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特開2024-132565無線中継無人移動体および無線基地局
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132565
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】無線中継無人移動体および無線基地局
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/02 20090101AFI20240920BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20240920BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20240920BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W84/06
H04W16/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043386
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥富 忠相
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA41
5K067DD11
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】無線中継無人移動体の稼働数を、利用状況に応じて、適正な数に調整する。
【解決手段】無線信号を中継する通信部と、信号強度値を測定する信号強度測定部と、無線基地局に無線中継無人移動体の追加または削減を要請する要請信号を送信する要請部と、を備える。要請部は、無線中継無人移動体が無線基地局と直接通信している場合、基地局信号強度値が第1閾値よりも小さくなったとき、または中継先の中継信号強度値が第3閾値よりも小さくなったとき、無線中継無人移動体の追加を要請する要請信号を送信し、無線中継無人移動体が無線基地局と直接通信していない場合、基地局信号強度値が第2閾値以上になったとき、稼働中の他の無線中継無人移動体の削減を要請する要請信号を送信し、基地局信号強度値が第2閾値よりも小さく、かつ中継先の中継信号強度値が第3閾値よりも小さくなったとき、無線中継無人移動体の追加を要請する要請信号を送信する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を中継する通信部と、
前記通信部で受信した無線信号の信号強度値を測定する信号強度測定部と、
前記信号強度値に基づいて、無線基地局に無線中継無人移動体の追加または削減を要請する要請信号を送信する要請部と、を備え、
前記信号強度測定部は、前記通信部が前記無線基地局から受信した信号の基地局信号強度値と、稼働中の他の前記無線中継無人移動体から受信した信号の中継信号強度値とを測定し、
前記要請部は、
無線中継無人移動体が前記無線基地局と直接通信している場合、前記基地局信号強度値が第1閾値よりも小さくなったとき、または中継先の前記中継信号強度値が第3閾値よりも小さくなったとき、前記無線中継無人移動体の追加を要請する前記要請信号を送信し、
無線中継無人移動体が前記無線基地局と直接通信していない場合、前記基地局信号強度値が第2閾値以上になったとき、稼働中の他の前記無線中継無人移動体の削減を要請する前記要請信号を送信し、前記基地局信号強度値が第2閾値よりも小さく、かつ中継先の前記中継信号強度値が第3閾値よりも小さくなったとき、前記無線中継無人移動体の追加を要請する前記要請信号を送信する、
無線中継無人移動体。
【請求項2】
前記信号強度測定部は、
定期的に前記無線基地局から受信する存在確認の信号の信号強度を測定することで前記基地局信号強度値を求め、
定期的に、中継先の他の前記無線中継無人移動体に信号を送信し、受信した応答信号を測定することで前記中継信号強度値を求める、
請求項1に記載の無線中継無人移動体。
【請求項3】
前記要請部は、複数の他の前記無線中継無人移動体がある状態で、前記基地局信号強度値が前記第2閾値以上になった場合、自機と前記無線基地局との間を中継する全ての前記無線中継無人移動体の削減を要請する前記要請信号を送信する、
請求項1または2に記載の無線中継無人移動体。
【請求項4】
前記要請部は、
前記基地局信号強度値が前記第1閾値よりも小さい場合、自機と前記無線基地局との間を中継する前記無線中継無人移動体の追加を要請する前記要請信号を送信し、
中継先の前記中継信号強度値が前記第3閾値よりも小さい場合、前記中継先の前記無線中継無人移動体と自機との間を中継する前記無線中継無人移動体の追加を要請する前記要請信号を送信する、
請求項1または2に記載の無線中継無人移動体。
【請求項5】
無線信号を中継する通信部と、
前記通信部で受信した無線信号の信号強度値を測定する信号強度測定部と、
前記信号強度値に基づいて、無線基地局に無線中継無人移動体の追加または削減を要請する要請信号を送信する要請部と、を備えた無線中継無人移動体と通信する、
前記無線基地局であって、
無線信号を送受信する基地局通信部と、
前記基地局通信部が前記無線中継無人移動体から新たな前記無線中継無人移動体の追加を要請する前記要請信号を受信した場合に、新たな前記無線中継無人移動体の追加地点を決定して、新たな前記無線中継無人移動体に前記追加地点への配置の指示を出す指示部と、を備え、
前記指示部は、定期的に稼働中の前記無線中継無人移動体に存在確認の信号を送信し、いずれの前記無線中継無人移動体からも所定の期間に渡り応答信号が得られなかった場合に、新たな前記無線中継無人移動体の追加地点を決定して、新たな前記無線中継無人移動体に前記追加地点への配置の指示を出す、
無線基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線中継無人移動体および無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
