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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132657
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】保全支援装置及び保全支援方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G21C17/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043511
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】河野 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 雪郎
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA20
2G075CA02
2G075DA20
2G075EA09
2G075FA20
2G075FC03
2G075GA09
(57)【要約】
【課題】原子力プラントの保全業務を適切に支援する保全支援装置等を提供する。
【解決手段】保全支援装置100は、原子力プラントの系統における要素機能の重要性、及び、要素機能を実現する機器の必要性に基づいて、原子力プラントの機器を複数のクラスに分類し、さらに、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点で複数のクラスを細分化した結果に基づいて、原子力プラントの保全業務を変更する際の候補を出力部40に表示させる処理部20を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの系統における要素機能の重要性、及び、前記要素機能を実現する機器の必要性に基づいて、前記原子力プラントの機器を複数のクラスに分類し、さらに、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点で複数の前記クラスを細分化した結果に基づいて、前記原子力プラントの保全業務を変更する際の候補を表示装置に表示させる処理部を備える、保全支援装置。
【請求項2】
前記処理部は、複数の前記クラスのうちの所定のクラスを細分化する際、前記所定のクラスに属する機器又は部品に対して、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点で点数を付け、当該点数に基づいて、前記所定のクラスを細分化すること
を特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項3】
前記処理部は、複数の前記クラスの中で相対的に重要度が低いクラスを細分化の対象とすること
を特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項4】
前記処理部は、複数の前記クラスの中で相対的に重要度が高いクラスを細分化の対象から外すこと
を特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記保全業務の変更として、前記候補となる機器の点検周期を現状よりも長くする際、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点から当該機器の安全性及び品質が確保される範囲内で、所定の基準に対する変更後の点検周期のマージンを小さくすること
を特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項6】
前記処理部は、
前記候補となる機器又は部品と同種類のものが他の原子力プラントにおいて共通の条件下で用いられている場合、前記同種類のものの点検履歴、故障履歴、及び不具合履歴の情報を前記他の原子力プラントから取得し、
前記保全業務の変更として、前記候補となる機器の点検周期を現状よりも長くする際、当該機器が属する前記クラスの重要度が低いほど、所定の基準に対する変更後の点検周期のマージンが小さくなるようにし、
前記所定の基準は、前記情報に基づいて設定されること
を特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記保全業務の変更として、前記候補となる機器の保全業務の内容を、現状の点検から所定のセンサデータに基づく監視に変更すること
を特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項8】
前記保全業務の変更として、前記候補となる機器の点検周期を現状よりも長くする際、所定のクリティカル部品の点検履歴、故障履歴、及び不具合履歴の情報に基づいて、変更後の点検周期を設定し、
前記クリティカル部品は、当該機器に含まれる複数の部品の中で現状の点検周期が最も短い部品であること
を特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項9】
原子力プラントの系統における要素機能の重要性、及び、前記要素機能を実現する機器の必要性に基づいて、前記原子力プラントの機器を複数のクラスに分類し、さらに、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点で複数の前記クラスを細分化した結果に基づいて、前記原子力プラントの保全業務を変更する際の候補を表示装置に表示させる処理を含む、保全支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保全支援装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの保全業務を支援するための技術として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。すなわち、特許文献1には、「処理部は、各グループに含まれている各工事・点検項目候補の減少費用を加算した総減少費用と、各グループに含まれている工事・点検項目候補の増加費用の最大値である最大増加費用を比較する」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-355206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、工事・点検周期の延長の可否がコスト削減の観点に基づいて判定されるが、信頼性を確保する上で改善の余地がある。例えば、保全業務の対象が原子力プラントである場合には、信頼性の確保が特に重視される傾向がある。
【0005】
