855079号明細書(特許文献1)には、「電力系統に接続された再生可能エネルギー発電システムを動作させる方法は、再生可能エネルギー発電システムを1つ又は複数の第1の動作設定で動作させることを含む。当該方法はまた、電力系統又はシステムの障害に起因する電気振動について再生可能エネルギー発電システムを監視することを含む。1つ又は複数の第1の動作設定が電力系統の状態に適していないことを示す所定の閾値を超える電気振動が検出された場合、当該方法は、1つ又は複数の第1の動作設定を1つ又は複数の異なる第2の動作設定に変更することで、再生可能エネルギー発電システムの電気的振動を低減することを含む。」技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、電力系統における振動を監視し、RESの現在の動作設定が電力系統の状態に適していないことを示す振動が検出された場合、RESの動作設定を変更し、振動を抑制することで、電力系統の安定化を図る手段が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の手段では、電力系統の安定化を図るためのRESの動作設定の変更は、SSO(Sub-synchronous Oscillation)等の振動が検出された後、つまり、電力系統が既に不安定になった後に行われるため、電力系統における送電線や変圧器等の設備は当該振動による被害を受ける虞がある。
【0007】
上述したRESの導入拡大による電力系統の不安定性を鑑み、電力系統の安定性を評価し、SSO等の振動の発生を抑制する手段が求められている。
【0008】
そこで、本開示は、電力系統におけるバス毎に、電力系統の不安定性につながるパワーエレクトロニクスシステム(PES)に係る電力及び当該バスに係る総電力に基づいて求める安定性スコアを、所定の安定性指標に比較し、電力系統の安定性を評価し、必要に応じてPES電力を制御することで、SSO等の振動の発生を抑制し、電力系統の安定性を確保することが可能な電力系統管理手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の電力系統管理装置の一つは、電力系統と、電力系統を管理する電力系統管理装置と、前記電力系統と前記電力系統管理装置との間で情報の通信を行うための通信ネットワークとを含む電力系統管理システムであって、前記電力系統管理装置は、プロセッサとメモリとを備え、前記メモリは、前記電力系統における電力負荷の予測を示す電力負荷予測情報と、前記電力系統における発電所によって発電される電力の予測を示す発電予測情報とを格納する記憶部と、前記電力負荷予測情報と前記発電予測情報とに基づいて、前記電力系統の安定性を評価するための安定性指標を示す安定性指標情報を計算する指標計算部と前記電力系統における実際の電力負荷を示す電力負荷情報と、前記電力系統における発電所によって実際に発電される電力を示す発電情報とを前記通信ネットワークを介して前記電力系統から取得する電力情報取得部と、前記電力負荷情報と、前記発電情報とに基づいて、前記電力系統に関する安定性スコアを計算し、前記安定性スコアと、前記安定性指標情報とに基づいて、前記電力系統の安定性を示す安定性評価結果を生成する安定性評価部とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電力系統におけるバス毎に、電力系統の不安定性につながるパワーエレクトロニクスシステム(PES)に係る電力及び当該バスに係る総電力に基づいて求める安定性スコアを、所定の安定性指標に比較し、電力系統の安定性を評価し、必要に応じてPES電力を制御することで、SSO等の振動の発生を抑制し、電力系統の安定性を確保することが可能な電力系統管理手段を提供することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステムを示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る電力系統管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る電力負荷情報の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る発電情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係る電力系統安定性評価処理の流れの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係る電力系統管理システムの論理的構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係る安定性指標情報の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示に実施形態に係る安定性指標情報生成処理の流れの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係る安定性シミュレーション結果として、電力系統が安定していることを示す電圧波形を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係る安定性シミュレーション結果として、電力系統が不安定となる可能性があることを示す電圧波形を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係る安定性評価結果画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0013】
また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、本開示において様々な要素又は構成要素を説明するのに用いられる場合があるが、これらの要素又は構成要素はこれらの用語によって限定されるべきでないことが理解されるであろう。これらの用語は、或る要素又は構成要素を別の要素又は構成要素と区別するためにのみ用いられる。従って、以下で論述する第1の要素又は構成要素は、本発明概念の教示から逸脱することなく第2の要素又は構成要素と呼ぶこともできる。
【0014】
(本発明の概要)
上述したように、クリーンエネルギーの需要が増加するにつれて、再生可能エネルギー発電システム(RES:Renewable Energy Systems)の電力系統への導入が拡大している。RESによって発電される電力量は、日照時間や風向き等、様々な原因により変動するため、電力系統への供給が不安定となりやすい。この不安定な電力供給を制御するためには、いわゆるパワーエレクトロニクスシステム(PES)が用いられている。PESとは、電力変換及び制御を行うための設備であり、例えばインバータ、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)、静止型無効電力補償装置(STATCOM)、直列コンデンサ、直流送電線(HVDC)等を含む。
【0015】
