(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132580
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】空気量調整バルブおよび多連スロットル装置
(51)【国際特許分類】
F02D 9/02 20060101AFI20240920BHJP
F02D 11/10 20060101ALI20240920BHJP
F02M 25/08 20060101ALI20240920BHJP
F16K 11/065 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F02D9/02 T
F02D11/10 E
F02D9/02 361C
F02M25/08 N
F02M25/08 301H
F16K11/065 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043412
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】清野 准
【テーマコード(参考)】
3G065
3G144
3H067
【Fターム(参考)】
3G065AA11
3G065DA06
3G065HA03
3G065HA05
3G144DA09
3G144EA02
3G144EA14
3G144EA17
3G144GA02
3G144GA22
3H067AA16
3H067CC32
3H067DD05
3H067DD12
3H067DD32
3H067EA02
3H067FF12
3H067GG04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料蒸気のパージ量調節機能を有し、コンパクトな多連スロットル装置を提供する。
【解決手段】多連スロットル装置は、複数の吸気通路を有するスロットルボデー12と、複数のスロットルバルブと、複数のスロットルバルブをそれぞれ迂回する複数の副通路102と、複数の副通路を流れる空気量を調整するための空気量調整バルブ30と、を備える。空気量調整バルブは、弁体40と、弁体を軸方向に案内するためのガイド部50とを含む。ガイド部の内周面51には、複数の吸気通路のうちスロットルバルブの下流側にそれぞれ連通する複数の第1連通孔52と、燃料蒸気を回収するためのキャニスタと連通する第2連通孔54と、が開口する。アクチュエータ60は、各々の第1連通孔のうち弁体によって塞がれていない第1有効開口面積および第2連通孔54のうち弁体によって塞がれていない第2有効開口面積が変化するよう弁体の軸方向における位置を調節する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸気通路を有するスロットルボデーと、
前記複数の吸気通路にそれぞれ設けられる複数のスロットルバルブと、
前記複数のスロットルバルブをそれぞれ迂回する複数の副通路と、
前記複数の副通路を流れる空気量を調整するための空気量調整バルブと、
を備え、
前記空気量調整バルブは、
弁体と、
前記弁体を取り囲むように前記弁体の径方向外側に設けられ、前記弁体を軸方向に案内するためのガイド部と、
前記ガイド部の内周面に沿って前記弁体が前記軸方向に摺動するように前記弁体を駆動するためのアクチュエータと、
を含み、
前記ガイド部の前記内周面には、
前記複数の吸気通路のうち前記スロットルバルブの下流側にそれぞれ連通する複数の第1連通孔と、
燃料蒸気を回収するためのキャニスタと連通する第2連通孔と、
が開口し、
前記アクチュエータは、各々の前記第1連通孔のうち前記弁体によって塞がれていない第1有効開口面積、および、前記第2連通孔のうち前記弁体によって塞がれていない第2有効開口面積が変化するよう、前記弁体の前記軸方向における位置を調節するように構成された
多連スロットル装置。
【請求項2】
前記複数の第1連通孔は、同一の軸方向位置、かつ、互いに異なる周方向位置に設けられる
請求項1に記載の多連スロットル装置。
【請求項3】
前記第2連通孔は、各々の前記第1連通孔から前記軸方向にずれた位置に設けられる
請求項1又は2に記載の多連スロットル装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、外周に雄ねじが設けられた出力軸を含むステッピングモータであり、
前記空気量調整バルブは、
前記出力軸の前記雄ねじと螺合する雌ねじを有する可動部と、
前記可動部の回転を規制するための回り止め部と、
を含み、
前記ステッピングモータは、前記出力軸の回転に伴い前記可動部を前記軸方向に移動させ、前記可動部を介して前記弁体を前記軸方向に動かすように構成された
請求項1又は2に記載の多連スロットル装置。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記弁体を取り囲むガイド筒である
請求項1又は2に記載の多連スロットル装置。
【請求項6】
前記複数の吸気通路は、前記スロットルバルブの弁軸方向に並ぶように、前記弁軸方向に直交する方向に沿って延在し、
前記空気量調整バルブは、前記複数の吸気通路のうち前記弁軸方向において隣り合う一対の吸気通路の間に設けられる
請求項1又は2に記載の多連スロットル装置。
【請求項7】
前記スロットルボデーは、前記複数の第1連通孔のうち2個の連通孔をそれぞれ前記隣り合う一対の吸気通路に連通させるための内部通路を含み、
前記複数の吸気通路のうち前記隣り合う一対の吸気通路を除く他の吸気通路と、前記他の吸気通路に対応する前記第1連通孔とを連通させるためのフレキシブルチューブを備える
請求項6に記載の多連スロットル装置。
【請求項8】
多連スロットル装置の複数のスロットルバルブをそれぞれ迂回する複数の副通路の空気量を調整するための空気量調整バルブであって、
弁体と、
前記弁体を取り囲むように前記弁体の径方向外側に設けられ、前記弁体を軸方向に案内するためのガイド部と、
前記ガイド部の内周面に沿って前記弁体が前記軸方向に摺動するように前記弁体を駆動するためのアクチュエータと、
を備え、
前記ガイド部の前記内周面には、
複数の第1連通孔と、
各々の前記第1連通孔から前記軸方向にずれた位置に設けられる第2連通孔と、
が開口し、
前記アクチュエータは、各々の前記第1連通孔のうち前記弁体によって塞がれていない第1有効開口面積、および、前記第2連通孔のうち前記弁体によって塞がれていない第2有効開口面積が変化するよう、前記弁体の前記軸方向における位置を調節するように構成された
空気量調整バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の吸気通路にそれぞれスロットルバルブが設けられた多連スロットル装置およびこれに用いられる空気量調整バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の吸気通路にスロットルバルブがそれぞれ設けられた多連スロットル装置が知られている。
例えば、特許文献1には、スロットルバルブを迂回するバイパス空気通路を流れるバイパス空気の流量を単一の空気制御弁により調節可能とした多連スロットル装置が記載されている。
