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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132656
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】折り畳みナイフ
(51)【国際特許分類】
   B26B 1/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B26B1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043510
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】592140539
【氏名又は名称】中村 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠一
【テーマコード(参考)】
3C061
【Fターム(参考)】
3C061AA03
3C061AA16
3C061BA03
3C061BB11
3C061CC02
(57)【要約】
【課題】折り畳まれた刀身を容易に開くことができる折り畳みナイフを提供する。
【解決手段】折り畳みナイフは、第1側端部に刃部を有し、第2側端部に峰部を有する刀身と、使用者が把持する把持部と、前記刀身の基端部を前記把持部に対して回動可能な状態で連結する連結部と、前記把持部の側面部において開口し、前記刀身が把持部に対して回動されて折り畳まれたときに前記刃部を収容する収容部と、前記刀身に設けられ、前記閉状態のときに前記収容部の外部に配置され、前記使用者が、前記刀身を回動させて前記閉状態を解除するために指を掛けたときに弾性変形する指掛け部と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳みナイフであって、
第1側端部に刃部を有し、第2側端部に峰部を有する刀身と、
使用者が把持する把持部と、
前記刀身の基端部を前記把持部に対して回動可能な状態で連結する連結部と、
前記把持部の側面部において開口し、前記刀身が把持部に対して回動されて折り畳まれたときに前記刃部を収容する収容部と、
前記刀身に設けられ、前記閉状態のときに前記収容部の外部に配置され、前記使用者が、前記刀身を回動させて前記閉状態を解除するために指を掛けて外力を加えたときに、前記外力に反発する方向の弾性力を発生する指掛け部と、
を備える、折り畳みナイフ。
【請求項2】
請求項1記載の折り畳みナイフであって、さらに、
前記刃部が前記収容部に収容され、前記刀身の一部と前記収容部の一部の係合によって前記把持部に対する前記刀身の回動が規制された閉状態を、前記刀身に前記収容部から離れる方向の所定の大きさの外力が加わるまで保持する係合機構を備え、
前記使用者が前記指掛け部に指を掛けることによって前記閉状態が解除される際に前記指掛け部に生じる弾性力は、前記係合機構の係合を解除するための前記所定の外力よりも小さい、折り畳みナイフ。
【請求項3】
請求項2記載の折り畳みナイフであって、
前記指掛け部は、前記使用者の指が掛けられたときに所定の範囲内での姿勢の変動が許容される状態で前記刀身に支持されている操作部と、前記操作部の姿勢が変動したときに、当該変動に反発する方向の弾性力を発生させる弾性部材と、を有する、折り畳みナイフ。
【請求項4】
請求項1から請求項3にいずれか一項に記載の折り畳みナイフであって、
前記指掛け部において前記使用者の指が掛けられる部位は、前記峰部の表面から厚み方向に突出する突起部によって構成されている、折り畳みナイフ。
【請求項5】
請求項1から請求項3にいずれか一項に記載の折り畳みナイフであって、
前記指掛け部において前記使用者の指が掛けられる部位は、前記峰部よりも厚み方向に突出するように、前記第2側端部の端面に連結された端部部材によって構成されている、折り畳みナイフ。
【請求項6】
請求項1から請求項3にいずれか一項に記載の折り畳みナイフであって、
前記収容部は、前記把持部を幅方向に貫通する貫通部を有しており、
前記指掛け部において前記使用者の指が掛けられる部位は、前記基端部の前記第1側端部側の端面において弾性力が生じる状態で、前記刀身の長さ方向に揺動可能なように設けられており、前記閉状態では、前記使用者が指を掛けられるように、前記貫通部を通じて前記把持部から側方に延び出る、折り畳みナイフ。
【請求項7】
請求項1から請求項3にいずれか一項に記載の折り畳みナイフであって、
前記指掛け部は、前記刀身の前記第2側端部側に、前記使用者が指を挿入できる空間を区画する枠部を有し、前記枠部の少なくとも一部が、前記使用者の指が掛けられる部位を構成している、折り畳みナイフ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、折り畳みナイフに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、折り畳みナイフは、使用者が把持するための把持部に向かって刀身を回動させて折り畳むことにより、刀身の刃部を把持部内に収容することができ、携帯性に優れている。例えば、下記の特許文献1には、折り畳みナイフの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-145375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、折り畳みナイフは、刀身が折り畳まれて把持部内に刃部が収容された閉じた状態から、使用者による片手での簡易な操作で容易に解除できるように構成されていることが好ましい。そのため、従来の折り畳みナイフには、折り畳まれた刀身を、把持部内に設けられた弾性部材によって付勢しておき、使用者が、刀身を回動させて開く操作を行ったときに、その弾性部材の付勢力が刀身の回動を補助するように構成されているものがあった。しかしながら、そのような構成では、閉状態にあった折り畳みナイフが、例えば、落下などによって外部から衝撃を与えられたときに、弾性部材の付勢力によって刀身が勝手に回動して開いてしまう可能性もあった。このように、折り畳みナイフを開く操作を容易化することについては依然として改良の余地があった。
【0005】
本開示の技術は、使用者の簡易な操作によって、折り畳まれた刀身を容易に開くことができる折り畳みナイフを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