しかし、ある地域において、PESの密度が高くなると、電力系統のグリッドインピーダンスの変動や、PES間の相互作用等により、軸ねじれ振動現象(SSO:Sub-synchronous Oscillation)と呼ばれる、電圧、電力、周波数、電流の振動が発生することがある。SSOは、電力系統における送電線や変圧器等の設備に被害を及ぼし、停電を引き起こすことがあるため、抑制することが望ましい。
【0016】
そこで、本開示は、電力系統におけるバス毎に、PESに係る電力と当該バスに係る総電力との比(つまり、PES電力の使用率)を、電力系統に関する安定性スコアとして求める。そして、求めた安定性スコアを、電力系統における「安定した状態」及び「不安定な状態」との境界を規定する安定性指標に比較することで、電力系統の現在の安定性を評価することができる。この評価をリアルタイムで、継続的又は定期的に行うことで、SSO等の振動が発生するよりも前に、電力系統が不安定になる可能性があることを判定することができる。そして、PES電力を抑えることを要求するPES発電量抑制要求を、例えば電力系統においてRESを用いる発電所に送信することで、PES電力の使用率を制御することができる。
このように、本開示の実施形態に係る電力系統管理手段によれば、SSO等の振動の発生を抑制し、電力系統の安定性を確保することが可能となる。
【0017】
次に、
図1を参照して、本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステム100について説明する。本明細書で開示される様々な実施形態の機構及び装置は、任意の適切なコンピューティングシステムに適用されてもよい。コンピュータシステム100の主要コンポーネントは、1つ以上のプロセッサ102、メモリ104、端末インターフェース112、ストレージインタフェース113、I/O(入出力)デバイスインタフェース114、及びネットワークインターフェース115を含む。これらのコンポーネントは、メモリバス106、I/Oバス108、バスインターフェースユニット109、及びI/Oバスインターフェースユニット110を介して、相互的に接続されてもよい。
【0018】
コンピュータシステム100は、プロセッサ102と総称される1つ又は複数の汎用プログラマブル中央処理装置(CPU)102A及び102Bを含んでもよい。ある実施形態では、コンピュータシステム100は複数のプロセッサを備えてもよく、また別の実施形態では、コンピュータシステム100は単一のCPUシステムであってもよい。各プロセッサ102は、メモリ104に格納された命令を実行し、オンボードキャッシュを含んでもよい。
【0019】
ある実施形態では、メモリ104は、データ及びプログラムを記憶するためのランダムアクセス半導体メモリ、記憶装置、又は記憶媒体(揮発性又は不揮発性のいずれか)を含んでもよい。メモリ104は、本明細書で説明する機能を実施するプログラム、モジュール、及びデータ構造の全て又は一部を格納してもよい。例えば、メモリ104は、電力系統管理アプリケーション150を格納していてもよい。ある実施形態では、電力系統管理アプリケーション150は、後述する機能をプロセッサ102上で実行する命令又は記述を含んでもよい。
【0020】
ある実施形態では、電力系統管理アプリケーション150は、プロセッサベースのシステムの代わりに、又はプロセッサベースのシステムに加えて、半導体デバイス、チップ、論理ゲート、回路、回路カード、及び/又は他の物理ハードウェアデバイスを介してハードウェアで実施されてもよい。ある実施形態では、電力系統管理アプリケーション150は、命令又は記述以外のデータを含んでもよい。ある実施形態では、カメラ、センサ、又は他のデータ入力デバイス(図示せず)が、バスインターフェースユニット109、プロセッサ102、又はコンピュータシステム100の他のハードウェアと直接通信するように提供されてもよい。
【0021】
コンピュータシステム100は、プロセッサ102、メモリ104、表示システム124、及びI/Oバスインターフェースユニット110間の通信を行うバスインターフェースユニット109を含んでもよい。I/Oバスインターフェースユニット110は、様々なI/Oユニットとの間でデータを転送するためのI/Oバス108と連結していてもよい。I/Oバスインターフェースユニット110は、I/Oバス108を介して、I/Oプロセッサ(IOP)又はI/Oアダプタ(IOA)としても知られる複数のI/Oインタフェースユニット112,113,114、及び115と通信してもよい。
【0022】
表示システム124は、表示コントローラ、表示メモリ、又はその両方を含んでもよい。表示コントローラは、ビデオ、オーディオ、又はその両方のデータを表示装置126に提供することができる。また、コンピュータシステム100は、データを収集し、プロセッサ102に当該データを提供するように構成された1つ又は複数のセンサ等のデバイスを含んでもよい。
【0023】
例えば、コンピュータシステム100は、湿度データ、温度データ、圧力データ等を収集する環境センサを含んでもよい。これ以外のタイプのセンサも使用可能である。表示システム124は、単独のディスプレイ画面、テレビ、タブレット、又は携帯型デバイスなどの表示装置126に接続されてもよい。
【0024】
I/Oインタフェースユニットは、様々なストレージ又はI/Oデバイスと通信する機能を備える。例えば、端末インタフェースユニット112は、ビデオ表示装置、スピーカテレビ等のユーザ出力デバイスや、キーボード、マウス、キーパッド、タッチパッド、トラックボール、ボタン、ライトペン、又は他のポインティングデバイス等のユーザ入力デバイスのようなユーザI/Oデバイス116の取り付けが可能である。ユーザは、ユーザインターフェースを使用して、ユーザ入力デバイスを操作することで、ユーザI/Oデバイス116及びコンピュータシステム100に対して入力データや指示を入力し、コンピュータシステム100からの出力データを受け取ってもよい。ユーザインターフェースは例えば、ユーザI/Oデバイス116を介して、表示装置に表示されたり、スピーカによって再生されたり、プリンタを介して印刷されたりしてもよい。
【0025】
ストレージインタフェース113は、1つ又は複数のディスクドライブや直接アクセスストレージ装置117(通常は磁気ディスクドライブストレージ装置であるが、単一のディスクドライブとして見えるように構成されたディスクドライブのアレイ又は他のストレージ装置であってもよい)の取り付けが可能である。ある実施形態では、ストレージ装置117は、任意の二次記憶装置として実装されてもよい。メモリ104の内容は、ストレージ装置117に記憶され、必要に応じてストレージ装置117から読み出されてもよい。I/Oデバイスインタフェース114は、プリンタ、ファックスマシン等の他のI/Oデバイスに対するインターフェースを提供してもよい。ネットワークインターフェース115は、コンピュータシステム100と他のデバイスが相互的に通信できるように、通信経路を提供してもよい。この通信経路は、例えば、ネットワーク130であってもよい。
【0026】
