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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132624
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電源装置および電源装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20240920BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240920BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L23/28 L
H01L21/56 R
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043469
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】辻 征史
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 洋平
【テーマコード(参考)】
4M109
5F061
【Fターム(参考)】
4M109AA02
4M109DB09
5F061AA02
5F061CA02
(57)【要約】
【課題】筐体に充填された封止部材の漏れを抑制するとともに、製造工程が煩雑になることを抑制することが可能な電源装置および電源装置の製造方法を提供する。
【解決手段】この電源装置100は、電源を構成する電子部品10と、電子部品10を封止し、第1線膨張係数を有する封止部材20と、内部に電子部品10を覆うように封止部材20が充填されているとともに、封止部材20に接する部分が第2線膨張係数を有する包囲部材30と、内部に電子部品10、封止部材20および包囲部材30を配置し、第3線膨張係数を有する部材により形成されている筐体40と、を備え、封止部材20の第1線膨張係数は、筐体40を形成する部材の第3線膨張係数よりも包囲部材30の第2線膨張係数に近い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源を構成する電子部品と、
前記電子部品を封止し、第1線膨張係数を有する封止部材と、
内部に前記電子部品を覆うように前記封止部材が充填されているとともに、前記封止部材に接する部分が第2線膨張係数を有する包囲部材と、
内部に前記電子部品、前記封止部材および前記包囲部材を配置し、第3線膨張係数を有する部材により形成されている筐体と、を備え、
前記封止部材の前記第1線膨張係数は、前記筐体を形成する部材の前記第3線膨張係数よりも前記包囲部材の前記第2線膨張係数に近い、電源装置。
【請求項2】
前記筐体を形成する部材は金属であり、前記包囲部材は樹脂である、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記包囲部材は、前記封止部材が露出する開口部を含み、袋形状を有する袋部材と、前記袋部材と前記電子部品との間に配置され、前記第2線膨張係数を有し、前記袋部材よりも硬いシート状の型部材とを含む、請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記型部材の厚みは、前記袋部材の厚みよりも大きい、請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記封止部材は、前記開口部から露出する第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面とを接続する側面とを含み、
前記型部材は、前記封止部材の前記第1面を覆わずに、前記封止部材の前記第2面および前記側面を覆う、請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記電子部品は、入力された電力の電圧よりも高い電圧の電力を発生させる高電圧発生回路を有する第1基板を含み、
前記筐体の内面に配置され、前記封止部材により封止されていない第2基板をさらに備える、請求項1に記載の電源装置。
【請求項7】
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、前記封止部材により封止されていない変圧器をさらに備える、請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
電源を構成する電子部品を内部に収納した包囲部材を、電源装置本体としての筐体の内部となる空間に配置する工程と、
