(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132583
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】医用画像診断装置、医用画像診断方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240920BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240920BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20240920BHJP
A61B 5/353 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
A61B6/03 370B
A61B5/33 210
A61B5/352
A61B5/353
A61B6/03 330C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043416
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】古閑 楠人
(72)【発明者】
【氏名】首藤 輝考
(72)【発明者】
【氏名】小椋 正巳
【テーマコード(参考)】
4C093
4C127
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA24
4C093CA35
4C093FA47
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG01
4C127GG02
(57)【要約】
【課題】被検体の心拍の状況に応じた撮影条件下で安定した心電同期撮影を可能にする医用画像診断装置、医用画像診断方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】実施形態の医用画像診断装置は、取得部と、撮影条件設定部とを持つ。取得部は、被検体の心電波形データを取得する。撮影条件設定部は、取得された心電波形データに基づいて、心電同期撮影における予め設定された複数の撮影条件の内で、被検体の心電同期撮影に適用する1つの撮影条件を設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の心電波形データを取得する取得部と、
取得された前記心電波形データに基づいて、心電同期撮影における予め設定された複数の撮影条件の内で、前記被検体の心電同期撮影に適用する1つの撮影条件を設定する撮影条件設定部と、
を備える医用画像診断装置。
【請求項2】
前記撮影条件は、前記心電同期撮影における撮影のタイミングの基準となる波形情報、前記心電同期撮影における撮影のタイミング、および撮影方法を含む、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記複数の撮影条件は、少なくとも、心拍が正常である被検体用の第1条件と、心拍が異常である被検体用の第2条件と、心疾患の被検体用の第3条件とを含む、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記心電同期撮影の実施前の第1のタイミングに計測された前記被検体の心電波形データを取得し、
前記撮影条件設定部は、前記第1のタイミングに計測された前記心電波形データに基づいて、その後に実施される前記心電同期撮影に適用する前記1つの撮影条件を設定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記取得部は、さらに、前記心電同期撮影の実施前の前記第1のタイミングよりも後の第2のタイミングに計測された前記被検体の心電波形データを取得し、
前記撮影条件設定部は、前記第2のタイミングに計測された前記心電波形データに基づいて、前記1つの撮影条件を変更する、
請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記第1のタイミングは、呼吸練習時であり、
前記第2のタイミングは、造影剤モニタリングスキャン時である、
請求項5に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記撮影条件設定部は、自動的に前記1つの撮影条件を設定する、または、操作者による指示に基づいて前記1つの撮影条件を設定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記医用画像診断装置は、X線CT装置であり、
前記複数の撮影条件は、X線照射に関する特定期間を規定するための複数のモードを含み、
前記撮影条件設定部は、
前記複数のモードの内の第1のモードでは、前記心電波形データにおけるR波に基づいて前記特定期間を設定し、
前記複数のモードの内の第2のモードでは、前記心電波形データにおけるP波に基づいて前記特定期間を設定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記撮影条件設定部は、前記第2のモードでは、前記P波に基づいて、前記P波と前記R波の間に収まるように前記特定期間を設定する、
請求項8に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記特定期間は、X線を照射する期間、または、当該特定期間以外の期間よりも高線量のX線を照射する期間である、
