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特開2024-132645ナノ秒光スイッチアレイ、およびナノ秒波長選択スイッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132645
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ナノ秒光スイッチアレイ、およびナノ秒波長選択スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H04Q 3/52 20060101AFI20240920BHJP
   H04J 14/02 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
H04Q3/52 B
H04J14/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043498
(22)【出願日】2023-03-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G超大容量無線通信を支える空間多重光ネットワーク・ノード技術の研究開発 研究開発項目2 SDM 光ネットワークシステム技術 副題:経済性と転送性能に優れた空間多重光ネットワークの研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】ワン ツェン
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 昇
【テーマコード(参考)】
5K069
5K102
【Fターム(参考)】
5K069BA09
5K069DB01
5K069DB33
5K069EA25
5K102AA06
5K102AD01
5K102MB11
5K102NA02
5K102PD14
5K102PD16
5K102PD17
5K102PH45
5K102PH47
5K102PH48
(57)【要約】
【課題】スイッチング速度が高速で、大規模化が容易なナノ秒光スイッチアレイまたはナノ秒波長選択スイッチを提供する。
【解決手段】光信号の通信経路を切り替えるナノ秒光スイッチアレイであって、複数の2×2入力側光スイッチユニット(i≧1)と、複数の2×2中央部光スイッチユニット(j≧2)と、複数の2×2出力側光スイッチユニット(k≧1)と、が論理的に直列に配置され、前記入力側光スイッチユニットの出力ポートと前記中央部光スイッチユニットの入力ポート、および前記中央部光スイッチユニットの出力ポートと前記出力側光スイッチユニットの入力ポートが所定の数式または規則に従って接続され、前記入力側光スイッチユニット、前記中央部光スイッチユニット、および前記出力側光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期されて制御される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の通信経路を切り替えるナノ秒光スイッチアレイであって、
複数の2×2入力側光スイッチユニット(i≧1)と、複数の2×2中央部光スイッチユニット(j≧2)と、複数の2×2出力側光スイッチユニット(k≧1)と、が論理的に直列に配置され、
前記入力側光スイッチユニットの出力ポートと前記中央部光スイッチユニットの入力ポート、および前記中央部光スイッチユニットの出力ポートと前記出力側光スイッチユニットの入力ポートが所定の数式または規則に従って接続され、
前記入力側光スイッチユニット、前記中央部光スイッチユニット、および前記出力側光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期されて制御されることを特徴とするナノ秒光スイッチアレイ。
【請求項2】
i=j=kであり、それぞれ2個の前記入力側光スイッチユニット、前記中央部光スイッチユニット、および前記出力側光スイッチユニットが接続されていることを特徴とする請求項1記載のナノ秒光スイッチアレイ。
【請求項3】
i=k=1であり、2個の前記入力側光スイッチユニット、2個の前記中央部光スイッチユニット、および2個の前記出力側光スイッチユニットが接続されていることを特徴とする請求項1記載のナノ秒光スイッチアレイ。
【請求項4】
光信号の通信経路を切り替える2×2ナノ秒光スイッチアレイであって、
1の2×2入力側光スイッチユニット(m≧2)と、2個の1×2n-m出力側光スイッチユニット(n-m≧1)と、が論理的に直列に配置され、
前記2×2入力側光スイッチユニットの出力ポートと前記1×2n-m出力側光スイッチユニットの入力ポートが1対1に接続され、
前記2×2入力側光スイッチユニット、および前記1×2n-m出力側光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期されて制御され、
前記2×2入力側光スイッチユニットは、請求項2または請求項3記載のナノ秒光スイッチアレイであることを特徴とする2×2ナノ秒光スイッチアレイ。
【請求項5】
波長多重された光信号を所定の波長範囲ごとに分離し、通信経路を切り替えるナノ秒波長選択スイッチであって、
1または複数の入力側AWGと、複数の2×2光スイッチユニット(m≧0、n≧2)と、複数の出力側AWGと、が論理的に直列に配置され、
前記入力側AWGの出力ポートと前記光スイッチユニットの入力ポート、および前記光スイッチユニットの出力ポートと前記出力側AWGの入力ポートが所定の数式または規則に従って接続され、
前記光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期されて制御されることを特徴とするナノ秒波長選択スイッチ。
【請求項6】
m≦nであり、2個の前記入力側AWGと、2個の前記光スイッチユニットと、2個の前記出力側AWGが接続され、
前記入力側AWGは、1の入力ポートと2の出力ポートを有し、
前記出力側AWGは、2の入力ポートと1の出力ポートを有することを特徴とする請求項6記載のナノ秒波長選択スイッチ。
【請求項7】
前記2×2光スイッチユニットは、m=0であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のナノ秒波長選択スイッチ。
【請求項8】
