(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132556
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】切断機
(51)【国際特許分類】
B23D 45/14 20060101AFI20240920BHJP
B23D 45/16 20060101ALI20240920BHJP
B27B 9/00 20060101ALI20240920BHJP
B27B 9/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B23D45/14 A
B23D45/16
B27B9/00 A
B27B9/00 E
B27B9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043368
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 修司
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040CC03
3C040LL05
(57)【要約】
【課題】傾動操作中におけるガタツキを抑制して、切断機本体をベースに対して滑らかに傾動させることの可能な技術を提供する。
【解決手段】切断機は、当接面を有するベースと、切断機本体と、切断機本体をベースに対して第1軸線周りに傾動可能に支持する少なくとも1つの傾動支持部とを備える。少なくとも1つの傾動支持部は、切断機本体に固定された傾動プレートと、傾動プレートと対向して配置されベースに固定されたアンギュラプレートと、傾動プレートとアンギュラプレートとを連結するように構成されたリンクアームとを備える。切断機本体が傾動されたとき、傾動プレートは切断機本体と一体に傾動し、傾動プレートとアンギュラプレートの互いの対向面は摺接し、リンクアームは、切断機本体の傾動に連動して、第1軸線と平行な第2軸線を中心として傾動する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断機であって、
ワークに当接させるための当接面を有するベースと、
刃具に回転駆動力を提供するように構成された電動モータを備え、前記ベースの前記当接面に対して第2の側に配置された切断機本体と、
前記切断機本体を第1軸線周りに前記ベースに対して傾動可能に支持する少なくとも1つの傾動支持部と、を有し、
前記少なくとも1つの傾動支持部は、
前記ベースに対して前記第2の側へ突出し、前記切断機本体に固定された傾動プレートと、
前記ベースに対して前記第2の側へ突出し、前記第1軸線に平行な方向において前記傾動プレートと対向して配置され、前記ベースに固定されたアンギュラプレートと、
前記傾動プレートと前記アンギュラプレートとを連結するように構成されたリンクアームとを備え、
前記切断機本体が傾動されたとき、
前記傾動プレートは前記切断機本体と一体に傾動し、前記傾動プレートと前記アンギュラプレートの互いの対向面は摺接し、
前記リンクアームは、前記切断機本体の傾動に連動して、前記第1軸線と平行な第2軸線を中心として傾動する、切断機。
【請求項2】
請求項1に記載の切断機であって、
前記第2軸線は、前記ベースの前記当接面に対して前記第2の側に設けられている、切断機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の切断機であって、
前記第1軸線は、前記ベースの前記当接面に対して前記第2の側とは反対の第1の側に設けられた仮想的な軸線である、切断機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の切断機であって、
前記少なくとも1つの傾動支持部は、
前記傾動プレートと前記アンギュラプレートの一方に設けられ、前記切断機本体の傾動方向に沿った円弧状の円弧溝と、
前記傾動プレートと前記アンギュラプレートの他方に固定される第1部分と、前記円弧溝に向けて突出する第2部分とを有し、前記傾動プレートが傾動されると前記円弧溝に沿って摺動するガイドピンと、を備える、切断機。
【請求項5】
請求項4に記載の切断機であって、
前記リンクアームは、前記第2軸線上に設けられた基端部と、前記基端部とは反対側の先端部とを有し、
前記先端部は、前記円弧溝よりも前記第1軸線に近い側で前記傾動プレートに固定されて、前記傾動プレートと一体に傾動する、切断機。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の切断機であって、
前記切断機本体の前記ベースに対する傾斜角度を固定可能な角度固定部であって、
前記アンギュラプレートに設けられ、前記切断機本体の前記傾動方向に沿った円弧状の固定溝と、
前記第1軸線に平行に延在し、前記固定溝に挿通されて前記傾動プレートに係止された角度固定シャフトと、
前記角度固定シャフトに接続され、ユーザの操作により前記傾動プレートと前記アンギュラプレートとを前記第1軸線と平行な方向に固定可能な操作部とを備える、角度固定部を有し、
前記円弧溝は、前記固定溝よりも前記第1軸線に近い側に設けられている、切断機。
【請求項7】
請求項6に記載の切断機であって、
前記円弧溝は、前記アンギュラプレートに設けられた前記固定溝であり、
前記ガイドピンは、前記角度固定シャフトである、切断機。
【請求項8】
請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載の切断機であって、
前記少なくとも1つの傾動支持部は、更に、前記傾動プレート及び前記アンギュラプレートとは別体として形成され、前記傾動プレートと前記アンギュラプレートの前記一方に固定され前記円弧溝を有するガイドプレートを備える、切断機。
【請求項9】
請求項8に記載の切断機であって、
前記ガイドプレートは、鋼製である、切断機。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の切断機であって、
前記少なくとも1つの傾動支持部は、更に、前記円弧溝の第1端に配置された第1ピンと、前記円弧溝の前記第1端とは反対の第2端に配置された第2ピンとを備え、
前記第1ピン及び前記第2ピンは、前記ガイドプレートを前記傾動プレートと前記アンギュラプレートの前記一方に固定する、切断機。
【請求項11】
請求項4から請求項10までのいずれか一項に記載の切断機であって、
