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特開2024-132660超音波トランスデューサおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132660
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20240920BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H04R17/00 330K
H04R17/00 332
H04R31/00 330
H04R17/00 330G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043518
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】土井 壮太
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 正明
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA08
5D019BB02
5D019BB19
5D019BB21
5D019BB25
5D019EE01
5D019FF01
(57)【要約】
【課題】共振周波数の調整を容易にする超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】超音波トランスデューサは、中間層と、中間層上に設けられた下部電極12と、下部電極上に設けられた圧電層14と、圧電層上に設けられた上部電極16と、中間層の下に接合され、平面視において中間層、下部電極、圧電層および上部電極が重なる領域を含むように設けられた開口を有する支持体25と、を備える複数の素子を備え、複数の素子は、第1素子と第2素子とを含み、第1素子の領域における中間層の下面から上部電極の上面までの厚さは、第2素子の領域における中間層の下面から上部電極の上面までの厚さより大きく、第1素子における開口のうち中間層と接する平面形状の最大幅は、第2素子における開口のうち中間層と接する平面形状の最大幅より大きい。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層と、
前記中間層上に設けられた下部電極と、
前記下部電極上に設けられた圧電層と、
前記圧電層上に設けられた上部電極と、
前記中間層の下に接合され、平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を含むように設けられた開口を有する支持体と、
を備える複数の素子を備え、
前記複数の素子は、第1素子と第2素子とを含み、
前記第1素子の前記領域における前記中間層の下面から前記上部電極の上面までの厚さは、前記第2素子の前記領域における前記中間層の下面から前記上部電極の上面までの厚さより大きく、前記第1素子における前記開口のうち前記中間層と接する平面形状の最大幅は、前記第2素子における前記開口のうち前記中間層と接する平面形状の最大幅より大きい超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記第1素子は、前記複数の素子のうち前記中間層の下面から前記上部電極の上面までの厚さが最も大きく、かつ前記複数の素子のうち前記開口のうち前記中間層と接する平面形状の最大幅が最も大きく、
前記第2素子は、前記複数の素子のうち前記中間層の下面から前記上部電極の上面までの厚さが最も小さく、かつ前記複数の素子のうち前記開口のうち前記中間層と接する平面形状の最大幅が最も小さい請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
中間層と、
前記中間層上に設けられた下部電極と、
前記下部電極上に設けられた圧電層と、
前記圧電層上に設けられた上部電極と、
前記中間層の下に接合され、平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を含むように設けられた開口を有する支持体と、
を備える複数の素子を備え、
前記複数の素子は、第1素子と第2素子とを含み、
前記第1素子の前記領域における前記中間層の厚さは、前記第2素子の前記領域における前記中間層の厚さより小さく、前記第1素子の前記領域における前記下部電極の下面から前記上部電極の上面までの厚さは、前記第2素子における前記領域における前記下部電極の下面から前記上部電極の上面までの厚さより大きい超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記第1素子は、前記複数の素子のうち前記中間層の厚さが最も小さく、かつ前記複数の素子のうち前記下部電極の下面から前記上部電極の上面までの厚さが最も大きく、
前記第2素子は、前記複数の素子のうち前記中間層の厚さが最も大きく、かつ前記複数の素子のうち前記下部電極の下面から前記上部電極の上面までの厚さが最も小さい請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記複数の素子は、前記支持体と前記中間層とを接合する接合層を備え、
前記支持体は樹脂である請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記複数の素子の圧電層は一体に連続して設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備えるチップと、
前記中間層の下に接合され、平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を含むように設けられた開口を有する下壁部と、前記下壁部と一体に形成され、前記チップを囲むように設けられ、前記チップの高さより高い位置まで延伸する枠体部と、を備え、樹脂からなる支持体と、
を備える超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記枠体部の上面に接合され、前記支持体とで前記チップを封止する蓋部を備える請求項7に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備えるチップを準備する工程と、