【0003】
また、多連スロットル装置に関するものではないが、特許文献2には、副通路を流れる空気量を調節するための第1調整弁と、吸気通路への燃料蒸発ガスのパージ量を調節するための第2調整弁とを同一の駆動源によって駆動するようにしたスロットル装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-132235号公報
【特許文献2】特開2019-143586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料タンクで発生する燃料蒸気は、大気に排出せずに、キャニスタで回収してエンジンで燃焼させることが望ましい。例えば特許文献2に記載されるように、吸気通路への燃料蒸発ガスのパージ量の調節機能を有するパージ量調整弁が知られている。
しかし、多連スロットル装置において、各吸気通路のためにパージ量調整弁を個別に設けると、多連スロットル装置のコンパクト化の要請を果たすことができない。
【0006】
この点、特許文献1には、バイパス空気の流量を単一の空気制御弁により調節可能とした多連スロットル装置が記載されているものの、多連スロットル装置の大型化を回避しながら燃料蒸発ガスのパージ量の調節機能を如何に実現するかについて何ら記載されていない。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、燃料蒸気のパージ量の調節機能の実現とコンパクト化の両立が可能な多連スロットル装置およびこれに用いられる空気量調整バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る多連スロットル装置は、
複数の吸気通路を有するスロットルボデーと、
複数の吸気通路にそれぞれ設けられる複数のスロットルバルブと、
複数のスロットルバルブをそれぞれ迂回する複数の副通路と、
複数の副通路を流れる空気量を調整するための空気量調整バルブと、
を備え、
空気量調整バルブは、
弁体と、
弁体を取り囲むように弁体の径方向外側に設けられ、弁体を軸方向に案内するためのガイド部と、
ガイド部の内周面に沿って弁体が軸方向に摺動するように弁体を駆動するためのアクチュエータと、
を含み、
ガイド部の内周面には、
複数の吸気通路のうちスロットルバルブの下流側にそれぞれ連通する複数の第1連通孔と、
燃料蒸気を回収するためのキャニスタと連通する第2連通孔と、
が開口し、
アクチュエータは、各々の第1連通孔のうち弁体によって塞がれていない第1有効開口面積、および、第2連通孔のうち弁体によって塞がれていない第2有効開口面積が変化するよう、弁体の軸方向における位置を調節するように構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、空気量調整バルブが、副通路を流れるバイパス空気の流量の調節機能、および、燃料蒸気パージ量の調節機能を兼備するから、空気量調整バルブとは別に燃料蒸気パージ量の調節弁を設ける場合に比べて部品点数を削減できる。よって、多連スロットル装置のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るスロットル装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係るスロットル装置およびその周辺機器を示す概略構成図である。
【
図3】一実施形態に係る空気量調整バルブの構造を示す断面図であり、
図1の空気量調整バルブを通るxz平面に沿ったスロットル装置の部分断面図である。
【
図4A】空気量調整バルブのガイド筒の第1連通孔の配置例を示す断面図である。
【
図4B】空気量調整バルブのガイド筒の第2連通孔の配置例を示す断面図である。
【
図5】第1連通孔および第2連通孔の位置関係を説明するためのガイド筒の斜視断面図である。
【
図7】一実施形態に係る空気量調整バルブの一部の部品群を示す斜視図である。
【
図8】組立て後の
図7に示す部品群の斜視断面図である。
【
図9A】一実施形態に係る第1連通孔及び第2連通孔のz方向における位置関係を示す図である。
【
図9B】一実施形態に係るバイパス空気量および燃料蒸気量の制御特性を示す図である。
【
図10A】他の実施形態に係る第1連通孔及び第2連通孔のz方向における位置関係を示す図である。
【
図10B】他の実施形態に係るバイパス空気量および燃料蒸気量の制御特性を示す図である。
【
図11A】さらに別の実施形態に係る第1連通孔及び第2連通孔のz方向における位置関係を示す図である。
【
図11B】さらに別の実施形態に係るバイパス空気量および燃料蒸気量の制御特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るスロットル装置の概略構成を示す斜視図である。
なお、
図1において、x方向は吸気通路における吸気方向(厳密には、吸気方向の上流側から下流側に向かう方向)であり、y方向は弁軸方向であり、z方向はx方向及びy方向を含むxy平面に直交する方向である。
図2は、一実施形態に係るスロットル装置およびその周辺機器を示す概略構成図である。
【0013】
幾つかの実施形態では、
図1に示すように、スロットル装置100は、複数の吸気通路10(10A~10D)を有するスロットルボデー12と、複数の吸気通路10にそれぞれ設けられるスロットルバルブ20(20A~20D)とを含む多連スロットル装置である。
【0014】
複数の吸気通路10(10A~10D)は、それぞれ、スロットルバルブ20(20A~20D)の弁軸方向yに直交するx方向に沿って延在するようにスロットルボデー12に設けられる。複数の吸気通路10(10A~10D)は、スロットルバルブ20(20A~20D)の弁軸方向yに並ぶ。各々の吸気通路10(10A~10D)は、スロットルボデー12をx方向に貫通する貫通穴によって形成される。スロットル装置100は、スロットルバルブ20によって各吸気通路10(10A~10D)をx方向に流れる吸気流量を制御する機能を有する。
図1に示す例示的な実施形態では、スロットルボデー12は、y方向に並んだ4個の吸気通路10A~10Dを有する。吸気通路10の個数Nはこの例に限定されず、2以上の任意の整数であってもよい。
【0015】
スロットルボデー12は、全ての吸気通路10(10A~10D)のために一体的に設けられてもよいし、1以上の吸気通路10をそれぞれ含む複数のスロットルボデーセクションが互いに結合されてスロットルボデー12を形成してもよい。
図1に示す実施形態では、スロットルボデー12は、互いに結合された2個のスロットルボデーセクション12A,12Bによって形成される。具体的には、一対の吸気通路10A,10Bを有するスロットルボデーセクション12Aと、一対の吸気通路10C,10Dを有するスロットルボデーセクション12Bとが不図示の締結部材(例えばボルト)によって互いに結合されることで、スロットルボデー12が形成される。
【0016】
各々の吸気通路10(10A~10D)の内部には、スロットルバルブ20(20A~20D)が設けられる。