前記2×2光スイッチユニットは、m≧1であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のナノ秒波長選択スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規模拡張可能なナノ秒光スイッチアレイ、およびナノ秒波長選択スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
単一のチップ(またはボード)のコンピューティング能力が限界に達したため、データセンターやチップクラスターなどの分散システムが積極的に開発および展開されている。このとき、光ネットワークに使用される光スイッチや波長選択スイッチは、この種のシステムのボトルネックとならないために、以下の機能が期待されている。(1)シングルレーンの高データレート(例えば、100Gbps以上)を有すること。(2)超大規模(例えば、1000以上のノード)のネットワークに対応できること。(3)スイッチング速度が遅いとスイッチング時間がパケット配信時間よりも長くなるので、パケット/トラフィック配信効率の向上のために、ナノ秒オーダーの高速なスイッチング速度を有すること。(4)アプリケーションの要求を満たす複雑なコンピューティンググラフに対応するため、様々なトポロジへの適応性と波長資源の高収容効率性を有すること。
【0003】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は大規模な光スイッチを実現する主流の技術であるが、そのスイッチング速度はマイクロ秒オーダーである(特許文献1)。また、WSS(wavelength selective switch)は通常LCOS(Liquid crystal on silicon)で実装されており、スイッチング速度はマイクロ秒オーダーである(特許文献2)。
【0004】
また、特許文献3は、データセンター向けの大規模光スイッチアレイの技術を開示している。特許文献4または特許文献5は、クロスバー形状の光スイッチアレイの技術を開示している。非特許文献1または非特許文献2は、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)とAWG(Arrayed Waveguide Grating)に基づいたナノ秒スイッチアーキテクチャの技術が開示され、高速で大規模なものが実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US20160154183A1
【特許文献2】US8078019B2
【特許文献3】US11206466B2
【特許文献4】US20130243372A1
【特許文献5】EP3555681B1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Joshua L. Benjamin, Thomas Gerard, Domanic Lavery, Polina Bayvel, and Georgios Zervas, "PULSE: Optical Circuit Switched Data Center Architecture Operating at Nanosecond Timescales," J. Lightwave Technol. 38, 4906-4921 (2020)
【非特許文献2】Ballani, Hitesh, et al. "Sirius: A flat datacenter network with nanosecond optical switching." Proceedings of the Annual conference of the ACM Special Interest Group on Data Communication on the applications, technologies, architectures, and protocols for computer communication. 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3のデータセンター向けの大規模光スイッチアレイの技術は、構築方法が本発明とは異なる。特許文献4または特許文献5のクロスバー形状の光スイッチアレイの技術は、基本技術が本発明とは異なる。また、非特許文献1または非特許文献2の技術は、様々なトポロジへの適応性と波長資源の収容効率性に乏しく、また、構成エラーの検出が容易ではなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スイッチング速度が高速で、大規模化が容易なナノ秒光スイッチアレイまたはナノ秒波長選択スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の一態様のナノ秒光スイッチアレイは、光信号の通信経路を切り替えるナノ秒光スイッチアレイであって、複数の2×2入力側光スイッチユニット(i≧1)と、複数の2×2中央部光スイッチユニット(j≧2)と、複数の2×2出力側光スイッチユニット(k≧1)と、が論理的に直列に配置され、前記入力側光スイッチユニットの出力ポートと前記中央部光スイッチユニットの入力ポート、および前記中央部光スイッチユニットの出力ポートと前記出力側光スイッチユニットの入力ポートが所定の数式または規則に従って接続され、前記入力側光スイッチユニット、前記中央部光スイッチユニット、および前記出力側光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期されて制御される。
【0010】
(2)また、本発明の一態様のナノ秒光スイッチアレイにおいて、i=j=kであり、それぞれ2個の前記入力側光スイッチユニット、前記中央部光スイッチユニット、および前記出力側光スイッチユニットが接続されている。
【0011】
(3)また、本発明の一態様のナノ秒光スイッチアレイにおいて、i=k=1であり、2個の前記入力側光スイッチユニット、2個の前記中央部光スイッチユニット、および2個の前記出力側光スイッチユニットが接続されている。
【0012】
(4)また、本発明の一態様のナノ秒光スイッチアレイは、光信号の通信経路を切り替える2×2ナノ秒光スイッチアレイであって、1の2×2入力側光スイッチユニット(m≧2)と、2個の1×2n-m出力側光スイッチユニット(n-m≧1)と、が論理的に直列に配置され、前記2×2入力側光スイッチユニットの出力ポートと前記1×2n-m出力側光スイッチユニットの入力ポートが1対1に接続され、前記2×2入力側光スイッチユニット、および前記1×2n-m出力側光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期されて制御され、前記2×2入力側光スイッチユニットは、上記(2)または(3)記載のナノ秒光スイッチアレイである。