前記ガイドピンは、シャフト本体と、前記シャフト本体周りに設けられたベアリングとを有する、切断機。
【請求項12】
請求項5に記載の切断機であって、
前記少なくとも1つの傾動支持部は、前記アンギュラプレートに固定され、前記第2軸線を中心軸とする支持シャフトと、
前記傾動プレートに固定された先端シャフトと、を備え、
前記リンクアームの前記基端部は、前記支持シャフト上に設けられて前記支持シャフト上を傾動し、
前記リンクアームの前記先端部は、前記先端シャフト上に設けられている、切断機。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の切断機であって、
前記切断機は、ユーザが把持可能な把持部を備える、携帯用切断機である、切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに当接させるための当接面を有する略矩形のベースと、刃具が装着される切断機本体とを有し、ベースに対して切断機本体を傾動させることで、ワークに対して刃具を傾斜させた切断(傾斜切り)を行うことが可能な切断機が知られている。このような切断機の一種として、特許文献1には、プランジ式のマルノコが示されている。特許文献1のマルノコは、ベースに固定されたアンギュラプレートと刃具を有する加工機本体に固定された前側ブラケットとを備えている。前側ブラケットの前面には、傾動支軸を中心とした円弧状の2本の凸形レールが設けられ、アンギュラプレートには、2本の凸形レールに係合する2本の円弧状の凹型レールが設けられている。加工機本体がベースに対して傾動されると、凸形レールと凹型レールとが摺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-128026号公報
【特許文献2】特開2018-176310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のマルノコでは、加工機本体のベースに対する傾動(傾斜)角度が大きくなるにつれて、凸形レールと凹型レールとの係合部分が減少する。この係合部分の減少に起因して加工機本体とベースとの間にガタつきが生じ、加工機本体をベースに対して滑らかに傾動させ難い場合がある。このような課題は、マルノコに限らず、刃具が装着される切断機本体をベースに対して傾動させるように構成された切断機において、共通して生じ得る。したがって、傾動操作中におけるガタツキを抑制して、切断機本体をベースに対して滑らかに傾動させることの可能な技術が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、切断機が提供される。前記切断機は、ベースと、切断機本体と、少なくとも1つの傾動支持部とを備える。前記ベースは、ワークに当接させるための当接面を有する。前記切断機本体は、刃具に回転駆動力を提供するように構成された電動モータを備える。前記切断機本体は、前記ベースの前記当接面に対して第2の側に配置されている。前記少なくとも1つの傾動支持部は、前記切断機本体を前記ベースに対して第1軸線周りに傾動可能に支持するように構成されている。前記少なくとも1つの傾動支持部は、傾動プレートと、アンギュラプレートと、リンクアームとを備える。前記傾動プレートは、前記ベースに対して前記第2の側へ突出するように構成されている。前記傾動プレートは、前記切断機本体に固定されている。前記アンギュラプレートは、前記ベースに対して前記第2の側へ突出するように構成されている。前記アンギュラプレートは、前記第1軸線に平行な方向において前記傾動プレートと対向して配置されている。前記アンギュラプレートは、前記第1軸線に平行な方向において前記切断機本体に対し前記傾動プレートより遠い側に配置されている。前記アンギュラプレートは、前記ベースに固定されている。前記リンクアームは、前記傾動プレートと前記アンギュラプレートとを連結するように構成されている。前記切断機本体が傾動されたとき、前記傾動プレートは前記切断機本体と一体に傾動し、前記傾動プレートと前記アンギュラプレートの互いの対向面は摺接する。前記リンクアームは、前記切断機本体の傾動動作に連動して、前記傾動軸線と平行な第2軸線を周りに傾動するように構成されている。
【0006】
この態様によれば、傾動プレートとアンギュラプレートはリンクアームによって連結されており、リンクアームは、切断機本体の傾動中心である第1軸線と平行な第2軸線周りに、切断機本体に連動して傾動する。リンクアームが傾動プレートとアンギュラプレートとを連結する態様は、傾斜角度によらず維持される。そのため、切断機本体の傾斜角度が大きくなることに起因する傾動プレートとアンギュラプレートの間のガタつきを抑制できる。したがって、切断機本体をベースに対して滑らかに傾動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のマルノコを示す斜視図であり、本体部は上死点にある。
【
図2】マルノコの前面図であり、本体部は下死点にある。
【
図4】アンギュラプレートを破線で示した前側傾動支持部付近の拡大図であり、第1軸線を説明するために刃具のみを複数の傾斜角度で傾動させた図である。
【
図5】前側傾動支持部付近の斜視図であり、切断機本体の傾斜角度は0°である。
【
図6】前側傾動支持部及びリンクプレートを後から見た図である。
【
図7】前側傾動支持部付近の拡大図であり、切断機本体の傾斜角度は15°である。
【
図8】前側傾動支持部付近の拡大図であり、切断機本体の傾斜角度は30°である。
【
図9】前側傾動支持部付近の拡大図であり、切断機本体の傾斜角度は45°である。
【
図10】第2実施形態のマルノコを示す斜視図であり、本体部は下死点にある。
【
図11】第2実施形態の前側傾動支持部付近の拡大図であり、切断機本体の傾斜角度は0°である。
【
図12】第2実施形態の前側傾動支持部及びリンクプレートを後から見た図である。
【
図14】第2実施形態の前側傾動支持部付近の拡大図であり、切断機本体の傾斜角度は45°である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の非限定的な一実施形態において、前記第2軸線は、前記ベースの前記当接面に対して前記第2の側に設けられていてもよい。
この実施形態によれば、切断機本体に装着される刃具を、リンクアームの回転(傾動)軸線を構成する部材やリンクアームによって適切に支持できる。そのため、切断機本体に質量の比較的大きい刃具が装着されても、切断機本体をベースに対して滑らかに傾動させることができる。