ある実施形態では、コンピュータシステム100は、マルチユーザメインフレームコンピュータシステム、シングルユーザシステム、又はサーバコンピュータ等の、直接的ユーザインターフェースを有しない、他のコンピュータシステム(クライアント)からの要求を受信するデバイスであってもよい。他の実施形態では、コンピュータシステム100は、デスクトップコンピュータ、携帯型コンピューター、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、ポケットコンピュータ、電話、スマートフォン、又は任意の他の適切な電子機器であってもよい。
【0027】
次に、
図2を参照して、本開示の実施形態に係る電力系統管理システムの構成について説明する。
【0028】
図2は、本開示の実施形態に係る電力系統管理システム200の構成の一例を示す図である。電力系統管理システム200は、電力系統の安定性を評価し、必要に応じて電力を制御することで、電力系統の安定性を確保するシステムであり、
図2に示すように、電力系統220、中央給電指令所230、通信ネットワーク235及び電力系統管理装置240から構成されている。電力系統管理システム200において、電力系統220、中央給電指令所230及び電力系統管理装置240は、通信ネットワーク235を介して通信可能に接続されている。
【0029】
電力系統220は、発電所で発電される電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を統合したシステムである。
図2に示すように、電力系統220には、バス201~205、再生可能エネルギーを発電するRES(Renewable Energy Systems)206~208、負荷209~212、同期発電機213、及び送電線215~219を含む。また、電力系統220は、他の電力系統(図示せず)に接続されてもよい。
なお、
図2で示す電力系統220は、本開示の実施形態に係る電力系統の構成の一例であり、本開示は
図2で示す電力系統220の構成に限定されない。
【0030】
バス202、バス203、バス204及びバス205は、電力系統220発電機、負荷、給電線などの電力設備が接続されている集合点を意味する。バス202、バス203、バス204及びバス205のそれぞれには、例えばRES206~208によって発電される電力や、負荷209へ供給する電力等が流れる。バス201~205に流れる電力には、例えばPESを用いるRES206~208やその他のPESによるPES電力と、PESでない非PESによる電力とが含まれている。後述するように、本開示の実施形態に係る電力系統管理手段では、電力系統におけるバス毎に、PES電力と総電力との比であるPES電力使用率は、電力系統の安定性を評価するために用いられる。
【0031】
RES206、207、208は、再生可能エネルギーを発電し、電力系統220に供給するシステムであり、例えば風力発電や太陽光発電で電力を発電する発電機や発電所を含む。上述したように、RES206、207、208によって発電される電力量は、日照時間や風向き等、様々な原因により変動するため、この不安定な電力供給を制御するためには、いわゆるパワーエレクトロニクスシステム(PES)が用いられている。
図2に示すように、RES206はバス202に接続され、RES207はバス205に接続され、RES208はバス203に接続されている。
なお、ここでは、PESを用いる設備の一例として、発電量を制御するインバータを用いるRES206、207、208を示しているが、PESを用いる設備はRESに限らず、例えばバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)、静止型無効電力補償装置(STATCOM)、直列コンデンサ、直流送電線(HVDC)等、他のPESを用いる設備も電力系統220に含まれてもよい。
【0032】
負荷209、210、211、212は、例えばRES206~208によって発電される電力を、バス201~205を介して受電し、消費する設備やデバイスを含む。
図2に示すように、負荷209はバス202に接続され、負荷210はバス204に接続され、負荷211はバス203に接続され、負荷212はバス205に接続される。
【0033】
同期発電機213(
図2では、「SG1」と表記する)は、界磁の作る磁界が電機子巻線を横切る回転速度に同期した電力を発電し、電力系統220に供給する発電機である。同期発電機213は、RES206~208とは異なり、PESを用いない非PESであってもよい。
【0034】
中央給電指令所230は、電力系統220の負荷209~212によって消費される電力量を監視し、例えばRES206~208や同期発電機213等の発電システムの発電量を調整する指令を発電システムに送信する事業所である。ある実施形態では、PES電力の使用率が多く、電力系統220が不安定になる可能性があると判定した場合、中央給電指令所230は、電力系統管理装置240からのPES発電量抑制要求をRES206~208や同期発電機213に送信してもよい。
【0035】
通信ネットワーク235は、電力系統220、中央給電指令所230及び電力系統管理装置240の間で情報の通信を行うためのネットワークである。通信ネットワーク235は、例えばワイドエリアモニタリングシステム(WAMS)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、衛星ネットワーク、ケーブルネットワーク、WiFiネットワーク、又はそれらの任意の組み合わせを含むものであってもよい。ある実施形態では、通信ネットワーク235は、後述する電力負荷情報266及び発電情報268を電力系統220から取得するために用いられてもよい。
【0036】
電力系統管理装置240は、電力系統の安定性を評価し、必要に応じて電力を制御することで、電力系統の安定性を確保するための装置であり、例えばサーバ装置等のコンピューティングデバイスであってもよい。ある実施形態では、電力系統管理装置240は、
図1に示すコンピュータシステム100として実装されてもよい。
図2に示すように、電力系統管理装置240は、メモリ250、記憶部260、プロセッサ270及び入出力部275を含んでもよい。
【0037】
メモリ250は、本開示の実施形態に係る電力系統管理手段の機能を実施するための電力系統管理アプリケーション150を格納するためのメモリであってもよい。この電力系統管理アプリケーション150は、
図2に示すように、安定性指標計算部252、電力情報取得部254及び安定性評価部256等のソフトウェアモジュールの機能を実施するための処理命令を含んでもよい。
【0038】
安定性指標計算部252は、後述する電力負荷予測情報262と発電予測情報264とに基づいて、電力系統220の安定性を評価するための安定性指標を示す安定性指標情報を計算するための機能部である。
なお、安定性指標計算部252による処理の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0039】
電力情報取得部254は、通信ネットワーク235を介して、電力負荷情報266と、発電情報268とを電力系統から取得するための機能部である。
なお、電力情報取得部254による処理の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0040】