無線基地局との無線通信の中継を行うロボットなどの無線中継無人移動体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、基地局側に複数の中継局を連結したロボットと、基地局との間で無線通信を行いつつ、管内でロボットを移動させる際に、ロボット側に送られてくる電波の受信強度が所定の値より小さくなると、その地点で連結していた基地局側の中継局を切り離し、基地局から送られる電波を切り離された中継局で中継して、ロボットに送る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3229476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、ロボットの移動過程で順次中継局を切り離していくため、無線信号の中継範囲を拡大(中継地点を増大)させることにのみ限定されている。そのため、上記特許文献1では、無線通信の利用状況に応じて中継範囲を狭めることができず、無線通信範囲に対して過剰な数の中継局を準備したり、通信状況が変化して一部の中継局が不要になっても、必要のない中継局を稼働し続けたりする必要が生じる。そのため、無線中継無人移動体の稼働数を、利用状況に応じて、適正な数に調整できるようにすることが望まれる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、無線中継無人移動体の稼働数を、利用状況に応じて、適正な数に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る無線中継無人移動体は、無線信号を中継する通信部と、前記通信部で受信した無線信号の信号強度値を測定する信号強度測定部と、前記信号強度値に基づいて、無線基地局に無線中継無人移動体の追加または削減を要請する要請信号を送信する要請部と、を備え、前記信号強度測定部は、前記通信部が前記無線基地局から受信した信号の基地局信号強度値と、稼働中の他の前記無線中継無人移動体から受信した信号の中継信号強度値とを測定し、前記要請部は、無線中継無人移動体が前記無線基地局と直接通信している場合、前記基地局信号強度値が第1閾値よりも小さくなったとき、または中継先の前記中継信号強度値が第3閾値よりも小さくなったとき、前記無線中継無人移動体の追加を要請する前記要請信号を送信し、無線中継無人移動体が前記無線基地局と直接通信していない場合、前記基地局信号強度値が第2閾値以上になったとき、稼働中の他の前記無線中継無人移動体の削減を要請する前記要請信号を送信し、前記基地局信号強度値が第2閾値よりも小さく、かつ中継先の前記中継信号強度値が第3閾値よりも小さくなったとき、前記無線中継無人移動体の追加を要請する前記要請信号を送信する。
【0008】
本発明に係る無線基地局は、無線信号を中継する通信部と、前記通信部で受信した無線信号の信号強度値を測定する信号強度測定部と、前記信号強度値に基づいて、無線基地局に無線中継無人移動体の追加または削減を要請する要請信号を送信する要請部と、を備えた無線中継無人移動体と通信する、前記無線基地局であって、無線信号を送受信する基地局通信部と、前記基地局通信部が前記無線中継無人移動体から新たな前記無線中継無人移動体の追加を要請する前記要請信号を受信した場合に、新たな前記無線中継無人移動体の追加地点を決定して、新たな前記無線中継無人移動体に前記追加地点への配置の指示を出す指示部と、を備え、前記指示部は、定期的に稼働中の前記無線中継無人移動体に存在確認の信号を送信し、いずれの前記無線中継無人移動体からも所定の期間に渡り応答信号が得られなかった場合に、新たな前記無線中継無人移動体の追加地点を決定して、新たな前記無線中継無人移動体に前記追加地点への配置の指示を出す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無線中継無人移動体の稼働数を、利用状況に応じて、適正な数に調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る無線中継ドローンを備えた通信システムを表すブロック図である。
図2図2は、無線中継ドローンおよび無線基地局により構築される無線通信エリアの例を示した模式図である。
図3図3は、無線中継ドローンの追加地点の決定方法の説明図。
図4図4は、ドローンの増減判断処理を説明するフローチャートである。
図5図5は、無線中継ドローンの追加要請の例示的なケース1を示した説明図である。
図6図6は、無線中継ドローンの追加要請の例示的なケース2を示した説明図である。
図7図7は、無線中継ドローンの削減要請の例示的なケースを示した説明図である。
図8図8は、通信システムの動作の流れを示すシーケンス図である。
図9図9は、第2実施形態の通信システムの動作の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る無線中継無人移動体および無線基地局の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
[第1実施形態]
<通信システムの概要>
図1は、第1実施形態に係る通信システムCSを表すブロック図である。第1実施形態の無線中継ドローン(無線中継無人移動体)10および無線基地局20は、無線通信端末などによる無線通信可能な無線通信エリアを構築する通信システムCSを構成する。
【0013】
通信システムCSは、たとえば、無線通信エリアが構築されていない場所に対して、当該場所で行われる作業等のために、一時的に無線通信エリアを構築する用途に用いられる。その場合、通信システムCSは、無線通信エリアを構築したい場所に無線基地局20を配置することにより、限定された範囲の無線通信エリアを構築する。しかし、設置環境や作業内容などに起因して、無線通信エリアの全ての位置で十分な信号強度が得られるとは限らない。そこで、通信システムCSは、無線通信エリア内で信号強度が低い場所があったり、局所的な通信障害が発生したりした場合などに、1または複数の無線中継ドローン10を配置することで、必要な場所で十分な信号強度が確保できるようにする。まず、無線中継ドローン10および無線基地局20の構成を説明する。
【0014】
<無線中継ドローン(無線中継無人移動体)の構成>
図1に示すように、無線中継ドローン(無線中継無人移動体)10は、通信部12と、信号強度測定部13と、要請部14と、を含むドローン本体(移動体本体)11を備える。
【0015】
ドローン本体11は、無人航空機である。ドローン本体11は、空中を飛翔して移動すること、および、空中での位置を保持すること(ホバリング)ができる。ドローン本体11は、飛翔することにより無線中継器(通信部12)を中継地点に配置する装置である。
【0016】