請求項8に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記医用画像診断装置は、X線CT装置であり、
前記撮影条件は、少なくとも、前記心電同期撮影におけるX線のばく射位相と、ばく射方法と、前記ばく射位相の基準となる波形を示すトリガ信号とを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記複数の撮影条件は、少なくとも、心拍が正常である被検体用の第1条件と、心拍が異常である被検体用の第2条件と、心疾患の被検体用の第3条件とを含み、
前記第1条件における前記トリガ信号と、前記第3条件における前記トリガ信号とは、互いに異なる、
請求項11に記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
前記第1条件における前記トリガ信号は、前記心電波形データにおけるR波であり、
前記第3条件における前記トリガ信号は、前記心電波形データにおけるP波である、
請求項12に記載の医用画像診断装置。
【請求項14】
前記心電波形データと、前記医用画像診断装置とは異なる装置により計測された診断情報とを、表示部に表示させる表示制御部をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項15】
前記撮影条件設定部は、
予め取得された前記被検体の診断情報が心疾患であることを示している場合、前記1つの撮影条件の初期条件として、心疾患の被検体用の撮影条件を設定し、
前記被検体の造影剤モニタリングスキャン中に、前記被検体の前記心電波形データが正常な心拍を示す場合には、前記撮影条件を、心拍が正常である被検体用の撮影条件に変更する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項16】
前記被検体の造影剤モニタリングスキャン中に、前記心電波形データに変化が生じたことの通知を表示部に表示させる表示制御部をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項17】
医用画像診断装置のコンピュータが、
被検体の心電波形データを取得し、
取得された前記心電波形データに基づいて、心電同期撮影における予め設定された複数の撮影条件の内で、前記被検体の心電同期撮影に適用する1つの撮影条件を設定する、
医用画像診断方法。
【請求項18】
医用画像診断装置のコンピュータに、
被検体の心電波形データを取得させ、
取得された前記心電波形データに基づいて、心電同期撮影における予め設定された複数の撮影条件の内で、前記被検体の心電同期撮影に適用する1つの撮影条件を設定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像診断装置、医用画像診断方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の心電波形に基づいて心拍のパターンを予測し、心拍の影響が少ない医用画像を再構成する心電同期撮影が知られている。例えば、X線CT(Computed Tomography)装置を用いた心電同期撮影では、撮影前に実施される心電計を用いた被検体の呼吸練習の結果等から、被検体の心拍に応じた撮影条件が設定される。この撮影条件に沿って、撮影中に心電計から入力されるトリガ信号(R波)を基準にして、指定された位相での撮影が可能となるようにX線CT装置のX線出力が制御される。撮影条件としては、呼吸練習の結果等に応じて1つの撮影条件が設定され、条件確定後は設定された撮影条件での制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被検体の心電波形は常に安定しているとは限らない。また、例えば、心臓に疾患を抱えている被検体に対しては、所定のトリガ信号(R波)とは異なる条件を基準にして制御を行った方がよい場合もある。また、呼吸練習時と撮影時とで心電波形が大きく変化する場合があり、意図したデータを収集することができず、再撮影(造影剤を用いている場合には再造影)が必要となり、被検体に対する負担が増大してしまう場合がある。被検体の心電波形を監視して、脈の変動や不整脈が生じた場合に連続ばく射に移行する機能が知られている。しかしながら、心臓に疾患を抱えている被検体の心拍の挙動には対応できておらず、また、被検体の心拍の状況に応じてリアルタイムに撮影条件を柔軟に変更することはできていなかった。
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、被検体の心拍の状況に応じた撮影条件下で安定した心電同期撮影を可能にすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の医用画像診断装置は、取得部と、撮影条件設定部とを持つ。取得部は、被検体の心電波形データを取得する。撮影条件設定部は、取得された心電波形データに基づいて、心電同期撮影における予め設定された複数の撮影条件の内で、被検体の心電同期撮影に適用する1つの撮影条件を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るX線CT装置1の一例を示す図。
【
図2】心電同期撮影における被検体の心電波形とばく射位相との関係を説明する図。
【
図3】実施形態に係る心電同期撮影条件Cの一例を示す図。
【
図4A】実施形態に係る心電同期撮影条件C(条件1)における被検体の心電波形とばく射位相との関係を説明する図。
【
図4B】実施形態に係る心電同期撮影条件C(条件2)における被検体の心電波形とばく射位相との関係を説明する図。
