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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132548
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】モータ制御装置及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/10 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02P6/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043360
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 隼人
(72)【発明者】
【氏名】眞壁 巧
(72)【発明者】
【氏名】武田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】本多 真悟
【テーマコード(参考)】
5H560
【Fターム(参考)】
5H560AA10
5H560BB04
5H560BB07
5H560DA02
5H560DA19
5H560DB20
5H560DC01
5H560DC12
5H560EC01
5H560EC02
5H560EC07
5H560RR01
5H560UA06
5H560XA13
(57)【要約】
【課題】低回転時のモータ出力の安定化を達成できるモータ制御装置及び車両を提供する。
【解決手段】モータ制御装置10は、矩形波電圧駆動とベクトル制御駆動とによってモータ20を選択的に駆動可能な駆動部11と、第一位置検出と第二位置検出とによってロータ23の回転位置を選択的に検出可能な検出部12と、駆動部11に対してモータ20の駆動を、モータ20の回転速度が低回転速度閾値よりも低い場合に矩形波電圧駆動に切り替えさせ、回転速度が低回転速度閾値以上の場合にベクトル制御駆動に切り替えさせ、検出部12に対してモータ20に設けられたロータの回転位置の検出を、低回転速度より高い値に設定された高回転速度閾値よりも回転速度が低い場合に第一位置検出に切り替えさせ、回転速度が高回転速度閾値以上の場合に第二位置検出に切り替えさせる切替部14と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに設けられた固定子巻線に矩形波電圧を印加して前記モータを駆動する矩形波電圧駆動と、前記固定子巻線に正弦波電圧を印加して前記モータを駆動するベクトル制御駆動とによって前記モータを選択的に駆動可能な駆動部と、
前記モータに設けられたロータの回転位置を示す複数の位置信号の信号レベルの組合せに基づく第一位置検出と、前記複数の位置信号のうちのいずれか1つの信号レベルの変化に基づく第二位置検出とによって前記回転位置を選択的に検出可能な検出部と、
前記モータの回転速度に基づいて、前記駆動部に対して前記モータの駆動を前記矩形波電圧駆動又は前記ベクトル制御駆動に切り替えさせ、かつ前記検出部に対して前記回転位置の検出を前記第一位置検出又は前記第二位置検出に切り替えさせる切替部と、
を備え、
前記切替部は、
前記モータの回転速度が低回転速度閾値よりも低い場合に前記矩形波電圧駆動に切り替えさせ、前記回転速度が前記低回転速度閾値以上の場合に前記ベクトル制御駆動に切り替えさせ、
前記低回転速度より高い値に設定された高回転速度閾値よりも前記回転速度が低い場合に前記第一位置検出に切り替えさせ、前記回転速度が前記高回転速度閾値以上の場合に前記第二位置検出に切り替えさせる
モータ制御装置。
【請求項2】
前記モータの運転領域は、前記低回転速度閾値及び前記高回転速度閾値に対応付けて、前記矩形波電圧駆動及び前記第一位置検出で運転される第一運転領域と、前記ベクトル制御駆動及び前記第一位置検出で運転される第二運転領域と、前記ベクトル制御駆動及び前記第二位置検出で運転される第三運転領域とに区分されており、
前記切替部は、前記運転領域を前記回転速度に応じて、前記第一運転領域、前記第二運転領域及び前記第三運転領域に切り替える
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記低回転速度閾値及び前記高回転速度閾値のそれぞれは、前記回転速度が上昇する場合と前記回転速度が下降する場合とで異なる値に設定されている
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記低回転速度閾値及び前記高回転速度閾値のそれぞれは、前記回転速度が上昇する場合よりも前記回転速度が下降する場合の方が低い値に設定されている
請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記複数の位置信号のうちのいずれか1つに基づいて前記回転速度を算出する算出部を備える
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
前記モータと、
前記モータに設けられ前記複数の位置信号を出力する複数の位置検出部と、
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。この電動化技術の1つとして、所定の電圧波形を有する駆動電圧を印加して車両に設けられたモータを駆動する技術が知られている。
【0003】
特許文献1は、DCモータの回転速度がしきい値未満の場合に矩形波通電駆動を行い、DCモータの回転速度がしきい値以上の場合に正弦波通電駆動を行う技術が開示する。特許文献1に開示された技術により、モータ起動時における相切り換え時のブレーキ動作を回避し、起動トルクの低減を抑制することができる。
【0004】
特許文献2は、ブラシレスモータに設けられた各ホールセンサで検出されるパルス状位置センサ信号の立ち上りあるいは立ち下りエッジ間の間隔である半周期または1周期の時間間隔に基づいて、ブラシレスモータに設けられた永久磁石回転子の回転数を計算する技術を開示する。特許文献2に開示された技術により、各ホールセンサの取付け位置のばらつきにより発生する回転数の計算誤差を小さくすることができ、滑らかな回転で騒音の低いブラシレスモータが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-242432号公報
【特許文献2】特開2003-264990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電動化技術に関する技術の1つとしてモータの駆動技術では、モータの低回転時はモータに設けられたロータの磁極位置検出の分解能が低下するため、低回転時のモータ出力が安定しない、という課題がある。
【0007】
