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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132635
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】演習課題添削システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 7/02 20060101AFI20240920BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20240920BHJP
【FI】
G09B7/02
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043484
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】517409239
【氏名又は名称】谷本 昇太
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】谷本 昇太
【テーマコード(参考)】
2C028
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2C028BB04
2C028BC01
2C028BC05
2C028BD03
5L049CC34
5L050CC34
(57)【要約】
【課題】演習過程から質疑応答過程へスムーズに移行させて学習効率の向上を図る演習課題添削システムを提供する。
【解決手段】サーバー装置は、演習問題を表示させ答案及び質問を受け付けるための答案入力ページを表示させるためのページデータを学習者端末に送信する答案入力ページ送信機能と、学習者と指導者との間での質疑応答を可能にするチャット機能と、を有し、チャット機能は、質疑応答のためのチャットページを表示させるためのページデータを学習者端末及び指導者端末に送信するチャットページ送信機能と、学習者端末から受信した答案の内容に基づいて、チャットページに表示されるチャットの本文又は件名を出力するチャット制御機能と、学習者端末から答案を受信したことをトリガーとしてチャットプロセスを開始するチャットスタート機能と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンラインによる学習者への演習課題、指示文、設問を含む演習問題の提供、指導者による添削、当該演習問題に関する学習者と指導者との間での質疑応答を実現するサーバー装置と、
前記演習問題を前記サーバー装置から受信し、当該演習問題についての答案及び質問を前記サーバー装置に送信する学習者端末と、
前記答案及び前記質問を前記サーバー装置から受信し、当該答案の添削結果、当該質問に対する回答及び前記演習問題の模範解答及び解説を前記サーバー装置に送信する指導者端末と、を有する演習問題添削システムであって、
前記サーバー装置は、
前記演習問題を表示させ前記答案及び前記質問を受け付けるための答案入力ページを表示させるためのページデータを前記学習者端末に送信する答案入力ページ送信機能と、
前記学習者と前記指導者との間での質疑応答を可能にするチャット機能と、を有し、
前記チャット機能は、
前記質疑応答のためのチャットページを表示させるためのページデータを前記学習者端末及び前記指導者端末に送信するチャットページ送信機能と、
前記学習者端末から受信した前記答案の内容に基づいて、前記チャットページに表示されるチャットの本文又は件名を出力するチャット制御機能と、
前記学習者端末から前記答案を受信したことをトリガーとしてチャットプロセスを開始するチャットスタート機能と、を有することを特徴とする演習課題添削システム。
【請求項2】
前記サーバー装置は、
前記学習者端末及び前記指導者端末との間で確立されたセッションにおいて、前記学習者端末が送信した答案を前記チャット機能により受信し、当該答案のデータをユニークIDに紐付け、重複のない特定の演習問題についてのデータとして記憶部に格納するデータ処理機能を有し、
前記チャット機能は、
前記演習問題別に、前記ユニークIDに紐付けられた前記答案のデータを前記記憶部から読み出し、前記答案のデータと前記指導者端末から受信した前記解説とに基づいて、前記チャットページに表示されるチャットの本文を出力するチャット本文出力機能を有することを特徴とする請求項1に記載の演習課題添削システム。
【請求項3】
前記サーバー装置は、
前記学習者端末及び前記指導者端末との間で確立されたセッションにおいて、前記学習者端末が送信した答案を前記チャット機能により受信し、当該答案のデータをユニークIDに紐付け、重複のない特定の演習問題についてのデータとして記憶部に格納するデータ処理機能を有し、
前記チャット機能は、
前記演習問題の前記チャットプロセスを開始する毎に、前記ユニークIDに紐付けられた前記答案のデータを前記記憶部から読み出し、前記答案のデータを、前記チャットページに表示されるチャットの本文の第一メッセージとして出力し、
当該チャットページにおいて、前記第一メッセージが出力された後に、前記指導者端末から受信した前記解説に基づいて当該チャットページに表示されるチャットの本文のメッセージを出力する場合には、当該メッセージを第二メッセージとして当該本文に追加するチャット本文出力機能を有することを特徴とする請求項1に記載の演習課題添削システム。
【請求項4】
前記サーバー装置は、
前記学習者端末及び前記指導者端末との間で確立されたセッションにおいて、前記学習者端末が送信した答案を前記チャット機能により受信し、当該答案のデータをユニークIDに紐付け、重複のない特定の演習問題についてのデータとして記憶部に格納するデータ処理機能を有し、
前記チャット機能は、
前記演習問題の前記チャットプロセスを開始する毎に、前記ユニークIDに紐付けられた前記答案のデータを前記記憶部から読み出し、前記答案のデータに基づいて、前記チャットページに表示されるチャットの本文以外の場所に表示される内容の初期値として前記答案の内容を出力する答案内容出力機能を有し、
当該本文以外の場所に初期値として前記答案の内容を出力した後に、前記指導者端末から受信した前記解説に基づいて当該本文のメッセージを出力する場合には、当該メッセージを当該本文の第一メッセージとして当該本文に追加するチャット本文出力機能を有することを特徴とする請求項1に記載の演習課題添削システム。
【請求項5】
前記サーバー装置は、
前記学習者端末及び前記指導者端末との間で確立されたセッションにおいて、前記学習者端末が送信した答案を前記チャット機能により受信し、当該答案のデータをユニークIDに紐付け、重複のない特定の演習問題についてのデータとして記憶部に格納するデータ処理機能を有し、
前記チャット機能は、
前記演習問題別の複数のチャットを連ねて表示する表示方式と、
前記演習問題毎にチャットを単体で表示する表示方式と、を選択的に実行可能である請求項1に記載の演習課題添削システム。
【請求項6】
前記サーバー装置は、
前記学習者端末及び前記指導者端末との間で確立されたセッションにおいて、ユーザー情報を表示又は非表示にするユーザー情報表示切替機能を備え、
前記ユーザー情報を非表示にしてユーザーの匿名性を維持するチャットでは不特定多数のユーザーによる対話を可能とし、前記ユーザー情報を表示するチャットでは匿名性を持たないユーザーによる対話を可能とすることを特徴とする請求項1に記載の演習課題添削システム。
【請求項7】
前記サーバー装置は、
前記演習問題の形式には、複数の選択肢から解答を選ぶ多肢選択形式及び見本文章を別の文章に書き換える書き換え形式が含まれ、
前記答案入力ページ送信機能は、前記多肢選択形式及び前記書き換え形式を含む入力形式が異なる様々な問題形式に対応する答案入力ページを表示させるためのページデータを前記学習者端末に送信する問題形式別送信機能を有することを特徴とする請求項1に記載の演習課題添削システム。
【請求項8】
前記サーバー装置は、
前記演習問題をユーザーが作成、編集及び削除することを可能とする演習問題作成編集機能と、
ユーザーにより作成された前記演習問題及び当該演習問題の演習後の質疑応答のチャットを検索可能とする検索機能と、を有すること特徴とする請求項1に記載の演習課題添削システム。
【請求項9】
前記サーバー装置は、