【
図4C】実施形態に係る心電同期撮影条件C(条件3)における被検体の心電波形とばく射位相との関係を説明する図。
【
図4D】実施形態に係る心電同期撮影条件C(条件4)における被検体の心電波形とばく射位相との関係を説明する図。
【
図5】実施形態に係るX線CT装置1による心電同期撮影処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】実施形態に係る心電同期撮影条件設定画面P1の一例を示す図。
【
図7】実施形態に係るモニタリング画面P2の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態の医用画像診断装置、医用画像診断方法、およびプログラムにについて説明する。医用画像診断装置は、例えば、X線CT装置、PET(Positron Emission Tomography)-CT装置、MR(Magnetic Resonance)装置、一般X線撮影装置、超音波画像診断装置、核医学診断装置等である。以下、医用画像診断装置が、X線CT装置である場合を例に挙げて説明する。
【0009】
[X線CT装置の構成]
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の一例を示す図である。X線CT装置1は、心電同期撮影の機能を有する。心電同期撮影とは、被検体Pの心電図(心電波形)を取得することで被検体Pの心拍のパターンを予測して、心拍の影響が少ない画像(心臓の動きが止まったように見える画像)を再構成する撮影方法である。心電同期撮影の場合、心臓の動きが止まったように見えている瞬間(指定の呼吸の位相)だけX線を照射して画像を取得したり、経時的にX線を照射して指定の心拍数分の止まっている瞬間の画像だけを抽出し、それらのデータをつなぎ合わせて画像を再構成したりする。
【0010】
図2は、心電同期撮影における被検体Pの心電波形とばく射位相との関係を説明する図である。
図2に示すように、健全な被検体Pの心電波形は、一般的に、P波、Q波、R波、S波、T波、およびU波からなる基本波形を含む。健全な被検体Pに対して心電同期撮影を行う場合、心室の興奮過程を示す最も大きな波(頂点,ピーク)であるR波をトリガ信号として使用する。具体的には、被検体Pの呼吸練習時において、R波の頂点から次のR波の頂点までの時間(以下「R-R時間」という)を算出し、このR-R時間の内で、心拍の影響が少ない(心臓の動きが止まったように見える)位相(例えば、R-R時間の75%付近の位相)を、ばく射位相として設定する。その後の、被検体Pの撮影時において、R波(トリガ信号)を検知したタイミングを基準としてばく射位相を特定し、特定したばく射位相においてX線を照射して撮影を行う。
【0011】
上記のように、X線CT装置1の操作者は、ばく射位相や、その他のスキャン回転速度等の撮影パラメータに関する撮影条件の設定を綿密に行う必要がある。本実施形態のX線CT装置1では、予め設定された複数の心電同期撮影の撮影条件の中から、被検体Pの心拍の状態に応じた撮影条件を適宜選択して、選択した撮影条件でリアルタイムに撮影を行うことを可能にする。
【0012】
X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを備える。
図1では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図の双方を掲載しているが、実際には、架台装置10は一つである。本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム17の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向とそれぞれ定義する。
【0013】
架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18とを備える。
【0014】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0015】
ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0016】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ13の絞り込み範囲は、機械的に駆動可能であってよい。
【0017】
X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生装置(不図示)と、X線制御装置(不図示)とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器等を含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0018】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号等でもよい)をDAS16に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列のそれぞれは、X線管11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0019】