[第1形態]本開示の技術の一形態は、折り畳みナイフとして提供される。第1形態の折り畳みナイフは、第1側端部に刃部を有し、第2側端部に峰部を有する刀身と、使用者が把持する把持部と、前記刀身の基端部を前記把持部に対して回動可能な状態で連結する連結部と、前記把持部の側面部において開口し、前記刀身が把持部に対して回動されて折り畳まれたときに前記刃部を収容する収容部と、前記刀身に設けられ、前記閉状態のときに前記収容部の外部に配置され、前記使用者が、前記使用者が、前記刀身を回動させて前記閉状態を解除するために指を掛けて外力を加えたときに、前記外力に反発する方向の弾性力を発生する指掛け部と、を備えてよい。
第1形態の折り畳みナイフによれば、指掛け部において発生する弾性力が、刀身の回動を補助する方向に働くため、折り畳みナイフを閉状態から開く操作を、より一層、容易に行うことが可能になる。また、第1実施形態の折り畳みナイフであれば、使用者が指掛け部に指を掛けたときに弾性力が発生する構成であるため、閉状態にあるときに、使用者の意図に反して刀身に弾性力が加わることがないため、不意に刀身が回動して開状態になることを抑制できる。
【0008】
[第2形態]上記第1形態の折り畳みナイフにおいて、前記刃部が前記収容部に収容され、前記刀身の一部と前記収容部の一部の係合によって前記把持部に対する前記刀身の回動が規制された閉状態を、前記刀身に前記収容部から離れる方向の所定の大きさの外力が加わるまで保持する係合機構を備え、前記使用者が前記指掛け部に指を掛けることによって前記閉状態が解除される際に前記指掛け部に生じる弾性力は、前記係合機構の係合を解除するための前記所定の外力よりも小さくてよい。
第2形態の折り畳みナイフによれば、係合機構の係合状態が解除された瞬間に、それまでに指掛け部に生じていた弾性力が、瞬発的に開放されることになるため、その弾性力を刀身の回動に勢いを与える瞬発力として働かせることができる。よって、折り畳みナイフを閉状態から開く動作を、より円滑化できるとともに高速化することができ、使用者が感得する折り畳みナイフの操作感を向上させることもできる。加えて、第2形態の折り畳みナイフによれば、刀身が折り畳まれて把持部の収容部内に刃部が収容された閉状態にあるときには、係合機構によって刀身の回動が規制されるため、刀身が不意に回動して閉状態が解除されることを抑制できる。
【0009】
[第3形態]上記第1形態、または、第2形態に記載の折り畳みナイフにおいて、前記指掛け部は、前記使用者の指が掛けられたときに所定の範囲内での姿勢の変動が許容される状態で前記刀身に支持されている操作部と、前記操作部の姿勢が変動したときに、当該変動に反発する方向の弾性力を発生させる弾性部材と、を有してよい。
第3形態の折り畳みナイフによれば、使用者が指を掛ける操作部と、弾性部材とを用いることによって、指掛け部を簡易に構成することができる。また、指掛け部に弾性部材を用いることにより、閉状態を解除する際に発生する弾性力の調整を容易化することができる。
【0010】
[第4形態]上記第1形態、第2形態、および、第3形態のいずれか一つに記載の折り畳みナイフにおいて、前記指掛け部において前記使用者の指が掛けられる部位は、前記峰部の表面から厚み方向に突出する突起部によって構成されてよい。
第4形態の折り畳みナイフによれば、指掛け部を、使用者が、より一層、指を掛けやすい構成とすることができる。
【0011】
[第5形態]上記第1形態、第2形態、および、第3形態のいずれか一つに記載の折り畳みナイフにおいて、前記指掛け部において前記使用者の指が掛けられる部位は、前記峰部よりも厚み方向に突出するように、前記第2側端部の端面に連結された端部部材によって構成されてよい。
第5形態の折り畳みナイフによれば、刀身の側端面に端部部材を連結することによって、使用者が指を掛ける部位を簡易に形成することができる。
【0012】
[第6形態]上記第1形態、第2形態、および、第3形態のいずれか一つに記載の折り畳みナイフにおいて、前記指掛け部において前記使用者の指が掛けられる部位は、前記基端部の前記第1側端部側の端面において弾性力が生じる状態で、前記刀身の長さ方向に揺動可能なように設けられており、前記閉状態では、前記使用者が指を掛けられるように、前記貫通部を通じて前記把持部から側方に延び出てよい。
第6形態の折り畳みナイフによれば、刀身の第1側端部側に使用者が指を掛ける部位を設けても、閉状態にあるときには、使用者が指を掛けやすい位置に来るように構成できる。
【0013】
[第7形態]上記第1形態、第2形態、および、第3形態のいずれか一つに記載の折り畳みナイフにおいて、前記指掛け部は、前記刀身の前記第2側端部側に、前記使用者が指を挿入できる空間を区画する枠部を有し、前記枠部の少なくとも一部が、前記使用者の指が掛けられる部位を構成してよい。
第7形態の折り畳みナイフによれば、枠部によって、指掛け部を、使用者が、より容易、かつ、確実に指を掛けることができる構成にすることができる。また、枠部を、折り畳みナイフを引っ掛けるためのフックとして機能させることも可能である。
【0014】
本開示の技術は、折り畳みナイフ以外の形態で実現することが可能であり、例えば、折り畳みナイフの開閉方法や、折り畳みナイフの構造、指掛け部を有する刀身、係合機構と収容部を有する把持部、指掛け部の構造等の形態で実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の折り畳みナイフを示す概略平面図。
図2】第1実施形態の折り畳みナイフを示す概略側面図。
図3】ロック機構が設けられている部位を示す概略側面図。
図4】開状態から閉状態に遷移する際の刀身の軌跡を示す概略平面図。
図5】閉状態にある折り畳みナイフを示す概略側面図。
図6】第1実施形態の指掛け部の概略断面図。
図7】刀身の溝部の構成を示す概略断面図。
図8】第2実施形態の折り畳みナイフを示す概略平面図。
図9】第2実施形態の折り畳みナイフの概略正面図。
図10】第3実施形態の折り畳みナイフの開状態を示す概略平面図。
図11】第3実施形態の折り畳みナイフの閉状態を示す概略平面図
図12】第3実施形態の折り畳みナイフの概略断面図。
図13】第4実施形態の折り畳みナイフを示す概略平面図。
図14】第4実施形態の指掛け部を抜き出して示す概略図。
図15】第4実施形態の折り畳みナイフの操作を説明するための概略平面図。
図16】第4実施形態の指掛け部の他の構成例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の折り畳みナイフ10を示す概略平面図である。図2は、第1実施形態の折り畳みナイフ10を示す概略側面図である。図1および図2には、開状態にあるときの折り畳みナイフ10が図示されている。
