(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132559
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】濾過装置および水質浄化システム
(51)【国際特許分類】
B01D 24/00 20060101AFI20240920BHJP
B01D 37/04 20060101ALI20240920BHJP
B01D 35/00 20060101ALI20240920BHJP
C02F 3/06 20230101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D29/08 520A
B01D29/08 530C
B01D29/08 540A
B01D37/04
B01D35/00
C02F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043371
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯地 実
【テーマコード(参考)】
4D003
4D116
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AB13
4D003DA01
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4D003EA06
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4D116QC22A
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4D116UU01
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4D116UU14
4D116VV07
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら、効率良く液体を濾過することのできる濾過装置を提供すること。
【解決手段】濾過装置(10)は、処理対象の液体を流入する流入部(12)と、流入部の吐出口が設けられた前室(51)と、仕切壁(41)を介して前室と所定方向に隣接して設けられた濾過室(52)と、仕切壁に設けられ、前室と濾過室とを連通する連通路(53)と、濾過室において濾過された液体を流出する流出部(13)とを備え、流入部が、濾過室および仕切壁を貫通し、前室まで所定方向に沿って延びる管部材(42)によって構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の液体を流入する流入部と、
前記流入部の吐出口が設けられた前室と、
仕切壁を介して前記前室と所定方向に隣接して設けられた濾過室と、
前記仕切壁に設けられ、前記前室と前記濾過室とを連通する連通路と、
前記濾過室において濾過された液体を流出する流出部とを備え、
前記流入部が、前記濾過室および前記仕切壁を貫通し、前記前室まで前記所定方向に沿って延びる管部材によって構成されている、濾過装置。
【請求項2】
前記仕切壁は、前記管部材が挿通され、前記管部材よりも大径である開口を有し、
前記開口によって、前記連通路が形成されている、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記仕切壁は、前記前室と前記濾過室とを上下方向に区画し、
前記前室が前記濾過室の下方側に設けられている、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記流入部は、微細気泡発生装置で生成した微細気泡を含む液体を流入し、
前記前室内の液体を前記微細気泡発生装置に戻すための循環用流出部をさらに備える、請求項1~3のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項5】
請求項1に記載の濾過装置を備えた水質浄化システムであって、
被処理液体の貯留部から前記濾過装置の前記流入部に至る第1流路と、
前記濾過装置の前記流出部から前記貯留部に至る第2流路とを備え、
前記第1流路に微細気泡発生装置が設けられている、水質浄化システム。
【請求項6】
前記濾過装置の前記前室に流入した液体を前記微細気泡発生装置に戻すための循環路をさらに備え、
前記循環路には流量を調整するための流量調整弁が設けられている、請求項5に記載の水質浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置および水質浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細気泡を活用して水質浄化や養殖場における生物の発育促進などの技術が増えてきている。水質浄化システムにおける濾過槽には、物理濾過や生物濾過が用いられる。
【0003】
特開2013-138971号公報(特許文献1)には、物理濾過剤の目詰まりを抑制するための濾過装置が開示されている。この濾過装置は、ケーシングの内部に、流入口が位置する第一室と流出口が位置する第二室とを区画するように装着された逆円錐状の濾過体を備えることにより、流入口から第一室に被処理液体を渦巻状に旋回流動させるように導入することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルタを用いる物理濾過剤は、異物の付着による目詰まりを起こしやすいため、定期的に、交換等のメンテナンスが必要となる。特許文献1の濾過装置においては、濾過体自体を逆円錐状に形成し、旋回流動する被処理液体によって濾過体を振動させることで目詰まりを抑制しており、装置構成が複雑で、汎用性が低い。
【0006】
そこで、濾過剤を生物濾過とすることによりメンテナンスの頻度を少なくすることが考えられるが、汎用性を高めるには、装置構成を複雑にすることなく、効率良く生物濾過を促進できるようにすることが重要である。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構成でありながら、効率良く液体を濾過することのできる濾過装置および水質浄化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う濾過装置は、処理対象の液体を流入する流入部と、流入部の吐出口が設けられた前室と、仕切壁を介して前室と所定方向に隣接して設けられた濾過室と、仕切壁に設けられ、前室と濾過室とを連通する連通路と、濾過室において濾過された液体を流出する流出部とを備え、流入部が、濾過室および仕切壁を貫通し、前室まで所定方向に沿って延びる管部材によって構成されている。
【0009】
好ましくは、仕切壁は、管部材が挿通され、管部材よりも大径である開口を有し、開口によって、連通路が形成されている。
【0010】
好ましくは、仕切壁は、前室と濾過室とを上下方向に区画し、前室が濾過室の下方側に設けられている。
【0011】
より好ましくは、前室および濾過室を含むケーシングが、円筒状の箱体によって形成されており、仕切壁の形状は、前室側に突出する逆円錐台状の筒形状ある。
【0012】
前室には、管部材の吐出口に対面するように配置された円錐形状のコーン部材が設けられていることが望ましい。
【0013】
好ましくは、流入部は、微細気泡発生装置で生成した微細気泡を含む液体を流入する。この場合、濾過装置は、前室内の液体を微細気泡発生装置に戻すための循環用流出部をさらに備えることが望ましい。
【0014】
また、前室の下端部に、濾過室に堆積した異物を液体とともに排出するための排水部が設けられていることが望ましい。
【0015】
上記の濾過装置を備えた水質浄化システムは、被処理液体の貯留部から濾過装置の流入部に至る第1流路と、濾過装置の流出部から貯留部に至る第2流路とを備え、第1流路に微細気泡発生装置が設けられている。
【0016】