各々のスロットルバルブ20(20A~20D)は、弁軸方向yに沿って延在する弁軸(valve shaft)22に取り付けられ、弁軸22周りに回動可能である。スロットルバルブ20が弁軸22周りに回動すると、各々の吸気通路10をx方向に流れる吸気流量が各スロットルバルブ20の開度に応じて調整される。
【0017】
幾つかの実施形態では、スロットルバルブ20の弁軸22は、複数の吸気通路10(10A~10D)を横切るようにスロットルボデー12を貫通してy方向に延在する。この場合、一本の弁軸22が、複数のスロットルバルブ20(20A~20D)のための共通の弁軸として機能する。
【0018】
図1に示す例示的な実施形態では、弁軸22は、スロットルボデー12を形成するスロットルボデーセクション12A,12Bだけでなく、スロットルボデーセクション12A,12Bの間に設けられるギアケーシング14も貫通するように設けられる。
ギアケーシング14には、スロットルボデーセクション12Bと一体的に設けられたモータケーシング15内に収容されたモータ(不図示)の動力を弁軸22に伝達するための複数のギアが収容される。モータケーシング15内に収容されたモータは、y方向において吸気通路10Cとオーバーラップする範囲に設けられる。モータの出力軸はモータケーシング15内をy方向に沿って延在する。モータの出力軸の先端に設けられたピニオンギアは、ギアケーシング14内に収容された第1ギアと噛合する。第1ギアは、1以上の中継ギアを介して弁軸22に結合された第2ギアにモータの駆動力を伝達する。
なお、ギアケーシング14及びモータ(モータケーシング15)の配置、および、モータから弁軸22までの動力伝達経路の構造は、
図1に示す例に限定されず、任意の配置および構造を採用し得る。例えば、ギアケーシング14及びモータ(モータケーシング15)は、スロットル装置100におけるy方向の何れか一方の端部に配置してもよい。
【0019】
幾つかの実施形態では、スロットル装置100は、
図1に示すように、スロットルバルブ20を迂回して副通路を通過する空気量を調整するための空気量調整バルブ30を含む。
スロットルバルブ20を迂回する副通路は、スロットルボデー12の内部通路又はチューブ(管)によって形成されてもよい。
【0020】
図1に示す例示的な実施形態では、吸気通路10C及び10Dに対応する副通路の一部をそれぞれ構成するフレキシブルチューブ110C,110Dが設けられる。フレキシブルチューブ110Cは、空気量調整バルブ30によって流量調整されたバイパス空気を吸気通路10Cのうちスロットルバルブ20Cの下流側の部分に供給するための副通路の一部である。同様に、フレキシブルチューブ110Dは、空気量調整バルブ30によって流量調整されたバイパス空気を吸気通路10Dのうちスロットルバルブ20Dの下流側の部分に供給するための副通路の一部である。
各々のフレキシブルチューブ110(110C,110D)は、空気量調整バルブ30に近い上流側端部112と、空気量調整バルブ30から遠い下流側端部114と、上流側端部112及び下流側端部114の間に位置する中間部分116とを含む。上流側端部112は、副通路の一部としてのスロットルボデーセクション12Aの内部通路に連通するように、スロットルボデーセクション12Aに接続される。下流側端部114は、副通路の一部としてのスロットルボデーセクション12Bの内部通路に連通するように、スロットルボデーセクション12Bに接続される。上流側端部112及び下流側端部114は、xz平面に沿って各スロットルボデーセクション12A,12Bから中間部分116の端部まで斜め方向に延在する。各々のフレキシブルチューブ110(110C,110D)の中間部分116は、x方向におけるギアケーシング14及びモータケーシング15の側方を通過するようにy方向に延在し、上流側端部112と下流側端部114とを接続する。
x方向において空気量調整バルブ30を挟んでフレキシブルチューブ110(110C,110D)とは反対側には、後述するキャニスタ9と連通する連通ポート108が設けられる。すなわち、吸気通路10内の吸気方向xに関して、フレキシブルチューブ110(110C,110D)が空気量調整バルブ30の上流側に設けられ、連通ポート108が空気量調整バルブ30の下流側に設けられる。
空気量調整バルブ30の内部構造およびスロットルボデー12の内部通路(副通路の一部)の詳細は後述する。
【0021】
空気量調整バルブ30は、スロットル装置100のスロットルボデー12から独立して(スロットルボデー12から離して)設けられてもよいし、スロットルボデー12に組付け可能に構成されてもよい。
空気量調整バルブ30をスロットルボデー12に組付け可能に構成する場合、スロットル装置100のコンパクト化の観点から、複数の吸気通路10(10A~10D)のうち弁軸方向yに隣り合う一対の吸気通路10間に空気量調整バルブ30を組み付けてもよい。
【0022】
図1に示す例示的な実施形態では、空気量調整バルブ30は、一対の吸気通路10A,10B間に位置するように、スロットルボデーセクション12Aに組付けられる。スロットルボデーセクション12Aは、モータケーシング15を有するスロットルボデーセクション12Bに比べて空気量調整バルブ30のための設置スペースを確保しやすい。
空気量調整バルブ30は、スロットルボデーセクション12Aからz方向に突出するように組付けられる。
図1に示す例では、ギアケーシング14(及びモータケーシング15)は、スロットルボデー12からz方向に突出している。スロットルボデーセクション12Aからz方向に突出するように空気量調整バルブ30を設ける場合、ギアケーシング14の側方の空間を空気量調整バルブ30の設置スペースとして有効活用できる。
y方向視において、空気量調整バルブ30は、ギアケーシング14が占める領域の内部に収まるように配置されてもよい。この場合、空気量調整バルブ30のスロットルボデーセクション12Aからの突出端(空気量調整バルブ30の頂部)は、ギアケーシング14の頂部のz方向位置と、弁軸22のz方向位置との間に位置する。
【0023】
上記構成のスロットル装置100は、エンジンの吸気系統に配置される。
図2は、エンジンの吸気系統の一例を示す概略図である。同図に示すように、エンジン2は、複数のシリンダ3(3A,3B…)を含む。各々のシリンダ3は、吸気系統4及び排気系統6に接続される。
吸気系統4には、エアクリーナ5が設けられる。エアクリーナ5は、各吸気通路10(10A,10B…)に1個設けられてもよいし、2以上の吸気通路10(10A,10B…)に対して共通に設けられてもよい。エアクリーナ5からの吸気は、エアクリーナ5の下流側に位置するスロットル装置100の各吸気通路10(10A,10B…)を経て、エンジン2の各シリンダ3(3A,3B…)に流入する。吸気通路10(10A,10B…)を通過する吸気流量は、スロットルバルブ20(20A,20B…)によって調整される。
エンジン2を搭載した車両の燃料タンク8からの燃料蒸気は、キャニスタ9によって回収される。キャニスタ9で回収された燃料蒸気は、空気量調整バルブ30を介して吸気系統4に戻されてエンジン2において燃焼される。