安定性評価部256は、電力情報取得部254によって取得された電力負荷情報266と、発電情報268とに基づいて、電力系統220に関する安定性スコアを計算し、当該安定性スコアと、安定性指標計算部252によって計算される安定性指標情報とに基づいて、電力系統220の安定性を示す安定性評価結果を生成する機能部である。
なお、安定性評価部256による処理の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0041】
記憶部260は、本開示の実施形態に係る各種情報を格納するための記憶領域であり、
図2に示すように、電力負荷予測情報262、発電予測情報264、電力負荷情報266、発電情報268及び安定性指標情報を含んでもよい。
【0042】
電力負荷予測情報262は、所定の期間に関して、予測される電力系統220の電力負荷を示す情報である。
発電予測情報264は、所定の期間に関して、電力系統220に供給されると予測される発電量を示す情報である。
この電力負荷予測情報262及び発電予測情報264は、例えば電力系統を管理する電力会社によって予め生成され、電力系統管理装置240の記憶部260に格納される。
【0043】
電力負荷情報266は、所定の期間に関して、電力系統220における実際の電力負荷を示す情報である。
発電情報268は、所定の期間に関して、電力系統220に実際に供給された発電量を示す情報である。
この電力負荷情報266及び発電情報268は、通信ネットワーク235を介して、電力系統220から電力情報取得部254によって取得され、電力系統管理装置240の記憶部260に格納される。
【0044】
安定性指標情報269は、電力系統における「安定した状態」及び「不安定な状態」との境界を規定する情報であり、電力系統について計算される安定性スコアと比較されることで、電力系統の安定性を評価するために用いられる。この安定性指標情報269は、
図8を参照して後述する安定性指標情報生成処理800によって生成される。
プロセッサ270は、メモリ250によって格納される電力系統管理アプリケーション150の各機能部の機能を規定する処理命令を実施するための処理部である。
【0045】
入出力部275は、電力系統管理装置240に入力される情報を受け付けると共に、電力系統管理装置240によって生成される安定性評価結果やPES発電量抑制要求等の情報を出力するための機能部である。入出力部275は、例えばキーボード、マウス、GUI(Graphical User Interface)を表示するディスプレイ、情報の送受信を行う通信機能等を含んでもよい。
【0046】
以上説明した電力系統管理システム200によれば、SSO等の振動の発生を抑制し、電力系統の安定性を確保することが可能となる。
【0047】
次に、
図3を参照して、本開示の実施形態に係る電力負荷情報について説明する。
【0048】
図3は、本開示の実施形態に係る電力負荷情報266の一例を示す図である。上述したように、電力負荷情報266は、所定の期間に関して、電力系統220における実際の電力負荷を示す情報であり、通信ネットワーク235を介して、電力系統220から電力情報取得部254によって取得される。
【0049】
より具体的には、電力負荷情報266は、所定の期間に関して、電力系統220におけるバス毎に、PES及び非PESに係る総電力負荷310と、PESに係るPES電力負荷320とを含む。ここで、「PES電力負荷」との表現は、PESを用いて電力系統から受電家に供給される電力を意味し、「総電力負荷」との表現は、PES及び非PESを用いて電力系統から受電家に供給される電力を意味する。
【0050】
図2に示すように、総電力負荷310は、時間情報312、バス情報314、及び総電力負荷値316を含んでもよい。一例として、総電力負荷310は例えば12:30、13:00、13:30の30分の間隔毎に、電力系統におけるバス1、2及び3のそれぞれの総電力負荷の値(50MW、55MW等)を示してもよい。
【0051】
また、
図2に示すように、PES電力負荷320は、時間情報322、バス情報324、及びPES電力負荷値326を含んでもよい。一例として、PES電力負荷320は例えば12:30、13:00、13:30の30分の間隔毎に、電力系統におけるバス1、2及び3のそれぞれのPES電力負荷の値(35MW、45MW等)を示してもよい。
【0052】
次に、
図4を参照して、本開示の実施形態に係る発電情報について説明する。
【0053】
図4は、本開示の実施形態に係る発電情報268の一例を示す図である。上述したように、発電情報268は、所定の期間に関して、電力系統220に実際に供給された発電量を示す情報であり、通信ネットワーク235を介して、電力系統220から電力情報取得部254によって取得される。
【0054】
より具体的には、発電情報268は、所定の期間に関して、電力系統220におけるバス毎に、PES及び非PESに係る総発電量410と、PESに係るPES発電量420とを含む。ここで、「PES発電量」との表現は、PESを用いて電力系統に供給される電力を意味し、「総発電量」との表現は、PES及び非PESを用いて電力系統に供給される電力を意味する。
【0055】
図2に示すように、総発電量410は、時間情報412、バス情報414、及び総発電量値416を含んでもよい。一例として、総発電量410は例えば12:30、13:00、13:30の30分の間隔毎に、電力系統におけるバス1、2及び3のそれぞれの発電量の値(50MW、55MW等)を示してもよい。
【0056】
また、
図2に示すように、PES発電量420は、時間情報422、バス情報424、及びPES発電量値426を含んでもよい。一例として、PES発電量420は、例えば12:30、13:00、13:30の30分の間隔毎に、電力系統におけるバス1、2及び3のそれぞれのPES発電量の値(35MW、45MW等)を示してもよい。
【0057】
上述したように、
図3~4を参照して説明した電力負荷情報266及び発電情報268を用いることで、電力系統におけるバス毎のPES電力の使用率を電力系統の安定性スコアとして計算することができる。そして、このように計算した安定性スコアを、電力系統における「安定した状態」及び「不安定な状態」との境界を規定する安定性指標に比較することで、電力系統の現在の安定性を評価することができる。
なお、上述した電力負荷予測情報262及び発電予測情報264は、実際の電力負荷及び実際の発電量ではなく、予測されている電力負荷及び発電量を示す点以外、
図3及び
図4に示す電力負荷情報266及び発電情報268と実質的に同様であるため、その例示を省略する。
【0058】
次に、
図5を参照して、本開示の実施形態に係る電力系統安定性評価処理について説明する。
【0059】
図5は、本開示の実施形態に係る電力系統安定性評価処理500の流れの一例を示す図である。
図5に示す電力系統安定性評価処理500は、電力系統が安定しているか、不安定になる可能性があるかを当該電力系統の各バスでのPES電力の使用率に基づく安定性スコアを用いて判定する処理であり、