【0009】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記第1軸線は、前記ベースの前記当接面に対して前記第2の側とは反対の第1の側に設けられた仮想的な軸線であってもよい。
この実施形態によれば、切断機本体の傾動中心である第1軸線は、ベースに対して切断機本体が位置する側とは反対側、つまり、ワーク側に設けられた仮想的な軸線である。そのため、傾斜角度によってワークの切断位置がずれることを抑制できる。
【0010】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記少なくとも1つの傾動支持部は、円弧溝とガイドピンとを備えていてもよい。前記円弧溝は、前記傾動プレートと前記アンギュラプレートの一方に設けられ、前記切断機本体の傾動方向に沿った円弧状に形成されていてもよい。前記ガイドピンは、前記傾動プレートと前記アンギュラプレートの他方に固定される第1部分と、前記円弧溝に向けて突出する第2部分とを有していてもよい。前記ガイドピンは、前記傾動プレートが傾動されると前記第2部分が前記円弧溝に沿って摺動するように構成されていてもよい。
この実施形態によれば、切断機本体に連動して傾動プレートが傾動されると、ガイドピンの第2部分は円弧溝に沿って移動する。また、切断機本体の傾斜角度によらず、ガイドピンの円弧溝に沿った方向(つまり、傾動方向)以外の移動は、円弧溝によって規制される。そのため、円弧溝とガイドピンとによって、切断機本体の第1軸線周りの傾動を支持(案内)しつつ、切断機本体の傾斜角度が大きくなることに起因する傾動プレートとアンギュラプレートとの間のガタつきを抑制できる。したがって、切断機本体をベースに対してより滑らかに傾動させることができる。
なお、この実施形態において、円弧溝の円弧中心は、第1軸線上に存在してもよい。円弧溝及びガイドピンは、円弧溝とガイドピンとが協働して切断機本体を第1軸線を中心として傾動させるように構成されていてもよい。
【0011】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記リンクアームは、前記第2軸線上に設けられた基端部と、前記基端部とは反対側の先端部とを有していてもよい。前記先端部は、前記円弧溝よりも前記第1軸線に近い側で前記傾動プレートに固定されていて、前記傾動プレートと一体に傾動するように構成されていてもよい。
この実施形態によれば、傾動プレート及びアンギュラプレートにおいて、円弧溝よりも第1軸線に近い側のスペースを有効に利用できる。
【0012】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記切断機は、更に、前記切断機本体の前記ベースに対する傾斜角度を固定可能な角度固定部を備えていてもよい。前記角度固定部は、固定溝と、角度固定シャフトと、操作部とを備えていてもよい。前記固定溝は、前記アンギュラプレートに設けられ前記切断機本体の傾動方向に沿った円弧状に形成されていてもよい。前記角度固定シャフトは、前記第1軸線に平行に延在し、前記固定溝に挿通されて前記傾動プレートに固定可能に構成されてもよい。前記操作部は、前記角度固定シャフトに接続され、ユーザの操作により前記傾動プレートと前記アンギュラプレートとを前記第1軸線と平行な方向に固定するように構成されていてもよい。更に、前記傾動支持部の前記円弧溝は、前記固定溝よりも前記第1軸線に近い側に設けられていてもよい。
この実施形態によれば、切断機本体のベースに対する傾斜角度を固定可能としつつ、傾動プレート及びアンギュラプレートにおいて、固定溝よりも第1軸線に近い側のスペースに円弧溝を配置できる。
なお、この実施形態において、固定溝の円弧中心は、第1軸線上に存在してもよい。
【0013】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記円弧溝は、前記アンギュラプレートに設けられた前記固定溝であってもよい。前記ガイドピンは、前記角度固定シャフトであってもよい。
この実施形態によれば、傾斜角度固定用の円弧状の固定溝と、角度固定シャフトとを利用して、切断機本体の第1軸線周りの傾動を支持(案内)しつつ、切断機本体の傾斜角度が大きくなることに起因する傾動プレートとアンギュラプレートとの間のガタつきを抑制できる。したがって、傾動支持部の構成を簡易化しつつ、切断機本体をベースに対して滑らかに傾動させることができる。
なお、この実施形態では、ガイドピンの第1部分に対応する角度固定シャフトの部分は傾動シャフトに固定されていてもよい。ガイドピンの第2部分に対応する角度固定シャフトの部分は、傾動プレートが傾動されると固定溝内を摺動するように構成されていてもよい。
【0014】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記少なくとも1つの傾動支持部は、更に、前記傾動プレート及び前記アンギュラプレートとは別体として形成され、前記傾動プレートと前記アンギュラプレートの前記一方に固定されたガイドプレートを備えていてもよい。前記円弧溝は、前記ガイドプレートに設けられてもよい。
この実施形態によれば、ガイドプレートは、傾動プレートとアンギュラプレートとの一方と別体であるため、ガイドプレートを当該一方と別部材で構成することもできる。そのため、傾動操作によって摺動する部分の構成材料の自由度を高めることができる。
【0015】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記ガイドプレートは、鋼製であってもよい。
この実施形態によれば、傾動操作によって摺動する部分の耐摩耗性を高めることができる。
【0016】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記少なくとも1つの傾動支持部は、更に、第1ピンと第2ピンとを備えていてもよい。前記第1ピンは、前記ガイドプレートに設けられた前記円弧溝の第1端に配置されてもよい。前記第2ピンは、前記ガイドプレートに設けられた前記円弧溝において、前記第1端とは反対の第2端に配置されてもよい。前記第1ピン及び前記第2ピンは、前記ガイドプレートを前記傾動プレートと前記アンギュラプレートの前記一方に固定するように構成されていてもよい。
この実施形態によれば、簡易な構成によって、ガイドプレートを傾動プレートとアンギュラプレートとの一方に固定することができる。
