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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132582
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸蔵還元型触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/58 20060101AFI20240920BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20240920BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B01J23/58 M
B01D53/86 243
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043415
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 満
(72)【発明者】
【氏名】酒井 真利
(72)【発明者】
【氏名】青木 正和
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小野地 裕策
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4D148AA30
4D148AB02
4D148AC01
4D148BA02X
4D148BA03X
4D148BA06Y
4D148BA07Y
4D148BA08Y
4D148BA11Y
4D148BA14X
4D148BA19Y
4D148BA32X
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BB01
4D148BB17
4D148DA03
4D148DA20
4D148EA04
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BC04A
4G169BC04B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169CC22
4G169DA05
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC06Y
4G169EC21X
4G169EC21Y
4G169FC08
4H039CA99
4H039CB40
(57)【要約】
【課題】CO吸蔵材としてリチウム(Li)を含有し、CO吸蔵性能及びメタン化触媒性能に優れたCO吸蔵還元型触媒を提供すること。
【解決手段】金属酸化物からなる多孔質担体と、前記多孔質担体に担持されたルテニウムと、前記多孔質担体に担持されたリチウムとを含有する触媒であって、
前記ルテニウムの含有量が触媒全体に対して1~5質量%であり、
前記リチウムの含有量が触媒全体に対してリチウム酸化物換算で6~9質量%である
ことを特徴とする二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物からなる多孔質担体と、前記多孔質担体に担持されたルテニウムと、前記多孔質担体に担持されたリチウムとを含有する触媒であって、
前記ルテニウムの含有量が触媒全体に対して1~5質量%であり、
前記リチウムの含有量が触媒全体に対してリチウム酸化物換算で6~9質量%である
ことを特徴とする二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【請求項2】
前記多孔質担体の比表面積が100~500m/gであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【請求項3】
前記多孔質担体の嵩密度が0.5~2g/mlであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【請求項4】
前記多孔質担体の造粒体の平均粒径が0.1~6mmであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(CO)吸蔵還元型触媒に関し、より詳しくは、リチウムを含有するCO吸蔵還元型触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)を原料としたメタン化反応は、近年の地球温暖化抑制のためのCO排出量削減の観点から注目されている。このようなメタン化反応に用いられる触媒としては、CO吸蔵材としての酸化カルシウム(CaO)とメタン化触媒としてのルテニウム(Ru)とがアルミナ等の担体に担持されたCO吸蔵還元型触媒(例えば、特開2020-110769号公報(特許文献1))や、CO吸蔵材としてのアルカリ金属酸化物とメタン化触媒としてのルテニウム(Ru)とがアルミナ担体に担持されたCO吸蔵還元型触媒(例えば、A.Portaら、Ind.Eng.Chem.Res.、2021年、第60巻、6706~6718頁(非特許文献1)及びS.Ciminoら、J.CO Utilization、2020年、第37巻、195~203頁(非特許文献2))が知られている。このようなCO吸蔵還元型触媒は、COを含むガスを流通させることによってCOを吸蔵し、還元ガス(例えば、H)を流通させることによって吸蔵したCOを還元してメタン(CH)を生成する。