水質浄化システムは、濾過装置の前室に流入した液体を微細気泡発生装置に戻すための循環路をさらに備え、循環路には流量を調整するための流量調整弁が設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流入部から前室への液体の吐出方向(流入方向)を、連通路を介した前室から濾過室への液体の流れ方向の逆向きとするだけの簡易な構成で、前室内で液体が撹拌されるので、濾過室での液体の濾過を効率良く行うことができる。
【0018】
また、濾過室に生物濾過剤が設けられる形態においては、流入部が、微細気泡発生装置で生成した微細気泡を含む液体を流入することで、生物濾過を促進することができる。その結果、生物濾過剤のメンテナンスを長期間不要とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る濾過装置を含む水質浄化システムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る濾過装置のケーシングの縦断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る濾過装置のケーシングの斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態において、ケーシングの内部に濾過剤が挿入された状態を模式的に示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る濾過装置における液体の流れを模式的に示す縦断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る濾過装置の前室における液体の流れを模式的に示す横断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る濾過装置の逆洗機能を模式的に示す縦断面図である。
【
図8】微細気泡発生装置を通らない迂回経路を設けた水質浄化システムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器の外観を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器の外観を示す側面図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器の断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器のコマ部材を示す図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器のコマ部材が有する下流側の扇形領域を拡大して示す平面図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器のケーシングの構成を模式的に示す分解図である。
【
図15】微細気泡発生器の他の構成例1を示す図である。
【
図16】微細気泡発生器の他の構成例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
<全体構成について>
はじめに、
図1を参照して、本実施の形態に係る濾過装置10を含む水質浄化システムSYSの全体構成について説明する。
【0022】
水質浄化システムSYSは、貯留部60内の被処理液体(以下「液体」と略す)を浄化するシステムであり、濾過装置10と、貯留部60から濾過装置10に至る第1流路21と、濾過装置10から貯留部60に至る第2流路22とを備えている。また、濾過装置10から延びて第1流路21の途中位置に合流する(交差する)循環路23を備えている。貯留部60は、たとえば、池などの閉鎖水域であってもよいし、魚を生育するための水槽であってもよい。
【0023】
濾過装置10は、その外郭を形成するケーシング11を備え、ケーシング11に、第1流路21、第2流路22、および循環路23が接続されている。すなわち、濾過装置10は、第1流路21の下流側端部が接続される流入部12、第2流路22の上流側端部が接続される流出部13、および循環路23の上流側端部が接続される循環用流出部14を有している。
【0024】
ケーシング11の内部空間は、仕切壁41によって二つの空間51,52に区画されている。一方の空間(下方空間)51が、流入部12を介して液体を受け入れる室(以下「前室」という)を構成し、他方の空間(濾過室)52が、濾過剤44を収容する「濾過室」を構成する。流入部12の吐出口および循環用流出部14が前室51側に設けられ、流出部13が濾過室52側に設けられている。
【0025】
第1流路21には、ポンプ31および微細気泡発生装置32がこの順序で設けられている。微細気泡発生装置32は、たとえばキャビテーション方式によって微細気泡を発生させる。これにより、貯留部60から汲み上げられた液体(水)に微細気泡を含有させるとともに、液体の除菌が行われる。なお、「除菌」とは、菌を除去すること、および、菌を減少させること、の双方の意味を含む。「微細気泡」とは、いわゆるファインバブルであり、粒子径がマイクロスケールまたはナノスケールの気泡を表わす。微細気泡発生装置32の具体的な構成例については後述する。
【0026】
微細気泡発生装置32から放出される微細気泡を含有した液体(つまり、除菌後の液体)が、流入部12を介して濾過装置10のケーシング11内の前室51に送られる。濾過装置10のケーシング11内の濾過室52で濾過された浄化後の液体が、流出部13を介して第2流路22に送られ、第2流路22から貯留部60に戻される。このようにして、貯留部60内の液体が自然ループにより浄化される。
【0027】
循環路23は、一端(上流側端部)がケーシング11の循環用流出部14に接続され、他端(下流側端部)が第1流路21の途中位置に接続されている。この途中位置(循環路23の他端が接続される位置)は、少なくとも微細気泡発生装置32よりも上流側であればよい。循環路23はケーシング11の前室51に流入した液体(微細気泡を含む)を微細気泡発生装置32に戻すための戻し配管である。本実施の形態では、第1流路21におけるポンプ31よりも上流側の位置に、循環路23の他端が接続されている。循環路23には、流路を開閉するためのバルブ33が設けられている。バルブ33が開状態で運転される場合、濾過装置10は「濃度調整モード」として作動する。バルブ33が全閉状態で運転される場合、濾過装置10は「通常運転モード」として作動する。バルブ33はたとえば絞り弁である。
【0028】
第1流路21上のポンプ31のON/OFF切り替え、および、循環路23上のバルブ33の開閉切り替えは、ユーザ(作業者)が手動で行ってもよいし、制御装置(図示せず)により自動的に行われてもよい。後者の場合、制御装置は、たとえばユーザからの指示に応じて、ポンプ31の駆動およびバルブ33の開閉を制御する。
【0029】
<濾過装置の構成例について>
図2および
図3を参照して、濾過装置10の具体的な構成例について説明する。
図2は、濾過装置10のケーシング11の縦断面図であり、
図3は、ケーシング11の斜視図である。
【0030】
(ケーシング)
本実施の形態において、ケーシング11は、ドラム管のような円筒状の箱体によって形成されている。ケーシング11は、その軸線Cが上下方向(鉛直方向)となるよう縦向きで配置される。すなわち、ケーシング11は、鉛直方向に延びる軸線Cを中心とする円筒部111と、円筒部111の下端開口を塞ぐ円板状の底壁部112とを含む。ケーシング11は、円筒部111の上端開口を塞ぐ、着脱可能な円板状の蓋部113をさらに含んでいてもよい。
【0031】
ケーシング11の内部空間は、仕切壁41によって前室51と濾過室52とに仕切られている。つまり、仕切壁41によって、ケーシング11の内部空間が軸線C方向に沿って二つの空間51,52に区画されている。濾過室52には、濾過剤44が設けられている。前室51は、濾過室52の上流側に位置し、濾過室52の前に処理対象の液体が必ず通る室である。
図4は、ケーシング11の内部に濾過剤44が挿入された状態を模式的に示す斜視図である。濾過剤44は、ケーシング11の上端開口を介して取り出し・交換可能であることが望ましい。