【0013】
(5)また、本発明の一態様のナノ秒波長選択スイッチは、波長多重された光信号を所定の波長範囲ごとに分離し、通信経路を切り替えるナノ秒波長選択スイッチであって、1または複数の入力側AWGと、複数の2×2光スイッチユニット(m≧0、n≧2)と、複数の出力側AWGと、が論理的に直列に配置され、前記入力側AWGの出力ポートと前記光スイッチユニットの入力ポート、および前記光スイッチユニットの出力ポートと前記出力側AWGの入力ポートが所定の数式または規則に従って接続され、前記光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期されて制御される。
【0014】
(6)また、本発明の一態様のナノ秒波長選択スイッチにおいて、m≦nであり、2個の前記入力側AWGと、2個の前記光スイッチユニットと、2個の前記出力側AWGが接続され、前記入力側AWGは、1の入力ポートと2の出力ポートを有し、前記出力側AWGは、2の入力ポートと1の出力ポートを有する。
【0015】
(7)また、本発明の一態様のナノ秒波長選択スイッチにおいて、前記2×2光スイッチユニットは、m=0である。
【0016】
(8)また、本発明の一態様のナノ秒波長選択スイッチにおいて、前記2×2光スイッチユニットは、m≧1である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スイッチング速度が高速で、大規模化が容易なナノ秒光スイッチアレイまたはナノ秒波長選択スイッチを構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るナノ秒光スイッチアレイの模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る22m×22mナノ秒光スイッチアレイの模式図である。
図3】第1の方法のフローチャートの一例である。
図4】(a)~(d)は、それぞれ、ナノ秒光スイッチアレイの一例を示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る2m+1×2m+1ナノ秒光スイッチアレイの模式図である。
図6】第2の方法のフローチャートの一例である。
図7】(a)、(b)は、それぞれ、ナノ秒光スイッチアレイの一例を示す模式図である。
図8】16×16ナノ秒光スイッチアレイの一例を示す模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る1×2ナノ秒光スイッチアレイの模式図である。
図10】(a)~(c)は、それぞれ、ナノ秒光スイッチアレイの一例を示す模式図である。
図11】本発明の一実施形態に係る2×2ナノ秒光スイッチアレイの模式図である。
図12】16×64ナノ秒光スイッチアレイの一例を示す模式図である。
図13】(a)、(b)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係るナノ秒波長選択スイッチの模式図である。
図14】本発明の一実施形態に係るナノ秒波長選択スイッチの模式図である。
図15】ナノ秒波長選択スイッチの一例を示す模式図である。
図16】ナノ秒波長選択スイッチの一例を示す模式図である。
図17】光ネットワークの一例を示す模式図である。
図18】光ネットワークの一例を示す模式図である。
図19】光ネットワークの一例を示す模式図である。
図20】コントロールプレーンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。具体的には、例えば、実施形態の説明に必要ではない制御機能等については図から省略する。
【0020】
[実施形態]
(ナノ秒光スイッチアレイの構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るナノ秒光スイッチアレイの模式図である。本発明の一実施形態のナノ秒光スイッチアレイは、光信号の通信経路を切り替える。ナノ秒光スイッチアレイは、複数の2×2入力側光スイッチユニット(i≧1)と、複数の2×2中央部光スイッチユニット(j≧2)と、複数の2×2出力側光スイッチユニット(k≧1)とを備える。
【0021】
入力側光スイッチユニット、中央部光スイッチユニット、および出力側光スイッチユニットをまとめて光スイッチユニットという。光スイッチユニットとは、本発明のナノ秒光スイッチアレイを構成する部品としての光スイッチをいう。光スイッチユニットは、内部で入力ポートと出力ポートの間で何らかの接続が既にされているものとする。従って、本発明のナノ秒光スイッチアレイは、それより大規模なナノ秒光スイッチアレイを構成する部品として使用する場合、光スイッチユニットという。また、光スイッチユニットは、本発明のナノ秒光スイッチアレイ以外の光スイッチであってもよい。
【0022】
×2光スイッチユニットとは、入力ポートが2個、出力ポートが2個あり、入力ポートのいずれのポートから出力ポートのいずれのポートへも制御により光信号の経路選択が可能な光スイッチである。j、kについても同様である。なお、図1の光スイッチユニットは、左側のポートを入力ポート、右側のポートを出力ポートと呼ぶ。他の図においても同様である。本明細書において、便宜上光スイッチユニットまたはナノ秒光スイッチアレイの一方のポートを入力ポート、他方のポートを出力ポートと呼ぶが、実際には光信号が出力ポートから入力されて入力ポートから出力されてもよい。
【0023】
ナノ秒光スイッチアレイは、複数の2×2入力側光スイッチユニットと、複数の2×2中央部光スイッチユニットと、複数の2×2出力側光スイッチユニットとが論理的に直列に配置される。また、入力側光スイッチユニットの出力ポートと中央部光スイッチユニットの入力ポート、および中央部光スイッチユニットの出力ポートと出力側光スイッチユニットの入力ポートが所定の数式または規則に従って接続される。このように、規模の小さな光スイッチユニットを直列に3段階(3層)に配置し、各ポートを所定の数式または規則に従って規則的に接続することで、より規模の大きな光スイッチアレイを容易に構成することができる。所定の数式または規則については後述する。
【0024】