そこで、本開示は、原子力プラントの保全業務を適切に支援する保全支援装置等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本開示に係る保全支援装置は、原子力プラントの系統における要素機能の重要性、及び、前記要素機能を実現する機器の必要性に基づいて、前記原子力プラントの機器を複数のクラスに分類し、さらに、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点で複数の前記クラスを細分化した結果に基づいて、前記原子力プラントの保全業務を変更する際の候補を表示装置に表示させる処理部を備えることとした。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、原子力プラントの保全業務を適切に支援する保全支援装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る保全支援装置を含む保全支援システムの構成図である。
図2】実施形態に係る保全支援装置で用いられる構成管理DBの例を示す説明図である。
図3】実施形態に係る保全支援装置で用いられる保全活動・監視項目DBの例を示す説明図である。
図4】実施形態に係る保全支援装置で用いられるセンシングDBの例を示す説明図である。
図5】実施形態に係る保全支援装置で用いられるFMEA DBの例を示す説明図である。
図6】実施形態に係る保全支援装置で用いられるフィールドデータDBの例を示す説明図である。
図7】実施形態に係る保全支援装置で用いられる資材発注DBの例を示す説明図である。
図8】実施形態に係る保全支援装置の処理を示すフローチャートである。
図9】実施形態に係る保全支援装置の系統・機能・コンポーネントの対応テーブルの例を示す説明図である。
図10】実施形態に係る保全支援装置で用いられるクラス分類判定テーブルの説明図である。
図11】実施形態に係る保全支援装置の評価部による点数付けの例を示す説明図である。
図12】実施形態に係る保全支援装置の処理の詳細を示すフローチャートである。
図13】実施形態に係る保全支援システムにおけるクラスAの候補リストの例を示す説明図である。
図14】実施形態に係る保全支援システムにおけるクラスBの候補リストの例を示す説明図である。
図15】実施形態に係る保全支援システムにおけるクラスCの候補リストの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪実施形態≫
<保全支援システムの構成>
図1は、実施形態に係る保全支援装置100を含む保全支援システム300の構成図である。
保全支援システム300は、所定の設備の保全業務(点検や監視やメンテナンス)を支援するためのシステムである。以下では一例として、保全業務の対象となる設備が原子力プラントである場合について説明するが、これに限定されるものではない。すなわち、保全業務の対象となる設備は、例えば、化学プラントや製造プラントや水処理プラントであってもよいし、また、送配電設備や通信設備、医療設備、鉄道設備であってもよい。図1に示すように、保全支援システム300は、保全支援装置100と、データベース装置200と、を含んで構成されている。
【0010】
保全支援装置100は、原子力プラント等の保全業務を支援する装置である。このような原子力プラントとして、例えば、原子力発電設備や原子力研究設備が挙げられる。保全支援装置100は、保全業務の対象となる機器を選定したり、機器の点検周期の変更をユーザに提案したりする機能を有している。このような保全支援装置100は、一台のコンピュータで構成されていてもよいし、また、相互に通信可能な複数台のコンピュータ(例えば、サーバ)で構成されていてもよい。図1に示すように、保全支援装置100は、ネットワークN1を介して、データベース装置200に接続されている。
【0011】
図1に示すように、保全支援装置100は、記憶部10と、処理部20と、入力部30と、出力部40(表示装置)と、通信部50と、を備えている。記憶部10は、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)やレジスタ等の揮発性メモリと、を含んで構成されている。記憶部10には、処理部20が実行するプログラムが予め格納されている他、処理部20で用いられる所定のデータが格納される。
【0012】
処理部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部10に格納されたプログラムやデータを読み出して、所定の処理を実行する。入力部30は、ユーザの操作に基づいて、所定のデータを入力するものである。このような入力部30として、キーボードやマウスが用いられる。出力部40は、処理部20による処理の結果を出力する。このような出力部40として、例えば、ディスプレイが用いられる。通信部50は、データベース装置200との間でネットワークN1を介して、所定に通信を行う。
【0013】
図1に示すように、記憶部10には、系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11と、クラス分類判定テーブル12と、保全活動抽出情報13と、センシング抽出情報14と、FMEA抽出情報15と、フィールドデータ抽出情報16と、評価情報17と、候補リスト18と、が格納されている。なお、記憶部10の各情報については後記する。
【0014】
図1に示すように、処理部20は、機器関係抽出部21と、クラス分類部22と、評価部23と、抽出・比較部24と、候補出力部25と、を備えている。なお、処理部20の各構成については後記する。
【0015】
データベース装置200は、保全支援装置100の処理に用いられる複数のデータベースが格納された外部記憶装置である。このようなデータベース装置200として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)が用いられる。図1に示すように、データベース装置200には、構成管理DB210と、保全活動・監視項目DB220と、センシングDB230と、FMEA DB240と、フィールドデータDB250と、資材発注DB260と、が格納されている。
【0016】
なお、「DB」はデータベースの略称である。また、FMEA DB240における「FMEA」とは、Failure Mode and Effect Analysis(故障モード影響解析)の略称である。「FMEA」は、潜在的な故障に関する体系的な分析手法であり、故障や不具合の発生を抑制するために用いられる。以下では、まず、データベース装置200に格納されたそれぞれのデータベースについて順に説明する。
【0017】
図2は、構成管理DB210の例を示す説明図である。