通信部12は、無線信号を中継する。つまり、通信部12は、他の無線通信機器(無線基地局20、他の無線中継ドローン10、無線通信端末など)からの無線信号を受信して、受信した無線信号を送信できる。通信部12は、それぞれ無線通信モジュールからなるデータ受信部12aとデータ送信部12bとを有する。また、中継以外の機能として、データ受信部12aは、無線基地局20から自機への指示を受信し、データ送信部12bは、自機が取得した各種データを無線で、無線基地局20に送信する。
【0017】
信号強度測定部13は、通信部12で受信した無線信号の信号強度値を測定する。
【0018】
要請部14は、信号強度値に基づいて、無線基地局20に無線中継ドローン10の追加または削減を要請する要請信号を送信する機能を有する。要請部14は、通信部12により、要請信号の送信を行う。要請部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算回路と、メモリを含んで構成される。メモリは、たとえばフラッシュメモリなどの不揮発性半導体記憶装置である。
【0019】
また、ドローン本体11は、さらに、近接検知センサ15、高度センサ16、カメラ17、位置情報取得部18、および、マイク/スピーカー19を備える。近接検知センサ15は、ドローン本体11の飛行時に障害となる物体までの距離を検出する。高度センサ16は、ドローン本体11の高度を検出する。カメラ17は、中継地点の状況を撮影する。位置情報取得部18は、ドローン本体11の位置情報を取得する。位置情報取得部18は、例えばGPS(Global Positioning System)などの測位システムを利用して位置情報を取得する。マイク/スピーカー19は、中継地点の音声を収集したり、必要な場合に警告音声などを鳴らしたりする。
【0020】
<無線基地局>
無線基地局20は、無線ルーター(基地局通信部)21と、ドローン監視装置(指示部)22と、を含む。
【0021】
無線ルーター21は、無線信号を送受信する。無線ルーター21は、複数の無線通信機器を相互接続したり無線通信端末を他のネットワークに接続したりする無線機である。無線ルーター21は、無線中継ドローン10を中継器として利用する。
【0022】
無線ルーター21の通信方式は、特に限定されない。通信方式は、たとえば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11規格に準拠した無線LAN通信である。通信方式は、たとえば、ローカル5Gなどでもよい。
【0023】
ドローン監視装置22は、無線ルーター21を介して無線中継ドローン10と通信し、稼働中の無線中継ドローン10の状態を監視する。ドローン監視装置22は、待機中の無線中継ドローン10を中継地点へ移動させて中継処理を実行させる指示や、稼働中の無線中継ドローン10に待機場所へ帰投させる指示を出す機能を有する。
【0024】
第1実施形態では、ドローン監視装置22は、無線ルーター21が要請信号を受信した場合に、新たな無線中継ドローン10の追加地点を決定して、新たな無線中継ドローン10に追加地点への配置の指示を出す。
【0025】
ドローン監視装置22は、データ受信部31、画像解析部32、判定部33、表示部34、データ送信部35、データ入力部36、センサデータ記憶部37、映像データ記憶部38、判定データ記憶部39、位置記憶部40、および送信データ記憶部41を備える。
【0026】
データ受信部31は、無線ルーター21を介して無線中継ドローン10から各種データを受信する。データ受信部31は、受信したデータを対応する記憶部に格納する。データ受信部31は、無線通信モジュールからなる。なお、稼働中の無線中継ドローン10には、ドローンID(識別子)が付与され、各種データは、当該データの送信元または受信先のドローンIDにより区別可能に格納される。
【0027】
判定部33は、無線基地局20から無線中継ドローン10まで距離と信号強度とに基づいて障害レベル(通信障害の程度)を判定する。判定の内容は後述する。判定部33は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算回路によって構成される。
【0028】
表示部34は、各無線中継ドローン10の状態、受信データ、障害レベル判定内容などを表示する。表示部34は、液晶表示デバイスなどで構成される。データ送信部35は、無線通信モジュールを含み、無線ルーター21を介して無線中継ドローン10に対する各種指示を送信する。例えば、データ送信部35は、中継地点への移動および中継開始の指示、障害レベルに対応した対応指示、または帰投指示などを、無線中継ドローン10に送信できる。データ入力部36は、中継地点の位置指定、作業終了時のドローン帰投指示などの操作入力を受け付ける。データ入力部36は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力デバイスを含む。
【0029】
センサデータ記憶部37は、各センサデータを記憶する。映像データ記憶部38は、映像データを記憶する。判定データ記憶部39は、障害レベルの判定結果を記憶する。位置記憶部40は、無線中継ドローン10の位置情報を記憶する。送信データ記憶部41は、ドローン本体11への送信内容を記憶する。これらのセンサデータ記憶部37、映像データ記憶部38、判定データ記憶部39、位置記憶部40、送信データ記憶部41は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)などの不揮発性記憶装置である。
【0030】
<無線通信エリア構築の具体例>
図2は、無線中継ドローン10および無線基地局20により無線通信エリアを構築する例である。
【0031】
図2は、無線通信エリアを構築する場所が工場などの、機械などが設置されている屋内とした例である。通信システムCSは、一例として、工場内で工事などの作業が行われる場合に、作業に利用するための無線通信エリアを工場内に簡易的に構築(仮設)する。工場の内部では、機械から発生するノイズ、作業のために搬入される資機材(遮蔽物)などで無線通信の信号強度が低下する箇所(障害エリア)が発生する。ここでは、工場内に障害エリアがランダムに発生するものとする。無線基地局20において無線ルーター21の初期設置およびドローン監視装置22の操作は、オペレーター50によって行われる。
【0032】
無線中継ドローン10を配置する場合、最初に、オペレーター50によりドローン監視装置22が操作され、通信システムCSに対して、中継地点が指示される。例えば図2の地点60-1、地点60-2などが中継地点として指定される。
【0033】