図2に示す電力系統管理装置240によって実行される。
【0060】
まず、ステップS510では、電力情報取得部254は、電力系統(例えば、
図2に示す電力系統220)における各バス(例えば、
図2に示すバス202、バス203、バス204及びバス205)について、電力負荷情報266及び発電情報268を取得する。ここで、電力情報取得部254は、例えば電力系統における各バスに対して、当該バスの電力負荷情報266及び発電情報268を通信ネットワーク235を介して転送する要求を送信してもよい。
【0061】
次に、ステップS520では、安定性評価部256は、ステップS510で取得した電力負荷情報266及び発電情報268に基づいて、電力系統に関する安定性スコアを計算する。ある実施形態では、安定性評価部256は、電力系統における各バスについて、当該バスでのPES電力の使用率を計算し、各バスのPES電力の使用率の平均値を安定性スコアとしてもよい。ここでの「PES電力」とは、電力系統において、PESによる給電、送電、受電、配電、変圧、制御、又はその他の調整を受けた電力を意味する。また、「PES電力の使用率」との表現は、各バスに係るPES電力と、総電力(つまり、PES電力と非PESに係る非PES電力との和)との比を意味する。
【0062】
より具体的には、安定性評価部256は、電力系統における各バスについて、電力負荷情報266に含まれるPES電力負荷(
図3に示すPES電力負荷320参照)及び発電情報268に含まれるPES発電量(
図4に示すPES発電量420参照)の和を、電力負荷情報266に含まれる総電力負荷(
図3に示す総電力負荷310参照)及び発電情報268に含まれる総発電量(
図4に示す総発電量410参照)の和で除することで、電力系統におけるPES電力使用率を計算し、各バスのPES電力使用率の平均値を安定性スコアとしてもよい。
このPES電力使用率は、例えば以下に示す数式1によって求められる。
【数1】
【0063】
ここで、PPES(load)は、特定のバスのPES電力負荷であり、PPES(gen)は、当該バスのPES発電量であり、Ptotal(load)は、当該バスの総電力負荷であり、Ptotal(gen)は、当該バスの総発電量である。
その後、安定性評価部256は、各バスについて計算したPES電力使用率の平均値を計算し、当該PES電力使用率の平均値を安定性スコアとしてもよい。ある実施形態では、安定性評価部256は、各バスに対して、当該バスの重要性等に基づいた重みを設定し、これらの重みと各バスについて計算したPES電力使用率とに基づいて、PES電力使用率の加重平均値を計算し、この電力使用率の加重平均値を安定性スコアとしてもよい。
【0064】
次に、ステップS530では、安定性評価部256は、ステップS520で計算した安定性スコアを、予め生成した安定性指標情報に比較することで、電力系統の安定性を評価し、電力系統が安定しているか、不安定になる可能性があるかを判定する。
より具体的には、安定性評価部256は、ステップS520で計算した安定性スコアを、予め生成した安定性指標情報(例えば、
図7に示す安定性指標情報269)に比較した結果、当該安定性スコアが、安定性指標情報において、「不安定」の安定性指標に対応すると判定した場合、本処理はステップS560へ進む。
【0065】
一方、安定性評価部256は、ステップS520で計算した各安定性スコアを、予め生成した安定性指標情報(例えば、
図7に示す安定性指標情報269)に比較した結果、当該安定性スコアが、安定性指標情報において、「安定」の安定性指標に対応すると判定した場合、本処理はステップS540へ進む。
なお、安定性スコアが安定性指標に「対応する」との表現は、安定性スコアが、特定の安定性指標について設定される寛容範囲以内であることを意味する。この寛容範囲は、例えば安定性指標の±5%、10%等、任意に設定されてもよい。
【0066】
次に、ステップS540では、安定性評価部256は、安定性スコアが、安定性指標情報における「安定」の安定性指標に対応していることから、電力系統におけるPES電力使用率が適切であり、SSOが発生する虞がないため、電力系統が安定していると判定する。
【0067】
次に、ステップS550では、安定性評価部256は、電力系統が安定していることを示す安定性評価結果を生成し、例えば
図11を参照して後述する安定性評価結果画面1100を介して出力してもよい。
【0068】
一方、ステップS560では、安定性評価部256は、安定性スコアが、安定性指標情報における「不安定」の安定性指標に対応していることから、電力系統におけるPES電力使用率が高く、SSOが発生する虞があるため、電力系統が不安定になる可能性があると判定する。
【0069】
次に、ステップS570では、安定性評価部256は、電力系統が不安定になる可能性があることを示す安定性評価結果を生成し、例えば
図11を参照して後述する安定性評価結果画面1100を介して出力すると共に、PES電力使用率を抑制する要求を電力系統における発電所に送信してもよい。一例として、安定性評価部256は、PES発電量の抑制を要求するPES発電量抑制要求を電力系統においてRESを利用している発電所に対して送信するように、中央給電指令所に要求を送信してもよい。
【0070】
以上説明した電力系統安定性評価処理500によれば、例えば電力系統における各バスのPES電力使用率に基づいて、電力系統の安定性を評価することが可能となる。
なお、上述した電力系統安定性評価処理500は、定期的又は継続的に行われてもよい。例えば、電力系統をリアルタイムで監視し、電力負荷情報266及び発電情報268を継続的に取得することで、電力系統の安定性を随時に評価することが可能となる。
【0071】
次に、
図6を参照して、本開示の実施形態に係る電力系統管理システムの論理的構成について説明する。
【0072】
図6は、本開示の実施形態に係る電力系統管理システム200の論理的構成の一例を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係る電力系統管理システム200は、電力系統の安定性を評価し、必要に応じて電力を制御することで、電力系統の安定性を確保するシステムであり、
図6に示すように、電力系統220、中央給電指令所230、通信ネットワーク235及び電力系統管理装置240から構成されている。
【0073】
電力系統管理装置240において、電力系統220に対する電力系統安定性評価処理500(
図5参照)を行う前に、当該電力系統安定性評価処理500において用いられる安定性指標情報269を生成する安定性指標情報生成処理800(
図8参照)が行われる。
【0074】
より具体的には、電力系統管理装置240における安定性指標計算部252は、例えば電力会社等から事前に取得した電力負荷予測情報262及び発電予測情報264を入力する。上述したように、この電力負荷予測情報262は、所定の期間に関して、予測される電力系統220の電力負荷を示す情報であり、発電予測情報264は、所定の期間に関して、電力系統220に供給されると予測される発電量を示す情報である。
【0075】
