(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132572
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61F13/511 200
A61F13/511 300
A61F13/511 410
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043397
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 基文
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA08
3B200BB24
3B200DC02
3B200DC07
(57)【要約】
【課題】吸収性物品において、着用者の尿等の液状成分の吸収体への浸透を阻害しないように、皮膚保護剤を配置する。
【解決手段】使い捨ておむつ100(吸収性物品)は、厚さ方向Dにおいて、着用者の肌に近い側から順に、保護剤担持シート70と吸収体30とバックシート20とが積層され、保護剤担持シート70は、着用者の肌に近い側に配置される表面シート71と遠い側に配置される裏面シート72と、表面シート71と裏面シート72の間に配置された液状の皮膚保護剤が封入されたマイクロカプセル74と、を備え、表面シート71は裏面シート72に比べて液透過性が高く、表面シート71と裏面シート72とを融着した融着部77によって周囲が囲まれた区画領域78と、非接合領域である液透過領域79とが、それぞれ平面視で分布して形成され、マイクロカプセル74は区画領域78に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において、着用者の肌に近い側から順に、保護剤担持シートと、吸収体と、バックシートと、が積層され、
前記保護剤担持シートは、前記着用者の肌に近い側に配置される、液透過性を有する表面シートと、前記着用者の肌から遠い側に配置される、液透過性を有する裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートの間に配置された、液状の皮膚保護剤が封入されたマイクロカプセルと、を備え、
前記表面シートは、前記裏面シートに比べて液透過性が高く、
前記保護剤担持シートは、前記表面シートと前記裏面シートとを接合した接合部によって周囲の少なくとも一部が囲まれた区画領域と、前記接合部で接合されていない非接合領域とは、それぞれ平面視で分布して形成され、
前記マイクロカプセルは前記区画領域に配置されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記区画領域は、前記保護剤担持シートの全面に亘って分布して配置されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記区画領域は、前記非接合領域よりも、前記着用者の肌側に盛り上がって形成されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記マイクロカプセルは、固定材によって前記裏面シートに固定されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記保護剤担持シートは、前記着用者の臀部に対応した領域に配置されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記表面シートは、前記区画領域に、前記表面シートの繊維間の空隙よりも大きい開孔が形成された、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記表面シートは、前記着用者の肌に接するトップシートを兼ねている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿漏れパッド、インナーパッド、生理用ナプキン等の吸収性物品は、装着者の肌に直接触れるため、肌の不快感やトラブルを低減、防止するために、吸収性物品の肌に接する面に、ローション等の皮膚保護剤を塗布した吸収性物品が提案されている。しかし、皮膚保護剤が塗布された吸収性物品は、その塗布によって、厚さ方向への透水性が低下し、その結果、液状成分の逆戻りや肌へのべたつき感が生じるという問題がある。
【0003】
ここで、皮膚保護剤をマイクロカプセルに封入した吸収性物品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の皮膚保護剤はマイクロカプセルに封入されるが、皮膚保護剤に代えて冷感剤をマイクロカプセルに封入して、そのマイクロカプセルを吸収体に含ませた技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2021-527494号公報
