(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132654
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】熱電発電装置、複合型建築材料、及び、熱電発電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 10/13 20230101AFI20240920BHJP
H10N 10/852 20230101ALI20240920BHJP
H10N 10/853 20230101ALI20240920BHJP
H10N 10/851 20230101ALI20240920BHJP
【FI】
H10N10/13
H10N10/852
H10N10/853
H10N10/851
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043508
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】520415225
【氏名又は名称】株式会社フロスト
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】霜 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 重行
(57)【要約】
【課題】 これまで家屋、ビルディング等の建築物の外気と屋内の温度差による発電モジュールはほとんど利用されていない。また、家屋の中においても料理場、キッチン、風呂場等の温度の高い壁からの熱エネルギーは利用されず無駄に廃棄していた。
【解決手段】 家、ビルディングの外壁、内壁に用いる陶器、磁器、合成樹脂、アクリル、ガラスによる板状のケースに熱電モジュール内蔵させる新しい熱電モジュールを作製した。この熱電モジュールは通常の外装用、内装用のタイルと同じ形状でかつ温度差による発電が可能である。これにより家庭用の電力、ビルディングの電力の一部分を供給できる。これまで利用されてこなかった家屋、ビルディング等の建築物の外気と屋内の温度差による熱エネルギーを電気エネルギーに再生でき、炭酸ガスの削減にも寄与できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱電素子を電気的に接続した熱電モジュールと、
陶器、磁器、合成樹脂、又は、ガラスにより形成された建築材料であり、前記熱電モジュールを収容する収容容器と、
前記収容容器の内部に位置し、前記熱電モジュールを収容する大きさの空間である収容室と
を有する熱電発電装置。
【請求項2】
前記収容容器は、建築材料であり、前記第1の部材及び前記第2の部材を含み、
前記収容室は、前記第1の部材及び前記第2の部材により形成された空間であり、
前記第1の部材及び前記第2の部材は、前記熱電モジュールを収容した状態で、接合されている
請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項3】
前記収容室の内壁面に形成され、当該収容室の内壁面にある微細孔を塞いた表面処理層
をさらに有し、
前記収容室の内部の圧力は、当該収容室の外部の圧力より低い
請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項4】
前記収容容器のうち、前記第1の部材又は前記第2の部材に設けられ、前記収容室の内部と外部とを接続する貫通孔
をさらに有する
請求項3に記載の熱電発電装置。
【請求項5】
複数の熱電素子を電気的に接続した熱電モジュールと、
屋根材、壁材、床材、又は建具であり、前記熱電モジュールを収容する建築材料と
を有する複合型建築材料。
【請求項6】
陶器、磁器、合成樹脂、又は、ガラスにより形成された建築材料であり、熱電モジュールを収容する収容容器のうち、少なくとも熱電モジュールを収容する空間である収容室の壁面に対して、微細孔を塞ぐ表面処理を行う工程と、
表面処理を行った壁面を含む前記収容室により当該熱電モジュールを取り囲み収容する工程と、
前記熱電モジュールを収容した前記収容室の内部の圧力を、当該収容室の外部の圧力より低くする工程と
を有する熱電発電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電発電装置、複合型建築材料、及び、熱電発電装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、れんがの内部に熱発電素子を埋め込んだことを特徴とする耐火発電れんがが開示されている。