次に、安定性指標計算部252は、この電力負荷予測情報262及び発電予測情報264に基づいて、安定性シミュレーションモデル605を生成する。この安定性シミュレーションモデル605は、電力系統220の構成や状態を規定する情報である。ある実施形態では、この安定性シミュレーションモデル605における負荷や発電量のパラメータは、電力負荷予測情報262及び発電予測情報264に基づいて設定されてもよい。
【0076】
次に、安定性指標計算部252は、安定性シミュレーションプログラム610を用いて安定性シミュレーションモデル605を解析することで、電力系統220の挙動を、複数の異なる安定性指標毎に示すシミュレーション結果615を生成する。ある実施形態では、この安定性シミュレーションプログラム610は、特定のPES電力使用率について、電力系統220において予測される電圧波形を生成するシミュレーションプログラムであってもよい。この場合、シミュレーション結果615は、異なるPES電力使用率毎に生成される電圧波形の情報であってもよい。
【0077】
次に、安定性指標計算部252は、安定性シミュレーションプログラム610によって生成されるシミュレーション結果615を解析し、各シミュレーション結果が安定の挙動(例えば、安定している電圧波形)を示しているか、不安定の挙動(例えば、振動が存在する電圧波形)を示しているかを判定することで、各シミュレーション結果615に対応するPES電力使用率を、電力系統220における「安定した状態」及び「不安定な状態」との境界を規定する安定性指標とし、安定性指標情報269を生成する。
なお、安定性指標情報269を生成する安定性指標情報生成処理800の詳細については、
図8を参照して後述するため、ここではその説明を省略する。
【0078】
安定性指標情報269が生成された後、安定性評価部256は、通信ネットワーク235を介して、電力系統220から電力情報取得部254によって取得される電力負荷情報266及び発電情報268に基づいて計算した安定性スコアを、安定性指標情報269に比較することで、電力系統220の安定性を評価する。電力系統220が不安定となる可能性があると判定した場合、電力系統管理装置240は、例えば中央給電指令所230や通信ネットワーク235等を介して、PES発電量の抑制を要求するPES発電量抑制要求を電力系統220における発電所に送信してもよい。
なお、電力系統220の安定性を評価する電力系統安定性評価処理500の詳細は、
図5を参照して説明したため、ここではその説明を省略する。
【0079】
次に、
図7を参照して、本開示の実施形態に係る安定性指標情報について説明する。
【0080】
図7は、本開示の実施形態に係る安定性指標情報269の一例を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係る安定性指標情報269は、電力系統における「安定した状態」及び「不安定な状態」との境界を規定する情報であり、電力系統について計算される安定性スコアと比較されることで、電力系統の安定性を評価するために用いられる。
なお、
図7に示す安定性指標情報269は、
図8を参照して後述する安定性指標情報生成処理において生成され、記憶部260に格納されてもよい。
【0081】
図7に示すように、安定性指標情報269は、安定性指標710と、安定性720との情報を含んでもよい。
安定性指標710は、所定のPES電力の使用率の値を示す情報である。例えば、安定性指標710は、例えば「10%」、「30%」、「50%」等であってもよい。
安定性720は、安定性指標710毎に、特定の安定性指標で電力系統が安定か不安定かを示す情報である。例えば、安定性720は、所定の安定性指標「K1」(例えば、10%のPES電力の使用率)が「安定」であり、安定性指標「K2」(例えば、60%のPES電力の使用率)が「不安定」であることを示してもよい。
【0082】
上述したように、電力系統について安定性スコアを計算した後、当該安定性スコアを
図7に示す安定性指標情報269に比較することで、当該安定スコアが「安定」の安定性指標に対応するか、「不安定」の安定性指標に対応するかを判定することができる。その後、この判定に基づいて、電力系統におけるPES電力の使用率を制御することで、電力系統の安定性を確保することができる。
なお、安定性スコアが安定性指標に「対応する」との表現は、安定性スコアが、特定の安定性指標について設定される寛容範囲以内であることを意味する。この寛容範囲は、例えば安定性指標の±5%、10%等、任意に設定されてもよい。例えば、安定性指標が「50%」であり、安定性スコアが「52%」であり、寛容範囲が「安定性指標の±10%」の場合、「52%」との安定性スコアが「50%」との安定性指標に対応すると判定することができる。
【0083】
次に、
図8を参照して、本開示の実施形態に係る安定性指標情報生成処理について説明する。
【0084】
図8は、本開示に実施形態に係る安定性指標情報生成処理800の流れの一例を示す図である。安定性指標情報生成処理800は、電力系統における「安定した状態」及び「不安定な状態」との境界を規定し、電力系統の安定性を評価するために用いられる安定性指標情報を生成するための処理であり、
図2に示す電力系統管理装置240における安定性指標計算部252によって実施される。
【0085】
まず、ステップS810では、安定性指標計算部252は、安定性指標「k」を所定の初期値「k1」とする。上述したように、この安定性指標は、所定のPES電力使用率の値であってもよい。ここで、安定性指標の初期値k1は、任意の値に設定されてもよい。
【0086】
次に、ステップS815では、安定性指標計算部252は、電力系統の安定性シミュレーションモデルを生成する。この安定性シミュレーションモデルは、電力系統220の構成や状態を規定する情報である。ある実施形態では、安定性指標計算部252は、電力系統における電圧をシミュレーションする既存のシミュレーションモデルを安定性シミュレーションモデルとして用いてもよい。
【0087】
次に、ステップS820では、安定性指標計算部252は、ステップS815で生成した安定性シミュレーションモデルにおけるモデルパラメータを設定する。より具体的には、安定性指標計算部252は、安定性シミュレーションモデルにおける負荷、発電量及びPES電力使用率のパラメータを、電力負荷予測情報262及び発電予測情報264に基づいて設定してもよい。これにより、現実的なシミュレーション結果を得ることができる。
【0088】
ある実施形態では、安定性指標計算部252は、シミュレーションにおいて解析される安定性指標の対象範囲を電力負荷予測情報262及び発電予測情報264に基づいて設定してもよい。例えば、安定性指標計算部252は、上述した数式1を用いて、シミュレーションにおけるPES電力使用率の最小値(つまり、安定性指標の下限)を、電力負荷予測情報262及び発電予測情報264における最小の負荷及び発電量の値に基づいて求めたPES使用率に設定し、シミュレーションにおけるPES電力使用率の最大値(つまり、安定性指標の上限kn)を、電力負荷予測情報262及び発電予測情報264における最大の負荷及び発電量に基づいて求めたPES使用率に設定してもよい。