X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。それぞれのシンチレータは、シンチレータ結晶を有する。シンチレータ結晶は、入射するX線の強度に応じた光量の光を発する。グリッドは、シンチレータアレイのX線が入射する面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(一次元コリメータまたは二次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。光センサアレイは、シンチレータにより発せられる光の光量に応じた電気信号を出力する。X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であってもかまわない。
【0020】
DAS16は、例えば、増幅器と、積分器と、A/D変換器とを有する。増幅器は、X線検出器15の各X線検出素子により出力される電気信号に対して増幅処理を行う。積分器は、増幅処理が行われた電気信号をビュー期間(後述)に亘って積分する。A/D変換器は、積分結果を示す電気信号をデジタル信号に変換する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、及び収集されたビューを示すビュー番号により識別されたX線強度のデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置18から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。フルスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。ハーフスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。
【0021】
回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。回転フレーム17は、固定フレームによって、内部に導入された被検体Pを中心として回転自在に支持される。回転フレーム17は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。なお、回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管11等を支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0022】
X線CT装置1は、例えば、X線管11とX線検出器15の双方が回転フレーム17によって支持されて被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数のX線検出素子が固定フレームに固定され、X線管11が被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypeのX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0023】
制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する処理回路を有する。制御装置18は、コンソール装置40または架台装置10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受け付けて、架台装置10および寝台装置30の動作を制御する。制御装置18は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム17の回転角度を把握している。また、制御装置18は、回転フレーム17の回転角度を随時、スキャン制御機能55に提供する。制御装置18は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0024】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置して移動させ、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、天板33を、支持フレーム34に沿って天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させる。また、寝台駆動装置32は、天板33を鉛直方向(Y軸方向)に移動させる。天板33は、被検体Pが載置される板状の部材である。
【0025】
寝台駆動装置32は、天板33だけでなく、支持フレーム34を天板33の長手方向に移動させてもよい。また、上記とは逆に、架台装置10がZ軸方向に移動可能であり、架台装置10の移動によって回転フレーム17が被検体Pの周囲に来るように制御されてもよい。また、架台装置10と天板33の双方が移動可能な構成であってもよい。また、X線CT装置1は、被検体Pが立位または座位でスキャンされる方式の装置であってもよい。この場合、X線CT装置1は、寝台装置30に代えて被検体支持機構を有し、架台装置10は、回転フレーム17を、床面に垂直な軸方向を中心に回転させる。
【0026】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、ネットワーク接続回路44と、処理回路50とを有する。本実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0027】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、心電同期撮影条件C、検出データ、投影データ、再構成画像データ、CT画像データ、被検体Pに関する情報、撮影条件等を記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0028】