【0017】
図1および図2には、互いに直交する三方向である、X方向、Y方向、および、Z方向を示す矢印が図示されている。X方向、Y方向、および、Z方向はそれぞれ、折り畳みナイフ10の方向に対応している。X方向は、折り畳みナイフ10の短手方向である幅方向に相当する。Y方向は、折り畳みナイフ10の長手方向である長さ方向に相当する。Z方向は、折り畳みナイフ10の厚み方向に相当する。X方向、Y方向、および、Z方向を示す矢印は、他の参照図においても図示されている。
【0018】
折り畳みナイフ10は、刃部22を有する刀身20と、使用者が把持する把持部30と、を備える。折り畳みナイフ10は、刀身20と把持部30とが長さ方向に一列に並んだ、図1および図2に示す開状態から、刀身20が把持部30に対して折り畳まれて刃部22が把持部30内に収容された閉状態にすることが可能である。折り畳みナイフ10の閉状態およびその開閉操作については後述する。
【0019】
刀身20は、幅方向における一方の端部である第1側端部21に刃部22を有している。刃部22は、刀身20の長さ方向における先端から基端部25の手前にわたって形成されている。刀身20は、第1側端部21の幅方向の反対側に位置する第2側端部23に、刃部22よりも厚みが大きい峰部24を有している。
【0020】
刀身20には、折り畳みナイフ10の閉状態を解除して開状態にする際に使用者が指を掛ける操作をするための指掛け部50が設けられている。指掛け部50は、刀身20の基端部25に寄った位置に設けられている。第1実施形態では、指掛け部50は峰部24に設けられている。指掛け部50の構成の詳細については後述する。
【0021】
図2を参照する。把持部30は、厚み方向に積層される一対の外装部31a,31bを備える。第1外装部31aと第2外装部31bはそれぞれ細長い板状の部材によって構成されている。第1外装部31aと第2外装部31bの先端部の間には、刀身20の基端部25が挟まれている。
【0022】
図1および図2を参照する。刀身20の基端部25が挟まれている把持部30の先端部には、刀身20の基端部25を回動可能な状態で把持部30に連結する連結部33が設けられている。連結部33は、第1外装部31aと第2外装部31bと刀身20の基端部25とを貫通し、刀身20の回動の支点として機能する軸部材34と、軸部材34の端部にねじ止めされる締結部材35と、を有する。第1外装部31aと第2外装部31bと刀身20とは、軸部材34と締結部材35とによって締結される。
【0023】
図2を参照する。把持部30には、連結部33よりも長さ方向の後端側に収容部38が設けられている。収容部38は、把持部30の側面部において側方に開口しており、刀身20が把持部30に対して回動されて折り畳まれたときに、刀身20の刃部22を受け入れて収容する。収容部38は、第1外装部31aと第2外装部31bとの間のスリット状の間隙によって構成されている。
【0024】
把持部30には、ロック機構40が設けられている。ロック機構40は、使用者が、刀身20の「固定状態」と「回動許容状態」とを切り替える操作を行うための部位である。固定状態では、刀身20が、図1および図2に示す開状態の位置に固定される。回動許容状態では、開状態の位置からの刀身20の回動が許容される。
【0025】
第1実施形態では、ロック機構40は、収容部38内に配置された板バネ部材42によって構成される。板バネ部材42は、その長さ方向、幅方向、および、厚み方向がそれぞれ、把持部30の長さ方向、幅方向、および、厚み方向と一致するように設置されている。
【0026】
板バネ部材42の後端部は、第2外装部31bに固定されている。固定状態では、板バネ部材42の先端部は、図2に示すように、第2外装部31bから厚み方向に離間した位置に位置する。この状態では、板バネ部材42の先端部が、開状態の位置にある刀身20の基端部25の後端面に接触することによって、刀身20の回動を規制する。
【0027】
なお、板バネ部材42の先端部は、図1に示すように、刀身20の基端部25の角部が係合する切欠部42cを有していることが好ましい。この構成によれば、板バネ部材42の切欠部42cと刀身20の基端部25の角部との係合によって、固定状態のときの刀身20の把持部30に対する固定性を高めることができる。
【0028】
図3を参照して、ロック機構40の固定状態から回動許容状態への切り替え操作を説明する。図3は、把持部30においてロック機構40が設けられている部位を示す概略側面図である。使用者が指で板バネ部材42の先端部を、矢印Pで示すように、第2外装部31b側に押し下げると、板バネ部材42が厚み方向に弾性変形して、板バネ部材42の先端部と刀身20の基端部25との係合が解除される。これによって、把持部30に対する刀身20の回動が許容される。
【0029】
図1に示されているように、本実施形態の把持部30の第1外装部31aには、幅が局所的に小さくなっている括れ部31tが設けられており、この括れ部31tによって、板バネ部材42の先端部の一部が把持部30の外部に露出する。この構成により、使用者が板バネ部材42の先端部を操作しやすくなっている。また、括れ部31tが設けられていることにより、折り畳みナイフ10が閉状態にされたときに、後に参照する図4に示されているように、指掛け部50の操作部52が把持部30に干渉することが抑制される。
【0030】
図1に示されているように、本実施形態の板バネ部材42の先端部側面には、局所的に幅方向に窪んだ窪み部42rが形成されている。この窪み部42rが形成されていることによって、折り畳みナイフ10が閉状態にされたときに、後に参照する図5および図6に示す指掛け部50の第2の端部54bが板バネ部材42に干渉することが抑制されている。
【0031】
図4および図5を参照して、折り畳みナイフ10が開状態から閉状態に遷移する際のメカニズムを説明する。図4は、図1に示した開状態から閉状態に遷移する際の刀身20の軌跡を示す概略平面図である。図5は、閉状態にある折り畳みナイフ10を示す概略側面図である。
【0032】
図3を参照して説明したように、ロック機構40を固定状態から回動許容状態に切り替えることにより、刀身20を、把持部30に対して回動させることが可能になる。回動許容状態において、図4に示すように、刀身20を、開状態の位置から、把持部30に対してほぼ180°回動させることによって、刀身20の刃部22が収容部38に収容されて、折り畳みナイフ10は、図4および図5に示す閉状態となる。