【0024】
吸気系統4におけるエアクリーナ5とスロットルバルブ20との間の位置には、スロットル装置100の副通路102が接続される。副通路102は、吸気系統4においてスロットルバルブ20(20A,20B…)を迂回するように設けられる。
副通路102は、吸気系統4のうちスロットルバルブ20(20A,20B…)の上流側の通路に連通する上流側部分104と、吸気系統4のうちスロットルバルブ20(20A,20B…)の下流側の通路に連通する下流側部分106(106A,106B…)とを含む。
副通路102の上流側部分104は、スロットル装置100の吸気通路10のうちスロットルバルブ20の上流側の部分に接続されてもよいし、エアクリーナ5の下流側かつ吸気通路10の上流側の管路に接続されてもよい。同様に、副通路102の下流側部分106は、スロットル装置100の吸気通路10のうちスロットルバルブ20の下流側の部分に接続されてもよいし、吸気系統4のうちスロットル装置100とエンジン2との間の通路に接続されてもよい。
図2に示す例示的な実施形態では、エアクリーナ5の下流側かつ吸気通路10Aの上流側の管路に副通路102の上流側部分104が接続される。また、副通路102の下流側部分106(106A,106B…)は、吸気通路10(10A,10B…)のうちスロットルバルブ20(20A,20B…)の下流側に接続される。
【0025】
副通路102には、スロットル装置100の空気量調整バルブ30が設けられる。
空気量調整バルブ30は、弁体40と、弁体40を軸方向(
図2の上下方向)に案内するためのガイド部50と、弁体40を軸方向に駆動するためのアクチュエータ60と、を含む。
【0026】
空気量調整バルブ30は、弁体40の軸方向位置に応じて、副通路102の上流側部分104と、副通路102の下流側部分106(106A,106B…)との連通状態を切り替える。
図2には、弁体40によって上流側部分104と下流側部分106(106A,106B…)との連通が遮断された状態を示しており、副通路102を介したバイパス空気の流れは存在しない。
【0027】
空気量調整バルブ30は、キャニスタ9との連通ポート108を含む。
空気量調整バルブ30は、弁体40の軸方向の位置に応じて、キャニスタ9と副通路102の下流側部分106(106A,106B…)との連通状態を切り替える。
図2には、弁体40によって連通ポート108と下流側部分106(106A,106B…)との連通が遮断された状態を示しており、キャニスタ9で回収された燃料蒸気の下流側部分106(106A,106B…)を介した流れは存在しない。
【0028】
続けて、空気量調整バルブ30の詳細構造について説明する。
図3は、一実施形態に係る空気量調整バルブの構造を示す断面図であり、
図1の空気量調整バルブ30を通るxz平面に沿ったスロットル装置100の部分断面図である。
図4Aは、空気量調整バルブのガイド筒の第1連通孔の配置例を示す断面図である。
図4Bは、空気量調整バルブのガイド筒の第2連通孔の配置例を示す断面図である。
図5は、第1連通孔および第2連通孔の位置関係を説明するためのガイド筒の斜視断面図である。
図6は、スロットルボデーの斜視断面図である。
図7は、一実施形態に係る空気量調整バルブの一部の部品群を示す斜視図である。
図8は、組立て後の
図7に示す部品群の斜視断面図である。
【0029】
図3に示すように、空気量調整バルブ30は、スロットルボデー12(スロットルボデーセクション12A)に組付けられる。
なお、
図3に示す例では、空気量調整バルブ30は、空気量調整バルブ30の軸方向がz方向に沿うようにスロットルボデー12に組付けられる。スロットルボデー12に組付けた状態における空気量調整バルブ30の配向は、この例に限られず、空気量調整バルブ30は、任意の配向でスロットルボデー12に組付けられ得る。
【0030】
幾つかの実施形態では、空気量調整バルブ30は、弁体40を軸方向に案内するためのガイド部50と、弁体40を軸方向に駆動するためのアクチュエータ60と、を含む。ガイド部50は、弁体40を取り囲むように弁体40の径方向外側に設けられる。アクチュエータ60によって弁体40が軸方向に駆動されると、ガイド部50の内周面51に沿って弁体40が軸方向に摺動する。
【0031】
弁体40は、円筒形状を有する円筒部42を含み、プランジャであってもよい。円筒部42の外周面は、ガイド部50の内周面51に摺接する。弁体40のバイパス空気流れ方向(
図3の矢印103)の上流側には、スロットルボデー12の内部通路として副通路102の上流側部分104が設けられている。スロットルボデー12への空気量調整バルブ30の組付け状態において、副通路102の上流側部分104に弁体40が面する。
一実施形態では、
図3及び
図7に示すように、弁体40は、円筒部42の上端部から径方向内側に延在するディスク部44を含む。ディスク部44は、後述の可動部70の突出部74を介してアクチュエータ60の駆動力を受ける。ディスク部44が可動部70から離れてしまわないように、ディスク部44とスロットルボデー12との間にスプリング13が設けられる。スプリング13によって弁体40のディスク部44は、可動部70に対して軸方向に押し付けられる。
アクチュエータ60による弁体40の軸方向における可動範囲Δz(=Z_max-Z_min)は、円筒部42の下端部のz方向位置を基準とし、この基準位置のz座標が最小となるZ_minと、基準位置のz座標が最大となるZ_maxとの間の距離として定義される。
なお、ディスク部44は、
図7に示すように、径方向内側に貫通穴46を有するとともに、貫通穴46の外周側に複数のスリット47を有してもよい。
【0032】
ガイド部50の内周面51には、複数の第1連通孔52(52A~52D)と、第2連通孔54とが設けられる。第1連通孔52及び第2連通孔54の形状は、特に限定されないが、例えば、円形又は楕円形であってもよい。
複数の第1連通孔52(52A~52D)は、
図2に示した副通路102の下流側部分106(106A~106D)を介して、複数の吸気通路10(10A~10D)のうちスロットルバルブ20(20A~20D)の下流側にそれぞれ連通する。
図3には、複数の第1連通孔52(52A~52D)のうち、吸気通路10B,10Cにそれぞれ連通する第1連通孔52B,52Cを示している。
第2連通孔54は、連通ポート108を介してキャニスタ9に連通する。
【0033】
幾つかの実施形態では、複数の第1連通孔52(52A~52D)は、
図3、
図4A及び
図6に示されるように、同一の軸方向位置、かつ、互いに異なる周方向位置に設けられる。
図6に示すとおり、第1連通孔52A,52Bは、スロットルボデーセクション12Aに設けられる内部通路により形成される副通路102の下流側部分106A,106Bを介して、吸気通路10A,10Bのスロットルバルブ20A,20Bの下流側に接続される。これに対し、第1連通孔52C,52Dは、副通路102の下流側部分106C,106Dを介して吸気通路10C,10Dのスロットルバルブ20C,20Dの下流側に接続される。ここで、