【特許文献2】実用新案登録第3239622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した先行技術文献の記載の技術は、皮膚保護剤等をマイクロカプセルに封入することで、肌へのべたつき感を低減することができるが、マイクロカプセルが溶けて放出された皮膚保護剤等が、着用者の尿等の液状成分が吸収体に浸透するのを阻害するという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされ、着用者の尿等の液状成分の吸収体への浸透を阻害しないように、皮膚保護剤を配置することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、厚さ方向において、着用者の肌に近い側から順に、保護剤担持シートと、吸収体と、バックシートと、が積層され、前記保護剤担持シートは、前記着用者の肌に近い側に配置される、液透過性を有する表面シートと、前記着用者の肌から遠い側に配置される、液透過性を有する裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートの間に配置された、液状の皮膚保護剤が封入されたマイクロカプセルと、を備え、前記表面シートは、前記裏面シートに比べて液透過性が高く、前記保護剤担持シートは、前記表面シートと前記裏面シートとを接合した接合部によって周囲の少なくとも一部が囲まれた区画領域と、前記接合部で接合されていない非接合領域とは、それぞれ平面視で分布して形成され、前記マイクロカプセルは前記区画領域に配置されている、吸収性物品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る吸収性物品は、着用者の尿等の液状成分の吸収体への浸透を阻害しないように、皮膚保護剤を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】パンツ型使い捨ておむつの腹側部と背側部とを切り離して長さ方向Lに展開した状態を示す平面図である。
【
図2A】
図1における股部の腹側部に近い側のA1-A1線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
【
図2B】
図1における股部の背側部に近い側のA2-A2線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
【
図3】
図1,2Bの保護剤担持シートを示す平面図である。
【
図4】
図3におけるB-B線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
【
図5】変形例の使い捨ておむつを示す、
図1相当の平面図である。
【
図6】保護剤担持シートの別例1を示す、
図3相当の平面図である。
【
図7】保護剤担持シートの別例2を示す、
図3相当の平面図である。使い捨ておむつを示す、
図1相当の平面図である。
【
図8】保護剤担持シートの別例3を示す、
図4相当の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る吸収性物品の実施形態は、以下の通り、図面を参照して説明される。
【0011】
<全体構成>
図1はパンツ型使い捨ておむつ100の腹側部110と背側部130とを切り離して長さ方向Lに展開した状態を示す平面図、
図2Aは、
図1における股部120の腹側部110に近い側のA1-A1線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図、
図2Bは、
図1における股部120の背側部130に近い側のA2-A2線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
【0012】
図1に示したパンツ型使い捨ておむつ100(以下、おむつ100という。)は、本発明に係る吸収性物品の一例である。本実施形態は、本発明に係る吸収性物品としてパンツ型使い捨ておむつ100を適用した例であるが、本発明に係る吸収性物品は、パンツ型使い捨ておむつ100に限定されず、いわゆるテープ式の使い捨ておむつに適用することもでき、また、尿漏れパッド、インナーパッド、生理用ナプキン等に適用することもできる。
【0013】
図示のおむつ100は、