入力側光スイッチユニットの出力ポートの一部、中央部光スイッチユニットの入力ポートもしくは出力ポートの一部、または出力側光スイッチユニットの入力ポートの一部は、他のポートと接続されていないものが存在してもよい。ただし、入力側光スイッチユニットの出力ポートの全部、中央部光スイッチユニットの入力ポートもしくは出力ポートの全部、または出力側光スイッチユニットの入力ポートの全部が他のポートと接続されていない光スイッチユニットはないものとする。
【0025】
入力側光スイッチユニット、中央部光スイッチユニット、および出力側光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期されて制御される。これにより、ナノ秒光スイッチアレイをナノ秒オーダーで動作させることができる。スイッチング速度がナノ秒オーダーであるとは、一回のスイッチングに要する時間が、1マイクロ秒未満であることをいう。スイッチング速度は、100ナノ秒以下であることが好ましく、10ナノ秒以下であることがより好ましい。スイッチング速度が1ナノ秒未満である場合も、ナノ秒オーダーに含むものとする。
【0026】
複数の2×2入力側光スイッチユニットの出力ポート、複数の2×2中央部光スイッチユニットの入力ポートと出力ポート、および複数の2×2出力側光スイッチユニットの入力ポートの全てが他のポートと接続され、2×2ナノ秒光スイッチアレイ(m>i,j,k)を構成する場合、2×2入力側光スイッチユニットを2m-i個、2×2中央部光スイッチユニットを2m-j個、2×2出力側光スイッチユニットを2m-k個準備する。
【0027】
そして、p番目の2×2入力側光スイッチユニットのq番目の出力ポートを、r番目の2×2中央部光スイッチユニットのs番目の入力ポートに接続する。なお、p、q、r、sは、各光スイッチユニットまたはそのポートの論理的な番号を示す。i≦jのとき、r・2+sを2で割った商をr’、余りをs’、ただし1≦s’≦2として計算する。このとき、例えば、所定の数式として、p=s’、q=r’に従って接続することができる。また、i>jのとき、p・2+qを2で割った商をp’、余りをq’、ただし1≦q’≦2として計算する。このとき、例えば、所定の数式として、p’=s、q’=rに従って接続することができる。
【0028】
同様に、t番目の2×2中央部光スイッチユニットのu番目の出力ポートを、v番目の2×2出力側光スイッチユニットのw番目の入力ポートに接続する。上記と同様に、t、u、v、wは、各光スイッチユニットまたはそのポートの論理的な番号を示す。j≦kのとき、v・2+wを2で割った商をv’、余りをw’、ただし1≦w’≦2として計算する。このとき、例えば、所定の数式として、t=w’、u=v’に従って接続することができる。また、j>kのとき、t・2+uを2で割った商をt’、余りをu’、ただし1≦u’≦2として計算する。このとき、例えば、所定の数式として、t’=w、u’=vに従って接続することができる。
【0029】
このように、入力側光スイッチユニット、中央部光スイッチユニット、および出力側光スイッチユニットを所定の数式または規則に従って規則的に接続することで、2×2ナノ秒光スイッチアレイを構成できる。なお、上記の所定の数式または規則は一例であり、ナノ秒光スイッチアレイの制御が可能であれば、どのような数式や規則を用いて接続してもよい。例えば、空きポートがある場合、空きポートを考慮した数式や規則であってもよい。
【0030】
上記のナノ秒光スイッチアレイにおいて、i=j=kであることが好ましい。これにより、1種類の光スイッチユニットでナノ秒光スイッチアレイを構成できる。また、この場合、それぞれ2個の入力側光スイッチユニット、中央部光スイッチユニット、および出力側光スイッチユニットが接続されていることが好ましい。これにより、全てのポートを使用した無駄のないナノ秒光スイッチアレイを構成できる。
【0031】
また、上記のナノ秒光スイッチアレイにおいて、i=k=1であることが好ましい。これにより、大規模化する場合の挿入損失を低減することができる。また、この場合、2個の入力側光スイッチユニット、2個の中央部光スイッチユニット、および2個の出力側光スイッチユニットが接続されていることが好ましい。これにより、全てのポートを使用した無駄のないナノ秒光スイッチアレイを構成することができる。また、必要な規模のナノ秒光スイッチアレイを構成できる。
【0032】
(ナノ秒光スイッチアレイの構築方法)
本発明のナノ秒光スイッチアレイは、小規模のナノ秒光スイッチアレイを光スイッチユニットとして用いて、同様の方法で配置、接続することを繰り返すことで、容易に大規模のナノ秒光スイッチアレイを構築することができる。以下では、2×2タイプのナノ秒光スイッチアレイの構築(拡張)方法を説明する。
【0033】
(第1の方法)
図2は、本発明の一実施形態に係る22m×22mナノ秒光スイッチアレイの模式図である。図2は、第1の方法で構成した22m×22mナノ秒光スイッチアレイを示している。第1の方法は、2×2光スイッチユニットを3×2個使用して、22m×22mナノ秒光スイッチアレイを構築する方法である。すなわち、2×2入力側光スイッチユニット、2×2中央部光スイッチユニット、および2×2出力側光スイッチユニットにおいて、i=j=k=mとする。また、入力側光スイッチユニット、中央部光スイッチユニット、および出力側光スイッチユニットをそれぞれ2個準備する。
【0034】
(x,y,z,l)をいずれかの光スイッチユニットの入力ポートの位置を示す記号とし、(x,y,z,r)をいずれかの光スイッチユニットの出力ポートの位置を示す記号として、以下のように定義する。第1の値(第1座標)は、光スイッチユニットを特定する値とし、1は入力側光スイッチユニットを、2は中央部光スイッチユニットを、3は出力側光スイッチユニットを示すとする。また、第2の値(第2座標)は、それぞれ複数個ある光スイッチユニットの順番を示す値とする。また、第3の値(第3座標)は、各光スイッチユニットのポート番号を示す値とする。この定義によると、例えば、(1,3,2,l)は、入力側光スイッチユニットの3番目のユニットの2番目の入力ポートを示している。また、例えば、(2,4,1,r)は、中央部光スイッチユニットの4番目のユニットの1番目の出力ポートを示している。
【0035】
上記のように定義した場合、第1の方法では、例えば、次のような規則に従って各ポートを接続することができる。全ての(1,y,z,r)と(2,z,y,l)を接続し、全ての(2,y,z,r)と(3,z,y,l)を接続する。(1,y,z,l)および(3,y,z,r)は、それぞれナノ秒光スイッチアレイの入力ポートおよび出力ポートとなる。これにより、2×2光スイッチユニットを3×2個使用して、22m×22m光スイッチユニットを構築できる。