構成管理DB210は、原子力プラントの設計情報や各機器の構成を示すデータが予め格納されたデータベースである。図2の例では、構成管理DB210は、「カテゴリ」及び「構成データ」の項目を含んで構成されている。「カテゴリ」として、設計要件、施設構成情報、及び物理構成が設けられている。例えば、「カテゴリ」の一つである設計要件には、法規制、設計基準図書、計算・解析結果といった「構成データ」が含まれている。
【0018】
図3は、保全活動・監視項目DB220の例を示す説明図である。
保全活動・監視項目DB220は、原子力プラントの保全業務に関するデータが格納されたデータベースである。図3の例では、保全業務として、「保全活動」と「監視項目」とが設けられている。なお、「保全活動」とは、非破壊検査や分解点検のように、人の作業負担が比較的大きな点検である。また、「監視項目」とは、外観点検やセンサデータに基づく分析のように、人の作業負担が比較的小さな監視の項目である。
【0019】
図3の例では、「保全活動」や「監視項目」について、その内容や頻度の他、対象となる劣化事象を示す情報が保全活動・監視項目DB220に格納されている。例えば、作業員が所定の機器の非破壊検査を行う際の頻度や、非破壊検査で見つかる可能性がある腐食等の劣化事象が保全活動・監視項目DB220に予め格納されている。
【0020】
図4は、センシングDB230の例を示す説明図である。
センシングDB230は、原子力プラントの機器について、故障部位や劣化メカニズムの他、劣化の要因、測定対象、測定方法、センサ設置場所といったデータが機器名に対応付けられたデータベースである。図4の例では、「○○弁」のシール部の劣化メカニズムとして、パッキン劣化が挙げられている。
【0021】
図5は、FMEA DB240の例を示す説明図である。
FMEA DB240は、原子力プラントの機器の劣化モードの他、不具合の発生を防止するために有効な保全活動・監視項目といったデータが機器に対応付けられたデータベースである。なお、劣化モードには、故障部位や劣化メカニズムの他、劣化の影響、劣化の重大度、劣化の頻度といった情報が含まれている。図5の例では、「◇◇ポンプ」のシャフトが腐食で故障した場合、その劣化の影響として振動が増大することや、劣化の重大度が重いことや、劣化の頻度は低いことが示されている。このような劣化モードの発生を防ぐために有効な保全活動・監視項目として、振動計測や分解点検が挙げられている。
【0022】
図6は、フィールドデータDB250の例を示す説明図である。
フィールドデータDB250は、原子力プラントにおける実際の保全業務(点検、監視、メンテナンス等)の履歴が記録されたデータベースである。つまり、保全活動・監視項目DB220(図3参照)で指定された所定の保全活動や監視項目が実際に行われた場合の結果を示すデータが、フィールドデータDB250に格納されている。図6の例では、非破壊検査や分解点検といった保全活動に対応付けて、保全活動の頻度や結果が格納されている。また、潤滑油分析や外観点検といった監視項目に対応付けて、監視の頻度や結果が格納されている。また、フィールドデータDB250には、設備、機器、部品の故障実績や不具合実績も含まれている。
【0023】
図7は、資材発注DB260の例を示す説明図である。
資材発注DB260は、原子力プラントの機器や部品について、交換用の在庫数量や単価の他、次回の納入予定日や、他のプラントの在庫数量といったデータが格納されたデータベースである。図7の例では、機器ごとの在庫数量や単価といったデータを示しているが、機器を構成する部品(例えば、パッキンや軸受)ごとにデータが作成されるようにしてもよい。このような資材発注DB260は、機器や部品の在庫管理や発注の際に用いられる他、保全支援装置100(図1参照)が保全業務の変更をユーザに提案する際にも用いられる。
【0024】
再び、図1に戻って説明を続ける。
処理部20に含まれる機器関係抽出部21は、原子力プラントの系統の他、系統の要素機能や、系統を構成する機器の関係を抽出する。ここで、「系統」とは、冷却水や電気や機械的連結といった所定の観点に基づいて抽出される、ひとまとまりの機器や部材のことを意味している。このような「系統」の例として、冷却系統や電気系統の他、機械系統や制御系統といったものが挙げられる。
【0025】
機器関係抽出部21は、所定の系統の「要素機能」を抽出する機能を有している。ここで、「要素機能」とは、所定の系統における複数の機能のうちの個々の機能のことを意味している。例えば、冷却系統は、冷却機能の他、耐圧機能や流量制御機能といった複数の「要素機能」を有している。このように、1つの系統が複数の要素機能を有していることが多い。
【0026】
機器関係抽出部21は、原子力プラントを構成している機器の情報を構成管理DB210(図2も参照)から読み出して、系統の他、系統の要素機能や、系統を構成する機器の関係を抽出し、系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11を生成する。機器関係抽出部21によって生成された系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11は、記憶部10に格納される。
【0027】
クラス分類部22は、原子力プラントの機器を複数のクラスに分類する機能を有している。本実施形態では、系統の「要素機能」ごとの重要性と、その「要素機能」を実現するための機器の必要性と、に基づいて、保全業務の重要度が高い方向から順にクラスA、クラスB、及びクラスCの3つに分類するようにしている。詳細については後記するが、クラス分類部22は、クラス分類判定テーブル12(図10参照)の情報に基づいて、原子力プラントの各機器をクラスA、クラスB、クラスCのいずれかに分類する。
【0028】
評価部23は、クラス分類部22の分類結果のうち、クラスBやクラスCに含まれる機器(又はその部品)について、S(Safety:安全性)>Q(Quality:品質)>D(Deadline:納期)>C(Cost:コスト)の観点で点数付けを行う。つまり、評価部23は、安全性(S)を最も重視し、さらに、品質(Q)、納期(D)、及びコスト(C)の順で重視するという考え方に基づいて、機器や部品に点数を付ける。この点数は、保全業務の重要度を示す指標として用いられる。評価部23による点数付けの結果は、評価情報17として記憶部10に格納される。
【0029】
クラス分類部22は、例えば、クラスBに属する機器のうち、前記した点数が所定値以上であるものをクラスBに分類する一方、点数が所定値未満であるものをクラスBに分類する。同様にして、クラス分類部22は、クラスCに含まれる機器のうち、前記した点数が所定値以上であるものをクラスCに分類する一方、点数が所定値未満であるものをクラスCに分類する。
【0030】