図1に示すように腹側部110と股部120と背側部130とが長さ方向Lに連なって形成されている。腹側部110は、おむつ100の着用者の前面である腹側の主に下腹部を覆う部分に相当し、股部120は着用者の主に股間部を覆う部分に相当し、背側部130は着用者の主に臀部を覆う部分に相当する。
【0014】
長さ方向(前後方向)Lに直交する幅方向Wは、おむつ100が着用者に着用された状態において、着用者の胴回りの周方向に対応する。股部120は、腹側部110及び背側部130に比べて、幅方向Wの寸法が短くなるように中央に括れた曲線の縁部122,123で形成されている。
【0015】
おむつ100は、腹側部110の、幅方向Wにおける一方の側部112と、背側部130の、幅方向Wにおける一方の側部132とが接合され、かつ、腹側部110の、幅方向Wにおける他方の側部113と、背側部130の、幅方向Wにおける他方の側部133とが接合されている。これにより、おむつ100は、腹側部110と背側部130とが着用者の胴回りの周方向に繋がる。
【0016】
そして、おむつ100は、長さ方向Lの端部である腹側部110の端縁部111と背側部130の端縁部131とが環状に繋がった胴回り開口P1を形成する。また、おむつ100は、中央に括れた股部120における幅方向Wの両側において、縁部122が環状に繋がって脚回り開口P2を形成し、縁部123が環状に繋がって脚回り開口P3を形成して、パンツ型となる。
【0017】
胴回り開口P1は、おむつ100を着用した着用者の胴回りに対応した開口であり、脚回り開口P2は、着用者の右脚の付け根に対応した開口であり、脚回り開口P3は、着用者の左脚の付け根に対応した開口である。
【0018】
おむつ100は、
図2Aに示した厚さ方向Dの、着用者の肌に近い側から順に、トップシート10、吸収体30、バックシート20が積層されて構成されている。
【0019】
トップシート10は、使い捨ておむつ100が着用者に着用されたとき、着用者の肌に接するシートである。トップシート10は液透過性のシート部材であり、例えば液透過性の不織布を適用することができる。
【0020】
吸収体30は、吸収体コア31と、コアラップシート32とを備えている。吸収体コア31は、パルプ繊維と、このパルプ繊維に分散して配置された吸収性ポリマーとを有している。吸収性ポリマーは、着用者の排泄物のうちトップシート10を透過した液状成分を吸収して保持する。
【0021】
コアラップシート32は、液透過性を有する不織布などのシート部材である。コアラップシート32は、吸収体コア31の全体を外側から覆い、吸収性ポリマーが吸収体30から脱落するのを防いでいる。コアラップシート32は、吸収体コア31の全体を覆わなくてもよく、少なくとも、吸収体コア31の、着用者の肌に対向する面(肌対向面)の側に配置されていればよい。
【0022】
バックシート20は、液不透過性のシート部材であり、液状成分が、吸収体30から浸潤して外部に漏れるのを防止する。
【0023】
なお、おむつ100は、股部120の各縁部122,123に沿って、厚さ方向Dの内面側(着用者の肌面側)に立ち上がる立体ギャザー50を備えている。立体ギャザー50は、幅方向Wの外側部分がトップシート10に接合され、幅方向Wの内側部分はトップシート10に接合されずに設けられ、内側の端部には伸縮部材51が伸ばされた状態で接合されている。これにより、おむつ100が着用者に着用された状態で、伸縮部材51の収縮力によって、立体ギャザー50の内側部分が肌面側に立ち上がって、脚回り開口P2,P3における着用者の脚との隙間を無くし、脚回り開口P2,P3からの漏れを防ぐ。
【0024】
<保護剤担持シート>
ここで、
図1に示すように、おむつ100は、股部120のうち背側部130に近い部分から背側部130に亘って、保護剤担持シート70を備えている。すなわち、保護剤担持シート70は、おむつ100の着用者の臀部に対応した領域に配置されている。
【0025】
保護剤担持シート70は、
図2Bに示すように、厚さ方向Dにおいてトップシート10よりも内面側に積層され、全体として液透過性を有する状態での接合手段によってトップシート10に接合して配置されている。
【0026】
具体的には、保護剤担持シート70は、液透過性を有する接着剤でトップシート10に接合されていてもよいし、分布して配置された液不透過性の接合部材によって保護剤担持シート70の全面に対しては液透過性を有する状態で、トップシート10に接合されてもよい。
【0027】
図3は
図1,2Bにおける保護剤担持シート70を示す平面図、
図4は
図3におけるB-B線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
【0028】
保護剤担持シート70は、