【0032】
(仕切壁)
仕切壁41は、軸線Cに交差し、中央に円形の開口41aを有する環状部材により構成されている。仕切壁41は、たとえば金属製の1枚または複数枚の薄板を加工することにより形成されている。開口41aは、前室51と濾過室52とを連通する唯一の開口である。開口41aの半径L1は、たとえば、底壁部112の半径L2の1/4以上、1/2以下である。
【0033】
仕切壁41は、円筒部111に接する外周部よりも内周部(開口41a側)が下方となるように勾配が付けられていることが望ましく、前室51側に突出する逆円錐台形状(テーパ状)となっている。そのため、前室51の高さ(底壁部112から仕切壁41までの間隔)が、内周部から外周部へ行くほど高く、逆に、濾過室52の高さ(蓋部113から仕切壁41までの間隔)が、外周部から内周部へ行くほど高くなっている。具体的には、仕切壁41の内周部(下端部)から満水レベルWLまでの高さH1が、仕切壁41の外周部(上端部)から満水レベルWLまでの高さH2よりも高い。なお、仕切壁41の外周部を通り円筒部111の軸線Cと直交する仮想面(水平面)100に対する仕切壁41の傾斜角度θは、たとえば、10度以上、45度以下である。
【0034】
(前室)
前室51は、少なくとも1つの整流部材43を含むことが望ましい。整流部材43は、たとえば、底壁部112から上方に突出する円錐形状のコーン部材により構成されている。本実施の形態では、整流部材43は、底壁部112の中央部に位置し、軸線C方向に見て、仕切壁41の開口41aの位置と重なる。整流部材43は、後述する管部材42の吐出口に対面するように配置されている。
【0035】
(濾過室)
濾過室52には、管部材42を取り囲むように濾過剤44が敷き詰められている。濾過剤44は、典型的には、好気性微生物であるバクテリアを定着する活性炭により構成され、活性炭にバクテリアを定着させることにより、バクテリアの力を借りて液体に含有する有機物(アンモニア等)を分解する。そのため、濾過剤44は、生物濾過剤として機能する。
【0036】
濾過剤44は、仕切壁41の開口41aから前室51に落下することがないように、たとえばメッシュ状の袋に入れられた状態で濾過室52内に配置されている。濾過剤44を含む袋は複数個に分かれていてもよい。濾過剤44は、使用状態において、仕切壁41から満水レベルWL付近の所定高さまで、万遍なく敷き詰められている。上述のように仕切壁41は内周部側が下方となるよう勾配(傾斜)が付けられているため、濾過剤44の高さ方向の厚みは、中央部が最も大きい。なお、後述の
図5に示すように、濾過室52は、濾過剤44が敷き詰められた濾過層521と、その上方に位置する上澄み層522とを有していることが望ましく、濾過剤44(濾過層521)の上端高さは満水レベルWLよりも下方である。
【0037】
(流入部)
流入部12は、濾過室52および仕切壁41を貫通して、前室51まで上下方向に沿って延びる管部材42によって構成されている。本実施の形態では、管部材42が逆L字状に形成されており、円筒部111の軸線Cに交差して略水平に延びる横管部421と、円筒部111の軸線Cに沿って略垂直に延びる縦管部422とを含む。横管部421の上流側端部が、第1流路21の下流側端部と接続され、微細気泡発生装置32が生成した微細気泡を含む液体の流入口として機能する。横管部421の上流側端部は、濾過室52を取り囲む円筒部111の貫通孔12aに挿入され、ケーシング11の外部に突出していてもよい。横管部421の下流側端部は縦管部422の上端部と一体的に接続されている。
【0038】
管部材42の縦管部422が、仕切壁41の開口41aに挿通されている。縦管部422の下端部は、仕切壁41の内周部よりも下方に位置し、かつ、ケーシング11の底壁部112から離れて配置されている。縦管部422の下端部が、微細気泡を含む液体の吐出口42aとして機能する。これにより、処理対象の液体が前室51に下向きに吐出される。縦管部422は、円筒部111の中心位置に(軸線C上に)に配置されている。縦管部422は、円筒部111と心合わせされていることが望ましい。上述の整流部材43は、縦管部422の吐出口(下端開口)42aに向かって円錐状に突出しており、軸線C方向に見て、縦管部422の直径の範囲内に整流部材43の頂点が位置している。
【0039】
仕切壁41の開口41aは、管部材42よりも大径であり、開口41aの周壁面(仕切壁41の内周面)と管部材42との間の環状空間が、前室51と濾過室52とを連通する連通路53を形成している。開口41aの直径(
図2に示す半径L1×2)は、たとえば、管部材42の外径φの2倍以上6倍以下である。なお、管部材42は、縦管部422のみによって構成され、縦管部422の上端部が円筒部111の上端開口から突出していてもよい。管部材42は、その全体が上下方向に沿っていればよく、軸線Cに対して多少傾斜していてもよい。
【0040】
(流出部)
流出部13は、濾過室52を取り囲む円筒部111に設けられた貫通孔13aにより構成されてもよいし、当該貫通孔13aに接続された短管13bを含んでいてもよい。貫通孔13aは、満水レベルWLに位置するオーバーフロー口であり、流出部13は、ケーシング11内の上澄み液(濾過剤44による濾過後の液体)をオーバーフローにより流出する。本実施の形態では、短管13bの下流側端部が、第2流路22の上流側端部と接続され、濾過室52からオーバーフローした液体が、第2流路22を介して貯留部60へと吐出される。
【0041】
(循環用流出部)
循環用流出部14は、前室51を取り囲む円筒部111に設けられた貫通孔14aにより構成されてもよいし、当該貫通孔14aに一端が接続された短管14bを含んでいてもよい。貫通孔14aの配置高さは、前室51の高さ範囲内であれば、特に限定されない。本実施の形態では、短管14bの下流側端部が、循環路23の上流側端部と一体的に接続されている。
【0042】
循環路23のバルブ33が開状態とされることで(濃度調整モードにおいて)、前室51内の微細気泡を含む液体が循環路23を介して第1流路21上の微細気泡発生装置32の上流側に戻されるので、前室51内の微細気泡の濃度を高めることができる。これにより、濾過室52に供給する液体の酸素濃度を高めることができる。また、バクテリアの活性化も促すことができる。
【0043】
<液体の濾過方法>
図1、
図5および
図6を参照しながら、濾過装置10による液体の濾過方法について説明する。
図5は、濾過装置10における液体の流れを模式的に示す縦断面図である。
図6は、濾過装置10の前室51における液体の流れを模式的に示す横断面図であり、
図5のVI-VI線に沿う切断面に相当する。
【0044】
(通常運転モード)
濾過装置10は、循環路23のバルブ33が全閉状態、ポンプ31がON状態の場合に、「通常運転モード」で作動する。
【0045】
通常運転モードにおいて、微細気泡発生装置32が生成した微細気泡を含む液体が、濾過装置10の流入部12を介してケーシング11の前室51に吐出される(矢印F1)。具体的には、管部材42の上流側端部に微細気泡を含む液体が流入し、流入した液体が管部材42の下端開口である吐出口42aから前室51の底壁部112に向かって吐出される。これにより、前室51において、微細気泡を含む液体が撹拌される。
【0046】
上述のように、管部材42の吐出口42aに対面する位置に円錐形状の整流部材43が設けられているため、
図6に示されるように、吐出口42aから真っすぐ下方に流出した液体が、整流部材43によって径方向外側に向かって放射状に拡散する(矢印F2)。
【0047】
前室51が液体で満たされた状態において、整流部材43の円錐面(側面)に沿って拡散した液体が円筒部111の内壁面および仕切壁41の下面(テーパ面)に沿って流れることで、前室51内で立体的に旋回する旋回流が発生する(矢印F3)。これにより、前室51内の液体が整流されるので、液体中の微細気泡の濃度すなわち酸素濃度が均一化される。
【0048】