【0017】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記ガイドピンは、シャフト本体と、前記シャフト本体周りに設けられたベアリングとを有していてもよい。
この実施形態によれば、円弧溝に対してガイドピンを滑らかに摺動させることができる。そのため、傾動操作によって摺動する部分が摩耗することを抑制できる。
【0018】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記少なくとも1つの傾動支持部は、前記アンギュラプレートに固定され、前記第2軸線を中心軸とする支持シャフトを備えていてもよい。前記リンクアームの前記基端部は、前記支持シャフト上に設けられていてもよい。前記リンクアームの前記先端部は、前記傾動プレートに固定された先端シャフト上に設けられていてもよい。
この実施形態によれば、支持シャフト、リンクアーム、先端シャフトを介して、傾動プレートとアンギュラプレートとを連結できる。
【0019】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記切断機は、ユーザが把持可能な把持部を備える、携帯用切断機であってもよい。
この実施形態によれば、傾動操作中に切断機本体にユーザの力が加わりやすい携帯用切断機であっても、傾動操作中のガタつきが抑制されるので、ユーザは、傾動操作を滑らかに行うことができる。
【0020】
<第1実施形態>
以下、
図1から
図9を参照し、本開示の第1実施形態について説明する。本実施形態では、切断機の一例として、携帯用切断機の1種であるプランジマルノコ(以下、単に「マルノコ10」と呼ぶ)を例示する。
【0021】
まず、マルノコ10の概略構成について説明する。マルノコ10は、ベース20と、刃具35が装着される切断機本体30と、前側傾動支持部6fと、後側傾動支持部6rとを備えている。切断機本体30は、ベース20に対して第2の側に配置される。マルノコ10は、ベース20に対して切断機本体30と反対側(第1の側)に配置されるワークW(
図2参照)を切断可能に構成されている。
【0022】
以下では、説明の便宜上、マルノコ10の加工(切断)進行方向に平行な方向を、マルノコ10の前後方向と定義し、ワークWがマルノコ10に対して相対的に移送される先をマルノコ10の後側、その反対側をマルノコ10の前側と定義する。本実施形態では、後側は、ユーザがマルノコ10を手に持ってワークWを加工(切断)するときにユーザがいる側であり、その反対側がマルノコ10の前側である。また、このとき、ベース20に対してワークWが配置される側をマルノコ10の下側と定義し、その反対側を、マルノコ10の上側と定義する。上側は、切断機本体30が位置する側である。更に、前後方向及び上下方向に直交する方向をマルノコ10の左右方向と定義する。左右方向において、後側から前側を見たときの右側をマルノコ10の右側と定義し、その反対側をマルノコ10の左側と定義する。
【0023】
切断機本体30は、傾動軸線C(
図4参照)周りに、ベース20に対して傾動可能である。
図1から
図6は、切断機本体30の傾斜角度が0°の状態を示し、
図7、
図8、
図9は、夫々、切断機本体30の傾斜角度が15°、30°、45°の状態を示している。切断機本体30の傾斜角度は、刃具35の傾斜角度でもある。傾動軸線Cは、前後方向に平行である。傾斜角度が0°のとき、刃具35の側面は左右方向に直交する。
【0024】
ベース20は、略矩形状に形成されている。ベース20の長手方向は、前後方向である。ベース20は、ワークWに当接させるための当接面21を備える。本実施形態では、当接面21はベース20の下面に相当する。ただし、ワークWを直線的に切断するためにマルノコ10とともに長尺定規が使用される場合には、当接面21が長尺定規に当接するようにベース20が配置されてもよい。
【0025】
切断機本体30は、本体部31と、カバー40とを含む。本体部31は、基本的には、ベース20に対して上側に配置される。本体部31は、電動式のDCモータ33(
図1参照)を収容するモータハウジング32と、ギヤハウジング34と、ユーザが手で把持するためのグリップ36とを備える。
図3に示すように、モータ33の回転軸線AX1は、左右方向に延在する。ギヤハウジング34内には、減速ギヤと、左右方向に延在する軸線AX2を有する出力シャフトとが収容されている。モータ33は、減速ギヤ及び出力シャフトを介して、刃具35を軸線AX2回りに回転させる。本実施形態では、刃具35として、チップソーと称される丸鋸刃が用いられている。本実施形態では、ギヤハウジング34はモータハウジング32と一体に形成されている。グリップ36には、モータ33の起動及び停止を行うためのトリガが設けられている。
【0026】
カバー40は、ベース20の上面22側、かつ、ベース20の左右方向における縁部に配置されている。本実施形態では、カバー40は、ベース20の右側縁部に配置されている。刃具35は、円盤形状を有しており、少なくとも部分的にカバー40の内部に収容される。具体的には、カバー40の左側壁41には、左側壁41を左右方向に貫通する円弧状の貫通孔43(
図1参照)が形成されている。出力シャフトは、この貫通孔43を貫通して、カバー40の内部にまで延在している。出力シャフトの先端部は、刃具35を着脱可能に装着する装着部45(
図1及び
図3参照)として機能する。
【0027】
図1に示すように、本体部31の下側、かつ、ベース20の上側には、本体支持部50が設けられている。本体支持部50は、本体部31を上下方向に揺動可能にベース20に支持する。本体支持部50は、前後方向に延在する板状の基部51と、保持部52と、上下揺動シャフト53とを備える。基部51は、左右方向において、カバー40の下縁から本体部31の側(ギヤハウジング34の下側)まで延在する。
図1に示すように、基部51の下面は、切断機本体30の傾斜角度が0°のとき、ベース20の上面22に当接する。保持部52は、基部51の後部に設けられている。保持部52は、カバー40の左側壁41と対向する壁状に形成されている。上下揺動シャフト53の軸線AX3は、左右方向に延在する。上下揺動シャフト53は、本体部31(ギヤハウジング34)の後部に設けられた左右方向に貫通する貫通孔(不図示)に挿入されている。上下揺動シャフト53の右端はカバー40の左側壁41に保持され、左端は保持部52に保持されている。これにより、本体部31は、軸線AX3を中心として上下に揺動可能である。