【0033】
折り畳みナイフ10は、閉状態になったときに、刀身20の一部と把持部30の一部とが互いに係合することによって刀身20の回動を規制する係合機構45が設けられている。以下に説明するように、係合機構45は、刀身20に収容部38から離れる方向、つまり、閉状態の折り畳みナイフ10を開くときの回動方向の所定の大きさの外力が加わるまで、その係合状態を維持して、閉状態を保持するように構成されている。
【0034】
図1図2、および、図3を参照する。本実施形態では、係合機構45は、刀身20の基端部25に形成された凹部46と、ロック機構40を構成する板バネ部材42の先端部に設けられた凸部47とによって構成されている。凹部46と凸部47は互いに篏合可能な対応する形状を有している。
【0035】
本実施形態では、凸部47は、半球状に形成されている。半球状の凸部47は、例えば、ボール状の部材を板バネ部材42の先端部に予め設けられた孔部に嵌め込んで固定することによって作製することができる。
【0036】
図3に示すように、ロック機構40が回動許容状態にされ、図4に示すように、刃部22が収容部38に向かう方向に、刀身20を回動させていくと、刀身20の基端部25は、板バネ部材42の凸部47の頂点を擦りながら回動していく。凸部47を上記のように半球状に構成していれば、このときの刀身20の回動が凸部47の摩擦力によって阻害されることを抑制できる。なお、本実施形態の折り畳みナイフ10では、刀身20の基端部25に、刀身20が回動する際に凸部47が通過する溝部48が形成されている。溝部48の構成および機能については後述する。
【0037】
図4および図5を参照する。図4に示すように、刀身20の基端部25の回動によって、基端部25に設けられている凹部46は、連結部33の周りを移動し、刀身20が閉状態の位置に到達したときに、凸部47と重なる位置に到達する。凸部47は、板バネ部材42の弾性力によるスナップフィットによって、図5に示すように凹部46に嵌まり込んで凹部46に対して係合する。この凹部46と凸部47の係合によって、折り畳みナイフ10が閉状態にあるときに、刀身20が、使用者の操作によらず、勝手に回動してしまうことが抑制される。
【0038】
上述したように、係合機構45は、刀身20に収容部38から離れる方向の所定の外力が加わるまで、その係合状態が保持されるように構成されている。係合機構45の係合状態が解除される所定の外力を、以下、「係合解除外力」とも呼ぶ。係合解除外力の大きさは、例えば、板バネ部材42の弾性係数や、凹部46および凸部47の大きさ、形状、後述する係止壁部48wの壁面の角度等によって調整することができる。
【0039】
図4図5、および、図6を、適宜、参照しながら、指掛け部50の構成と、閉状態の折り畳みナイフ10を開状態にするときの操作とを説明する。図6は、図4に示す6-6切断における指掛け部50の概略断面図である。
【0040】
図6を参照する。上述したように、指掛け部50は、使用者が、折り畳みナイフ10の閉状態を解除するために、指を掛けて刀身を回動させる外力を加えるための構成部である。指掛け部50は、使用者が、閉状態の折り畳みナイフ10を開くために指を掛けて外力を加えたときに、その外力に反発する弾性力を発生するように構成されている。第1実施形態の指掛け部50は、軸状の部材によって構成された操作部52と、操作部52を付勢する弾性部材58と、を備える。
【0041】
操作部52は、刀身20の峰部24を厚み方向に貫通するように設けられた貫通孔24hに挿通されることによって、刀身20に支持されている。貫通孔24hは、一方の開口端部から他方の開口端部にかけて内径が次第に拡大するテーパ状の構成を有している。
【0042】
操作部52は、貫通孔24h内に配置される本体軸部53を有している。本体軸部53は、貫通孔24hの径が小さい方の開口端部よりも小さい径を有している。これによって、本体軸部53と貫通孔24hの内壁面との間には隙間が生じている。操作部52は、本体軸部53の両側に位置する第1と第2の端部54a,54bを有している。2つの端部54a,54bはそれぞれ、本体軸部53よりも大きい径を有している。2つの端部54a,54bの少なくとも一方は、本体軸部53に対して、例えば、ねじ止め等によって連結されている。
【0043】
操作部52の第1の端部54aは、貫通孔24hの径が小さい方の開口端部よりも大きい径を有しており、貫通孔24hの外に配置される。第1の端部54aは、峰部24の表面から刀身20の厚み方向に突出する突起部55を構成する。突起部55は、第1実施形態の指掛け部50において、使用者の指が掛けられる部位に相当する。
【0044】
操作部52の第2の端部54bは、貫通孔24hの径が小さい方の開口端部よりも大きい径を有し、貫通孔24hの径が大きい方の開口端部よりも小さい径を有している。第2の端部54bは、操作部52が貫通孔24hから抜け落ちることを規制する。
【0045】
第1実施形態の弾性部材58は、コイルばねによって構成されており、本体軸部53の周囲に配置されている。弾性部材58を構成するコイルばねの径は、第2の端部54bの径よりも小さい。弾性部材58は、第2の端部54bによって、本体軸部53の周囲に保持される。弾性部材58は、一方の端部が貫通孔24hの内壁面に接し、他方の端部が第2の端部54bに接して付勢する状態で設置される。弾性部材58の弾性力によって、操作部52の設置姿勢が安定化される。
【0046】
図5を参照する。第1実施形態の指掛け部50は、さらに、操作部52の配置姿勢を傾斜させるための土台部56を有している。土台部56は、操作部52の本体軸部53が挿通される中央の孔部を有する環状部材によって構成され、突起部55の下に配置されている。
【0047】
突起部55の底面に面する土台部56の面は、刀身20の峰部24の表面に対して傾斜している。土台部56のその面の傾斜によって、突起部55に使用者の指が掛けられていない状態では、操作部52の中心軸が厚み方向に対して傾斜した状態となる。突起部55は、土台部56によって、刀身20の先端側に向かって倒れるように傾斜した状態となる。折り畳みナイフ10が閉状態にあるときには、突起部55は、把持部30の後端側に倒れるように傾斜した状態となる。突起部55がこのように傾斜していると、使用者が、折り畳みナイフ10を開く操作をするときに、突起部55に指を掛けやすくなる。なお、土台部56は、第1実施形態において、必須の構成ではなく、省略されてもよい。
【0048】