前室51が液体で満たされ、液体の水位が仕切壁41の下端高さを超えている場合、
図5に示されるように、前室51内の液体の一部が連通路53を通り抜けて濾過室52内に上昇する(矢印F4)。これにより、酸素濃度が均一化された液体が、連通路53を介して濾過室52の濾過層521に供給される。
【0049】
仕切壁41の上面は連通路53側が下方となるように傾斜しているため、濾過層521を構成する濾過剤44の厚み(高さ)は、連通路53の直上に位置する部分ほど大きく、その分だけ水の抵抗も大きい。そのため、前室51から連通路53を通過して上昇してきた液体は、径方向外側に広がりながら濾過層521を上昇する(矢印F5)。これにより、濾過剤44に吸着したバクテリアに与えられる酸素量のバラつきを抑制することができるので、濾過層521内のバクテリアを万遍なく活性化させることができる。また、その結果、液体を均一に濾過することができる。
【0050】
ケーシング11内の液体の水位が満水レベルWLに達すると、濾過層521を通過することで異物が除去された液体(微細気泡を含む液体)が、上澄み層522から流出部13を介してオーバーフローにより流出する(矢印F6)。これにより、濾過装置10により濾過された液体が、第2流路22を介して貯留部60に吐出される。貯留部60の液体を上述のような流れで繰り返し濾過することにより、貯留部60の液体の水質を改善することができる。
【0051】
(濃度調整モード)
濾過装置10は、ポンプ31をON状態としたまま循環路23のバルブ33を開状態とした場合に、「濃度調整モード」で作動する。
【0052】
図5を参照して、濃度調整モードにおいては、前室51内の微細気泡を含む液体が、前室51の側部の循環用流出部14から循環路23に流出する(F7)。これにより、
図1に示すように、流入部12から前室51に下向きに吐出された微細気泡を含む液体が、循環路23および第1流路21を通って再び微細気泡発生装置32に送られる。つまり、濾過装置10の前室51に流入した液体が、循環路23、第1流路21、流入部12、および前室51の順に循環する。
【0053】
このように濾過装置10を濃度調整モードで作動させることによって、濾過室52に供給する液体の微細気泡の濃度(酸素濃度)を高めることができる。これにより、濾過層521内のバクテリアによる生物濾過を促進することができるので、濾過層521における濾過機能を安定化させることができる。また、濾過装置10の流出部13から貯留部60に戻す液体の酸素濃度を高めることもできるので、貯留部60に生殖する生物の発育を促進することも可能である。
【0054】
循環路23のバルブ33は、開度を調整可能な流量調整弁(絞り弁)であることが望ましい。これにより、濾過層521に供給する液体の酸素濃度を所望の濃度に調整することができる。
【0055】
<逆洗機能>
濾過装置10を通常運転モードや濃度調整モードで継続的に作動すると、濾過剤44や濾過層521の下部に異物(有機物やヘドロなど)が堆積する可能性がある。そのため、濾過装置10は、濾過室52に堆積した異物を外部に排出する「逆洗機能」を有していることが望ましい。濾過装置10の逆洗機能については、
図7を参照して説明する。
【0056】
図7に示されるように、濾過装置10のケーシング11の下端部に、濾過室52に堆積した異物をケーシング11内の液体とともに排出するための排水部15が設けられている。排水部15は、循環用流出部14と同様に、前室51を取り囲む円筒部111の下端部に設けられている。排水部15は、円筒部111に設けられた貫通孔15aと、当該貫通孔15aに一端が接続されたL字状の排水管15bと、排水管15bに設けられたバルブ15cとを含む。バルブ15cは常時、全閉状態とされ、水質浄化システムSYSを非作動とした状態でのみ(ポンプ31がOFF状態の場合にのみ)、開状態とされる。
【0057】
バルブ15cを開状態とした場合、ケーシング11内の液体が下端部から排出されるので、ケーシング11内の液体の水位が満水レベルWLから徐々に下降する(白抜き矢印で示す)。水位の下降に伴って、濾過室52の濾過層521内の異物が連通路53を介して前室51に流れ落ち(F11)、前室51の下端部から水流とともに排水部15から排出される(F12)。なお、排水部15は、ケーシング11の底壁部112に設けられていてもよい。
【0058】
上述のように、仕切壁41が逆円錐台状に形成されているため、仕切壁41の上面が、濾過層521内の異物を排出させるための案内面として機能する。したがって、濾過層521内の異物を、効果的に排出することができる。なお、排水部15は底壁部112に設けられていてもよい。
【0059】
<水質浄化システムの効果>
本実施の形態に係る水質浄化システムSYSは、上述の濾過装置10を備えている。濾過装置10は、処理対象の液体を流入する流入部12と、流入部12の吐出口42aが設けられた下方空間である前室51と、仕切壁41を介して前室51に隣接して設けられた上方空間である濾過室52と、仕切壁41に設けられ、前室51と濾過室52とを上下方向に連通する連通路53と、濾過室52において濾過された液体を流出する流出部13とを備え、流入部12が、濾過室52および仕切壁41をこの順序で貫通し、前室51まで下向きに延びる管部材42によって構成されている。このように、流入部12から前室51への液体の吐出方向(下向き)を、連通路53を介した前室51から濾過室52への液体の流れ方向(上向き)の逆向きとするだけの簡易な構成で、前室51内で液体が撹拌されるので、濾過室52での液体の濾過を効率良く行うことができる。
【0060】
また、本実施の形態では、濾過室52に生物濾過剤44が設けられており、流入部12が、微細気泡発生装置32で生成した微細気泡を含む液体を流入することで、濾過室52での生物濾過を促進することができる。また、本実施の形態では、前室51に整流部材43が設けられているため、前室51において旋回流を発生させることができるので、前室51内の液体の酸素濃度を均一化することが可能である。したがって、生物濾過剤44の交換などのメンテナンスを長期間不要とすることが可能である。
【0061】
また、本実施の形態では、前室51から微細気泡発生装置32に戻る循環路23が設けられているため、前室51から濾過室52に供給する液体の酸素濃度を調整する(上昇させる)ことができる。これにより、濾過装置10の生物濾過効果を良好に維持することができるので、濾過剤44を半永久的に利用することができる。
【0062】
なお、濾過装置10から貯留部60に吐出される液体の酸素量が多すぎると貯留部60に生殖する生物に悪影響を及ぼすことがあるため、微細気泡発生装置32を通さず液体の循環のみで水質浄化することも有効である。つまり、濾過装置10による水質浄化(有機物の分解)のみで、貯留部60内の液体の水質を浄化してもよい。
【0063】
この場合、たとえば
図8に示すように、第1流路21上に、微細気泡発生装置32を通らない迂回経路21Bを設け、微細気泡発生装置32を通る主経路と迂回経路21Bとの分岐点に方向切替弁34を設けてもよい。方向切替弁34を操作することにより、微細気泡発生装置32を通る「第1の水質浄化モード」と、微細気泡発生装置32を通らない「第2の水質浄化モード」とを簡単に切り替えることができる。
【0064】
<濾過装置の変形例>
本実施の形態では、円筒状のケーシング11を縦向きに配置し、仕切壁41によってケーシング11の内部空間を上下方向に区画したが、このような例に限定されない。たとえば、円筒状のケーシング11を横向きに(寝かせた状態で)配置し、仕切壁41によってケーシング11の内部空間を左右方向に区画してもよい。この場合においても、流入部12としての管部材42が濾過室52および仕切壁41を貫通して前室51まで延び、管部材42の少なくとも一部がケーシング11の軸線C方向(左右方向)に沿って延在することが望ましい。
【0065】
また、連通路53を構成する開口41aに、管部材42が挿通されることが望ましいものの、連通路53とは別の貫通孔に管部材42が(隙間のない状態で)挿通されてもよい。また、連通路53は、管部材42を取り囲むように配置された複数の貫通孔によって形成されていてもよい。