(心電同期撮影条件)
図3は、実施形態に係る心電同期撮影条件Cの一例を示す図である。
図3に示すように、心電同期撮影条件Cは、互いに異なる複数の条件(例えば、条件1~4)を含む。心電同期撮影条件Cは、システム導入時等に予め設定されるものであってもよいし、入力インターフェース43を介した操作者による入力操作に基づいて設定されるものであってもよい。心電同期撮影条件Cにおいては、各条件を識別する条件番号に対して、撮影条件の内容が紐付けられている。撮影条件は、例えば、トリガ方法、ばく射方法、ばく射位相、回転速度等を含む。撮影条件には、他の撮影条件が含まれていてもよい。
【0029】
条件1(正常心拍用)は、健全な被検体を対象とする撮影条件である。条件1は、トリガ方法が“R波”であり、ばく射方法が“Prospective”であり、ばく射位相が“75%”であり、回転速度が“速い”である。
図4Aは、この心電同期撮影条件C(条件1)における被検体の心電波形とばく射位相との関係を説明する図である。
図4Aに示すように、条件1では、トリガ方法(トリガ信号)として“R波”が設定され、ばく射位相がR-R時間の“75%”位相が設定される。そして、ばく射方法が“Prospective”であるため、この75%位相(或いは75%位相を含む所定範囲の位相領域)において選択的にX線のばく射が、回転フレーム17の回転速度が“速い”設定で行われる。
【0030】
条件2(異常心拍用)は、心拍が異常である被検体を対象とする撮影条件である。例えば、(i)呼吸練習において心拍が安定しない場合(不整脈が続く場合、心電波形に周期性がない場合)、(ii)呼吸練習において正常な心拍が確認でき初期条件として「条件1(正常心拍用)」が設定されたが、その後の撮影時に心拍が異常となった場合、(iii)呼吸練習において正常な心拍が確認でき初期条件として「条件1(正常心拍用)」が設定されたが、その後の撮影時の心拍の挙動(R-R間の長さ等)が呼吸練習時と異なっている場合等に、条件2が使用される。条件2は、トリガ方法が“R波”であり、ばく射方法が“連続ばく射”であり、ばく射位相は“-(設定無し)”であり、回転速度が“速い”である。
図4Bは、この心電同期撮影条件C(条件2)における被検体の心電波形とばく射位相との関係を説明する図である。
図4Bに示すように、条件2では、トリガ方法(トリガ信号)として“R波”が設定され、R-R時間の間において連続ばく射が、回転フレーム17の回転速度が“速い”設定で行われる。
【0031】
条件3(心疾患用)は、心疾患(房室(AV)ブロック等)の被検体を対象とする撮影条件である。呼吸練習の結果、心疾患の波形であることが確認された場合等に、条件3が使用される。例えば、健全な被検体と比較して、心疾患の被検体の波形は、P波とR波との間が長い場合がある。このような場合、トリガ信号として“R波”の代わりに“P波”を用いる。条件3は、トリガ方法が“P波”であり、ばく射方法が“Prospective”であり、ばく射位相は“5%”であり、回転速度が“速い”である。
図4Cは、この心電同期撮影条件C(条件3)における被検体の心電波形とばく射位相との関係を説明する図である。
図4Cに示すように、条件3では、トリガ方法(トリガ信号)として“P波”が設定され、ばく射位相がP波と次のP波との間(以下「P-P時間」という)の“5%”位相が設定される。そして、ばく射方法が“Prospective”であるため、この5%位相(或いは5%位相を含む所定範囲の位相領域)において選択的にX線のばく射が、回転フレーム17の回転速度が“速い”設定で行われる。このように、P波の直後にX線のばく射(撮影)を行うことで、心疾患の被検体に対しても高精度に心電同期撮影を行うことが可能となる。尚、心疾患の被検体を対象とする撮影条件は、被検体の心拍の状況に応じて、任意に設定可能である。
【0032】
条件4(正常心拍用)は、健全な被検体を対象とする撮影条件である。条件4は、トリガ方法が“R波”であり、ばく射方法が“Modulation”であり、ばく射位相が“75%”であり、回転速度が“速い”である。
図4Dは、この心電同期撮影条件C(条件4)における被検体の心電波形とばく射位相との関係を説明する図である。
図4Dに示すように、条件4では、トリガ方法(トリガ信号)として“R波”が設定され、ばく射位相がR-R時間の“75%”位相が設定される。そして、ばく射方法が“Modulation”であるため、R-R時間において、75%位相における選択的な高線量でのX線のばく射と、75%位相以外の位相範囲における連続的な低線量でのX線のばく射とが、回転フレーム17の回転速度が“速い”設定で行われる。
【0033】
すなわち、撮影条件は、X線照射に関する特定期間(ばく射位相)を規定するための複数のモードを含む。複数のモードの内の第1のモード(条件1)では、心電波形データにおけるR波に基づいて特定期間が設定され、複数のモードの内の第2のモード(条件3)では、心電波形データにおけるP波に基づいて特定期間が設定される。第2のモードでは、P波に基づいて、P波とR波の間に収まるように特定期間が設定される。また、特定期間は、X線を照射する期間、または、当該特定期間以外の期間よりも高線量のX線を照射する期間である。
【0034】
すなわち、撮影条件は、少なくとも、心電同期撮影における撮影(ばく射位相)のタイミングの基準となる波形情報(トリガ信号)を含む。また、撮影条件は、さらに、心電同期撮影における撮影のタイミング(ばく射位相)および撮影方法(ばく射方法)を含む。複数の撮影条件は、少なくとも、心拍が正常である被検体用の第1条件(条件1、4)と、心拍が異常である被検体用の第2条件(条件2)と、心疾患の被検体用の第3条件(条件3)とを含む。第1条件におけるトリガ信号と、第3条件におけるトリガ信号とは、互いに異なる。第1条件におけるトリガ信号は、心電波形データにおけるR波であり、第3条件におけるトリガ信号は、心電波形データにおけるP波である。
