IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪市高速電気軌道株式会社の特許一覧 ▶ 公益財団法人レーザー技術総合研究所の特許一覧

特開2024-132637データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム
<>
  • 特開-データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム 図1
  • 特開-データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム 図2
  • 特開-データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム 図3
  • 特開-データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム 図4
  • 特開-データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム 図5
  • 特開-データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム 図6
  • 特開-データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム 図7
  • 特開-データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム 図8
  • 特開-データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132637
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】データ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/44 20060101AFI20240920BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240920BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240920BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N29/44
G01H17/00 Z
G01M99/00 Z
G01N29/24
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043486
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】518013497
【氏名又は名称】大阪市高速電気軌道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591114803
【氏名又は名称】公益財団法人レーザー技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳川 知道
(72)【発明者】
【氏名】森 貴大
(72)【発明者】
【氏名】井澤 靖和
(72)【発明者】
【氏名】染川 智弘
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 慎理
【テーマコード(参考)】
2G024
2G047
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD34
2G024CA13
2G024CA21
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA15
2G047AA10
2G047BC07
2G047CA04
2G047GD01
2G047GF11
2G047GG20
2G047GG33
2G047GG36
2G047GG37
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB21
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】本開示は、コンクリートの欠陥の有無を判定する学習済みモデルを生成するために用いられる複数の学習用データを、データ拡張により生成することを目的とする。
【解決手段】データ拡張方法は、取得ステップと、生成ステップと、を有する。取得ステップでは、複数の実測データを取得する。生成ステップでは、データ拡張処理を行う。データ拡張処理は、複数の要素のうち少なくとも1つの要素に関する情報と、複数の実測データと、に基づいて複数の拡張データを生成する処理である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ検出装置から出力される複数の検出信号に基づく複数の実測データを用いて、複数の拡張データを生成するデータ拡張方法であって、
前記レーザ検出装置は、
コンクリートの表面を振動させるための第1レーザ光を出射するパルスレーザと、
前記コンクリートの前記表面の振動を検出するための第2レーザ光を出射する振動検出用レーザと、
前記コンクリートの前記表面で反射された前記第2レーザ光を検出し、前記検出信号に変換する光検出器と、を備え、
前記データ拡張方法は、
前記複数の実測データを取得する取得ステップと、
前記複数の拡張データを生成する生成ステップと、を有し、
前記生成ステップでは、
前記コンクリートの内部における音速のばらつきに関する情報、前記パルスレーザから照射される前記第1レーザ光の強度のばらつきに関する情報、前記振動検出用レーザから照射される前記第2レーザ光の強度のばらつきに関する情報、前記光検出器の感度のばらつきに関する情報、前記レーザ検出装置で生じるノイズのばらつきに関する情報、及び、前記レーザ検出装置と前記コンクリートとの間の距離に関する情報、のうち少なくとも1つと、前記複数の実測データと、に基づいて前記複数の拡張データを生成する、データ拡張処理を行う、
データ拡張方法。
【請求項2】
前記複数の実測データの各々から上限周波数以下の成分を抽出する抽出ステップを更に有し、
前記データ拡張処理では、前記複数の実測データの各々の前記上限周波数以下の成分に基づいて前記複数の拡張データを生成する、
請求項1に記載のデータ拡張方法。
【請求項3】
前記上限周波数は、40kHz以上60kHz以下である、
請求項2に記載のデータ拡張方法。
【請求項4】
前記データ拡張処理で生成された前記複数の拡張データを、訓練データ群と、検証データ群と、テストデータ群と、に分割する、データ分割ステップを更に有し、
前記データ分割ステップは、第1データ分割ステップと、第2データ分割ステップと、を含み、
前記第1データ分割ステップでは、1つの実測データに基づいて生成された3以上の拡張データから、前記訓練データ群に属する拡張データと、前記検証データ群に属する拡張データと、前記テストデータ群に属する拡張データと、を選択し、
前記第2データ分割ステップでは、
前記複数の実測データのうち第1実測データに基づいて生成された拡張データを、前記訓練データ群に属させ、
前記複数の実測データのうち第2実測データに基づいて生成された拡張データを、前記検証データ群に属させ、
前記複数の実測データのうち第3実測データに基づいて生成された拡張データを、前記テストデータ群に属させる、
請求項1に記載のデータ拡張方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のデータ拡張方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるための、
プログラム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のデータ拡張方法により生成された前記複数の拡張データを、学習用データとして用いて、機械学習により生成され、
前記検出信号に相当する入力データに基づいて、前記コンクリートの欠陥の有無に関する検査結果を出力する、
学習済みモデル。
【請求項7】
請求項6に記載の学習済みモデルに、前記検出信号に相当する入力データを入力し、前記コンクリートの欠陥の有無に関する前記検査結果を得る推論ステップを有する、
検査方法。
【請求項8】