【0003】
しかしながら、CO吸蔵材としてCaOを用いたCO吸蔵還元型触媒においては、吸蔵/還元時の動作開始温度が320℃と高温であるため、CO吸蔵還元型触媒システムの作動時に熱エネルギーを過剰に投入する必要があり、システムのエネルギー効率が低下するという問題があった。また、高温下では、排ガスに含まれるOとRuが反応するため、Ruの活性が恒久的に低下するおそれがあった。さらに、CaOはCO吸蔵密度が低いため、多量の触媒を用いる必要があり、その結果、反応器を大型化する必要があり、また、Ru量も増大するため、設備費用が高額となるという問題もあった。
【0004】
さらに、非特許文献1には、CO吸蔵材としてアルカリ金属としてLiを用いたCO吸蔵還元型触媒は、他のアルカリ金属を用いたCO吸蔵還元型触媒に比べて触媒活性が低くなることが記載されており、また、非特許文献2に記載のCO吸蔵還元型触媒においては、アルカリ金属としてLiを用いた場合、他のアルカリ金属を用いた場合に比べて触媒活性は向上するものの、排ガス中のCO処理能力としては未だ十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-110769号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A.Portaら、Ind.Eng.Chem.Res.2021年、第60巻、6706~6718頁
【非特許文献2】S.Ciminoら、J.CO2 Utilization、2020年、第37巻、195~203頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、CO吸蔵材としてリチウム(Li)を含有し、CO吸蔵性能及びメタン化触媒性能(以下、これらをまとめて「CO処理能力」ともいう)に優れたCO吸蔵還元型触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、CO吸蔵材としてのリチウム(Li)とメタン化触媒としてのルテニウム(Ru)とがアルミナ等の担体に担持されたCO吸蔵還元型触媒において、Ru含有量とLi含有量を特定の範囲内とすることによって、優れたCO処理能力が発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
【0010】
[1]金属酸化物からなる多孔質担体と、前記多孔質担体に担持されたルテニウムと、前記多孔質担体に担持されたリチウムとを含有する触媒であって、
前記ルテニウムの含有量が触媒全体に対して1~5質量%であり、
前記リチウムの含有量が触媒全体に対してリチウム酸化物換算で6~9質量%である
二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【0011】
[2]前記多孔質担体の比表面積が100~500m/gである、[1]に記載の二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【0012】
[3]前記多孔質担体の嵩密度が0.5~2g/mlである、[1]又は[2]に記載の二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【0013】
[4]前記多孔質担体の造粒体の平均粒径が0.1~6mmである、[1]~[3]のうちのいずれか1項に記載の二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、CO吸蔵材としてリチウム(Li)を含有するCO吸蔵還元型触媒において、優れたCO処理能力を発現させることができ、低温においても優れたCO処理能力を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例及び比較例で得られた触媒の性能評価試験における温度プロファイルを示すグラフである。
図2】各種CO吸蔵材の含有量とCO処理能力との関係を示すグラフである。
図3】触媒の性能評価試験における評価温度T1とCO処理能力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0017】
〔CO吸蔵還元型触媒〕
本発明の二酸化炭素(CO)吸蔵還元型触媒は、金属酸化物からなる多孔質担体と、前記多孔質担体に担持されたルテニウムと、前記多孔質担体に担持されたリチウムとを含有する触媒である。
【0018】
本発明に用いられる担体は、金属酸化物からなる多孔質担体である。担体として多孔質のものを用いることによって、ガス成分が良好に拡散し、CO処理能力が向上する。前記金属酸化物としては、CO吸蔵還元型触媒の担体として用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、セリア(CeO)、ゼオライト等の公知の金属酸化物が挙げられる。これらの金属酸化物のうち、メタン化触媒性能が高くなるという観点から、アルミナ、チタニアが好ましく、アルミナがより好ましい。また、このような金属酸化物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記多孔質担体の比表面積としては、100~500m/gが好ましく、200~300m/gがより好ましい。前記多孔質担体の比表面積が前記下限未満になると、CO吸蔵速度が減少し、CO処理能力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、多孔質担体の嵩密度が減少し、CO吸蔵密度が低下する傾向にある。