抽出・比較部24は、クラスA、クラスB、クラスB、クラスC、クラスCのそれぞれについて、所定のデータベースの情報と比較し、保全活動や監視項目の適正化の候補を候補リスト18として抽出する。なお、クラスAについては、原子力発電所の信頼性を担保するための重要な機器であるため、S(Safety:安全性)>Q(Quality:品質)>D(Deadline:納期)>C(Cost:コスト)のうち、S(安全性)を非常に重視した評価となる。また、保全活動や監視項目の「適正化」とは、原子力プラントの信頼性を確保しつつ、保全活動や監視項目の無駄を削減するように、点検周期を長くしたり、保全活動や監視項目の内容を変更したりすること意味している。抽出・比較部24によって抽出された候補リスト18は、記憶部10に格納される。
候補出力部25は、変更すべき保全活動・監視項目の候補を候補リスト18として出力部40に表示させる。
【0031】
記憶部10に格納されている系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11は、前記したように、系統の他、系統の要素機能や、系統を構成する機器の関係を示すデータテーブルである。
クラス分類判定テーブル12は、原子力プラントの機器がクラス分類部22によって複数のクラスに分類される際に用いられるデータテーブルである。
保全活動抽出情報13は、保全活動・監視項目DB220から処理部20によって所定に抽出された情報である。センシング抽出情報14は、センシングDB230から所定に抽出された情報である。FMEA抽出情報15は、FMEA DB240から所定に抽出された情報である。フィールドデータ抽出情報16は、フィールドデータDB250から所定に抽出された情報である。これらの各抽出情報の詳細については後記する。
【0032】
記憶部10に格納されている評価情報17は、評価部23による点数付けの結果を示す情報である。候補リスト18は、変更すべき保全活動・監視項目の候補を示すリスト(データテーブル)である。
【0033】
<保全支援装置の処理>
図8は、保全支援装置の処理を示すフローチャートである(適宜、図1も参照)。
図8のステップS1において処理部20は、機器関係抽出部21によって、系統の要素機能や、系統を構成する機器の関係を抽出する。すなわち、処理部20は、原子力プラントに含まれる機器の情報を構成管理DB210(図2参照)から読み出して、系統の要素機能や、系統を構成する機器の関係を抽出し、系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11を生成する。
【0034】
図9は、系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11の例を示す説明図である。
系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11は、所定の系統における複数の要素機能と、それぞれの要素機能の重要性と、要素機能に対するコンポーネント(系統の構成機器)の必要性と、が対応付けられたデータテーブルである。
【0035】
図9の例では、所定の系統における複数の要素機能として、冷却機能や隔離機能や流量制御機能が挙げられている。また、それぞれの要素機能の重要性が、高い方から順に、H(High)、M(Middle)、及びL(Low)のいずれかに対応付けられている。また、所定の要素機能に対するコンポーネント(系統の構成機器)の必要性が、高い方向から順に、H(High)、M(Middle)、L(Low)、及び寄与なし(-)のいずれかに対応付けられている。
【0036】
なお、要素機能に対するコンポーネントの必要性とは、所定の要素機能(例えば、冷却機能)が発揮されるために所定の機器(コンポーネント)がどの程度必要であるかを示す指標である。図9に示すように、系統の要素機能の重要性、及び、要素機能に対するコンポーネントの必要性が各機器に対応付けられた状態で、系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11として記憶されている。図9の例では、冷却機能の重要性は「M」であり、また、冷却機能に対するコンポーネントの必要性は、「◇◇ポンプ」が「H」である一方、「◇モータ」は「L」になっている。また、隔離機能や流量制御機能といった他の要素機能についても、それぞれの要素機能の重要性や、要素機能に対するコンポーネントの必要性が示されている。
【0037】
再び、図8に戻って、説明を続ける。
ステップS1において系統の要素機能や、系統を構成する機器の関係を抽出した後、処理部20の処理はステップS2に進む。ステップS2において処理部20は、クラス分類部22(図1参照)によって、原子力プラントの機器をクラスA,B,Cのいずれかに分類する。このようにクラスの分類が行われる際には、クラス分類判定テーブル12(図1参照)が用いられる。
【0038】
図10は、クラス分類判定テーブル12の説明図である。
なお、図10の縦軸は、要素機能の重要性であり、H(High)、M(Middle)、及びL(Low)の3つに分けられている。この3つの区分は、系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11(図9参照)における要素機能の重要性の区分に対応している。また、図10の横軸は、要素機能に対する機器の必要性であり、H(High)、M(Middle)、L(Low)、及び「寄与なし」の4つに分けられている。この4つの区分は、系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11(図9参照)におけるコンポーネントの必要性の区分に対応している。
【0039】
そして、クラス分類部22(図1参照)が、要素機能の重要性と、要素機能に対する構成機器の必要性と、の組合せに基づいて、クラスA,B,Cのいずれかに機器を分類するようにしている。例えば、要素機能の重要性が「H」であり、さらに、要素機能に対する機器の必要性が「H」である場合には、その機器はクラスAに分類される。クラスAは、保全業務を行う際の重要度が最も高いクラスである。
【0040】
また、要素機能の重要性が「H」であり、さらに、要素機能に対する機器の必要性が「M」又は「L」である場合には、その機器はクラスBに分類される。また、要素機能の重要性が「M」であり、さらに、要素機能に対する機器の必要性が「H」又は「M」である場合にも、その機器はクラスBに分類される。また、要素機能の重要性が「L」であり、さらに、要素機能に対する機器の必要性が「H」である場合にも、その機器はクラスBに分類される。クラスBは、保全業務を行う際の重要度が中程度のクラスである。
【0041】
また、要素機能の重要性が「H」であり、さらに、要素機能に対する機器の必要性が「寄与なし」である場合には、その機器はクラスCに分類される。また、要素機能の重要性が「M」であり、さらに、要素機能に対する機器の必要性が「L」又は「寄与なし」である場合にも、その機器はクラスCに分類される。また、要素機能の重要性が「L」であり、さらに、要素機能に対する機器の必要性が「M」、「L」、又は「寄与なし」のいずれかである場合にも、その機器はクラスCに分類される。クラスCは、保全業務を行う際の重要度が最も低いクラスである。