レーザ検出装置から出力される複数の検出信号に基づく複数の実測データを用いて、複数の拡張データを生成するデータ拡張システムであって、
前記レーザ検出装置は、
コンクリートの表面を振動させるための第1レーザ光を出射するパルスレーザと、
前記コンクリートの前記表面の振動を検出するための第2レーザ光を出射する振動検出用レーザと、
前記コンクリートの前記表面で反射された前記第2レーザ光を検出し、前記検出信号に変換する光検出器と、を備え、
前記データ拡張システムは、
前記複数の実測データを取得する取得部と、
前記複数の拡張データを生成する生成部と、を備え、
前記生成部は、
前記コンクリートの内部における音速のばらつきに関する情報、前記パルスレーザから照射される前記第1レーザ光の強度のばらつきに関する情報、前記振動検出用レーザから照射される前記第2レーザ光の強度のばらつきに関する情報、前記光検出器の感度のばらつきに関する情報、前記レーザ検出装置で生じるノイズのばらつきに関する情報、及び、前記レーザ検出装置と前記コンクリートとの間の距離に関する情報、のうち少なくとも1つと、前記複数の実測データと、に基づいて前記複数の拡張データを生成する、データ拡張処理を行う、
データ拡張システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般にデータ拡張方法、プログラム、学習済みモデル、検査方法及びデータ拡張システムに関する。本開示は、より詳細には、学習用データとしての拡張データを生成するデータ拡張方法、プログラム及びデータ拡張システムに関する。また、本開示は、上記拡張データを用いて生成される学習済みモデル、及び、この学習済みモデルを用いた検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の検査システムは、検査対象物に対して非接触で検査を行う。検査システムは、第1計測手段と、第1取得手段と、第1生成手段と、を備える。第1計測手段は、第1レーザを用いて検査対象物に発生した第1振動を計測し、第1振動データを生成する。第1取得手段は、第1振動データに基づく第1データを含む第1検査対象情報を取得する。第1生成手段は、第1参照データベースを参照し、第1検査対象情報に対する第1検査データを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-113715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における第1検査データのような情報を学習用データとして用いて、検査対象物の欠陥の有無を判定するための学習済みモデルを生成するためには、欠陥に対応する学習用データを含んだ多数の学習用データを用意する必要がある。しかしながら、検査対象物に欠陥が発生する頻度が少ない場合等には、学習用データの個数が不足しがちである。
【0005】
そこで、既存の学習用データに基づいて新たに拡張データを生成する、いわゆるデータ拡張により、学習用データの個数を増やす技術が存在する。しかしながら、技術分野によっては、既知のデータ拡張が必ずしも有効ではない。具体的には、コンクリートの欠陥の有無の判定の分野においては、既知のデータ拡張が必ずしも有効ではない。
【0006】
本開示は、コンクリートの欠陥の有無を判定する学習済みモデルを生成するために用いられる複数の拡張データを、データ拡張により生成することができるデータ拡張方法、プログラム及びデータ拡張システム、並びに、複数の拡張データを用いて生成される学習済みモデル、及び、この学習済みモデルを用いた検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るデータ拡張方法では、複数の実測データを用いて、複数の拡張データを生成する。前記複数の実測データは、レーザ検出装置から出力される複数の検出信号に基づくデ―タである。前記レーザ検出装置は、パルスレーザと、振動検出用レーザと、光検出器と、を備える。前記パルスレーザは、コンクリートの表面を振動させるための第1レーザ光を出射する。前記振動検出用レーザは、前記コンクリートの前記表面の振動を検出するための第2レーザ光を出射する。前記光検出器は、前記コンクリートの前記表面で反射された前記第2レーザ光を検出し、前記検出信号に変換する。前記データ拡張方法は、取得ステップと、生成ステップと、を有する。前記取得ステップでは、前記複数の実測データを取得する。前記生成ステップでは、前記複数の拡張データを生成する。前記生成ステップでは、データ拡張処理を行う。前記データ拡張処理は、前記コンクリートの内部における音速のばらつきに関する情報、前記パルスレーザから照射される前記第1レーザ光の強度のばらつきに関する情報、前記振動検出用レーザから照射される前記第2レーザ光の強度のばらつきに関する情報、前記光検出器の感度のばらつきに関する情報、前記レーザ検出装置で生じるノイズのばらつきに関する情報、及び、前記レーザ検出装置と前記コンクリートとの間の距離に関する情報、のうち少なくとも1つと、前記複数の実測データと、に基づいて前記複数の拡張データを生成する処理である。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記データ拡張方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の一態様に係る学習済みモデルは、前記データ拡張方法により生成された前記複数の拡張データを、学習用データとして用いて、機械学習により生成される。前記学習済みモデルは、前記検出信号に相当する入力データに基づいて、前記コンクリートの欠陥の有無に関する検査結果を出力する。
【0010】
本開示の一態様に係る検査方法は、推論ステップを有する。推論ステップでは、学習済みモデルに、前記検出信号に相当する入力データを入力し、前記コンクリートの欠陥の有無に関する前記検査結果を得る。
【0011】
本開示の一態様に係るデータ拡張システムは、複数の実測データを用いて、複数の拡張データを生成する。前記複数の実測データは、レーザ検出装置から出力される複数の検出信号に基づくデ―タである。前記レーザ検出装置は、パルスレーザと、振動検出用レーザと、光検出器と、を備える。前記パルスレーザは、コンクリートの表面を振動させるための第1レーザ光を出射する。前記振動検出用レーザは、前記コンクリートの前記表面の振動を検出するための第2レーザ光を出射する。前記光検出器は、前記コンクリートの前記表面で反射された前記第2レーザ光を検出し、前記検出信号に変換する。前記データ拡張システムは、取得部と、生成部と、を備える。前記取得部は、前記複数の実測データを取得する。前記生成部は、前記複数の拡張データを生成する。前記生成部は、データ拡張処理を行う。前記データ拡張処理は、前記コンクリートの内部における音速のばらつきに関する情報、前記パルスレーザから照射される前記第1レーザ光の強度のばらつきに関する情報、前記振動検出用レーザから照射される前記第2レーザ光の強度のばらつきに関する情報、前記光検出器の感度のばらつきに関する情報、前記レーザ検出装置で生じるノイズのばらつきに関する情報、及び、前記レーザ検出装置と前記コンクリートとの間の距離に関する情報、のうち少なくとも1つと、前記複数の実測データと、に基づいて前記複数の拡張データを生成する処理である。
【発明の効果】
【0012】
本開示は、コンクリートの欠陥の有無を判定する学習済みモデルを生成するために用いられる複数の拡張データを、データ拡張により生成することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係るデータ拡張システム及びデータ拡張システムに関連する構成のブロック図である。
図2図2は、同上のデータ拡張システムを用いたデータ拡張方法を表すフローチャートである。
図3図3A図3Bは、同上のデータ拡張システムに入力される検出信号の波形図である。
図4図4A図4Bは、同上のデータ拡張システムにおいて求められる実測データを表す図である。
図5図5A図5Fは、同上のデータ拡張システムにおいて求められる拡張データを表す図である。
図6図6A図6Fは、同上のデータ拡張システムにおいて求められる拡張データを表す図である。
図7図7A図7Hは、同上のデータ拡張システムにおいて求められる複数の実測データの分布図である。
図8図8A図8Hは、同上のデータ拡張システムにおいて求められる複数の実測データの分布図である。