平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域における、前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極の少なくとも1つの厚さに基づき、前記中間層の下に接合され、平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を含むように設けられた開口を有する支持体の前記開口の幅を決定し、前記決定された幅の前記開口を有する支持体を、平面視において前記開口が前記領域を含むように、前記中間層に接合する工程と、
を備える超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項10】
中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備えるチップを含むウエハを準備する工程と、
平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域における、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極の少なくとも1つの厚さに基づき、前記中間層の厚さを決定し、前記中間層を薄膜化し前記決定した厚さとする工程と、
開口を有する支持体を、平面視において前記開口が前記領域を含むように、前記中間層に接合する工程と、
を備える超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項11】
中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備え、平面視において前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を有する素子が、マトリックス状に配列されたウエハを用意し、
前記ウエハの状態において、前記中間層を薄くし、
前記ウエハの状態において、薄くした前記中間層に、前記領域に対応する部分に開口を有する樹脂からなる支持体を設け、
前記ウエハを個片化する超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項12】
中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備え、平面視において前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を有する素子が、マトリックス状に配列されたウエハを用意し、
前記ウエハの状態において、前記中間層を薄くし、
前記ウエハを個片化し、
前記ウエハを個片化した後に、前記中間層に、前記領域に対応する部分に開口を有する樹脂からなる支持体を設ける超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項13】
前記支持体は、3Dプリンタを用い形成する請求項11または請求項12に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測距センサや指紋センサ等に応用可能なデバイスとして、圧電体を用いた圧電型マイクロマシン超音波トランスデューサ(pMUT:Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)が知られている。複数のpMUT素子をアレイ状に配置した超音波トランスデューサが知られている(例えば特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-51685号公報
【特許文献2】米国特許公開第2020/0338592号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のpMUTを用いる超音波トランスデューサでは、複数のpMUTの共振周波数を調整することがある。例えば、複数のpMUTの共振周波数がほぼ同じとなるように、共振周波数を調整する。共振周波数の調整の方法として、圧電層を含む振動領域の積層膜の一部を除去すること、または振動領域の積層膜に付加膜を形成することが考えられる。しかし、積層膜の一部の除去、または付加膜の形成を行うと、製造コストが高くなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、共振周波数の調整を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、前記中間層の下に接合され、平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を含むように設けられた開口を有する支持体と、を備える複数の素子を備え、前記複数の素子は、第1素子と第2素子とを含み、前記第1素子の前記領域における前記中間層の下面から前記上部電極の上面までの厚さは、前記第2素子の前記領域における前記中間層の下面から前記上部電極の上面までの厚さより大きく、前記第1素子における前記開口のうち前記中間層と接する平面形状の最大幅は、前記第2素子における前記開口のうち前記中間層と接する平面形状の最大幅より大きい超音波トランスデューサである。
【0007】
上記構成において、前記第1素子は、前記複数の素子のうち前記中間層の下面から前記上部電極の上面までの厚さが最も大きく、かつ前記複数の素子のうち前記開口のうち前記中間層と接する平面形状の最大幅が最も大きく、前記第2素子は、前記複数の素子のうち前記中間層の下面から前記上部電極の上面までの厚さが最も小さく、かつ前記複数の素子のうち前記開口のうち前記中間層と接する平面形状の最大幅が最も小さい構成とすることができる。
【0008】