【0020】
また、前記多孔質担体の嵩密度としては、0.5~2g/mlが好ましく、0.8~1.0g/mlがより好ましい。前記多孔質担体の嵩密度が前記下限未満になると、触媒の嵩密度が減少し、CO吸蔵密度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、CO処理能力を有する活性面積が減少し、CO処理能力が低下する傾向にある。
【0021】
さらに、前記多孔質担体の平均細孔径としては、3~50nmが好ましく、5~20nmがより好ましい。前記多孔質担体の平均細孔径が前記下限未満になると、ガス成分が十分に拡散せず、CO処理能力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、細孔構造の安定性が低下する傾向にある。
【0022】
また、前記多孔質担体の細孔容積としては、0.3~1.5cm/gが好ましく、0.3~1.0cm/gがより好ましい。前記多孔質担体の細孔容積が前記下限未満になると、ガス成分が十分に拡散せず、CO処理能力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記多孔質担体の熱的安定性が低下する傾向にある。
【0023】
さらに、前記多孔質担体は造粒体であることが好ましく、その平均粒径としては、0.1~6mmが好ましく、0.5~3mmがより好ましい。前記多孔質担体の造粒体の平均粒径が前記下限未満になると、ガス成分の流通が妨げられるため、ガスの流通のための加圧により余剰のエネルギーが必要となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、造粒体内部へのガス拡散が妨げられるため、CO処理能力が低下する傾向にある。
【0024】
本発明のCO吸蔵還元型触媒においては、前記多孔質担体にルテニウム(Ru)が担持されている。このRuは、メタン化触媒として作用するものであり、具体的には、CO吸蔵材に吸蔵されたCOが還元ガス(例えば、H)と反応して還元されることによってメタン(CH)が生成する際にCOの還元反応を促進するものである。
【0025】
本発明のCO吸蔵還元型触媒において、Ruの含有量は、触媒全体に対して1~5質量%である。Ruの含有量が前記範囲内にあると、COの還元反応が促進され、メタン化触媒活性が向上する。一方、Ruの含有量が前記下限未満になると、COの還元反応が十分に促進されず、メタン化触媒活性が低下する。他方、Ruの含有量が前記上限を超えると、前記多孔質担体の細孔が閉塞してCO吸蔵量が減少するため、CO吸蔵性能が低下したり、Ruが粒成長するため、メタン化触媒活性が低下したりする。
【0026】
また、本発明のCO吸蔵還元型触媒においては、前記多孔質担体にリチウム(Li)が担持されている。Liは、CO吸蔵材として作用するものである。このようなLiは、通常、酸化物の状態で前記多孔質担体に担持されている。
【0027】
なお、CO吸蔵材としてLiを用いたCO吸蔵還元型触媒が、他のアルカリ金属を用いたCO吸蔵還元型触媒に比べてCO処理能力が高くなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、CO吸蔵材としてアルカリ金属を含有するCO吸蔵還元型触媒に、COを含有するガスを接触させると、COはアルカリ金属と反応して炭酸塩を形成することによって触媒中に吸蔵される〔CO吸蔵過程〕。そして、COを吸蔵した触媒に、Hを含有するガスを接触させると、COはHによって還元されてメタン(CH)が生成する〔還元過程〕。
【0028】
アルカリ金属としてLiを用いた場合、COと反応して形成される炭酸リチウム(LiCO)が熱力学的に中庸であるため、前記CO吸蔵過程と前記還元過程とがバランスよく進行し、良好なCO吸蔵性能と良好なメタン化触媒性能とが両立するため、CO処理能力が高くなると推察される。また、低温においても、前記還元過程が進行するため、良好なメタン化触媒性能が維持され、高いCO処理能力が発現すると推察される。
【0029】
一方、アルカリ金属としてカリウム(K)やナトリウム(Na)を用いた場合には、COと反応して形成される炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)がLiCOに比べて熱力学的に安定化するため、前記還元過程が進行しにくく、メタン化触媒性能が低下し、CO処理能力が低下すると推察される。特に、低温においては、前記還元過程の進行が著しく遅くなるため、メタン化触媒性能が更に低下し、CO処理能力が更に低下すると推察される。
【0030】
他方、アルカリ金属としてマグネシウム(Mg)を用いた場合、COと反応して形成される炭酸マグネシウム(MgO)がLiCOに比べて熱力学的に不安定であるため、前記吸蔵過程が進行しにくく、CO吸蔵性能が低下し、CO処理能力が低下すると推察される。