【0036】
以下では、2×2光スイッチユニットを使用して、第1の方法で65536×65536ナノ秒光スイッチアレイを作製するフローを説明する。図3は、第1の方法のフローチャートの一例である。図3では、光スイッチユニットをユニットと記載している。図4(a)~(d)は、それぞれ、ナノ秒光スイッチアレイの一例を示す模式図である。最初に、2×2光スイッチユニットを必要な個数準備する(ステップS1)。次に、n=2として(ステップS2)、n×n光スイッチユニットn個、3層に配置する(ステップS3)。
【0037】
次に、光スイッチユニットの各ポートを接続する(ステップS4)。ポートの接続は、例えば、上記の数式や規則を適用できる。次に、n<65536かどうか判断し、n<65536が成り立つ場合(ステップS5、YES)、ステップS6に進む。一方、n<65536が成り立たたない(n=65536が成り立つ)場合(ステップS5、NO)、65536×65536ナノ秒光スイッチアレイが作製できたため、終了する。
【0038】
ステップS6では、n×n光スイッチユニットを必要な個数作製したかどうか判断し、必要な個数作製していない場合(ステップS6、NO)、ステップS3に戻り、n×n光スイッチユニットを作製する。一方、必要な個数作製した場合(ステップS6、YES)、nにnを代入し(ステップS7)、ステップS3に戻り、次の値でn×n光スイッチユニットを作製する。このようにして、第1の方法では、2×2光スイッチユニットを使用して、同様の方法を繰り返して65536×65536ナノ秒光スイッチアレイを作製できる。
【0039】
図4(a)は、2×2光スイッチユニットを6個使用して、4×4ナノ秒光スイッチアレイを構築している。(1,1,1,r)と(2,1,1,l)、(1,1,2,r)と(2,2,1,l)、(1,2,1,r)と(2,1,2,l)、および(1,2,2,r)と(2,2,2,l)が接続されている。(2,y,z,r)と(3,z,y,l)も同様である。スイッチング速度がナノ秒オーダーである2×2光スイッチユニットは、既存の2×2光スイッチを使用することができる。
【0040】
図4(b)は、4×4光スイッチユニットを12個使用して、16×16ナノ秒光スイッチアレイを構築している。1≦y,z≦4について、全ての(1,y,z,r)と(2,z,y,l)、および全ての(2,y,z,r)と(3,z,y,l)が接続されている。スイッチング速度がナノ秒オーダーである4×4光スイッチユニットは、上記の4×4ナノ秒光スイッチアレイを使用することができる。
【0041】
図4(c)は、16×16光スイッチユニットを48個使用して、256×256ナノ秒光スイッチアレイを構築している。1≦y,z≦16について、全ての(1,y,z,r)と(2,z,y,l)、および全ての(2,y,z,r)と(3,z,y,l)が接続されている。スイッチング速度がナノ秒オーダーである16×16光スイッチユニットは、上記の16×16ナノ秒光スイッチアレイを使用することができる。
【0042】
図4(d)は、256×256光スイッチユニットを768個使用して、65536×65536ナノ秒光スイッチアレイを構築している。1≦y,z≦256について、全ての(1,y,z,r)と(2,z,y,l)、および全ての(2,y,z,r)と(3,z,y,l)が接続されている。スイッチング速度がナノ秒オーダーである256×256光スイッチユニットは、上記の256×256ナノ秒光スイッチアレイを使用することができる。
【0043】
なお、上記の説明では、2×2光スイッチユニットを最小の単位として拡張しているため、2×2タイプのナノ秒光スイッチアレイを作製している。しかし、第1の方法は、n×n光スイッチユニットを使用してn×nナノ秒光スイッチアレイを作製できるので、n×n光スイッチユニット(n≠2,4,16,256,…)を使用することで、異なるタイプのナノ秒光スイッチアレイを作製できる。。また、既存の2×2光スイッチを使用する場合、第1の方法では、1回拡大をするごとに挿入損失が約3倍になるため、65536×65536(216×216)を上限とすることが好ましい。ただし、将来的に既存の光スイッチよりも挿入損失の低い光スイッチを使用できるようになった場合は、更に大規模なナノ秒光スイッチアレイを構築してもよい。
【0044】
(第2の方法)
図5は、本発明の実施形態に係る2m+1×2m+1ナノ秒光スイッチアレイの模式図である。図5は、第2の方法で構成したナノ秒光スイッチアレイを示している。第2の方法は、2×2光スイッチユニット(m≧2)を2個と2×2光スイッチユニットを2m+1個使用して、2m+1×2m+1ナノ秒光スイッチアレイを構築する方法である。すなわち、2×2入力側光スイッチユニット、2×2中央部光スイッチユニット、および2×2出力側光スイッチユニットにおいて、i=k=2とし、j=mとする。また、入力側光スイッチユニット、および出力側光スイッチユニットをそれぞれ2個準備し、中央部光スイッチユニットを2個準備する。
【0045】
(x,y,z,l)、および(x,y,z,r)を上記と同様に定義する。第2の方法でも、第1の方法と同一の規則に従って各ポートを接続することができる。再度説明すると、全ての(1,y,z,r)と(2,z,y,l)を接続し、全ての(2,y,z,r)と(3,z,y,l)を接続する。(1,y,z,l)および(3,y,z,r)は、それぞれナノ秒光スイッチアレイの入力ポートおよび出力ポートとなる。これにより、2×2光スイッチユニットを2個と2×2光スイッチユニットを2m+1個使用して、2m+1×2m+1ナノ秒光スイッチアレイを構築できる。
【0046】
以下では、2×2光スイッチユニットを使用して、第2の方法で65536×65536ナノ秒光スイッチアレイを作製するフローを説明する。図6は、第2の方法のフローチャートの一例である。図6でも、光スイッチユニットをユニットと記載している。図7(a)、(b)は、それぞれ、ナノ秒光スイッチアレイの一例を示す模式図である。最初に、2×2光スイッチユニットを必要な個数準備する(ステップT1)。次に、n=2として(ステップT2)、2×2光スイッチユニットをn個、n×n光スイッチユニットを2個、2×2光スイッチユニットをn個、3層に配置する(ステップT3)。
【0047】