無線中継ドローン10は、指定された中継地点の付近まで飛行し、無線基地局20との基地局信号強度値を測定する。
【0034】
無線中継ドローン10が行う無線信号の中継には、自機と無線基地局20との通信と、自機と他の無線中継ドローン10との通信と、が含まれる。そのため、信号強度測定部13は、通信部12が無線基地局20から受信した信号の基地局信号強度値と、稼働中の他の無線中継ドローン10から受信した信号の中継信号強度値と、を測定する。
【0035】
具体的には、信号強度測定部13は、定期的に無線基地局20から受信する存在確認の信号の信号強度を測定することで基地局信号強度値を求める。また、信号強度測定部13は、定期的に、中継先の他の無線中継ドローン10に信号を送信し、受信した応答信号を測定することで中継信号強度値を求める。
【0036】
無線中継ドローン10は、基地局信号強度値、中継信号強度値、位置情報を含む各種測定結果を無線基地局20に送信する。無線基地局20のドローン監視装置22は、受信した情報に基づいて、下記の表1に従って、障害レベルを判定する。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示すように、第1実施形態では、信号強度値(基地局信号強度値、中継信号強度値)は、「1~4」および「なし」の5段階とし、数値が大きいほど信号強度が高いことを表す。「なし」は、無線信号が受信できなかったことを示す。無線基地局20が、無線中継ドローン10から定期的に送信される各種情報を、所定の期間以上に渡り受信できなかった場合に、信号強度値が例外的に「なし」に分類される。また、ドローン監視装置22は、受信した位置情報に基づいて、判定対象となる無線中継ドローン10の無線基地局20からの距離を「近」、「中」、「遠」の3段階に分類する。表1での障害レベルの判定内容は、運用しながら見直しを行い、より最適なものに変更してもよい。
【0039】
障害レベルは、「0~5」の6段階に分類される。ドローン監視装置22は、障害レベルの判定結果に応じた対応指示を無線中継ドローン10に送信する。
【0040】
無線中継ドローン10は、下記の表2に示すように、受信した障害レベルに対応したドローンモードで動作するように構成されている。後述するが、無線中継ドローン10は、各ドローンモードの動作で実行するドローン増減判断処理において、信号強度値に基づいて、他の無線中継ドローン10を追加または削減の要請を行うか否かを判断する。
【0041】
【表2】
【0042】
障害レベルが「0」の場合、無線中継ドローン10は、待受モードで動作する。待受モードは、通信障害が発生していないため特段の対応をせず、中継地点にて無線中継を継続するモードである。
【0043】
障害レベルが「1」または「2」の場合、無線中継ドローン10は単体対応モードで動作する。単体対応モードでは、無線中継ドローン10は、各方向に所定の距離を移動して信号強度の改善を試みる。この際、無線中継ドローン10(信号強度測定部13)は、無線信号の中継地点を含む所定範囲内の複数箇所における信号強度値をそれぞれ取得する。無線中継ドローン10(要請部14)は、複数箇所の信号強度値の差異から、通信障害が発生している障害エリアの方向を特定する。
【0044】
障害レベルが「3」の場合、無線中継ドローン10は連携対応モードで動作する。連携対応モードでは、後述するドローン増減判断処理の結果、稼働中の無線中継ドローン10の要請部14から、ドローン追加の要請信号が送信される。要請部14は、無線中継ドローン10の追加を要請する要請信号を送信する場合に、通信障害が発生している障害エリアの方向を無線基地局20に送信する。
【0045】
ドローン監視装置22は、追加の要請信号と、障害エリアの方向とに基づいて、追加地点を決定し、追加の無線中継ドローン10に追加地点へ移動する指示を行う。追加された無線中継ドローン10においても基地局信号強度値、中継信号強度値、位置情報を含む各種測定結果を無線基地局20に送信し、受信した障害レベルに対応したドローンモードで動作するように構成されている。
【0046】
図3は、無線中継ドローン10の追加地点の決定方法の説明図である。追加地点は、平面視(水平面内)において、無線基地局20と、要請信号を送信した無線中継ドローン(例えば10-2)とを結んだ直線70の中点から垂線方向(つまり、垂直二等分線71上)に所定距離だけ離れた地点とする。図3において、直線70の垂線方向の地点には、K1側とK2側との2通りがある。要請部14により送信される障害エリアの方向は、K1側とK2側とのどちら側に障害エリアが存在するかを示す情報である。追加地点は、障害エリアの方向とは反対側に指定される。なお、追加地点の、直線70からの所定距離は、予め決められた設定値であるが、設置場所(建物)の広さに応じて変更可能である。
【0047】
なお、無線中継ドローン10が連携対応モードの前に単体対応モードで動作していた場合、障害エリアの方向が特定済みであるため、要請部14は、追加の要請信号と、特定済みの障害エリアの方向とを無線基地局20に送信する。無線中継ドローン10は、要請時に障害エリアの方向が特定されていない場合には、複数箇所における信号強度値をそれぞれ取得して、通信障害のある方向を特定する動作を行う。
【0048】
障害レベルが「4」の場合、無線中継ドローン10は連携対応モード(2)で動作する。障害レベル4は、例えば、障害レベル3で追加の無線中継ドローン10が投入されたにも関わらず、通信状況が改善しないケースが該当する。連携対応モード(2)では、ドローン増減判断処理の結果、更なる追加の無線中継ドローン10が投入される。
【0049】
図2では、無線中継ドローン10-2と無線基地局20との間の通信障害(基地局信号強度値の低下)により追加要請がなされ、2機の無線中継ドローン10-3、10-4が投入されるケースを示している。この他に、互いに中継相手となる2機の無線中継ドローン10(例えば10-2と10-3と)の間で通信障害(中継信号強度値の低下)が発生する場合もある。その場合には、2機の無線中継ドローン10-2と10-3との間に、追加の無線中継ドローン10が投入されうる。
【0050】
障害レベル「5」では、無線中継ドローン10は異常検知モードで動作する。異常検知モードでは、無線中継ドローン10は、マイク/スピーカー19(図1参照)により警告音を出力する。ドローン監視装置22は、表示部34(図1参照)にて警告表示を出力する。オペレーター50は、ドローン監視装置22で映像を確認するなどした上、中継地点で復旧等の対応ができる。オペレーター50は、警告音によって無線中継ドローン10を容易に発見できる。