本願は上記課題解決のため、低回転時のモータ出力の安定化の達成を目的としたものである。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一態様は、モータに設けられた固定子巻線に矩形波電圧を印加して前記モータを駆動する矩形波電圧駆動と、前記固定子巻線に正弦波電圧を印加して前記モータを駆動するベクトル制御駆動とによって前記モータを選択的に駆動可能な駆動部と、前記モータに設けられたロータの回転位置を示す複数の位置信号の信号レベルの組合せに基づく第一位置検出と、前記複数の位置信号のうちのいずれか1つの信号レベルの変化に基づく第二位置検出とによって前記回転位置を選択的に検出可能な検出部と、前記モータの回転速度に基づいて、前記駆動部に対して前記モータの駆動を前記矩形波電圧駆動又は前記ベクトル制御駆動に切り替えさせ、かつ前記検出部に対して前記回転位置の検出を前記第一位置検出又は前記第二位置検出に切り替えさせる切替部と、を備え、前記切替部は、前記モータの回転速度が低回転速度閾値よりも低い場合に前記矩形波電圧駆動に切り替えさせ、前記回転速度が前記低回転速度閾値以上の場合に前記ベクトル制御駆動に切り替えさせ、前記低回転速度より高い値に設定された高回転速度閾値よりも前記回転速度が低い場合に前記第一位置検出に切り替えさせ、前記回転速度が前記高回転速度閾値以上の場合に前記第二位置検出に切り替えさせるモータ制御装置である。
【0009】
また、上記目的を達成するための他の態様は、上記一態様のモータ制御装置と、前記モータと、前記モータに設けられ前記複数の位置信号を出力する複数の位置検出部と、を備える車両である。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、低回転時のモータ出力の安定化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態によるモータ制御装置及び車両の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】本開示の一実施形態によるモータ制御装置に設けられたインバータ部の回路構成の一例を示す図である。
図3】本開示の一実施形態によるモータ制御装置における運転領域を説明する図である。
図4】本開示の一実施形態によるモータ制御装置における矩形波電圧駆動での電圧波形及びホール検出信号の信号波形の一例を示す図である。
図5】本開示の一実施形態によるモータ制御装置における第一位置検出を説明する図である。
図6】本開示の一実施形態によるモータ制御装置におけるベクトル制御駆動での電圧波形及びホール検出信号の信号波形の一例を示す図である。
図7】本開示の一実施形態によるモータ制御装置における第二位置検出を説明する図である。
図8】本開示の一実施形態によるモータ制御装置における駆動部及び検出部の切替動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.モータ制御装置及び車両の構成]
図1は、本開示の一実施形態によるモータ制御装置10及び車両1の概略構成の一例を示すブロック図である。車両1は、モータ制御装置10と、モータ制御装置10によって制御されるモータ20と、モータ20に設けられ複数のホール検出信号(位置信号の一例)Hu,Hv,Hwを出力する複数のホールセンサ(位置検出部の一例)22u,22v,22wと、を備えている。車両1として、自動車や原動機付自転車が挙げられる。
【0013】
モータ20は、例えばブラシレスモータで構成されている。モータ20は、永久磁石(不図示)が設けられたロータ23と、U相巻線21u、V相巻線21v及びW相巻線21w(いずれも固定子巻線の一例)が設けられたステータ(不図示)とを備えている。U相巻線21u、V相巻線21v及びW相巻線21wは、120°間隔で配置されている。ホールセンサ22u,22v,22wは、U相巻線21u、V相巻線21v及びW相巻線21wとは60°ずれた状態で120°間隔で配置されている。本実施形態では、ホールセンサ22uはU相巻線21uとW相巻線21wとの間に配置され、ホールセンサ22vはU相巻線21uとV相巻線21vとの間に配置され、ホールセンサ22wはV相巻線21vとW相巻線21wとの間に配置されている。
【0014】
次に、モータ制御装置10の構成について図1及び図2を用いて説明する。
図1に示すように、モータ制御装置10は、モータ20に設けられたU相巻線21u、V相巻線21v及びW相巻線21wに接続された駆動部11を備えている。モータ制御装置10は、モータ20に設けられたホールセンサ22u,22v,22wに接続された検出部12と、ホールセンサ22uに接続された回転速度算出部13とを備えている。モータ制御装置10は、駆動部11、検出部12及び回転速度算出部13に接続された切替部14と、切替部14に接続された指令部15とを備えている。
【0015】
駆動部11は、モータ20に設けられたU相巻線21u、V相巻線21v及びW相巻線21wに矩形波電圧を印加してモータ20を駆動する矩形波電圧駆動と、U相巻線21u、V相巻線21v及びW相巻線21wに正弦波電圧を印加してモータ20を駆動するベクトル制御駆動とによってモータ20を選択的に駆動可能に構成されている。駆動部11は、矩形波電圧駆動部111、ベクトル制御駆動部112及びインバータ部113を有している。矩形波電圧駆動部111は、切替部14から入力される駆動切替信号Scd1によって、出力がインバータ部113に電気的に接続される状態とインバータ部113から電気的に切断される状態とに切り替えられる。ベクトル制御駆動部112は、切替部14から入力される駆動切替信号Scd2によって、出力がインバータ部113に電気的に接続される状態とインバータ部113から電気的に切断される状態とに切り替えられる。矩形波電圧駆動部111及びベクトル制御駆動部112は、出力を例えばハイインピーダンス状態とすることにより、インバータ部113の入力から電気的に切断される。
【0016】
駆動部11は、切替部14によって矩形波電圧駆動部111での動作に切り替えられた場合には、矩形波電圧駆動部111及びインバータ部113によって矩形波電圧駆動でモータ20を駆動する。一方、駆動部11は、切替部14によってベクトル制御駆動部112での動作に切り替えられた場合には、ベクトル制御駆動部112及びインバータ部113によってベクトル制御駆動でモータ20を駆動する。
【0017】
矩形波電圧駆動部111は、指令部15から入力されるq軸電流指令値Iq、インバータ部113から入力されるU相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iw並びに検出部12から入力されるモータ20の回転角信号Sθを用いて、インバータ部113を駆動するためのパルス信号Pau,Pav,Paw,Pax,Pay,Pazを生成する。以下、「パルス信号Pau,Pav,Paw,Pax,Pay,Paz」を「パルス信号Pau~Paz」と略記する場合がある。
【0018】
ベクトル制御駆動部112は、指令部15から入力されるd軸電流指令値Id及びq軸電流指令値Iq、インバータ部113から入力されるU相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iw並びに検出部12から入力される回転角信号Sθを用いて、インバータ部113を駆動するためのパルス信号Pbu,Pbv,Pbw,Pbx,Pby,Pbzを生成する。以下、「パルス信号Pbu,Pbv,Pbw,Pbx,Pby,Pbz」を「パルス信号Pbu~Pbz」と略記する場合がある。
【0019】
駆動部11は、切替部14によってモータ20の駆動を矩形波電圧駆動に切り替えられた場合には、パルス信号Pau,Pav,Paw,Pax,Pay,Pazをパルス信号Pu,Pv,Pw,Px,Py,Pzとしてインバータ部113に入力させる。また、駆動部11は、切替部14によってモータ20の駆動をベクトル制御駆動に切り替えられた場合には、パルス信号Pbu,Pbv,Pbw,Pbx,Pby,Pbzをパルス信号Pu,Pv,Pw,Px,Py,Pzとしてインバータ部113に入力させる。以下、「パルス信号Pu,Pv,Pw,Px,Py,Pz」を「パルス信号Pu~Pz」と略記する場合がある。
