特開 2024-132629 関節屈伸器具、関節屈伸装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024132629

(43)【公開日】2024-10-01

(54)【発明の名称】関節屈伸器具、関節屈伸装置

(51)【国際特許分類】

   A61H 1/02 20060101AFI20240920BHJP

【ＦＩ】

A61H1/02 G

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023043474

(22)【出願日】2023-03-17

(71)【出願人】

【識別番号】511171040

【氏名又は名称】株式会社アールテクス

(74)【代理人】

【識別番号】100127764

【弁理士】

【氏名又は名称】小川 泰州

(72)【発明者】

【氏名】積山 彰

【テーマコード（参考）】

4C046

【Ｆターム（参考）】

4C046BB04

4C046BB05

4C046BB08

4C046DD06

4C046DD07

4C046DD13

4C046DD36

(57)【要約】

【課題】本発明は、患部に過度の負担を与えることなく関節部分を屈曲させたり伸展させたりすることができる新規な関節屈伸器具、並びに前記関節屈伸器具を備えた新規な関節屈伸装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 指や四肢等に存する関節部分を屈曲させたり伸展させたりするための関節屈伸器具１において、関節部分を挿入するための管体２０を複数の環状体２にて構築すると共に、可撓性を有する支柱３にて前記環状体２を所定の間隔をあけた状態で支持することによって、前記管体２０の側面に沿って配された索体４を介して前記管体２０の湾曲と伸展を操作できるようにする。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

指や四肢等に存する関節部分を屈曲させたり伸展させたりするための関節屈伸器具であって、
関節部分を挿入するための管体をなす複数の環状体と、
前記環状体を所定の間隔をあけた状態で支持する支柱と、
前記環状体の縁に設けられた挿通孔に通されて前記管体の側面に沿って配された索体と、
を具備してなり、
前記索体を介して前記管体の湾曲と伸展を操作できるように、前記索体につき前記管体を構成する前記環状体から選択された一の環状体の挿通孔に対する抜け止めがなされ、且つ、前記支柱が可撓性を有することを特徴とする関節屈伸器具。

【請求項2】

請求項１に記載の関節屈伸器具において、
前記環状体の内径が前記管体に挿入される関節部分の嵩を超える寸法となされた関節屈伸器具。

【請求項3】

請求項１に記載の関節屈伸器具において、
前記支柱が弾性回復力を有する関節屈伸器具。

【請求項4】

請求項１に記載のハブにおいて、
前記環状体の内面に緩衝材が設けられてなる関節屈伸器具。

【請求項5】

請求項１ないし４のいずれか１項に記載の関節屈伸器具を備えてなることを特徴とする関節屈伸装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、指や四肢等に存する関節部分を屈曲させたり伸展させたりするための関節屈伸器具、並びに前記関節屈伸器具を備えた関節屈伸装置に関する。

【背景技術】

【0002】

「拘縮」とは、関節が正常な範囲で動かなくなった機能障害を指す。拘縮には脳梗塞や麻痺をきっかけにして抹消神経や中枢神経系の疾患が引き起こす神経性拘縮と、筋肉の可動域制限によって起こる筋性拘縮とがあるが、いずれの拘縮も症状の出ている関節部分を動かして可動制限を緩和する関節可動域訓練を行うことによって改善することが確認されている。

【0003】

この関節可動域訓練を行うにあたっては、まず自力にて関節部分を動かす自動運動を行うことが基本となるが、自動運動が困難な場合には器具を用いて受動的に関節部分を動かす他動運動が行われる（例えば、下記特許文献１、２参照。）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２００４‐２９８５７３号公報

【特許文献2】特開２０１０‐８２３４２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

前記特許文献１には、リング状の装着具を指に装着し、ワイヤを操作することによって手指の関節部分の他動運動を行なう器具（リハビリ装具）が開示されている。一方、前記特許文献２には、指サック部材を指先に装着すると共にと、関節付近にリング部材を装着し、ワイヤを操作することによって手指の関節部分の他動運動を行う器具（手指用補助アクチュエータ）が開示されている。

【0006】

しかしながら、前記特許文献１に開示されたリハビリ器具は、関節部分に対するリング状の装着具の位置合わせが必要であることから装着作業が煩雑となる。又、前記特許文献２に開示されたリハビリ器具を用いて他動運動を行った場合、指サック部材が装着された指先において相当の負担が生じる。

【0007】

本発明は前記技術的課題に鑑みて完成されたものであり、装着が容易で、且つ、過度の負担を与えることなく関節部分を屈曲させたり伸展させたりすることができる新規な関節屈伸器具、並びに前記関節屈伸器具を備えた新規な関節屈伸装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

前記技術的課題を解決する本発明の関節屈伸器具は、指や四肢等に存する関節部分を屈曲させたり伸展させたりするための器具であって、関節部分を挿入するための管体をなす複数の環状体と、前記環状体を所定の間隔をあけた状態で支持する支柱と、前記環状体の縁に設けられた挿通孔に通されて前記管体の側面に沿って配された索体と、を具備してなり、前記索体を介して前記管体の湾曲と伸展を操作できるように、前記索体につき前記管体を構成する前記環状体から選択された一の環状体の挿通孔に対する抜け止めがなされ、且つ、前記支柱が可撓性を有することを特徴とする（以下、「本発明器具」と称する。）。