【0042】
図10に示すように、処理部20は、原子力プラントの系統における要素機能の重要性、及び、要素機能を実現する機器の必要性に基づいて、原子力プラントの機器を複数のクラスA,B,Cに分類する。つまり、系統の機能を複数の要素機能に分けた上で、この要素機能を媒介にして、処理部20が各機器をクラスA,B,Cのいずれかに分類するようにしている。これによって、原子力プラントにおける膨大な数の機器を、保全業務の重要度に基づいて適切に分類できる。
【0043】
原子力プラントの各機器をクラスA,B,Cのいずれかに分類する際には、クラス分類判定テーブル12(図10参照)の他、系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11(図9参照)の情報が参照される。例えば、図9に示す「○○弁」については、隔離機能の重要性が「H」であり、さらに、隔離機能に対する「○○弁」の必要性も「H」になっている。
【0044】
ここで、「○○弁」については、冷却機能や流量制御機能に関する組合せも存在するが、クラスの分類が行われる際には、クラス分類判定テーブル12(図10参照)に基づくランクが最も高くなるような組合せが用いられる。したがって、「○○弁」はクラスAに分類される。なお、他の機器に関するクラスの分類についても同様のことがいえる。
次に、図8のステップS3において処理部20は、評価部23(図1参照)によって、クラスB,Cの機器(又は部品)に点数を付ける。
【0045】
図11は、評価部による点数付けの例を示す説明図である。
なお、図11の横軸は、点数付けの際の複数の観点を示している。このような観点として、S(安全性)、Q(品質)、D(納期)、及びC(コスト)が用いられる。図11の縦軸は、クラスBやクラスCに分類された機器(又は部品)の各観点での点数である。
【0046】
評価部23(図1参照)は、S(安全性)、Q(品質)、D(納期)、C(コスト)のそれぞれの観点から、所定の機器について点数付けを行う。ここで、S(安全)とは、原子力プラントの安全性を確保するという観点であり、最も重視される。所定の機器に不具合が生じた場合に、安全面で懸念される事態が生じる可能性が高いほど、S(安全)の点数が高くなる。図11に示すQ(品質)とは、原子力プラントの機器の性能が十分に発揮されるようにするという観点である。所定の不具合が生じた場合に、機器の性能が十分に発揮されなくなる可能性が高いほど、Q(品質)の点数が高くなる。
【0047】
D(納期)とは、原子力プラントの保全業務に用いる部品が適切に調達され、保全業務が計画通りに進められるようにするという観点である。所定の機器に不具合が生じた場合に、保全業務が予定よりも長くなる可能性が高いほど、D(納期)の点数が高くなる。図11に示すC(コスト)とは、原子力プラントの保全業務に要するコストを削減するという観点である。所定の機器に不具合が生じた場合の保全業務に要する費用が高いほど、C(コスト)の点数が高くなる。
【0048】
なお、S(安全性)、Q(品質)、D(納期)に関する各点数は、フィールドデータDB250(図6参照)の他、センシングDB230(図4参照)やFMEA DB240(図5参照)の情報に基づいて算出される。また、C(コスト)に関する点数は、資材発注DB260(図7参照)の情報に基づいて算出される。評価部23(図1参照)は、S(安全性)、Q(品質)、D(納期)、C(コスト)の各点数の合計を算出することで、所定の機器に対して点数付けを行う。この点数(合計点数)は、所定の機器の保全業務を行う際の重要度を示している。
【0049】
本実施形態では、S(安全性)を最も重視し、さらに、Q(品質)、D(納期)、及びC(コスト)の順で重視するという考え方に基づいて、評価部23が機器(又は部品)に点数を付けるようにしている。このように、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点に基づいて評価部23が点数付けを行うことで、原子力プラントの信頼性を確保しつつ、保全業務に要するコストを削減できる。
【0050】
S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点を反映させる際、図11に示すように、S(安全性)が最も点数が高く、次いで、点数の高さがQ(品質)、D(納期)、C(コスト)の順になるようにしてもよい。また、評価部23が各観点の点数に所定の係数(正の値)を乗算した上で、(係数×点数)の和を算出するようにしてもよい。この場合において、S(安全性)の係数が最も大きく、次いで、係数の大きさがQ(品質)、D(納期)、及びC(コスト)の順になるようにしてもよい。このような処理でも、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点を反映させることができる。評価部23による点数付けの結果は、機器や部品に対応付けて、評価情報17(図1参照)として記憶部10に格納される。
【0051】
次に、図8のステップS4において処理部20は、クラス分類部22(図1参照)によって、クラスB,Cを細分化する。すなわち、処理部20は、複数のクラスA,B,Cの中で相対的に重要度が低いクラスB,Cを細分化の対象とする。例えば、クラス分類部22は、クラスBに属する機器について、評価部23の処理結果である点数(S,Q,D,Cの各点数の合計値)が所定値以上であるものをクラスBに分類し、点数が所定値未満であるものをクラスBに分類する。前記した所定値は、クラスBに属する機器をクラスB及びクラスBのいずれかに分類する際の判定基準となる閾値であり、予め設定されている。なお、クラスBにおける保全業務の重要度は、クラスBよりも高いものとする。
【0052】
また、クラス分類部22は、クラスCに属する機器について、評価部23の処理結果である点数が所定値以上であるものをクラスCに分類し、点数が所定値未満であるものをクラスCに分類する。なお、クラスCにおける保全業務の重要度は、クラスCよりも高いものとする。保全業務の重要度が高いものから順に各クラスを並べると、クラスA、クラスB、クラスB、クラスC、クラスCの順になる。
【0053】
このように、処理部20は、複数のクラスA,B,Cのうちの所定のクラス(例えば、クラスB)を細分化する際、所定のクラスに属する機器又は部品に対して、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点で点数を付け、当該点数に基づいて、所定のクラスを細分化する。
【0054】