第1実施形態の指掛け部50では、上記のように、操作部52は、その本体軸部53と両端部54a,54bが、貫通孔24hの内壁面に対して隙間が生じる状態で設置されているため、所定の範囲内での姿勢の変動が許容される状態で、刀身20に支持される。また、操作部52の姿勢が変動したときには、弾性部材58が弾性変形して、その変動に反発する方向の弾性力を発生させる。この弾性力が、使用者が閉状態にある折り畳みナイフ10を開状態にする操作をする際に、刀身20の回動を補助する方向に働くため、折り畳みナイフ10の閉状態を解除する操作が容易化される。
【0049】
図4図5、および、図6を参照して、閉状態にある折り畳みナイフ10を開状態にする操作について説明する。
【0050】
折り畳みナイフ10の閉状態を解除するためには、使用者は、例えば、把持部30を把持している手の親指を指掛け部50の突起部55に掛けて、図4の矢印Fが示す、突起部55に刀身20を回動させる方向の外力を加える。これによって、図6の矢印Fが示す方向に傾くように、突起部55の姿勢が変動し、弾性部材58によって、その姿勢の変動に反発する方向、つまり、刀身20を回動させる方向の弾性力が発生する。
【0051】
第1実施形態では、このときの指掛け部50に生じる弾性力は、上述した係合機構45の係合状態の解除条件である係合解除外力の大きさよりも小さい。そのため、使用者の指によって指掛け部50に加えられる力と、指掛け部50の弾性部材58の弾性変形によって生じる弾性力とが合成された合成力が、係合解除外力の大きさを超えるまでは、係合機構45の係合状態が維持される。そして、その合成力が、係合解除外力の大きさを超えた瞬間に、係合機構45の係合状態が解除される。
【0052】
係合機構45の係合状態が解除されると、指掛け部50に生じていた弾性力が瞬発的に開放されることとなり、その弾性力が刀身20を回動させる瞬発力として働く。この瞬発力が、刀身20の開状態の位置への回動を補助するため、使用者は、より小さい力で、折り畳みナイフ10を容易に開くことが可能になる。また、その瞬発力によって、刀身20の回動が高速化される。これにより、折り畳みナイフ10を開く際に使用者が感得する操作感が向上する。
【0053】
図1、および、図7を参照して、折り畳みナイフ10を開く際の刀身20の回動をより高速化するための溝部48について説明する。上述したように、本実施形態の折り畳みナイフ10では、刀身20の基端部25に、溝部48が設けられる。図1では、溝部48が破線で図示されている。溝部48は、刀身20を把持部30に対して回動させたときに係合機構45の凸部47が基端部25上を通過する経路上に形成されている。
【0054】
図7は、溝部48に沿った基端部25の概略断面図である。溝部48は、凹部46の手前に、係止壁部48wを有している。係止壁部48wの溝部48側の壁面は、溝部48の上方ほど傾斜角度が緩やかになる、なだらかな斜面48sを構成している。係止壁部48wの斜面48sとは反対側の壁面は、凹部46の内壁面の一部を構成している。折り畳みナイフ10が閉じられるときには、凸部45は、係止壁部48wを乗り越えて凹部46に嵌ることによって係合する。また、折り畳みナイフ10が開かれるときには、凸部45が係止壁部48wを乗り越えて凹部46から離脱することによって、係合機構45の係合状態が解除される。係合状態が解除された後、凸部45は、溝部48に沿って移動する。
【0055】
溝部48を有することにより、把持部30に対して刀身20が回動するときに、凸部45の摩擦によって生じる抵抗を、溝部48がない場合よりも低減させることができる。よって、折り畳みナイフ10を開くときの刀身20の回動を高速化することができる。なお、溝部48は、本実施形態の折り畳みナイフ10において必須の構成ではなく、省略されてもよい。
【0056】
以上のように、第1実施形態の折り畳みナイフ10によれば、使用者が、指掛け部50に指を掛ける簡易な操作によって、刀身20を回動させて、折り畳みナイフ10の閉状態を解除することができる。また、そのときの指掛け部50に発生する弾性力が、刀身20の回動を補助する方向に働くため、折り畳みナイフ10を開く操作が、さらに容易化される。加えて、第1実施形態の折り畳みナイフ10によれば、刀身20が折り畳まれた閉状態にあるときには、係合機構45によって刀身20の回動が規制されるため、刀身20が不意に回動して閉状態が解除されることを抑制できる。
【0057】
その他に、第1実施形態の折り畳みナイフ10によれば、指掛け部50の構成が簡素であるため、指掛け部50を設けることによる部品点数の増加が抑制されている。第1実施形態の折り畳みナイフ10であれば、使用者が行う開閉操作が、従来の折り畳みナイフの操作と基本的には共通しているため、使用者が馴染みやすい。また、従来の折り畳みナイフに対して、大きなデザイン上の変更を施すことなく、上述したような効果が得られるよう構成することも可能である。
【0058】
2.第2実施形態:
図8および図9を参照して、第2実施形態の折り畳みナイフ10Aの構成を説明する。図8は、開状態にあるときの第2実施形態の折り畳みナイフ10Aを示す概略平面図である。図9は、閉状態にあるときの第2実施形態の折り畳みナイフ10Aの把持部30を先端側から後端側に見たときの概略正面図である。
【0059】
第2実施形態の折り畳みナイフ10Aの構成は、第1実施形態の指掛け部50の代わりに、構成が異なる指掛け部50Aが設けられ、ロック機構40を構成する板バネ部材42の窪み部42rが省略されている点以外は、第1実施形態の折り畳みナイフ10とほぼ同じである。第2実施形態の指掛け部50Aは、刀身20の第2側端部23の端面に取り付けられた端部部材60と、端部部材60と刀身20とを連結する関節部62と、端部部材60を付勢する弾性部材58Aと、を備える。
【0060】
端部部材60は、板状の部材によって構成され、刀身20の基端部25に寄った位置に取り付けられている。端部部材60は、その板面が刀身20の第2側端部23の端面に面する姿勢で、端部が刀身20の峰部24よりも厚み方向に突出する状態で刀身20に連結されている。
【0061】
関節部62は、例えば、ヒンジ機構等によって構成される。端部部材60は、関節部62によって、刀身20に対して、図9に示すように、回動可能な状態で連結されている。折り畳みナイフ10Aの厚み方向における端部部材60の両端はそれぞれ、当該関節部62を支点として、折り畳みナイフ10Aの幅方向に交互に変位することができる。なお、端部部材60の姿勢の変動が許容される方向は、幅方向には限定されない。例えば、指掛け部50Aの端部部材60は、刀身20の前後方向に揺動可能なように、刀身20に連結されていてもよい。