図3に示すように略円形の多数の区画領域78を有している。保護剤担持シート70は、
図4に示すように、表面シート71と、裏面シート72と、固定材73と、マイクロカプセル74と、を備えている。表面シート71と裏面シート72とは、厚さ方向Dに積層され、表面シート71が、着用者の肌面に近い肌面側(内面側)に配置され、裏面シート72が、着用者の肌面から遠い非肌面側(外面側)に配置される。
【0029】
表面シート71と裏面シート72とは、共に、液透過性を有する、例えば不織布で形成されている。表面シート71は、裏面シート72よりも、液透過性が高く形成されている。例えば、表面シート71は、裏面シート72よりも繊維が粗く分布した不織布で構成することができる。繊維の分布が粗い不織布で構成された表面シート71は、繊維の分布が密の不織布で構成された裏面シート72よりも大きな隙間を形成するため、液透過性を相対的に高くすることができる。
【0030】
表面シート71は、裏面シート72よりも液透過性が高ければよく、繊維の密度が裏面シート72に比べて疎(粗)であるものに限定されない。すなわち、保護剤担持シート70は、表面シート71の材質が、裏面シート72の材質よりも液透過性の高いものであってもよい。
【0031】
保護剤担持シート70は、
図3に示すように、平面視において、多数の区画領域78が、互いに離れて分布し、保護剤担持シート70の全面に亘って形成されている。
図3に示した例では、区画領域78は、略円形に形成されている。各区画領域78は、
図4に示すように、略円形の周囲の全周が、表面シート71と裏面シート72とを厚さ方向Dに融着(接合)した融着部77(接合部)によって形成されている。融着部77は、超音波接合又はヒートシール等による融着で形成することができる。なお、各区画領域78は、周囲を、表面シート71と裏面シート72とを接着剤等で接合した接合部によって形成してもよい。
【0032】
保護剤担持シート70の、周囲を融着部77で囲まれた区画領域78には、表面シート71と裏面シート72との間に、固定材73によって固定されたマイクロカプセル74が配置されている。固定材73は、裏面シート72の、表面シート71に向いた面に固定され、その固定材73上にマイクロカプセル74が固定されている。つまり、マイクロカプセル74は、固定材73によって、裏面シート72に固定されている。なお、1つの区画領域78には、それぞれ多数のマイクロカプセル74が凝集した集合体として、固定材73によって固定されている。
【0033】
保護剤担持シート70は、裏面シート72上に固定材73によってマイクロカプセル74の集合体を固定した状態で、厚さ方向Dの内面側から表面シート71を被せ、固定材73及びマイクロカプセル74の集合体を表面シート71と裏面シート72とで挟んだ状態で、これらの周囲を融着部77で融着することで、区画領域78を形成している。
【0034】
固定材73は、マイクロカプセル74を裏面シート72に固定できればよく、例えばオレフィン系ホットメルト等を適用することができる。なお、保護剤担持シート70は、マイクロカプセル74を区画領域78内に配置することができれば、固定材73を用いる必要は無く、固定材73は保護剤担持シート70における必須のものではない。
【0035】
マイクロカプセル74は、内部に、液状の皮膚保護剤を封入している。皮膚保護剤は、おむつ100を着用している着用者の、おむつ100と接する肌を、肌荒れやかぶれ等の皮膚トラブルから保護するのに適した薬剤やオイル等であり、例えば、ローションやグリセリン、オリーブ油、ホホバ油、シアバター等を適用することができる。
【0036】
皮膚保護剤を封入するマイクロカプセル74は、おむつ100の着用者の体圧や体温等の物理的条件に応じて破壊若しくは溶けることで、又は発汗等の液体条件に応じて溶けることで、内部に封入された皮膚保護剤を外部に放出する。
【0037】
保護剤担持シート70は、区画領域78以外の部分は、表面シート71と裏面シート72とが重なって積層されただけの非接合領域であり、表面シート71も裏面シート72も液透過性を有するため、区画領域78以外の非接合領域は液透過性を有する液透過領域79となる。液透過領域79は、
図4に示すように、着用者の肌面側から非肌面側、すなわちおむつ100の吸収体30側に、着用者の排泄したに尿等の液状成分Mを透過させる。区画領域78と液透過領域79は、平面視でそれぞれ分布して形成されている。
【0038】
保護剤担持シート70は、区画領域78が液透過領域79に比べて、厚さ方向Dにおいて、着用者の肌面側に盛り上がって形成されている。
【0039】
<作用>