【0020】
図2は、インバータ部113の回路構成の一例を示している。
図2に示すように、インバータ部113は、正極側の直流電圧が印加される正極側ラインLpと負極側の直流電圧が印加される負極側ラインLnとの間で、6個の半導体素子Qu,Qv,Qw,Qx,Qy,Qzをフルブリッジ接続して構成されている。以下、「半導体素子Qu,Qv,Qw,Qx,Qy,Qz」を「半導体素子Qu~Qz」と略記する場合がある。半導体素子Qu,Qxは、正極側ラインLp及び負極側ラインLnの間で直列に接続され、U相アーム113uを構成する。半導体素子Qv,Qyは、正極側ラインLp及び負極側ラインLnの間で直列に接続され、V相アーム113vを構成する。半導体素子Qw,Qzは、正極側ラインLp及び負極側ラインLnの間で直列に接続され、W相アーム113wを構成する。半導体素子Qu~Qzは、パワー半導体素子と、当該パワー半導体素子に逆並列接続された還流ダイオードとを有している。
【0021】
半導体素子Quに設けられたパワー半導体素子のゲートには、パルス信号Puが入力され、半導体素子Qxに設けられたパワー半導体素子のゲートには、パルス信号Pxが入力される。半導体素子Qvに設けられたパワー半導体素子のゲートには、パルス信号Pvが入力され、半導体素子Qyに設けられたパワー半導体素子のゲートには、パルス信号Pyが入力される。半導体素子Qwに設けられたパワー半導体素子のゲートには、パルス信号Pwが入力され、半導体素子Qzに設けられたパワー半導体素子のゲートには、パルス信号Pzが入力される。半導体素子Qu~Qzは、パルス信号Pu~Pzによって所定のタイミング且つ所定の順序でオン/オフ制御される。これにより、U相アーム113uは、モータ20(図1参照)に設けられたU相巻線21uに半導体素子Qu,Qxの接続部からU相交流電圧Vuを出力する。V相アーム113vは、モータ20に設けられたV相巻線21vに半導体素子Qv,Qyの接続部からV相交流電圧Vvを出力する。W相アーム113wは、モータ20に設けられたW相巻線21wに半導体素子Qw,Qzの接続部からW相交流電圧Vwを出力する。
【0022】
インバータ部113が動作することによって、インバータ部113及びモータ20の間に流れる交流のU相電流IuがU相アーム113uから駆動部11に出力され、インバータ部113及びモータ20の間に流れる交流のV相電流IvがV相アーム113vから駆動部11に出力され、インバータ部113及びモータ20の間に流れる交流のW相電流IwがW相アーム113wから駆動部11に出力される。
【0023】
検出部12は、モータ20に設けられたロータ23の回転位置を示す複数のホール検出信号Hu,Hv,Hwの信号レベルの組合せに基づく第一位置検出と、複数のホール検出信号Hu,Hv,Hwのうちのいずれか1つの信号レベルの変化に基づく第二位置検出とによって当該回転位置を選択的に検出可能に構成されている。図1に示すように、検出部12は、第一位置検出を実行する第一位置検出部121と、第二位置検出を実行する第二位置検出部122とを有している。
【0024】
第一位置検出部121には、モータ20に設けられたホールセンサ22uから出力されるホール検出信号Huと、モータ20に設けられたホールセンサ22vから出力されるホール検出信号Hvと、モータ20に設けられたホールセンサ22wから出力されるホール検出信号Hwとが入力される。詳細は後述するが、第一位置検出部121は、モータ20から入力されるホール検出信号Hu,Hv,Hwの電圧レベルの組合せに基づいて、モータ20での回転磁界の角度(電気角)を決定する。第二位置検出部122には、例えばホール検出信号Huが入力される。詳細は後述するが、第二位置検出部122は、ホール検出信号Huの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジ(すなわち、信号レベルが変化するタイミング)に基づいて電気角を決定する。
【0025】
第一位置検出部121及び第二位置検出部122は、決定した電気角に基づいて、モータ20に設けられたロータ23の回転位置(すなわち回転角)を検出する。ロータ23に設けられた永久磁石の磁極数をpとすると、第一位置検出部121及び第二位置検出部122は、ロータ23の回転角を以下の式(1)によって検出する。
回転角=電気角×2/p ・・・(1)
【0026】
第一位置検出部121は、式(1)に基づいて、ロータ23の回転角θ1を検出し、回転角θ1の情報を含む回転角信号Sθ1を駆動部11に出力する。第二位置検出部122は、式(1)に基づいて、ロータ23の回転角θ2を検出し、回転角θ2の情報を含む回転角信号Sθ2を駆動部11に出力する。本実施形態では、第二位置検出部122は、ホール検出信号Huを用いて回転角θ2を検出するようになっているが、ホール検出信号Hv又はホール検出信号Hwを用いて回転角θ2を検出するようになっていてもよい。
【0027】
第一位置検出部121は、切替部14から入力される検出切替信号Scp1によって、出力が駆動部11に電気的に接続された状態と駆動部11から電気的に切断された状態とに切り替えられる。第二位置検出部122は、切替部14から入力される検出切替信号Scp2によって、出力が駆動部11に電気的に接続された状態と駆動部11から電気的に切断された状態とに切り替えられる。第一位置検出部121及び第二位置検出部122は、例えば出力をハイインピーダンス状態とすることにより、駆動部11の入力から電気的に切断されるようになっている。
【0028】
切替部14は、モータ20の回転速度に基づいて、駆動部11に対してモータ20の駆動を矩形波電圧駆動又はベクトル制御駆動に切り替えさせ、かつ検出部12に対してロータ23の回転位置の検出を第一位置検出又は第二位置検出に切り替えさせるように構成されている。
【0029】
切替部14は、モータ20を矩形波電圧駆動で駆動する場合には、矩形波電圧駆動部111の出力をインバータ部113に電気的に接続させ、かつベクトル制御駆動部112の出力をインバータ部113から電気的に切断させる。一方、切替部14は、モータ20をベクトル制御駆動で駆動する場合には、矩形波電圧駆動部111の出力をインバータ部113から電気的に切断させ、かつベクトル制御駆動部112の出力をインバータ部113に電気的に接続させる。このため、駆動部11は、矩形波電圧駆動部111の出力とベクトル制御駆動部112の出力とが接続されてインバータ部113の入力に接続される構成を有していても、パルス信号Pau~Pawとパルス信号Pbu~Pbwとを混信せずにいずれか一方のパルス信号のみをパルス信号Pu~Pwとしてインバータ部113に入力することができる。
【0030】
切替部14は、第一位置検出部121の出力を駆動部11に電気的に接続させる場合には第二位置検出部122の出力を駆動部11から電気的に切断させる。一方、切替部14は、第二位置検出部122の出力を駆動部11に電気的に接続させる場合には第一位置検出部121の出力を駆動部11から電気的に切断させる。このため、検出部12は、第一位置検出部121の出力と第二位置検出部122の出力とが接続されて駆動部11の入力に接続される構成を有していても、回転角信号Sθ1と回転角信号Sθ2とを混信せずにいずれか一方の回転角信号のみを回転角信号Sθとして駆動部11に入力することができる。
【0031】