【0066】
また、前室51に設けた整流部材43が、管部材42の吐出口42aに対面して配置された円錐形状のコーン部材により構成されることとしたが、管部材42の吐出口42aから吐出された液体を前室51内の酸素濃度を均一化できれば、このような例に限定されない。
【0067】
また、濾過室52に設けた濾過剤44が活性炭により構成されることとしたが、生物濾過剤として機能する材料であれば、活性炭に限定されない。また、濾過剤44は、生物濾過剤として機能する材料であることが望ましいものの、物理濾過剤や化学濾過剤として機能する材料により構成されてもよい。
【0068】
また、ケーシング11の形状は、円筒状であることが望ましいものの、このような例に限定されず、たとえば角筒状であってもよい。
【0069】
<微細気泡発生装置の構成例>
図1に示した微細気泡発生装置32の構成例について説明する。本実施の形態では、微細気泡発生装置32が、特願2022-201146号の出願明細書に記載の微細気泡発生器により構成されている。この微細気泡発生器の具体的な構成例について、以下に説明する。
【0070】
(概略構成)
図9~
図11を参照して、本実施の形態に係る微細気泡発生器1(微細気泡発生装置32)の概略構成について説明する。
図9は、微細気泡発生器1の外観を示す斜視図であり、
図10は、
図9のX方向から見た側面図である。
図11は、微細気泡発生器1の断面図であり、
図10のXI-XI線に沿って切断した断面を示す。
【0071】
微細気泡発生器1は、主に、上流管91および下流管92の間に位置するケーシング1002と、ケーシング1002の内部に設けられたコマ部材1003とを備えている。上流管91および下流管92は典型的には円筒形状であり、同軸配置されている。
図9等に示すx軸は、上流管91および下流管92の長手方向(軸線方向)に一致しており、x軸の正方向が液体(以下「水」という)の上流側を示している。なお、上流管91および下流管92は、
図1に示した第1流路21の一部であってもよいし、微細気泡発生器1の構成要素であってもよい。
【0072】
ケーシング1002は、上流管91および下流管92に接続された円筒部1021と、円筒部1021の軸線O方向一端の開口を塞ぐ蓋部1023と、円筒部1021の軸線O方向他端の開口を塞ぐ底部1022とにより構成されている。
【0073】
円筒部1021は、x軸に交差する「y軸方向」に円弧状に膨出するように配置されている。具体的には、円筒部1021は、x軸およびy軸に交差する「z軸方向」に延び、かつ、円筒部1021の内径d2が、上流管91および下流管92の内径d3よりも大きい。平面視における円筒部1021の概略形状は、典型的には真円形状である。なお、「交差」とは、典型的には直交を表わすものの、多少のずれは許容されるものとする。
【0074】
以下の説明では、理解を容易にするために、x軸方向を「流れ方向」、y軸方向を「幅方向」または「左右方向」、z軸方向を「上下方向」または「高さ方向」ともいう。
図9等において、z軸の正方向が上方を示しているものとする。y軸の正方向は、下流側から円筒部1021を見て右側(幅方向一方側)を示す。
【0075】
図11を参照して、円筒部1021は、上流管91および下流管92の流路(開口部)910,920と重なる部分1021aがくり抜かれており、ケーシング1002の内部空間1020と流路910,920とが互いに連通している。円筒部1021の残部1021bが、上流管91および下流管92の端面とネジ固定や溶着等により接続されている。残部1021bによって、円筒部1021の内部空間1020が区画されている。具体的には、内部空間1020は、幅方向両側に位置する残部1021bの内側面、すなわち、一対の内側円弧面1212により区画されている。
【0076】
内部空間1020の上流側には、一対の上流側内側面1213に区画された導入路1024が設けられ、内部空間1020の下流側には、一対の下流側内側面1214に区画された放出路1025が設けられている。一対の上流側内側面1213は、互いに平行であり、上流管91の内径d3分離れている。同様に、一対の下流側内側面1214は、互いに平行であり、下流管92の内径d3分離れている。内側円弧面1212の流れ方向両端部が、上流側内側面1213および下流側内側面1214に接続されている。なお、上流管91の内径寸法と下流管92の内径寸法とは、同一である場合に限定されず、互いに異なっていてもよい。
【0077】
底部1022は、接着剤等により円筒部1021に接着されていてもよいし、円筒部1021と一体形成されていてもよい。蓋部1023は、
図14に示されるように、円筒部1021に対して着脱自在であることが望ましい。これにより、コマ部材1003の交換を容易に行うことができる。このように、コマ部材1003は、ケーシング1002に対して着脱可能に設けられていることが望ましい。
【0078】
コマ部材1003は、円筒部1021と同軸に配置された円柱形状の部材である。つまり、コマ部材1003の軸線(中心線)は、円筒部1021の軸線Oと一致する。平面視におけるコマ部材1003の概略形状は、典型的には真円形状である。コマ部材1003は、円筒部1021の内部空間1020に嵌め入れられている。コマ部材1003の直径(外径)d1は、円筒部1021の内径d2よりも小さく、コマ部材1003は、一対の内側円弧面1212との間に、隙間1011をあけて配置されている。すなわち、導入路1024と放出路1025との間に、上流側から下流側に向かう水の高速流路となる隙間1011が、幅方向両側に設けられている。
【0079】
隙間1011は、一対の内側円弧面1212とコマ部材1003の外周面との間に、一定幅で円弧状に設けられている。隙間1011の幅は、たとえば、円筒部1021の半径(「d2」/2)の1/7以上1/9以下であり、一例として1/8程度である。この場合、コマ部材1003の直径d1は、一例として円筒部1021の内径d2の7/8程度である。一対の隙間1011は、導入路1024から左右に分岐するように設けられ、下流端で放出路1025に合流する。
【0080】
コマ部材1003の直径d1は、上流管91(および下流管92)の内径d3よりも大きいことが望ましい。これにより、後述するように、導入路1024から水が隙間1011へ導かれる際に遠心力が働く。
【0081】
(コマ部材の構成)
図12を参照して、コマ部材1003の構成例について説明する。
図12(A),(B)はそれぞれ、コマ部材1003の斜視図および平面図(上面図)である。
図12(B)には、組み立て状態(使用状態)におけるケーシング1002の内側面(一対の上流側内側面1213、一対の内側円弧面1212、一対の下流側内側面1214)の位置が想像線で示されている。
【0082】
図12(B)を参照して、コマ部材1003は、平面視において(軸線O方向に見て)x軸およびy軸で区画される4つの扇形領域1301~1304により構成される。扇形領域1301,1302はy軸よりも上流側に位置し、扇形領域1303,1304はy軸よりも下流側に位置している。コマ部材1003は、下流側の扇形領域1303,1304の外周部に、内径側に窪ませた切欠き部(凹部)1031,1032を有している。切欠き部1031,1032は、コマ部材1003の上端縁から下端縁まで貫通して上下方向に延びている。切欠き部1031,1032によって、一対の隙間1011および放出路1025に連通する負圧空間S1,S2が形成される。
【0083】
切欠き部1031,1032は、x軸を中心とし左右対称に設けられている。切欠き部1031は、隣接する扇形領域1302,1304にはみ出ることなく、x軸およびy軸の両方から離れて配置されている。切欠き部1032も同様に、隣接する扇形領域1301,1303にはみ出ることなく、x軸およびy軸の両方から離れて配置されている。
【0084】
切欠き部1031,1032の内壁面1033,1034は、円弧状の凹面をもつ曲面形状であることが望ましい。本実施の形態では、