このように、重要度が相対的に低いクラスB,Cの細分化の結果は、保全業務の適正化を図る際に用いられる。なお、重要度が最も高いクラスAについては、今後の保全業務の頻度を減らすといったことを吟味する必要が特にないため、細分化の対象にはなっていない。つまり、処理部20は、複数のクラスA,B,Cの中で相対的に重要度が高いクラスAを細分化の対象から外すようにする。
【0055】
次に、図8のステップS5において処理部20は、抽出・比較部24(図1参照)によって、クラスごとに所定のデータベースの情報と対比する。
ステップS6において処理部20は、抽出・比較部24(図1参照)によって、変更すべき保全活動・監視項目の候補を抽出し、さらに、候補出力部25(図1参照)によって候補リスト18を出力部40に出力する。ステップS6の処理を行った後、処理部20は、一連の処理を終了する(END)。
【0056】
このように、処理部20は、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点で複数のクラスB,Cを細分化した結果に基づいて、原子力プラントの保全業務を変更する際の候補を出力部40(表示装置)に表示させる処理を行う。これによって、原子力プラントの信頼性を確保しつつ、変更すべき保全業務の候補をユーザに提示できる。
【0057】
図12は、保全支援装置の処理の詳細を示すフローチャートである(適宜、図1も参照)。
ステップS101において処理部20は、機器関係抽出部21によって、系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11(図9参照)を出力する。なお、ステップS101の処理は、図8のステップS1に対応している。
【0058】
次に、ステップS102において処理部20は、クラス分類部22によって、機器を複数のクラスに分類する。すなわち、処理部20は、系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11(図9参照)と、クラス分類判定テーブル12(図10参照)と、に基づいて、クラスA,B,Cのいずれかに機器を分類する。これによって、原子力プラントの所定の機器が、重要な要素機能の維持に必要な機器であるか(クラスA:S103)、要素機能の維持において重要でない機器であるか(クラスC:S104)、また、それ以外の機器であるか(クラスB:S105)を特定できる。なお、ステップS102~S105の処理は、図8のステップS2に対応している。
【0059】
ステップS106において処理部20は、クラスBに含まれる機器をクラスB及びクラスBのいずれかに細分化する。すなわち、処理部20は、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点に基づいて、クラスBに含まれる機器をクラスB及びクラスBのいずれかに分類する。なお、ステップS106の処理は、図8のステップS3,S4に対応している(S107も同様)。
【0060】
ステップS107において処理部20は、クラスCに含まれる機器をクラスC及びクラスCのいずれかに細分化する。すなわち、処理部20は、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点に基づいて、クラスCに含まれる機器をクラスC及びクラスCのいずれかに分類する。
【0061】
ステップS108において処理部20は、クラスAについて、劣化モードと保全活動との対比を行う。具体的には、処理部20は、FMEA DB240(図5も参照)のデータに基づいて、機器の劣化モードに対応する保全活動や監視項目の適否を判定する。
ステップS109において処理部20は、追加すべき監視項目を出力する。例えば、重要な要素機能の維持に必要な機器に対して、所定の劣化モードに対応する保全活動が設定されていない場合、処理部20は、センシングDB230(図4も参照)の情報に基づいて、追加すべき監視項目を出力する。
【0062】
また、ステップS110において処理部20は、クラスBやクラスBについて、実績データと保全活動との対比を行う。すなわち、処理部20は、フィールドデータDB250(図6も参照)の情報(実績データ)等に基づいて、所定の機器(又は部品)の点検周期が適正であるか否かを判定する。
【0063】
次に、ステップS111において処理部20は、所定の機器の点検周期の延伸や代替監視項目を出力する。具体例を挙げると、前記した機器(分解点検が1年ごとに行われていた機器)がクラスBに属していた場合には、処理部20は、十分なマージン(余裕)が確保されるように、機器の点検周期を2年に延ばすようにしてもよい。また、前記した機器がクラスBに属していた場合には、処理部20は、マージンを小さくして、点検周期を4年に延ばすようにしてもよい。クラスBとクラスBとで、機器の点検周期を長くする程度(マージンの取り方)が異なるようにすることで、機器の点検周期をきめ細かく変更できる。すなわち、処理部20は、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の考え方に基づいて、点検周期のマージンを小さくしても機器の安全性や品質が十分に担保される範囲内でマージンを小さくする。つまり、過剰に持っていたマージンをS(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の考え方に基づいて適正化することで、点検周期を現状よりも長くする。
【0064】
このように、処理部20は、保全業務の変更として、候補となる機器の点検周期を現状よりも長くする際、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点から当該機器の安全性及び品質が確保される範囲内で、所定の基準に対する変更後の点検周期のマージンを小さくする。これによって、前記したように、過剰に持っていたマージンを適正化し、点検周期を現状よりも長くすることができる。
【0065】
なお、ステップS111の処理として、代替監視項目の候補が出力されることもある。前記したように、分解点検や非破壊検査といった「保全活動」(図3参照)よりも、センサデータに基づく不具合の検知や外観点検といった「監視項目」(図3参照)の方が、作業員の負担が少なく、また、低コストだからである。したがって、クラスBやクラスBに属する機器については、例えば、分解点検(保全活動)から外観点検(監視項目)に切り替えるといったように、代替監視項目の候補が出力されるようにしてもよい。例えば、処理部20は、保全業務の変更として、候補となる機器の保全業務の内容を、現状の点検から所定のセンサデータに基づく監視に変更する。これによって、保全業務における作業員の負担やコストを削減できる。
【0066】
また、ステップS112において処理部20は、クラスCやクラスCについて、現状の保全活動と系統の要素機能との対比を行う。すなわち、処理部20は、フィールドデータDB250(図6参照)の情報等に基づいて、所定の機器(又は部品)の点検周期や点検内容が適正であるか否かを判定する。