【0003】
また、非特許文献1には、熱電発電の原理及びその応用が詳細に述べられている。
また、非特許文献2には、これまでの熱電発電の歴史とその後の発展に関して多数の研究者による記述がなされている。2001年までの熱電発電の状況が詳しく説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-196094号公報
【特許文献2】特開平10-094278号公報
【非特許文献1】上村欣一、西田勲夫 著 「熱電半導体とその応用」 日刊工業新聞社 1988年
【非特許文献2】坂田亮 著 「熱電変換工学―基礎と応用―」 リアライズ社 2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、建築材料としての機能を活かしつつ、効率的に発電することができる熱電発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱電発電装置は、複数の熱電素子を電気的に接続した熱電モジュールと、陶器、磁器、合成樹脂、又は、ガラスにより形成された建築材料であり、前記熱電モジュールを収容する収容容器と、前記収容容器の内部に位置し、前記熱電モジュールを収容する大きさの空間である収容室とを有する。
【0007】
好適には、前記収容容器は、建築材料であり、前記第1の部材及び前記第2の部材を含み、前記収容室は、前記第1の部材及び前記第2の部材により形成された空間であり、前記第1の部材及び前記第2の部材は、前記熱電モジュールを収容した状態で、接合されている。
【0008】
好適には、前記収容室の内壁面に形成され、当該収容室の内壁面にある微細孔を塞いた表面処理層をさらに有し、前記収容室の内部の圧力は、当該収容室の外部の圧力より低い。
【0009】
好適には、前記収容容器のうち、前記第1の部材又は前記第2の部材に設けられ、前記収容室の内部と外部とを接続する貫通孔をさらに有する。
【0010】
また、本発明に係る複合型建築材料は、複数の熱電素子を電気的に接続した熱電モジュールと、屋根材、壁材、床材、又は建具であり、前記熱電モジュールを収容する建築材料とを有する。
【0011】
また、本発明に係る熱電発電装置の製造方法は、陶器、磁器、合成樹脂、又は、ガラスにより形成された建築材料であり、熱電モジュールを収容する収容容器のうち、少なくとも熱電モジュールを収容する空間である収容室の壁面に対して、微細孔を塞ぐ表面処理を行う工程と、表面処理を行った壁面を含む前記収容室により当該熱電モジュールを取り囲み収容する工程と、前記熱電モジュールを収容した前記収容室の内部の圧力を、当該収容室の外部の圧力より低くする工程とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、建築材料としての機能を活かしつつ、効率的に発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態における熱電発電装置1を建築物の壁材として配置した状態を例示する図である。
【
図2】本実施形態における熱電発電装置1を例示する斜視図である。
【
図3】熱電発電装置1の断面を模式的に例示する図である。
【
図4】上部収容ケース100及び下部収容ケース110の詳細な構成を説明する図である。
【
図5】pn接合された熱電素子300を例示する図である。
【
図6】熱電モジュール30の詳細な構成を説明する図である。
【
図7】本実施形態における熱電発電装置1の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
【
図8】本実施形態の熱電発電装置1における変形例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明がなされた背景を説明する。
熱電モジュールは、例えば機械設備等の排熱を利用する観点から、従来から直列配置されたn型熱電素子とp型熱電素子とを一対の平らな基板で挟み込む構造を採用していた。また、例えば高温の流体や気体が流れる丸パイプ等の熱源の排熱を利用する観点から、巻き付けて配置するために、フレキシブルな高分子材料のシートに熱電素子と配線を配置した構造のものも採用されている。
一方で、熱電モジュールは、太陽熱や日常生活内にある温度差を利用する観点でほとんど利用されていない。具体的には、建築物においては屋外と屋内との温度差による熱エネルギー、又は、乗り物においては外気と車内との温度差による熱エネルギーを利用するに適した熱電モジュールはこれまで実用化されていなかった。