【0028】
本体部31は、軸線AX3を中心として上下に揺動されることで、
図1に示す上死点と、
図2に示す下死点との間を変位可能である。上死点は、刃具35の全体がベース20の下面21よりも上方に位置し、かつ、刃具35が全体的にカバー40内に収容される位置である。下死点は、刃具35がベース20の下面21を超えて下方に突出し、刃具35が下面21から最も突出する位置である。なお、本体部31と基部51との間には、付勢バネ39が設けられている。付勢バネ39は、本体部31を下死点側から上死点側へ向けて常時付勢している。
【0029】
切断機本体30は、更に、バッテリ200を着脱可能に装着するバッテリ装着部37(
図1参照)を備える。バッテリ装着部37は、モータ33の後側に設けられている。バッテリ装着部37は、一対のガイドレールと、フック係合部と、端子とを備え、バッテリ200を着脱可能な周知の構成を有する。
【0030】
前側傾動支持部6fと後側傾動支持部6rとは、切断機本体30を、ベース20に対して傾動可能に支持するように構成されている。傾動軸線Cは、前後方向に延在する仮想的な軸線である。
図4に示すように、本実施形態では、傾動軸線Cは、ベース20の下面21より下方に配置される。傾動軸線Cは、長尺定規23の下面と略一致する。傾動軸線Cは、長尺定規23の下面に含まれる、又は、当該下面を含む仮想平面に含まれる。傾動軸線Cは、刃具35の左側面と重なる位置に配置される。傾動軸線Cは、すべての傾斜角度において刃具35の左側面と重なる位置に配置される。本実施形態では、どのような傾斜角度においてもワークWの上面における刃具35の左右方向の位置がずれないように、長尺定規23の下面に略一致する位置に、仮想的に傾動軸線Cを設定している。なお、前側傾動支持部6fと、後側傾動支持部6rとを合わせて、単に、傾動支持部6f、6rとも呼ぶ。
【0031】
図4に示すように、前側傾動支持部6fは、主に、アンギュラプレート61と、傾動プレート71と、リンクアーム83とを備える。前側傾動支持部6fは、更に、ガイドプレート64と、ガイドピン73と、支持シャフト81とを備える。
【0032】
アンギュラプレート61は、ベース20の上面22側、かつ、ベース20の前部分に設けられている。アンギュラプレート61は、上下方向及び左右方向に平行に(つまり、前後方向に直交するように)形成されて、ベース20に固定されている。アンギュラプレート61は、ベース20から上方に突出している。アンギュラプレート61は、傾動軸線Cを中心とする略4分の1の円弧形状である。アンギュラプレート61は、アルミニウムや合成樹脂等により形成されている。
【0033】
アンギュラプレート61の円弧状の外縁67付近には、アンギュラプレート61を前後方向に貫通し、切断機本体30の傾動方向T(
図4参照)に沿った円弧状の貫通孔65が形成されている。貫通孔65には、傾斜角度固定用のシャフト92が挿通されている。シャフト92は、シャフト92と貫通孔65との間に隙間が形成される程度の外径を有する。貫通孔65の円弧中心は、傾動軸線C上、又は、傾動軸線C上を含む傾動軸線C近傍である。
【0034】
図6に示すように、アンギュラプレート61の後面62における貫通孔65よりも内側(つまり、傾動軸線Cに近い側)には、ガイドプレート64が配置されている。ガイドプレート64は、アンギュラプレート61に固定されている。ガイドプレート64は、切断機本体30の傾動方向Tに沿った円弧状の円弧溝641を有する。本実施形態では、ガイドプレート64は、鋼製である。本実施形態では、円弧溝641は、ガイドプレート64において前後方向に貫通する部分である。円弧溝641は、円弧状に延在する長溝とも言える。円弧溝641の円弧中心は、傾動軸線C上、又は、傾動軸線C上を含む傾動軸線C近傍である。
【0035】
図6に示すように、アンギュラプレート61の後面62における貫通孔65よりも内側には、前方へ窪む凹部63が形成されている。ガイドプレート64は、凹部63に配置されている。円弧溝641の円弧の両端(第1端646、第2端647)には、夫々、第1ピン642、第2ピン643が配置されている。第1ピン642、第2ピン643は、夫々、アンギュラプレート61を前後方向に貫通する孔612、613に圧入されている(
図2参照)。第1ピン642、第2ピン643は、ガイドプレート64をアンギュラプレート61に対して位置決めしている。
【0036】
アンギュラプレート61の円弧形状の角部66(
図6参照)には、前後方向に貫通する孔が形成されている。この孔には、支持シャフト81が配置されている。支持シャフト81の中心軸(軸線D)は、前後方向に延在する。支持シャフト81の前端部は、ベース20(アンギュラプレート61)に圧入されている。これにより、支持シャフト81は、ベース20に固定されている。
図4に示すように、支持シャフト81の軸線Dは、傾動軸線Cの上側に位置する。本実施形態では、支持シャフト81自体は、平面視で(上方から見て、又は下方から見て)傾動軸線Cとオーバーラップしている。換言すると、支持シャフト81自体と傾動軸線Cとは、左右方向における位置が重なり合っている。軸線Dは、左右方向において傾動軸線Cよりモータ33側に1mmずれた位置にある。
【0037】
図6に示すように、リンクアーム83は、凹部63におけるガイドプレート64よりも更に内側(傾動軸線Cに近い側)に配置されている。リンクアーム83の基端部84は、角部66の後側(真後ろ)に配置されている。基端部84には、前後方向に貫通する孔841が形成されている。支持シャフト81の後端部は、この孔841にごくわずかな隙間で遊挿されている。したがって、リンクアーム83と支持シャフト81は、滑らかに回転可能である。
【0038】
図1に示すように、傾動プレート71は、基部51の前部であって、アンギュラプレート61の真後ろに設けられている。傾動プレート71は、基部51から上方に突出している。傾動プレート71は、傾動軸線Cを中心とする略4分の1の円弧形状である。アンギュラプレート61と傾動プレート71との円弧形状は略等しい。
図5に示すように、傾動プレート71の前面72(対向面)は、アンギュラプレート61の後面62と摺動可能に当接している。傾動プレート71は、アルミニウムやマグネシウム等により形成されている。
【0039】
傾動プレート71は、カバー40に対して固定されている。本実施形態では、傾動プレート71は、カバー40の左側壁41、基部51、保持部52、及び、後側傾動支持部6rの傾動プレート71と一体に形成されている。