【0051】
典型的には、障害レベルは段階的に上昇していくと考えられる。ところが、何らかの要因で、突然通信不能になるケースも考えられる。この場合、無線中継ドローン10からの追加の要請信号が無線基地局20に到達しない可能性がある。そこで、ドローン監視装置22は、定期的に稼働中の無線中継ドローン10に存在確認の信号を送信し、いずれの無線中継ドローン10からも所定の期間に渡り応答信号が得られなかった場合に、新たな無線中継ドローン10の追加地点を決定して、新たな無線中継ドローン10に追加地点への配置の指示を出す。その結果、無線中継ドローン10からの要請信号が無線基地局20に到達しないケースでも、追加の無線中継ドローン10の投入が可能となる。
【0052】
<通信障害の解消>
通信障害が解消した場合、ドローン増減判断処理の結果、いずれかの無線中継ドローン10から、ドローンの削減を要請する要請信号が送信される。
【0053】
ドローン監視装置22は、削減の要請信号を受信すると、削減対象となる無線中継ドローン10に対して帰投指示を送信する。帰投指示を受信した無線中継ドローン10は、待機場所に帰投する。
【0054】
<ドローンの増減判断処理>
図4は、ドローンの増減判断処理を説明するフローチャートである。図5図7は、フローチャートに沿った無線中継ドローン10の追加要請、削減要請の例示的なケースを示した説明図である。図4図7を参照して、ドローンの増減判断処理を説明する。図4の増減判断処理は、無線中継ドローン10の要請部14(図1参照)が実行する。以下の説明では、N台の無線中継ドローン10が配置され、無線中継ドローン10それぞれのドローンIDには、1、~X、X+1、~Nの順番で番号が付与されている。ドローンIDが「1」の無線中継ドローン10が無線通信端末と無線通信し、隣接する番号のドローンIDを持つ無線中継ドローン10の間で無線信号が順次中継されて行き、ドローンIDが「N」の無線中継ドローン10が無線基地局20と無線通信をしているとする。
【0055】
増減判断する無線中継ドローン10の要請部14は、ステップS10において、ある中継地点に対して、最後に追加されたドローンかどうかを判定する。無線中継ドローン10の要請部14は、自機が最後に追加されたドローンであれば、現状維持または追加要請を選択する処理を実行し、最後に追加されたドローンでなければ、現状維持または帰投要請を選択する処理を実行する。具体的には、自機のドローンIDが「N」である(最後に追加、ステップS10:Yes)場合、処理がステップS11に進み、自機のドローンIDが「N以外」である(最後に追加でない、ステップS10:No)場合、処理がステップS15に進む。
【0056】
<無線基地局と直接通信しているドローン>
ドローンIDが「N」の無線中継ドローン10は、無線基地局20と直接通信している。要請部14は、ドローンIDが「N」の場合、ステップS11において、基地局信号強度値が第1閾値以上か否かを判定する。例えば、信号強度値の第1閾値は、「3」(表1参照)である。要請部14は、基地局信号強度値が第1閾値よりも小さい場合(ステップS11:No)、ステップS12において、自機(ドローンID=N)と無線基地局20との間を中継する無線中継ドローン10の追加を要請する要請信号を送信する。ステップS12の後、ステップS13に進む。
【0057】
例えば、図5に示すように、通信障害により、地点60-2に対して配置された無線中継ドローン10-2の基地局信号強度値が第1閾値よりも小さくなる場合、無線中継ドローン10-2の要請部14は、ステップS12で追加の要請信号を無線基地局20に送信する。その結果、無線中継ドローン10と無線基地局20との間の通信を中継する追加の無線中継ドローン10(点線参照)が投入される。
【0058】
要請部14は、ステップS11で基地局信号強度値が第1閾値以上である場合(ステップS11:Yes)、ステップS13において、中継先(ドローンID=Nの無線中継ドローン10に対する中継先は、ドローンID=N-1の無線中継ドローン10であり、ドローンID=Xの無線中継ドローン10に対する中継先は、ドローンID=X-1の無線中継ドローン10であり、ドローンID=1の無線中継ドローン10に対する中継先は、無線通信端末とする)からの中継信号強度値が第3閾値以上か否かを判定する。第3閾値は、第1閾値と同じ値であっても、異なる値であってもよく、第1実施形態では、信号強度値の第3閾値は、第1閾値と同じ「3」(表1参照)である。要請部14は、中継信号強度値が第3閾値よりも小さい場合(ステップS13:No)、ステップS14において、中継先の無線中継ドローン10(N-1)と自機(N)との間を中継する無線中継ドローン10の追加を要請する要請信号を送信する。これは、中継相手となる2機の無線中継ドローン10の間で通信障害が発生したケースを想定している。
【0059】
すなわち、図6に示すように、無線中継ドローン10-2に対して無線中継ドローン10-3が追加されている状況を仮定する。無線中継ドローン10-2と無線中継ドローン10-3との間の中継信号強度値が第3閾値よりも小さくなる場合、無線中継ドローン10-3の要請部14は、追加の要請信号を無線基地局20に送信する。その結果、無線中継ドローン10-2と無線中継ドローン10-3との間を中継する追加地点(点線部参照)に、追加の無線中継ドローン10が投入されることになる。
【0060】
なお、要請部14は、図4のステップS13において、中継先(ドローンID=N-1)からの中継信号強度値が第3閾値以上である場合(ステップS13:Yes)、処理を終了して現状維持する。
【0061】
<無線基地局と直接通信しているドローン以外>
ドローンIDが「N」以外の無線中継ドローン10は、無線基地局20と直接通信していない。要請部14は、ステップS10でドローンIDが「N」以外(ドローンID=X)の場合(ステップS10:No)、ステップS15において、基地局信号強度値が第2閾値以上か否かを判定する。第2閾値は、第1閾値以上の値であるが、第1実施形態では、信号強度値の第2閾値は、第1閾値と同じ「3」(表1参照)である。
【0062】
要請部14は、基地局信号強度値が第2閾値以上である場合(ステップS15:Yes)、ステップS16において、ドローンの削減を要請する要請信号を送信する。すなわち、要請部14は、複数の他の無線中継ドローン10がある状態で、基地局信号強度値が第2閾値(「3」)以上になった場合、自機と無線基地局20との間を中継する全ての無線中継ドローン10の削減を要請する要請信号を送信する。これは、通信障害がなくなり、追加ドローンによる中継が不要となったケースである。