回転速度算出部(算出部の一例)13は、複数のホール検出信号Hu,Hv,Hwのうちのいずれか1つに基づいてモータ20の回転速度ωを算出する。本実施形態では、回転速度算出部13は、例えばホール検出信号Huを用いてモータ20の回転速度ω(より具体的にはロータ23の回転角速度)を算出する。しかしながら、回転速度算出部13は、ホール検出信号Hv又はホール検出信号Hwを用いてモータ20の回転速度ωを算出してもよい。ロータ23に設けられた永久磁石の磁極数をpとし、ホール検出信号Huの周波数をfとすると、回転速度算出部13は、モータ20の回転速度ωを以下の式(2)によって算出する。
ω=2×π×f/(p/2)
=2×π×2×f/p ・・・(2)
【0032】
回転速度算出部13は、算出した回転速度ωの情報を含む回転速度信号Sωを切替部14に出力する。切替部14には、回転速度算出部13から入力される回転速度信号Sωに含まれる回転速度ωと比較する低回転速度閾値及び高回転速度閾値(詳細は後述する)が設定されている。切替部14は、駆動部11に対してモータ20の駆動を、モータ20の回転速度ωが低回転速度閾値よりも低い場合に矩形波電圧駆動に切り替えさせ、回転速度ωが低回転速度閾値以上の場合にベクトル制御駆動に切り替えさせる。さらに、切替部14は、検出部12に対してロータ23の回転位置の検出を、低回転速度より高い値に設定された高回転速度閾値よりも回転速度ωが低い場合に第一位置検出に切り替えさせ、回転速度ωが高回転速度閾値以上の場合に第二位置検出に切り替えさせる。詳細は後述するが、モータ制御装置10は、モータ20の回転速度ωに応じて、モータ20の駆動方法及びローラ23の回転位置の検出方法を切り替えることにより、モータ20が発生する音や振動が増大することを防止して、モータ20の出力を安定化することができる。
【0033】
指令部15は、外部から入力される例えばアクセル開度などに基づいて、d軸電流指令値Id及びq軸電流指令値Iqを生成する。指令部15は、生成したq軸電流指令値Iqを矩形波電圧駆動部111に出力する。指令部15は、生成したd軸電流指令値Id及びq軸電流指令値Iqをベクトル制御駆動部112に出力する。
【0034】
[2.モータ制御装置におけるモータの運転領域]
本実施形態によるモータ制御装置10におけるモータの運転領域について図1及び図2を参照しつつ図3から図7を用いて説明する。図3は、モータ制御装置10におけるモータ20の運転領域を説明する図である。図3では、左から右に向かってモータの回転速度が上昇することが表されている。
【0035】
図3に示すように、モータ制御装置10におけるモータの運転領域は、低回転速度閾値Lth1,Lth2及び高回転速度閾値Hth1,Hth2に対応付けて、矩形波電圧駆動及び第一位置検出で運転される第一運転領域と、ベクトル制御駆動及び第一位置検出で運転される第二運転領域と、ベクトル制御駆動及び第二位置検出で運転される第三運転領域とに区分されている。切替部14(図1参照)は、モータ20の運転領域を回転速度ωに応じて、第一運転領域、第二運転領域及び第三運転領域に切り替える。
【0036】
低回転速度閾値Lth1,Lth2及び高回転速度閾値Hth1,Hth2のそれぞれは、回転速度ωが上昇する場合と回転速度ωが下降する場合とで異なる値に設定されている。本実施形態では、低回転速度閾値Lth1,Lth2及び高回転速度閾値Hth1,Hth2のそれぞれは、回転速度ωが上昇する場合よりも回転速度ωが下降する場合の方が低い値に設定されている。
【0037】
具体的には、モータ20の回転速度が上昇する際に回転速度ωと比較される低回転速度閾値Lth1は、モータ20の回転速度が下降する際に回転速度ωと比較される低回転速度閾値Lth2よりも大きい値に設定されている。モータ20の回転速度が上昇する際に回転速度ωと比較される高回転速度閾値Hth1は、モータ20の回転速度が下降する際に回転速度ωと比較される高回転速度閾値Hth2よりも大きい値に設定されている。低回転速度閾値Lth1,Lth2及び高回転速度閾値Hth1,Hth2のそれぞれは、極低回転領域の回転速度に設定される。例えば、低回転速度閾値Lth1,Lth2は、1から10[rad/min]の間の値に設定され、高回転速度閾値Hth1,Hth2は、100から1000[rad/min]の間の値に設定される。
【0038】
ところで、低回転速度閾値Lth1及び低回転速度閾値Lth2を同じ値に設定した場合に、モータ20の回転速度ωが低回転速度閾値Lth1,Lth2を跨ぎながら短時間で増減すると、モータ20のU相巻線21uに印加されるU相交流電圧Vu、V相巻線21vに印加されるV相交流電圧Vv及びW相巻線21wに印加されるW相交流電圧Vwの電圧波形が正弦波と矩形波とで繰り返し切り替えられる。これにより、モータ20に印加されるU相交流電圧Vu、V相交流電圧Vv及びW相交流電圧Vwが乱れ、モータ20のU相巻線21u、V相巻線21v及びW相巻線21wに流れる相電流も乱れる。その結果、モータ20が発生する音や振動が増加してしまう。
【0039】
また、高回転速度閾値Hth1及び高回転速度閾値Hth2を同じ値に設定した場合に、モータ20の回転速度ωが高回転速度閾値Hth1,Hth2を跨ぎながら短時間で増減すると、低回転速度閾値Lth1,Lth2と同様の理由により、モータ20が発生する音や振動が増加してしまう。
【0040】
モータ制御装置10では、モータ20の回転速度ωが短時間で増減しても、回転速度ωが低回転速度閾値Lth1,Lth2を跨がないように、低回転速度閾値Lth1,Lth2が異なる値に設定されている。同様に、モータ制御装置10では、モータ20の回転速度ωが短時間で増減しても、回転速度ωが高回転速度閾値Hth1,Hth2を跨がないように、高回転速度閾値Hth1,Hth2が異なる値に設定されている。これにより、モータ制御装置10は、モータ20が発生する音や振動の増加を防止することができる。
【0041】
矩形波電圧駆動は、ホール検出信号の変化に基づいて、通電パターンを切り替える制御であるため、極低回転でのパルス間時間に基づいた回転数算出ができない領域でも、通電制御が可能であるという利点を有している。一方、矩形波電圧駆動は、高効率化を図ることが困難であるという欠点を有している。
【0042】
ベクトル制御駆動は、モータのトルクの脈動が理論上なくなり、音、振動、効率、トルク精度及び過渡特性の面で矩形波電圧駆動よりも優れているという利点を有している。一方、ベクトル制御駆動は、パルス幅変調(PWM)制御によってひずみの少ない正弦波のU相電流、V相電流及びW相電流を生成するため、高い演算能力をもつコントローラが必要になるという欠点を有している。また、ベクトル制御駆動は、モータに設けられたロータの磁極位置をより正確に検出する必要があるという欠点を有している。
【0043】
6ステップ角度算出を用いる第一位置検出は、モータに設けられたロータの位置を細かく観測できるため、モータの低回転時でも精度よくロータ位置の検出を行うことができるという利点を有している。一方、第一位置検出は、3つのホールセンサの取付位置の誤差によって、ホール検出信号のエッジの間隔がばらついて、ロータの検出位置に誤差が生じるという欠点を有している。当該誤差は、特にモータの高回転時において大きくなる。
【0044】
1つのホール検出信号の信号レベルの変化を用いる第二位置検出は、モータの高回転時に観測周波数を抑えることができるため、モータの位置検出の処理負荷を低減できるという利点を有している。一方、第二位置検出は、ロータ位置を算出するための分解能が低いため、モータの低回転時での位置検出の精度が特に低下するという欠点を有している。
【0045】