図5に示すように、カバー40の右側壁42は、左側壁41及び傾動プレート71にネジ止めされている。
【0040】
図5に示すように、傾動プレート71の前面72には、角度固定用のシャフト92が固定されるシャフト固定部711と、ガイドピン73と、リンクアーム係止ピン75とが設けられている。ガイドピン73とリンクアーム係止ピン75は、傾動プレート71に圧入されている。これらの軸線は、いずれも前後方向に延在する。シャフト固定部711、ガイドピン73、リンクアーム係止ピン75は、切断機本体30が傾動されると、傾動プレート71と一体的に傾動する。
【0041】
シャフト固定部711は、角度固定用のシャフト92の後端部93(
図6参照)を固定可能な孔である。シャフト固定部711は、アンギュラプレート61の貫通孔65に対応する位置に設けられている。
図4に示すように、シャフト固定部711は、傾斜角度が0°の場合に、貫通孔65における下側(ベース20に近い側)の端部651の真後ろに位置するように、傾動プレート71に設けられている。
【0042】
ガイドピン73は、傾動プレート71におけるシャフト固定部711よりも更に内側に設けられている。
図5に示すように、ガイドピン73の後部分732(第1部分)は、ガイドプレート64の円弧溝641に対応する位置で、傾動プレート71に固定されている。ガイドピン73の前部分731(第2部分)は、傾動プレート71から前方へ突出している。ガイドピン73は、傾斜角度が0°の場合に、前部分731が第1ピン642に当接するように、傾動プレート71に設けられている。ガイドピン73の前部分731は、円弧溝641を摺動可能な程度の外径を有する。ガイドピン73は、切断機本体30ともに傾動プレート71が傾動されると、ガイドプレート64の円弧溝641に沿って摺動する。
【0043】
図5に示すように、リンクアーム係止ピン75は、傾動プレート71におけるガイドピン73よりも更に内側に設けられている。リンクアーム83の基端部84と反対側の先端部85には、前後方向に貫通する孔851が形成されており、リンクアーム係止ピン75の前端は、この孔851にごくわずかな隙間で遊挿されている。したがって、リンクアーム83とリンクアーム係止ピン75は、滑らかに回転可能である。上述したように、リンクアーム83の基端部84は、支持シャフト81上に配置されている。そのため、切断機本体30とともに傾動プレート71が傾動されると、リンクアーム83は、切断機本体30の傾動動作に連動して、支持シャフト81の軸線Dを中心として傾動する。
【0044】
図5に示すように、アンギュラプレート61の前面には、操作ノブ91が設けられている。操作ノブ91は、シャフト92の前端に取付けられている。操作ノブ91は、シャフト92の軸周りに、ユーザの手動操作により回動可能である。操作ノブ91は、シャフト92の軸周りの第1方向に回転されると、傾動プレート71とアンギュラプレート61とを前後方向に締め付けるように構成されている。これにより、傾動プレート71とアンギュラプレート61とが前後方向に固定され、切断機本体30の傾斜角度が固定される。また、操作ノブ91が第1方向とは逆方向に回転されると、傾動プレート71とアンギュラプレート61との前後方向の締め付けが解除される。操作ノブ91、シャフト92、貫通孔65、及び、シャフト固定部711は、切断機本体30のベース20に対する傾斜角度を固定可能な角度固定部9fとして機能する。
【0045】
図3に示すように、後側傾動支持部6rは、前後方向に直交する仮想平面Pに対して、前側傾動支持部6fと対称に形成されている。後側傾動支持部6rのアンギュラプレート61は、ベース20の上面22側、かつ、ベース20の後部分に設けられる。後側傾動支持部6rの傾動プレート71は、基部51の後部であって、後側傾動支持部6rのアンギュラプレート61の真ん前に設けられている。後側傾動支持部6rにおけるアンギュラプレート61の後面には、角度固定部9rの操作ノブ91が設けられている。後側傾動支持部6r、角度固定部9rのその他の構成は、前後方向に対称である点を除き、夫々、前側傾動支持部6f、角度固定部9fと同様であるため、説明を省略する。
【0046】
以上の構成を有するマルノコ10では、切断機本体30は、刃具35がベース20に対して直交する位置(
図1、
図2、
図4)と、刃具35がベース20と所定の最大傾斜角度で傾斜する位置との間で、傾動軸線C周りの円弧状の傾動方向Tに傾動可能である。切断機本体30の傾斜角度は、操作ノブ91が締め付けられることで固定される。傾斜角度は、前側傾動支持部6fのアンギュラプレート61に表示された角度メモリ611(
図1参照)により確認できる。
【0047】
図1に示す直角位置(傾斜角度0°)にあるマルノコ10に対し、ユーザは、角度固定部9fの操作ノブ91を緩めることで、前側の傾動プレート71とアンギュラプレート61との固定関係を解除できる。同様に、ユーザは、角度固定部9rの操作ノブ91を緩めることで、後側の傾動プレート71とアンギュラプレート61との固定関係を解除できる。これにより、切断機本体30は、傾動軸線C周りに傾動可能となる。ユーザは、刃具35がベース20に対して直交する直角位置(
図1、2参照)から、切断機本体30を右側へ傾動させることで、
図4に破線で示すように、刃具35をベース20に対して傾斜させることができる。
【0048】
切断機本体30が、
図1に示す直角位置から右側へ傾動されると、傾動プレート71の前面72はアンギュラプレート61の後面62に摺接しつつ、切断機本体30に連動して右側へ傾動する。このとき、傾動プレート71に固定されたガイドピン73の前部分731は、ガイドプレート64に摺動しつつ、ガイドプレート64の円弧溝641に沿って移動する。ガイドピン73の上下方向及び左右方向への移動は、円弧溝641を規定するガイドプレート64によって規制される。言い換えると、円弧溝641とガイドピン73とは、切断機本体30が傾動軸線Cを中心として傾動するように、切断機本体30をベース20に対して支持(案内)する。
【0049】
傾動プレート71が傾動軸線C周りに傾動されると、リンクアーム83は、傾動プレート71の傾動に連動して、支持シャフト81の軸線Dを中心として傾動する。また、角度固定部9fのシャフト92は、傾動プレート71とともに貫通孔65内を移動する。ユーザが所望の傾動角度で操作ノブ91を締め付けると、傾動プレート71とアンギュラプレート61とが前後方向に締め付けられて、切断機本体30のベース20に対する傾斜角度が固定される。