以上のように構成された実施形態のおむつ100は、着用者が着用した状態で、着用者の臀部を覆う位置に保護剤担持シート70が配置される。そして、着用者の体圧や体温等の物理的条件又は発汗等の液体条件に応じて、保護剤担持シート70の区画領域78に配置されたマイクロカプセル74が破壊されて又は溶けて、内部に封入された皮膚保護剤が外部に放出される。
【0040】
特に、着用者があおむけで寝ている状態においては、臀部に対応して配置された保護剤担持シート70に体圧が掛かり易く、また、体温にも反応し易いため、マイクロカプセル74を破壊又は溶解させ易い。
【0041】
ここで、皮膚保護剤は液状であり、区画領域78の内部に拡散するが、表面シート71は裏面シート72よりも液透過性が高くしかも、裏面シート72の側は、固定材73が固定されていることで液透過性が阻害され、又は低下しているため、区画領域78の内部に拡散した皮膚保護剤は、裏面シート72の側よりも表面シート71の側に、より多く浸透する。そして、表面シート71を浸透した皮膚保護剤は、おむつ100の着用者の臀部の肌に供給されて、着用者の臀部の皮膚を保護する機能が発揮される。
【0042】
このように、本実施形態のおむつ100は、保護剤担持シート70に担持された皮膚保護剤を、無駄に裏面シート72の側に浸透させずに、着用者の皮膚に効率的に供給することができる。
【0043】
また、本実施形態のおむつ100は、保護剤担持シート70において、融着部77によって、マイクロカプセル74の周囲を囲んだ区画領域78として、一定の領域に配置しているため、マイクロカプセル74が一定領域から外れた部位に移動するのを防ぐことができる。この結果、皮膚保護剤を、着用者の皮膚の必要とする部位(例えば臀部)に狙って供給することができる。
【0044】
また、本実施形態のおむつ100は、保護剤担持シート70において、区画領域78を複数、分布して配置しているため、保護剤担持シート70の広い範囲に適切にマイクロカプセル74を配置することができる。
【0045】
また、本実施形態のおむつ100は、液状の皮膚保護剤は、マイクロカプセル74に包まれているため、着用される前は、液体としておむつ100を濡らすことが無く、着用後に皮膚保護剤の機能を発揮させることができる。
【0046】
また、本実施形態のおむつ100は、保護剤担持シート70において、区画領域78以外の領域が液透過領域79として形成されているため、液透過領域79が液状成分Mを透過させることができる。したがって、例えば、あおむけで寝ている着用者が排泄した尿が臀部に流れた際に、保護剤担持シート70の液透過領域79が尿を厚さ方向Dに透過させて吸収体30に吸収させることができる。
【0047】
つまり、本実施形態のおむつ100は、区画領域78に設けられた皮膚保護剤によって、液状成分Mの流れが阻害されることが無く、着用者の尿等の液状成分Mの吸収体30への浸透を阻害しないように皮膚保護剤を配置することができる。
【0048】
<変形例>
図5は変形例の使い捨ておむつ200を示す、
図1相当の平面図である。上述した実施形態のおむつ100は、保護剤担持シート70を、股部120の、背側部130に近い部分から背側部130に亘る範囲で、吸収体30に重なる範囲に配置し、主に着用者の臀部に皮膚保護剤を供給するが、保護剤担持シート70の配置は、上述した実施形態のおむつ100に限定されない。
【0049】
すなわち、例えば、
図5に示したおむつ200は、保護剤担持シート70を、股部120の背側部130と背側部130に配置したおむつ100に対して、股部120の腹側部110に近い部分を含む股部120の全体と腹側部110にも、保護剤担持シート70が配置されている。この結果、おむつ200は、着用者の臀部や股間部の全体及び腹側の下腹部に皮膚保護剤を供給する。このように構成された変形例のおむつ200も、本発明に係る吸収性物品の一例である。
【0050】
<保護剤担持シートの別例1>
図6は保護剤担持シートの別例1を示す、
図3相当の平面図である。上述した実施形態のおむつ100及び変形例のおむつ200における保護剤担持シート70は、区画領域78が、千鳥状に配列されていたが、区画領域78の配置は、千鳥状の配列に限定されず、例えば格子状の配列であってもよいし、その他の規則的な配列や不規則な配列であってもよい。
【0051】
図6に示した別例1の保護剤担持シート170は、区画領域78が、保護剤担持シート170の一部の領域にのみに分布して形成されている。保護剤担持シート170は、全体が矩形であるが、区画領域78が分布している範囲は例えば三角形状である。このように、区画領域78が一部にのみ分布している保護剤担持シート170も、本発明に係る吸収体における保護剤担持シートとして適用することができる。