そこで、建築物において、屋外と屋内との温度差、又は、キッチン、日常生活内にある温度差を利用するために、熱電発電装置と熱電モジュールとを組み合わせた、熱電発電装置を作製した。この熱電ユニットにより無駄に捨てられていた熱エネルギーを、例えば、家庭設備用の電力、又はビルディング設備用の電力の一部とし利用することが出来る。以下、このような本発明の実施形態による熱電発電装置1を図面を参照して説明する。
【0015】
図1~
図6を参照し、熱電発電装置1の構成を説明する。
図1は、本実施形態における熱電発電装置1を建築物の外壁材として配置した状態を例示する図である。
図1に例示するように、熱電発電装置1は、屋根材、壁材、床材、及び建具の建築材料うち、建築物の外壁材として複数配置される。熱電発電装置1は、配置された複数の熱電発電装置1のうち隣接する2つの熱電発電装置1は、互いに電気的に接続しており、かつ、蓄電池(不図示)とも電気的に接続している。これにより、熱電発電装置1は、発電した電力を蓄電池(不図示)に貯めることができる。
熱電発電装置1は、外装用又は内装用の建築材料と熱電モジュールとを組み合わせた熱電モジュールユニット又は複合型建築材料である。ここで、熱電発電装置1との組み合わせとなる建築材料としては、例えば、直接人目に触れる部分に使用される仕上げ材である。具体的には、建築材料としては、外装材である場合、屋根に取り付ける瓦やスレート等の屋根材、又は、建築物の壁となるサイジングやタイル等の外壁材である。また、建築材料としては、内装材である場合は、合板やタイルなどの壁材、又は、フローリングやタイル等の床材である。また、熱電発電装置1との組み合わせとなる建築材料としては、開口を開閉自在に塞ぐ窓又は戸(建具)である場合は、主として合成樹脂板(アクリル樹脂板)またはガラスである。なお、本例の熱電発電装置1は、外壁材であるサイジングやタイルに熱電モジュールを内蔵した発電装置である。
【0016】
図2は、本実施形態における熱電発電装置1を例示する斜視図である。
図3は、熱電発電装置1の断面を模式的に例示する図である。
図4は、上部収容ケース100及び下部収容ケース110の詳細な構成を説明する図である。
図4(A)は、上部収容ケース100及び下部収容ケース110の詳細構成を例示する斜視図であり、
図4(B)は、上部収容ケース100の凹部1000及び下部収容ケース110の凹部1100の表面を模式的に例示する図である。
図5は、pn接合された熱電素子300を例示する図である。
図2~
図5に例示するように、熱電発電装置1は、収容ケース10、収容室20、熱電モジュール30、封止材40、及び、排気口60を有する。
収容ケース10は、
図2~
図5に例示したように、陶器、磁器、合成樹脂、又は、ガラスにより板状に形成された収容ケースであり、後述する熱電モジュール30を収容する建築材料である。本例の収容ケース10は、外壁材であるタイルである。収容ケース10は、上部収容ケース100と下部収容ケース110とを含む。上部収容ケース100及び下部収容ケース110を組み合わせることで、1つの収容ボックスとなる。上部収容ケース100及び下部収容ケース110は、その内部に熱電モジュール30を含む。収容ケース10は、熱電モジュール30を収容した状態で、接合されている。収容ケース10は、本発明に係る収容容器の一例である。
【0017】
上部収容ケース100は、陶器、磁器、合成樹脂、又は、ガラスにより板状に形成された収容ケースの上部材である。本例の上部収容ケース100は、陶器又は磁器である多孔質体のタイル材である。また、上部収容ケース100は、凹部1000をさらに含む。凹部1000は、後述する熱電モジュール30を収容するための大きさの空間であり、上部収容ケース100の板面の一部において底が平面に窪ませた部分である。なお、凹部1000は、必要ない場合省略することができる。また、上部収容ケース100は、表面処理層120(詳細は後述)をさらに含む。本例の上部収容ケース100は、長方形の形状を成し、その板面に凹部1000を備えた薄板である。上部ケース100が陶器又は磁器の場合は、凹部1000を備える板面の裏面において、釉薬をかけてもよいし釉薬をかけなくてもよい。上部収容ケース100は、本発明に係る第1の部材の一例である。
【0018】