本発明は、中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、前記中間層の下に接合され、平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を含むように設けられた開口を有する支持体と、を備える複数の素子を備え、前記複数の素子は、第1素子と第2素子とを含み、前記第1素子の前記領域における前記中間層の厚さは、前記第2素子の前記領域における前記中間層の厚さより小さく、前記第1素子の前記領域における前記下部電極の下面から前記上部電極の上面までの厚さは、前記第2素子における前記領域における前記下部電極の下面から前記上部電極の上面までの厚さより大きい超音波トランスデューサである。
【0009】
上記構成において、前記第1素子は、前記複数の素子のうち前記中間層の厚さが最も小さく、かつ前記複数の素子のうち前記下部電極の下面から前記上部電極の上面までの厚さが最も大きく、前記第2素子は、前記複数の素子のうち前記中間層の厚さが最も大きく、かつ前記複数の素子のうち前記下部電極の下面から前記上部電極の上面までの厚さが最も小さい構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記複数の素子は、前記支持体と前記中間層とを接合する接合層を備え、前記支持体は樹脂である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記複数の素子の圧電層は一体に連続して設けられている構成とすることができる。
【0012】
本発明は、中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備えるチップと、前記中間層の下に接合され、平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を含むように設けられた開口を有する下壁部と、前記下壁部と一体に形成され、前記チップを囲むように設けられ、前記チップの高さより高い位置まで延伸する枠体部と、を備え、樹脂からなる支持体と、を備える超音波トランスデューサである。
【0013】
上記構成において、前記枠体部の上面に接合され、前記支持体とで前記チップを封止する蓋部を備える構成とすることができる。
【0014】
本発明は、中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備えるチップを準備する工程と、平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域における、前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極の少なくとも1つの厚さに基づき、前記中間層の下に接合され、平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を含むように設けられた開口を有する支持体の前記開口の幅を決定し、前記決定された幅の前記開口を有する支持体を、平面視において前記開口が前記領域を含むように、前記中間層に接合する工程と、を備える超音波トランスデューサの製造方法である。
【0015】
本発明は、中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備えるチップを含むウエハを準備する工程と、平面視において前記中間層、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域における、前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極の少なくとも1つの厚さに基づき、前記中間層の厚さを決定し、前記中間層を薄膜化し前記決定した厚さとする工程と、開口を有する支持体を、平面視において前記開口が前記領域を含むように、前記中間層に接合する工程と、を備える超音波トランスデューサの製造方法である。
【0016】
本発明は、中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備え、平面視において前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を有する素子が、マトリックス状に配列されたウエハを用意し、前記ウエハの状態において、前記中間層を薄くし、前記ウエハの状態において、薄くした前記中間層に、前記領域に対応する部分に開口を有する樹脂からなる支持体を設け、前記ウエハを個片化する超音波トランスデューサの製造方法である。
【0017】
本発明は、中間層と、前記中間層上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられた上部電極と、を備え、平面視において前記下部電極、前記圧電層および前記上部電極が重なる領域を有する素子が、マトリックス状に配列されたウエハを用意し、前記ウエハの状態において、前記中間層を薄くし、前記ウエハを個片化し、前記ウエハを個片化した後に、前記中間層に、前記領域に対応する部分に開口を有する樹脂からなる支持体を設ける超音波トランスデューサの製造方法である。
【0018】
上記構成において、前記支持体は、3Dプリンタを用い形成する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、共振周波数の調整を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)は、超音波トランスデューサ内のpMUT素子を示す平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。
図2図2(a)および図2(b)は、pMUT素子の動作を示す断面図である。
図3図3は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法おいて、チップを形成するウエハを示す平面図である。
図4図4(a)は、実施例1におけるTEGの平面図、図4(b)は、図4(a)のA-A断面図である。
図5図5は、実施例1に係る超音波トランスデューサ製造方法を示すフローチャートである。
図6図6(a)から図6(c)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
図7図7(a)から図7(c)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
図8図8(a)および図8(b)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