【0062】
折り畳みナイフ10Aでは、端部部材60において、刀身20の峰部24よりも突出している部位が、使用者の指が掛けられる部位である。その部位は、使用者の指が掛けられたときに、所定の範囲内での姿勢の変動が許容される状態で刀身20に支持されている操作部52Aに相当する。
【0063】
弾性部材58Aは、例えば、キックばねによって構成される。弾性部材58Aは、端部部材60の操作部52Aとは反対側の端部を刀身20の幅方向の外側に向けて付勢するように取り付けられている。これにより、弾性部材58Aは、使用者が端部部材60の操作部52Aに指を掛けて、図9の矢印Fが示す、刀身20を開状態の位置に回動させる方向の外力を加えたときに、その外力に反発する弾性力を発生する。
【0064】
なお、他の実施形態では、弾性部材58Aは、キックばね以外のばね部材や弾性部材によって構成されてもよい。また、端部部材60は、ヒンジ機構で構成された関節部62の代わりに、弾性部材によって構成された連結部を介して刀身20の端面に、弾性力が発生する状態で姿勢が変動する状態で連結されていてもよい。他の実施形態では、関節部62や弾性部材58Aが省略され、端部部材60として、厚み方向に弾性変形する端部部材が刀身20の端面に連結されてもよい。
【0065】
折り畳みナイフ10Aでは、第1実施形態の折り畳みナイフ10と同様に、閉状態のときには、係合機構45を構成する凹部46と凸部47の係合によって、刀身20が開く方向に回動することが規制される。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、閉状態が解除される際に弾性部材58Aに発生している弾性力は、係合機構45の係合状態を解除するための係合解除外力よりも小さい。これによって、使用者によって指掛け部50Aに加えられる力と、弾性部材58Aの弾性力とが合成された合成力が、係合解除条外力の大きさを超えた瞬間に、係合機構45の係合状態が解除される。
【0066】
折り畳みナイフ10Aによれば、第1実施形態の折り畳みナイフ10と同様に、閉状態にあるときに、使用者が、例えば、把持部30を把持している手の親指を操作部52Aに掛けて押して、刀身20を回動させることによって、容易に開状態にすることができる。また、折り畳みナイフ10Aを開状態にする操作の際には、第1実施形態で説明したのと同様に、弾性部材58Aの弾性力によって瞬発力が発生し、刀身20の回動が補助される。
【0067】
折り畳みナイフ10Aによれば、刀身20の側端面に端部部材60を連結することによって、使用者が指を掛けやすい形状の指掛け部50Aを簡易に形成することができる。また、この構成の指掛け部50Aであれば、刀身20への後付けが容易であるため、折り畳みナイフ10Aの製造が容易化される。その他に、折り畳みナイフ10Aによれば、第1実施形態で説明したのと同様な種々の効果を奏することができる。
【0068】
3.第3実施形態:
図10図11、および、図12を順に参照して、第3実施形態の折り畳みナイフ10Bの構成を説明する。図10は、開状態にあるときの第3実施形態の折り畳みナイフ10Bを示す概略平面図である。図11は、閉状態にあるときの折り畳みナイフ10Bを示す概略平面図である。図11では、便宜上、開状態のときの刀身20および指掛け部50Bの位置を一点鎖線で図示してある。図12は、閉状態にある折り畳みナイフ10Bの厚み方向の中心を通る切断面における概略断面図である。図12では、便宜上、把持部30は一点鎖線で図示してある。
【0069】
図10および図11を参照する。第3実施形態の折り畳みナイフ10Bの構成は、以下に説明する点以外は、第1実施形態の折り畳みナイフ10の構成とほぼ同じである。折り畳みナイフ10Bは、第1実施形態の指掛け部50の代わりに、構成が異なる指掛け部50Bが設けられており、刀身20およびロック機構40の一部の形状が改変されている。
【0070】
第3実施形態の指掛け部50Bは、刀身20の基端部25における第1側端部21側の端面に設けられている。指掛け部50Bは、板状部材によって構成された操作部52Bを有する。操作部52Bは、例えば、図示されているように、三角形に近い形状を有していてもよい。操作部52Bの形状は、図示したものには限定されない。操作部52Bは、例えば、基端部25の端面から突出している軸状の部材によって構成されてもよい。操作部52Bは、その端面が基端部25の端面に面する状態で連結されている。
【0071】
第3実施形態では、操作部52Bを連結できるように、第1実施形態で説明した刀身20の基端部25の角部が省略されている。また、ロック機構40を構成する板バネ部材42の先端部の切欠部42cが省略され、その代わりに、ロック状態のときに刀身20の基端部25の後端面に面接触する先端面を有している。
【0072】
第3実施形態では、収容部38は、把持部30の先端側に、把持部30を幅方向に貫通する貫通部39を有している。刀身20を開状態の位置から閉状態の位置に回動させると、基端部25に連結されている操作部52Bは、収容部38の貫通部39内を移動し、図11に示すように、その貫通部39を通じて把持部30から側方に延び出る。
【0073】
操作部52Bにおいて、閉状態のときに把持部30から側方に延び出る部位が、使用者が指を掛ける部位に相当する。操作部52Bは、以下に説明するように、使用者の指が掛けられたときに、所定の範囲内での姿勢の変動が許容される状態で、刀身20の基端部25に連結されている。
【0074】
図12を参照する。操作部52Bは、刀身20の長さ方向に揺動する状態で連結されている。上述したように、操作部52Bは、互いの端面同士が向き合う状態で、刀身20の基端部25に連結されている。操作部52Bの端面と刀身20の基端部25の端面とは、互いに面接触するようには構成されておらず、揺動軸66を挟んで揺動方向のいずれか一方に、操作部52Bを揺動可能にするための隙間CLが生じるような面によって構成されている。
【0075】
操作部52Bの内部には、刀身20の基端部25に面する端面において開口する連結用凹部64が形成されている。一方、刀身20の基端部25の端面には、前述の連結用凹部64に挿入される挿入凸部65が形成されている。
【0076】
挿入凸部65が連結用凹部64に挿入された状態では、挿入凸部65の周囲には、操作部52Bの揺動を許容するための空間が形成さる。操作部52Bは、その揺動の支点として機能する揺動軸66が、連結用凹部64に挿入された挿入凸部65とともに操作部52Bを厚み方向に貫くことにより、刀身20の基端部25に連結される。
【0077】