【0009】

前記本発明器具においては、前記環状体の内径が前記管体に挿入される関節部分の嵩を超える寸法となされたものが好ましい態様となる。

【0010】

前記本発明器具においては、前記支柱が弾性回復力を有するものが好ましい態様となる。

【0011】

前記本発明器具においては、前記環状体の内面に緩衝材が設けられてなるものが好ましい態様となる。

【0012】

前記技術的課題を解決するための本発明の関節屈伸装置は、前記本発明器具を備えてなることを特徴とする（以下、「本発明装置」と称する。）。

【発明の効果】

【0013】

本発明によれば、関節部分に対する装着が容易となり、過度の負担を与えることなく関節部分を屈曲させたり伸展させたりすることができる。

【図面の簡単な説明】

【0014】

【図1】図１は本発明器具の一実施形態を示す斜視図である。

【図2】図２（ａ）、（ｂ）は前記本発明器具を基本形態から湾曲させた状態を示す斜視図である。

【図3】図３（ａ）、（ｂ）は前記本発明器具を用いて伸展している手指の関節部分を屈曲させた状態を示す斜視図である。

【図4】図４（ａ）～（ｃ）は屈曲している手指に本発明器具を装着する様子を示す斜視図である。

【図5】図５（ａ）、（ｂ）は本発明器具の別の実施形態を示す斜視図である。

【図6】図６は本発明器具の更に別の実施形態を示す斜視図である。

【図7】図７は本発明器具のまた更に別の実施形態を示す正面図（ａ）と、斜視図（ｂ）である。

【図8】図８は本発明装置の一実施形態を示すブロック図である。

【発明を実施するための形態】

【0015】

以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。

【0016】

［実施形態１］
＜本発明器具１＞
図１に本発明器具１の一実施形態を示す。前記本発明器具１は、「環状体（２）」と、「支柱（３）」と、「索体（４）」と、を具備する。

【0017】

-環状体２-
前記環状体２は、関節部分を挿入するための管体２０をなす役割を担う。即ち、複数の環状体２が直線状や曲線状の列をなすことによって前記管体２０が構築される。本実施形態においては、円環状に加工されたプラスチック製の環状体２を直線状に並べることによって直管状の管体２０を構築した。又、前記環状体２の縁には挿通孔２１が設けられる。本実施形態においては、前記環状体２の縁二箇所(図中上縁と下縁)に突起を配し、係る突起に貫通孔を設けることによって前記挿通孔２１を設けた。

【0018】

-支柱３-
前記支柱３は、前記環状体２を所定の間隔をあけた状態で支持する役割を担う。又、前記支柱３は可撓性（外力によって撓む性質）を有する。本実施形態においては、円柱状に加工されたプラスチック製の支柱３を、前記管体２０の一端から他端に向かって沿わした状態で側壁を各環状体２に接合することによって、前記環状体２を所定の間隔を開けた状態で支持した。

【0019】

-索体４-
前記索体４は、前記環状体２の縁に設けられた挿通孔２１に通されることによって、前記管体２０の側面に沿って配される。本実施形態においては、前記索体４としてワイヤを用い、列をなす各挿通孔２１に対して順に通すことによって、前記索体４を前記管体２０の側面に配した。なお、前記索体４の一端には前記挿通孔２１の内径より大きい嵩を有する抜け止め部材４１が設けられており、前記管体２０の一端に配された環状体２に存する挿通孔２１に対する前記索体４の抜け止めが図られている。

【0020】

図２に示すように、前記構成を有する本発明器具１は、前記索体４を介して前記管体２０の湾曲と伸展を操作できる。即ち、図中上部に存する索体４を弛緩させた状態で、図中下部に存する索体４を引張すれば、図中下側に存する挿通孔同士が近づいて前記管体２０が湾曲する(図２（ｂ）参照)。引張していた前記索体４を弛緩させれば、前記管体２０が伸展する（図２（ａ）参照）。

【0021】

従って、図３に示すように、前記本発明器具１の管体２０内に手指（Ｆ）の関節部分を挿入した状態で前記管体２０を湾曲させれば、前記管体２０の湾曲に応じた他動運動を行うことができる。

【0022】

この他動運動の実行の際、手指（Ｆ）は前記環状体２によって拘束されていないことから前記管体２０内において自由度が高く、関節部分の屈伸は前記環状体２の内面によって緩やかに押されながら行われる。これより、前記本発明器具１によれば過度の負担を与えることなく関節部分を屈曲させたり伸展させたりすることができる。