図9図9(a)および図9(b)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
図10図10(a)および図10(b)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。
図11図11は、比較例1に係るpMUT素子を示す断面図である。
図12図12は、シユレーションにおける周波数に対するインピーダンスを示す図である。
図13図13は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。
図14図14(a)および図14(b)は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
図15図15(a)および図15(b)は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
図16図16は、実施例2に係る超音波トランスデューサの平面図である。
図17図17(a)および図17(b)は、それぞれトランスデューサAおよびBの周波数に対するインピーダンスを示す模式図、図17(c)は、トランスデューサAおよびBにおいて、距離に対する音圧を示す図である。
図18図18は、実施例2に係る超音波トランスデューサの平面図である。
図19図19(a)は、実施例2の変形例2に係る超音波トランスデューサの平面図、図19(b)は、図19(a)のA-A断面図である。
図20図20は、実施例2の変形例2における厚さの分布を示す模式図である。
図21図21(a)は、実施例3に係る超音波トランスデューサの平面図、図21(b)は、図21(a)のA-A断面図である。
図22図22は、実施例3の変形例1に係る超音波トランスデューサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し実施例について説明する
【実施例0022】
超音波トランスデューサは、複数のpMUT素子を備える。まず、pMUT素子について説明する。図1(a)は、pMUT素子を示す平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。図1(a)では、開口28を破線で示し、上部電極16をクロスハッチングで示している。各層の積層方向をZ方向、中間層10の平面形状の辺の延伸方向をX方向およびY方向とする。
【0023】
pMUT素子20は、支持体25の中央部に、支持体25を貫通する開口28が設けられている。この開口28は、キャビティとも呼ぶ。実施例のpMUT素子20では、支持体25は、平面形状がほぼ真円である開口28を有し、開口28は円筒形状となる。支持体25の平面形状は例えば矩形である。支持体25上および開口28上に、両者を覆って中間層10が設けられている。中間層10は、層状であり、中央は開口28と接し、周囲は支持体25によって支持されている。中間層10は、圧電層14とともに、後述する積層膜18の一部を構成し、開口28に対応する領域で、たわみ振動する。
【0024】
中間層10は、層10aと層10a上に設けられた層10bとを備えている。中間層10上には、下部電極12、圧電層14および上部電極16が順に設けられる。圧電層14は、中間層10に対応した領域の全域に設けられている。下部電極12が中間層10の上面の全面を覆うように設けられている。圧電層14は、下部電極12の上面の全面を覆うように設けられている。上部電極16は、平面視における開口28の周縁領域の圧電層14上に設けられておらず、平面視における開口28の中央領域の圧電層14を覆うように設けられている。開口28上において、下部電極12と上部電極16とで圧電層14を挟んで設けられている。
【0025】
下部電極12と上部電極16に電圧が印加されたとき、圧電層14は、逆圧電効果によって、電気的エネルギーが機械的エネルギーに変換され、左右方向の圧縮応力または引張応力が生じる。結果として、開口28がある領域が上下方向にたわんで振動し、超音波を発生させる。平面視において、開口28と中間層10とが重なる領域を振動領域50とする。中間層10、下部電極12、圧電層14および上部電極16が順に設けられた積層膜18は、振動領域50において、たわみ振動する積層膜18である。振動領域50のうち、平面視において開口28、中間層10、下部電極12、圧電層14および上部電極16が重なる領域は領域52である。支持体25、中間層10、下部電極12、圧電層14および上部電極16の厚さは、それぞれT0、T1、T2、T3およびT4である。中間層10の下面から上部電極16の上面までの厚さはTである。開口28の幅はW1である。なお、開口28の幅W1は、開口28が中間層10に接する領域の最大幅である。例えば、開口28の平面形状が円の場合、開口28の幅W1は直径に相当する。
【0026】
下部電極12と上部電極16のそれぞれに導通し、周辺回路と電気的に接続するパッドの説明をする。下部電極12に電気的に接続するパッドを形成するため、圧電層14に孔22が設けられている。孔22は、金属材料で埋められるか、孔22の壁面が金属材料でメッキされる。圧電層14上に、この金属材料と導通、または一体となってパッド24aが設けられている。平面視でみたとき、pMUT素子20のほぼ中心に、アイランド状にある上部電極16は、配線16aを介し、pMUT素子20の周囲にあるパッド受け部16bに電気的に接続されている。パッド受け部16b上にパッド24bが設けられている。パッド24aおよび24bは、例えば金であり、ボンディングワイヤが接合され、pMUT素子20の周辺回路と電気的に接続される。コンタクト孔、パッドおよび配線は、金で形成される。コンタクト孔、パッドおよび配線は、金以外の材料を用いて形成されてもよい。
【0027】
以下に、具体的に、各構成の材料などを説明する。