前記質疑応答のチャットを、テキスト、音声、映像のうちの少なくとも一のメディアにより実現することを特徴とする請求項1に記載の演習課題添削システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンライン学習システムの技術分野に関し、より詳細には、演習課題添削システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、語学をはじめとする様々な学習用途でオンライン学習システムが利用されている。
オンライン学習システムは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を使った学習システムを除くと、大きく三つのタイプに分類できる。ここではその3タイプを「演習型の学習システム」、「質疑応答型の学習システム」、「演習型と質疑応答型のハイブリッド型学習システム」と称する。この分類方法は、問題を解くこと及び先生に質問をすることは、オンライン学習においても変わることのない「学び」に必要不可欠な要素である、という考え方に基づくものである。
【0003】
演習型の学習システムは、ユーザー(学習者)にオンラインで演習問題を解かせて学習させるためのシステムである。演習型の学習システムは、クイズやゲームをする感覚で気軽に学習できるので学習習慣を容易に身につけることができるという利点を有する。
更に、採点結果と解説が即座に表示される「即効性」や、時間と場所に制限されずにシステムを利用できる「利便性」も利点である。一方で、指導者からの詳細な解説が得られないことや、学習者が質問できない点が「演習型」の課題となっている。
【0004】
質疑応答型の学習システムは、テキストチャットやビデオチャットを利用して学習者と指導者を双方向でコミュニケーションさせることで学習効果の向上を図るシステムである。
質疑応答型の学習システムは、学習者が場所を選ばず質疑応答できること、詳細な解説を指導者から即座に得られることを利点とする。オンライン英会話学習システムはこのタイプに含まれる。
学校のような教育現場では講義動画の配信もよく利用される。「質疑応答型の学習システム」の問題点は演習機能が付属しないことである。例えば、特許文献1に記載の技術では、システムが完全にチャット機能に特化したものであるため、学習コンテンツが十分に提供されないことが欠点となる。
【0005】
演習型と質疑応答型のハイブリッド型学習システム(以下、単に「ハイブリッド型学習システム」と称す)は、問題演習と質疑応答(チャット)の両機能が同一アプリケーションで利用できるシステムである。演習型の学習システムと質疑応答型の学習システムの両方の利点を兼ね備えることにより両型の学習システムの問題点を改善した、正に“良いとこ取り”のシステムといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-041046
【特許文献2】特開2005-010539
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、現状においては、演習機能と質疑応答のハイブリッド型学習システムにも欠点がある。その欠点とは、演習機能と質疑応答(チャット)の両機能が完全に融合していないということである。すなわち、現在提供されているハイブリッド型学習システムは、ユーザーが演習問題を解き終えても、演習過程から質疑応答の過程にスムーズに移ることができない。
その原因は、演習機能の画面からチャットの画面までのページ移動が必要以上に複雑になっており、操作に手間がかかることにある。構造的な問題点としては、演習機能とチャット機能が異なるページレイアウトで構成されており、両機能が一連の流れを形成していないことが挙げられる。同一アプリケーションに配置されているにもかかわらず、演習機能と質疑応答機能がそれぞれ独立したアプリケーションであるかのように感じられることが最大の欠点である。その結果、ユーザーに操作の煩わしさを与え、学習効率の低下を招くことになる。
【0008】
例えば、特許文献2に記載のシステムはハイブリッド型学習システムに分類できる。特許文献2には、「学習者は複数の学習コースを学習することができ・・・学習者は学習画面でQ&Aボタンをクリックすることにより、質問とそれに対する応答を集めたQ&A集の画面に進み、質問掲示板に質問を記述して送信することにより・・・担当のコースインストラクターは、応答を記述後に返信して・・・学習者にメールが送信され、学習者がこれを閲覧して理解すると完結欄にチェックし、応答を完結してなる(段落0005)」と記載されている。
このように、特許文献2に記載のシステムの利用者は、指導者とコミュニケーションが取れる段階にたどり着くまでに多くのステップを経ることになり、質疑応答が1つ完了するまでに何回もクリックをしなければならない。これでは、オンライン学習の「利便性」や「即効性」といった利点が台無しになってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、演習過程から質疑応答過程へスムーズに移行させて学習効率の向上を図ることができる演習課題添削システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の演習課題添削システムは、オンラインによる学習者への演習課題、指示文、設問を含む演習問題の提供、指導者による添削及び当該演習問題に関する学習者と指導者との間での質疑応答を実現するサーバー装置と、前記演習問題を前記サーバー装置から受信し、当該演習問題についての答案及び質問を前記サーバー装置に送信する学習者端末と、前記答案及び前記質問を前記サーバー装置から受信し、当該答案の添削結果、当該質問に対する回答及び前記演習問題の模範解答及び解説を前記サーバー装置に送信する指導者端末と、を有する演習問題添削システムであって、前記サーバー装置は、前記演習問題を表示させ前記答案及び前記質問を受け付けるための答案入力ページを表示させるためのページデータを前記学習者端末に送信する答案入力ページ送信機能と、前記学習者と前記指導者との間での質疑応答を可能にするチャット機能と、を有し、前記チャット機能は、前記質疑応答のためのチャットページを表示させるためのページデータを前記学習者端末及び前記指導者端末に送信するチャットページ送信機能と、前記学習者端末から受信した前記答案の内容に基づいて、前記チャットページに表示されるチャットの本文又は件名を出力するチャット制御機能と、前記学習者端末から前記答案を受信したことをトリガーとしてチャットプロセスを開始するチャットスタート機能と、を有することを特徴とする。
【0011】
前記演習問題は、演習課題に応じて作成される。演習課題には、学び、学習、研修、訓練、試験、調査、アンケート、説明、指導、授業のための演習問題、指示文、設問、等が含まれ得る。また、演習問題を演習課題と読み替えてもよい。
前記答案は、学習者が演習問題等に解答した内容のことである。
前記添削結果とは、指導者による答案の添削内容である。添削結果には、模範解答、解説、アドバイス、コメント、等が含まれ得る。答案及び添削は、記述、選択、音声入力、等の様々な方法で入力が可能である。
前記質疑応答には、学習者の演習に関する質疑応答、指導者の添削に関する質疑応答等、演習後の質疑応答が含まれ得る。前記トリガーは、引き金、きっかけ、契機、等と読み替え得る。
【0012】
請求項1記載の演習課題添削システムは、問題演習機能と質疑応答機能とを兼ね備えたハイブリッド型学習システムであり、ネットワークを介して相互に接続されたサーバー装置、学習者端末及び指導者端末と、を有する。
【0013】
学習者端末は、演習問題をサーバー装置から受信し、当該演習問題についての答案及び質問をサーバー装置に送信する。
指導者端末は、答案及び質問をサーバー装置から受信し、当該答案の添削結果、当該質問に対する回答及び演習問題の模範解答及び解説をサーバー装置に送信する。
【0014】
サーバー装置は、答案入力ページのページデータを学習者端末に送信する(答案入力ページ送信機能)。答案入力ページのページデータを受信した学習者端末は、演習問題を表示させ答案及び質問を受け付けるための答案入力ページを自端末の表示部に表示する。
【0015】
また、サーバー装置は、学習者と前記指導者との間での質疑応答を可能にする(チャット機能)。すなわち、サーバー装置は、質疑応答のためのチャットページのページデータを学習者端末及び指導者端末に送信する(チャットページ送信機能)。その際、サーバー装置は、学習者端末から受信した答案の内容に基づいて、チャットページに表示されるチャットの本文又は件名を出力し(チャット制御機能)、学習者端末から答案を受信したことをトリガーとしてチャットプロセスを開始する(チャットスタート機能)。