【0035】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、医師、技師等である操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。ディスプレイ42は、「表示部」の一例である。
【0036】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、心電同期撮影条件、検出データや投影データを収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等の入力操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。尚、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0037】
ネットワーク接続回路44は、例えば、プリント回路基板を有するネットワークカード、或いは無線通信モジュール等を含む。ネットワーク接続回路44は、接続する対象のネットワークの形態に応じた情報通信用プロトコルを実装する。
【0038】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作や、架台装置10の動作、および寝台装置30の動作を制御する。処理回路50は、例えば、システム制御機能51、前処理機能52、再構成処理機能53、画像処理機能54、スキャン制御機能55、表示制御機能56等を実行する。これらの構成要素は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ41に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0039】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、或いは、複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。
【0040】
システム制御機能51は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。
【0041】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行い、投影データを生成する。
【0042】
再構成処理機能53は、前処理機能52によって生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等による再構成処理を行って、CT画像データを生成し、生成したCT画像データをメモリ41に記憶させる。
【0043】
画像処理機能54は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを公知の方法により、三次元画像データや任意断面の断面像データに変換する。三次元画像データへの変換は、前処理機能52によって行われてもよい。
【0044】
スキャン制御機能55は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18、および寝台駆動装置32に指示することで、架台装置10における検出データの収集処理を制御する。スキャン制御機能55は、位置決め画像を収集する撮影、および診断に用いる画像を撮影する際の各部の動作をそれぞれ制御する。
【0045】
スキャン制御機能55は、例えば、取得機能550、判定機能551、および撮影条件設定機能552を備える。取得機能550は、呼吸練習時、撮影時等に、心電計ECにより計測された被検体Pの心電波形データを取得する。取得機能550は、図示しない他の医用画像診断装置(超音波診断装置等のモダリティ)、画像保存通信システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)、電子カルテサーバ等から、被検体Pの診断情報を取得し、メモリ41や、放射線科情報システム(RIS:Radiology Information System)に保管するようにしてもよい。取得機能550は、「取得部」の一例である。
【0046】
判定機能551は、取得された被検体Pの心電波形データの波形パターン(種別)を判定する。この波形パターンには、例えば、心拍が正常であることを示す正常波形パターン、心拍が異常であることを示す異常波形パターン、および心疾患であることを示す心疾患波形パターン等が含まれる。判定機能551は、例えば、被検体Pの心電波形データに含まれる、各波形(P波、R波等)の周期性に基づいて、波形パターンを判定する。判定機能551は、例えば、R波に周期性がある場合(R-R時間が一定と見なせる場合)、正常波形パターンと判定する。また、判定機能551は、例えば、R波に周期性がない場合(R-R時間が一定ではない場合)、異常波形パターンと判定する。また、判定機能551は、例えば、各波形の間隔の傾向が健全な被検体のものとは異なる場合(例えば、P-R時間が長い場合)、心疾患波形パターンと判定する。
【0047】