【0023】

又、前記本発明器具１は、前記管体２０内に関節部分を挿入するだけで装着が完了することから位置合わせを必要とせず、使用性の優れたものとなる。

【0024】

ところで、本実施形態においては前記環状体２として、円環状に加工したプラスチック製のものを用いているが、環状体２の形状や素材は特に限定されない。環状体２の形状としては三角形や四角形その他の多角形や楕円形などの全体形状を有していても良く、外縁形状と開口部の形状が異なっていても良い。又、必ずしも無端状の閉環体であることを要せず、開環部を有する開環体であっても良い。更に、環状体２の素材についてもプラスチックの他、金属、ゴム、ガラス、セラミック、木、パルプ等のいずれも使用することができる。

【0025】

なお、本実施形態においては前記本発明器具１につき、手指（Ｆ）の関節部に使用するものであること前提として前記環状体２の寸法（主として開口寸法）及び個数を決定しているが、本発明器具１は手指（Ｆ）の関節部分の屈伸のみに使用されるものではない。本発明器具１は、例えば、膝、肘、足首、手首などの四肢の関節部分や脊椎等の胴体部に存する関節部分に対しても使用可能である。従って、前記環状体２の寸法や個数は関節部分の箇所や状態に応じて決定すれば良く、特に限定されない。又、全ての環状体２につき同寸法のものを用いる必要もない。

【0026】

但し、本発明においては、前記環状体２の内径につき、前記管体２０に挿入される関節部分の嵩を超える寸法とすることが好ましい。具体的には、前記環状体２の内径は、前記管体２０に挿入される関節部分の嵩（関節部分周縁を包含する最小外接円の径）に対して１．０超、２倍以下（より好ましくは１．１～１．５倍）とすることが好ましい。

【0027】

又、本実施形態においては前記管体２０につき前記環状体２を直線状に並べることによって直管状の基本形態を有するものとしているが、図４に示すように屈伸した状態で固まった関節部分を伸展するにあたっては、曲管状の基本形態を有する管体２０を構築しても良い。要は関節部分の形状や症状に応じて前記管体２０の基本形態を決定すれば良い。

【0028】

更に、本実施形態においては前記支柱３につき円柱状に加工されたプラスチック製のものを前記管体２０の一端から他端に向かって沿わしているが、前記支柱３としては可撓性を有し、前記索体４を介した操作によって撓むものであればその形状や素材は限定されない。従って、前記支柱３はゴムやプラスチックなどのヤング率が０．０１～３．５ＧＰａ程度のものを素材とする場合に限られず、例えば、金属のようなヤング率が高い素材であっても、図５に示すような弦巻バネの形態などに加工すれば支柱３として使用可能となる。ここで、前記支柱３につき弦巻バネや板バネなどの弾性回復力を有するものとすれば、索体４を操作することによって基本形態から変形させた管体２０を弾性的に基本形態に復帰させることができる。

【0029】

なお、前記支柱３は、前記環状体２を所定の間隔をあけた状態で支持するものであれば、その本数について特に限定されない。又、一本の支柱３を前記管体２０の一端から他端に向かって沿わす必要もない。例えば、図６に示すように、隣接する二つの環状体２のみを支持する支柱３を図中手前側と奥側にて交互に配しても良い。

【0030】

加えて、本実施形態においては前記索体４としてワイヤを用いたが、前記索体４はワイヤに限られず、既知の素材を糸状ないし紐状に加工したものから適宜選択して用いることができる。又、使用する索体４の本数も特に限定されない。

【0031】

更に、本実施形態においては、前記索体４につき前記管体２０の一端に配された環状体２に存する挿通孔２１に対して抜け止めを講じているが、本発明においては必ずしも一端に配された環状体２に対してのみ抜け止めを講じることを前提とはしていない。前記索体４の抜け止めは前記管体２０を構成する複数の環状体２のいずれを選択しても良い。要は関節部分の形状や症状に応じて前記索体４の抜け止めを講じる環状体２を決定すれば良い。

【0032】

なお、本発明においては前記本発明器具１につき、他の部材を付帯させることを否定しない。例えば、図７に示すように前記環状体２の内面にクッション等の緩衝材５を設けても良い。又、前記管体２０を覆うカバー等を設けても良い。

【0033】

[実施形態２]
＜本発明装置１０＞
図８に本発明装置１０の一実施形態を示す。前記本発明装置１０は、前記本発明器具１を備えたものであり、本実施形態においては、前記本発明器具１に加えて、前記本発明器具１における索体４を操作する操作手段１１と、前記操作手段１１の運転を制御する制御手段１２と、を具備する。

【0034】

即ち、前記本発明装置１０は前記本発明器具１を操作するための装置である。そして、前記本発明装置１０は、拘縮の予防や治療等に用いられるリハビリ用の装置としての使用に限られず、関節部分を他動運動させる装置として広範な分野において使用することができる。

【0035】

その余は、前記実施形態１において説明した事項と同様であり、繰り返しを避けるべくここでは説明を省略する。

【0036】

なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。

【産業上の利用可能性】

【0037】

本発明は、関節部分を他動運動させる手段として好適に用いられる。

【符号の説明】

【0038】

１ 本発明器具（関節屈伸器具）
２ 環状体
２０ 管体
２１ 挿通孔
３ 支柱
４ 索体
５ 緩衝材
１０ 本発明装置

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】