指掛け部50Bは、上述した操作部52Bとともに、使用者が操作部52Bに指を掛けて、操作部52Bの姿勢を変動させたときにその変動に反発する方向に弾性力を発生させる弾性部材58Bを有している。弾性部材58Bは、例えば、コイルばねによって構成される。弾性部材58Bは、操作部52Bと刀身20の内部に設けられた孔部の中に収容され、操作部52Bが、揺動軸66を支点として、刀身20の先端部側から基端部25側に傾斜するように操作部52Bを付勢する。
【0078】
なお、指掛け部50Bの弾性部材58Bは、コイルばねによって構成されていなくてもよい。指掛け部50Bの弾性部材58Bは、例えば、キックばねによって構成されてもよい。弾性部材58Bは、コイルばねやキックばね以外のバネ部材や、その他の弾性部材によって構成されてもよい。
【0079】
図11を参照する。使用者が、例えば、閉状態にある折り畳みナイフ10Bの把持部30を把持している手の人差し指を操作部52Bに掛けて、矢印Fの方向の外力を操作部52Bに加えると、操作部52Bが把持部30の後端部側に傾斜する。これによって、弾性部材58Bが、それに反発する弾性力を発生させる。
【0080】
第3実施形態においても、第1実施形態および第2実施形態と同様に、閉状態が解除される際に弾性部材58Bに発生している弾性力は、係合機構45の係合解除外力よりも小さい。そのため、使用者によって加えられる力と、弾性部材58Bの弾性力の合成力が、係合解除外力の大きさを超えたときに、係合機構45の係合状態が解除される。
【0081】
係合機構45の係合状態が解除されると、刀身20の開状態の位置への回動が許容され、折り畳みナイフ10Bが開状態のときの位置へと回動する。このとき、弾性部材58Bの弾性力によって発生する瞬発力は、第1実施形態および第2実施形態で説明したのと同様に、刀身20の回動を補助する方向に働く。
【0082】
以上のように、第3実施形態の折り畳みナイフ10Bによれば、指掛け部50Bを、刀身20の第1側端部21側に設けることができる。また、折り畳みナイフ10Bが閉状態にあるときに、指掛け部50Bの操作部52Bを、使用者が指を掛けやすい位置に配置させることができる。その他に、第3実施形態の折り畳みナイフ10Bによれば、第1実施形態や第2実施形態で説明したのと同様な種々の作用効果を奏することができる。
【0083】
4.第4実施形態:
図13図14、および、図15を参照して、第4実施形態の折り畳みナイフ10Cの構成を説明する。図13は、開状態にある第4実施形態の折り畳みナイフ10Cを示す概略平面図である。図14は、図13に示されている第4実施形態の指掛け部50Cを抜き出して示す概略図である。図15は、第4実施形態の折り畳みナイフ10Cを開状態から閉状態にするときの操作を説明するための概略平面図である。
【0084】
図13を参照する。第4実施形態の折り畳みナイフ10Cは、構成が異なる指掛け部50C、および、ロック機構40Cを備えている点以外は、第1実施形態の折り畳みナイフ10Cの構成とほぼ同じである。
【0085】
図13、および、図14を参照する。第4実施形態の指掛け部50Cは、刀身20の第2側端部23側における基端部25に寄った位置に設けられている。指掛け部50Cは、使用者が指を挿入できる空間を区画する枠部68を有している。
【0086】
枠部68は、例えば、図13に示すように、指が挿入される円形状の孔部を構成するように湾曲したフレームによって形成される。指が挿入される空間は、枠部68によって完全に囲まれていなくてもよく、枠部68の一部が途切れていてもよい。枠部68の形状は、特に限定されることはなく、例えば、直棒状の部位を組み合わせた構成を有していてもよい。なお、枠部68は、折り畳みナイフ10Cを引っ掛けて係止させるためのフックとして機能させることもできる。
【0087】
指掛け部50Cの枠部68には、使用者が指を挿入する空間に面する内側に操作部52Cが設けられている。図示は省略するが、枠部68には、厚み方向に操作部52Cを配置するためのスリットが設けられている。操作部52Cは、例えば、図示されているように、トリガー状の形状で構成される。
【0088】
操作部52Cは、一部が、使用者が指を挿入する空間に露出しており、一部が枠部68の内部に収容されている。操作部52Cは、操作部52Cの端部を厚み方向に貫通する貫通軸69を支点として回動可能な状態で刀身20に連結されている。操作部52Cは、枠部68の外に配置されている部位に使用者の指が掛けられたときに、貫通軸69を支点として、枠部68のスリットの奥まった位置に向かって回動するように構成されている。
【0089】
指掛け部50Cは、上述した操作部52Cの使用者の指が掛けられたときの回動に反発する弾性力を発生させる弾性部材58Cを有している。弾性部材58Cは、例えば、キックばねによって構成される。弾性部材58Cは、枠部68の内部に配置されており、貫通軸69の周りに巻き回されている。弾性部材58Cは、キックばね以外のばね部材によって構成されてもよいし、他の弾性部材によって構成されてもよい。
【0090】
図13を参照する。第4実施形態のロック機構40Cは、把持部30を構成する第1外装部31aと第2外装部31bとに挟まれた、細長い板状のレバー部材70によって構成されている。レバー部材70は、長さ方向と、幅方向と、厚み方向とが、把持部30の長さ方向と幅方向と厚み方向とに一致するように配置されている。レバー部材70は、把持部30の側端部に寄った位置に設置されており、その側端部の一部が把持部30から露出している。
【0091】
レバー部材70は、把持部30に対して、固定軸71を支点として回動可能に取り付けられている。固定軸71は、その両端がそれぞれ第1外装部31aおよび第2外装部31bに固定され、レバー部材70を厚み方向に貫通している。
【0092】
レバー部材70の固定軸71より後端側の部位は、把持部30の内部に配置された付勢部材72によって、幅方向の外側に向かって付勢されている。レバー部材70の固定軸71より先端側の部位は、後端側の部位が付勢部材72によって付勢されていることによって、把持部30内に設けられている係止軸73に係止される。
【0093】
レバー部材70の先端部には角部が設けられている。ロック状態では、レバー部材70の当該角部が刀身20の基端部25に設けられた角部に嵌って係合することにより、開状態の位置からの刀身20の回動を規制する。
【0094】
図15を参照する。使用者は、把持部30の側端部から露出しているレバー部材70の部位を、付勢部材72の付勢力を超える力で押すことにより、レバー部材70を、固定軸71を支点として回動させることができる。この回動によって、レバー部材70の角部と刀身20の角部との係合が解除され、刀身20の回動が許容される回動許容状態になる。