前記筐体の内部となる空間に配置された前記包囲部材の内部に封止部材を充填することにより前記電子部品を封止する工程と、を備える、電源装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置および電源装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品と、電子部品を封止する封止部材と、筐体とを備える装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1には、筐体と、基板(電子部品)と、筐体と基板との間に充填された樹脂組成物の硬化物(封止部材)とを含む電子機器(電源装置)が開示されている。上記特許文献1の電子機器では、基板は、樹脂組成物により封止されている。また、上記特許文献1には、金属筐体と基板との間隙に樹脂組成物を充填し、充填した樹脂組成物を硬化させることにより電子機器を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-31636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には明記されていないが、筐体内部の空間に樹脂組成物を充填する際に、充填されて硬化する前の樹脂組成物が、筐体の角部などに形成された隙間から筐体の外部に漏れ出るおそれがある。そのため、上記特許文献1には明記されていないが、筐体内部の空間に充填された樹脂組成物(封止部材)が上記隙間から漏れることを防止するため、筐体の角部などの溶接作業または接合作業を行う必要がある。このため、煩雑な作業が必要であると考えられる。したがって、筐体に充填された封止部材の外部への漏れを抑制するとともに、製造工程が煩雑になることを抑制することができる電源装置が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、製造工程が煩雑になることを抑制しながら、筐体に充填された封止部材の外部への漏れを抑制することが可能な電源装置および電源装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面における電源装置は、電源を構成する電子部品と、電子部品を封止し、第1線膨張係数を有する封止部材と、内部に電子部品を覆うように封止部材が充填されているとともに、封止部材に接する部分が第2線膨張係数を有する包囲部材と、内部に電子部品、封止部材および包囲部材を配置し、第3線膨張係数を有する部材により形成されている筐体と、を備え、封止部材の第1線膨張係数は、筐体を形成する部材の第3線膨張係数よりも包囲部材の第2線膨張係数に近い。
【0008】
この発明の第2の局面における電源装置の製造方法は、電源を構成する電子部品を内部に収納した包囲部材を、電源装置本体としての筐体の内部となる空間に配置する工程と、筐体の内部となる空間に配置された包囲部材の内部に封止部材を充填することにより電子部品を封止する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の局面における電源装置は、上記のように、内部に電子部品を覆うように封止部材が充填されている包囲部材を備える。これにより、筐体の角部などを溶接したり接合したりすることなく、封止部材を包囲部材により包囲することができる。そのため、製造工程が煩雑になることを抑制しながら、筐体に充填された封止部材の外部への漏れを抑制することができる。また、上記のように、封止部材が充填されているとともに封止部材に接する部分が第2線膨張係数を有する包囲部材を備え、封止部材の第1線膨張係数は、筐体を形成する部材の第3線膨張係数よりも包囲部材の第2線膨張係数に近い。上記のような線膨張係数を有する包囲部材を、筐体と封止部材との間に封止部材と接するように設けることにより、封止部材と筐体とが接触する場合と比べて、封止部材と接触する部材の線膨張係数と、封止部材の線膨張係数との差を小さくすることができる。そのため、封止部材と接触する部材と封止部材との線膨張係数の差に起因する、封止部材におけるクラックの発生を抑制することができる。したがって、封止部材に発生したクラックによる空間における電子部品からの放電の発生を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の第2の局面における電源装置の製造方法は、上記のように、筐体の内部となる空間に配置された包囲部材の内部に封止部材を充填することにより電子部品を封止する工程を備える。これにより、筐体の角部などを溶接したり接合したりすることなく、封止部材を包囲部材により包囲することができる。そのため、製造工程が煩雑になることを抑制しながら、筐体に充填された封止部材の外部への漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による電源装置の斜視図である。
図2】第2ケースを取り外した電源装置の斜視図である。
図3】一実施形態による電源装置を説明するための模式断面図である。
図4】第1電子部品、変圧器および第2電子部品の一例を説明するための模式図である。
図5】高電圧発生回路の一例としての回路図である。
図6】型部材および袋部材を説明するための模式図である。
図7】一実施形態による電源装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図8】金属蓋が取り付けられた第1ケースを説明するための斜視図である。
図9】封止部材の充填を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具現化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(電源装置の全体構成)
図1図6を参照して、一実施形態による電源装置100の全体構成について説明する。
【0014】