なお、学習者からの答案内容がチャットに反映される際、情報の反映のされ方にバリエーションが存在する。その一例をここに紹介する。ひとつは、学習者が入力した内容そのものを部分的又は全体的にチャットに反映させる方法。もうひとつは、答案内容を部分的又は全体的にパラフレーズしてチャットに反映させる方法。そして最後は、答案内容を解釈又は敷衍してチャットに反映させる方法。これら三つを中心に複数のバリエーションで学習者の答案内容がチャットの本文又は件名に反映される。なお、答案内容の反映の仕方やバリエーションに関わらず、演習過程と質疑応答過程を一連の流れにする簡略化の効果は担保される。
【0016】
チャットページのページデータを受信した学習者端末及び指導者端末は、それぞれ自端末の表示部にチャットページを表示する。学習者端末のユーザー(学習者)及び指導者端末のユーザー(指導者)は、各々が使用する端末に表示されたチャットページ上で質疑応答を行うことができる。
【0017】
上記のように構成され動作する請求項1記載の演習課題添削システムによれば、サーバー装置が学習者端末から答案を受信したことをトリガーとしてチャットプロセスを開始することにより、答案入力ページが学習者端末に表示される演習過程から、チャットページが学習者端末及び指導者端末に表示される質疑応答過程へスムーズに移行させて学習者の操作手順を簡略化し、学習効率の向上を図ることができる。
【0018】
このように、請求項1記載の演習課題添削システムによれば、従来のハイブリッド型学習システムの欠点である演習過程と質疑応答過程との間の隔たりを埋めることができる。つまり、オンライン学習の一作業である演習問題を解く行為(答案を送信する操作を含む)に、全く別の行為である質疑応答(チャット)のための機能(チャット機能)をスタートさせる働きを持たせることができる。
これにより、演習過程と質疑応答過程とが直結され、両過程を一連の流れとして扱えるようになる。その結果、不必要なステップや不必要な操作(クリック操作など)が省かれ、システム全体の操作性が向上する。
【0019】
なお、請求項1におけるトリガーには、“直接的なトリガー”と“間接的なトリガー”の二つの意味が含まれる。
直接的なトリガーは、学習者の答案内容がそのまま質疑応答のメッセージになり、チャットの本文の一部として表示される、又はチャットの件名や題名としてチャットインタフェース上に直接表示されることを指す。したがって、直接的なトリガーとは、学習者が演習問題を解く行動がチャット機能を開始する直接的なきっかけになることである。
一方、間接的なトリガーは、間接的なきっかけを意味する。特に、演習過程と質疑応答過程の間にワンクッションとしての追加のページが存在するシステムについての表現である。ワンクッションとは、学習者が答案を送信した後に質疑応答(チャット)が即座に始まるのではなく、付属的な画面やステップが現れること。例えば、模範解答だけを表示する専用のページや、チャットを始めるか否かの選択をユーザーに求める表示画面が該当する。
重要なことは、そのようなワンクッションが存在するページ構造においても、学習者が送信する答案の情報が別機能であるチャットに反映される限り、それが間接的なトリガーであるとしても、演習過程と質疑応答過程を一連の流れにする簡略化の効果は担保されるということである。
【0020】
請求項2に記載の演習課題添削システムは、請求項1に記載の演習課題添削システムにおいて、前記サーバー装置は、前記学習者端末及び前記指導者端末との間で確立されたセッションにおいて、前記学習者端末が送信した答案を前記チャット機能により受信し、当該答案のデータをユニークIDに紐付け、重複のない特定の演習問題についてのデータとして記憶部に格納するデータ処理機能を有し、前記チャット機能は、前記演習問題別に、前記ユニークIDに紐付けられた前記答案のデータを前記記憶部から読み出し、前記答案のデータと前記指導者端末から受信した前記解説とに基づいて、前記チャットページに表示されるチャットの本文を出力するチャット本文出力機能を有することを特徴とする。
【0021】
請求項2に記載の演習課題添削システムによれば、学習者と指導者が質疑応答をする際、各々のメッセージ(学習者の質問、指導者の解説、等)を、学習者が取り組んだ演習問題別にまとめることができる。演習問題別に複数のチャットが表示されるということは、どのチャットもすべて特定の演習問題についての会話になることを意味する。
つまり、チャット機能が起動する度に、会話のテーマや方向性が毎回必ず決定されるのである。これにより、学習者は学習要点に沿ったより精度の高い質問をするようになり、指導者もより具体的で詳細な解説をするようになる。すなわち、チャットのテーマが固定されることで、質の高い質問と質の高い解説が繰り返される好循環が生まれる。
【0022】
請求項3に記載の演習課題添削システムは、請求項1記載の演習課題添削システムにおいて、前記サーバー装置は、前記学習者端末及び前記指導者端末との間で確立されたセッションにおいて、前記学習者端末が送信した答案を前記チャット機能により受信し、当該答案のデータをユニークIDに紐付け、重複のない特定の演習問題についてのデータとして記憶部に格納するデータ処理機能を有し、前記チャット機能は、前記演習問題の前記チャットプロセスを開始する毎に、前記ユニークIDに紐付けられた前記答案のデータを前記記憶部から読み出し、前記答案のデータを前記チャットページに表示されるチャットの本文の第一メッセージとして出力し、当該チャットページにおいて、前記第一メッセージが出力された後に、前記指導者端末から受信した前記解説に基づいて当該チャットページに表示されるチャットの本文のメッセージを出力する場合には、当該メッセージを第二メッセージとして当該本文に追加することを有することを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の演習課題添削システムによれば、ユーザーが毎回チャットを立ち上げる度に、事前に送信した答案の内容が表示されている状態でチャットの本文が現れる。一般的なチャットシステムや電子メールと異なり、本発明のチャットでは純粋な意味での“新規の文”というものが存在せず、チャットを立ち上げた時点で既に本文には、第一メッセージとしての学習者の答案がデフォルト(初期値)で入力されている。
それに続く形で指導者が第二メッセージとしての答案に対する解説を入力して質疑応答が続いていく。更に、学習者の答案内容が初期値としてチャット本文に反映されることで、質疑応答の内容が脱線しなくなる効果も期待できる。本発明の場合、本文の最初に入る内容が強制的に決まってしまうため、その後のメッセージも自然に一つの方向性に定まりやすくなる。
これに対して従来の学習システムのチャット機能は、初期値としての第一メッセージが存在しないため、質疑応答が本来の学習要点から逸脱した内容になる傾向があり、学習効果を低下させることなる。本願発明はこの点を克服できる。
【0024】
請求項4に記載の演習課題添削システムは、請求項1記載の演習課題添削システムにおいて、前記サーバー装置は、前記学習者端末及び前記指導者端末との間で確立されたセッションにおいて、前記学習者端末が送信した答案を前記チャット機能により受信し、当該答案のデータをユニークIDに紐付け、重複のない特定の演習問題についてのデータとして記憶部に格納するデータ処理機能を有し、前記チャット機能は、前記演習問題の前記チャットプロセスを開始する毎に、前記ユニークIDに紐付けられた前記答案のデータを前記記憶部から読み出し、前記答案のデータに基づいて、前記チャットページに表示されるチャットの本文以外の場所に表示される内容の初期値として前記答案の内容を出力する答案内容出力機能を有し、当該本文以外の場所に初期値として前記答案の内容を出力した後に、前記指導者端末から受信した前記解説に基づいて当該本文のメッセージを出力する場合には、当該メッセージを当該本文の第一メッセージとして当該本文に追加するチャット本文出力機能を有することを特徴とする。
【0025】
請求項4に記載の演習課題添削システムによれば、学習者が送信した答案の内容はチャットの本文ではなくチャット(又はチャットインターフェース)の件名欄、題名欄、あるいはトピック欄に初期値として反映される。
その場合、指導者は模範解答や解説を第一メッセージとして返信することになる。その後、第一メッセージ(解説)を確認した学習者が第二メッセージとして質問を送信し、質疑応答が継続していく。尚、学習者の答案が本文に反映される場合と同じように、件名や題名に答案内容が表示されることでチャットのテーマや方向性が自動的に決定する。会話が脱線しない質の高い質疑応答が得られるという効果がここでも期待できる。
【0026】