【0089】
次に、ステップS825では、安定性指標計算部252は、安定性シミュレーションプログラムを用いてステップS815で生成した安定性シミュレーションモデルを解析することで、特定のPES電力使用率を示す安定性指標(例えばk1)について、電力系統の予測される挙動を示すシミュレーション結果を生成することができる。ある実施形態では、この安定性シミュレーションプログラムは、特定のPES電力使用率について、電力系統において予測される電圧波形を生成するシミュレーションプログラムであってもよい。この場合、シミュレーション結果は、特定のPES電力使用率を表す安定性指標について生成される電圧波形の情報であってもよい。
【0090】
次に、ステップS830では、安定性指標計算部252は、ステップS825で生成したシミュレーション結果に示される電圧波形を解析する。ここで、安定性指標計算部252は、ミュレーション結果に示される電圧波形における時間当たりの変動が所定の変動閾値以上か否かを判定してもよい。所定の変動閾値以上の変動が電圧波形に存在すると判定した場合、本処理はステップS835へ進む。一方、所定の変動閾値以上の変動が電圧波形に存在しないと判定した場合、本処理はステップS850へ進む。
【0091】
次に、ステップS830において所定の変動閾値以上の変動が電圧波形に存在すると判定した場合、ステップS835では、安定性指標計算部252は、このPES電力使用率を示す安定性指標k1では、SSO(Sub-synchronous Oscillation)が電力系統において発生する虞があると判定する。
【0092】
次に、ステップS840では、安定性指標計算部252は、PES電力使用率を示す安定性指標k1では、SSOが電力系統において発生する虞があるため、当該安定性指標k1が「不安定」な状態を示すものであると判定する。
【0093】
次に、ステップS845では、安定性指標計算部252は、上述した安定性指標情報269において、当該安定性指標k1を「不安定」とする。より具体的には、安定性指標計算部252は、安定性指標情報269において安定性指標k1に対して、「不安定」とのラベルを対応付けてもよい。
その後、本処理はステップS865へ進む。
【0094】
一方、ステップS830において所定の変動閾値以上の変動が電圧波形に存在すると判定した場合、ステップS850では、安定性指標計算部252は、このPES電力使用率を示す安定性指標k1では、SSO(Sub-synchronous Oscillation)が電力系統において発生する虞がないと判定する。
【0095】
次に、ステップS855では、安定性指標計算部252は、PES電力使用率を示す安定性指標k1では、SSOが電力系統において発生する虞がないため、当該安定性指標k1が「安定」な状態を示すものであると判定する。
【0096】
次に、ステップS860では、安定性指標計算部252は、上述した安定性指標情報269において、当該安定性指標k1を「安定」とする。より具体的には、安定性指標計算部252は、安定性指標情報269において安定性指標k1に対して、「安定」とのラベルを対応付けてもよい。
その後、本処理はステップS865へ進む。
【0097】
次に、ステップS865では、安定性指標計算部252は、安定性指標kが安定性指標の上限kn以下か否かを判定する。安定性指標kが安定性指標の上限kn以下の場合、本処理はステップS820へ戻り、安定性指標計算部252は、安定性指標kを加算する。一方、定性指標kが安定性指標の上限kn以上の場合、安定性指標計算部252は、安定性指標の対象範囲における全ての安定性指標の解析が終了したと判定し、本処理は終了する。
【0098】
以上説明した安定性指標情報生成処理800によれば、電力系統における「安定した状態」及び「不安定な状態」との境界を規定するPES電力使用率を示す安定性指標情報を生成することができる。このように、安定性指標情報を事前に作成しておき、保管することで、電力系統の安定性を随時に評価することが可能となる。
なお、安定性指標情報生成処理800は、例えば定期的(1日に1回、1週間に1回)に行われてもよく、電力系統の構成や予想される負荷及び発電量が変化する時に行われてもよい。
【0099】
上述したように、本開示の実施形態に係る安定性指標情報生成処理800において、複数の異なるPES電力使用率毎に、電力系統の挙動を予測する安定性シミュレーションが行われる。ある実施形態では、この安定性シミュレーション結果として、特定のPES電力使用率に対応する電圧波形が用いられる。
次に、
図9及び
図10を参照して、本開示の実施形態に係る安定性シミュレーション結果について説明する。
【0100】
図9は、本開示の実施形態に係る安定性シミュレーション結果として、電力系統が安定していることを示す電圧波形900を示す図である。この電圧波形900は、例えば所定のPES電力使用率k1に基づいて生成されてもよい。
図9に示すように、電圧波形900の横軸には時間が示され、縦軸には電圧が示される。
図9に示すように、時間当たりの電圧の推移905は踊り場となっており、大きな変動はない。従って、時間当たりの電圧の推移905における変動は、「0.25MV/s」等の所定の変動閾値未満であるため、安定性指標計算部252は、当該電圧波形900に対応するPES電力使用率k1を「安定」している安定性指標として、安定性指標情報269に格納する。
【0101】
図10は、本開示の実施形態に係る安定性シミュレーション結果として、電力系統が不安定となる可能性があることを示す電圧波形1000を示す図である。この電圧波形1000は、例えば所定のPES電力使用率k2に基づいて生成されてもよい。
図10に示すように、電圧波形1000の横軸には時間が示され、縦軸には電圧が示される。
図10に示すように、時間当たりの電圧の推移1005には、振動(例えばSSO)が発生している。従って、時間当たりの電圧の推移1005における変動は、例えば「0.25MV/s」等の所定の変動閾値以上のため、安定性指標計算部252は、当該電圧波形1000に対応するPES電力使用率k2を「不安定」の安定性指標として、安定性指標情報269に格納する。
【0102】
次に、
図11を参照して、本開示の実施形態に係る安定性評価結果画面について説明する。
【0103】
図11は、本開示の実施形態に係る安定性評価結果画面1100の一例を示す図である。
図11に示す安定性評価結果画面1100は、電力系統に対する安定性評価を行うことで生成した安定性評価結果を示す画面である。この安定性評価結果画面1100は、例えば電力系統を管理する電力会社の端末や、中央給電指令所の端末等に表示されてもよい。
【0104】
図11に示すように、安定性評価結果画面1100は、電力系統
図1105と、表記情報1110と、日時情報1115と、安定性評価結果1120と、SSO波形
図1125とを含んでもよい。
【0105】
電力系統
図1105は、安定性評価の対象となる電力系統の構成を示す図である。
表記情報1110は、電力系統
図1105における発電機、RES、負荷、変圧器、バス、送電線等の設備を示すために用いられる表記を示す。
【0106】