図1は、実施形態による電源装置100の斜視図であり、図2は、説明の便宜上、後述する筐体40の第2ケース42(図1参照)を取り外した電源装置100の斜視図である。図3は、実施形態による電源装置100を説明するための模式断面図である。
【0015】
図3に示すように、電源装置100は、第1電子部品10と、封止部材20と、包囲部材30と、筐体40と、第2電子部品50と、変圧器60とを備える。電源装置100は、電源から入力された交流の電圧を直流の高電圧に変換し、たとえばX線撮影装置に設けられたX線管に出力するように構成されている。なお、第1電子部品10は、特許請求の範囲の「電子部品」の一例である。なお、図示の便宜上、第1電子部品10、第2電子部品50および変圧器60にはハッチングを付していない。
【0016】
第2電子部品50(図4参照)は、電源から電力の供給および遮断を変更可能なように構成されているとともに、24Vの交流電圧を出力可能なように構成されている。第2電子部品50は、図示しない制御部が制御する制御信号に基づいて、オン/オフの状態を変更することができる。第2電子部品50は、第2基板51と、電子素子とを含む。電子素子は、たとえば、スイッチング素子52を含む。スイッチング素子52は、第2基板51に搭載されている。スイッチング素子52は、たとえば、FET(Field Effect Transistor)である。第2電子部品50は、筐体40の内部に配置されている。詳細には、第2電子部品50の第2基板51(図2参照)は、筐体40の後述する第1ケース41に取り付けられている。第2電子部品50は、封止部材20により封止されていない。
【0017】
変圧器60は、第2電子部品50から入力された電圧を昇圧するように構成されている。変圧器60は、第2電子部品50の第2基板51と、第1電子部品10の後述する第1基板11との間に配置されている。変圧器60(図2参照)は、筐体40の第1ケース41に取り付けられている。変圧器60は、封止部材20により封止されていない。
【0018】
第1電子部品10は、高圧電源を構成している。第1電子部品10は、第1基板11と、高電圧発生回路12(図4参照)と、コンデンサ13(図4参照)およびダイオード14(図4参照)とを含む。第1基板11には、高電圧発生回路12が搭載されている。第1電子部品10は、変圧器60から交流で入力された電力の電圧を、高電圧発生回路12を用いて高電圧の直流の電力に変換するように構成されている。第1電子部品10は、変換された直流高電圧の電力を、たとえばX線管に出力するように構成されている。図4および図5に示すように、高電圧発生回路12には、コンデンサ13およびダイオード14が搭載されている。第1電子部品10は、封止部材20により封止されている。第1電子部品10は、ケーブル15を介して、変圧器60と電気的に接続されている。ケーブル15は、封止部材20に覆われた一方端側において第1電子部品10に接続され、封止部材20に覆われていない他方端側において変圧器60に接続されている。
【0019】
封止部材20は、第1電子部品10を封止している。封止部材20は、たとえば、ウレタンまたはシリコーンなどの樹脂材料を用いることができる。封止部材20は、第1線膨張係数を有する。封止部材20がウレタンである場合、第1線膨張係数は、たとえば、1.4×10-4[1/℃]である。また、封止部材20がシリコーンである場合、第1線膨張係数は、たとえば、3.5×10-4[1/℃]である。封止部材20は、包囲部材30の開口部31から露出する第1面21と、第1面21と対向する第2面22と、第1面21と第2面22とを接続する側面23とを含む。本実施形態において、第1電子部品10を封止している封止部材20は、直方体形状を有する。
【0020】
封止部材20の第1線膨張係数は、筐体40を形成する部材の第3線膨張係数よりも、包囲部材30において封止部材20に接する型部材32の第2線膨張係数に近いように構成されている。
【0021】
包囲部材30は、内部に第1電子部品10を覆うように封止部材20が充填されている。包囲部材30は、封止部材20が露出する開口部31を含む。包囲部材30は、シート状の型部材32と、袋形状を有する袋部材33とを含む。型部材32は、袋部材33と第1電子部品10との間に配置されている。すなわち、型部材32は、袋部材33の内側に設けられているとともに、袋部材33は、型部材32の外側に設けられている。
【0022】
型部材32は、封止部材20に接するように設けられている。型部材32は、封止部材20の第1面21を覆わずに、封止部材20の第2面22および側面23を覆うように設けられている。図6に示すように、型部材32は、第1型部材32aおよび第2型部材32bにより構成される2枚のシート状の樹脂材料により形成されている。第1型部材32aは、シート状の樹脂材料が折り曲げられることにより、封止部材20の隣接する2つの側面23を覆うように形成されている。第2型部材32bは、シート状の樹脂材料が折り曲げられることにより、封止部材20の第2面22、第1型部材32aに覆われていない封止部材20の隣接する2つの側面23、および、第1型部材32aに覆われた封止部材20の1つの側面23を覆うように形成されている。第1型部材32aと第2型部材32bとは、互いに重複して覆う封止部材20の1つの側面23において接着されている。封止部材20の第1面21は、第1型部材32aおよび第2型部材32bに覆われていない。型部材32は、封止部材20の第1面21に対応する部分に型部材開口部31aを有する。型部材32は、袋部材33を介して筐体40の内面に沿うように形成されている。型部材32は、2枚のシート状の樹脂材料の各々を折り曲げて形成するため、複雑な金型などを製造しなくて良い。そのため、製造コストが増大するのを抑制することができる。