撮影条件設定機能552は、取得された心電波形データ或いは判定されたパターンに基づいて、心電同期撮影における予め設定された複数の撮影条件の内で、被検体Pに対する心電同期撮影に適用する1つの撮影条件を設定する。撮影条件設定機能552は、自動的に1つの撮影条件を設定する、或いは、操作者による入力インターフェース43を介した入力指示に基づいて1つの撮影条件を設定する。撮影条件設定機能552は、「撮影条件設定部」の一例である。
【0048】
表示制御機能56は、各種画像(撮影画像、位置決め画像、入力インターフェース43の受け付けた入力操作結果等)をディスプレイ42に表示させる。表示制御機能56は、例えば、心電同期撮影条件設定画面、モニタリング画面等を、ディスプレイ42に表示させる。表示制御機能56は、「表示制御部」の一例である。
【0049】
上記構成により、X線CT装置1は、ヘリカルスキャン、コンベンショナルスキャン、ステップアンドシュート等のスキャン態様で被検体Pのスキャンを行う。ヘリカルスキャンとは、天板33を移動させながら回転フレーム17を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンする態様である。コンベンショナルスキャンとは、天板33を静止させた状態で回転フレーム17を回転させて被検体Pを円軌道でスキャンする態様である。ステップアンドシュートとは、天板33の位置を一定間隔で移動させて、コンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行う態様である。
【0050】
[処理フロー]
次に、本実施形態に係るX線CT装置1による心電同期撮影処理について説明する。
図5は、実施形態に係るX線CT装置1による心電同期撮影処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートでは、リアルプレップ(造影剤のモニタリングスキャン)から心電同期撮影に進む処理を例に挙げて説明する。コンソール装置40のメモリ41には、予め心電同期撮影条件Cが記憶されているものとする。また、寝台装置30にはスキャン対象の被検体Pが載置され、位置決めスキャンが完了しているものとする。
【0051】
まず、心電同期撮影のスキャン対象である被検体Pは呼吸練習を行う。この呼吸練習の間、被検体Pに取付けられた心電計ECにより心電波形データが計測される。取得機能550は、心電計ECから、被検体Pの心電波形データを取得する(ステップS101)。
【0052】
次に、判定機能551は、取得された被検体Pの心電波形データの波形パターンを判定する(ステップS103)。この波形パターンには、例えば、心拍が正常であることを示す正常波形パターン、心拍が異常であることを示す異常波形パターン、および心疾患であることを示す心疾患波形パターン等が含まれる。
【0053】
次に、撮影条件設定機能552は、取得された心電波形データ或いは判定された波形パターンに基づいて、心電同期撮影条件Cに含まれる複数の撮影条件の内で、被検体Pに対する心電同期撮影に適用する1つの撮影条件(初期)を設定する(ステップS105)。撮影条件設定機能552は、自動的に、或いは、操作者による入力インターフェース43を介した入力指示に基づいて1つの撮影条件を設定する。
【0054】
次に、表示制御機能56は、心電同期撮影条件設定画面を、ディスプレイ42に表示させる(ステップS107)。
図6は、実施形態に係る心電同期撮影条件設定画面P1の一例を示す図である。
図6に示すように、心電同期撮影条件設定画面P1には、心電計ECにより計測された心電波形データ上に、設定された撮影条件に応じたばく射位相が示されている。ここでは、撮影条件として条件1(正常心拍用)が設定されており、トリガ方法が“R波”であり、ばく射方法が“Prospective”であり、ばく射位相が“75%”である。さらに、心電同期撮影条件設定画面P1には、撮影条件の変更指示を受け付けるボタンB1や、撮影の開始指示を受け付けるボタンB2が表示されている。さらに、心電同期撮影条件設定画面P1には、付加情報ADとして、例えば、他のモダリティにより計測された被検体Pの診断情報が表示される。これにより、操作者は、その後に実施される心電同期撮影の撮影条件を決定することができる。
【0055】
すなわち、表示制御機能56は、心電波形データと、医用画像診断装置とは異なる装置により計測された診断情報(付加情報AD)とを、ディスプレイ42(表示部)に表示させる。
【0056】
次に、スキャン制御機能55は、リアルプレップを開始する(ステップS109)。これにより、被検体Pに対する造影剤の投与が開始され、被検体P内における造影剤の広がり具合や、心電計ECにより計測される被検体Pの心電波形のモニタリングが開始される。また、表示制御機能56は、モニタリング画面を、ディスプレイ42に表示させる(ステップS111)。
【0057】
モニタリングの間、取得機能550は、心電計ECから、被検体Pの心電波形データを継続的に取得し、判定機能551は、取得された被検体Pの心電波形データの波形パターンに変化が生じているか否かを判定する(ステップS113)。
【0058】
判定機能551により波形パターンに変化が生じていると判定された場合(ステップS113;YES)、撮影条件設定機能552は、取得された心電波形データ或いは変化があると判定された波形パターンに基づいて、被検体Pに対する心電同期撮影に適用する1つの撮影条件を変更する(ステップS115)。また、表示制御機能56は、モニタリング画面において、波形パターンに変化が生じていることの通知を、ディスプレイ42に表示してもよい。
図7は、実施形態に係るモニタリング画面P2の一例を示す図である。