図9図9A図9Dは、同上のデータ拡張システムにおいて求められる複数の実測データの分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
以下、実施形態に係るデータ拡張方法、プログラム、学習済みモデル4、検査方法及びデータ拡張システム1について、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0015】
(概要)
図1に、本実施形態のデータ拡張システム1の構成を示す。データ拡張システム1は、レーザ検出装置2及び学習器3と共に使用される。
【0016】
レーザ検出装置2は、第2レーザ光L2を出射し、コンクリートC1で反射された第2レーザ光L2を検出して、検出結果を示す検出信号D1を出力する。検出信号D1は、より詳細には、レーザ検出装置2の光検出器23から出力される波形信号である。データ拡張システム1は、検出信号D1に基づいて実測データを生成する。実測データは、例えば、検出信号D1を時間周波数解析して生成されるデータである。データ拡張システム1は、実測データに基づいて拡張データを生成する。さらに、データ拡張システム1は、複数の実測データと複数の拡張データとを含む複数の学習用データT1を、学習器3へ出力する。学習器3は、複数の学習用データT1を用いて機械学習を行い、学習済みモデル4を生成する。学習済みモデル4は、光検出器23から出力される出力信号D2に基づくデータを入力として、コンクリートC1の欠陥の有無の判定結果を出力する。
【0017】
ここで言う、学習済みモデル4に入力されるデータのもととなる出力信号D2は、学習用データT1の生成のために検出される検出信号D1とは別に、コンクリートC1の欠陥の有無の判定用に新たに検出される信号である。ただし、出力信号D2は、学習用データT1の生成のために検出される検出信号D1と同様にして検出される。
【0018】
データ拡張システム1は、ボックスカルバート用コンクリート、又は、無筋コンクリートについての検出信号D1の処理に特に適している。コンクリートC1は、例えば、トンネルの内壁、橋梁又は建物を構成する。コンクリートC1の欠陥とは、例えば、コンクリートC1の内部に存在する、空洞又はひび割れ等である。
【0019】
ここでいう学習済みモデル4は、例えば機械学習を用いたモデルを含み得る。学習済みモデル4は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路に、学習済みのモデルを実装することで実現される。
【0020】
本実施形態のデータ拡張システム1は、複数の実測データを用いて(複数の実測データに基づいて)、複数の拡張データを生成する。複数の実測データは、レーザ検出装置2から出力される複数の検出信号D1に基づくデ―タである。レーザ検出装置2は、パルスレーザ21と、振動検出用レーザ22と、光検出器23と、を備える。パルスレーザ21は、コンクリートC1の表面を振動させるための第1レーザ光L1を出射する。振動検出用レーザ22は、コンクリートC1の表面の振動を検出するための第2レーザ光L2を出射する。光検出器23は、コンクリートC1の表面で反射された第2レーザ光L2を検出し、検出信号D1に変換する。データ拡張システム1は、取得部132と、生成部133と、を備える。取得部132は、複数の実測データを取得する。生成部133は、複数の拡張データを生成する。生成部133は、データ拡張処理を行う。データ拡張処理は、コンクリートC1の内部における音速のばらつきに関する情報、パルスレーザ21から照射される第1レーザ光L1の強度のばらつきに関する情報、振動検出用レーザ22から照射される第2レーザ光L2の強度のばらつきに関する情報、光検出器23の感度のばらつきに関する情報、レーザ検出装置2で生じるノイズのばらつきに関する情報、及び、レーザ検出装置2とコンクリートC1との間の距離に関する情報、のうち少なくとも1つと、複数の実測データと、に基づいて複数の拡張データを生成する処理である。
【0021】
本実施形態によれば、データ拡張システム1は、複数の拡張データを生成することができる。そして、複数の拡張データを含む複数の学習用データT1に基づいて、学習器3が機械学習を行うことで、コンクリートC1の欠陥の有無の判定に適した学習済みモデル4を生成することができる。
【0022】
また、データ拡張システム1と同様の機能は、データ拡張方法にて具現化可能である。本実施形態のデータ拡張方法では、複数の実測データを用いて(複数の実測データに基づいて)、複数の拡張データを生成する。複数の実測データは、レーザ検出装置2から出力される複数の検出信号D1に基づくデ―タである。レーザ検出装置2は、パルスレーザ21と、振動検出用レーザ22と、光検出器23と、を備える。パルスレーザ21は、コンクリートC1の表面を振動させるための第1レーザ光L1を出射する。振動検出用レーザ22は、コンクリートC1の表面の振動を検出するための第2レーザ光L2を出射する。光検出器23は、コンクリートC1の表面で反射された第2レーザ光L2を検出し、検出信号D1に変換する。データ拡張方法は、取得ステップと、生成ステップと、を有する。取得ステップでは、複数の実測データを取得する。生成ステップでは、複数の拡張データを生成する。生成ステップでは、データ拡張処理を行う。データ拡張処理は、コンクリートC1の内部における音速のばらつきに関する情報、パルスレーザ21から照射される第1レーザ光L1の強度のばらつきに関する情報、振動検出用レーザ22から照射される第2レーザ光L2の強度のばらつきに関する情報、光検出器23の感度のばらつきに関する情報、レーザ検出装置2で生じるノイズのばらつきに関する情報、及び、レーザ検出装置2とコンクリートC1との間の距離に関する情報、のうち少なくとも1つと、複数の実測データと、に基づいて複数の拡張データを生成する処理である。
【0023】
また、データ拡張方法は、プログラムにて具現化可能である。本実施形態のプログラムは、データ拡張方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能な非一時的記録媒体に記録されていてもよい。
【0024】
また、データ拡張方法の一部の処理が、人により実行されてもよい。例えば、実測データを構成するパラメータに変更を加えて拡張データを生成する処理において、一部のパラメータの変化量を人が決定してもよい。本実施形態では、特に断りを入れる場合を除いて、データ拡張方法の全ての処理が、コンピュータシステムを主構成とするデータ拡張システム1により実行されるとして説明する。
【0025】
本実施形態の学習済みモデル4は、データ拡張方法により生成された複数の拡張データを、学習用データT1として用いて、機械学習により生成される。学習済みモデル4は、検出信号D1に相当する入力データ(出力信号D2に基づくデータ)に基づいて、コンクリートC1の欠陥の有無に関する検査結果を出力する。
【0026】
本実施形態の検査方法は、推論ステップを有する。推論ステップでは、学習済みモデル4に、検出信号D1に相当する入力データ(出力信号D2に基づくデータ)を入力し、コンクリートC1の欠陥の有無に関する検査結果を得る。
【0027】
図2に、本実施形態のデータ拡張方法と、データ拡張方法により生成された複数の拡張データを含む複数の学習用データT1を用いて機械学習を行う処理と、の全体の流れを、概略的に示す。ただし、図2のフローチャートは一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0028】
まず、データ拡張システム1は、レーザ検出装置2から検出信号D1を取得する(ステップST1)。次に、データ拡張システム1は、検出信号D1から上限周波数以下の成分を抽出する(ステップST2)。これにより、検出信号D1から、機械学習において有用ではない高周波成分が除去される。さらに、データ拡張システム1は、ステップST2で高周波成分が除去された検出信号D1に基づいて実測データを生成する(ステップST3)。すなわち、データ拡張システム1は、検出信号D1を機械学習に適した形式の実測データに変換する。
【0029】
次に、データ拡張システム1は、実測データに基づいて拡張データを生成する(ステップST4)。さらに、データ拡張システム1は、学習用データT1(実測データ及び拡張データ)を学習器3へ出力する(ステップST5)。
【0030】
学習器3に入力された学習用データT1の個数が、閾値以下の場合は(ステップST6:No)、ステップST1~ST5が繰り返され、新たな実測データ及び拡張データが生成される。