図6には、副通路102の下流側部分106C,106Dの一部を構成するスロットルボデーセクション12Aの内部通路を部分的に示している。これら二本の内部通路は、xy平面に対して斜め方向にスロットルボデーセクション12Aを貫通し、副通路102の下流側部分106C,106Dの一部を構成するフレキシブルチューブ110C,110D(
図1参照)に連通する。
【0034】
図4A及び
図6に示す例示的な実施形態では、ガイド部50の中心O周りの第1連通孔52Aと第1連通孔52Bとの間の角度θ1、および、ガイド部50の中心O周りの第1連通孔52Cと第1連通孔52Dとの間の角度θ2は、90度未満に設定される。角度θ1及びθ2は、45度以上80度以下に設定されてもよい。
これにより、スロットル装置100の弁軸方向yにおける吸気通路10A,10B間の限られたスペースを利用して、各々の第1連通孔52(52A~52D)に接続されるスロットルボデーセクション12Aの内部通路(副通路102の下流側部分106A~106D)を配置できる。
【0035】
幾つかの実施形態では、第2連通孔54は、各々の第1連通孔52(52A~52D)から軸方向にずれた位置に設けられてもよい。この場合、第1連通孔52の図心と第2連通孔54の図心とが、軸方向においてずれていれば足り、第1連通孔52及び第2連通孔54が軸方向において部分的にオーバーラップしていてもよい。
図3及び
図5に示す実施形態では、第2連通孔54の図心が、軸方向において、各々の第1連通孔52(52A~52D)の図心よりもアクチュエータ60側にずれるように、第1連通孔52と第2連通孔とが軸方向において互いにオーバーラップせずに設けられる。
【0036】
図4A、
図4B及び
図5に示す例示的な実施形態では、第2連通孔54は、周方向において、スロットルボデーセクション12Aに設けられる第1連通孔52A,52B間の角度θ1の範囲内に設けられる。すなわち、第2連通孔54は、周方向に関して、第1連通孔52A,52B間に設けられる。例えば、第2連通孔54は、第1連通孔52A,52B間の角度θ1の二等分線上に設けられてもよい。
この場合、ガイド部50の中心Oと第2連通孔54とを結んだ線分は、吸気方向xと略平行となり、空気量調整バルブ30からx方向に突出するように設けられる連通ポート108(
図1参照)と第2連通孔54との接続が容易になる。
【0037】
一実施形態において、ガイド部50は、
図3に示すように、弁体40を取り囲む円筒形状のガイド筒である。ガイド筒(ガイド部)50は、スロットルボデー12(スロットルボデーセクション12A)に設けられた円筒形状の穴(ボア)に挿入される。
他の実施形態では、ガイド部50は、スロットルボデー12に設けられた円筒形状のボアの壁面により形成される。この場合、ガイド部50の内周面に開口する第1連通孔52は、副通路102の下流側部分106(106A~106B)のボア壁面への開口端により形成される。
【0038】
図3に示すように、複数の第1連通孔52(52A~52D)は、軸方向(z方向)に関して、弁体40の可動範囲Δzの内側に位置する。
このため、可動範囲内において弁体40が軸方向に移動するに伴い、各々の第1連通孔52(52A~52D)のうち弁体40の円筒部42によって塞がれていない第1有効開口面積が変化し、副通路102の上流側部分104から各々の吸気通路10(10A~10D)に向かって流れるバイパス空気量が調整される。
図3に示す例では、第1連通孔52B,52Cの第1有効開口面積は第1連通孔52B,52Cの全開口面積と略同等であり、第1連通孔52に関して空気量調整バルブ30は略全開の状態になっている。
【0039】
同様に、第2連通孔54も、
図3に示すように、軸方向(z方向)に関して、弁体40の可動範囲Δzの内側に位置する。
このため、可動範囲内において弁体40が軸方向に移動するに伴い、第2連通孔54のうち弁体40の円筒部42によって塞がれていない第2有効開口面積が変化し、連通ポート108及び第2連通孔54を介してガイド部50の内側空間に取り込まれる燃料蒸気量が調整される。ガイド部50の内側空間に取り込まれた燃料蒸気は、副通路102の上流側部分104を流れるバイパス空気(矢印103参照)に混ざり、各第1連通孔52(52A~52D)を経由して各々の吸気通路10(10A~10D)に向かって流れる。
図3に示す例では、第2連通孔54は全閉であり(第2有効開口面積=0)、連通ポート108を介したキャニスタ9からの燃料蒸気流れは弁体40によって遮断される。
【0040】
アクチュエータ60は、弁体40を軸方向に駆動可能であれば任意の構成を有し得る。
一実施形態では、
図3に示すように、アクチュエータ60は、ケーシング61と、コイル62を含むステータと、コイル62の径方向内側に設けられるマグネット64を含む可動部と、可動部に設けられた出力軸66とを含むステッピングモータである。ステッピングモータ(アクチュエータ)60の出力軸66は、空気量調整バルブ30の軸方向(z方向)に延在する。出力軸66の外周には、雄ねじ67が設けられる。
なお、
図3に示す例示的な実施形態では、締結ボルト68及び押えプレート69を用いて、ステッピングモータ(アクチュエータ)60を含む空気量調整バルブ30のスロットルボデー12への組付けが行われる。押えプレート69は、ステッピングモータ60のケーシング61の外周縁に沿って設けられる。締結ボルト68をスロットルボデー12にねじ込むと、ケーシング61のフランジ部が押えプレート69とスロットルボデー12との間に挟み込まれた状態で、ケーシング61がスロットルボデー12に固定される。
【0041】
図3及び
図7に示すように、可動部70は、雌ねじ71を有する円筒部72と、円筒部72の一端部から径方向外側に突出する複数の突出部74を有する。また、円筒部72の他端部には、径方向外側に突出する複数の突起部77が設けられ、複数の突起部77によってストッパ部76が構成される。
円筒部72は、内周面に雌ねじ71が形成された軸方向穴73を有する。軸方向穴73には、ステッピングモータ60の出力軸66がねじ込まれ、円筒部72の雌ねじ71と出力軸66の雄ねじ67とが螺合する。円筒部72の外径D1は、弁体40の貫通穴46の内径D2以下の寸法を有する。
突出部74は、周方向に複数設けられる。周方向に隣り合う突出部74間は、スリット75によって隔てられる。スリット75は、後述の回り止め部80の複数の係止ロッド82が通過可能である。可動部70の中心軸を挟んで互いに反対側に位置する一対の突出部74を通る可動部70の最大外径D3は、弁体40の貫通穴46の内径D2よりも大きい。スリット75の幅w1は、後述の回り止め部80の係止ロッド82の幅w2以上である。すなわち、係止ロッド82は、スリット75を通過可能である。可動部70の突出部74は、弁体40のディスク部44に当接し、アクチュエータ(ステッピングモータ)60の駆動力を弁体40に伝達する機能を有する。また、突出部74は、可動部70が最もアクチュエータ60側に移動したときに後述の回り止め部80の係止リング84と当接する。すなわち、可動部70の突出部74は、可動部70の可動範囲Δzにおける最大位置Z_maxを規定するストッパとしても機能する。