図12(A)に示すように、内壁面1033は、曲率半径の異なる2つの円弧面1331,1332と、2つの円弧面1331,1332を滑らかに接続する接続面1333とを含む。内壁面1034も同様である。切欠き部1031,1032の内壁面1033,1034の形状については、
図13を参照して説明する。
図13は、扇形領域1303を拡大して示す平面図であり、扇形領域1303をハッチングで示している。
【0085】
切欠き部1031の内壁面1033は、上流側に位置する円弧面1331と、下流側に位置する円弧面1332と、これらの円弧面1331,1332の間に位置する接続面1333とを含む。円弧面1331は、内壁面1033の上流側端縁P1を含む位置に設けられ、円弧面1332は、内壁面1033の下流側端縁P2を含む位置に設けられている。下流側端縁P2は、隙間1011から流出した水流を受け入れて、円弧面1331,1332を含む凹面に導く位置に設けられている。上流側端縁P1は、内壁面1033の凹面に沿って流れる旋回流を下流管92に向かって導く位置に設けられている。
【0086】
本実施の形態では、上流側の円弧面1331の曲率半径r1は、下流側の円弧面1332の曲率半径r2よりも小さい。曲率半径r1は、たとえば曲率半径r2の0.5以上0.7以下である。円弧面1331を規定する仮想円(真円)C1の中心O1、および、円弧面1332を規定する仮想円(真円)C2の中心O2は、コマ部材1003の外周円(想像線で示す)よりも内側(軸線O側)に位置していることが望ましい。これにより、切欠き部1031の内部空間(すなわち負圧空間S1)は、上流側端縁P1と下流側端縁P2との間の出入口Seの幅(開口幅)よりも広がりをもった空間とされる。
【0087】
本実施の形態では、円弧面1332を規定する仮想円C2は、コマ部材1003の外周円から一部がはみ出ている。一方、円弧面1331を規定する仮想円C1は、略全体がコマ部材1003の外周円の内側に位置している。そのため、上流側端縁P1を頂点とする先鋭部1035の方が、下流側端縁P2を頂点とする先鋭部1036よりも尖った形状となっている。
【0088】
接続面1333は、2つの円弧面1331,1332に外接する外接仮想円C3の円弧面により規定されている。そのため、2つの円弧面1331,1332と接続面1333とにより構成される内壁面1033の全体は、変形した円弧状凹面となっている。外接円C3の半径r3は、コマ部材1003の半径(直径d1/2)を1とすると、たとえば0.4~0.6の比率で定められ、一例として0.5程度である。なお、図示される例では、仮想円C3の中心O3が、コマ部材1003の外周円上に位置している。
【0089】
図11および
図12(B)に示されるように、組み立て状態において、切欠き部1031の上流側端縁P1は、円筒部1021(残部1021b)の内側円弧面1212と幅方向に対面する位置に位置している。そのため、幅方向(y軸方向)における上流側端縁P1の位置は、円筒部1021の上流側内側面1213および下流側内側面1214の位置よりも外側方にある。これに対し、切欠き部1031の下流側端縁P2は、円筒部1021の下流側内側面1214と幅方向に対面する位置に位置している。そのため、幅方向(y軸方向)における下流側端縁P2の位置は、円筒部1021の上流側内側面1213および下流側内側面1214の位置よりも内側方にある。つまり、下流側端縁P2は、下流管92の流路920の幅内に位置する。
【0090】
なお、
図13(B)に拡大して示すように、上流側の先鋭部1035の先端の一部、すなわち上流側端縁P1を含む部分1035aが切り落とされ、上流側端縁P1´と円弧面1331との間に(たとえば直線状の)切断面1334が設けられていてもよい。この場合、上流側端縁P1´は、円弧面1331を規定する仮想円C1の外側に位置する。これにより、圧力回復を抑制することができる。一例として、上流側端縁P1´は、下流側の円弧面1332を規定する仮想円C2と交差する位置に設けられている。
【0091】
再び
図12を参照して、コマ部材1003はまた、軸線O(z軸)を中心とする中心孔1030と、中心孔1030から左右両側の隙間1011に向かって半径方向に延びる複数の横孔1037とを有している。中心孔1030は、コマ部材1003を上下方向に貫通して真っすぐ延びている。
図9に示す流体供給ノズル1005から供給される流体が中心孔1030に吸入され、中心孔1030から横孔1037を通って隙間1011に吐出される(吸引される)。流体は、気体および液体のいずれであってもよい。本実施の形態において横孔1037は、上下方向に間隔をあけて複数個設けられている。なお、横孔1037は少なくとも1つ設けられていればよい。
【0092】
図12(B)に示すように、横孔1037は、下流側に若干傾斜して幅方向に延びている。具体的には、紙面右側に位置する横孔1037は、扇形領域1303の切欠き部1031の上流側部分を横断するように半径方向に延びている。紙面左側に位置する横孔1037は、扇形領域1304の切欠き部1032の上流側部分を横断するように半径方向に延びている。一例として、横孔1037とy軸とのなす角度θは、5°~15°程度である。なお、横孔1037は、y軸上を真っ直ぐ延びていてもよい。
【0093】
(添加剤供給手段)
本実施の形態に係る微細気泡発生器1は、
図9に示すように、中心孔1030に挿入され、コマ部材1003の固定手段を兼ねる流体供給管1004をさらに備えている。流体供給管1004は、流体供給ノズル1005とともに添加剤供給手段を構成する。
【0094】
流体供給管1004は、ケーシング1002の底部1022および蓋部1023を貫通して上下方向に突出する。あるいは、底部1022および蓋部1023の一方のみを貫通してもよい。流体供給管1004の上端に、流体供給ノズル1005の一端が装着可能である。流体供給ノズル1005の他端には、開度を調整可能なバルブ(図示せず)が設けられている。バルブを開状態とすると、流体供給ノズル1005から流体供給管1004に流体が供給される(吸引される)。バルブを全閉状態とすると、流体供給ノズル1005から流体供給管1004への流体供給が阻止される。
【0095】
図14に示されるように、流体供給管1004は、たとえば、外周面にネジが切られた中空のボルトにより構成されている。流体供給管1004の長手方向中央部には、コマ部材1003の横孔1037に対応する位置に、貫通孔1041が設けられている。
【0096】
流体供給ノズル1005から気体(空気、酸素ガス等)を供給する場合、バルブを開状態とすることで、気体が流体供給管1004に吸引され、流体供給管1004の貫通孔1041から横孔1037を通過して隙間1011へと引き込まれる。これにより、切欠き部1031,1032内の旋回流に気体が連行され、水に供給(添加)される。流体供給ノズル1005から液体(添加剤)を供給する場合も同様である。微細気泡発生器1が「気体供給モード」で動作し、吸気方式を兼ねる場合、微細気泡発生器1は、酸素等を溶解した水を放出することができる。微細気泡発生器1が「気体供給モード」で動作する形態における流体供給ノズル1005および流体供給管1004が、水質浄化システムSYSの気体供給手段を構成する。
【0097】
図14に示したように流体供給管1004をボルトとすることで、次の手順で微細気泡発生器1を組み立てることができる。まず、流体供給管1004の下端部をケーシング1002の底部1022の貫通孔1220に通して仮固定し、流体供給管1004を中心孔1030に通すようにしてコマ部材1003(
図14において不図示)を円筒部1021の内部空間1020に挿入する。その状態で、蓋部1023の貫通孔1230に流体供給管1004の上端部を通すようにして、蓋部1023を円筒部1021の上端に装着する。最後に、ナット1042で締め付ける。これにより、コマ部材1003は、円筒部1021と同軸に位置決めされ、底部1022と蓋部1023とに上下方向に挟持される。コマ部材1003の上端面および下端面は、それぞれ蓋部1023の下面および底部1022の上面に面接触する。