図7に示すように、モニタリング画面P2には、造影剤スキャン画像や心電計ECにより計測された心電波形データとともに、心電波形データに変化が生じていることを通知するメッセージが表示される。
図7の例では、「心電波形に変化が生じました。撮影条件の変更をご検討ください。」とのメッセージが表示されている。これにより、心電波形をモニタリングしている操作者は、自身の判断だけでなく、システムからの通知により、波形パターンに変化が生じたことを把握できる。これにより、操作者が、入力インターフェース43を介した指示入力により、マニュアルで撮影条件を変更することができる。すなわち、表示制御機能56は、被検体の造影剤モニタリングスキャン中に、心電波形データに変化が生じたことの通知をディスプレイ42に表示させる。
【0059】
例えば、上記のステップS105において撮影条件の初期条件として条件1(正常心拍用)が設定されており、その後のリアルプレップにおいて心電波形の変動があった場合、撮影条件設定機能552は、例えば、自動的に或いは操作者による入力インターフェース43を介した入力指示に基づいて、撮影条件を、条件2(異常心拍用)または条件3(心疾患用)に変更する。
【0060】
或いは、上記のステップS105において撮影条件の初期条件として条件3(心疾患用)が設定されており、その後のリアルプレップにおいて心電波形の変動があった場合、撮影条件設定機能552は、例えば、自動的に或いは操作者による入力インターフェース43を介した入力指示に基づいて、撮影条件を、条件1(正常心拍用)または条件2(異常心拍用)に変更する。
【0061】
すなわち、取得機能550は、心電同期撮影の実施前の第1のタイミング(呼吸練習時)に計測された被検体の心電波形データを取得し、撮影条件設定機能552は、第1のタイミングに計測された心電波形データに基づいて、その後に実施される心電同期撮影に適用する1つの撮影条件を設定する。また、取得機能550は、さらに、心電同期撮影の実施前の第1のタイミングよりも後の第2のタイミング(リアルプレップにおける造影剤モニタリングスキャン時)に計測された被検体の心電波形データを取得し、撮影条件設定機能552は、第2のタイミングに計測された心電波形データに基づいて、1つの撮影条件を変更する。
【0062】
尚、撮影条件設定機能552による撮影条件の変更が自動的に実行される前に、変更に関する操作者による承諾を受け付けるための画面を表示するようにしてもよい。
【0063】
判定機能551により波形パターンに変化がないと判定された後(ステップS113;NO)または撮影条件設定機能552により撮影条件が変更された後(ステップS115)、スキャン制御機能55は、被検体P内における造影剤の広がり具合等に基づいて、心電同期撮影の開始条件が満たされているか否かを判定し、心電同期撮影を開始するか否かを判定する(ステップS117)。スキャン制御機能55は、心電同期撮影を開始すると判定した場合(ステップS117;YES)、心電同期撮影を実施する(ステップS119)。一方、スキャン制御機能55により心電同期撮影を開始しないと判定された場合(ステップS117;NO)、表示制御機能56はモニタリング画面の表示を継続し(ステップS111)、以降の処理を繰り返す。これにより、本フローチャートの処理が完了する。
【0064】
以上説明した本実施形態によれば、被検体の心拍の状況に応じた撮影条件下で安定した心電同期撮影が可能となる。例えば、事前の呼吸練習時に初期の撮影条件を設定し、その後の撮影中に、最適な撮影条件の自動的な設定或いは操作者による撮影条件のリアルタイムでの変更を可能にすることで、被ばく低減と安定したスキャンの両方を達成することができる。例えば、心疾患を抱えている被検体の撮影では、初期の撮影条件として心疾患用の撮影条件を設定し、その後の撮影中に心拍が正常となった場合には、正常心拍用の撮影条件に変更することができる。また、初期の撮影条件として正常心拍用の撮影条件を設定し、その後の撮影中に心拍が異常となった場合には、異常心拍用の撮影条件(例えば、連続ばく射)に変更することで、再撮影を回避することができる。また、初期の撮影条件として異常心拍用の撮影条件(例えば、連続ばく射)を設定し、その後の撮影中に心拍が正常となった場合には、正常心拍用の撮影条件(例えば、Prospective)に変更することで、被検体の被ばくを低減させることができる。
【0065】
尚、撮影条件設定機能552は、予め取得された被検体の診断情報(例えば、医用画像診断装置とは異なる装置により計測された診断情報)が心疾患であることを示している場合、1つの撮影条件の初期条件として、デフォルトで心疾患の被検体用の撮影条件を設定し、被検体の造影剤モニタリングスキャン中に、被検体の心電波形データが正常な心拍を示す場合には、撮影条件を、心拍が正常である被検体用の撮影条件に変更してよい。
【0066】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1…X線CT装置,10…架台装置,11…X線管,12…ウェッジ,13…コリメータ,14…X線高電圧装置,15…X線検出器,16…データ収集システム,17…回転フレーム,18…制御装置,30…寝台装置,31…基台,32…寝台駆動装置,33…天板,34…支持フレーム,40…コンソール装置,41…メモリ,42…ディスプレイ,43…入力インターフェース,44…ネットワーク接続回路,50…処理回路,51…システム制御機能,52…前処理機能,53…再構成処理機能,54…画像処理機能,55…スキャン制御機能,56…表示制御機能,550…取得機能,551…判定機能,552…撮影条件設定機能,EC…心電計