請求項5に記載の演習課題添削システムは、請求項1記載の演習課題添削システムにおいて、前記サーバー装置は、前記学習者端末及び前記指導者端末との間で確立されたセッションにおいて、前記学習者端末が送信した答案を前記チャット機能により受信し、当該答案のデータをユニークIDに紐付け、重複のない特定の演習問題についてのデータとして記憶部に格納するデータ処理機能を有し、前記チャット機能は、前記演習問題別の複数のチャットを連ねて表示する表示方式と、前記演習問題毎にチャットを単体で表示する表示方式と、を選択的に実行可能であることを特徴とする。
【0027】
請求項5に記載の演習課題添削システムによれば、質疑応答を二種類の表示方式で実行できる。
一つ目の方式は複数の異なるチャットを一つのチャットページ(添削結果ページ)に一斉に表示し、チャットを集合体あるいは群として扱うものであり、二つ目はチャットページ(添削結果ページ)にチャットを一つだけ表示し、一つのインタフェースの中で複数の会話本文と件名を表示する方式である。演習問題や件名等を選ぶことで毎回異なる本文を交代に表示させるものである。
どちらの表示方式を採用しても、演習問題に付属する答案入力装置から送信される情報は別機能であるチャットに反映されるという仕組みが機能し、演習過程と質疑応答過程を一連の流れにするという効果は担保される。
なお、ここで添削結果ページとは、学習者に答案の添削結果を閲覧させ、指導者に答案を添削させるための専用ページ又は画面のことである。添削結果はチャットの形で同一ページに表示される。一方、答案入力ページは演習問題ページとも呼ばれ、演習問題や設問等を表示するための専用ページ又は画面のことである。学習者は答案入力ページ上で各種演習を行うことができる。
【0028】
請求項6に記載の演習課題添削システムは、請求項1記載の演習課題添削システムにおいて、前記サーバー装置は、前記学習者端末及び前記指導者端末との間で確立されたセッションにおいて、ユーザー情報を表示又は非表示にするユーザー情報表示切替機能を備え、前記ユーザー情報を非表示にしてユーザーの匿名性を維持するチャットでは不特定多数のユーザーによる対話を可能とし、前記ユーザー情報を表示するチャットでは匿名性を持たないユーザーによる対話を可能とすることを特徴とする。
【0029】
請求項6に記載の演習課題添削システムによれば、不特定多数の指導者による複数のメッセージから一つのチャットを構成することができる。これにより、一人の学習者の質問に対して不特定多数の指導者が応答する「1対不特定多数」のチャットが可能になる。この対話パターンによるメリットは、複数の指導者が添削作業や解説作業を互いに補えるようになり、学習者への返信に遅れが生じなくなることである。
【0030】
更に、本発明では、ユーザー情報の表示を調節してユーザーの匿名性をコントロールすることで、「1対不特定多数」以外のチャットも実現可能である。例えば、「不特定の学習者一人対不特定の指導者一人」や、「匿名ではない学習者一人対匿名ではない指導者一人」、「匿名ではない学習者一人対不特定多数の指導者」といった様々な対話パターンが構築できる。
なお、ユーザーの匿名性の有無と対話パターンの種類に関わらず、演習問題に付属する答案入力装置から送信される情報は別機能であるチャットに反映されるという仕組みが機能し、演習過程と質疑応答を一連の流れにするという効果は担保される。
【0031】
請求項7に記載の演習課題添削システムは、請求項1記載の演習課題添削システムにおいて、前記サーバー装置は、前記演習問題の形式には、複数の選択肢から解答を選ぶ多肢選択形式及び見本文章を別の文章に書き換える書き換え形式が含まれ、前記答案入力ページ送信機能は、前記多肢選択形式及び前記書き換え形式を含む入力形式が異なる様々な問題形式に対応する答案入力ページを表示させるためのページデータを前記学習者端末に送信する問題形式別送信機能を有することを特徴とする。
【0032】
請求項7に記載の演習課題添削システムによれば、入力方式が異なる様々な演習問題を扱うことが可能である。ユニークな特徴を持つ問題形式に対応するには、答案入力ページを適宜、適切な形に変えることが必要であるが、問題形式の種類によって生じる入力方式の違いをコーディングの段階で答案入力ページのページデータに正確に反映させることで、演習問題それぞれの特徴に合った答案入力ページを学習者端末に表示させ得る。
答案入力ページ送信機能には、問題形式別送信機能が含まれる。この問題形式別送信機能は、多肢選択形式及び書き換え形式を含む入力形式が異なる様々な問題形式に対応した答案入力ページを表示させるためのページデータを学習者端末に送信する機能である。
【0033】
前述の多肢選択問題と文章書き換え問題に加えて、本発明で利用できる問題形式には、空欄補充問題、長文問題、選択式問題、短答式問題、論文式問題、文章作成問題、記述問題、Q&A問題、アンケート問題、調査問題、インタビュー問題、描写問題、絵描き問題、音声問題、映像問題、リスニング問題、スピーキング問題、各種実技試験、説明問題、図形問題、実験考察問題、求値問題、計算問題、等が含まれる。演習問題がどのような入力方式や問題形式であれ、演習問題に付属する答案入力装置から送信される情報は別機能であるチャットに反映されるという仕組みが機能し、演習過程と質疑応答を一連の流れにするという効果は担保される。
【0034】
請求項8に記載の演習課題添削システムは、請求項1に記載の演習課題添削システムにおいて、前記サーバー装置は、前記演習問題をユーザーが作成、編集及び削除することを可能とする演習問題作成編集機能と、ユーザーにより作成された前記演習問題及び当該演習問題の演習後の質疑応答のチャットを検索可能とする検索機能と、を有することを特徴とする。
【0035】
請求項8に記載の演習課題添削システムによれば、ユーザーは演習問題、演習課題、指示文、設問を自由に新規作成、編集、追加、削除できる。同時に、ユーザーによって作成・編集された演習問題、演習課題、指示文、設問は検索可能である。更に、そのような演習問題から生まれるチャットもまた検索対象であり、ユーザーによる検索が可能である。
なお、ユーザーが作成した演習問題等を用いて演習をユーザーも、演習問題に付属する答案入力装置から送信される情報は別機能であるチャットに反映されるという仕組みが機能し、演習過程と質疑応答を一連の流れにするという効果は担保される。
【0036】
請求項9に記載の演習課題添削システムは、請求項1記載の演習課題添削システムにおいて、前記サーバー装置は、前記質疑応答のチャットを、テキスト、音声、映像のうちの少なくとも一のメディアにより実現することを特徴とする。
【0037】
請求項9に記載の演習課題添削システムによれば、テキスト(文字)だけでなく、音声や映像を用いて、オンラインによる学習者への演習問題の提供及び当該演習問題に関する学習者と指導者との間での質疑応答を実現できる。テキストにより質疑応答のチャットを実施する場合は、画像データ、動画データ、音声データ、等をテキストと共に送受信できる。なお、テキスト、音声、映像のいずれの方法でチャットを行う場合でも、演習問題に付属する答案入力装置から送信される情報は別機能であるチャットに反映されるという仕組みが機能し、演習過程と質疑応答を一連の流れにするという効果は担保される。
【発明の効果】
【0038】
上記のように、本発明の演習課題添削システムによれば、演習過程から質疑応答過程へスムーズに移行させて学習効率の向上を図ることができる。すなわち、本発明の演習課題添削システムによれば、演習過程から質疑応答過程に移行する手順ならびにシステム構造全体を大幅に簡略化し、ユーザーが抱える操作上のストレスを解消できる。更に、チャットの最初のメッセージは学習者の答案と同じ内容に決まるという本発明特有の仕組みが働くことで、ユーザーが行う質疑応答は常に学習要点に沿った質の高いものになる。つまり、ハイブリッド型学習システムの操作性を改善し、学習機能の有効性を高めたことにより、本発明の演習課題添削システムは高い学習効果をユーザーにコンスタントに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態に係る演習課題添削システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】演習課題添削システムの各部の構成を例示するブロック図である。(a)は制御部の構成を例示するブロック図である。(b)は学習者端末の構成を例示するブロック図である。(c)は指導者端末の構成を例示するブロック図である。
図3】演習課題添削システムにおける処理の流れを例示するフローチャートである。
図4】演習課題添削システムの演習過程から質疑応答過程へのスムーズな移行についての説明図である。(a)は学習者が解答した直後に質疑応答が始まる様を例示する図であり、(b)は指導者から学習者に添削結果が伝えられた後も質疑応答が続く様を示す図である。