【0031】
学習器3に入力された学習用データT1の個数が、閾値よりも多いと(ステップST6:Yes)、学習器3は複数の学習用データT1に基づいて機械学習を行い、学習済みモデル4を生成する(ステップST7)。学習器3は、生成した学習済みモデル4を出力する(ステップST8)。
【0032】
(詳細)
(1)判定システム
以下では、本実施形態の構成について、より詳細に説明する。
【0033】
図1に示すように、判定システム100は、データ拡張システム1と、レーザ検出装置2と、学習器3と、学習済みモデル4と、を含む。
【0034】
(2)レーザ検出装置
レーザ検出装置2は、例えば、パルスレーザ21と、振動検出用レーザ22と、光検出器23と、光学系24と、を含む。
【0035】
光学系24は、例えば、図1に示すように、ミラー群26と、ハーフミラー25aと、反射ミラー25bと、ハーフミラー25cと、ハーフミラー25dと、を含む。また、光学系24は、レンズを含んでいてもよい。
【0036】
ミラー群26は、ミラー26b、26a、26cを備える。ミラー26aは、ダイクロイックミラーである。ミラー群26は、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の照射位置を調整するための構成である。
【0037】
パルスレーザ21は、第1レーザ光L1を出射する。第1レーザ光L1は、例えば、検査対象物としてのコンクリートC1の表面を振動させるための衝撃波励起用レーザ光である。第1レーザ光L1は、パルスレーザ光である。パルスレーザ21としては、例えば、パルス幅10nsのパルスレーザ光を出力するNd:YAGレーザ(基本波)を採用できるが、これに限らない。
【0038】
振動検出用レーザ22は、第2レーザ光L2を出射する。第2レーザ光L2は、検査対象物としてのコンクリートC1の表面の振動を検出するために用いられる。レーザ検出装置2では、第2レーザ光L2のコンクリートC1での反射光をプローブ光L21として用いる。振動検出用レーザ22は、例えば、CWレーザを含む。振動検出用レーザ22としては、例えば、波長532nmのレーザ光を連続出力するNd:YAGレーザ(2倍高調波)を採用できるが、これに限らない。
【0039】
光学系24は、第1光路と、第2光路と、第3光路と、第4光路とが形成されるように構成されている。第1光路は、パルスレーザ21から出射された第1レーザ光L1をコンクリートC1の表面へ導く光路である。第2光路は、振動検出用レーザ22から出射された第2レーザ光L2をコンクリートC1の表面へ導く光路である。第3光路は、コンクリートC1の表面に照射された第2レーザ光L2の反射光であるプローブ光L21を光検出器23へ導く光路である。第4光路は、振動検出用レーザ22から出射された第2レーザ光L2の一部を参照光L22として光検出器23へ導く光路である。
【0040】
第1光路は、ミラー26aと、ミラー26bと、によって形成される。
【0041】
第2光路は、ミラー26cと、ミラー26bと、によって形成される。
【0042】
第3光路は、ミラー26bと、ミラー26cと、ハーフミラー25aと、反射ミラー25bと、によって形成される。
【0043】
第4光路は、ハーフミラー25cと、ハーフミラー25dと、によって形成される。
【0044】
図1では、第1レーザ光L1を実線で模式的に示し、第2レーザ光L2、プローブ光L21及び参照光L22を一点鎖線で模式的に示してある。
【0045】
パルスレーザ21から出射された第1レーザ光L1は、ミラー26a及びミラー26bで反射されてコンクリートC1の表面に照射される。
【0046】
振動検出用レーザ22から出射された第2レーザ光L2は、ハーフミラー25c及びハーフミラー25aを通過してミラー26cで反射され、ミラー26aを通過した後、ミラー26bで反射されてコンクリートC1の表面に照射される。
【0047】
コンクリートC1の表面に照射された第2レーザ光L2の反射光であるプローブ光L21は、ミラー26bで反射され、ミラー26aを通過した後、ミラー26cにより、ハーフミラー25aへ向けて反射される。その後、プローブ光L21は、ハーフミラー25a及び反射ミラー25bで反射され、ハーフミラー25dを通過して、光検出器23に照射される。
【0048】
振動検出用レーザ22から出射された第2レーザ光L2の一部は、ハーフミラー25c、25dで反射され、参照光L22として光検出器23に照射される。
【0049】
光検出器23は、第2レーザ光L2により形成されるプローブ光L21及び参照光L22を検出する。より詳細には、光検出器23は、プローブ光L21と参照光L22との干渉縞を検出する。光検出器23は、干渉縞の検出強度の時間変化を表す波形を、検出信号D1として出力する。
【0050】
図3Aは、欠陥が存在するコンクリートC1に第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を照射したときに得られる検出信号D1の一例である。図3Bは、欠陥が存在しないコンクリートC1に第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を照射したときに得られる検出信号D1の一例である。
【0051】
図3A図3Bではそれぞれ、全ての周波数の成分(強度)を1枚の図に表している。欠陥が存在する場合には、欠陥が存在しない場合と比較して、特定の周波数において検出信号D1の強度が大きくなる。なお、周波数ごとの成分は、後述する図4A図4Bに表されている。
【0052】
(3)データ拡張システム
(3.1)構成
図1に示すように、データ拡張システム1は、通信部11と、記憶部12と、処理部13と、を備える。
【0053】
通信部11は、通信インタフェース装置を含んでいる。データ拡張システム1は、通信インタフェース装置を介して、レーザ検出装置2及び学習器3と通信可能である。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、信号を授受できることを意味する。
【0054】
記憶部12は、ハードディスクドライブ(HDD)又はソリッドステートドライブ(SSD)等によって構成される記憶装置である。記憶部12は、情報を記憶する。記憶部12は、例えば、検出信号D1、及び、複数の学習用データT1を記憶する。また、記憶部12は、例えば、処理部13で実行される(コンピュータ)プログラムを記憶する。
【0055】
処理部13は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、処理部13の少なくとも一部の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0056】
処理部13は、信号処理部131と、取得部132と、生成部133と、データ分割部134と、を有する。なお、これらは、処理部13によって実現される機能を示しているに過ぎず、必ずしも実体のある構成を示しているわけではない。
【0057】
信号処理部131は、検出信号D1から上限周波数以下の成分を抽出し、上限周波数よりも大きい成分を破棄する。上限周波数の決定方法については、後述する。
【0058】
信号処理部131は、検出信号D1(更に詳細には、検出信号D1のうち上限周波数以下の成分)に基づいて実測データを生成する。より詳細には、信号処理部131は、1つの検出信号D1から、1つの実測データを生成する。例えば、信号処理部131は、検出信号D1に対して時間周波数解析を行うことで、実測データを生成する。
【0059】
図3Aの検出信号D1に対して時間周波数解析を行うことで、図4Aに示す実測データが得られる。また、図3Bの検出信号D1に対して時間周波数解析を行うことで、図4Bに示す実測データが得られる。図4A図4Bにおいて、色が白に近い点ほど、強度が大きい。また、図4A図4Bでは、コンクリートC1の欠陥の有無に対応した出力が得られている期間のデータを、長方形の白枠で囲んでいる。白枠の外の期間、すなわち、0秒から約0.01秒までの期間は、第2レーザ光L2の反射光が検出されていない無音期間である。
【0060】
取得部132は、実測データを信号処理部131から取得し、生成部133に提供する。
【0061】
生成部133は、実測データに基づいて、拡張データを生成する。より詳細には、生成部133は、1つの実測データから、1以上の拡張データを生成する。本実施形態では、生成部133が1つの実測データから2以上の拡張データを生成するとして説明する。