日時情報1115は、安定性評価結果に対応する日付及び時間を示す情報である。
安定性評価結果1120は、本開示の実施形態に係る電力系統安定性評価処理500によって生成され、電力系統の安定性を示す情報である。
図11に示すように、安定性評価結果1120は、電力系統に含まれる複数のエリア(エリア1、エリア2、エリア3)毎に、当該エリアにおけるバスについて計算されるPES電力使用率と、当該エリアの安定性(安定か不安定)とを含んでもよい。
この安定性評価結果1120の情報は、上述した電力系統安定性評価処理500によって生成されてもよい。
【0107】
SSO波形
図1125は、安定性評価結果1120における「不安定」のエリアにおいて発生すると予測されるSSOの波形図を示すグラフである。このSSO波形
図1125は、例えば上述したシミュレーションによって生成されてもよい。安定性評価結果画面1100のユーザは、安定性評価結果1120において、特定のエリアやバスを選択することで、当該エリアやバスで発生すると予測されるSSOの波形図を確認することができる。
【0108】
以上説明したように、本開示の実施形態に係る電力系統管理手段では、電力系統におけるバス毎に、PESに係る電力と当該バスに係る総電力との比(つまり、PES電力の使用率)を、電力系統に関する安定性スコアとして求める。そして、求めた安定性スコアを、電力系統における「安定した状態」及び「不安定な状態」との境界を規定する安定性指標に比較することで、電力系統の現在の安定性を評価することができる。
このように、PES電力使用率に基づいて電力系統の安定性を評価することで、例えばRESの導入拡大に伴うPES密度の増加に起因するグリッドインピーダンスの変動やPES間の相互作用による電力系統の不安定性を定量的に評価することができる。
【0109】
また、この電力系統の安定性評価をリアルタイムで、継続的又は定期的に行うことで、SSO等の振動が発生するよりも前に、電力系統が不安定になる可能性があることを判定することができる。そして、PES電力を抑えることを要求するPES発電量抑制要求を、例えば電力系統においてRESを用いる発電所に送信することで、PES電力の使用率を制御し、SSOの発生を防ぐことができる。これにより、電力系統における送電線や変圧器等の設備に対するSSOの被害を回避することが可能となる。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0111】
上述したように、本開示の実施形態に係る電力系統管理手段は、以下の態様を含む。
【0112】
(態様1)
電力系統と、
電力系統を管理する電力系統管理装置と、
前記電力系統と前記電力系統管理装置との間で情報の通信を行うための通信ネットワークとを含む電力系統管理システムであって、
前記電力系統管理装置は、
プロセッサと、
メモリと、
前記電力系統における電力負荷の予測を示す電力負荷予測情報と、前記電力系統における発電所によって発電される電力の予測を示す発電予測情報とを格納する記憶部とを備え、
前記メモリは、
前記電力負荷予測情報と前記発電予測情報とに基づいて、前記電力系統の安定性を評価するための安定性指標を示す安定性指標情報を計算する安定性指標計算部と、
前記電力系統における実際の電力負荷を示す電力負荷情報と、前記電力系統における発電所によって実際に発電される電力を示す発電情報とを前記通信ネットワークを介して前記電力系統から取得する電力情報取得部と、
前記電力負荷情報と、前記発電情報とに基づいて、前記電力系統に関する安定性スコアを計算し、前記安定性スコアと、前記安定性指標情報とに基づいて、前記電力系統の安定性を示す安定性評価結果を生成する安定性評価部、
として前記プロセッサを機能させるための処理命令を含むことを特徴とする電力系統管理システム。
【0113】
(態様2)
前記電力系統は、
パワーエレクトロニクスシステム(PES)及び非PESが接続されている複数のバスを含み、
前記電力負荷情報は、
前記電力系統における前記バス毎に、前記PESに係るPES電力負荷と、前記PES及び前記非PESに係る総電力負荷とを含み、
前記発電情報は、
前記電力系統における前記バス毎に、前記PESに係るPES発電量と、前記PES及び前記非PESに係る総発電量とを含む、
ことを特徴とする、態様1に記載の電力系統管理システム。
【0114】
(態様3)
前記安定性評価部は、
前記電力負荷情報と、前記発電情報とに基づいて、前記電力系統における各バスの前記PES電力負荷及び前記PES発電量の和を、前記電力系統における各バスの前記総電力負荷及び前記総発電量の和で除することで、前記電力系統におけるPES電力使用率を計算し、前記PES電力使用率を前記安定性スコアとする、
ことを特徴とする、態様2に記載の電力系統管理システム。
【0115】
(態様4)
前記安定性指標計算部は、
前記電力負荷予測情報と、前記発電予測情報とに基づいて、安定性指標の対象範囲を判定し、
前記対象範囲における安定性指標毎に、前記電力系統における所定のバスについて、時間毎に予測される電圧を示すシミュレーション結果を生成し、
前記対象範囲における第1の安定性指標について、前記シミュレーション結果における前記電圧の時間当たりの変動が所定の変動閾値未満の場合、前記第1の安定性指標を安定と指定し、
前記対象範囲における第2の安定性指標について、前記シミュレーション結果における前記電圧の時間当たりの変動が所定の変動閾値以上の場合、前記第2の安定性指標を不安定と指定することで、前記対象範囲における各安定性指標が安定か不安定かを示す前記安定性指標情報を生成する、
ことを特徴とする、態様1乃至3に記載の電力系統管理システム。
【0116】
(態様5)
前記安定性評価部は、
前記安定性スコアを、前記安定性指標情報に比較した結果、前記安定性スコアが、前記第1の安定性指標に対応すると判定した場合、前記電力系統が安定していることを示す安定性評価結果を生成し、
前記安定性スコアを、前記安定性指標情報に比較した結果、前記安定性スコアが、前記第2の安定性指標に対応すると判定した場合、前記電力系統が不安定になる可能性があることを示す安定性評価結果を生成する、
ことを特徴とする、態様4に記載の電力系統管理システム。
【0117】
(態様6)
前記電力系統管理装置は、
前記電力系統が不安定になる可能性があると判定した場合、PES発電量の抑制を要求するPES発電量抑制要求を前記電力系統における発電所に対して送信する、
ことを特徴とする、態様1乃至5に記載の電力系統管理システム。
【符号の説明】
【0118】
150 電力系統管理アプリケーション
200 電力系統管理システム
201、202、203、204、205 バス
206、207、208 RES
209、210、211、212 負荷
213 同期発電機
215、216、217、218、219 送電線
220 電力系統
230 中央給電指令所
235 通信ネットワーク
240 電力系統管理装置
250 メモリ
252 安定性指標計算部
254 電力情報取得部
256 安定性評価部
260 記憶部
262 電力負荷予測情報
264 発電予測情報
266 電力負荷情報
268 発電情報
269 安定性指標情報
270 プロセッサ
275 入出力部