下部収容ケース110は、上部収容ケース100と対向する位置にあり陶器、磁器、合成樹脂、又は、ガラスにより板状に形成され収容ケースの下部材である。本例の下部収容ケース110は、陶器又は磁器である多孔質体のタイル材である。また、下部収容ケース110は、凹部1100をさらに含む。凹部1100は、後述する熱電モジュール30を収容するための大きさの空間であり、下部収容ケース110の板面の一部において底が平面となるよう窪ませた部分である。なお、凹部1100は、必要ない場合省略することができる。本例の下部収容ケース110は、長方形の形状を成し、その板面に凹部1100を含む薄板である。収容ケース110が陶器又は磁器の場合は、凹部1000を備える板面の裏面において、釉薬をかけてもよいし釉薬をかけなくてもよい。
また、下部収容ケース110は、挿通孔1102をさらに含む。挿通孔1102は、下部収容ケース110の長手方向の両端に穿設され、熱電モジュール30から伸びるリード線350を後述する収容室20の内部から外部に通すための孔である。下部収容ケース110は、本発明に係る第2の部材の一例である
【0019】
また、上部収容ケース100及び下部収容ケース110は、表面処理層120をさらに含む。表面処理層120は、陶器、磁器、又は、合成樹脂である場合に、上部収容ケース100の板面及び下部収容ケース110の板面の少なくとも一方に形成され、板面の表面における微細孔又は微細穴を塞いた薄膜である。表面処理層120は、上部収容ケース100の板面及び下部収容ケース110の板面全体であってもよいし、上部収容ケース100の凹部1000及び下部収容ケース110の凹部1100のみであってもよい。なお、本例の表面処理層120は、収容室20を形成する上部タイル100の凹部1000及び下部収容ケース110の凹部1100のみに成膜される。表面処理層120は、後述する収容室20を真空状態に維持することができる被膜である。表面処理層120は、アルミナ(Al2O3)、又は石英ガラス(SiO2)により形成された、厚さ1μm以上5μm以下の被膜である。なお、上部収容ケース100及び下部収容ケース110がガラスの場合は、表面処理層120を省略できる。
【0020】
収容室20は、収容ケース10の内部に位置し、熱電モジュール30を収容する収容空間である。収容室20は、上部収容ケース100及び下部収容ケース110の少なくとも一方の板面を含み、これらが一部の壁面となる。本例の収容室20は、
図2に例示したように、上部収容ケース100及び下部収容ケース110に囲まれた空間であり、具体的には、上部収容ケース100の凹部1000と、下部収容ケース110の凹部1100とにより囲まれた空間であり、後述する封止材により封止される。封止された収容室20には、熱電素子300及び電極板320を含む熱電モジュール30が収容されている。また、収容室20の内側は、大気圧より減圧された状態、不活性ガス若しくは充填材が充填された状態、又は、その両方の状態となっており、本例の収容室20の内側は、大気圧より減圧された真空状態となっている。すなわち、収容室20の内部の圧力は、収容室20の外部の圧力より低くなっている。なお、収容室20は、本発明に係る収容室の一例である。
【0021】
熱電モジュール30は、
図2に例示したように、上部収容ケース100及び下部収容ケース110の板面の間に位置し、熱エネルギー及び電気エネルギーを相互に変換する熱電素子300を複数含む熱電発電モジュールである。熱電モジュール30は、複数の熱電素子300を電気的に接続した状態で保持する。熱電モジュール30は、
図4に例示したように、熱電素子300と、電極板320と、リード線350とを含む。例えば、熱電モジュール30は、一対の基板の間に熱電素子300及び電極板320が位置し、さらに一対の電極板320の間に熱電素子30が位置する一般的な構成をとってもよいし、一対の基板に代替して上部収容ケース100及び下部収容ケース110にしてもよい。また、熱電モジュール30は、既存の熱電モジュールであってもよい。
熱電素子300は、上部収容ケース100及び下部収容ケース110の板面の間に位置し、柱体の形状に形成された素子である。熱電素子300は、熱エネルギー及び電気エネルギーを相互に変換する材料を多角柱の形状に成形した素子であり、例えばBi-Te系熱電材料、Pb-Te系熱電材料、Sn-Se系熱電材料、又は、Si-Ge系熱電材料等の熱電素子である。熱電素子300は、p型熱電素子300A及びn型熱電素子300Bを含む。p型熱電素子300A及びn型熱電素子300Bは、上部電極板320Aにより接合され、電気的に接続される。p型熱電素子300A及びn型熱電素子300Bは、いわゆるπ型構造となっている。図示した複数の熱電素子300を直列接続又は並列接続することでπ型構造をした熱電モジュール30としている。
p型熱電素子300Aは、Si-Ge系熱電材料である場合、ホウ素(B)を添加したSiGe合金であり、Bi-Te系熱電材料である場合、BiTe合金である。