支持体25は、例えばABS(Acrylonitrile Butadiene- Styrene)樹脂、ASA(Acrylate Sthrene Acrylonitrile)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂である。支持体25は、熱硬化性または光硬化性を有する樹脂であってもよい。このような樹脂を用いれば、3D(Dimension)プリンタを用いて成形可能となるため好ましい。接合層26は、支持体25を中間層10に接合する層であり、例えば樹脂の接着剤である。接合層26の材料としては、例えば、シアノアクリレート、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂などが挙げられる。接合層26は、紙からなるシートを、2つの接着性の樹脂シートで挟んだ3層構造でもよい。この場合、接合層26として、市販の接着テープを用いることができる。層10aは、例えば、シリコン基板、層10bは例えばシリコン酸化膜等の絶縁膜である。下部電極12および上部電極16は、例えばルテニウム、モリブデン、金、チタン、白金、アルミニウム、銅もしくはクロム等の金属膜から選択された膜、またはこれらの中から複数の膜が選択された積層膜である。例えば、下部電極12は、中間層10側から順に、クロム膜およびルテニウム膜が設けられる。例えば、上部電極16として、圧電層14側から順に、ルテニウム膜およびクロム膜が設けられる。
【0028】
圧電層14の材料は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、BTO(チタン酸バリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、LiNbO(ニオブ酸リチウム)、LiTaO(タンタル酸リチウム)、ZnO(酸化亜鉛)またはKNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)である。保護膜の材料は、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の無機絶縁体である。パッド24aおよび24bは、例えば金層、銅層またはアルミニウム層である。
【0029】
振動領域50および領域52の平面形状は円である。平面視において、振動領域50の中心と領域52の中心は一致している。振動領域50の直径は、例えば200μm~2000μm、領域52の直径は、振動領域50よりも小さく、例えば100μm~1500μmである。振動領域50および領域52の平面形状および面積は適宜設定できる。例えば振動領域50および領域52の平面形状は、略円、略楕円または略多角形でもよい。
【0030】
pMUT素子における動作を説明する。超音波トランスデューサは、制御部30を有する。図2(a)および図2(b)は、pMUT素子の動作を示す断面図である。
【0031】
超音波を送信する場合を例に説明する。
図2(a)および図2(b)に示すように、制御部30は、下部電極12と上部電極16に、交流電圧を加える。下部電極12と上部電極16との間にこの交流電圧が印加されると、図2(a)と図2(b)に示す矢印のように、中間層10および圧電層14の伸縮および膨張が発生し、上方向33aおよび下方向33bのように振動領域50は上下振動を繰り返す。
【0032】
図2(a)のように、下部電極12および上部電極16にそれぞれ正および負の電圧が加わると、逆圧電効果により、圧電層14内の面方向に圧電層14が伸びるような歪み31aが生じる。中間層10に加わる応力32aは縮む方向の応力となる。これにより、振動領域50は上方向33a(+Z方向)に反る。
【0033】
図2(b)のように、下部電極12および上部電極16に例えばそれぞれ負および正の電圧が加わる。逆圧電効果により、圧電層14内の面方向に圧電層14が縮むような歪み31bが生じる。中間層10に加わる応力32bは伸びる方向の応力となる。これにより、振動領域50は下方向33b(-Z方向)に反る。
【0034】
この交流電圧の印加により、図2(a)と図2(b)との状態が繰り返されることにより、振動領域50が上方向33aと下方向33bを交互に繰り返すように振動する。これにより、振動領域50から超音波が放射される。超音波を受信する場合には、外部から振動領域50に超音波を受けると、振動領域50が上方向33aおよび下方向33bに振動する。これにより、振動領域50の中間層10に応力32aおよび32bが加わる。これにより、圧電層14に歪み31aおよび31bが生じる。圧電効果により、下部電極12と上部電極16との間に交流電圧が生成される。この交流電圧(交流信号)を測定することで、超音波を受信できる。
【0035】
振動領域50内の積層膜18の厚さおよび積層膜18内の材料が均一の場合を仮定すると、共振周波数fは、以下の数1で示される。
【数1】
Tは振動領域50における積層膜18の厚さ、Eは、振動領域50における積層膜18のヤング率、ρmは振動領域50における積層膜18の密度、νは振動領域50における積層膜18のポアソン比、rは振動領域50の半径であり、開口28の幅W1の1/2に相当する。
【0036】
数1によれば、積層膜18の厚さTが大きくなると共振周波数fは高くなる。また、開口28の幅W1が大きくなると共振周波数fは低くなる。そこで、積層膜18の厚さTが厚いときには、開口28の幅W1を大きくし、積層膜18の厚さTが薄いときには、開口28の幅W1を小さくできれば、共振周波数fをほぼ同じに調整できる。
【0037】
[実施例1の製造方法]
以下、実施例1の超音波トランスデューサの製造方法を説明する。図3は、チップを形成するウエハを示す平面図である。ウエハ34には、チップ21となるダイ領域32がマトリックス状に配列されている。ダイ領域32内に膜厚測定TEG(Test Elementary Group)31が設けられている。ダイ領域32の1つ1つが、pMUT素子20として、作製される。ダイ領域32それぞれの各層の厚さを測定するために、TEG31を設ける。
【0038】
図4(a)は、実施例1におけるTEGの平面図、図4(b)は、図4(a)のA-A断面図である。TEG31では、圧電層14および下部電極12を貫通する開口55が設けられている。開口55内に、下部電極12、下部電極12上に設けられ下部電極12より幅の狭い圧電層14、圧電層14上に設けられ圧電層14より幅の狭い上部電極16が設けられている。下部電極12、圧電層14および上部電極16が階段状になっていれば、TEG31の平面形状は任意である。
【0039】