【0031】
本発明のCO吸蔵還元型触媒において、Li含有量は、触媒全体に対して、リチウム酸化物換算で6~9質量%である。Li含有量が前記範囲内にあると、優れたCO吸蔵性能が発現し、高いCO処理能力が得られる。一方、Li含有量が前記下限未満になると、COの吸蔵サイトが少ないため、CO吸蔵性能が低下する。他方、Li含有量が前記上限を超えると、前記多孔質担体の細孔が閉塞してCO吸蔵量が減少するため、CO吸蔵性能が低下する。Li含有量としては、更に優れたCO吸蔵性能が発現し、CO処理能力が向上するという観点から、リチウム酸化物換算で7~9質量%が好ましく、7.5~8.5質量%がより好ましい。
【0032】
〔CO吸蔵還元型触媒の製造方法〕
このような本発明のCO吸蔵還元型触媒は、例えば、以下のようにして調製することができる。すなわち、Li塩を含有する水溶液を調製し、この水溶液に、Ruを担持した金属酸化物からなる多孔質担体を所定量添加した後、乾燥、焼成することによって、前記金属酸化物からなる多孔質担体にRuとLiとが担持したCO吸蔵還元型触媒を得ることができる。なお、Ruを担持した金属酸化物は、Ru塩を含有する水溶液に金属酸化物を所定量添加した後、乾燥、焼成することによって調製したものを使用してもよいし、市販のものを使用してもよい。また、Li塩を含有する水溶液を調製し、この水溶液に、金属酸化物からなる多孔質担体を所定量添加した後、乾燥、焼成して、前記金属酸化物からなる多孔質担体にリチウム酸化物が担持したCO吸蔵材を調製し、このCO吸蔵材を、所定量のRu塩が溶解した水溶液に添加した後、乾燥、焼成することによっても、前記金属酸化物からなる多孔質担体にRuとLiとが担持したCO吸蔵還元型触媒を得ることができる。さらに、Ru塩及びLi塩を所定の質量比で含有する水溶液を調製し、この水溶液に、金属酸化物からなる多孔質担体を所定量添加した後、乾燥、焼成することによっても、前記金属酸化物からなる多孔質担体にRuとLiとが担持したCO吸蔵還元型触媒を得ることができる。
【0033】
焼成条件としては、Li塩が酸化物の状態に、Ru塩がRuに変換される条件であれば特に制限はないが、例えば、焼成温度としては、400~600℃が好ましく、450~550℃がより好ましく、また、焼成時間としては、1~10時間が好ましく、3~8時間がより好ましい。
【0034】
Li塩としては、例えば、硝酸リチウム(LiNO)、炭酸リチウム(LiCO)、酢酸リチウム(CHCOOLi)が挙げられる。また、Ru塩としては、例えば、ニトロシル硝酸ルテニウム、硝酸ルテニウム、塩化ルテニウム、ドデカカルボニル三ルテニウムが挙げられる。
【0035】
〔COの吸蔵還元処理〕
このような本発明のCO吸蔵還元型触媒は、例えば、以下のようなCOの吸蔵還元処理に適用することができる。すなわち、本発明のCO吸蔵還元型触媒にCOを含むガスを接触させてCOを吸蔵させた後、このCOが吸蔵した前記CO吸蔵還元型触媒に還元ガス(例えば、H)を接触させることによって、吸蔵したCOが還元されてCHが生成する。また、本発明のCO吸蔵還元型触媒にCOとHとを含むガスを接触させてCOを吸蔵させながら、吸蔵したCOと還元ガス(例えば、H)とを反応させることによって、吸蔵したCOが還元されてCHが生成する。
【0036】
本発明のCO吸蔵還元型触媒は、良好なCO吸蔵性能と良好なメタン化触媒性能とが両立するため、優れたCO処理能力が発現する。特に、本発明のCO吸蔵還元型触媒は、低温においても良好なメタン化触媒性能が維持されるため、上記のCOの吸蔵還元処理の開始時等の低温状態においても、過剰な熱エネルギーを供給せずに、COの還元とCHの生成を可能にし、優れたCO処理能力を維持することができる。
【実施例0037】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
先ず、ニトロシル硝酸ルテニウム硝酸溶液(Ru(NO)(NO HNO soln.、株式会社フルヤ金属製、Ru濃度:18.73質量%(メタルベース))をイオン交換水で希釈して調製したニトロシル硝酸ルテニウム硝酸水溶液を、球状活性アルミナ(Al、住化アルケム株式会社製、品番:KHO-12、造粒体(粒径:1~2mm)、比表面積:210m/g、嵩密度:0.85g/ml、細孔容積:0.43ml/g)に、得られる触媒においてRu含有量が触媒全体に対して3.0質量%となるように添加した。得られた固液混合物を、真空ポンプを用いて減圧した真空デシケータ内で室温下、12時間静置して固体成分を回収し、この固体成分を常圧下、90℃で12時間乾燥した。
【0039】
次に、乾燥後の前記固体成分を、硝酸リチウム(LiNO、富士フイルム和光純薬株式会社製、品番:128-01232)をイオン交換水に溶解して調製した硝酸リチウム水溶液に、得られる触媒においてLiO含有量が触媒全体に対して6.0質量%となるように添加し、得られた固液混合物を、真空ポンプを用いて減圧した真空デシケータ内で室温下、12時間静置して固体成分を回収した。この固体成分を常圧下、90℃で12時間乾燥した後、500℃で5時間焼成した。得られた焼成物を目開き0.5mmの篩を用いて粉状残渣を取り除き、AlにRuとLiOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/LiO(6)/Al(91)〕を得た。