図5】演習課題添削システムにおける答案入力ページを例示する説明図である。(a)は多肢選択問題の答案入力ページを例示する図であり、(b)は文章書き換え問題の答案入力ページを例示する図である。
図6】(a)は学習者端末に表示されるチャットページを例示する説明図である。(b)は指導者端末に表示されるチャットページを例示する説明図である。
図7】(a)は学習者端末に表示される答案入力ページを例示する説明図である。答案入力ページは演習問題ページと読み替えてもよい。(b)は学習者端末及び指導者端末に表示されるチャットページを例示する説明図である。チャットページは添削結果ページと読み替えても良い。
図8】演習課題添削システムで利用できるチャットの表示方式の説明図である。(a)はチャットを単体で見せる方式を例示する図、(b)は複数のチャットを連なった形で見せる表示方式を例示する図である。
図9】(a)は従来のオンライン学習システムのチャット機能で起こり得る会話例を示す図である。(b)は演習課題添削システムを利用したチャットで起こり得る会話例を示す図である。
図10】(a)は通常の対面学習の質疑応答で起こり得る会話例を示す図である。(b)は演習課題添削システムを利用したチャットで起こり得る会話例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の演習課題添削システムは、演習問題に取り組む学習者と、その学習者の解答を添削する指導者の二者をユーザーとして念頭に置いたハイブリッド型学習システムである。
本実施形態の演習課題添削システムは、多様なテーマで多彩な演習問題と課題をユーザーに提供でき、幅広い分野で利用することが可能である。演習問題の形式には、複数の選択肢から解答を選ぶ多肢選択形式及び見本文章を別の文章に書き換える書き換え形式が含まれる。ここでは利用目的が学習であるユーザーを学習者とし、利用目的が添削と解説であるユーザーを指導者とする。
【0041】
[システム構成]
図1に示すように、本実施形態の演習課題添削システム10は、サーバー装置30と学習者端末40と指導者端末50とを備える。サーバー装置30、学習者端末40及び指導者端末50は、インターネット20を介して相互に通信可能に接続されている。
サーバー装置30と学習者端末40との間及びサーバー装置30と指導者端末50との間におけるデータの送受信は、各種ネットワークプロトコルのリクエストメソッドを用いることで実現され得る。例えば、HTTPプロトコルの場合、GETやPOST等のメソッドでデータの送受信が行われ得る。
【0042】
[サーバー装置]
サーバー装置30は、オンラインによる学習者(学習者端末40のユーザー)への演習問題の提供及び当該演習問題に関する学習者と指導者(指導者端末50のユーザー)との間での質疑応答を実現する機能(演習機能、チャット機能)を有する。サーバー装置30は、質疑応答のチャットを、テキスト、音声、映像のうちの少なくとも一のメディアにより実現する。
【0043】
サーバー装置30は、記憶部60、通信部70、制御部80を備える。記憶部60は、各種情報を記憶する機能ブロックである。通信部70は、学習者端末40及び指導者端末50との通信を可能とするための機能ブロックである。
【0044】
サーバー装置30は、オンラインによる学習サービスを提供するためのウェブサイト、ウェブサービス、ウェブアプリ、モバイルアプリ、業務システム、業務アプリ、等をインターネット20に公開する。これにより、サーバー装置30は、問題演習機能と質疑応答のためのチャット機能を可能とする。また、サーバー装置30は、ユーザーにより作成された演習問題及び当該演習問題の演習後の質疑応答のチャットを検索可能とする検索機能を有する。
【0045】
制御部80は、演習機能を制御する演習問題制御部90とチャット機能を制御する質疑応答制御部100とを有する。また、制御部80は、データ処理機能を有する。データ処理機能は、学習者端末40及び指導者端末50との間で確立されたセッションにおいて、学習者端末40が送信した答案をチャット機能により受信し、当該答案のデータをユニークIDに紐付け、重複のない特定の演習問題についてのデータとして記憶部60に格納する機能である。
【0046】
演習問題制御部90は、演習問題作成編集機能及び答案入力ページ送信機能を有する。演習問題作成編集機能は、演習問題をユーザーが作成、編集及び削除することを可能とする機能である。答案入力ページ送信機能は、演習問題を表示させ答案及び質問を受け付けるための答案入力ページを表示させるためのページデータを学習者端末40に送信する機能である。答案入力ページ送信機能には、問題形式別送信機能が含まれる。問題形式別送信機能は、多肢選択形式及び書き換え形式を含む入力形式が異なる様々な問題形式に対応した答案入力ページを表示させるためのページデータを学習者端末40に送信する機能である。
【0047】
質疑応答制御部100は、チャット機能を有する。チャット機能は、学習者と指導者との間での質疑応答を可能にする機能である。
【0048】
チャット機能は、図8(a)に例示するように演習問題毎にチャットを単体で表示する表示方式と、図8(b)に例示するように演習問題別の複数のチャットを連ねて表示する表示方式とを選択的に実行可能である。
【0049】
チャット機能には、チャットページ送信機能、チャット制御機能、第一~第三のチャット本文出力機能、答案内容出力機能及びユーザー情報表示切替機能が含まれる。
【0050】
チャットページ送信機能は、質疑応答のためのチャットページを表示させるためのページデータを学習者端末40及び指導者端末50に送信する機能である。
【0051】
チャット制御機能は、学習者端末40から受信した答案の内容に基づいて、チャットページに表示されるチャットの本文又は件名を出力する機能である。
【0052】
チャットスタート機能は、学習者端末40から答案を受信したことをトリガーとしてチャットプロセスを開始する機能である。
【0053】
第一のチャット本文出力機能は、演習問題別に、ユニークIDに紐付けられたデータを記憶部60から読み出し、当該データと指導者端末50から受信した解説とに基づいて、チャットページに表示されるチャットの本文を出力する機能である。
【0054】
第二のチャット本文出力機能は、演習問題のチャットプロセスを開始する毎に、ユニークIDに紐付けられたデータを記憶部60から読み出し、当該データに基づいて、チャットページに表示されるチャットの本文の第一メッセージM1を出力し、当該チャットページにおいて、第一メッセージM1が出力された後に、指導者端末50から受信した解説に基づいて当該チャットページに表示されるチャットの本文のメッセージを出力する場合には、当該メッセージを第二メッセージM2として当該本文に追加する機能である。
【0055】
答案内容出力機能は、演習問題のチャットプロセスを開始する毎に、ユニークIDに紐付けられたデータを記憶部60から読み出し、当該データに基づいて、チャットページに表示されるチャットの本文以外の場所に表示される内容の初期値として答案の内容を出力する機能である。
【0056】
第三のチャット本文出力機能は、答案内容出力機能によりチャットの本文以外の場所に初期値として答案の内容を出力した後に、指導者端末50から受信した解説に基づいて当該本文のメッセージを出力する場合には、当該メッセージを当該本文の第一メッセージM1として当該本文に追加する機能である。
【0057】
ユーザー情報表示切替機能は、学習者端末40及び指導者端末50との間で確立されたセッションにおいて、ユーザー情報を表示又は非表示にする機能である。サーバー装置30は、ユーザー情報を非表示にしてユーザーの匿名性を維持するチャットでは不特定多数のユーザーによる対話を可能とし、ユーザー情報を表示するチャットでは匿名性を持たないユーザーによる対話を可能とする。
【0058】
サーバー装置30には、パーソナルコンピュータやワークステーションが使用される。サーバー装置30は、処理装置としてCPU(Central Processing Unit)、主記憶装置としてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、補助記憶装置としてHDD(Hard Disc Drive)やSSD(SolID State Drive)、キーボード、マウス等の入力手段、ディスプレイ、プリンタ等の出力手段を備えている。例えばHDDには、本実施形態のシステムを実現するためのサーバー用アプリケーションプログラムがインストールされている。
【0059】