【0062】
データ分割部134は、データ拡張処理で生成された複数の拡張データを、訓練データ群と、検証データ群と、テストデータ群と、に分割する。詳しくは、後述する。
【0063】
(3.2)データ拡張処理
検出信号D1の波形を決定付ける要素として、複数の要素が存在する。複数の要素のうち一の要素は、例えば、第1レーザ光L1の強度である。
【0064】
ある要素が一定量変化したときに、検出信号D1の波形がどの程度変化するか、ひいては、検出信号D1に基づく実測データがどの程度変化するかは、実験結果に基づいて経験則的に知る(予測する)ことができる。記憶部12は、各要素の変化と実測データの変化との対応関係を記憶している。
【0065】
また、各要素が現実的にどの程度変化し得るか(変化幅又はばらつき)は、実験結果に基づいて経験則的に知ることができる。あるいは、各要素の変化幅は、ユーザにより適宜決定されてもよい。記憶部12は、各要素の変化幅を記憶している。
【0066】
生成部133は、複数の要素のうち少なくとも1つの要素の変化を、記憶部12に記憶された変化幅の範囲内でランダムに決定し、取得部132から提供された実測データの変化を、記憶部12に記憶された上記対応関係に基づいて求める。これにより、少なくとも1つの要素がランダムに変化したときの実測データが求められる。このようにして求められた実測データは、すなわち、生成部133により生成された拡張データである。つまり、生成部133は、少なくとも1つの要素がランダムに変化したときの実測データを、拡張データとして求める。生成部133は、例えば、乱数(疑似乱数)を使用することで、少なくとも1つの要素がランダムに変化した状況を疑似的に作ることができる。
【0067】
次に、図5A図6Fについて説明する。ここで、コンクリートC1に第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を照射して得た検出信号D1から、上限周波数以下の成分を抽出し、このような検出信号D1を複数用意した。さらに、複数の検出信号D1に基づいて複数の実測データを求め、複数の実測データを、「欠陥実測データ」と「正常実測データ」とに分類した。欠陥実測データは、欠陥が存在するコンクリートC1に第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を照射したときに得られる検出信号D1に基づく実測データである。正常実測データは、欠陥が存在しないコンクリートC1に第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を照射したときに得られる検出信号D1に基づく実測データである。これらの複数の実測データに基づいて、複数の拡張データを求めた。このようにして求められた拡張データを、図5A図6Fに示す。
【0068】
図5A図5Cはそれぞれ、同一の欠陥実測データ(S1)に基づいて求められた拡張データである。図5D図5Fはそれぞれ、同一の欠陥実測データ(S2)に基づいて求められた拡張データである。欠陥実測データ(S2)は、欠陥実測データ(S1)とは別の欠陥実測データである。
【0069】
図6A図6Cはそれぞれ、同一の正常実測データ(S3)に基づいて求められた拡張データである。図6D図6Fはそれぞれ、同一の正常実測データ(S4)に基づいて求められた拡張データである。正常実測データ(S4)は、正常実測データ(S3)とは別の正常実測データである。
【0070】
(3.3)複数の要素
検出信号D1の波形及び実測データを決定付ける複数の要素は、以下の要素を含み得る。生成部133は、以下の複数の要素のうち少なくとも1つがランダムに変化したときの実測データを、拡張データとして求める。すなわち、生成部133は、以下の複数の要素のうち少なくとも1つに関する情報に基づいて、拡張データを求める。
【0071】
一の要素は、コンクリートC1の内部における音速である。コンクリートC1における欠陥の有無、並びに、コンクリートC1の成分、水分の含有量、及び、温度等の条件によって、コンクリートC1の内部における音速が変化する。欠陥が存在すると、コンクリートC1の強度が小さくなり、音速も小さくなる。また、欠陥が存在すると、欠陥が存在しない場合と比較して、実測データも変化する。音速の変化幅(ばらつき)は、ある程度決まっており、実験により求められる。また、音速の変化に伴う実測データの変化も、実験により求められる。よって、音速を一の要素として、生成部133は、音速が変化したときの実測データを、拡張データとして求めることができる。言い換えると、生成部133は、音速のばらつきに関する情報に基づいて拡張データを求めることができる。
【0072】
別の一の要素は、パルスレーザ21から照射される第1レーザ光L1の強度である。第1レーザ光L1の強度が変化すると、実測データも変化する。第1レーザ光L1の強度の変化幅(ばらつき)は、ある程度決まっており、例えば、2%程度である。また、第1レーザ光L1の強度の変化に伴う実測データの変化は、実験により求められる。よって、第1レーザ光L1の強度を一の要素として、生成部133は、第1レーザ光L1の強度が変化したときの実測データを、拡張データとして求めることができる。
【0073】
更に別の一の要素は、振動検出用レーザ22から照射される第2レーザ光L2の強度である。振動検出用レーザ22としては、パルスレーザ21と比較して高精度のレーザが用いられることが一般的であり、第2レーザ光L2の強度の変化幅(ばらつき)は、例えば、1%程度である。第1レーザ光L1の強度を一の要素とする場合と同様に、第2レーザ光L2の強度を一の要素として、生成部133は、第2レーザ光L2の強度が変化したときの実測データを、拡張データとして求めることができる。
【0074】
更に別の一の要素は、光検出器23の感度である。光検出器23の感度が変化すると、実測データも変化する。光検出器23は、受光素子を含んでおり、受光素子の出力電流には、電流値の平方根に相当する量のノイズが発生する。したがって、光検出器23の感度の変化幅(ばらつき)は、電流値の平方根に相当する幅である。また、光検出器23の感度の変化に伴う実測データの変化は、実験により求められる。よって、光検出器23の感度を一の要素として、生成部133は、光検出器23の感度が変化したときの実測データを、拡張データとして求めることができる。
【0075】
また、一の要素に関する情報としての、光検出器23の感度のばらつきに関する情報は、周波数ごとの感度のばらつきに関する情報であってもよい。つまり、生成部133は、周波数ごとの感度のばらつきに関する情報に基づいて拡張データを求めてもよい。
【0076】
更に別の一の要素は、レーザ検出装置2で生じるノイズである。当該要素は、例えば、第2レーザ光L2のS/N比で表される。検査環境によって、第2レーザ光L2のS/N比が変化する。例えば、検査環境がトンネル内である場合はトンネル外である場合と比較して、反射によるノイズが大きくなる。よって、検査環境がトンネル内であるか、トンネル外であるかによって、第2レーザ光L2のS/N比が変化する。また、例えば、レーザ検出装置2とコンクリートC1との間の距離によって、第2レーザ光L2のS/N比が変化する。また、コンクリートC1の含水率、及び、表面の汚れ具合い等によって、コンクリートC1の反射率が変化するので、コンクリートC1で反射された第2レーザ光L2のS/N比が変化する。また、第2レーザ光L2の照射角度によって、コンクリートC1で反射された第2レーザ光L2のS/N比が変化する。S/N比の変化幅(ばらつき)は、検査環境等に基づいて決定できる。また、S/N比の変化に伴う実測データの変化は、実験により求められる。よって、S/N比(ノイズ)を一の要素として、生成部133は、S/N比(ノイズ)が変化したときの実測データを、拡張データとして求めることができる。
【0077】
更に別の一の要素は、レーザ検出装置2とコンクリートC1との間の距離(照射距離)である。なお、この要素に関する情報は、第2レーザ光L2のS/N比のばらつきに関する情報と重複し得る。照射距離が長いほど、第2レーザ光L2が減衰するので、実測データも変化する。一般的に、第2レーザ光L2の強度は、照射距離の-2乗に比例する。また、照射距離が長いほど、第2レーザ光L2の集光ビーム径は大きくなり、実測データが変化する。集光ビーム径をw、集光前のビーム径をD、光学系24(図1参照)が備えるレンズの焦点距離をf、ビーム波長をλとすると、w=fλ/Dの関係が成り立つ。なお、照射距離は、第2レーザ光L2の照射角度によって変化する。照射距離の変化幅(ばらつき)は、検査環境等に基づいて決定できる。また、照射距離の変化に伴う実測データの変化は、実験により求められる。よって、照射距離を一の要素として、生成部133は、照射距離が変化したときの実測データを、拡張データとして求めることができる。