このように、矩形波電圧駆動、ベクトル制御駆動、第一位置検出及び第二位置検出のそれぞれは、利点及び欠点を有している。そこで、モータ制御装置10は、モータ20の回転速度に応じてモータ20の運転領域を区分して、矩形波電圧駆動、ベクトル制御駆動、第一位置検出及び第二位置検出のそれぞれの利点を利用してモータ20を制御するようになっている。
【0046】
図3に示すように、第一運転領域では、矩形波電圧駆動によってモータ20が駆動され、第一位置検出によってロータ23の回転位置(すなわち回転角)が検出される。第二運転領域では、ベクトル制御駆動によってモータ20が駆動され、第一位置検出によってロータ23の回転位置が検出される。第三運転領域では、ベクトル制御駆動によってモータ20が駆動され、第二位置検出によってロータ23の回転位置が検出される。
【0047】
これにより、モータ制御装置10は、モータ20の回転速度が低回転時の第一運転領域では、低回転でも高出力が得られる矩形波電圧駆動によってモータ20を駆動するとともに、モータの低回転時でもロータ23の回転位置を高精度に検出できる第一位置検出によってロータ23の回転位置(回転角)を検出できる。また、モータ制御装置10は、第一運転領域よりもモータ20の回転速度が速い第二運転領域では、音、振動、効率、トルク精度及び過渡特性の面で矩形波電圧駆動よりも優れているベクトル制御駆動によってモータ20を駆動するとともに、第一位置検出によってロータ23の回転位置(回転角)を検出できる。さらに、モータ制御装置10は、モータ20の回転速度が高回転時の第三運転領域では、ベクトル制御駆動によってモータ20を駆動するとともに、第一位置検出部よりも処理負荷の低い第二位置検出によってロータ23の回転位置(回転角)を検出できる。
【0048】
次に、第一運転領域において実行される矩形波電圧駆動及び第一位置検出について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、切替部14によってモータ20の駆動を矩形波電圧駆動に切り替えられた駆動部11(図1参照)が、モータ20に出力するU相交流電圧Vu、V相交流電圧Vv及びW相交流電圧Vwの電圧波形の一例と、モータ20に設けられたホールセンサ22u,22v,22w(図1参照)から出力されるホール検出信号Hu,Hv,Hwの電圧波形の一例とを模式的に示す図である。図5は、図4に示すホール検出信号Hu,Hv,Hwの電圧波形と、6ステップ角度算出を用いる第一位置検出でのホール検出信号Hu,Hv,Hwの組合せとモータ20の回転角θ1との関係の一例とを模式的に示す図である。
【0049】
矩形波電圧駆動を実行する矩形波電圧駆動部111(図1参照)は、パルス信号Pu~Pz(図1参照)としてインバータ部113に入力されるパルス信号Pau~Paz(図1参照)を生成する。パルス信号Pau~Pazは、モータ20の回転角θに対応するU相巻線21u、V相巻線21v及びW相巻線21wの励磁パターンに従うU相交流電圧Vu、V相交流電圧Vv及びW相交流電圧Vwをインバータ部113(図2参照)からモータ20に出力させるための信号である。矩形波電圧駆動では、矩形波電圧駆動部111から入力されるパルス信号Pau~Pazによって、インバータ部113に設けられた6個の半導体素子Qu~Qz(図2参照)のうち、一相はハイサイド側をオン状態、他の一相はローサイド側をオン状態、残りの相は両サイドともオフ状態という制御パターンでスイッチングが制御される。これにより、図4に示すように、U相交流電圧Vu、V相交流電圧Vv及びW相交流電圧Vwは、電気角が360°回転する期間(すなわち、電気角の1周期)において、120°の期間では正のパルス信号となり、次の60°の期間では0V一定の信号となり、次の120°の期間では負のパルス信号となり、最後の60°の期間では0V一定の信号となる。U相交流電圧Vuは、V相交流電圧Vv及びW相交流電圧Vwは、電気角が互いに120°ずれた信号となる。
【0050】
矩形波電圧駆動部111によって生成されるパルス信号Pau~Pazは、インバータ部113から入力されるU相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iwを、指令部15から入力されるq軸電流指令値Iqに追従させるための信号でもある。このようなパルス信号Pau~Pazによってインバータ部113が繰り返し動作することにより、矩形パルス状のU相交流電圧Vu、V相交流電圧Vv及びW相交流電圧Vwのデューティ比が変化する。その結果、モータ20の回転速度は所望の値に近づいていく。
【0051】
モータ20に設けられたホールセンサ22u,22v,22wは、U相巻線21u、V相巻線21v及びW相巻線21wとは60°ずれた状態で120°間隔で配置されている(図1参照)。このため、図4及び図5に示すように、ホールセンサ22uから出力されるホール検出信号Hu、ホールセンサ22vから出力されるホール検出信号Hv及びホールセンサ22wから出力されるホール検出信号Hwは、位相が互いに120°ずれた信号波形を有する。また、ホール検出信号Hu,Hv,Hwの1周期は、モータ20の電気角の1周期と一致する。
【0052】
図5に示すように、第一位置検出部121(図1参照)は、ホール検出信号Hu,Hv,Hwの電圧レベルの組合せに応じて電気角を例えば階段状に決定する。第一位置検出部121は例えば、ホール検出信号Huの電圧レベルがハイレベル、ホール検出信号Hvの電圧レベルがローレベル、かつホール検出信号Hwの電圧レベルがハイレベルの場合、電気角を0°(360°)と決定する。また、第一位置検出部121は例えば、ホール検出信号Huの電圧レベルがハイレベル、ホール検出信号Hvの電圧レベルがローレベル、かつホール検出信号Hwの電圧レベルがローレベルの場合、電気角を60°と決定する。
【0053】
第一位置検出部121は、このようにして決定した電気角に基づいてロータ23の回転角θ1を0°から360°(0°)まで階段状に検出する。第一位置検出部121は、上述の式(1)を用いて、モータ20における回転角θ1を検出する。
【0054】
第一運転領域では、切替部14は、モータ20の駆動を矩形波電圧駆動に切り替え、ロータ23の位置検出を第一位置検出に切り替える。このため、第一位置検出部121の出力が駆動部11の入力に電気的に接続されるため、第一位置検出部121で検出された回転角θ1の情報を含む回転角信号Sθ1が回転角信号Sθとして駆動部11に入力される。これにより、矩形波電圧駆動部111は、第一位置検出部121で検出されたモータ20の回転角θ1に対応する励磁パターンにU相交流電圧Vu、V相交流電圧Vv及びW相交流電圧Vwを従わせるためのパルス信号Pau~Pazを生成する。
【0055】
次に、第二運転領域において実行されるベクトル制御駆動及び第一位置検出について、図6を参照して説明する。図6は、切替部14によってモータ20の駆動をベクトル制御駆動に切り替えられた駆動部11が、モータ20に出力するU相交流電圧Vu、V相交流電圧Vv及びW相交流電圧Vwの電圧波形の一例と、モータ20に設けられたホールセンサ22u,22v,22wから出力されるホール検出信号Hu,Hv,Hwの電圧波形の一例とを模式的に示す図である。
【0056】