サーバー装置30は、サーバー用アプリケーションプログラムを実行することにより、図2(a)に示すように、演習問題公開手段、演習問題仲介手段、問題形式設定手段、入力方式設定手段、通信制御手段、チャット公開手段、チャット本文構成手段、表示方式設定手段、ユーザー情報設定手段、通信制御手段、等として機能する。
これらの手段により、サーバー装置30の各種機能が実現される。演習問題制御部90は、演習問題公開手段と、演習問題仲介手段と、問題形式設定手段と、入力方式設定手段と、通信制御手段とを有する。また、質疑応答制御部100は、チャット公開手段と、チャット本文構成手段と、表示方式設定手段と、ユーザー情報設定手段と、通信制御手段とを有する。
【0060】
サーバー装置30は、演習問題制御部90により、図5(a)、図5(b)及び図7(a)に例示する答案入力ページ(演習問題インタフェース)110を公開する。答案入力ページ110は、学習者端末40の表示部に表示される。答案入力ページ110には、学習課題を選択或いは検索するための課題選択メニュー(この例ではプルダウンメニュー)111と、演習問題(設問・指示文)を選或いは検索するための問題選択メニュー(この例ではプルダウンメニュー)112、答案入力部150と、が表示される。
課題選択メニュー111の下には選択した学習課題220が表示され、問題選択メニュー112の下には選択した演習問題221が表示される。図5(a)の例の答案入力部150は、複数のチェックボックス230であり、学習者(学習者端末40のユーザー)は、任意のチェックボックス230をチェックすることにより答案を入力可能である。図5(b)及び図7(a)の例の答案入力部150は、テキスト入力ボックス240であり、学習者(学習者端末40のユーザー)はここに答案などを入力可能である。
【0061】
サーバー装置30は、質疑応答制御部100により、図7(b)に例示するチャットページ(チャットインタフェース140)120を公開する。チャットページ120は、学習者端末40及び指導者端末50の表示部に表示される。チャットページ120には、チャットの題名(学習課題、指示設問、等)121と、チャットの本文122と、質問・解説入力部(テキスト入力ボックス)123と、が表示される。
質問・解説入力部123には、学習者(学習者端末40のユーザー)と指導者(指導者端末50のユーザー)の双方が質問や解説など質疑応答内容を入力可能である。学習者端末40に表示されるチャットページ120の質問・解説入力部123は、質問入力部160として機能する。指導者端末50に表示されるチャットページ120の質問・解説入力部123は、解説入力部170として機能する。
【0062】
[学習者端末及び指導者端末]
学習者端末40は、演習問題をサーバー装置30から受信し、当該演習問題についての答案及び質問をサーバー装置30に送信する機能等を有する。
指導者端末50は、答案及び質問をサーバー装置30から受信し、当該答案の添削結果、当該質問に対する回答及び演習問題の模範解答及び解説をサーバー装置30に送信する機能等を有する。
【0063】
学習者端末40及び指導者端末50には、パーソナルコンピュータや、タブレット端末、スマートフォン、モバイル端末等の携帯端末が使用される。両端末は処理装置としてCPU(Central Processing Unit)、主記憶装置としてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、補助記憶装置としてHDD(Hard Disc Drive)やSSD(SolID State Drive)、キーボード、マウス等の入力手段、ディスプレイ、プリンタ等の出力手段を備えている。
学習者端末40の例えばHDDには、本実施形態のシステムを実現するための学習者端末用アプリケーションプログラムがインストールされている。指導者端末50の例えばHDDには、本実施形態のシステムを実現するための指導者端末用アプリケーションプログラムがインストールされている。
【0064】
学習者端末40は、学習者端末用アプリケーションプログラムを実行することにより、図2(b)に示すように、演習問題の閲覧・検索手段、チャットの閲覧・検索手段、答案入力手段、質問入力手段、通信制御手段、等として機能する。これらの手段により、学習者端末40の各種機能が実現される。
【0065】
指導者端末50は、指導者端末用アプリケーションプログラムを実行することにより、図2(c)に示すように、演習問題の閲覧・検索手段、チャットの閲覧・検索手段、演習問題の作成・編集・削除手段、解説入力手段、通信制御手段、等として機能する。これらの手段により、指導者端末50の各種機能が実現される。
【0066】
指導者端末50を使用することにより、サーバー装置30の演習問題制御部90を介して、演習問題、演習課題、指示文、設問を、作成・編集・削除可能である。また、指導者端末50使用することにより、新規に作成した演習問題や設問等をサーバー装置30の演習問題制御部90に送信可能である。
【0067】
学習者端末40又は指導者端末50を使用することにより、サーバー装置30の演習問題制御部90を介して、演習問題、演習課題、指示文、設問の検索・閲覧を行うことが可能である。当該検索・閲覧の操作は、答案入力ページ110において行うことができる。
【0068】
学習者端末40及び指導者端末50は、サーバー装置30の質疑応答制御部100を介して、チャットの検索・閲覧を行うことが可能である。当該検索・閲覧の操作は、チャットページ120において行うことができる。
【0069】
学習者端末40及び指導者端末50がチャットを検索する際、一つのチャットインタフェース140上でチャットの本文を検索する方法と、本文と件名を含むチャットインタフェース140そのものを検索する方法との二通りの方法が可能である。前者の方法が実行された場合、図8(a)に示すように、チャットページ120にはチャットが単体で表示される。後者の方法が実行された場合、図8(b)に示すように、チャットページ120には複数の異なるチャットが連なって表示される。
【0070】
学習者端末40は、例えば、図7(a)に示す答案入力ページ110の答案入力部150に答案が入力され、送信ボタン113がクリックされると、当該答案の内容(データ)をサーバー装置30に送信する。当該答案の内容は、例えば、図7(b)に示すチャットページ120にチャットとして表示される。
【0071】
学習者端末40は、チャットページ120の質問・解説入力欄123(質問入力部160)に質問等が入力され、送信ボタン123がクリックされると、当該質問等の内容(データ)をサーバー装置30に送信する。当該質問等の内容は、同一チャットページ120の同一のチャットに表示される。
【0072】
[システムの動作]
つぎに、演習課題添削システム10の動作を説明する。まずユーザーの視点から説明する。
【0073】
学習者は、学習者端末40からサーバー装置30にアクセスし、学習者端末40に答案入力ページ110を表示させる。学習者は、答案入力ページ110上で所望の演習問題や演習課題を選択する。学習者は、選択した問題を解き、答案入力ページ110の答案入力部150に自身の解答を入力又は選択した後、送信ボタン113をクリックする。
【0074】
指導者は、指導者端末50からサーバー装置30にアクセスし、指導者端末50にチャットページ120を表示させる。指導者は、チャットページ120上で学習者の答案を閲覧し内容を確認した後、所望の答案(演習案件)をチャットページ120に表示されたチャット又は件名から選択する。指導者は、選択した演習案件について、模範解答や解説等をチャットページ120の解説入力部170に入力した後、送信ボタン123をクリックする。
【0075】
学習者は、チャットページ120に表示された指導者の解説の内容を確認し、質問入力部160に質問を入力した後、送信ボタン123をクリックする。指導者端末50のチャットページ120に表示された質問に再び指導者が応答することで、チャットは継続していく。
【0076】
つぎに、図3のフローチャートに従って、演習課題添削システム10の動作を説明する。
演習問題制御部90(サーバー装置30)は、演習問題を公開する(ステップS1)。学習者端末40は、学習者によるログイン操作によりサーバー装置30及び指導者端末50とのセッションを開始する。
学習者は、学習者端末40に表示された答案入力ページ110上で演習問題を閲覧する(ステップS2)。学習者は、答案入力ページ110の答案入力部150に答案を入力する(ステップS3)。学習者端末40は、送信ボタン113がクリックされると、当該答案を演習問題制御部90(サーバー装置30)に送信する。
【0077】