次に、光スイッチユニットの各ポートを接続する(ステップT4)。ポートの接続は、例えば、上記の数式や規則を適用できる。次に、2n<65536かどうか判断し、2n<65536が成り立つ場合(ステップT5、YES)、ステップT6に進む。一方、2n<65536が成り立たたない(2n=65536が成り立つ)場合(ステップT5、NO)、65536×65536ナノ秒光スイッチアレイが作製できたため、終了する。
【0048】
ステップT6では、2n×2n光スイッチユニットを2個作製したかどうか判断し、2個作製していない場合(ステップT6、NO)、ステップT3に戻り、2n×2n光スイッチユニットを作製する。一方、2数作製した場合(ステップT6、YES)、nに2nを代入し(ステップT7)、ステップT3に戻り、次の値で2n×2n光スイッチユニットを作製する。このようにして、第2の方法では、2×2光スイッチユニットを使用して、同様の方法を繰り返して65536×65536ナノ秒光スイッチアレイを作製できる。
【0049】
図7(a)は、4×4光スイッチユニットを2個、2×2光スイッチユニットを8個使用して、8×8ナノ秒光スイッチアレイを構築している。1≦y≦4、1≦z≦2について、全ての(1,y,z,r)と(2,z,y,l)、および全ての(2,y,z,r)と(3,z,y,l)が接続されている。スイッチング速度がナノ秒オーダーである4×4光スイッチユニットは、上記の4×4ナノ秒光スイッチアレイを使用することができる。また、スイッチング速度がナノ秒オーダーである2×2光スイッチユニットは、既存の2×2光スイッチを使用することができる。
【0050】
図7(b)は、8×8光スイッチユニットを2個、2×2光スイッチユニットを16個使用して、16×16ナノ秒光スイッチアレイを構築した様子を模式的に表している。1≦y≦8、1≦z≦2について、全ての(1,y,z,r)と(2,z,y,l)、および全ての(2,y,z,r)と(3,z,y,l)が接続されている。スイッチング速度がナノ秒オーダーである8×8光スイッチユニットは、上記の8×8ナノ秒光スイッチアレイを使用することができる。
【0051】
図8は、16×16ナノ秒光スイッチアレイの一例を示す模式図である。図8は、4×4光スイッチユニットを4個、2×2光スイッチユニットを32個使用して、16×16ナノ秒光スイッチアレイを構築している。すなわち、図7(b)の8×8光スイッチユニットを図7(a)の4×4光スイッチユニットに置き換えたナノ秒光スイッチアレイを示している。図4(b)と図8を比較することにより、2≧16のとき、第1の方法と第2の方法は異なる方法であることが分かる。なお、4×4ナノ秒光スイッチアレイは、第1の方法と第2の方法で同一の構成となる。
【0052】
第2の方法を繰り返すことで、2×2ナノ秒光スイッチアレイ(m=2,3,4,…)を構築できる。なお、上記の説明では、2×2光スイッチユニットを最小の単位として拡張しているため、2×2タイプのナノ秒光スイッチアレイを作製している。しかし、第2の方法は、n×n光スイッチユニットを使用して2n×2nナノ秒光スイッチアレイを作製できるので、2×2光スイッチユニットとn×n光スイッチユニット(n≠2)を使用することで、異なるタイプのナノ秒光スイッチアレイを作製できる。既存の2×2光スイッチを使用する場合、第2の方法では、1回拡張をするごとに挿入損失が約0.6dB増加するため、65536×65536(216×216)を上限とすることが好ましい。ただし、将来的に既存の光スイッチよりも挿入損失の低い光スイッチを使用できるようになった場合は、更に大規模なナノ秒光スイッチアレイを構築してもよい。
【0053】
上記では、2×2ナノ秒光スイッチアレイの構築方法を説明したが、後述するナノ秒波長選択スイッチや種々のネットワークにナノ秒光スイッチアレイを使用する場合、1×2ナノ秒光スイッチアレイや2×2ナノ秒光スイッチアレイ(m≠n)を構築できることが好ましい。そのため、以下では、1×2ナノ秒光スイッチアレイおよび2×2ナノ秒光スイッチアレイの構築方法を説明する。
【0054】
図9は、本発明の実施形態に係る1×2ナノ秒光スイッチアレイの模式図である。1×2ナノ秒光スイッチアレイは、1の1×2入力側光スイッチユニット(m≧1)と2個の1×2n-m出力側光スイッチユニット(n-m≧1)を備え、1×2入力側光スイッチユニットの出力ポートと1×2n-m出力側光スイッチユニットの入力ポートが1対1に接続される。1×2入力側光スイッチユニット、および1×2n-m出力側光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期され制御される。これにより、1×2ナノ秒光スイッチアレイをナノ秒オーダーで動作させることができる。
【0055】
具体的な例で説明すると、例えば、図10(a)から(c)のようになる。図10(a)から(c)は、それぞれナノ秒光スイッチアレイの一例を示す模式図である。図10(a)から(c)は、それぞれ1×4ナノ秒光スイッチアレイ150、1×16ナノ秒光スイッチアレイ160、および1×256ナノ秒光スイッチアレイ170を示している。このように、1×2光スイッチユニットを使用して順に拡張していくことで、1×2ナノ秒光スイッチアレイを構築できる。なお、図10(a)から(c)では、入力側光スイッチユニットと出力側光スイッチユニットを同一の光スイッチユニットとして拡張しているが、異なる光スイッチユニットを使用して拡張してもよい。
【0056】
図11は、本発明の実施形態に係る2×2ナノ秒光スイッチアレイの模式図である。2×2ナノ秒光スイッチアレイは、1の2×2入力側光スイッチユニット(m≧1)と2個の1×2n-m出力側光スイッチユニット(n-m≧1)を備え、2×2入力側光スイッチユニットの出力ポートと1×2n-m出力側光スイッチユニットの入力ポートが1対1に接続される。2×2入力側光スイッチユニット、および1×2n-m出力側光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期され制御される。これにより、2×2ナノ秒光スイッチアレイをナノ秒オーダーで動作させることができる。2×2入力側光スイッチユニット、または1×2n-m出力側光スイッチユニットは、上で構築したナノ秒光スイッチアレイであってもよい。
【0057】
具体的な例で説明すると、例えば、図12のようになる。図12は、16×64ナノ秒光スイッチアレイ180の一例を示す模式図である。このように、2×2ナノ秒光スイッチアレイを構築し、必要であれば1×2n-mナノ秒光スイッチアレイを構築し、これらを組み合わせることで、2×2ナノ秒光スイッチアレイを構築できる。