図5は、実施例1に係る超音波トランスデューサ製造方法を示すフローチャートである。ここでは、各ステップS10、S12、S14、S16、S18およびS20を説明する。図6(a)から図9(b)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。図6(a)から図9(b)では、1個のpMUT素子20を図示している。
【0040】
ここで、実施例1では、中間層10であるシリコン基板を薄く残し、支持体25を別途取り付けることにポイントを有する。しかしながら、図6(a)から図7(c)のウエハプロセスでは、フォトリソグラフィ工程で、基板が平坦であることが求められる。一方、熱処理工程、成膜工程、およびエッチングのプラズマ雰囲気に晒される工程では、ウエハ34の温度が上昇する。ウエハ34が薄い場合、ウエハ34の温度が上昇すると、ウエハ34が反りやすい。このため、ウエハ34の状態では、できる限り基板を厚くし、ウエハ34の反りを防止する。
【0041】
そのため、図6(a)のプロセスの開始時は、ウエハ34の反り防止のために、厚い基板を用意する。そして、支持体25の開口28の幅W1の調整のため、上部電極16の形成の後において、図7(c)のように、基板(中間層10)の裏面を薄くする。別途、図9(a)および図9(b)において、基板(中間層10)の下面に、支持体25を設けている。図8(a)および図8(b)において、例えば、3Dプリンタ等の樹脂塗布による描画装置で、所望の開口径、厚みの支持体25を用意できる。
【0042】
まず、積層膜18を形成するステップS10を説明する。図6(a)に示すように、例えばウエハ34のシリコン基板上に、熱酸化処理、またはスパッタリング法などを用いて、酸化シリコン膜を形成する。これにより、中間層10を形成する。シリコン基板は層10aであり、酸化シリコン膜は層10bである。続いて、図6(b)に示すように、中間層10上の全面に、スパッタリング法などを用いて金属層を形成し、下部電極12とする。続いて、図6(c)に示すように、下部電極12上の全面にスパッタリング法などを用いて圧電材料を形成し、圧電層14とする。圧電層14を貫通し、底面に下部電極12が露出した孔22を形成する。孔22は、ウェットエッチング法またはドライエッチング法を用いて形成できる。
【0043】
続いて、図7(a)に示すように、圧電層14上に上部電極16を形成する。例えば、圧電層14上の全面に電極材料を形成する。その後、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、電極材料を所望の形状にパターニングする。これにより上部電極16が形成される。このとき、配線16aおよびパッド受け部16bも同時に形成される。上部電極16は、リフトオフ法を用いて形成してもよい。以上により、中間層10、下部電極12、圧電層14および上部電極16が順に設けられた積層膜18が形成される。
【0044】
続いて、図7(b)に示すように、全面に、ボンディング材として、部分メッキで金メッキを施す。孔22内を埋め、圧電層14上を被覆するように電極材料を形成する。続いて、電極材料をフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い、所望の形状にパターニングする。これにより、下部電極12と接触したパッド24a、およびパッド受け部16b上に接触し、上部電極16に配線16aおよびパッド受け部16bを介し接続されたパッド24bが形成される。なお、図7(b)のように、孔22は、金メッキ処理のときに埋め込んでパターン形成してもよい。
【0045】
次に、膜厚測定ステップS12を行う。図4(a)および図4(b)で示すTEG31を用いて、下部電極12、圧電層14および上部電極16の厚さを測定する。厚さの測定は、段差計を用い測定することができる。各層の厚さにウエハ34内の分布がある場合には、図3のウエハ34内の複数のダイ領域32に設けられた、TEG31を用い、各層の厚さを測定する。各層の厚さにウエハ34内の分布がない場合には、ウエハ34内の1カ所のTEG31を用いて測定し、各々のダイ領域32の各層の厚さそれぞれが同じであるとみなしてもよい。
【0046】
続いて、中間層10の薄膜化ステップS14を行う。図7(c)に示すように、中間層10の下面を研磨または研削し、中間層10を薄膜化する。その後、ウエハ34を個片化する。これにより、チップ21が完成する。
【0047】
以降は、支持体25の作製ステップである。ここでは、図8(a)および図8(b)に示すように、2つのチップ21aおよび21bを取り上げて説明する。まず、開口28の幅W1を決定するステップS16を行う。図8(a)および図8(b)に示すように、ステップS12において測定した各層の厚さに基づき、支持体25aおよび25bに形成する開口28aおよび28bの幅W1aおよびW1bを決定する。例えば、図8(a)のチップ21aの圧電層14の厚さT3aは、図8(b)のチップ21bの圧電層14の厚さT3bより大きい。このため、チップ21aの積層膜18の厚さTaはチップ21bの積層膜18の厚さTbより大きい。ここで、前述した通り、2つのpMUT素子20の共振周波数をほぼ一致させるため、チップ21aに接合する支持体25aにおける開口28aの幅W1aを大きくし、チップ21bに接合する支持体25bにおける開口28bの幅W1bを小さくする。例えば、TEG31を用いて測定される各層の厚さと開口28の幅W1との相関を示すデータとして用意しておけば、そのデータに基づいて、開口28の幅W1を決定できる。
【0048】
続いて、支持体25を作成するステップS18を行う。図8(a)および図8(b)に示すように、ステップS16において決定した幅W1aおよびW1bの開口28aおよび28bをそれぞれ有する支持体25aおよび25bを形成する。支持体25aおよび25bの形成には、3Dプリンタを用いてもよい。3Dプリンタを用いる場合、土台上に、所望の幅W1の開口28を有するように、光硬化樹脂を塗布し、紫外線などの光を照射することで、支持体25を形成できる。光硬化樹脂の代わりに、熱硬化樹脂を塗布し、熱を与えることで支持体25を形成してもよい。また、後述する支持体25を接合するステップS20において、チップ21aおよび21bの下面の接合層26上に、光硬化樹脂を塗布し、紫外線などの光を照射することで、支持体25を形成してもよい。このように、支 持体25の材料として光硬化樹脂を用いた場合、樹脂を硬化する過程で、ウエハ34に熱をほとんど与えずに、支持体25を形成できる。こうして、ウエハ34の反りを最小限としつつ、超音波トランスデューサを作製できる。また、開口28aおよび28bの幅W1aおよびW1bの異なる複数種類の支持体25aおよび25bを、金型を用いて形成しておいてもよい。このように、樹脂などで、所望の形状の支持体25を形成できるので、超音波トランスデューサを安価に製造できる。