演習問題制御部90(サーバー装置30)は、学習者端末40から受信した答案(学習者が入力した答案)を質問応答制御部100(サーバー装置30)にリクエストメッセージとして送信する(ステップS4)。
【0078】
質問応答制御部100(サーバー装置30)は、リクエスト(学習者が入力した答案)を受信すると、データ処理を開始し(ステップS5)、ユニークIDをデータ(答案)に紐付ける(ステップS6)。そして、質問応答制御部100(サーバー装置30)は、リクエスト(学習者が入力した答案)を、ユニークIDと対応する重複しない特定の演習問題のデータとして記憶部60に保存する(ステップS7)。
その際、質問応答制御部100(サーバー装置30)は、学習者が入力した答案が記憶部60から抽出された場合に、その答案がチャット本文の一部になるようにデータを構成する(ステップS8)。これにより、当該答案がチャットページ120に表示される際、当該答案が質疑応答の一部としてチャットの本文を構成し、演習問題の詳細と一緒にチャットページ120に表示されるようになる。
【0079】
指導者端末50は、指導者の操作に従って、質問応答制御部100(サーバー装置30)にチャットページ120のリクエストを送信する。質問応答制御部100(サーバー装置30)は、リクエストされたチャットページ120のページデータを指導者端末50に送信する(ステップS9)。
【0080】
指導者端末50は、質問応答制御部100(サーバー装置30)からページデータを受信しチャットページ120を表示する。このチャットページ120に表示されるチャットの本文の初期値は学習者が入力した答案の内容である。
すなわち、学習者の答案データがチャットページ120に表示される際、チャットページ120のチャットインタフェース140の題名121の中に関連する演習問題の詳細が入り、チャットの本文122に答案の内容(第一メッセージM1)が入る。ただし、題名121の中に答案の内容が入ってもよい。
【0081】
指導者は、チャットページ120上で学習者の答案を閲覧する(ステップS10)。そして、指導者は、数ある案件(チャット)から添削・解説したいものを選択し(ステップS11)、選択した案件の解説入力部170に解説を入力する(ステップS12)。指導者端末50は、送信ボタン123がクリックされると、当該解説(データ)をリクエストとして質問応答制御部100(サーバー装置30)に送信する(ステップS13)。
【0082】
質問応答制御部100(サーバー装置30)は、リクエストを受信すると、当該解説を記憶部60に格納する(ステップS14)。質問応答制御部100(サーバー装置30)は、当該解説(データ)と以前の答案(データ)からチャット本文を構成する(ステップS15)。
【0083】
そして、質問応答制御部100(サーバー装置30)は、解説(第二メッセージM2)が追加されたチャットを含むチャットページ120のページデータを学習者端末40に送信する(ステップS16)。
【0084】
学習者端末40には、演習問題及び答案についての解説(第二メッセージM2)が追加されたチャットを含むチャットページ120が表示される。詳細には、追加された解説と既に入力済みの答案が対話形式のチャットの本文122を形成し、チャットページ120に表示される。その際、当該チャットは、図8(a)と図8(b)のどちらかの表示方式で表示される。
【0085】
学習者は、学習者端末40に表示されたチャットページ120上で添削結果を閲覧する(ステップS17)。学習者は、チャットページ120の質問入力部160に質問を入力する。学習者端末40は、送信ボタン123がクリックされると、当該質問をリクエストとして質問応答制御部100(サーバー装置30)に送信する(ステップS18)。
【0086】
質問応答制御部100(サーバー装置30)は、リクエストを受信すると、当該データ(質問)を記憶部60に格納する(ステップS19)。そして、質問応答制御部100(サーバー装置30)は、質問が追加されたチャットを含むチャットページ120のページデータを指導者端末50に送信する(ステップS20)。
【0087】
指導者端末50には、質問が追加されたチャットを含むチャットページ120が表示される。指導者は、指導者端末50に表示されたチャットページ120上で添削結果を閲覧する(ステップS21)。指導者は、指導者端末50のチャットページ120に表示された質問に対する解説を、解説入力部170に入力する。指導者端末50は、送信ボタン123がクリックされると、再び解説が質問応答制御部100(サーバー装置30)に送信される。このように、指導者が再び応答(返信)することで、チャットは継続していく(ステップS22)。
【0088】
[効果]
つぎに、本実施形態の演習課題添削システム10の効果について説明する。演習課題添削システム10の仕組みをオンライン学習で利用することでユーザーが享受できる効果は三つある。一つはユーザーが学習者の場合だけに恩恵がある第一の効果。そして、学習者と指導者の双方に恩恵がある第二の効果と第三の効果とがある。
【0089】
[第一の効果]
第一の効果は、学習者が演習問題に取り組む段階で発揮される。問題を解き終えて解答を送信した直後に起こるページ移動、これが第一の効果である。演習過程から質疑応答へのスムーズなトランジション(移り変わり)が、学習者のユーザー体験を向上させるのである。
【0090】
従来のオンライン学習システムでは、ユーザーが答えを入力した直後の画面には模範解答等が表示されるものであるが、演習課題添削システム10ではチャットインタフェース140が表示される。例えば、図4(a)に示すチャットインタフェース140には学習者が演習で送信したばかりの答案が反映されている。
【0091】
第一の効果は、操作手順を従来のシステムよりも大幅に簡略化することで実現される効果であり、演習機能と質疑応答機能の間に存在していた不必要な操作ステップやクリックを取り除くことに成功した結果として得られる効果である。
【0092】
さらに、本実施形態の演習課題添削システム10によれば、例えば、図4(b)に示すように、ユーザーである学習者が演習過程から質疑応答へ移った後も、指導者とのチャットがそのまま継続する。すなわち、ユーザーに演習結果が伝えられた後も対話が続き、無制限のチャットとして対話の継続がしっかりと維持されるのである。
【0093】
そして、操作手順の大幅な簡略化と無制限のチャットとして対話の継続がユーザーにもたらすものは、余計なストレスや煩わしさを感じることなく演習過程と質疑応答を利用できる操作性の良さである。その結果、本実施形態の演習課題添削システム10のユーザー体験は大きく改善され、高い学習効果につながる。対照的に、第一の効果が得られない従来のオンライン学習システムは、質疑応答の画面にたどり着くまでに余計な手順や操作が存在し、そのことで操作に難が生じ、ユーザー体験にマイナスに影響してしまう。
【0094】
[第二の効果]
第二の効果は、質疑応答機能にフォーカスした効果である。具体的にはチャットの会話内容の質を向上させるための効果である。最大の特徴は、チャットの第一声に学習者自身が送信した答案が入り、チャットのテーマが自動的に決定することである。話す内容が決まるので、ユーザーの会話は最初から最後までぶれることなく、一貫性がともなう。
【0095】
具体例で説明するならば、図4(a)では演習後に画面がチャットに変わっても、学習者の答えがチャット本文122に初期値として表示されている。この仕組みにより、チャットで話される内容が強制的に決定されるのである。そして、図4(b)に示すように、当該チャットは決定されたテーマ(学習者が取り組んだ演習問題とその学習要点)に沿って継続する。これにより、演習課題添削システム10におけるチャットでは学習者と指導者との間の会話の一貫性が保たれやすくなる。すなわち会話の脱線が抑制される。
【0096】
図9(a)は従来のネットワーク学習システムの使用時に起こりやすいチャットの会話例である。図9(b)は演習課題添削システム10の仕組みを使用した際に起こり得るチャットの会話例である。両者を比較すると、図9(b)に示すように、演習課題添削システム10の会話は終始一貫して学習要点に沿った内容であることが分かる。一方、図9(a)の会話は、学習者が理解できていない箇所を指導者に伝えるまでに会話を何往復もしなければならず、本題にたどり着けていない。
【0097】
上記のような指導者が学習者の演習問題を特定できなくなる状況は、従来のオンライン学習システムでしばしば見られる光景である。対照的に図9(b)の会話例では、すでにチャットの第二メッセージM2の段階で指導者が解説を返信しており、効率的な質疑応答を実現している。
【0098】
[第三の効果]