【0058】
(ナノ秒波長選択スイッチの構成)
図13(a)、(b)および図14は、本発明の一実施形態に係るナノ秒波長選択スイッチの模式図である。本発明の一実施形態のナノ秒波長選択スイッチ200は、波長多重された光信号を所定の波長範囲ごとに分離し、通信経路を切り替える。なお、ナノ秒波長選択スイッチは、光信号が出力ポートから入力されて入力ポートから出力されてもよい。そのため、ナノ秒波長選択スイッチは、異なる通信経路を経由した所定の波長範囲ごとに分離された光信号を波長多重して、1の通信経路を経由する波長範囲の広い光信号にまとめるものであってもよい。ナノ秒波長選択スイッチは、1または複数の入力側AWG(Arrayed Waveguide Grating)と、複数の2×2光スイッチユニット(m≧0、n≧2)と、複数の出力側AWGとを備える。2×2光スイッチユニットは、上記のナノ秒光スイッチアレイ100であることが好ましい。
【0059】
ナノ秒波長選択スイッチ200は、1または複数の入力側AWGと、複数の2×2光スイッチユニットと、複数の出力側AWGとが論理的に直列に配置される。また、入力側AWGの出力ポートと光スイッチユニットの入力ポート、および光スイッチユニットの出力ポートと出力側AWGの入力ポートが所定の数式または規則に従って接続される。このように、AWGと光スイッチユニットとAWGを直列に3段階に配置し、各ポートを所定の数式または規則に従って接続することで、ナノ秒波長選択スイッチを容易に構成することができる。所定の数式または規則については後述する。
【0060】
入力側AWGの出力ポートの一部、光スイッチユニットの入力ポートもしくは出力ポートの一部、または出力側AWGの入力ポートの一部は、他のポートと接続されていないものが存在してもよい。ただし、入力側AWGの出力ポートの全部、光スイッチユニットの入力ポートもしくは出力ポートの全部、または出力側AWGの入力ポートの全部が他のポートと接続されていないAWGまたは光スイッチユニットはないものとする。
【0061】
光スイッチユニットのスイッチング速度はナノ秒オーダーであり、デジタル信号により同期されて制御される。これにより、ナノ秒波長選択スイッチをナノ秒オーダーで動作させることができる。
【0062】
上記のナノ秒波長選択スイッチにおいて、m≦nであり、2個の入力側AWGと、2個の光スイッチユニットと、2個の出力側AWGが接続され、入力側AWGは、1の入力ポートと2の出力ポートを有し、出力側AWGは、2の入力ポートと1の出力ポートを有することが好ましい。これにより、全てのポートを使用した無駄のないナノ秒波長選択スイッチを構成できる。
【0063】
上記の場合、所定の数式または規則は、例えば、次のように定義できる。(x,y,z,l)、および(x,y,z,r)をナノ秒光スイッチアレイと同様に定義したとする。全ての(1,y,z,r)と(2,z,y,l)を接続し、全ての(2,y,z,r)と(3,z,y,l)を接続する。(1,y,z,l)および(3,y,z,r)は、それぞれナノ秒波長選択スイッチの入力ポートおよび出力ポートとなる。
【0064】
このように、入力側AWG、光スイッチユニット、および出力側AWGを所定の数式または規則に従って接続することで、2×2ナノ秒波長選択スイッチを構成できる。なお、上記の所定の数式または規則は一例であり、ナノ秒波長選択スイッチの制御が可能であれば、どのような数式や規則を用いて接続してもよい。例えば、空きポートがある場合、空きポートを考慮した数式や規則であってもよい。
【0065】
図13(a)に示されるように、ナノ秒波長選択スイッチにおいて、m=0であることが好ましい。これにより、単一入力複数出力の双方向タイプのナノ秒波長選択スイッチを構成できる。なお、図13(b)のように、図13(a)のナノ秒波長選択スイッチの入力ポートと出力ポートを入れ替えた複数入力単一出力の双方向タイプのナノ秒波長選択スイッチも、本発明のナノ秒波長選択スイッチに含まれる。
【0066】
図14に示されるように、ナノ秒波長選択スイッチにおいて、2×2光スイッチユニットは、m≧1であることが好ましい。これにより、複数入力複数出力の双方向タイプのナノ秒波長選択スイッチを構成できる。
【0067】
単一入力複数出力の双方向タイプのナノ秒波長選択スイッチの具体例を説明する。図15は、ナノ秒波長選択スイッチの一例を示す模式図である。図15の例では、1の入力側AWGと、256個の1×256光スイッチユニットと、256個の出力側AWGと、が論理的に直列に配置され、入力側AWGの出力ポートと光スイッチユニットの入力ポート、および光スイッチユニットの出力ポートと出力側AWGの入力ポートが所定の数式または規則に従って接続されている。また、入力側AWGは、1の入力ポートと256の出力ポートを有し、出力側AWGは、256の入力ポートと1の出力ポートを有する。
【0068】
複数入力複数出力の双方向タイプのナノ秒波長選択スイッチの具体例を説明する。図16は、ナノ秒波長選択スイッチの一例を示す模式図である。図16の例では、16個の入力側AWGと、64個の16×64光スイッチユニットと、64個の出力側AWGと、が論理的に直列に配置され、入力側AWGの出力ポートと光スイッチユニットの入力ポート、および光スイッチユニットの出力ポートと出力側AWGの入力ポートが所定の数式または規則に従って接続されている。また、入力側AWGは、1の入力ポートと64の出力ポートを有し、出力側AWGは、64の入力ポートと1の出力ポートを有する。
【0069】
(光ネットワークの構成)
以下では、本発明のナノ秒光スイッチアレイまたはナノ秒波長選択スイッチを使用した光ネットワークの構成の例を説明する。図17から図19は、本発明の一実施形態に係る光ネットワークの一例を示す模式図である。図17から図19は、本発明のナノ秒光スイッチアレイ100またはナノ秒波長選択スイッチ200を使用した光ネットワーク300の一例を示している。
【0070】
図17は、自由度1、波長可変の光ネットワーク300の一例である。自由度とは、各ノードからネットワークに接続される入出力ポートの数である。図17のネットワーク300の各ノードの複数の入出力ポートは、1×256ナノ秒波長選択スイッチ210の256の入出力ポートのうちのいくつかと一対一で接続され、1×256ナノ秒波長選択スイッチ210の1の入出力ポートは、65536×65536ナノ秒光スイッチアレイ140の入出力ポートに接続されている。すなわち、各ノードからネットワークに接続される入出力ポートの数は1となる。各ノードは、一定期間通信を確保し他のノードに接続できる。また、その間、波長の帯域幅を変更することが可能である。他のノードとの相互接続は、ナノ秒光スイッチアレイを制御して行なわれているため、ナノ秒光スイッチアレイを制御することで再構成できる。なお、図17から図19において、mおよびnはノードの数を示している。図17では、mおよびnの最大値は、65536である。また、図17から図19では、便宜上、右側のノードと左側のノードを別のノードとしているが、右側のノードと左側のノードで、同一のノードがあってもよい。