【0040】
(実施例2)
乾燥後の前記固体成分を前記硝酸リチウム水溶液に、得られる触媒においてLiO含有量が触媒全体に対して7.0質量%となるように添加した以外は実施例1と同様にして、AlにRuとLiOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/LiO(7)/Al(90)〕を得た。
【0041】
(実施例3)
乾燥後の前記固体成分を前記硝酸リチウム水溶液に、得られる触媒においてLiO含有量が触媒全体に対して8.0質量%となるように添加した以外は実施例1と同様にして、AlにRuとLiOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/LiO(8)/Al(89)〕を得た。
【0042】
(実施例4)
乾燥後の前記固体成分を前記硝酸リチウム水溶液に、得られる触媒においてLiO含有量が触媒全体に対して9.0質量%となるように添加した以外は実施例1と同様にして、AlにRuとLiOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/LiO(9)/Al(88)〕を得た。
【0043】
(比較例1)
乾燥後の前記固体成分を前記硝酸リチウム水溶液に、得られる触媒においてLiO含有量が触媒全体に対して4.0質量%となるように添加した以外は実施例1と同様にして、AlにRuとLiOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/LiO(4)/Al(93)〕を得た。
【0044】
(比較例2)
乾燥後の前記固体成分を前記硝酸リチウム水溶液に、得られる触媒においてLiO含有量が触媒全体に対して5.0質量%となるように添加した以外は実施例1と同様にして、AlにRuとLiOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/LiO(5)/Al(92)〕を得た。
【0045】
(比較例3)
乾燥後の前記固体成分を前記硝酸リチウム水溶液に、得られる触媒においてLiO含有量が触媒全体に対して10.0質量%となるように添加した以外は実施例1と同様にして、AlにRuとLiOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/LiO(10)/Al(87)〕を得た。
【0046】
(比較例4)
イオン交換水に硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO・4HO、富士フイルム和光純薬株式会社製、品番:039-00735)を溶解して調製した硝酸カルシウム水溶液に、ルテニウム担持アルミナ粉末(Ru/Al、エヌ・イーケムキャット株式会社製、品番:HYAc-5E N-Type、Ru含有量:5質量%、アルミナ含有量:95質量%、アルミナの平均細孔径:13nm、アルミナの細孔容積:0.38cm/g)を、得られる触媒においてCaO含有量が触媒全体に対して8.7質量%となるように添加した。得られた固液混合物を、約1時間攪拌した後、350℃に設定したホットプレート上でスラリー状になるまで濃縮した。得られたスラリーを110℃で12時間乾燥した後、500℃で5時間焼成した。得られた焼成物を圧力1000kg/cmで1分間加圧した後、粉砕し、篩を用いて分級して、AlにRuとCaOとが担持した、粒径が0.5~1.0mmのペレット状触媒〔Ru(4.6)/LiO(8.7)/Al(86.7)〕を得た。
【0047】
(比較例5)
硝酸リチウム水溶液の代わりに、硝酸ナトリウム(NaNO、富士フイルム和光純薬株式会社製、品番:195-02545)をイオン交換水に溶解して調製した硝酸ナトリウム水溶液を用い、乾燥後の前記固体成分を前記硝酸ナトリウム水溶液に、得られる触媒においてNaO含有量が触媒全体に対して4.0質量%となるように添加した以外は実施例1と同様にして、AlにRuとNaOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/NaO(4)/Al(93)〕を得た。
【0048】
(比較例6)
乾燥後の前記固体成分を前記硝酸ナトリウム水溶液に、得られる触媒においてNaO含有量が触媒全体に対して5.0質量%となるように添加した以外は比較例5と同様にして、AlにRuとNaOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/NaO(5)/Al(92)〕を得た。
【0049】
(比較例7)
乾燥後の前記固体成分を前記硝酸ナトリウム水溶液に、得られる触媒においてNaO含有量が触媒全体に対して6.0質量%となるように添加した以外は比較例5と同様にして、AlにRuとNaOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/NaO(6)/Al(91)〕を得た。
【0050】
(比較例8)
乾燥後の前記固体成分を前記硝酸ナトリウム水溶液に、得られる触媒においてNaO含有量が触媒全体に対して7.0質量%となるように添加した以外は比較例5と同様にして、AlにRuとNaOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/NaO(7)/Al(90)〕を得た。