【0023】
型部材32は、袋部材33よりも硬い材料により形成されている。また、図3に示すように、型部材32の厚みt1は、袋部材33の厚みt2よりも厚く形成されている。なお、図3では、説明の便宜上、型部材32の厚みt1および袋部材33の厚みt2を強調して図示している。型部材32は、たとえば、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料を用いることができる。包囲部材30は、封止部材20に接する部分において第2線膨張係数を有する。本実施形態において、型部材32は、第2線膨張係数を有する。型部材32がポリカーボネートである場合、第2線膨張係数は、たとえば、6.5×10-5[1/℃]である。型部材32がポリエチレンテレフタレートである場合、第2線膨張係数は、たとえば、6.0×10-5[1/℃]である。型部材32は、たとえばトムソン型を用いてシート状の樹脂材料を打ち抜くことにより製造することができる。なお、型部材32の製造方法は、特に限定されない。
【0024】
袋部材33は、型部材32の外側において型部材32に接するように設けられている。袋部材33は、封止部材20の第2面22および側面23を覆う型部材32を包むように設けられている。袋部材33は、封止部材20の第1面21に対応する部分に袋部材開口部31bを有する。袋部材開口部31bは閉じられていない。
【0025】
袋部材33は、たとえば、塩化ビニルやポリエチレンなどの樹脂材料を用いることができる。袋部材33が塩化ビニルである場合、袋部材33の線膨張係数は、たとえば、7.0×10-5[1/℃]である。袋部材33がポリエチレンである場合、袋部材33の線膨張係数は、たとえば、15.0×10-5[1/℃]である。
【0026】
袋部材33は、型部材32の外面および筐体40の内面に接触して配置されている。袋部材33の大きさは筐体40の内面に沿う大きさに形成されている。
【0027】
筐体40は、第2電子部品50と、変圧器60と、第1電子部品10と、封止部材20と、包囲部材30とを、内部に収納している。筐体40は、電源装置100本体として構成されている。筐体40は、第1ケース41と、第2ケース42とを含む。第1ケース41および第2ケース42は、封止部材20の対向する側面23に対応する部分において重ねられるとともに、ねじ44(図1参照)によりねじ留めされて接合されている。
【0028】
また、筐体40には、ヒートシンク43が設けられている。ヒートシンク43は、筐体40の第1ケース41の第2電子部品50側の端部に設けられている。ヒートシンク43は、放熱用の複数のフィンを有する。ヒートシンク43は、板金を介して第2電子部品50のスイッチング素子52に対応する位置に設けられている。ヒートシンク43は、スイッチング素子52から発生した熱を筐体40の外部に放出する。
【0029】
筐体40は、たとえば、板金により形成されている。筐体40の材料として、たとえば、アルミ合金を用いることができる。筐体40は、第3線膨張係数を有する。筐体40がアルミ合金により形成されている場合、第3線膨張係数は、たとえば、23.5×10-6[1/℃]である。
【0030】
(電源装置の製造方法)
次に、図7を参照して、本実施形態による電源装置100の製造方法について説明する。
【0031】
まず、ステップS1において、第1電子部品10を内部に収納した包囲部材30が、電源装置100本体としての筐体40の内部となる空間に配置される。
【0032】
具体的には、筐体40の第1ケース41に、第2電子部品50と、変圧器60と、第1電子部品10と、ヒートシンク43とが取り付けられる。また、ケーブル15(図3参照)などのはんだ付けが行われる。そして、袋部材33および型部材32により構成される包囲部材30が、第1ケース41におけるヒートシンク43と反対側から、第1電子部品10を包囲するように被せられる(図2参照)。
【0033】
次に、ステップS2において、筐体40の第1ケース41に、治具の金属蓋70(図8参照)が取り付けられる。なお、治具の金属蓋70は、第2電子部品50および変圧器60を覆う部分が設けられていない点が、第2ケース42と相違している。
【0034】
次に、ステップS3において、包囲部材30の開口部31が上方を向いた姿勢である状態(図9参照)において、筐体40の内部となる空間に配置された包囲部材30の内部に封止部材20が充填されることにより、第1電子部品10が封止される。
【0035】
封止部材20が充填される前の包囲部材30の開口部31が上方を向いた姿勢(図9参照)において、第1電子部品10は、ケーブル15(図3参照)を介して、第1ケース41に取り付けられた第2電子部品50および変圧器60に対して片持ちにより支持された状態となる。第1電子部品10が片持ちにより支持された状態において、第1電子部品10の外面と型部材32の内面との間には、空間80(図3参照)が形成されている。封止部材20は、第1電子部品10の外面と型部材32の内面との間の空間80に充填される。