【0067】
ステップS113において処理部20は、点検周期の延伸や保全活動の適正化を行う際の候補を出力する。具体例を挙げると、所定の機器がクラスCに属していた場合には、処理部20は、その機器の点検周期を所定に延ばすようにしてもよい。また、前記した機器がクラスCに属していた場合には、処理部20が保全活動を事後保全に切り替える候補としてもよい。これによって、保全業務における作業員の負担やコストを削減できる。
【0068】
ステップS109,S111,S113の処理を行った後、ステップS114において処理部20は、候補出力部25によって、変更すべき候補となる保全活動・監視項目の候補リスト18(図1参照)を出力部40に表示させる。
【0069】
なお、図12のステップS108、S110、S112の各処理は、図8のステップS5に対応している。また、図12のステップS109、S111、S113、S114の各処理は、図8のステップS6に対応している。
【0070】
図12のステップS115では、候補リスト18の内容を実際の保全業務に反映させるか否かが判定される。例えば、ユーザによる入力部30(図1参照)の操作に基づいて、候補リスト18の中から保全業務の変更に反映されるものが選定されるようにしてもよい。ステップS115において、所定の候補リスト18の内容が実際の保全業務に反映される場合(S115:Yes)、その候補リスト18の内容が保全活動・監視項目DB220(図3も参照)に反映される。また、所定の候補リスト18の内容が実際の保全活動には反映されない場合には(S115:No)、今回の意思決定に使用した情報に改善の余地がある可能性があるため、例えば、FMEA DB240に劣化モードの情報を追加するといった処理が行われる。
【0071】
図13は、クラスAの候補リストの例を示す説明図である。
なお、図13に含まれる系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11は、図9に示すものと同様である。図13の太枠線で示す例では、隔離機能の重要性が「H」になっており、また、隔離機能に対する「○○弁」の必要性も「H」になっている。なお、要素機能の重要性と機器の必要性との組合せとして冷却機能や流量制御機能も存在するが、前記したように、クラスの分類の際にはランクが最も高い組合せが用いられる。したがって、「○○弁」は、クラスAに分類される(図10参照)。
【0072】
図13に示す保全活動抽出情報13は、保全活動・監視項目DB220(図3参照)から抽出された情報である。例えば、シール部のパッキンに経年劣化が生じているか否かを点検するために、3年ごとに外観点検を行うことが示されている。
図13に示すFMEA抽出情報15は、FMEA DB240(図5参照)から抽出された情報である。FMEA抽出情報15に含まれる「劣化の重大度」から、シール部のパッキンの劣化は、重大な不具合であることがわかる。
【0073】
図13の例では、前記した追加監視項目(S109:図12参照)として、候補リスト18に新たな監視項目が設けられている。すなわち、シール部付近の流体温度の監視という監視項目が候補リスト18に追加で設けられている。原子力プラントの運転中にシール部付近の流体温度が監視されることで、シール部の熱による経年劣化を早期に把握できる。これによって、原子力プラントの信頼性が高められる。
【0074】
図14は、クラスBの候補リストの例を示す説明図である。
なお、図14に含まれる系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11は、図9に示すものと同様である。図14の太枠線で示す例では、冷却機能の重要性が「M」になっており、冷却機能に対する「◇◇ポンプ」の必要性が「H」になっている。したがって、「◇◇ポンプ」は、クラスBに分類される(図10参照)。この「◇◇ポンプ」は、さらに、評価部23(図1参照)による点数付けに基づいて、クラスB,Bのいずれかに分類される。
【0075】
保全活動抽出情報13には、シール部のパッキンの外観点検が3年ごとに行われることが示され、この外観点検の結果が健全(異常なし)であることがフィールドデータ抽出情報16に示されている。例えば、「◇◇ポンプ」がクラスBに属する場合、図14の候補リスト18に示すように、保全活動としてシール部パッキンの材料分析が追加されるようにしてもよい。このように追加の保全活動が行われることで、パッキンの経年劣化を早期に把握できる。その他、図14には示していないが、クラスBに属する機器の点検周期が現状よりも長く設定されるようにしてもよい。
【0076】
また、クラスBに属する機器については、クラスBの場合に比べて、点検周期を長くする際のマージン(例えば、FMEAの分析結果を基準とするマージン)が小さくなるようにしてもよい。これによって、信頼性を確保しつつ、保全業務に要するコストを削減できる。
【0077】
図15は、クラスCの候補リストの例を示す説明図である。
なお、図15に含まれる系統・機能・コンポーネントの対応テーブル11は、図9に示すものと同様である。図15の太枠線で示す例では、例えば、冷却機能の重要性が「M」になっており、冷却機能に対する所定の弁の必要性が「L」になっている。その他、隔離機能や流量制御機能の重要性や、これらの要素機能に対する弁の必要性を考慮すると、太枠線で示す所定の弁は、クラスCに分類される(図10参照)。この弁は、さらに、評価部23(図1参照)による点数付けに基づいて、クラスC,Cのいずれかに分類される。
【0078】
図15の候補リスト18には、前記した弁について、弁座の外観点検を事後保全に切り替えることが提案されている。また、弁の開閉試験の故障検知が追加の監視項目として提案されている。つまり、弁の開閉試験の故障検知の結果に基づいて、事後保全を行うことが提案されている。このように、不必要な点検が見直されることで、信頼性や品質を確保しつつ、保全業務に要するコストを削減できる。
なお、図15には示していないが、クラスCに属する機器の点検周期が現状よりも長く設定されるようにしてもよい。また、クラスCに属する機器については、候補リスト18に示すような事後保全が行われるようにしてもよい。
【0079】
<効果>