【0095】
ロック機構40Cが回動許容状態にされているときに、刀身20を開状態の位置から回動させることによって、折り畳みナイフ10Cを閉状態にすることができる。なお、折り畳みナイフ10Cが閉状態になったときには、レバー部材70は、付勢部材72の付勢力によって、ロック状態のときと同じ位置に戻る。
【0096】
折り畳みナイフ10Cには、第1実施形態で説明したのと同様な係合機構45が設けられている。折り畳みナイフ10Cの閉状態では、係合機構45を構成する凹部46と凸部47の係合によって、刀身20に係合解除外力が加えられるまで、刀身20の回動が規制される。
【0097】
閉状態にある折り畳みナイフ10Cを開くときには、使用者は、例えば、把持部30を把持している手の親指を枠部68が区画している空間内に挿入し、操作部52Cにその親指の背を当てて、操作部52に矢印Fの方向の外力を加える。これによって、操作部52が貫通軸69を支点として回動し、弾性部材58Cが弾性変形して弾性力が発生する。
【0098】
第4実施形態においても、第1実施形態、第2実施形態、および、第3実施形態と同様に、閉状態が解除される際に弾性部材58Cに発生する弾性力は、係合機構45の係合解除外力よりも小さい。そのため、使用者の指によって加えられる力と、弾性部材58 Cの弾性力の合成力が、係合機構45の係合解除外力の大きさを超えたときに、係合機構45の係合状態が解除される。
【0099】
係合機構45の係合状態が解除されると、刀身20が開状態の位置への回動を開始する。このとき、弾性部材58Cの弾性力によって発生する瞬発力は、第1実施形態、第2実施形態、および、第3実施形態で説明したのと同様に、刀身20の回動を補助する方向に働く。
【0100】
図16は、第4実施形態の指掛け部50Cの他の構成例である指掛け部50Caを示す概略図である。この構成例の指掛け部50Caでは、レバー部材70が省略されている。指掛け部50Caの枠部68aは、操作部としても機能し、弾性部材58Cによって弾性力が発生する状態で、刀身20との連結部に設けられた貫通軸69を支点として回動するように構成されている。このような構成であっても、上述した指掛け部50Cと同様な効果を奏することができる。
【0101】
以上のように、第4実施形態の折り畳みナイフ10Cによれば、指掛け部50Cが枠部68を有することによって、使用者が、指掛け部50Cに、より容易、かつ、確実に指を掛けやすくすることができる。その他に、第4実施形態の折り畳みナイフ10Cによれば、第1実施形態、第2実施形態、および、第3実施形態で説明したのと同様な種々の作用効果を奏することができる。
【0102】
5.他の実施形態:
本開示の技術は、上述の実施形態の構成に限定されることはなく、例えば、以下のように改変することが可能である。以下に説明する他の実施形態はいずれも、上記の各実施形態と同様に、本開示の技術を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0103】
(1)他の実施形態1:
指掛け部は、上記の各実施形態で説明したのとは異なる構成によって、使用者が指を掛けたときに弾性力を発生するように構成されていてもよい。指掛け部は、例えば、使用者が指を掛ける部位がゴム等の弾性部材によって構成されていることによって、使用者が指を掛けたときに弾性変形して弾性力を発生するように構成されていてもよい。
【0104】
(2)他の実施形態2:
指掛け部は、使用者が指を掛けたときに弾性部材の弾性変形によって弾性力が生じさせる構成に代えて、使用者が指を掛けたときに磁力による引力や反発力が弾性力として発生する構成が採用されてもよい。
【0105】
(3)他の実施形態3:
上記の各実施形態において、閉状態が解除される際に、使用者が指掛け部50,50A,50B,50C,50Caに指を掛けることによって発生する弾性力は、係合機構45の係合状態が解除される係合解除外力より大きくてもよい。このような構成であっても、指掛け部50,50A,50B,50C,50Caで発生する弾性力が、刀身20の回動を補助する方向に働くため、閉状態の折り畳みナイフ10,10A,10B,10Cを開く操作が容易化される。
【0106】
(4)他の実施形態4:
上記各実施形態の折り畳みナイフ10,10A,10B,10Cが有するロック機構40,40Cや係合機構45は、上記の各実施形態で説明した構成に限定されることはない。例えば、第3実施形態のロック機構40Cが他の実施形態の折り畳みナイフ10,10A,10B,10Cに適用されてもよいし、第3実施形態の折り畳みナイフ10Cに、他の実施形態のロック機構40が適用されてもよい。上記各実施形態の折り畳みナイフ10,10A,10B,10Cにおいて、係合機構45は、例えば、凹部46と凸部47とが入れ替えられた構成に改変されてもよいし、刀身と把持部のそれぞれに設けられた段差が係合し合う構成に改変されてもよい。
【0107】
(5)他の実施形態5:
上記の各実施形態および上記の他の実施形態で説明した指掛け部の構成は、折り畳みナイフ以外の折り畳み機構を有する様々な器具に適用されてもよい。例えば、折り畳み機構を有するスプーンやフォークの食事用の器具、筆記用具や定規等の文房具、くし等の化粧用の器具に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0108】
10,10A,10B,10C…折り畳みナイフ、20…刀身、21…第1側端部、22…刃部、23…第2側端部、24…峰部、24h…貫通孔、25…基端部、30…把持部、31a,31b…外装部、31t…括れ部、33…連結部、34…軸部材、35…締結部材、38…収容部、39…貫通部、40,40C…ロック機構、42…板バネ部材、42c…切欠部、42r…窪み部、45…係合機構、46…凹部、47…凸部、48…溝部、48s…斜面、48w…係止壁部、50,50A,50B,50C,50Ca…指掛け部、52,52A,52B,52C…操作部、53…本体軸部、54a,54b…端部、55…突起部、56…土台部、58,58A,58B,58C…弾性部材、60…端部部材、62…関節部、64…連結用凹部、65…挿入凸部、66…揺動軸、68,68a…枠部、69…貫通軸、70…レバー部材、71…固定軸、72…付勢部材、73…係止軸、CL…隙間

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