【0071】
図18は、自由度3、波長非依存の光ネットワーク300の一例である。図18のネットワーク300には、3の65536×65536ナノ秒光スイッチアレイ140が搭載されている。各ノードは3の入出力ポートを有し、i番目のノードのj番目の入出力ポートは、j番目のナノ秒光スイッチアレイのi番目の入出力ポートに接続されている。各ノードは、最大で3の他のノードに同時に接続できる。3つの入出力ポートを同時に同じノードに接続してもよい。ノード内のポートの波長は柔軟であり、周波数の競合がない限り、同じでも異なっていてもよい。図18では、mおよびnの最大値は、65536である。
【0072】
図19は、自由度d、波長可変の光ネットワーク300の一例である。図19のネットワーク300の各ノードの複数の入出力ポートは、16×64ナノ秒波長選択スイッチ220の64の入出力ポートのうちのいくつかと一対一で接続され、ネットワークに対して16の入出力ポートを有している。そのため、dの最大値は16である。図19のネットワーク300には、d個の65536×65536ナノ秒光スイッチアレイ140が搭載されている。各ノードは最大dの入出力ポートを有し、i番目のノードのj番目の入出力ポートは、j番目のナノ秒光スイッチアレイのi番目の入出力ポートに接続されている。各ノードは、最大でdの他のノードに同時に接続できる。dの入出力ポートを同時に同じノードに接続してもよい。また、その間、波長の帯域幅を変更することも可能である。
【0073】
(コントロールプレーン)
図20は、本発明のナノ秒光スイッチアレイまたはナノ秒波長選択スイッチのコントロールプレーンの概念図である。本発明のナノ秒光スイッチアレイまたはナノ秒波長選択スイッチは、例えば、サーバー上のソフトウェアで実装されたコントローラ、および基板上のハードウェアエージェントによって、同期されたデジタル信号(同期制御信号)を用いて制御される。
【0074】
このように、本発明のナノ秒光スイッチアレイまたはナノ秒波長選択スイッチは、高速光スイッチと同期制御信号を使用して、規模拡張後も高速スイッチング速度を実現できる。
【0075】
(実施例)
第1の方法を用いて、4×4ナノ秒光スイッチアレイ、16×16ナノ秒光スイッチアレイ、256×256ナノ秒光スイッチアレイ、および65536×65536ナノ秒光スイッチアレイを作製した。2×2光スイッチユニットは、ナノ秒オーダーで動作する市販の光スイッチを用いた。これらを光スイッチとして使用したところ、いずれもナノ秒オーダーで動作し、適切に使用できた。
【0076】
作製した4×4ナノ秒光スイッチアレイ、16×16ナノ秒光スイッチアレイ、256×256ナノ秒光スイッチアレイ、および65536×65536ナノ秒光スイッチアレイの挿入損失は、それぞれ約0.7dB、約2.1dB、約6.3dB、および約18.9dBであった。これにより、第1の方法で作製したナノ秒光スイッチアレイは、65536×65536までの挿入損失は概ね許容範囲であることが確かめられた。
【0077】
次に、第2の方法を用いて、4×4ナノ秒光スイッチアレイ、16×16ナノ秒光スイッチアレイ、および65536×65536ナノ秒光スイッチアレイを作製した。これらを光スイッチとして使用したところ、いずれもナノ秒オーダーで動作し、適切に使用できた。
【0078】
作製した4×4ナノ秒光スイッチアレイ、16×16ナノ秒光スイッチアレイ、および65536×65536ナノ秒光スイッチアレイの挿入損失は、それぞれ約0.7dB、約1.9dB、および約8.7dBであった。これにより、第2の方法で作製したナノ秒光スイッチアレイは、第1の方法で作製したナノ秒光スイッチアレイより低損失であることが確かめられた。また、65536×65536までの挿入損失は概ね許容範囲であることが確かめられた。
【0079】
上記以外に、1×4ナノ秒光スイッチアレイ、1×16ナノ秒光スイッチアレイ、1×256ナノ秒光スイッチアレイ、および16×64ナノ秒光スイッチアレイを作製した。16×64ナノ秒光スイッチアレイは、第1の方法で作製した16×16ナノ秒光スイッチアレイを使用した。これらを光スイッチとして使用したところ、いずれもナノ秒オーダーで動作し、適切に使用できた。また、これらの挿入損失は、それぞれ約0.4dB、約0.8dB、約1.6dB、約2.5dBであった。
【0080】
また、1×256ナノ秒波長選択スイッチ、16×64ナノ秒波長選択スイッチを作製した。それぞれ、上記の1×256ナノ秒光スイッチアレイ、および16×64ナノ秒光スイッチアレイを使用した。これらを波長選択スイッチとして使用したところ、いずれもナノ秒オーダーで動作し、適切に使用できた。また、これらの挿入損失は、それぞれ約3.6dB、約3.6dBであった。
【0081】
以上のように、本発明のナノ秒光スイッチアレイおよびナノ秒波長選択スイッチは、高速スイッチング速度を実現している。また、低挿入損失と簡易な構築方法により大規模化が容易である。例えば、65536ノードの相互接続が可能となる。また、設計のモジュール化度が高く、固定接続を必要としないため、様々な光ネットワークに対応が可能であり、様々なトポロジへの適応性と波長資源の収容効率性に優れている。
【符号の説明】
【0082】
100 ナノ秒光スイッチアレイ
110 4×4ナノ秒光スイッチアレイ
115 8×8ナノ秒光スイッチアレイ
120 16×16ナノ秒光スイッチアレイ
130 256×256ナノ秒光スイッチアレイ
140 65536×65536ナノ秒光スイッチアレイ
150 1×4ナノ秒光スイッチアレイ
160 1×16ナノ秒光スイッチアレイ
170 1×256ナノ秒光スイッチアレイ
180 16×64ナノ秒光スイッチアレイ
200 ナノ秒波長選択スイッチ
210 1×256ナノ秒波長選択スイッチ
220 16×64ナノ秒波長選択スイッチ
300 光ネットワークシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20