【0063】
例えば図7に示すように、無線中継ドローン10-2に対して、無線中継ドローン10-3、無線中継ドローン10-5が追加されている状況を仮定する。無線中継ドローン10-2の要請部14は、無線中継ドローン10-2の基地局信号強度値が第2閾値以上となる場合、削減の要請信号を無線基地局20に送信する。その結果、無線中継ドローン10-3および無線中継ドローン10-5が待機場所に帰還する。
【0064】
なお、要請部14は、図4のステップS15において、基地局信号強度値が第2閾値未満である場合(ステップS15:No)、ステップS13に進む。これは、自機と無線基地局20との間の通信障害が継続していてまだ中継が必要なケースである。ドローンID=Xの無線中継ドローン10に対するステップS13とステップS14の処理は、ドローンID=Nの無線中継ドローン10の処理と同様であるが、中継先ドローンはドローンID=X-1の無線中継ドローン10を対象とする。
【0065】
<無線中継ドローンの中継例>
次に、図2を参照して、無線中継ドローンの中継例を説明する。
【0066】
<障害がない場合>
まず、障害がないケースの説明を行う。例えば、地点60-1に中継地点を設置する。オペレーター50によりドローン監視装置22が操作されて、地点60-1が指示される。無線中継ドローン10-1は、指定場所(地点60-1)まで飛行し、無線基地局20との基地局信号強度値を測定する。無線中継ドローン10-1は、基地局信号強度値、位置情報を含む各種測定結果を無線基地局20に送信する。
【0067】
ドローン監視装置22(判定部33)は、本実施形態の場合、地点60-1での信号強度値が「4」(表1参照)であるため、障害レベル0と判定する。ドローン監視装置22は、障害レベルの判定結果に応じた対応指示を無線中継ドローン10-1に送信する。無線中継ドローン10-1は、待受モード(表2参照)で動作し、地点60-1にて滞空または着陸して、無線中継を継続する。
【0068】
<障害がある場合>
次に、障害があるケースの説明を行う。例えば、地点60-2に中継地点を設置する。オペレーター50がドローン監視装置22を操作して、地点60-2に場所を指示する。無線中継ドローン10-2は指定場所(地点60-2)まで飛行し、無線基地局20との基地局信号強度値を測定する。このとき、無線中継ドローン10-2と無線基地局20との間の地点60-3にノイズ源が存在し、基地局信号強度値が2(表1参照)であったとする。
【0069】
無線中継ドローン10-2は、連携対応モード(表2参照)で動作する。無線中継ドローン10-2は、ドローン増減判定処理(図4参照)の結果、ドローン追加の要請信号を無線基地局20に送る。その結果、無線中継ドローン10-3が追加される。
【0070】
無線中継ドローン10-3を追加したが、地点60-4においてノイズ源が発生したとする。その場合、無線中継ドローン10-3は、ドローン増減判定処理(図4参照)の結果、ドローン追加の要請信号を無線基地局20に送る。その結果、無線中継ドローン10-4が追加される。
【0071】
<通信システムの動作の流れ>
図8は、通信システムCSの一連の動作の流れを示すシーケンス図である。図8を参照して、第1実施形態の通信システムCSの動作を説明する。
【0072】
まず、ドローン監視装置22は、オペレーター50(図2参照)から最初の無線中継ドローン10の中継地点の入力を受け付ける(ステップS20)。ドローン監視装置22は、最初の無線中継ドローン10に中継地点の配置指示を出力する。
【0073】
無線中継ドローン10は、指定された中継地点に飛行して、信号強度値など各種データを測定して、無線基地局20に送信する(ステップS21)。
【0074】
無線基地局20は、受信したデータをセンサデータ記憶部37、映像データ記憶部38、位置記憶部40のそれぞれに格納し、判定部33により障害レベルを判定(表1参照)し、障害レベルに応じた対応指示を無線中継ドローン10に送信する(ステップS22)。
【0075】
無線中継ドローン10は、障害レベルからドローンモードを判定(表2参照)し、各ドローンモードでの処理を実施する(ステップS23)。この処理において、無線中継ドローン10(要請部14)は、図4のドローンの増減判断処理を行う(ステップS24)。無線中継ドローン10(要請部14)は、判定された追加要請または削減要請、障害エリア方向などを、無線基地局20に送信する。
【0076】
<無線中継ドローンを追加する場合>
無線基地局20は、追加の要請信号を受信した場合、追加する無線中継ドローン10(追加)に追加地点を送信する(ステップS25)。追加地点を受信した追加される無線中継ドローン10(追加)は、指定された追加地点に飛行して、信号強度値など各種データを、無線基地局20に送信する(ステップS26)。無線基地局20は、障害レベルを判定(表1参照)し、無線中継ドローン10に送信する(ステップS27)。以降、無線中継ドローン10(追加)は、障害レベル対応指示に応じてステップS23及びステップS24と同様の処理を実行し、さらに無線中継ドローン10の追加が必要と判断されれば、ステップS26及びステップS27が実行され、通信端末と無線基地局20とが障害なく通信できるようになるまで繰り返される。
【0077】
<無線中継ドローンを削減する場合>
無線中継ドローン10は、図示しないが、無線基地局20から受信する信号の基地局信号強度値を定期的に測定しており、基地局信号強度値が第2閾値以上になったと判定した場合(ステップS15:Yes)、ドローンの削減を要請する要請信号を無線基地局20に送信する(ステップS16)。無線基地局20は、削減の要請信号を受信した場合、要請を受けた無線中継ドローン10(追加)に帰投指示を送信する(ステップS28)。無線基地局20は、帰投指示をした無線中継ドローン10と無線基地局20の間に、さらに追加の無線中継ドローン10(ドローンIDの番号が、帰投指示をした無線中継ドローン10のドローンIDよりも大きい無線中継ドローン10)が投入されていた場合、それら追加ドローンすべてに対して帰投指示を送信する。
【0078】
通信システムCSは、中継作業が終了するまで、稼働中の各無線中継ドローン10について、上記の各ステップを繰り返す(ステップS29)。各無線中継ドローン10は、定期的に、信号強度値など各種データを、無線基地局20に送信する。信号強度値に更新があった場合、無線基地局20は障害レベルを再判定して各無線中継ドローン10に送信する。受信した無線中継ドローン10は、障害レベルにしたがった処理を行う。これにより、無線中継ドローン10の追加と削除を適宜繰り返して、通信端末と無線基地局20との通信経路が確保される。