n型熱電素子300Bは、Si-Ge系熱電材料である場合、アンチモン(Sb)を添加したSiGe合金であり、Bi-Te系熱電材料である場合、BiSbTe合金である。
【0022】
電極板320は、
図5に例示したように、導電性のある材料で形成された、金属または透明電極材料の薄板または薄膜である。電極板320は、例えば、金属系ではアルミニウム、銅及びその合金、銀及びその合金、透明電極材料系では酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、酸化スズ等の材料により形成することが出来る。なお、本例の電極板320は、銅の薄板である。電極板320は、上部電極板320A及び下部電極板320Bを含む。
上部電極板320Aは、上部収容ケース100の板面に接触し、隣り合う2つの熱電素子300を互いに電気的に接続する。
下部電極板320Bは、下部収容素子110の板面に接触し、隣り合う2つの熱電素子300を互いに電気的に接続する。また、下部電極板320Bには、収容室20の内部から外部に突出するリード線350と接続する電極板が含まれる。
【0023】
封止材40は、上部収容ケース100と下部収容ケース110とにより形成された収容室20を気密性の高い状態で封止する封止部材である。封止材40は、収容室20に熱電モジュール30を配置した状態で、上部収容ケース100と下部収容ケース110の繋ぎ目を含む周縁を封止する。封止材40は、収容室20内を脱気して真空状態にするため、真空排気に耐える材料、真空を保持できる材料とすることが好ましく、例えばグリース状のシリコーン系オイルである。また、封止材40は、挿通孔1102も併せて塞いでもよい。
【0024】
排気口60は、本発明に係る貫通孔の一例であり、上部収容ケース100又は下部収容ケース110に設けられ、収容室20の内部と外部とを接続する貫通孔である。貫通孔60は、収容室46内の気体を吸引後に、閉止蓋62にて閉止される。
【0025】
図6は、熱電モジュール30の詳細な構成を説明する図である。
図6(A)は、熱電素子300を直列接続した熱電モジュール30を例示する図であり、
図6(B)は、熱電素子300を並列接続した熱電モジュール30を例示する図である。
図6(A)に例示するように、熱電モジュール30は、熱電素子300を1列ずつ直列に接続してもよい。また、
図6(B)に例示するように、熱電モジュール30は、熱電素子300を1列ずつ直列に接続し、直列に接続した熱電素子300の各列を両端で並列に接続してもよい。
【0026】
次に、
図7を参照し、本実施形態における熱電発電装置1の製造方法を説明する。なお、本例の熱電発電装置1における収容ケース10は、陶器又は磁器である場合として以下説明する。
図7は、本実施形態における熱電発電装置1の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
ステップ100(S100)において、熱電発電装置1を製造する製造作業者(以下作業者)は、原料である顆粒状の土をプレスし所定の形状や寸法に成型する。そして、作業者は、成型したタイル生地を高温で焼成することで、上部収容ケース100及び下部収容ケース110を製作する。なお、収容ケース10が合成樹脂(アクリル樹脂板)またはガラスの場合は、所定の寸法に加工すればよい。
【0027】
ステップ102(S102)において、作業者は、熱電モジュール30を収容する空間である収容室20の壁面に対して表面処理を行う。作業者は、上部収容ケース100及び下部収容ケース110の板面に表面処理を行う。本例では上部収容ケース100の凹部1000及び下部収容ケース110の凹部1100に溶射にて表面処理層120を形成する。作業者は、凹部1000及び凹部1100に溶かしたアルミナ又は石英ガラスを吹き付けて、厚さ1μm以上5μm以下の被膜を形成する。なお、作業者は、収容室20の真空状態を維持する観点から、吹き付け作業を複数回行い、表面処理層120を複数層に積層してもよい。
【0028】
ステップ104(S104)において、作業者は、π型構造となるように、上部電極板320A及び下部電極板320Bを介して、p型熱電素子300A及びn型熱電素子300Bを直列に接合すると共に、リード線350を接合し、熱電モジュール30を形成する。作業者は、接合部材により、熱電素子300及び電極板320を電気的に接合し、また同様に電極板320及びリード線350を電気的に接合する。接合部材とは、例えば、はんだ、導電性ペースト(例えば銀ペースト又は銅ペースト)又は導電性接着材であり、本例でははんだである。