【0078】
各要素の変化幅(例えば、光検出器23の感度のばらつき)、及び、要素の変化に伴う実測データの変化に関する情報は、記憶部12に予め記憶されている。これらの情報は、例えば、データ拡張システム1の通信部11により取得されてもよいし、データ拡張システム1が備える入力インタフェースに対するユーザの操作により入力されてもよい。
【0079】
(3.4)ラベル
各実測データには、欠陥あり又は欠陥なしのラベルが付されている。ラベルは、例えば、ユーザにより付されてもよい。具体的には、ラベルを示す情報が、データ拡張システム1の通信部11により取得されてもよいし、データ拡張システム1が備える入力インタフェースに対するユーザの操作により入力されてもよい。
【0080】
また、複数の実測データは、次節「(3.5)上限周波数」で説明するように、分類アルゴリズムにより、欠陥実測データと正常実測データとに分類される。この結果に基づいて、データ拡張システム1は、欠陥実測データに欠陥ありのラベルを付して、正常実測データに欠陥なしのラベルを付してもよい。
【0081】
欠陥ありのラベルが付された実測データに基づいて生成された拡張データには、欠陥ありのラベルが付される。欠陥なしのラベルが付された実測データに基づいて生成された拡張データには、欠陥なしのラベルが付される。
【0082】
(3.5)上限周波数
信号処理部131は、検出信号D1から上限周波数以下の成分を抽出し、上限周波数よりも大きい成分を破棄する。これにより、検出信号D1に基づいて生成される実測データ、及び、実測データに基づいて生成される拡張データも、上限周波数以下の成分を含み上限周波数よりも大きい成分を含まないデータとなる。このように、信号処理部131は、複数の実測データの各々から上限周波数以下の成分を抽出する抽出ステップを実行する。生成部133は、データ拡張処理において、複数の実測データの各々の上限周波数以下の成分に基づいて複数の拡張データを生成する。
【0083】
上限周波数を色々に変化させた場合に、複数の検出信号D1から生成された複数の実測データを分類アルゴリズムにより分類できたか否かを検証した結果を、図7A図9Dに示す。この結果より、上限周波数は、40kHz以上60kHz以下であることが好ましい。すなわち、上限周波数を40kHz以上60kHz以下に設定して、検出信号D1から上限周波数以下の成分を抽出することにより、学習用データT1(実測データ及び拡張データ)は、機械学習に適したデータとなる。
【0084】
以下では、図7A図9Dについて、詳細に説明する。
【0085】
図7A図9Dは、欠陥実測データと正常実測データとを含む多数の実測データを、分類アルゴリズムを使用して分類したときの、多数の実測データの分布を表している。周波数ごとの強度の情報を含んだ多次元の実測データを次元圧縮することで、図7A図9Dでは、実測データを、縦軸で表される特徴量と、横軸で表される特徴量と、からなる2次元データで表している。白色の丸印は欠陥実測データを示し、黒色の丸印は正常実測データを示す。
【0086】
図7A図7D図8A図8D、及び図9A図9Bはそれぞれ、分類アルゴリズムとしてPCA(Principal Components Analysis)(主成分分析)を使用して、教師なし学習により、多数の実測データを分類した結果を表している。図7E図7H図8E図8H、及び図9C図9Dはそれぞれ、分類アルゴリズムとしてt-SNE(t-distributed Stochastic Neighbor Embedding)(t分布型確率的近傍埋め込み法)を使用して、教師なし学習により、多数の実測データを分類した結果を表している。
【0087】
図7A図7Eは、上限周波数を10kHzに設定したときの結果である。図7B図7Fは、上限周波数を20.161kHzに設定したときの結果である。図7C図7Gは、上限周波数を29.762kHzに設定したときの結果である。図7D図7Hは、上限周波数を40.323kHzに設定したときの結果である。
【0088】
図8A図8Eは、上限周波数を44.643kHzに設定したときの結果である。図8B図8Fは、上限周波数を50kHzに設定したときの結果である。図8C図8Gは、上限周波数を54.348kHzに設定したときの結果である。図8D図8Hは、上限周波数を59.524kHzに設定したときの結果である。
【0089】
図9A図9Cは、上限周波数を69.444kHzに設定したときの結果である。図9B図9Dは、上限周波数を78.125kHzに設定したときの結果である。
【0090】
上限周波数が10kHz、20.161kHz、29.762kHzのときは、欠陥実測データと正常実測データとが十分に分離されていない。上限周波数が40.323kHz、44.643kHのときは、欠陥実測データと正常実測データとがやや分離されている。上限周波数が50kHzのときは、欠陥実測データと正常実測データとが明確に分離されている。上限周波数が54.348kHz、59.524kHzのときは、欠陥実測データと正常実測データとがやや分離されている。上限周波数が69.444kHz、78.125kHzのときは、欠陥実測データと正常実測データとが十分に分離されていない。
【0091】
このように、上限周波数が概ね40~60kHzのときに欠陥実測データと正常実測データとが比較的よく分離されている。そのため、上限周波数は、40kHz以上60kHz以下であることが好ましい。
【0092】
(3.6)データ分割
データ拡張システム1のデータ分割部134は、データ分割ステップを実行する。データ分割ステップは、複数の拡張データを、訓練データ群と、検証データ群と、テストデータ群と、に分割(分類)する処理である。
【0093】
データ分割ステップは、第1データ分割ステップと、第2データ分割ステップと、を含む。第2データ分割ステップは、第1データ分割ステップとは異なる分割(分類)方法によって、複数の拡張データを、訓練データ群と、検証データ群と、テストデータ群と、に分割(分類)する処理である。
【0094】
以下では、訓練データ群に属するデータを訓練データ、検証データ群に属するデータを検証データ、テストデータ群に属するデータをテストデータと呼ぶ。すなわち、第1データ分割ステップ及び第2データ分割ステップの各々では、学習用データT1が訓練データ、検証データ、及びテストデータに分類される。これは、機械学習のホールドアウト法における分類である。
【0095】
訓練データは、機械学習におけるいわゆる学習フェーズで使用され、訓練データに基づいて、学習済みモデル4が構築される。その後、検証データに基づいて、学習済みモデル4のハイパーパラメータがチューニングされる。その後、テストデータに基づいて、学習済みモデル4の性能が評価される。
【0096】
1つの拡張データに着目すると、第1データ分割ステップにおける分類と、第2データ分割ステップにおける分類と、が異なる場合がある。例えば、第1データ分割ステップでは訓練データに分類された拡張データが、第2データ分割ステップでは検証データ又はテストデータに分類される場合がある。
【0097】
第1データ分割ステップでは、1つの実測データに基づいて生成された3以上の拡張データから、訓練データ群に属する拡張データ(訓練データ)と、検証データ群に属する拡張データ(検証データ)と、テストデータ群に属する拡張データ(テストデータ)と、を選択する。
【0098】
第2データ分割ステップでは、複数の実測データのうち第1実測データに基づいて生成された拡張データを、訓練データ群に属させる。また、第2データ分割ステップでは、複数の実測データのうち第2実測データに基づいて生成された拡張データを、検証データ群に属させる。さらに、第2データ分割ステップでは、複数の実測データのうち第3実測データに基づいて生成された拡張データを、テストデータ群に属させる。
【0099】
下記の[表1]は、複数の拡張データを第1データ分割ステップにより分割(分類)した例を示している。下記の[表2]は、複数の拡張データを第2データ分割ステップにより分割(分類)した例を示している。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