本実施形態によれば、クラスBに属する機器については、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点に基づいて点数付けされ、さらに、点数に基づいてクラスBとクラスBとに細分化される。そして、相対的に重要度が低いクラスBについては、クラスBに比べて、点検周期を長くする際のマージンを小さくするようにしている。そして、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の考え方に基づいて、機器の安全性や品質が十分に担保される範囲内で、所定の基準に対する点検周期のマージンを小さくする。このように、過剰に持っていたマージンをS(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の考え方に基づいて適正化することで、機器の点検周期を現状よりも長くすることができる。なお、クラスCの細分化についても同様のことがいえる。これによって、保全業務の適正化をきめ細かく行うことができる。その結果、原子力プラントにおける信頼性の確保と、保全物量(保全業務に要する手間やコスト)の低減と、を両立させることができる。
【0080】
≪変形例≫
以上、本開示に係る保全支援装置100について実施形態で説明したが、本開示はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、原子力プラントの機器の点検履歴や故障履歴や不具合履歴等に基づいて、機器の点検周期が変更される場合について説明したが、これに限らない。例えば、保全業務を変更する際の候補となる機器又は部品と同種類のものが他の原子力プラントにおいて共通の条件下で用いられている場合、この同種類のものの点検履歴、故障履歴、及び不具合履歴の情報を処理部20が他の原子力プラントから取得するようにしてもよい。なお、機器の「故障」とは、機器の異常に伴って、その機器の正常な動作が損なわれることを意味している。前記した「故障履歴」とは、機器の「故障」に関する履歴である。また、機器の「不具合」とは、機器の性能が十分に発揮されなくなることを意味している。前記した「不具合履歴」とは、機器の「不具合」に関する履歴である。
保全業務の変更として、候補となる機器の点検周期を現状よりも長くする際、処理部20は、当該機器が属するクラスの重要度が低いほど、所定の基準に対する変更後の点検周期のマージンが小さくなるようにしていてもよい。また、処理部20は、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点から当該機器の安全性及び品質が確保される範囲内で、所定の基準に対する変更後の点検周期のマージンを小さくするようにしてもよい。前記した所定の基準は、他の原子力プラントから取得した点検履歴、故障履歴、及び不具合履歴の情報に基づいて設定される。このように他の原子力プラントの点検履歴、故障履歴、及び不具合履歴の情報を用いることで、機器等の点検周期を適切に変更できる。つまり、過剰に確保されていた点検周期のマージンをS(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の考え方に基づいて適正化できる。
【0081】
また、保全業務の変更として、候補となる機器の点検周期を現状よりも長くする際、所定のクリティカル部品の点検履歴、故障履歴、及び不具合履歴の情報に基づいて、処理部20が変更後の点検周期を設定するようにしてもよい。前記したクリティカル部品は、候補となる機器に含まれる複数の部品の中で現状の点検周期が最も短い部品である。このようなクリティカル部品の点検履歴を用いることで、機器等の点検周期を適切に変更できる。
【0082】
また、候補となる機器の点検周期を現状よりも長くする際、機器に含まれる部品の寿命や在庫情報の他、所定のEQ(Environmental Qualification)試験の結果に基づいて、変更後の点検周期が設定されるようにしてもよい。
【0083】
また、実施形態では、クラスBを細分化する際の数が2つ(クラスBとクラスB)である場合ついて説明したが、これに限らない。すなわち、評価部23によって算出される点数に基づいて、クラスBを3つ以上に細分化するようにしてもよい。なお、クラスCの細分化についても同様のことがいえる。
【0084】
また、実施形態では、クラスBに属する機器のうち、点数が所定値以上であるものがクラスBに分類され、点数が所定値未満であるものがクラスBに分類される場合について説明したが、これに限らない。例えば、クラスBに属する機器のうち、点数の高いものから順に所定数の機器がクラスBに分類され、残りの機器がクラスBに分類されるようにしてもよい。なお、クラスCの細分化についても同様のことがいえる。
【0085】
また、実施形態では、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点に基づいてクラスBやクラスCが細分化される場合について説明したが、S(安全性)が他に比べて格段に重視されるようにしてもよい。つまり、S(安全性)>>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点に基づいて、点数付けが行われるようにしてもよい。
また、実施形態では、処理部20がクラスBやクラスCの機器の点数付けを行う場合について説明したが、入力部30の操作によって人が点数付けを行う(又は処理部20が付けた点数を人が修正する)ようにしてもよい。
また、S(安全性)>Q(品質)>D(納期)>C(コスト)の観点に基づくクラスの細分化が、クラスBやクラスCの他、クラスAについて行われてもよい。
【0086】
また、実施形態では、保全支援装置100(図1参照)が入力部30や出力部40を備える場合について説明したが、これに限らない。すなわち、保全支援装置100の外部に入力部30や出力部40が設けられてもよい。この場合において、入力部30や出力部40の機能を有するスマートフォンやタブレット等の携帯端末が用いられてもよい。
【0087】
また、本開示は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0088】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサが所定の機能(例えば、保全支援方法)を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0089】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 記憶部
11 系統・機能・コンポーネントの対応テーブル
12 クラス分類判定テーブル
13 保全活動抽出情報
14 センシング抽出情報
15 FMEA抽出情報
16 フィールドデータ抽出情報
17 評価情報
18 候補リスト
20 処理部
21 機器関係抽出部
22 クラス分類部
23 評価部
24 抽出・比較部
25 候補出力部
30 入力部
40 出力部(表示装置)
50 通信部
100 保全支援装置
200 データベース装置
210 構成管理DB
220 保全活動・監視項目DB
230 センシングDB
240 FMEA DB
250 フィールドデータDB
260 資材発注DB
300 保全支援システム
N1 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15