【0098】
<微細気泡発生方法>
図11および
図12を参照しながら、微細気泡発生器1による微細気泡発生方法について説明する。
【0099】
図11および
図12(B)に示されるように、上流管91から導入路1024に導入された水は、コマ部材1003の上流側の円弧面に突き当たると、この円弧面に沿って幅方向(y軸方向)両側に位置する円弧状の隙間1011へと分岐し、流速が高速化する。隙間1011に流入した水は、遠心力によりさらに速度を上げて下流側へ流れる。隙間1011に流入した水が、切欠き部1031,1032の上流側端縁P1を過ぎると、遠心力を伴ったまま、切欠き部1031,1032内に引き込まれ、高速の旋回流を発生する。隙間1011から切欠き部1031,1032へと流路が急激に拡大することにより、切欠き部1031,1032内において負圧が生じ、キャビテーションによる微細気泡が発生する。
【0100】
隙間1011から切欠き部1031,1032内へと水が引き込まれる際、下流側端縁P2を含む先鋭部1036の内側面(下流側円弧面1332の端部)で水流を受けて、変形した円弧状凹面である内壁面1033に沿って水を流動させることにより、遠心力が生じる。したがって、切欠き部1031,1032の中心部付近を軸とする規則性のある、高速の旋回流が発生する。これにより、旋回流による気相分離を促進することができる。
【0101】
このように、本実施の形態によれば、コマ部材1003に切欠き部1031,1032を設けることにより、キャビテーションと、無動力の旋回流とにより、効率良く微細気泡を発生させることができる。
【0102】
ここで、内壁面1033の形状に関し、
図13(A)に示したように、上流側の円弧面1331の曲率半径が下流側の円弧面1332の曲率半径よりも小さいので、切欠き部1031,1032に引き込まれた水がすぐに放出路1025へと放出されることを抑制できる。そのため、本実施の形態によれば、切欠き部1031,1032内において効率的に高速の旋回流を発生させることができる。その結果、切欠き部1031,1032においてナノスケールの微細気泡を発生させることができる。
【0103】
なお、コマ部材1003の切欠き部1031,1032は、y軸に跨って配置されていてもよく、一部が上流側の扇形領域1301,1302の外周部に設けられていてもよい。また、切欠き部1031,1032の各内壁面が1つの円弧面により形成されていてもよいし、切欠き部1031,1032の内壁面を構成する2つの円弧面の曲率半径の大小が逆であってもよい。
【0104】
以上説明したように、本実施の形態に係る微細気泡発生器1は、x軸方向に延びる上流管91および下流管92の間に位置し、y軸方向に円弧状に膨出するケーシング1002と、ケーシング1002の内側面との間に、上流側から下流側に向かう水の高速流路となる隙間1011をあけて配置され、z軸方向に延びる円柱形状のコマ部材1003とを備えている。また、コマ部材1003は、x軸およびy軸で区画される4つの扇形領域1301~1304のうち、下流側に位置する2つの扇形領域1303,1304の外周部に、隙間1011を通過した水を引き込んで旋回流を発生させる切欠き部1031,1032を有している。
【0105】
本実施の形態によれば、ケーシング1002内に、ケーシング1002とは別体のコマ部材1003を収容するだけの簡易な構成で、効率良く微細気泡を発生させることができる。また、その結果、コマ部材1003の交換が容易になるので、様々な種類のコマ部材をケーシング1002に取り付けることができる。また、微細気泡発生器1のメンテナンスを容易に行うこともできる。
【0106】
なお、本実施の形態では、平面視におけるコマ部材1003の概略形状が真円形状である例を示したが、このような例に限定されず、たとえば楕円形状であってもよい。同様に、ケーシング1002の円筒部1021の平面形状が真円形状であることとしたが、たとえば楕円形状であってもよい。
【0107】
また、添加剤供給手段が必要ない形態においては、コマ部材1003に中心孔1030および横孔1037が設けられていなくてもよい。
【0108】
本実施の形態において、コマ部材1003は円柱形状であることが望ましいものの、z軸方向に延在する柱状の部材であればよい。たとえばコマ部材の平面形状が多角形形状であってもよい。この場合においても、旋回流を発生させる切欠き部が、y軸よりも下流側に位置する領域の外周部に設けられていればよい。なお、コマ部材が円柱形状ではない場合、たとえばy軸上の線分長さを、コマ部材の「直径(d1)」と読み替えてもよいし、多角形形状の場合、たとえば対角線の最大長さをコマ部材の「直径(d1)」と読み替えてもよい。
【0109】
すなわち、微細気泡発生器は、x軸方向に延びる上流管および下流管の間に位置し、x軸に交差するy軸方向に円弧状に膨出するケーシングと、ケーシングの内側面との間に、上流側から下流側に向かう水の高速流路となる隙間をあけて配置され、x軸およびy軸に交差するz軸方向に延びるコマ部材とを備え、コマ部材は、x軸およびy軸で区画される複数の領域のうち、下流側に位置する領域の外周部に、隙間を通過した水を引き込んで旋回流を発生させる切欠き部を有していればよい。
【0110】
<微細気泡発生装置の他の構成例>
微細気泡発生装置32は、気体の供給を必須としない場合、特願2022-055793号の出願明細書に記載の微細気泡発生器により構成されていてもよい。この微細気泡発生器の具体的な構成例1,2について、以下に説明する。
【0111】
(他の構成例1)
図15は、微細気泡発生器の他の構成例1を示す図であり、(A),(B)に、微細気泡発生器1Aの断面図および斜視図を示す。
【0112】
微細気泡発生器1Aは、その内部に上流側と下流側とを結ぶ流路形成空間2000を有するケーシング2011を、上流管91と下流管92との間に介在させることによって、容易に設置することができる。
【0113】
ケーシング2011は、水の流れ方向に沿って、上流側から下流側に向かって縮径する第1テーパ部2012と、上流側から下流側に向かって拡径する第2テーパ部2015を備えている。第2テーパ部2015は第1テーパ部2012よりも下流側に設けられ、第1テーパ部2012と第2テーパ部2015との間は、内径側へ向かって(流路の軸心側へ向かって)鈍角状に突出する稜線部2018となっている。稜線部2018は、軸心を通る任意の縦断面において、滑らかな円弧状である。この第1テーパ部2012、稜線部2018、及び、第2テーパ部2015によって、流路形成空間2000の内面を構成している。なお、流路形成空間2000の軸心方向両端部は、上流管91及び下流管92の各流路910,920の内面に連続する円筒面2016,2017となっている。
【0114】
この流路形成空間2000内に、内部部材2020が配置されている。この実施形態では、内部部材2020をケーシング2011とは別体の部材として成型した上で、その内部部材2020を、接着等の周知の手法でケーシング2011に一体に固定しているが、これを、ケーシング2011と一体の部材として成型してもよい。
【0115】
内部部材2020は、第1テーパ部2012及び第2テーパ部2015に対向して配置される上流側部材2030と、上流側部材2030よりも下流側に配置される下流側部材2040とを備えている。上流側部材2030は、第1テーパ部2012から第2テーパ部2015にかけて跨って対向配置されているが、下流側部材2040は、第2テーパ部2015のみに対向して配置されている。また、上流側部材2030と下流側部材2040とは連結部2035で連結されている。連結部2035は、第2テーパ部2015のみに対向して配置されている。
【0116】