[表1]、[表2]では、複数の実測データ及び複数の拡張データにそれぞれ番号を振って区別している。同じ番号が振られたデータは、同一のデータである。
【0103】
ラベル”n-d” (no defect)は、同じ行に位置する実測データが正常実測データであること、及び、同じ行に位置する各拡張データが、当該正常実測データに基づいて生成された拡張データであることを意味する。
【0104】
ラベル”d” (defect)は、同じ行に位置する実測データが欠陥実測データであること、及び、同じ行に位置する各拡張データが、当該欠陥実測データに基づいて生成された拡張データであることを意味する。
【0105】
[表1]、[表2]に示すように、訓練データ群、検証データ群及びテストデータ群の各々は、正常実測データに基づいて生成された拡張データと、欠陥実測データに基づいて生成された拡張データと、を含む。
【0106】
[表1]に示す例では、任意の1つの実測データに着目すると、当該実測データに基づいて生成された8つの拡張データのうち、4つの拡張データが、訓練データ群に属し、2つの拡張データが、検証データ群に属し、2つの拡張データが、テストデータ群に属する。また、複数の実測データは、適宜、訓練データ、検証データ及びテストデータに分割される。
【0107】
[表2]に示す例では、複数の実測データは、訓練データ群に属する(対応する)第1実測データ(番号1~4、9~12)と、検証データ群に属する(対応する)第2実測データ(番号5~6、13~14)と、テストデータ群に属する(対応する)第3実測データ(番号7~8、15~16)と、に分類される。各実測データに基づいて生成された拡張データは、もととなった実測データと対応する群に分類される(属する)。
【0108】
なお、[表1]、[表2]はあくまで一例であるから、訓練データの個数、検証データの個数、及びテストデータの個数は、特に限定されない。
【0109】
[表2]に示す第2データ分割ステップでは、訓練データと、検証データと、テストデータと、をそれぞれ異なる実測データに基づいて生成している。そのため、[表1]に示す第1データ分割ステップと比較して、実計測で得られる学習用データセット(実測データのみで構成される学習用データセット)により近い学習用データセットが得られると考えられる。
【0110】
データ拡張システム1は、第1データ分割ステップで決定された第1データ分割に関する情報と、第2データ分割ステップで決定された第2データ分割に関する情報と、を学習器3へ出力する。第1データ分割に関する情報、及び、第2データ分割に関する情報は、それぞれ、複数(m個)の実測データ及び複数(m×n個)の拡張データを訓練データと、検証データと、テストデータと、に分割する情報である。
【0111】
以下では、第1データ分割ステップにより訓練データと、検証データと、テストデータと、に分割された複数の実測データ及び複数の拡張データを、第1データ分割が施された学習用データセットと呼ぶ。また、以下では、第2データ分割ステップにより訓練データと、検証データと、テストデータと、に分割された複数の実測データ及び複数の拡張データを、第2データ分割が施された学習用データセットと呼ぶ。
【0112】
学習器3は、第1データ分割が施された学習用データセットに基づいて、学習済みモデル4として第1学習済みモデルを生成する。また、学習器3は、第2データ分割が施された学習用データセットに基づいて、学習済みモデル4として第2学習済みモデルを生成する。欠陥の種類、及びコンクリートC1の成分等の条件によって、第1学習済みモデルと第2学習済みモデルとのうち、いずれが判定に適しているかが変わる。ユーザは、第1学習済みモデルと第2学習済みモデルとのうち、より判定に適した学習済みモデルを採用すればよい。
【0113】
また、ユーザは、例えば、第1学習済みモデルと第2学習済みモデルとの少なくともいずれかにおいて所望の精度が得られない場合に、第1学習済みモデルと第2学習済みモデルとのいずれも、欠陥の有無の判定に適していないと判断してもよい。このような場合は、ユーザは、モデルを選定し直して、新たに第1学習済みモデルと第2学習済みモデルとを生成すればよい。
【0114】
学習済みモデル4が第1学習済みモデルである場合、推論フェーズでは、第1学習済みモデルに出力信号D2に基づくデータを入力することで、計測対象のコンクリートC1の欠陥の有無についての第1判定結果が得られる。出力信号D2に基づくデータは、検出信号D1に基づいて実測データが生成される過程と同様にして生成される。より詳細には、出力信号D2に基づくデータは、出力信号D2に時間周波数解析、及び、上限周波数以下の成分を除去する処理がなされることで生成されるデータである。
【0115】
あるいは、学習済みモデル4が第2学習済みモデルである場合、推論フェーズでは、第2学習済みモデルに出力信号D2に基づくデータを入力することで、計測対象のコンクリートC1の欠陥の有無についての第2判定結果が得られる。あるいは、1つの出力信号D2に基づいて、第1判定結果と第2判定結果との両方を得てもよい。言い換えると、学習済みモデル4が第1学習済みモデル及び第2学習済みモデルである場合、第1判定結果と第2判定結果との両方が得られる。
【0116】
また、第1学習済みモデルと第2学習済みモデルとが、それぞれ異なる学習手法を利用したモデルであってもよい。例えば、第1学習済みモデルはニューラルネットワークを用いたモデルであって、第2学習済みモデルはニューラルネットワークとは異なるモデルに学習をさせたモデルであってもよい。
【0117】
学習済みモデル4としては、例えば、ニューラルネットワークを用いたモデルが好適である。
【0118】
(実施形態の変形例)
以下、実施形態の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。以下では、上述した実施形態の態様を、「基本例」と呼ぶ。
【0119】
学習器3は、教師あり学習により学習済みモデル4を生成してもよいし、教師なし学習により学習済みモデル4を生成してもよい。
【0120】
基本例では、学習器3により生成された学習済みモデル4は、コンクリートC1の欠陥の有無の判定結果を出力する。ただし、学習済みモデル4は、コンクリートC1の欠陥の有無の判定結果だけではなく、欠陥がある場合に欠陥の種類に関する情報をも出力してもよい。
【0121】
学習済みモデル4は、検出信号D1に相当する入力データとして、出力信号D2を入力として、コンクリートC1の欠陥の有無の判定結果を出力してもよい。
【0122】
学習器3は、追加の学習(再学習)を行うことで学習済みモデル4を更新してもよい。
【0123】
基本例では、検出信号D1に基づいて実測データを生成する信号処理部131は、データ拡張システム1の構成である。ただし、信号処理部131は、データ拡張システム1の外部の構成であってもよい。
【0124】
光検出器23は、干渉縞を検出する機器に限定されず、例えば、レーザドップラー振動計であってもよい。
【0125】
本開示におけるデータ拡張システム1又はデータ拡張方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示におけるデータ拡張システム1又はデータ拡張方法の実行主体としての機能の少なくとも一部が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0126】
また、データ拡張システム1における複数の機能が、1つの装置に集約されていることはデータ拡張システム1に必須の構成ではなく、データ拡張システム1の複数の構成要素は、複数の装置に分散して設けられていてもよい。さらに、データ拡張システム1の少なくとも一部の機能、例えば、データ分割部134の機能がサーバ又はクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0127】
反対に、実施形態において、複数の装置に分散されている複数の機能が、1つの装置に集約されていてもよい。例えば、データ拡張システム1と学習器3とに分散されている複数の機能が、1つの装置に集約されていてもよい。
【0128】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0129】