【0050】
以上で説明した本実施形態のマルノコ10では、傾動プレート71とアンギュラプレート61とが、リンクアーム83によって連結されており、リンクアーム83は、切断機本体30の傾動軸線Cと平行な軸線Dを中心として傾動する。リンクアーム83が傾動プレート71とアンギュラプレート61とを連結する態様は、傾斜角度によらず維持されるので、傾斜角度が大きくなることに起因する傾動プレート71とアンギュラプレート61との間のガタつきを抑制できる。そのため、切断機本体30をベース20に対して滑らかに傾動させることができる。
【0051】
また、マルノコ10は、切断機本体30が傾動軸線C周りにベース20に対して傾動するように構成されており、傾動軸線Cは、ベース20の下面21に対し下側に設けられた仮想的な軸線である。そのため、傾斜角度によってワークWの切断位置がずれることを抑制できる。
【0052】
また、リンクアーム83の軸線Dは、支持シャフト81の中心軸である。支持シャフト81は、ベース20(アンギュラプレート61)に固定されている。そのため、リンクアーム83は、安定して傾動される。更に、本実施形態では、ベース20の下面21に対し下側に仮想的な傾動軸線Cを設けつつ、実体的な支持シャフト81によって刃具35の質量を支持できるので、切断機本体30を滑らかに傾動させることができる。
【0053】
また、傾動支持部6f、6rは、アンギュラプレート61に設けられて切断機本体30の傾動方向Tに沿った円弧状の円弧溝641と、傾動プレート71に設けられたガイドピン73とを備える。ガイドピン73の後部分732は傾動プレート71に固定され、前部分731は円弧溝641に向けて突出している。切断機本体30に連動して傾動プレート71が傾動されると、ガイドピン73の前部分731は、円弧溝641に沿って摺動する。切断機本体30の傾斜角度によらず、ガイドピン73の円弧溝641に沿った方向以外の移動(上下方向への移動、左右方向への移動)は、円弧溝641(円弧溝641を規定するガイドプレート64)によって規制される。そのため、切断機本体30の傾斜角度が大きくなることに起因する傾動プレート71とアンギュラプレート61との間のガタつきを抑制できる。したがって、切断機本体30をベース20に対してより滑らかに傾動させることができる。
【0054】
ガイドプレート64は、アンギュラプレート61とは別体として設けられている。本実施形態では、ガイドプレート64は鋼材で形成され、アンギュラプレート61はアルミニウムや合成樹脂等で形成される。そのため、マルノコ10の軽量化を図りつつ、傾動操作によって摺動する部分の耐摩耗性を確保できる。
【0055】
また、円弧溝641は、角度固定部9fを構成する貫通孔65よりも内側に配置されるので、傾動支持部6fのスペースを有効に利用できる。
【0056】
本実施形態では、切断機として、携帯用切断機の一種であるマルノコ10が採用されている。一般的に、携帯用の切断機において切断機本体30を傾動させる場合には、テーブルソーなどの載置式の切断機と比べて、切断機本体30にユーザの力がかかりやすい。このような携帯用切断機では、傾動操作中に、上述のガタつきが生じやすい。しかし、本実施形態のマルノコ10では、上記で説明した傾動支持部6f、6rを備えることにより、傾動操作中のガタつきが抑制されるので、ユーザは、切断機本体30を滑らかに傾動させることができる。
【0057】
<第2実施形態>
図10から
図14を参照して、第2実施形態のマルノコ10Aについて説明する。第2実施形態のマルノコ10Aは、の構成が、第1実施形態と異なる。なお、以下では、上述の実施形態と同様の構成については同じ符号を使用し、説明を省略する。
【0058】
本実施形態のマルノコ10Aの傾動支持部として、前側傾動支持部6fAを例として説明する。
図12に示すように、前側傾動支持部6fAの後面62Aには、第1実施形態のガイドプレート64が設けられていない。また、傾動プレート71Aの前面72Aには、ガイドピン73が固定されていない。本実施形態のマルノコ10Aは、角度固定部9fAの角度固定用のシャフト92A、貫通孔65が、第1実施形態のガイドピン73、円弧溝641としての機能を発揮するように構成されている。
【0059】
図13に示すように、角度固定用のシャフト92Aは、前後方向に延在するシャフト本体95Aと、シャフト本体95A周りに設けられたベアリング96Aとを備える。シャフト92Aの後端部93A(第1部分)は、傾動プレート71Aのシャフト固定部711に固定されている。シャフト92Aの前部分94A(第2部分)は、貫通孔65内に配置されている。ベアリング96Aは、前部分94Aの周りに設けられている。ベアリング96Aとしては、すべり軸受け、転がり軸受け等が適用可能である。シャフト92Aにおけるベアリング96Aが設けられた部分は、全体として、貫通孔65を摺動可能な程度の外径を有する。マルノコ10Aは、前後方向に直交する仮想平面Pに対して、前側傾動支持部6fA、角度固定部9fAと対称に形成された後側傾動支持部、角度固定部を備える。マルノコ10Aの備える後側傾動支持部、角度固定部の構成は、前後方向に対称である点を除き、夫々、前側傾動支持部6fA、角度固定部9fAと同様であるため、説明及び図示を省略する。
【0060】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、直角位置(傾斜角度0°)にあるマルノコ10に対し、ユーザは、角度固定部9fAの操作ノブ91を緩めることで、前側の傾動プレート71Aとアンギュラプレート61Aとの固定関係を解除できる。また、ユーザは、後側の角度固定部(不図示)の操作ノブ91を緩めることで、後側の傾動プレート71Aとアンギュラプレート61Aとの固定関係を解除できる。ユーザの操作により、切断機本体30が直角位置から右側へ傾動されると、傾動プレート71Aの前面72Aはアンギュラプレート61Aの後面62Aに摺接しつつ、切断機本体30に連動して右側へ傾動する(
図14参照)
。このときシャフト92Aは、前部分94Aが貫通孔65に摺動しつつ、貫通孔65に沿って移動する。シャフト92Aの上下方向及び左右方向への移動は、貫通孔65によって規制される。傾動プレート71Aが傾動軸線C周りに傾動されると、リンクアーム83は、傾動プレート71Aの傾動に連動して、支持シャフト81の軸線Dを中心として傾動する。ユーザが所望の傾動角度で操作ノブ91を締め付けると、傾動プレート71Aとアンギュラプレート61Aとが前後方向に締め付けられて、切断機本体30のベース20に対する傾斜角度が固定される。