【0051】
(比較例9)
乾燥後の前記固体成分を前記硝酸ナトリウム水溶液に、得られる触媒においてNaO含有量が触媒全体に対して8.0質量%となるように添加した以外は比較例5と同様にして、AlにRuとNaOとが担持した、粒径が1mm以上の粒状触媒〔Ru(3)/NaO(8)/Al(89)〕を得た。
【0052】
<触媒性能評価試験>
得られた触媒の性能評価試験(CO処理能力評価試験)を図1に示す温度プロファイルで実施した。すなわち、得られた触媒を容積が2.4cmとなるようにステンレス鋼(SUS)製反応管(内径:8mm)に充填し、この反応管を昇温脱離分析装置(ヘンミ計算尺株式会社製「TP-5000」)に装着した。触媒床にHeを流量40ml/minで流通させながら触媒を320℃まで加熱し〔前処理工程〕、その後、触媒を320℃で加熱しながら触媒床にH(20%)+He(残部)のH含有ガスを流量40ml/minで60分間流通させて触媒を活性化させた〔活性化工程〕。
【0053】
次に、触媒を表1に示す評価温度(T1)で加熱しながら、触媒床にCO(10%)+He(残部)のCO含有ガスを流量40ml/minで所定のサイクル時間(t)流通させ〔CO吸蔵過程〕、その後、H(40%)+He(残部)のH含有ガスを流量40ml/minで所定のサイクル時間(t)流通させ〔H還元過程〕、この一連の工程〔CO吸蔵過程→H還元過程〕を6回繰返した〔評価工程〕。この評価工程の間の触媒通過後のガスを質量分析計により分析した。
【0054】
前記サイクル時間(t)を1~5分間の範囲内で変更して前記評価工程を4回実施した(tはi回目(i=1~4)の評価工程におけるサイクル時間を示す。)。なお。各評価工程間においては、触媒を表1に示す評価温度(T1)で加熱しながら、触媒床にHeを流量40ml/minで流通させた。
【0055】
各評価工程(サイクル時間:t~t)の6サイクル目について、触媒通過後のガスの質量分析結果(CO(m/e=44)の信号強度)に基づいて、触媒を通過した未反応のCOの量を求め、下記式により、各サイクル時間(t~t)におけるCO転化率を算出した。
CO転化率[%]=(CO供給量-未反応CO量)/CO供給量×100
算出したCO転化率をサイクル時間(t~t)に対してプロットし、得られたサイクル時間とCO転化率との相関関係を示すグラフから、CO転化率が99%となるときのサイクル時間(t(99))を求め、このサイクル時間(t(99))を用いて、下記式によりt(99)時間内に触媒よって処理されたCO量を算出した。
CO処理量(mol-CO)=時間t(99)×単位時間あたりのCO供給量
得られたCO処理量(mol-CO)を触媒体積(2.4ml)で除することによって、触媒のCO処理能力(単位:mol-CO/L-cat)を算出した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示した結果に基づいて、評価温度(T1)が250℃及び320℃の場合の触媒のCO処理能力をCO吸蔵材の含有量に対してプロットした。その結果を図2に示す。この結果から明らかなように、アルカリ金属として所定量のLiを担持した触媒(実施例1~4)は、Liの代わりにCaを担持した触媒(比較例4)に比べて、極めて高いCO処理能力を有するものであることがわかった。また、Naを担持した触媒(比較例5~9)に比べて、高いCO処理能力を有するものであることがわかった。
【0058】
また、図2に示したように、アルカリ金属としてLiを担持した触媒においては、Li含有量が所定量よりも少なくなったり、多くなったりすると、CO処理能力が著しく低下し、Naを担持した触媒(比較例5~9)よりも低くなることがわかった(比較例1~3)。
【0059】
表1に示した結果に基づいて、実施例3、比較例4及び比較例7で得られた触媒のCO処理能力を評価温度(T1)に対してプロットした。その結果を図3に示す。この結果から明らかなように、アルカリ金属として所定量のLiを担持した触媒(実施例3)は、Liの代わりにCaを担持した触媒(比較例4)やNaを担持した触媒(比較例7)に比べて、温度低下によるCO処理能力の低下の割合が少なく、低温においても優れたCO処理能力が維持されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明によれば、CO吸蔵材としてリチウム(Li)を含有するCO吸蔵還元型触媒において、優れたCO処理能力を発現させることができ、低温においても優れたCO処理能力を維持することが可能となる。したがって、本発明のCO吸蔵還元型触媒は、CO浄化システムの通常の作動時だけでなく、作動開始時等の低温状態においても、COを効率よく吸蔵してCHに還元することが可能な触媒として有用である。
【0061】
また、本発明のCO吸蔵還元型触媒は、CO吸蔵量が多いため、反応器の容量を小さくすることが可能となり、それに伴うコスト削減が期待できる。また、メタン化触媒性能に優れているため、生成するメタンの純度向上も期待できる。
【0062】
さらに、低温においても優れたCO処理能力が維持されることから、反応器の作動温度を低下させることが可能となり、反応器の温度維持に必要な外部エネルギーの削減が期待でき、プロセスの効率化を図ることが可能となる。
図1
図2
図3