第1の態様に係るデータ拡張方法では、複数の実測データを用いて、複数の拡張データを生成する。複数の実測データは、レーザ検出装置(2)から出力される複数の検出信号(D1)に基づくデ―タである。レーザ検出装置(2)は、パルスレーザ(21)と、振動検出用レーザ(22)と、光検出器(23)と、を備える。パルスレーザ(21)は、コンクリート(C1)の表面を振動させるための第1レーザ光(L1)を出射する。振動検出用レーザ(22)は、コンクリート(C1)の表面の振動を検出するための第2レーザ光(L2)を出射する。光検出器(23)は、コンクリート(C1)の表面で反射された第2レーザ光(L2)を検出し、検出信号(D1)に変換する。データ拡張方法は、取得ステップと、生成ステップと、を有する。取得ステップでは、複数の実測データを取得する。生成ステップでは、複数の拡張データを生成する。生成ステップでは、データ拡張処理を行う。データ拡張処理は、コンクリート(C1)の内部における音速のばらつきに関する情報、パルスレーザ(21)から照射される第1レーザ光(L1)の強度のばらつきに関する情報、振動検出用レーザ(22)から照射される第2レーザ光(L2)の強度のばらつきに関する情報、光検出器(23)の感度のばらつきに関する情報、レーザ検出装置(2)で生じるノイズのばらつきに関する情報、及び、レーザ検出装置(2)とコンクリート(C1)との間の距離に関する情報、のうち少なくとも1つと、複数の実測データと、に基づいて複数の拡張データを生成する処理である。
【0130】
上記の構成によれば、複数の拡張データを生成することができる。そして、複数の拡張データを含む複数の学習用データ(T1)に基づいて学習器(3)が機械学習を行うことで、コンクリート(C1)の欠陥の有無の判定に適した学習済みモデル(4)を生成することができる。
【0131】
また、第2の態様に係るデータ拡張方法は、第1の態様において、抽出ステップを更に有する。抽出ステップでは、複数の実測データの各々から上限周波数以下の成分を抽出する。データ拡張処理では、複数の実測データの各々の上限周波数以下の成分に基づいて複数の拡張データを生成する。
【0132】
上記の構成によれば、コンクリート(C1)の欠陥の有無の判定により適した学習済みモデル(4)を生成することができる。
【0133】
また、第3の態様に係るデータ拡張方法では、第2の態様において、上限周波数は、40kHz以上60kHz以下である。
【0134】
上記の構成によれば、コンクリート(C1)の欠陥の有無の判定により適した学習済みモデル(4)を生成することができる。
【0135】
また、第4の態様に係るデータ拡張方法は、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、データ分割ステップを更に有する。データ分割ステップでは、データ拡張処理で生成された複数の拡張データを、訓練データ群と、検証データ群と、テストデータ群と、に分割する。データ分割ステップは、第1データ分割ステップと、第2データ分割ステップと、を含む。第1データ分割ステップでは、1つの実測データに基づいて生成された3以上の拡張データから、訓練データ群に属する拡張データと、検証データ群に属する拡張データと、テストデータ群に属する拡張データと、を選択する。第2データ分割ステップでは、複数の実測データのうち第1実測データに基づいて生成された拡張データを、訓練データ群に属させる。また、第2データ分割ステップでは、複数の実測データのうち第2実測データに基づいて生成された拡張データを、検証データ群に属させる。さらに、第2データ分割ステップでは、複数の実測データのうち第3実測データに基づいて生成された拡張データを、テストデータ群に属させる。
【0136】
上記の構成によれば、学習器(3)は、第1データ分割ステップにより分割された複数の拡張データに基づいて生成された第1学習済みモデルと、第2データ分割ステップにより分割された複数の拡張データに基づいて生成された第2学習済みモデルと、を生成することができる。よって、ユーザは、第1学習済みモデルと第2学習済みモデルとのうち、より判定に適した学習済みモデルを採用することができる。
【0137】
第1の態様以外の構成については、データ拡張方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0138】
また、第5の態様に係るプログラムは、第1~4の態様のいずれか1つに係るデータ拡張方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0139】
上記の構成によれば、複数の拡張データを生成することができる。そして、複数の拡張データを含む複数の学習用データ(T1)に基づいて学習器(3)が機械学習を行うことで、コンクリート(C1)の欠陥の有無の判定に適した学習済みモデル(4)を生成することができる。
【0140】
また、第6の態様に係る学習済みモデル(4)は、第1~4の態様のいずれか1つに係るデータ拡張方法により生成された複数の拡張データを、学習用データ(T1)として用いて、機械学習により生成される。学習済みモデル(4)は、検出信号(D1)に相当する入力データ(出力信号(D2)に基づくデータ)に基づいて、コンクリート(C1)の欠陥の有無に関する検査結果を出力する。
【0141】
上記の構成によれば、コンクリート(C1)の欠陥の有無の判定に適した学習済みモデル(4)を生成することができる。
【0142】
また、第7の態様に係る検査方法は、推論ステップを有する。推論ステップでは、学習済みモデル(4)に、検出信号(D1)に相当する入力データ(出力信号(D2)に基づくデータ)を入力し、コンクリート(C1)の欠陥の有無に関する検査結果を得る。
【0143】
上記の構成によれば、コンクリート(C1)の欠陥の有無を判定できる。
【0144】
また、第8の態様に係るデータ拡張システム(1)は、複数の実測データを用いて、複数の拡張データを生成する。複数の実測データは、レーザ検出装置(2)から出力される複数の検出信号(D1)に基づくデ―タである。レーザ検出装置(2)は、パルスレーザ(21)と、振動検出用レーザ(22)と、光検出器(23)と、を備える。パルスレーザ(21)は、コンクリート(C1)の表面を振動させるための第1レーザ光(L1)を出射する。振動検出用レーザ(22)は、コンクリート(C1)の表面の振動を検出するための第2レーザ光(L2)を出射する。光検出器(23)は、コンクリート(C1)の表面で反射された第2レーザ光(L2)を検出し、検出信号(D1)に変換する。データ拡張システム(1)は、取得部(132)と、生成部(133)と、を備える。取得部(132)は、複数の実測データを取得する。生成部(133)は、複数の拡張データを生成する。生成部(133)は、データ拡張処理を行う。データ拡張処理は、コンクリート(C1)の内部における音速のばらつきに関する情報、パルスレーザ(21)から照射される第1レーザ光(L1)の強度のばらつきに関する情報、振動検出用レーザ(22)から照射される第2レーザ光(L2)の強度のばらつきに関する情報、光検出器(23)の感度のばらつきに関する情報、レーザ検出装置(2)で生じるノイズのばらつきに関する情報、及び、レーザ検出装置(2)とコンクリート(C1)との間の距離に関する情報、のうち少なくとも1つと、複数の実測データと、に基づいて複数の拡張データを生成する処理である。
【0145】
上記の構成によれば、複数の拡張データを生成することができる。そして、複数の拡張データを含む複数の学習用データ(T1)に基づいて学習器(3)が機械学習を行うことで、コンクリート(C1)の欠陥の有無の判定に適した学習済みモデル(4)を生成することができる。
【0146】
上記態様に限らず、実施形態に係るデータ拡張システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、データ拡張方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体にて具現化可能である。
【符号の説明】
【0147】
1 データ拡張システム
2 レーザ検出装置
4 学習済みモデル
21 パルスレーザ
22 振動検出用レーザ
23 光検出器
132 取得部
133 生成部
C1 コンクリート
D1 検出信号
D2 出力信号
L1 第1レーザ光
L2 第2レーザ光
T1 学習用データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9