【0079】
<中継作業の終了>
無線基地局20は、通信システムCSの中継作業が終了と判断したオペレーター50からドローン監視装置22に入力された操作を検出する。無線基地局20は、検出したオペレーター50の操作に基づいて、全ての無線中継ドローン10に帰投指示を送信する(ステップS30)。
【0080】
各無線中継ドローン10は、帰投指示を受信すると、所定の待機場所まで帰投する(ステップS31、ステップS32)。各無線中継ドローン10は、待機場所に着陸すると、無線基地局20に帰投報告を送信する。
【0081】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態の無線中継ドローン(無線中継無人移動体)は、無線信号を中継する通信部12と、通信部12で受信した無線信号の信号強度値を測定する信号強度測定部13と、信号強度値に基づいて、無線基地局20に無線中継ドローン10の追加または削減を要請する要請信号を送信する要請部14と、を備え、信号強度測定部13は、通信部12が無線基地局20から受信した信号の基地局信号強度値と、稼働中の他の無線中継ドローン10から受信した信号の中継信号強度値とを測定し、要請部14は、無線中継ドローン10が無線基地局20と直接通信している場合、基地局信号強度値が第1閾値よりも小さくなったとき、または中継先の中継信号強度値が第3閾値よりも小さくなったとき、無線中継ドローン10の追加を要請する要請信号を送信し、無線中継ドローン10が無線基地局20と直接通信していない場合、基地局信号強度値が第2閾値以上になったとき、稼働中の他の無線中継ドローン10の削減を要請する要請信号を送信し、基地局信号強度値が第2閾値よりも小さく、かつ中継先の中継信号強度値が第3閾値よりも小さくなったとき、無線中継ドローン10の追加を要請する要請信号を送信する。
【0082】
そのため、中継地点において、基地局信号強度値、または中継先の中継信号強度値が小さくなった場合、追加の無線中継ドローン10が投入されることで安定した無線通信を可能としつつ、中継地点において基地局信号強度値が大きくなった場合には、削減の要請信号によって稼働中の無線中継ドローン10の数を減らすことができる。その結果、安定した無線通信が維持可能な範囲内で、無線中継ドローン10の稼働数を、利用状況に応じて、適正な数に調整できる。
【0083】
なお、図2では便宜的に、平面視で長方形の屋内に通信エリアを構築する例を示したが、屋内空間がL字状やU字状などに曲がった複雑形状であったり、屋内空間が様々な障害物によって区画されていたりする場合などがありうる。その場合に、安定した通信エリアを構築するためには、通常、多数の中継器が必要となる。第1実施形態では、通信エリアの構築環境が複雑な構造の場合でも、無線中継ドローン10を投入/削減することによって、障害エリアに柔軟に対応できつつ必要最小限の稼働数で運用可能な、適応的な通信エリア構築が実現できる。
【0084】
第1実施形態の無線中継ドローン(無線中継無人移動体)では、信号強度測定部13は、定期的に無線基地局20から受信する存在確認の信号の信号強度を測定することで基地局信号強度値を求め、定期的に、中継先の他の無線中継ドローン10に信号を送信し、その応答信号を測定することで中継信号強度値を求める。これにより、基地局信号強度値および中継信号強度値を定期的に取得、更新できる。その結果、突発的な通信障害が発生したり解消したりする場合でも、通信障害状況の変化に適切に対応できる。
【0085】
第1実施形態の無線中継ドローン(無線中継無人移動体)では、要請部14は、複数の他の無線中継ドローン10がある状態で、基地局信号強度値が第2閾値よりも大きくなった場合、自機と無線基地局20との間を中継する全ての無線中継ドローン10の削減を要請する要請信号を送信する。これにより、通信障害が解消または緩和した場合に、自機と無線基地局20との間を中継するために投入された全ての無線中継ドローン10が削減されるので、通信状況に応じて過剰な無線中継ドローン10の稼働数を効果的に削減できる。
【0086】
第1実施形態の無線中継ドローン(無線中継無人移動体)では、要請部14は、基地局信号強度値が第1閾値よりも小さい場合、自機と無線基地局20との間を中継する無線中継ドローン10の追加を要請する要請信号を送信し、中継先の中継信号強度値が第3閾値よりも小さい場合、中継先の無線中継ドローン10と自機との間を中継する無線中継ドローン10の追加を要請する要請信号を送信する。これにより、自機と無線基地局20との間だけでなく、自機と中継先の無線中継ドローン10との間にも、通信障害の状況に応じて追加の無線中継ドローン10を投入できる。そのため、通信障害に対しても安定した無線通信エリアを構築および維持できる。
【0087】
第1実施形態の無線中継ドローン(無線中継無人移動体)では、信号強度測定部13は、無線信号の中継地点を含む所定範囲内の複数箇所における信号強度値をそれぞれ取得し、要請部14は、無線中継ドローン10の追加を要請する要請信号を送信する場合に、複数箇所で取得された複数の信号強度値と位置情報とに基づいて、通信障害が発生している障害エリアの方向を無線基地局20に送信する。これにより、障害エリアの方向を避けるように無線中継ドローン10の追加地点を決定できる。その結果、通信障害が発生した場合にも、より少ない無線中継ドローン10の稼働数で効率的に無線通信を維持できる。
【0088】
第1実施形態の無線中継ドローン(無線中継無人移動体)では、ドローン本体(移動体本体)11は、無人航空機である。これにより、無線中継ドローン10を空中で稼働させることが可能となる。工場などの屋内環境では、様々な機械や設置物などの障害物が地面に存在することが多い。そのため、地上移動型の無人移動体は中継地点まで移動するのに複雑な制御が必要であり、また中継電波が機械や設置物によって遮蔽されやすい。これに対して、無線中継ドローン10は、移動時および中継電波の両方が障害物の影響を受けにくいため、より少ない稼働数で十分な通信エリア構築が可能となる。
【0089】