ストッパ部76の複数の突起部77は、周方向に互いに間隔を空けて配置される。各々の突起部77の幅w3は、弁体40のスリット47の幅w4以下である。すなわち、突起部77はスリット47を通過可能である。突起部77の外面は、軸方向においてアクチュエータ60側に近づくにつれて拡径するテーパ形状を有する。ストッパ部76(突起部77)は、可動部70が最もアクチュエータ60から遠くまで移動したときに、スロットルボデー12に当接する。すなわち、すなわち、可動部70のストッパ部76は、可動部70の可動範囲Δzにおける最小位置Z_minを規定するストッパとして機能する。
【0042】
回り止め部80は、ケーシング61側に固定される静止部材であり、出力軸66の回転に伴う可動部70の連れ回りを阻止する機能を有する。
回り止め部80は、可動部70のスリット75に係合して可動部70の回転を規制するための複数本の係止ロッド82と、可動部70が最もアクチュエータ60側に移動したときに突出部74と当接する係止リング84とを含む。各々の係止ロッド82は、係止リング84から軸方向に延びる。
【0043】
上記構成の弁体40、可動部70及び回り止め部80を含む空気量調整バルブ30を組み立てる際、ストッパ部76の突起部77の周方向位置を弁体40のスリット47の周方向位置に合わせる。この状態で、突起部77がスリット47を通過するように、可動部70を弁体40に対して軸方向に相対的に移動させる。これにより、突起部77(ストッパ部76)が、円筒部42の内側に侵入する。その後、突出部74とディスク部44との周方向位置が一致し、かつ、スリット75とスリット47の周方向位置が一致するように、可動部70を周方向に回動させる。こうして組み上げられた弁体40及び可動部70は、スプリング13が内部に予め設置されたガイド部50の内側に取り付けられる。
他方、回り止め部80は、アクチュエータ60のケーシング61に予め固定されている。ケーシング61に固定された回り止め部80の係止ロッド82が、スリット75及びスリット47に挿通されるように、回り止め部80を可動部70及び弁体40に組み付ける。これにより、
図8に示すとおり、係止ロッド82が、可動部70のスリット75および弁体40のスリット47を貫通する。
最後に、
図3に示すように、押えプレート69及び締結ボルト68を用いて、ケーシング61をスロットルボデー12に固定する。なお、ケーシング61とガイド部50との間には、円筒スペーサ63が設けられる。円筒スペーサ63を介してケーシング61によってガイド部50が軸方向に固定されるようになっている。
【0044】
上記構成の空気量調整バルブ30のバイパス空気量及び燃料蒸気量の制御特性は、第1連通孔52及び第2連通孔54の開口位置によって調整可能である。
図9Aは、一実施形態に係る第1連通孔52及び第2連通孔54のz方向における位置関係を示す図である。
図9Bは、一実施形態に係るバイパス空気量および燃料蒸気量の制御特性を示す図である。
図10Aは、他の実施形態に係る第1連通孔52及び第2連通孔54のz方向における位置関係を示す図である。
図10Bは、他の実施形態に係るバイパス空気量および燃料蒸気量の制御特性を示す図である。
図11Aは、さらに別の実施形態に係る第1連通孔52及び第2連通孔54のz方向における位置関係を示す図である。
図11Bは、さらに別の実施形態に係るバイパス空気量および燃料蒸気量の制御特性を示す図である。
なお、
図9B、
図10B、
図11Bの横軸は、軸方向(z方向)における弁体40の移動量である。
【0045】
図9Aに示す実施形態では、円形の第1連通孔52(52A~52D)の中心、および、円形の第2連通孔54の中心のz方向位置が一致している。
この場合、弁体40の軸方向(z方向)への移動に伴い、弁体40によって塞がれていない第1連通孔52の第1有効開口面積、および、弁体40によって塞がれていない第2連通孔54の第2有効開口面積が同期して変化する。
その結果、
図9Bに示すように、第1連通孔52を介した各吸気通路10へのバイパス空気量、および、第2連通孔54を介して副通路102を流れるバイパス空気流に混入される燃料蒸気量も連動して変化する。
【0046】
これに対し、
図10Aに示す実施形態では、円形の第1連通孔52(52A~52D)の中心に比べて、円形の第2連通孔54の中心の方がz方向に関してアクチュエータ60側にずれている。但し、第1連通孔52及び第2連通孔54は、z方向に関して互いに部分的にオーバーラップしている。
この場合、弁体40の軸方向(z方向)への移動に伴う第1有効開口面積と第2有効開口面積の変化の開始タイミング及び終了タイミングにずれが生じる。具体的には、第1連通孔52及び第2連通孔54が全閉の状態から弁体40の軸方向の移動を開始すると、最初に第1連通孔52の第1有効開口面積が増加し始める。その後、弁体40の軸方向の継続的な移動に伴い、第2連通孔54の第2有効開口面積が遅れて増加し始める。第1連通孔52が全開になった後も、第2連通孔54の第2有効開口面積の増加は暫くの間継続する。
その結果、
図10Bに示すように、第1連通孔52を介した各吸気通路10へのバイパス空気量が最初に増加し始める。その後、第2連通孔54を介して副通路102を流れるバイパス空気流に混入される燃料蒸気量が遅れて増加し始める。バイパス空気量が最大値に到達した後、燃料蒸気量が遅れて最大値に到達する。
【0047】
これに対し、
図11Aに示す実施形態では、円形の第1連通孔52(52A~52D)の中心に比べて、円形の第2連通孔54の中心の方がz方向に関してアクチュエータ60側にずれている。また、第1連通孔52及び第2連通孔54は、z方向に関して互いにオーバーラップしておらず、第1連通孔52と第2連通孔54との間にz方向におけるギャップgが存在する。
この場合、弁体40の軸方向(z方向)への移動に伴う第1有効開口面積と第2有効開口面積の変化の開始タイミング及び終了タイミングにずれが生じる。具体的には、第1連通孔52及び第2連通孔54が全閉の状態から弁体40の軸方向の移動を開始すると、最初に第1連通孔52の第1有効開口面積が増加し始める。第1連通孔52が全開になって第1有効開口面積が最大値に到達した後、弁体40の軸方向のさらなる移動に伴い、第2連通孔54の第2有効開口面積がようやく増加し始める。
その結果、
図11Bに示すように、第1連通孔52を介した各吸気通路10へのバイパス空気量が増加し、バイパス空気量が最大値に到達する。その後、第2連通孔54を介して副通路102を流れるバイパス空気流に混入される燃料蒸気量が遅れて増加し始める。
【0048】
上述の幾つかの実施形態に係る多連スロットル装置1の特徴的な構成を整理すれば、以下のとおりである。
【0049】
[1]本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る多連スロットル装置(100)は、
複数の吸気通路(10)を有するスロットルボデー(12)と、
複数の吸気通路(10)にそれぞれ設けられる複数のスロットルバルブ(20)と、