【0061】
以上で説明した第2実施形態のマルノコ10Aでは、傾斜角度固定用の円弧状の貫通孔65と、角度固定用のシャフト92Aとを利用して、切断機本体30の傾動軸線C周りの傾動を支持(案内)しつつ、切断機本体30の傾斜角度が大きくなることに起因する傾動プレート71Aとアンギュラプレート61Aとの間のガタつきを抑制できる。したがって、傾動支持部6fAの構成を簡易化しつつ、切断機本体30をベース20に対して滑らかに傾動させることができる。
【0062】
また、シャフト92Aは、ベアリング96Aを備えるため、貫通孔65に対してシャフト92Aを滑らかに摺動させることができる。そのため、貫通孔65が摩耗することを抑制できる。
【0063】
<対応関係>
上記実施形態の各構成要素と本開示の技術の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本開示の技術の各構成要素を限定するものではない。
マルノコ10、10Aは、「切断機」、「携帯用切断機」の一例である。
ワークWは、「ワーク」の一例である。
当接面21、下面21は、「当接面」の一例である。
ベース20は、「ベース」の一例である。
モータ33は、「モータ」の一例である。
傾動軸線Cは、「第1軸線」の一例である。
切断機本体30は、「切断機本体」の一例である。
前側傾動支持部6f、6fA、後側傾動支持部6rは、「少なくとも1つの傾動支持部」の一例である。
傾動プレート71、71Aは、「傾動プレート」の一例である。
アンギュラプレート61、61Aは、「アンギュラプレート」の一例である。
前面72、後面62は、夫々「対向面」の一例である。
リンクアーム83は、「リンクアーム」の一例である。
軸線Dは、「第2軸線」の一例である。
前後方向は、「第1軸線に平行な方向」の一例である。
上側、下側は、夫々、「第2の側」「第1の側」の一例である。
円弧溝641、貫通孔65は、「円弧溝」の一例である。
ガイドピン73、シャフト92Aは、「ガイドピン」の一例である。
ガイドピン73の後部分732、シャフト92Aの前部分94Aは、「第1部分」の一例である。
ガイドピン73の前部分731、シャフト92Aの後端部93Aは、「第2部分」の一例である。
リンクアーム83の基端部84、先端部85は、夫々、「基端部」、「先端部」の一例である。
傾動方向Tは、「傾動方向」の一例である。
角度固定部9r、9fは、「角度固定部」の一例である。
貫通孔65は、「固定溝」の一例である。
シャフト92、92Aは、「角度固定シャフト」の一例である。
操作ノブ91は、「操作部」の一例である。
ガイドプレート64は、「ガイドプレート」の一例である。
円弧溝641の第1端646、第2端647は、夫々、「第1端」、「第2端」の一例である。
第1ピン642、第2ピン643は、夫々、「第1ピン」、「第2ピン」の一例である。
シャフト本体95Aは、「シャフト本体」の一例である。
ベアリング96Aは、「ベアリング」の一例である。
支持シャフト81は、「支持シャフト」の一例である。
リンクアーム係止ピン75は、「先端シャフト」の一例である。
グリップ36は、「把持部」の一例である。
【0064】
<他の実施形態>
第1実施形態において、円弧溝641は、ガイドプレート64に設けられていなくともよく、例えば、アンギュラプレート61に一体的に設けられていてもよい。アンギュラプレート61をアルミニウムや合成樹脂で形成する場合には、ガイドピン73のシャフト周りにベアリングを設けてもよい。この形態によれば、円弧溝641に対してガイドピン73を滑らかに摺動させつつ、アンギュラプレート61に設けられた円弧溝641がガイドピン73によって摩耗することを抑制できる。
【0065】
上述の実施形態におけるアンギュラプレート61、61A、傾動プレート71、71A、ガイドプレート64等の各部材の材料は、任意に変更されてもよい。
【0066】
なお、第1実施形態及び上記他の実施形態において、円弧溝641が傾動プレート71に設けられ、ガイドピン73がアンギュラプレート61に設けられてもよい。この形態によっても、上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0067】
マルノコ10、10Aは、外部の交流電源に接続可能な電源コードを備えていてもよく、外部の交流電源を用いて駆動されてもよい。
【0068】
上記の構成は、マルノコ10,10Aに限らず、他の切断機に適用可能である。他の切断機として、例えば、非プランジ式のマルノコ、テーブルソー、フリップオーバーソーが挙げられる。
【0069】
上記実施形態において、切断機の備える傾動支持部6f(6fA),6rは、1つであってもよい。切断機は、例えば、前側傾動支持部6f(6fA)のみを備えていてもよい。
【0070】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
6f,6r,6fA:傾動支持部、6f,6fA:前側傾動支持部、6r:後側傾動支持部、9f,9fA:角度固定部、10,10A:マルノコ、20:ベース、21:下面,当接面、22:上面、23:長尺定規、30:切断機本体、31:本体部、32:モータハウジング、33:モータ、34:ギヤハウジング、35:刃具、36:グリップ、37:バッテリ装着部、39:付勢バネ、40:カバー、41:左側壁、42:右側壁、43:貫通孔、45:装着部、50:本体支持部、51:基部、52:保持部、53:上下揺動シャフト、61,61A:アンギュラプレート、62,62A:後面、63:凹部、64:ガイドプレート、65:貫通孔、66:角部、67:外縁、71,71A:傾動プレート、72,72A:前面、73:ガイドピン、75:リンクアーム係止ピン、81:支持シャフト、83:リンクアーム、84:基端部、85:先端部、91:操作ノブ、92,92A:シャフト、93,93A:後端部、94A:前部分、95A:シャフト本体、96A:ベアリング、200:バッテリ、611:角度メモリ、612:孔、613:孔、641:円弧溝、642:第1ピン、643:第2ピン、646:第1端、647:第2端、651:端部、711:シャフト固定部、731:前部分、732:後部分、841:孔、851:孔、AX1:回転軸線、AX2:軸線、AX3:軸線、C:傾動軸線、D:軸線、P:仮想平面、T:傾動方向、W:ワーク