第1実施形態の無線基地局20は、無線信号を中継する通信部12と、通信部12で受信した無線信号の信号強度値を測定する信号強度測定部13と、信号強度値に基づいて、無線基地局20に無線中継ドローン10の追加または削減を要請する要請信号を送信する要請部14と、を備えた無線中継ドローン(無線中継無人移動体)10と通信する、無線基地局20であって、無線信号を送受信する無線ルーター(基地局通信部)21と、無線ルーター21が無線中継ドローン10から新たな無線中継ドローン10の追加を要請する要請信号を受信した場合に、新たな無線中継ドローン10の追加地点を決定して、新たな無線中継ドローン10に追加地点への配置の指示を出すドローン監視装置(指示部)22と、を備え、ドローン監視装置22は、定期的に稼働中の無線中継ドローン10に存在確認の信号を送信し、いずれの無線中継ドローン10からも所定の期間に渡り応答信号が得られなかった場合に、新たな無線中継ドローン10の追加地点を決定して、新たな無線中継ドローン10に追加地点への配置の指示を出す。これにより、例えば突発的な通信障害や故障などにより、無線中継ドローン10から追加の要請信号が得られる前に通信不能になるようなケースでも、無線基地局20が、要請信号によらずに自発的に無線中継ドローン10を追加投入できる。その結果、無線中継ドローン10の稼働数を低減したことによる影響を受けずに、突発的な通信障害や故障などに対して通信エリアを維持可能な柔軟な無線中継ドローン10の運用ができる。
【0090】
[第2実施形態]
図9を参照しながら、第2実施形態について説明する。図9は、第2実施形態に係る通信システムCS(無線中継ドローン10および無線基地局20)の一連の動作の流れを示すシーケンス図である。以下の説明においては、無線中継ドローン10および無線基地局20の構成要素が上記第1実施形態と同様である場合、同一の符号または対応する符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0091】
上記第1実施形態では、無線基地局20が障害レベルを判定し、判定した障害レベルに対応するモードでの対応指示を無線中継ドローン10に送信する例を示したが、第2実施形態では、無線中継ドローン10が障害レベルを判定し、判定した障害レベルに対応するモードを自ら判定する例について説明する。
【0092】
第2実施形態では、無線中継ドローン10は、指定された中継地点に飛行して、信号強度値など各種データを取得する(ステップS21)。無線中継ドローン10(要請部14)は、データ取得後、信号強度値および位置情報に基づいて、表1に従って障害レベルを判定する(ステップS122)。無線中継ドローン10は、判定した障害レベル、信号強度値などを無線基地局20に送信する。
【0093】
無線中継ドローン10は、障害レベルの判定結果に該当するドローンモード(表2参照)での処理を実施する(ステップS23)。この処理において、無線中継ドローン10(要請部14)は、図4のドローンの増減判断処理を行う(ステップS24)。無線中継ドローン10(要請部14)は、判定された追加要請または削減要請、障害エリア方向などを、無線基地局20に送信する。
【0094】
追加の要請信号が送信された場合に追加される無線中継ドローン(追加)10は、指定された追加地点に飛行して、信号強度値など各種データを取得する(ステップS26)。追加された無線中継ドローン(追加)10(要請部14)は、データ取得後、信号強度値および位置情報に基づいて、表1に従って障害レベルを判定し(ステップS127)、判定した障害レベル、信号強度値などを無線基地局20に送信する。
【0095】
第2実施形態の他の動作は、図8に示した上記第1実施形態と同様である。第2実施形態では、無線基地局20が障害レベルの判定を行わないので、ドローン監視装置22に判定部33を設けなくてもよい。
【0096】
第2実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0097】
なお、上述した第1、第2実施形態にて、障害レベルを判定する例を示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、無線中継ドローン10は自機が取得した信号強度値に基づいて追加、削減の要請信号を送信できるので、障害レベルの判定を行わなくてもよい。
【0098】
また、上述した第1、第2実施形態にて、追加要請の送信を判定するための第1閾値と、削減要請の送信を判定するための第2閾値とが、等しい値(「3」)である例を示したが、第1閾値よりも大きい第2閾値であってもよい。
【0099】
また、上述した第1、第2実施形態にて、要請部14が、複数箇所で取得された複数の信号強度値と位置情報とに基づいて、障害エリアの方向を無線基地局20に送信する例を示したが、障害エリアの方向を送信しなくてもよい。この場合、追加の要請信号に応じて投入される無線中継ドローン10の追加地点は、図3のK1側およびK2側のうち、予め設定された側に決定してもよい。追加地点が障害エリア側であった場合でも、例えばさらに追加で無線中継ドローン10が投入されることで、無線中継が可能となる。
【0100】
また、上述した第1、第2実施形態にて、ドローン本体(移動体本体)11が無人航空機である例を示したが、移動体本体が地上移動型の無人移動体であってもよい。つまり、無線中継無人移動体は、無線中継ドローン10には限定されず、無人航空機以外の他の種類の無人移動体であってよい。
【0101】
また、上述した第1、第2実施形態では、無線中継ドローン10および無線基地局20が屋内に通信エリアを構築する例を示したが、屋外で通信エリアを構築してもよい。
【0102】
また、上述した第1、第2実施形態にて、信号強度値を「なし、および1~4」の5段階としたが、信号強度値は2~4段階または6段階以上でもよい。上述した第1、第2実施形態にて、位置情報に基づく無線基地局からの距離を、「近、中、遠」の3段階としたが、無線基地局からの距離は2段階または4段階以上でもよい。
【0103】
図示した無線中継ドローン(無線中継無人移動体)および無線基地局の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況などに応じて、その全部または一部を任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。
【符号の説明】
【0104】
10、10-1、10-2、10-3、10-4、10-5 無線中継ドローン(無線中継無人移動体)
12 通信部
13 信号強度測定部
14 要請部
18 位置情報取得部
20 無線基地局
21 無線ルーター(基地局通信部)
22 ドローン監視装置(指示部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9