ベクトル制御駆動を実行するベクトル制御駆動部112(図1参照)は、インバータ部113から入力されるU相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iwが指令部15から入力されるd軸電流指令値Id及びq軸電流指令値Iqに追従させるためのパルス信号Pbu~Pbzを生成してインバータ部113に出力する。ベクトル制御駆動では、インバータ部113に設けられた6個の半導体素子Qu~Qzは、パルス信号Pu~Pzとしてベクトル制御駆動部112から入力されるパルス信号Pbu~Pbzによって矩形波電圧駆動と同様にスイッチングが制御される。これにより、図6に示すように、U相交流電圧Vu、V相交流電圧Vv及びW相交流電圧Vwは、電気角が360°回転する期間と1周期が一致する正弦波信号となる。U相交流電圧Vuは、V相交流電圧Vv及びW相交流電圧Vwは、電気角が互いに120°ずれた信号となる。
【0057】
インバータ部113から入力されるU相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iwが切替部14から入力されるd軸電流指令値Id及びq軸電流指令値Iqに追従するように、駆動部11がベクトル制御駆動を繰り返し実行することにより、モータ20の回転速度は所望の値に近づいていく。
【0058】
図6に示すように、ホールセンサ22uから出力されるホール検出信号Huは、U相交流電圧Vuの周期と一致する周期を有し、U相交流電圧Vuが正の場合に正の電圧となり、U相交流電圧Vuが負の場合に0Vとなる矩形波の信号となる。ホールセンサ22vから出力されるホール検出信号Hvは、V相交流電圧Vvの周期と一致する周期を有し、V相交流電圧Vvが正の場合に正の電圧となり、V相交流電圧Vvが負の場合に0Vとなる矩形波の信号となる。ホールセンサ22wから出力されるホール検出信号Hwは、W相交流電圧Vwの周期と一致する周期を有し、W相交流電圧Vwが正の場合に正の電圧となり、W相交流電圧Vwが負の場合に0Vとなる矩形波の信号となる。ホール検出信号Hu,Hv,Hwは、位相が互いに120°ずれた信号波形を有し、ホール検出信号Hu,Hv,Hwの1周期は、モータ20の電気角の1周期と一致する。
【0059】
図4及び図6に示すように、ベクトル制御駆動におけるホール検出信号Hu,Hv,Hwは、矩形波電圧駆動におけるホール検出信号Hu,Hv,Hwと同じ信号波形を有している。このため、第一位置検出部121は、モータ20の駆動がベクトル制御駆動である第二運転領域においても、モータ20の駆動が矩形波電圧駆動である第一運転領域と同様の方法によって、ロータ23の回転位置(すなわち回転角)を検出することができる。
【0060】
第二運転領域では、切替部14は、モータ20の駆動をベクトル制御駆動に切り替え、ロータ23の位置検出を第一位置検出に切り替える。このため、第一位置検出部121の出力が駆動部11の入力に電気的に接続されるため、第一位置検出部121で検出された回転角θ1の情報を含む回転角信号Sθ1が回転角信号Sθとして駆動部11に入力される。これにより、ベクトル制御駆動部112は、ベクトル制御駆動を実行するためのモータ20の回転角として、第一位置検出部121で検出されたモータ20の回転角θ1を用いる。
【0061】
次に、第三運転領域において実行されるベクトル制御駆動及び第二位置検出について、図7を用いて説明する。図7は、第三運転領域におけるモータ20に設けられたホールセンサ22u,22v,22wから出力されるホール検出信号Hu,Hv,Hwの電圧波形の一例と、第二位置検出でのホール検出信号Huとモータ20の回転角θ2との関係の一例を模式的に示す図である。
【0062】
駆動部11は、第三運転領域において、第二運転領域と同様の動作によってベクトル制御駆動を実行する。このため、第三運転領域におけるベクトル制御駆動の説明は省略する。
【0063】
図7に示すように、第三運転領域においてホールセンサ22uから出力されるホール検出信号Huは、第二運転領域においてホールセンサ22uから出力されるホール検出信号Huと同じ信号波形(図6参照)を有している。第二位置検出部122(図1参照)は、ホール検出信号Huの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジ(すなわち、信号レベルが変化するタイミング)に基づいて電気角を例えば線形状に決定する。第二位置検出部122は例えば、ホール検出信号Huの立ち上がりエッジを電気角0°(360°)と決定し、ホール検出信号Huの立ち下がりエッジを電気角180°と決定する。さらに、第二位置検出部122は例えば、ホール検出信号Huの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの間で電気角が線形状に単調増加すると仮定して、0°と180°の間及び180°と0°(360°)との間の電気角を決定する。
【0064】
第二位置検出部122は、このようにして決定した電気角に基づいて、ロータ23の回転角を0°から360°(0°)まで線形状に検出する。第二位置検出部122は、上述の式(1)を用いて、ロータ23の回転角θ2を検出する。本実施形態では、第二位置検出部122は、ホール検出信号Huを用いて回転角θ2を検出するようになっているが、ホール検出信号Hv又はホール検出信号Hwを用いて回転角θ2を検出するようになっていてもよい。
【0065】
第三運転領域では、切替部14は、モータ20の駆動をベクトル制御駆動に切り替え、ロータ23の位置検出を第二位置検出に切り替える。このため、第二位置検出部122の出力が駆動部11の入力に電気的に接続されるため、第二位置検出部122で検出された回転角θ2の情報を含む回転角信号Sθ2が回転角信号Sθとして駆動部11に入力される。これにより、ベクトル制御駆動部112は、ベクトル制御駆動を実行するためのモータ20の回転角として、第二位置検出部122で検出されたモータ20の回転角θ2を用いる。
【0066】
[3.モータ制御装置の動作]
本実施形態によるモータ制御装置10の動作について図1及び図3を参照しつつ図8を用いて説明する。図8は、モータ制御装置10の動作の流れの一例を示すフローチャートである。図8に示す処理は、例えばモータ制御装置10に電源が投入される(すなわち電源がオン状態にされる)ことによって開始される。
【0067】
モータ制御装置10(図1参照)がモータ20(図1参照)の制御を開始すると、ステップS11において、切替部14(図1参照)は、モータ20の回転速度が上昇しているか否かを判定する。切替部14は、回転速度算出部13(図1参照)から入力される回転速度信号Sωを時間微分し、時間微分した結果が正の場合は、モータ20の回転速度が上昇していると判定し(ステップS11:YES)、ステップS12の処理に移行する。一方、切替部14は、当該結果が負又はゼロの場合は、モータ20の回転速度が上昇していないと判定し(ステップS11:NO)、ステップS23の処理に移行する。
【0068】
ステップS12において、切替部14は、回転速度算出部13から入力される回転速度信号Sωに含まれる回転速度ωが低回転速度閾値Lth1よりも低いか否かを判定する。切替部14は、回転速度ωが低回転速度閾値Lth1よりも低いと判定した場合(ステップS12:YES)、ステップS13の処理に移行する。一方、切替部14は、回転速度ωが低回転速度閾値Lth1以上であると判定した場合(ステップS12:NO)、ステップS16の処理に移行する。
【0069】
ステップS13において、切替部14は、モータ20の運転領域を第一運転領域(図3参照)に切り替え、ステップS13の次のステップS14において、モータ20の駆動を矩形波電圧駆動に切り替え、ステップS14の次のステップにおいて、ロータ23の位置検出を第一位置検出に切り替える。モータ制御装置10は、切替部14におけるステップS15の処理が終了したらステップS36の処理に移行する。