複数のスロットルバルブ(20)をそれぞれ迂回する複数の副通路(102)と、
複数の副通路(102)を流れる空気量を調整するための空気量調整バルブ(30)と、
を備え、
空気量調整バルブ(30)は、
弁体(40)と、
弁体(40)を取り囲むように弁体(40)の径方向外側に設けられ、弁体(40)を軸方向に案内するためのガイド部(50)と、
ガイド部(50)の内周面(51)に沿って弁体(40)が軸方向に摺動するように弁体(40)を駆動するためのアクチュエータ(60)と、
を含み、
ガイド部(50)の内周面(51)には、
複数の吸気通路(10)のうちスロットルバルブ(20)の下流側にそれぞれ連通する複数の第1連通孔(52)と、
燃料蒸気を回収するためのキャニスタ(9)と連通する第2連通孔(54)と、
が開口し、
アクチュエータ(60)は、各々の第1連通孔(52)のうち弁体(40)によって塞がれていない第1有効開口面積、および、第2連通孔(54)のうち弁体(40)によって塞がれていない第2有効開口面積が変化するよう、弁体(40)の軸方向における位置を調節するように構成される。
【0050】
上記[1]の構成によれば、多連スロットル装置の複数の副通路を流れる空気量を調整するための空気量調整バルブが、ガイド部の内周面に設けた第1連通孔および第2連通孔のそれぞれの有効開口面積を制御することで燃料蒸気パージ量の調節機能を実現できる。
このように、空気量調整バルブが、副通路を流れるバイパス空気の流量の調節機能、および、燃料蒸気パージ量の調節機能を果たすことができるから、空気量調整バルブとは別に燃料蒸気パージ量の調節弁を設ける場合に比べて部品点数を削減できる。よって、多連スロットル装置のコンパクト化を図ることができる。
また、ガイド部の内周面に沿って軸方向に摺動する弁体により第1連通孔及び第2連通孔の有効開口面積を調節するようにしたので、円錐形のプランジャによってバイパス空気量又は燃料蒸気パージ量の調節を行うバルブを採用する場合に比べて、流量調整の精度が向上する。このため、各吸気通路へのバイパス空気の分配量のばらつきの抑制、および、燃料蒸気パージ量に対するバイパス空気の流量比の適切な制御が可能になる。
【0051】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]の構成において、
複数の第1連通孔(52)は、同一の軸方向位置、かつ、互いに異なる周方向位置に設けられる。
【0052】
上記[2]の構成によれば、弁体の軸方向位置の調節により、複数の吸気通路にそれぞれ対応する複数の第1連通孔の有効開口面積を互いに同期して変化させることができる。よって、各吸気通路へのバイパス空気の分配量のばらつきの抑制することができる。
【0053】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]の構成において、
第2連通孔(54)は、各々の第1連通孔(52)から軸方向にずれた位置に設けられる。
【0054】
上記[2]の構成によれば、弁体の軸方向位置の調節により、キャニスタと連通する第2連通孔の有効開口面積を第1連通孔から独立したタイミングで変化させることができる。よって、各吸気通路へのバイパス空気の供給制御の影響を受けず、燃料蒸気パージ量の制御を適切に行うことができる。
【0055】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]~[3]の何れかの構成において、
アクチュエータ(60)は、外周に雄ねじ(67)が設けられた出力軸(66)を含むステッピングモータであり、
空気量調整バルブ(30)は、
出力軸(66)の雄ねじ(67)と螺合する雌ねじ(71)を有する可動部(70)と、
可動部(70)の回転を規制するための回り止め部(80)と、
を含み、
ステッピングモータ(60)は、出力軸(66)の回転に伴い可動部(70)を軸方向に移動させ、可動部(70)を介して弁体(40)を軸方向に動かすように構成される。
【0056】
上記[4]の構成によれば、ステッピングモータを用いた可動部及び弁体の高精度の位置決めが可能となり、簡素な構成で、各吸気通路に供給されるバイパス空気量および燃料蒸気パージ量の調節を適切に行うことができる。
【0057】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]~[4]の何れかの構成において、
ガイド部(50)は、弁体(40)を取り囲むガイド筒である。
【0058】
上記[5]の構成によれば、弁体、ガイド筒およびアクチュエータを含む空気量調整バルブを多連スロットル装置のスロットルボデーから独立した部品として取り扱うことができる。これにより、異なる品種の多連スロットル装置に対して共通部品としての空気量調整バルブの搭載が容易になる。あるいは、スロットルボデー側に及ぼす影響を低減しながら、多連スロットル装置の要求仕様に応じて空気量調整バルブの設計を独立して変更することが容易になる。
【0059】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]~[5]の何れかの構成において、
複数の吸気通路(10)は、スロットルバルブ(20)の弁軸方向(y)に並ぶように、弁軸方向(y)に直交する方向(x)に沿って延在し、
空気量調整バルブ(30)は、複数の吸気通路(10)のうち弁軸方向(y)において隣り合う一対の吸気通路(10A,10B)の間に設けられる。
【0060】
上記[6]の構成によれば、多連スロットル装置の一対の吸気通路の間のスペースを有効活用し、空気量調整バルブを配置することができる。
【0061】
[7]幾つかの実施形態では、上記[6]の構成において、
スロットルボデー(12)は、複数の第1連通孔(52)のうち2個の連通孔(52A,52B)をそれぞれ隣り合う一対の吸気通路(10A,10B)に連通させるための内部通路(106A,106B)を含み、
多連スロットル装置(100)は、
複数の吸気通路(10)のうち隣り合う一対の吸気通路(10A,10B)を除く他の吸気通路(10C,10D)と、他の吸気通路(10C,10D)に対応する第1連通孔(52C,52D)とを連通させるためのフレキシブルチューブ(110C,110D)
を備える。
【0062】
上記[7]の構成によれば、スロットルボデーの内部通路又はフレキシブルチューブを介して各々の第1連通孔を対応する吸気通路に接続することが可能となり、多連スロットル装置をより一層コンパクト化できる。
【0063】
[8]本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る空気量調整バルブ(30)は、
多連スロットル装置(100)の複数のスロットルバルブ(20)をそれぞれ迂回する複数の副通路(102)の空気量を調整するための空気量調整バルブ(30)であって、
弁体(40)と、
弁体(40)を取り囲むように弁体(40)の径方向外側に設けられ、弁体(40)を軸方向に案内するためのガイド部(50)と、
ガイド部(50)の内周面(51)に沿って弁体(40)が軸方向に摺動するように弁体(40)を駆動するためのアクチュエータ(60)と、
を備え、