【0036】
また、封止部材20の充填後において、第1電子部品10の外面からの封止部材20および型部材32の厚みt3(図3参照)が予め設定された厚みを確保できるように、第1電子部品10が片持ちにより支持された状態において、第1電子部品10は位置決めされる。予め設定された厚みとは、第1電子部品10からの放電を防止し得る厚みである。これにより、包囲部材30の内部に充填された封止部材20は、第1電子部品10と、第1ケース41および後に取り付けられる第2ケース42との間に予め設定された厚みを確保しつつ充填される。
【0037】
次に、ステップS4において、筐体40の第1ケース41から金属蓋70が取り外され、第1ケース41に第2ケース42がねじ44によりねじ留めされて取り付けられる。なお、袋部材33の袋部材開口部31bは閉じられていない。
【0038】
(本実施形態による電源装置の効果)
本実施形態の電源装置100では、以下のような効果を得ることができる。
【0039】
本実施形態では、上記のように、内部に第1電子部品10を覆うように封止部材20が充填されている包囲部材30を備える。これにより、筐体40の角部などを溶接したり接合したりすることなく、封止部材20を包囲部材30により包囲することができる。そのため、製造工程が煩雑になることを抑制しながら、筐体40に充填された封止部材20の外部への漏れを抑制することができる。また、本実施形態では、上記のように、封止部材20の第1線膨張係数は、筐体40を形成する部材の第3線膨張係数よりも、包囲部材30において封止部材20に接する型部材32の第2線膨張係数に近い。上記のような線膨張係数を有する型部材32を、筐体40と封止部材20との間に封止部材20と接するように設けることにより、封止部材20と筐体40とが接触する場合と比べて、封止部材20と接触する部材の線膨張係数と、封止部材20の線膨張係数との差を小さくすることができる。そのため、封止部材20と接触する部材と封止部材20との線膨張係数の差に起因する、封止部材20におけるクラックの発生を抑制することができる。したがって、封止部材20に発生したクラックによる空間における第1電子部品10からの放電の発生を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、上記のように、筐体40を形成する部材は金属であり、包囲部材30は樹脂である。筐体40を金属により形成することにより筐体40の強度を確保しながら、金属と比べて成形しやすい樹脂製の包囲部材30を用いて封止部材20と筐体40との接着を抑制することができるため、線膨張係数が樹脂と比べて小さい金属製の筐体40と封止部材20との線膨張係数の差に起因する、封止部材20におけるクラックの発生を確実に抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、包囲部材30は、袋形状を有する袋部材33と、袋部材33と第1電子部品10との間に配置され、第2線膨張係数を有し、袋部材33よりも硬いシート状の型部材32とを含む。ここで、封止部材20の充填または封止部材20の硬化の際に、袋部材33にシワが生じうる。袋部材33に生じたシワが封止部材20に転写された場合、封止部材20におけるシワの被転写部分には、クラックと同様の空間が形成されることになる。そこで、袋部材33と第1電子部品10との間に、袋部材33よりも硬いシート状の型部材32を配置することにより、袋部材33が弛むことによりシワが生じたとしても、封止部材20にシワの形状が転写されることを抑制することができる。そのため、封止部材20に転写されたシワの形状に起因して封止部材20の厚みが部分的に小さくなることを抑制することができる。また、袋形状を有する袋部材33により、型部材32から漏れた封止部材20が外部に漏れ出ることをより抑制することができる。また、袋部材33よりも硬いシート状の型部材32の内側に封止部材20を充填することにより、封止部材20を所定の形状に形成することができる。そのため、封止部材20を所定の形状に形成するための金型を作製する必要がない。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、型部材32の厚みt1は、袋部材33の厚みt2よりも大きい。これにより、袋部材33が弛むことによりシワが生じたとしても、封止部材20にシワの形状が転写されることをより抑制することができる。そのため、封止部材20に転写されたシワの形状に起因して封止部材20の厚みが部分的に小さくなることをより抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、型部材32は、封止部材20の第1面21を覆わずに、封止部材20の第2面22および側面23を覆う。これにより、封止部材20の第1面21は、型部材32の型部材開口部31aから露出している。