上流側部材2030は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する上流側外周テーパ部2031と、その上流側外周テーパ部2031の裾部を閉じる下流側端面2033を備えた円錐状の部材である。上流側外周テーパ部2031の先端(上流側端部)2032は、先鋭な形状となっている。ただし、この先端2032の形状を滑らかな球面状としてもよい。この実施形態では、上流側外周テーパ部2031は、上流側部材2030の先端2032から下流側端面2033の外縁まで続く、単一勾配の円錐面(テーパ面)となっている。上流側外周テーパ部2031の上流寄りの部分は、それに対向する第1テーパ部2012との間で第1流路部2051を構成している。上流側外周テーパ部2031の下流寄りの部分は、それに対向する第2テーパ部2015との間で第2流路部2052を構成している。この実施形態では、第2テーパ部2015と第2流路部2052とは、その母線同士が互いに平行になるように設定されている。
【0117】
第1流路部2051は、流路の流れ方向に沿って徐々に縮径する第1テーパ部2012と、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する上流側外周テーパ部2031との間で、しだいに流路の断面積が縮小する形態となっている。また、第2流路部2052は、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する第2テーパ部2015と、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する上流側外周テーパ部2031との間で、流れ方向に沿ってやや流路の断面積が拡大する形態となっている。第2テーパ部2015の母線と上流側外周テーパ部2031の母線とは平行であるが、その間の流路を構成する空間の位置が、流れ方向に沿って徐々に外径側へ移動するからである。
【0118】
下流側部材2040は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部2043と、その下流側外周テーパ部2043の裾部を閉じる下流側端面2045、下流側外周テーパ部2043の上流側端部に設けられる上流側端面2042を備えた円錐台状の部材である。この実施形態では、下流側外周テーパ部2043は、下流側部材2040の上流側端から下流側端まで続く、単一勾配の円錐面(テーパ面)となっている。また、その下流側外周テーパ部2043の周方向に沿って、断続的に複数の保持部2044が設けられている。下流側外周テーパ部2043は、それに対向する第2テーパ部2015との間で第4流路部2054を構成している。第4流路部2054は、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する第2テーパ部2015と、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する下流側外周テーパ部2043との間で、流れ方向に沿ってやや流路の断面積が拡大する形態となっている。第2テーパ部2015の母線と下流側外周テーパ部2043の母線とは平行であるが、その間の流路を構成する空間の位置が、徐々に外径側へ移動するからである。ただし、第4流路部2054は、周方向に沿って断続的に設けられた複数の保持部2044によって、複数の流路部に分断されている。
【0119】
保持部2044は、
図15(A),(B)に示すように、流れ方向に沿って円弧状に伸びる側面2044aを対に備え、その側面2044a,2044a同士がつながる上流側端2044cが鋭角状に形状された舟形を成している。これにより、流体の流れを阻害しないようになっている。なお、この実施形態では、保持部2044の下流側端も鋭角状を成している。保持部2044の頂面2044bは第2テーパ部2015に当接して、下流側部材2040の軸心がケーシング2011の軸心に一致するように保持している。この実施形態では、保持部2044の頂面2044bと第2テーパ部2015とを接着固定している。
【0120】
第2流路部2052と第4流路部2054との間には、第2流路部2052及び第4流路部2054よりも流路の断面積が大きく、その断面の拡大により流路内に負圧を発生させる第3流路部2053を備えている。
【0121】
第3流路部2053は、上流側部材2030と下流側部材2040とを結ぶ連結部2035の外面2036と、第2テーパ部2015、上流側部材2030の下流側端面2033、及び、下流側部材2040の上流側端面2042との間に形成されている。連結部2035の外面2036は、上流側外周テーパ部2031及び下流側外周テーパ部2043よりも第2テーパ部2015から遠い位置にある。すなわち、連結部2035の外面2036は、上流側外周テーパ部2031及び下流側外周テーパ部2043よりも、流路の軸心に近い位置にある。このため、第2流路部2052から第3流路部2053に流体が流れ込む際に、第2流路部2052から第3流路部2053へと流路の断面積が急激に大きくなるので、その断面の拡大により流路内に負圧を発生させる。
【0122】
第3流路部2053における上流側部材2030の下流側端面2033と、上流側外周テーパ部2031の母線との成す角は鋭角であることが望ましい。流路が鋭角に屈曲することで負圧の発生状況がより顕著となる。また、この第1の実施形態では、上流側部材2030の下流側端面2033は、第2テーパ部2015から遠ざかるにつれて上流側に近づく傾斜面2034を備えた構成としているので、その鋭角をさらに小さくして(
図15(A)中の鋭角α参照)、キャビテーションの発生度合いを高めている。
【0123】
なお、この実施形態では、傾斜面2034を下流側端面2033の軸回り全周に設けているが、傾斜面2034を下流側端面2033の軸回り一部の方位にのみ設けてもよい。また、内部部材2020を構成する上流側部材2030、下流側部材2040及び連結部2035を一体の部材として成型したが、これらを別体の部材として成型し、それを互いに接続して一体化してもよい。
【0124】
(他の構成例2)
図16は、微細気泡発生器の他の構成例2を示す図であり、(A),(B)に、微細気泡発生器1Bの断面図および斜視図を示す。微細気泡発生器1Bの基本構成は、微細気泡発生器1Aの構成と同様であるので、微細気泡発生器1Aとの相違点のみ以下に説明する。
【0125】
微細気泡発生器1Bは、ケーシング2011と下流管92とが、フランジ2005,2006を介して接続されている。フランジ2005,2006間は面接触状態でボルト及びナット等で締め付け固定されている。また、フランジ2005,2006間にパッキンを配置しているので、内部の液密性が高められている。ケーシング2011と上流管91も、下流側と同様のフランジ接続としてもよい。
【0126】
内部部材2020の下流側部材2040は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部2043と、その下流側外周テーパ部2043の下流側に設けられた外周円筒面2046を備えた形態となっている。また、保持部2044は、その外周円筒面2046の周方向に沿って、断続的に複数設けられている。保持部2044がケーシング2011に設けられた周方向凹部2019に入り込むことで、下流側部材2040はケーシング2011に保持されている。
【0127】
第3流路部2053における上流側部材2030の下流側端面2033と、上流側外周テーパ部2031の母線との成す角は鋭角(
図16(A)中の鋭角β参照)となっている。なお、下流側端面2033に、微細気泡発生器1Aと同様に、下流側端面2033に傾斜面2034を設定することで、鋭角βをさらに小さな鋭角α(α<β)としてもよい。
【0128】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
10 濾過装置、11 ケーシング、12 流入部、13 流出部、14 循環用流出部、15 排水部、15c,33 バルブ、21 第1流路、22 第2流路、23 循環路、31 ポンプ、32 微細気泡発生装置、41 仕切壁、41a 開口、42 管部材、43 整流部材、44 濾過剤、51 前室、52 濾過室、53 連通路、SYS 水質浄化システム。