第三の効果は、第二の効果と同じく、チャット機能についての効果である。ここでは対面学習(オフライン学習)を比較の対象とする。特に、質疑応答で交わされる会話の質という点において、演習課題添削システム10、従来のオンライン学習システム、そして対面学習の三つの学習環境を比べてみる。
図10(a)は対面学習の会話例であり、一般の教育現場で起こり得る生徒と先生の質疑応答である。図10(a)の会話は学習要点に沿った無駄のない内容になっていることが分かる。つまり、会話が良い意味で単刀直入である。次に、この会話と従来のオンライン学習システムの会話例を比べてみると、図9(a)に例示するように、従来のオンライン学習システムにおける質疑応答は学習要点から逸脱しており、本題にたどり着けていない。
【0099】
これらの比較から導かれる結論は、従来のオンライン学習システムでは、対面学習に比べて質疑応答のクオリティーが下がるということである。この結論は、特別なテクノロジーやツールを使わなくても、質の高い質疑応答を行うことは十分可能であることを示している。むしろ、評価する対象を質疑応答に限れば、対面学習はオンライン学習を凌ぐ効果を出しているということができる。
【0100】
問題を解く、先生に質問をするといった学びに必要な普遍的作業は、顔を突き合わせて対面でやるほうがやり易い、と考えるならば、この結論は合理的である。そして、その“やり易さ”を生んでいる最大の要因は、先生が生徒の答案を目視で確認できることであるといえる。先生は不明な点を全てその場で生徒に聞き返して自分の目で確認できるので、図9(a)に例示するような会話の脱線やミスコミュニケーションが生じることはない。
【0101】
先生が生徒の答案を目視で確認できることは対面ならではの利点である。もちろん、個人の意思、性格、適性、集中力等によって会話の内容が変わることは十分考えられる。しかし、対面学習の環境が物理的に整っている状況下で、特別な理由もなく生徒と先生にミスコミュニケーションが起こることはあまり考えられない。対面学習と同様、本実施形態の演習課題添削システム10もミスコミュニケーションが起こりにくいといえる。
【0102】
図10(a)に例示する対面学習における会話と図10(b)に例示する本実施形態の演習課題添削システム10における会話とを比較すると、両者には大きな共通点がある。それは対面学習の質疑応答と本実施形態の演習課題添削システム10におけるチャットは共に本題に沿った無駄のない会話であるということである。このことは、本実施形態の演習課題添削システム10においてなされるチャットが対面学習の会話と同様に単刀直入であることを示している。
【0103】
このような単刀直入で脱線しない質疑応答は従来のオンライン学習システムでは実現不可能であり、対面学習及び本実施形態の演習課題添削システム10のみが共有する特徴である。ただし、本実施形態の演習課題添削システム10による学習と対面学習の間にも違いはある。本実施形態の演習課題添削システム10による学習は対面学習のように目視によるものではなく、第1の効果で説明した簡略化という手法を使って同様の効果を実現しているものである。
【0104】
改めて、この簡略化がもたらす効果とは、“学習者が送信する演習結果が初期値としてチャットに直接反映される”ことである。この仕組みが、対面学習と同じクオリティーの質疑応答を可能にする。そして、本実施形態の演習課題添削システム10は、対面学習には真似できないオンラインシステムならではの利便性と即効性もしっかり兼ね備えていることはいうまでもない。
【0105】
なお、演習課題添削システム10のデータ処理を担うプログラムは、様々なコーディング方法で構築することが可能である。すなわち、様々なプログラミング言語を用いて、様々なコーディングの仕方で、演習課題添削システム10の仕組みや効果を再現することができる。
例えば、答案データをユニークIDに紐付けて演習問題別に保存する作業には、PHPというサーバーサイド言語のmd5やuniqidといったコマンドを利用できる。その手順は、リクエストメソッドで送信された学習者の答案データに前述のコマンドで文字列処理を加え、生成したユニークIDを紐付け、SQL等のデータベースで適切なフィールドタイプ(データ型)を選び、当該データを演習問題別に保存する、という流れになる。
【0106】
これらはあくまでもコーディングの一例に過ぎない。これらの他にも、コンテンツ・マネジメント・システム(CMS)を利用して投稿モジュールを作成することで投稿IDを自動生成するやり方も存在する。このように、実に様々な方法で演習課題添削システム10を支えるデータ処理を設計することが可能である。
【0107】
図7(a)に示すように、演習課題添削システム10で扱われる全ての演習問題には答案入力部150が付属する。答案入力部150は、演習問題の答えを入力して送信するためのインタフェースであり、問題形式によって入力方式が異なり得る。図5(a)に示す多肢選択問題と図5(b)に示す文章書き換え問題がその例である。この二例は問題形式だけでなく入力方式も異なり、違いが答案入力部150に反映されている。
【0108】
多肢選択問題という問題形式と相性が良い入力方式はチェックボックス230である。したがって、多肢選択問題の答案入力部150はHTMLタグのcheckboxでコーディングされている。この他にも多肢選択問題はタグselectを使用するドロップダウンの入力方式も利用できる。一方、文章書き換え問題の答案入力部150には、テキスト入力ボックス240が採用される。
文章書き換え問題という問題形式には記述解答が必要であるため、当該問題の答案入力部150にはテキスト入力が可能なHTMLタグのinputやtextareaでコーディングされている。このように、与えられる問題形式よっては演習問題の入力方式を変える必要があり、付属する答案入力部150もそれに応じたものが採用される。
【0109】
質問入力部160及び解説入力部170は、チャットに表示するメッセージを入力して送信するためのインタフェースである。答案入力部150との違いは、演習過程を通さずにチャットページ120に表示されるチャットにメッセージを直接送ることができる点である。
【0110】
テキストでチャットを行う場合、質問入力部160及び解説入力部170はともにテキスト入力が可能なHTMLタグのinputやtextareaでコーディングされる。また、音声入力等の他の入力方式を利用することも可能である。この場合、その都度、入力方式に適したインタフェースとコーディングが必要になる。
【0111】
上記の例ではHTMLというマークアップ言語が使われているが、他の言語を使っても同様の効果のインタフェースを実現できる。すなわち、様々なプログラミング言語とコーディング方法から、様々な問題形式に対応した入力方式の異なるインタフェースの構築が可能である。
【0112】
ここで重要なポイントは、インタフェースの形やコーディング方法に関わらず、答案入力部150から送信される答案の情報は初期値としてチャットに反映するということ、そして、質問入力装部160と解説入力部170から送信されるメッセージによって当該チャットが継続していく仕組みがインタフェースの種類に関係なく成立するということである。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る演習課題添削システムは、学びに必要不可欠な「問題を解く」、「先生に質問をする」という普遍的な作業をオンラインで効率的に行うことができ、高い学習効果を発揮するので、産業上の利用が可能である。
【0114】
本発明に係る演習課題添削システムは、主に教育分野での利用を想定したものであるが、問題演習と質疑応答とを必要とする分野や産業は他にも数多く存在するため、各分野で学び、指導、訓練といった作業が成立する限り、様々な分野で利用可能である。すなわち、演習過程と質疑応答過程を一連の流れにするという仕組みは、教育以外の分野や産業でも同等の効果を発揮し得る。
【符号の説明】
【0115】
10 演習課題添削システム
20 インターネット
30 サーバー装置
40 学習者端末
50 指導者端末
60 記憶部
70 通信部
80 制御部
90 演習問題制御部
100 質疑応答制御部
110 答案入力ページ(演習問題ページと同義)
111 課題選択メニュー
112 問題選択メニュー
120 チャットページ(添削結果ページと同義)
121 題名・学習要点
122 本文
123 質問・解説入力部
150 答案入力部
220 学習課題
221 演習問題
230 チェックボックス
240 テキスト入力ボックス
M1 第一メッセージ
M2 第二メッセージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10