そのため、封止部材20の充填前において、型部材32の型部材開口部31aを介して封止部材20を充填することができるとともに、封止部材20の充填後において、型部材32の型部材開口部31aを介して第1電子部品10と変圧器60とが接続している状態とすることができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、電子部品は、入力された電力の電圧よりも高い電圧の電力を発生させる高電圧発生回路12を有する第1基板11を含み、筐体40の内面に配置され、封止部材20により封止されていない第2基板51をさらに備える。これにより、封止部材20を用いて選択的に電子部品を封止することができるため、封止樹脂の使用量を抑制することができるとともに、電源装置100の重量の増加を抑制することができる。そのため、電源装置100の製造完了までに要する時間を低減することができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、第1基板11と第2基板51との間に配置され、封止部材20により封止されていない変圧器60をさらに備える。これにより、封止部材20を用いてより選択的に電子部品を封止することができるため、封止樹脂の使用量をより抑制することができるとともに、電源装置100の重量の増加をより抑制することができる。
【0046】
(本実施形態の電源装置の製造方法の効果)
本実施形態の電源装置100の製造方法では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように、第1電子部品10を内部に収納した包囲部材30を、電源装置100本体としての筐体40の内部となる空間に配置する工程と、筐体40の内部となる空間に配置された包囲部材30の内部に封止部材20を充填することにより第1電子部品10を封止する工程と、を備える。これにより、筐体40の角部などを溶接したり接合したりすることなく、封止部材20を包囲部材30により包囲することができる。そのため、製造工程が煩雑になることを抑制しながら、筐体40に充填された封止部材20の外部への漏れを抑制することができる。
【0048】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0049】
たとえば、上記実施形態では、包囲部材30は、袋部材33と型部材32とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、包囲部材30は、型部材32を含まずに、袋部材33を含んでいても良い。包囲部材30は封止部材20に接する部分において第2線膨張係数を有するため、この場合、袋部材33の線膨張係数は、第2線膨張係数である。
【0050】
また、上記実施形態では、型部材32は、袋部材33よりも硬い例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、型部材32は、袋部材33と同等の硬さであっても良いし、袋部材33よりも柔らかい材料により形成されていても良い。また、上記実施形態では、型部材32の厚みt1は袋部材33の厚みt2よりも大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、型部材32の厚みt1は、袋部材33の厚みt2と同等であっても良いし、袋部材33の厚みt2よりも小さくても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、型部材32は、第1型部材32aおよび第2型部材32bにより構成される2枚のシート状の材料により形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、型部材32は、1枚のシート状の材料や3枚以上のシート状の材料により形成されていても良い。
【0052】
また、上記実施形態では、型部材32は、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、型部材32は、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニルやポリエチレンなどの樹脂材料を用いても良いし、樹脂材料以外の材料を用いても良い。
【0053】
また、上記実施形態では、袋部材33は、袋形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、封止部材20が露出する開口部31を含むとともに、内部の封止部材20が外部に漏れることを抑制することができれば、袋部材33の形状は特に限定されない。
【0054】
また、上記実施形態では、袋部材33は、塩化ビニルやポリエチレンなどの樹脂材料を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、袋部材33は、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料を用いても良いし、樹脂材料以外の材料を用いても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、筐体40は、アルミ合金などの材料により形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、筐体40は、アルミ合金以外のステンレスや鉄などの材料により形成されていても良いし、金属材料以外の、たとえば、樹脂材料により形成されていても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、封止部材20は、ウレタンまたはシリコーンなどの樹脂材料を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、封止部材20は、エポキシ樹脂などを用いても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、第1電子部品10を封止している封止部材20は直方体形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、封止部材20は、立方体形状、円柱形状、多面体形状などの他の形状であっても良い。この場合、型部材32は、第1面21を除いて封止部材20を覆うよう形成されていれば良い。