【0070】
ステップS16において、切替部14は、回転速度算出部13から入力される回転速度信号Sωに含まれる回転速度ωが低回転速度閾値Lth1以上かつ高回転速度閾値Hth1よりも低い範囲に含まれるか否かを判定する。切替部14は、回転速度ωが当該範囲に含まれると判定した場合(ステップS16:YES)、ステップS17の処理に移行する。一方、切替部14は、回転速度ωが当該範囲に含まれていないと判定した場合(ステップS16:NO)、ステップS20の処理に移行する。
【0071】
ステップS17において、切替部14は、モータ20の運転領域を第二運転領域(図3参照)に切り替え、ステップS17の次のステップS18において、モータ20の駆動をベクトル制御駆動に切り替え、ステップS18の次のステップS19において、ロータ23の位置検出を第一位置検出に切り替える。モータ制御装置10は、切替部14におけるステップS19の処理が終了したらステップS36の処理に移行する。なお、切替部14は、ロータ23の位置検出がすでに第一位置検出に切り替えられている場合には、ステップS19において特別な処理を実行せずに、ステップS36の処理に移行してもよい。
【0072】
ステップS20において、切替部14は、モータ20の運転領域を第三運転領域(図3参照)に切り替え、ステップS20の次のステップS21において、モータ20の駆動をベクトル制御駆動に切り替え、ステップS21の次のステップS22において、ロータ23の位置検出を第二位置検出に切り替える。なお、切替部14は、モータ20の駆動がすでにベクトル制御駆動に切り替えられている場合には、ステップS21において特別な処理を実行せずに、ステップS22の処理に移行してもよい。モータ制御装置10は、切替部14におけるステップS22の処理が終了したらステップS36の処理に移行する。
【0073】
ステップS23において、切替部14は、モータ20の回転速度が下降しているか否かを判定する。切替部14は、ステップS11において取得した回転速度信号Sωの時間微分の結果が負の場合は、モータ20の回転速度が下降していると判定し(ステップS23:YES)、ステップS24の処理に移行する。一方、切替部14は、当該結果がゼロの場合は、モータ20の回転速度が下降していないと判定し(ステップS23:NO)、ステップS35の処理に移行する。
【0074】
ステップS24において、切替部14は、回転速度算出部13から入力される回転速度信号Sωに含まれる回転速度ωが高回転速度閾値Hth2以上であるか否かを判定する。切替部14は、回転速度ωが高回転速度閾値Hth2以上であると判定した場合(ステップS24:YES)、ステップS25の処理に移行する。一方、切替部14は、回転速度ωが高回転速度閾値Hth2以上でないと判定した場合(ステップS24:NO)、ステップS28の処理に移行する。
【0075】
ステップS25において、切替部14は、モータ20の運転領域を第三運転領域(図3参照)に切り替え、ステップS25の次のステップS26において、モータ20の駆動をベクトル制御駆動に切り替え、ステップS26の次のステップS27において、ロータ23の位置検出を第二位置検出に切り替える。モータ制御装置10は、切替部14におけるステップS27の処理が終了したらステップS36の処理に移行する。
【0076】
ステップS28において、切替部14は、回転速度算出部13から入力される回転速度信号Sωに含まれる回転速度ωが低回転速度閾値Lth2以上かつ高回転速度閾値Hth2よりも低い範囲に含まれるか否かを判定する。切替部14は、回転速度ωが当該範囲に含まれると判定した場合(ステップS28:YES)、ステップS29の処理に移行する。一方、切替部14は、回転速度ωが当該範囲に含まれていないと判定した場合(ステップS28:NO)、ステップS32の処理に移行する。
【0077】
ステップS29において、切替部14は、モータ20の運転領域を第二運転領域(図3参照)に切り替え、ステップS29の次のステップS30において、モータ20の駆動をベクトル制御駆動に切り替え、ステップS30の次のステップS31において、ロータ23の位置検出を第一位置検出に切り替える。なお、切替部14は、モータ20の駆動がすでにベクトル制御駆動に切り替えられている場合には、ステップS30において特別な処理を実行せずに、ステップS31の処理に移行してもよい。モータ制御装置10は、切替部14におけるステップS31の処理が終了したらステップS36の処理に移行する。
【0078】
ステップS32において、切替部14は、モータ20の運転領域を第一運転領域(図3参照)に切り替え、ステップS32の次のステップS33において、モータ20の駆動を矩形波電圧駆動に切り替え、ステップS33の次のステップS34において、ロータ23の位置検出を第一位置検出に切り替える。モータ制御装置10は、切替部14におけるステップS34の処理が終了したらステップS36の処理に移行する。なお、切替部14は、ロータ23の位置検出がすでに第一位置検出に切り替えられている場合には、ステップS34において特別な処理を実行せずに、ステップS36の処理に移行してもよい。
【0079】
ステップS35において、切替部14は、モータ20の駆動及びロータ23の位置検出の制御を現在の状態で維持する。モータ制御装置10は、切替部14におけるステップS35の処理が終了したらステップS36の処理に移行する。ステップS35の処理は、ステップS11においてモータ20の回転速度が上昇していないと判定され、かつステップS23においてモータ20の回転速度が下降していないと判定された場合、すなわちモータ20の回転速度が一定であると判定された場合に実行される。このため、ステップS35においてモータ20の運転領域を変更する必要がないため、切替部14は、現在の制御状態を維持する。
【0080】
ステップS36において、モータ制御装置10を動作させるための電源がオフ状態であるか否かを判定する。モータ制御装置10に入力される電源の電圧値が所定値よりも低い場合(ステップS36:YES)には、モータ制御装置10は、電源がオフ状態であると判定して動作を終了する。一方、モータ制御装置10に入力される電源の電圧値が所定値以上の場合(ステップS36:NO)には、モータ制御装置10は、電源がオフ状態でないと判定し、ステップS11の処理に戻る。
【0081】
[4.他の実施形態]
駆動部11は、矩形波電圧駆動部111及びベクトル制御駆動部112のうちの非選択の方の動作を停止し、検出部12は、第一位置検出部121及び第二位置検出部122のうちの非選択の方の動作を停止するように構成されていてもよい。これにより、モータ制御装置10は、処理負荷の低減を図ることができる。
【0082】
上記実施形態によるモータ制御装置10の動作では、ステップS16の処理において、回転速度ωが低回転速度閾値Lth1以上かつ高回転速度閾値Hth1よりも低い範囲に含まれないと判定された場合には、次のステップS20の処理で運転領域を第三運転領域に切り替えるように処理されるが、これに限られない。例えば、ステップS16の処理とステップS20の処理の間に、回転速度ωが高回転速度閾値Hth1以上であるか否かを判定する処理が実行されてもよい。当該処理において、回転速度ωが高回転速度閾値Hth1以上であると判定された場合には、ステップS20の処理に移行され、回転速度ωが高回転速度閾値Hth1以上でないと判定された場合には、ステップS36の処理に移行されてもよい。これにより、ステップS12及びステップS16の処理において判定エラーが生じていたとしても、モータ20が本来動作すべき運転領域とは異なる運転領域で動作してしまうことを防止できる。