【0052】
<保護剤担持シートの別例2>
図7は保護剤担持シートの別例2を示す、
図3相当の平面図である。上述した実施形態のおむつ100及び変形例のおむつ200における保護剤担持シート70は、区画領域78が円形の輪郭を有するが、区画領域78の輪郭形状は円形に限定されず、例えば矩形やその他の形状であってもよいし、所定方向に細長く延びた形状であってもよい。
【0053】
図7に示した別例2の保護剤担持シート270は、区画領域78が、前後方向Lに沿って長い細長矩形の輪郭を有する。区画領域78は、液透過領域79に比べて厚さ方向Dの高さが高いため、保護剤担持シート70上に排泄された尿は、高さの高い区画領域78に堰き止められて幅方向Wへの拡散が抑制され、一方、高さの低い液透過領域79に沿って前後方向Lへの拡散が促進される。
【0054】
このように、区画領域78が前後方向Lに沿って長い細長矩形の輪郭を有する保護剤担持シート270も、本発明に係る吸収体における保護剤担持シートとして適用することができる。
【0055】
なお、細長矩形の輪郭の区画領域78は、上述した実施形態、変形例、別例1に示した区画領域78とは異なり、融着部77で輪郭の全周を囲っていなくてもよく、特に細長矩形の短辺に対応した輪郭部分は融着部77が無く、長辺に対応した輪郭部分のみに融着部77を有してもよい。
【0056】
短辺に対応した輪郭部分に融着部77の無い細長矩形の区画領域78は、その短辺の輪郭部分を通じて、区画領域78内のマイクロカプセル74が、区画領域78の外、つまり液透過領域79にこぼれ出る可能性がある。
【0057】
しかし、細長矩形の区画領域78内のマイクロカプセル74の全量に対して、その短辺に対応した輪郭部分からこぼれ出るマイクロカプセル74の量は、極めて限定的な量である。したがって、細長矩形の区画領域78については、細長矩形の短辺に対応した輪郭部分に融着部77が形成されていなくてもよい。
【0058】
<保護剤担持シートの別例3>
図8は保護剤担持シートの別例3を示す、
図4相当の平面図である。
図8に示した別例3の保護剤担持シート370は、区画領域78の表面シート71に、表面シート71自体の繊維の分布によって形成される繊維間の空隙に比べて大きな開孔71aが形成されている。
【0059】
このように、区画領域78に、表面シート71の繊維間の空隙よりも大きい開孔71aが形成された保護剤担持シート370は、区画領域78に配置されたマイクロカプセル74内の皮膚保護剤を、表面シート71の繊維間の空隙だけでなく、表面シート71の開孔71aを通じて、着用者の皮膚に供給することができる。
【0060】
したがって、区画領域78に、表面シート71の繊維間の空隙よりも大きい開孔71aが形成された保護剤担持シート370は、開孔71aが形成されていない表面シート71を有する保護剤担持シートに比べて、より多くの量の皮膚保護剤を、着用者の肌に供給することができる。
【0061】
このように、区画領域78に繊維間の空隙よりも大きい開孔71aが形成された保護剤担持シート370も、本発明に係る吸収体における保護剤担持シートとして適用することができる。
【0062】
なお、表面シート71に形成された開孔71aは、マイクロカプセル74の1粒の大きさよりも小さいサイズに限定されず、区画領域78の大きさよりも小さい限りにおいて、マイクロカプセル74の1粒の大きさよりも大きいサイズであってもよい。区画領域78に配置されたマイクロカプセル74は複数個が凝集して、サイズの大きい集合体となるため、開孔71aのサイズがマイクロカプセル74の1つ部より大きいサイズであっても、マイクロカプセル74は、開孔71aを通じて外部に脱落することが無い。
【0063】
<その他の変形例>
上述した実施形態、変形例、別例は、トップシート10上に保護剤担持シート70が接合された構成であるが、本発明に係る吸収性物品は、表面シート71がトップシート10を兼ねた構成又はトップシート10が表面シート71を兼ねた構成であってもよい。この場合、保護剤担持シート70は、表面シート71がトップシート10によって形成されているため、トップシート10から保護剤担持シート70を物理的に分離することはできず、トップシート10と一体に構成される。
【0064】
このように構成された吸収性物品においては、トップシート10が、裏面シート72よりも液透過性が高ければよい。
【符号の説明】
【0065】
20 バックシート
30 吸収体
70 保護剤担持シート
71 表面シート
72 裏面シート
74 マイクロカプセル
77 融着部(接合部)
78 区画領域
79 液透過領域
100,200 使い捨ておむつ(吸収性物品の一例)
D 厚さ方向