【0058】
また、上記実施形態では、封止部材20の充填前に治具の金属蓋70が取り付けられ、封止部材20の充填後に金属蓋70が取り外されて第2ケース42が取り付けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、封止部材20の充填前に取り付けられた金属蓋70を、封止部材20の充填後に取り外さずに、そのまま第2ケース42として使用しても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、電源装置100は、X線撮影装置に設けられたX線管に出力するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、高電圧が必要な種々の装置に出力するように構成されていても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、電源装置100は、コンデンサ13およびダイオード14を含む封止された第1電子部品10を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。電源装置100は、公知の変圧器方式の高電圧発生装置であっても良いし、公知のインバータ方式の高電圧発生装置であっても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、電源装置100は、第1電子部品10および変圧器60を筐体40の内部に備える例を示したが、本発明はこれに限られない。第1電子部品10および変圧器60は、電源装置100の筐体40の外部に設けられていても良い。
【0062】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0063】
(項目1)
電源を構成する電子部品と、
前記電子部品を封止し、第1線膨張係数を有する封止部材と、
内部に前記電子部品を覆うように前記封止部材が充填されているとともに、前記封止部材に接する部分が第2線膨張係数を有する包囲部材と、
内部に前記電子部品、前記封止部材および前記包囲部材を配置し、第3線膨張係数を有する部材により形成されている筐体と、を備え、
前記封止部材の前記第1線膨張係数は、前記筐体を形成する部材の前記第3線膨張係数よりも前記包囲部材の前記第2線膨張係数に近い、電源装置。
【0064】
(項目2)
前記筐体を形成する部材は金属であり、前記包囲部材は樹脂である、項目1に記載の電源装置。
【0065】
(項目3)
前記包囲部材は、前記封止部材が露出する開口部を含み、袋形状を有する袋部材と、前記袋部材と前記電子部品との間に配置され、前記第2線膨張係数を有し、前記袋部材よりも硬いシート状の型部材とを含む、項目1に記載の電源装置。
【0066】
(項目4)
前記型部材の厚みは、前記袋部材の厚みよりも大きい、項目3に記載の電源装置。
【0067】
(項目5)
前記封止部材は、前記開口部から露出する第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面とを接続する側面とを含み、
前記型部材は、前記封止部材の前記第1面を覆わずに、前記封止部材の前記第2面および前記側面を覆う、項目4に記載の電源装置。
【0068】
(項目6)
前記電子部品は、入力された電力の電圧よりも高い電圧の電力を発生させる高電圧発生回路を有する第1基板を含み、
前記筐体の内面に配置され、前記封止部材により封止されていない第2基板をさらに備える、項目1に記載の電源装置。
【0069】
(項目7)
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、前記封止部材により封止されていない変圧器をさらに備える、項目6に記載の電源装置。
【0070】
(項目8)
電源を構成する電子部品を内部に収納した包囲部材を、電源装置本体としての筐体の内部となる空間に配置する工程と、
前記筐体の内部となる空間に配置された前記包囲部材の内部に封止部材を充填することにより前記電子部品を封止する工程と、を備える、電源装置の製造方法。
【符号の説明】
【0071】
10 第1電子部品
11 第1基板
12 高電圧発生回路
20 封止部材
21 第1面
22 第2面
23 側面
30 包囲部材
31 開口部
32 型部材
33 袋部材
40 筐体
50 第2電子部品
51 第2基板
60 変圧器
100 電源装置
t1 型部材の厚み
t2 袋部材の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9