【0083】
上記実施形態によるモータ制御装置10の動作では、ステップS28の処理において、回転速度ωが低回転速度閾値Lth2以上かつ高回転速度閾値Hth2よりも低い範囲に含まれないと判定された場合には、次のステップS32の処理で運転領域を第一運転領域に切り替えるように処理されるが、これに限られない。例えば、ステップS28の処理とステップS32の処理の間に、回転速度ωが低回転速度閾値Lth1よりも低いか否かを判定する処理が実行されてもよい。当該処理において、回転速度ωが低回転速度閾値Lth2よりも低いと判定された場合には、ステップS32の処理に移行され、回転速度ωが低回転速度閾値Lth2よりも低くないと判定された場合には、ステップS36の処理に移行されてもよい。これにより、ステップS24及びステップS28の処理において判定エラーが生じていたとしても、モータ20が本来動作すべき運転領域とは異なる運転領域で動作してしまうことを防止できる。
【0084】
上記実施形態では、第二位置検出部122は、ホール検出信号Huの立ち上りエッジ及び立ち下りのエッジに基づいて電気角を決定しているが、これに限られない。第二位置検出部122は、ホール検出信号Huの立ち上がりエッジのみに基づいて電気角を例えば線形状に決定してもよい。この場合、第二位置検出部122は例えば、ホール検出信号Huの立ち上がりエッジを電気角0°と決定し、ホール検出信号Huの次の立ち上がりエッジを電気角360°(0°)と決定する。さらに、第二位置検出部122は例えば、ホール検出信号Huの立ち上がりエッジ及び次の立ち上がりエッジの間で電気角が線形状に単調増加すると仮定して、0°と360°(0°)との間の電気角を決定する。
【0085】
[5.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0086】
(構成1)モータに設けられた固定子巻線に矩形波電圧を印加して前記モータを駆動する矩形波電圧駆動と、前記固定子巻線に正弦波電圧を印加して前記モータを駆動するベクトル制御駆動とによって前記モータを選択的に駆動可能な駆動部と、前記モータに設けられたロータの回転位置を示す複数の位置信号の信号レベルの組合せに基づく第一位置検出と、前記複数の位置信号のうちのいずれか1つの信号レベルの変化に基づく第二位置検出とによって前記回転位置を選択的に検出可能な検出部と、前記モータの回転速度に基づいて、前記駆動部に対して前記モータの駆動を前記矩形波電圧駆動又は前記ベクトル制御駆動に切り替えさせ、かつ前記検出部に対して前記回転位置の検出を前記第一位置検出又は前記第二位置検出に切り替えさせる切替部と、を備え、前記切替部は、前記モータの回転速度が低回転速度閾値よりも低い場合に前記矩形波電圧駆動に切り替えさせ、前記回転速度が前記低回転速度閾値以上の場合に前記ベクトル制御駆動に切り替えさせ、前記低回転速度より高い値に設定された高回転速度閾値よりも前記回転速度が低い場合に前記第一位置検出に切り替えさせ、前記回転速度が前記高回転速度閾値以上の場合に前記第二位置検出に切り替えさせるモータ制御装置。
構成1のモータ制御装置によれば、モータの回転速度が低い場合は、第一位置検出によってモータの回転角を高分解能で算出でき、かつ矩形波電圧駆動によって高出力な駆動が可能となる。また、構成1のモータ制御装置によれば、モータの回転速度が高い場合は、第二位置検出によってモータの回転角が算出されるため、高回転時のモータの回転角の分解能を下げることで処理負荷が低減されるとともに、ベクトル制御駆動よってモータの振動が少ない駆動が可能となる。したがって、全ての回転速度領域において効率がよくかつ振動の少ない駆動を行うことができる。その結果、構成1のモータ制御装置によれば、低回転時のモータ出力の安定化を達成でき、延いてはエネルギー効率の改善に寄与することができる。
【0087】
(構成2)前記モータの運転領域は、前記低回転速度閾値及び前記高回転速度閾値に対応付けて、前記矩形波電圧駆動及び前記第一位置検出で運転される第一運転領域と、前記ベクトル制御駆動及び前記第一位置検出で運転される第二運転領域と、前記ベクトル制御駆動及び前記第二位置検出で運転される第三運転領域とに区分されており、前記切替部は、前記運転領域を前記回転速度に応じて、前記第一運転領域、前記第二運転領域及び前記第三運転領域に切り替える構成1に記載のモータ制御装置。
構成2のモータ制御装置によれば、モータの回転速度に応じて、より効率のよいモータの駆動を行うことができる。
【0088】
(構成3)前記低回転速度閾値及び前記高回転速度閾値のそれぞれは、前記回転速度が上昇する場合と前記回転速度が下降する場合とで異なる値に設定されている構成1又は2に記載のモータ制御装置。
構成3のモータ制御装置によれば、モータの駆動方法及びロータの回転位置の算出方法を切り替えるための回転速度閾値を跨ぐようにモータの回転速度が短時間で増減した場合に、モータに印加される電圧やモータに流れる電流が頻繁に変化することを防止できる。その結果、モータの騒音や振動を低減することができる。
【0089】
(構成4)前記低回転速度閾値及び前記高回転速度閾値のそれぞれは、前記回転速度が上昇する場合よりも前記回転速度が下降する場合の方が低い値に設定されている構成3に記載のモータ制御装置。
構成4のモータ制御装置によれば、モータの騒音や振動を低減することができる。
【0090】
(構成5)前記複数の位置信号のうちのいずれか1つに基づいて前記回転速度を算出する算出部を備える構成1から4までのいずれか一項に記載のモータ制御装置。
構成5のモータ制御装置によれば、同じ信号を用いてロータの回転位置の検出及び回転速度の算出を実行できる。
【0091】
(構成6)構成1から5までのいずれか一項に記載のモータ制御装置と、前記モータと、前記モータに設けられ前記複数の位置信号を出力する複数の位置検出部と、を備える車両。
構成6の車両によれば、構成1から5までのモータ制御装置と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0092】
1…車両、10…モータ制御装置、11…駆動部、12…検出部、13…回転速度算出部、14…切替部、15…指令部、20…モータ、21u…U相巻線、21v…V相巻線、21w…W相巻線、22u,22v,22w…ホールセンサ、23…ロータ、111…矩形波電圧駆動部、112…ベクトル制御駆動部、113…インバータ部、113u…U相アーム、113v…V相アーム、113w…W相アーム、121…第一位置検出部、122…第二位置検出部、Hth1,Hth2…高回転速度閾値、Hu,Hv,Hw…ホール検出信号、Id…d軸電流指令値、Iq…q軸電流指令値、Iu…U相電流、Iv…V相電流、Iw…W相電流、Ln…正極側ライン、Lp…負極側ライン、Lth1,Lth2…回転速度閾値、Pau~Paz,Pbu~Pbz,Pu~Pz…パルス信号、Qu~Qz…半導体素子、Scd1,Scd2…駆動切替信号、Scp1,Scp2…検出切替信号、Sθ,Sθ1,Sθ2…回転角信号、Sω…回転速度信号、Vu…U相交流電圧、Vv…V相交流電圧、Vw…W相交流電圧、θ,θ1,θ2…回転角、ω…回転速度
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