【0049】
続いて、支持体25を作成するステップS20を行う。図9(a)および図9(b)に示すように、支持体25aおよび25bをチップ21aおよび21bの下面に接合層26を用いそれぞれ接合する。これにより、pMUT素子20aの振動領域50aは、pMUT素子20bの振動領域50bより大きくなる。以上によりpMUT素子20aおよび20bが製造される。
【0050】
支持体25の接合のステップと個片化のステップとの順番によって、2つのフローがある。以下に説明する。図10(a)および図10(b)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。膜厚測定ステップS12、開口28の幅W1の決定ステップS16については省略する。
【0051】
図10(a)に示す、フロー1では、まず、ウエハ34の状態において、積層膜18を形成するステップS10を行う。続いて、ウエハ34の状態において、中間層10の薄膜化ステップS14を行う。続いて、ステップS18において、ウエハ34に対応する支持体25を作製する。続いて、ステップS20において、ウエハ34の状態で、作製した支持体25を薄膜化した中間層10に接合する。なお、ステップS18とS20は同時に行ってもよい。すなわち、中間層10の下面に直接支持体25を形成してもよい。その後、個片化ステップS22において、ダイシング法を用いて支持体25が形成されたウエハ34を個片化する。
【0052】
図10(b)に示す、フロー2では、まず、ウエハ34の状態において、積層膜18を形成するステップS10を行う。続いて、ウエハ34の状態において、中間層10の薄膜化ステップS14を行う。続いて、個片化ステップS22において、ダイシング法を用いて薄膜化したウエハ34を個片化する。続いて、ステップS18において、チップ21ごとに支持体25を作製する。続いて、ステップS20において、個片化されたチップ21ごとに、支持体25を中間層10に接合する。
【0053】
図10(a)のフロー1のように、ウエハ34の状態において支持体25を中間層10に接合し、その後、個片化してもよい。図10(b)のフロー2のように、ウエハ34を個片化した後に、チップ21ごとに、支持体25を中間層10に接合してもよい。
【0054】
図11は、比較例1に係るpMUT素子を示す断面図である。比較例1では、pMUT素子20は、SOI(Semiconductor On Insulator)基板10fを用いて製造される。SOI基板10fは、図11において下から順に積層された層10e、10dおよび10cを有している。層10cおよび10eは、シリコン層であり、層10dはこの2つのシリコン層に挟まれる酸化シリコン層である。層10c上に積層される、積層膜18の構造は、図1(b)と同じである。開口28は、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いて形成される。層10dはエッチングストッパとして用いられる。
【0055】
DRIE法では、開口28を精度良く形成することが難しい。DRIE法を用いた開口28の形成は、一般にはウエハ34の状態において、ウエハ34内の開口28を全て一度にエッチング処理することにより行われる。このとき、ウエハ34内に形成された開口28の幅W1を調整するには、ウエハ34の状態のまま、1つ1つの開口28の幅W1の調整を行うことになる。しかし、ウエハ34の状態では、開口28の幅W1を個別の調整することは実質的に不可能である。また、ウエハ34をチップ21に個片化し、開口28の幅W1を調整することも考えられる。しかし、チップ21のサイズが小さく、1つ1つのチップ21をエッチングする工程は、処理方法が複雑になり、実質的に不可能である。また、例えば、ウエハ34に反りがあると、開口28の幅W1がばらついてしまう。このため、開口28の幅W1を制御よく加工し、共振周波数を調整することが難しい。また、DRIE法を用いるためには、高価なDRIE装置と高価なSOI基板を用いるため、コストが高くなる。
【0056】
一方、実施例1においては、ステップS10、S20およびS14において、pMUT素子を準備する。ステップS16において、領域52における中間層10の下面から上部電極16の上面までの厚さTaおよびTbに基づき、支持体25aおよび25bの開口28aおよび28bの幅W1aおよびW1b(大きさ)を決定する。ステップS20において、決定された幅W1aおよびW1bの開口28aおよび28bを有する支持体25aおよび25bを、中間層10に接合する。例えば、pMUT素子20aは積層膜18の厚さTaが厚い。そこで、開口28aの幅W1aを大きくする。pMUT素子20bは積層膜18の厚さTbが薄い。そこで、開口28bの幅W1bを小さくする。これにより、数1に示した数式に基づき、pMUT素子20aと20bとの共振周波数の差を小さくできる。
【0057】
一方、前述したように、実施例1では、各TEG31を用いて測定する各層の厚さと開口28の幅W1との関係を、予め実験またはシミュレーションを用い算出してある。そのため、このデータを基に開口28の幅W1を決めて、支持体25を、3Dプリンタを用い加工形成ができる。よって、図10(b)のように、個片化された1つのpMUT素子20を有するチップ21であっても、図10(a)のように、マトリックス状にpMUT素子20が配列されたチップ21またはウエハ34であっても、開口28を有する支持体25の取り付けが可能となる。図10(b)のように、1つのpMUT素子20が設けられたチップ21の場合、予め様々な幅W1を有する開口28を有する支持体25を形成しておき、所望の幅W1を有する支持体25をチップ21に接合させることができる。図10(a)のように、複数のpMUT素子が設けられたウエハ34の場合、ウエハ34の下面に直接支持体25を描画し、所望のpMUT素子20を有するチップに個片化すればよい。