ガイド部(50)の内周面(51)には、
複数の第1連通孔(52)と、
各々の第1連通孔(52)から軸方向にずれた位置に設けられる第2連通孔(54)と、
が開口し、
アクチュエータ(60)は、各々の第1連通孔(52)のうち弁体(40)によって塞がれていない第1有効開口面積、および、第2連通孔(54)のうち弁体(40)によって塞がれていない第2有効開口面積が変化するよう、弁体(40)の軸方向における位置を調節するように構成される。
【0064】
複数の第1連通孔がそれぞれ複数の吸気通路(スロットルバルブの下流側の部位)に連通し、第2連通孔がキャニスタに連通するように、上記[8]の構成に係る空気量調整バルブを多連スロットル装置に組み付ければ、バイパス空気の流量の調節機能および燃料蒸気パージ量の調節機能を空気量調整バルブにより実現できる。
このように、空気量調整バルブが、副通路を流れるバイパス空気の流量の調節機能、および、燃料蒸気パージ量の調節機能を果たすことができるから、空気量調整バルブとは別に燃料蒸気パージ量の調節弁を設ける場合に比べて部品点数を削減できる。よって、多連スロットル装置のコンパクト化を図ることができる。
また、上記[8]の構成によれば、各々の第1連通孔から軸方向にずれた位置に第2連通孔を設けたので、弁体の軸方向位置の調節により、キャニスタと連通する第2連通孔の有効開口面積を第1連通孔から独立したタイミングで変化させることができる。よって、各吸気通路へのバイパス空気の供給制御の影響を受けず、燃料蒸気パージ量の制御を適切に行うことができる。
【0065】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0066】
1 :多連スロットル装置
9 :キャニスタ
10(10A~10D) :吸気通路
12 :スロットルボデー
20(20A~20D :スロットルバルブ
22 :弁軸
30 :空気量調整バルブ
40 :弁体
50 :ガイド部
51 :内周面
52(52A~52D) :第1連通孔
54 :第2連通孔
60 :アクチュエータ(ステッピングモータ)
66 :出力軸
67 :雄ねじ
70 :可動部
71 :雌ねじ
80 :回り止め部
100 :スロットル装置(多連スロットル装置)
102 :副通路
110(110C~110D):フレキシブルチューブ
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸気通路を有するスロットルボデーと、
前記複数の吸気通路にそれぞれ設けられる複数のスロットルバルブと、
前記複数のスロットルバルブをそれぞれ迂回する複数の副通路と、
前記複数の副通路を流れる空気量を調整するための空気量調整バルブと、
を備え、
前記空気量調整バルブは、
弁体と、
前記弁体を取り囲むように前記弁体の径方向外側に設けられ、前記弁体を軸方向に案内するためのガイド部と、
前記ガイド部の内周面に沿って前記弁体が前記軸方向に摺動するように前記弁体を駆動するためのアクチュエータと、
を含み、
前記ガイド部の前記内周面には、
前記複数の吸気通路のうち前記スロットルバルブの下流側にそれぞれ連通する複数の第1連通孔と、
燃料蒸気を回収するためのキャニスタと連通する第2連通孔と、
が開口し、
前記アクチュエータは、各々の前記第1連通孔のうち前記弁体によって塞がれていない第1有効開口面積、および、前記第2連通孔のうち前記弁体によって塞がれていない第2有効開口面積が変化するよう、前記弁体の前記軸方向における位置を調節するように構成された
多連スロットル装置。
【請求項2】
前記複数の第1連通孔は、同一の軸方向位置、かつ、互いに異なる周方向位置に設けられる
請求項1に記載の多連スロットル装置。
【請求項3】
前記第2連通孔は、各々の前記第1連通孔から前記軸方向にずれた位置に設けられる
請求項1又は2に記載の多連スロットル装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、外周に雄ねじが設けられた出力軸を含むステッピングモータであり、
前記空気量調整バルブは、
前記出力軸の前記雄ねじと螺合する雌ねじを有する可動部と、
前記可動部の回転を規制するための回り止め部と、
を含み、
前記ステッピングモータは、前記出力軸の回転に伴い前記可動部を前記軸方向に移動させ、前記可動部を介して前記弁体を前記軸方向に動かすように構成された
請求項1又は2に記載の多連スロットル装置。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記弁体を取り囲むガイド筒である
請求項1又は2に記載の多連スロットル装置。
【請求項6】
前記複数の吸気通路は、前記スロットルバルブの弁軸方向に並ぶように、前記弁軸方向に直交する方向に沿って延在し、
前記空気量調整バルブは、前記複数の吸気通路のうち前記弁軸方向において隣り合う一対の吸気通路の間に設けられる
請求項1又は2に記載の多連スロットル装置。
【請求項7】
前記スロットルボデーは、前記複数の第1連通孔のうち2個の連通孔をそれぞれ前記隣り合う一対の吸気通路に連通させるための内部通路を含み、
前記複数の吸気通路のうち前記隣り合う一対の吸気通路を除く他の吸気通路と、前記他の吸気通路に対応する前記第1連通孔とを連通させるためのフレキシブルチューブを備える
請求項6に記載の多連スロットル装置。
【請求項8】
前記副通路は、
前記吸気通路のうち前記スロットルバルブの上流側の通路に連通する上流側部分と、
前記吸気通路のうち前記スロットルバルブの下流側の通路に連通する下流側部分と、
を含み、
前記ガイド部は、前記第2連通孔を介して取り込まれた前記燃料蒸気と、前記副通路の前記上流側部分を流れるバイパス空気との混合気を生成するための内側空間を有し、
各々の前記第1連通孔は、前記ガイド部の前記内側空間で生成された前記混合気を前記複数の吸気通路のうち前記スロットルバルブの下流側に導くように構成された
請求項1又は2に記載の多連スロットル装置。
【請求項9】
前記弁体は、前記ガイド部の前記内周面に摺接する外周面を有する円筒部を含み、
前記複数の第1連通孔および前記第2連通孔は、前記円筒部の下端部の位置を基準とした前記弁体の可動範囲の内側に位置する
請求項1又は2に記載の多連スロットル装置。
【請求項10】
多連スロットル装置の複数のスロットルバルブをそれぞれ迂回する複数の副通路の空気量を調整するための空気量調整バルブであって、
弁体と、
前記弁体を取り囲むように前記弁体の径方向外側に設けられ、前記弁体を軸方向に案内するためのガイド部と、
前記ガイド部の内周面に沿って前記弁体が前記軸方向に摺動するように前記弁体を駆動するためのアクチュエータと、
を備え、
前記ガイド部の前記内周面には、
複数の第1連通孔と、
各々の前記第1連通孔から前記軸方向にずれた位置に設けられる第2連通孔と、
が開口し、
前記アクチュエータは、各々の前記第1連通孔のうち前記弁体によって塞がれていない第1有効開口面積、および、前記第2連通孔のうち前記弁体によって塞がれていない第2有効開口面積が変化するよう、前記弁体の前記軸方向における位置を調節するように構成された
空気量調整バルブ。