【0029】
ステップ106(S106)において、作業者は、下部収容ケース110の凹部1100に熱電モジュール30を設置すると共に、リード線350を挿通孔1102に挿通する。そして、作業者は、上部収容ケース100のうち表面処理層120を形成した面と、下部収容ケース110のうち表面処理層120を形成した面とを対向させた状態で、上部収容ケース100及び下部収容ケース110を封止材40で接合することで、熱電モジュール30を収容する収容空間を形成する。形成された収容空間には、熱電モジュール30が配置される。
【0030】
ステップ108(S108)において、作業者は、熱電モジュール30を収容した収容空間の内部の圧力を、外部の圧力より低くする。具体的には、作業者は、排気口60から熱電モジュール30を収容した収容空間の内部にある空気を脱気し、脱気後に閉止蓋62で閉止することにより、この空間内を真空状態にする(収容室20の形成)。
このように、作業者は、収容ケース10に熱電モジュール30を内蔵した熱電発電装置1を得ることができる。また、収容室20内を真空状態にするため、熱電素子300及び電極板320に圧力がかかるため、熱電素子300及び電極板320の接続がより確実になる。また、収容ケース10内が真空になることにより収容ケース10の熱伝導率が小さくなり保温性が大きくなる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態における熱電発電装置1によれば、熱電モジュールを内蔵した建築材料とすることにより、既存の建築材料と同様な外観であるため、建築材料としての本来の機能を活かしつつ、温度差による発電も効率的に行うことができる。これにより、日常生活内にある温度差を利用して、本来無駄に捨てられていた熱エネルギーを家庭用の電力の一部として利用できる。また、熱電発電装置1は、熱電素子を採用することにより、太陽電池と異なり、夏冬の季節に関わりなく、また夜昼関係なく温度差が発生すれば発電できる。
上記実施形態では、建築物において日常生活内にある温度差を利用する場合を説明したが、これに限定するものではなく、自動車又は列車等の乗り物において車体に配置し、車内と外気との温度差を利用してもよい。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。
【0032】
次に、上記実施例における変形例を説明する。
なお、変形例では、上記実施例と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[変形例]
図8は、本実施形態の熱電発電装置1における変形例1を例示する図である。
上記実施形態の熱電発電装置1では、外壁材の内部に熱電モジュールを内蔵した場合を説明したが、これに限定するものでなく、
図8に例示するように、屋根瓦の内部に熱電モジュールを内蔵してもよい。
図8に例示するように、本例の熱電発電装置1は、住宅の屋根に複数設置される。熱電発電装置1は、収容ケース10、収容室20、及び、熱電モジュール30、封止材40、及び、排気口60を有する。収容ケース10は、例えば屋根材における瓦であり、具体的には陶器瓦、又は、陶板である。収容ケース10は、外観が陶器瓦、又は、陶板の形状となっており、
図4(A)に例示したように、上部収容ケース100と下部収容ケース110とから構成される。
上部収容ケース100は、瓦のうち表面側に位置する部分である。また、下部収容ケース110は、瓦のうち裏面側に位置する部分である。このように、熱電発電装置1は、屋根に配置することで、屋根材としての機能を活かしつつ、屋内と屋外との温度差による発電を効率的に行うことができる。
また、収容ケース10の下部収容ケース110は、固定用貫通孔115をさらに備えてもよい。これにより、熱電発電装置1を釘等の固定部材で屋根に固定することができる。
このように、実施形態及び変形例における熱電発電装置1によれば、建築材料(外壁材又は屋根材)に熱電モジュールを内蔵したことにより、例えば、夏季の時期において、冷房が集中して使用される電力使用ピークとなる時間帯(例えば正午から午後3時)に合わせて、発電時間帯もピークとなるため、電力使用のピークを緩和することが出来る。
【符号の説明】
【0033】
1 熱電発電装置
10 収容ケース
100 上部収容ケース
1000 凹部
110 下部収容ケース
1100 凹部
1102 挿通孔
120 表面処理層
20 収容室
30 熱電モジュール
300 熱電素子
320 電極板
350 リード線
40 封止材
60 排気口
115 固定用貫通孔