【0058】
実施例1では、支持体25をチップ21と別に作製し、接合する。このため、比較例1のようにDRIE法を用いる場合に比べ、製造工程が簡略化でき、コストを低くできる。また、特許文献1に記載されている、振動領域50における積層膜の一部を除去、または付加膜を形成する技術に比べ、製造工程が簡単であり、コストを低くできる。
【0059】
例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い中間層10を薄膜化すると、中間層10の厚さT1はほとんどばらつかないことが知られている。このような場合には、下部電極12、圧電層14および上部電極16の少なくとも1つの厚さに基づき、開口28aおよび28bの幅W1aおよびW1bを決定してもよい。
【0060】
ステップS14後のステップにおいて、中間層10の厚さT1がばらつく場合には、ステップS14後に中間層10の厚さT1を、例えば反射分光膜厚計を用い測定してもよい。この場合、中間層10の厚さT1に基づき、開口28aおよび28bの幅W1aおよびW1bを決定してもよい。
【0061】
ウエハ34内の下部電極12、圧電層14および上部電極16の厚さT2、T3およびT4の分布が大きい場合には、ウエハ34の面内の複数の厚さT2、T3およびT4の値を測定し、ウエハ34内のチップ21の位置から開口28aおよび28bの幅W1aおよびW1bを決定してもよい。
【0062】
下部電極12の厚さT2は、図6(b)において下部電極12を形成した後に、例えばXRF(X‐ray Fluorescence)法を用いて測定してもよい。圧電層14の厚さT3は、図6(c)において圧電層14を形成した後に、例えば反射分光膜厚計を用い測定してもよい。上部電極16の厚さT4は、図7(a)において上部電極16を形成した後に、例えばXRF法を用い測定してもよい。
【0063】
[シミュレーション]
実施例1では、中間層10の厚さT1は、図5のステップS14および図7(c)に示すように、中間層10の下面を研磨または研削の許容度によって決まり、10μm~100μm程度と厚くなる。また、支持体25として、シリコン基板より柔らかい樹脂を用いる。そこで、pMUT素子20が共振するか2次元の有限要素法を用いシミュレーションした。
【0064】
シミュレーション条件は以下である。
支持体25:厚さが300μmのアクリル樹脂
接合層26:厚さが30μmの樹脂接着剤
層10a:厚さが50μmのシリコン層
層10b:厚さが0.4μmの酸化シリコン層
下部電極12:厚さが0.02μmのクロム層および厚さが0.1μmのルテニウム層
圧電層14:厚さが1μmの窒化アルミニウム層
上部電極16:厚さが0.1μmのルテニウム層および厚さが0.02μmのクロム層
開口28の幅W1:2000μm
【0065】
図12は、上記シユレーションの結果であり、周波数に対するインピーダンスを示す図である。図12に示すように、pMUT素子20において、共振周波数frのピークがみられ、スプリアスがみられない良好な共振特性が確認できた。中間層10の厚さT1を30μm、50μmおよび100μmと変えたときの条件でシミュレーションした場合においても、同様に良好な共振特性が得られることを確認できた。よって、以上のように、中間層10の厚さT1が少なくとも100μm以下であれば、pMUT素子20は良好な共振特性を有することが分かった。
【0066】
[実施例1の変形例1]
図13は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。ここでは、各ステップS11、S12、S13、S14およびS20を説明する。図14(a)から図15(b)は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。実施例1の変形例1は、図3のウエハ34面内における下部電極12、圧電層14および上部電極16の厚さのばらつきはほとんどないと仮定し、ウエハ34間において下部電極12、圧電層14および上部電極16の厚さのばらつきがある場合を想定している。
【0067】
まず、ステップS11を行う。図13のステップS11は、図5図6(a)から図7(b)で説明したステップS10と同じであるため、説明を省略する。
【0068】
膜厚測定ステップS12を行う。図4(a)および図4(b)のTEG31を用い、下部電極12、圧電層14および上部電極16の厚さを測定する。各層の厚さにウエハ34内の分布がないため、ウエハ34内の1カ所のTEG31を用いて、各層の厚さを測定してもよい。
【0069】
続いて、中間層10の厚さを決定するステップS13を行う。図14(a)および図14(b)に示すように、ステップS12において測定した各層の厚さに基づき、中間層の厚さT1cおよびT1dを決定する。例えば、図14(a)のチップ21cを含むウエハ34の圧電層14の厚さT3cは、図14(b)のチップ21dを含むウエハ34の圧電層14の厚さT3dより大きい。このため、チップ21cを含むウエハ34の下部電極12の下面から上部電極16の上面までの厚さT5cは、チップ21dを含むウエハ34の下部電極12の下面から上部電極16の上面までの厚さT5dより大きい。そこで、チップ21cを含むウエハ34の中間層10の厚さT1cを薄く決定し、チップ21dを含むウエハ34の中間層10の厚さT1dを厚く決定する。
【0070】
続いて、中間層10の薄膜化のステップS14を行う。図14(a)および図14(b)のように、中間層10の下面を研磨または研削し、中間層10を薄膜化する(ステップS14)。チップ21cを含むウエハ34の中間層10が厚さT1cとなるように、中間層10を研磨または研削し、チップ21dを含むウエハ34の中間層10が厚さT1dとなるように、中間層10を研磨または研削する。その後、ウエハ34を個片化する。これにより、チップ21が完成する。
【0071】
続いて、支持体25を接合するステップS20を行う。図15(a)および図15(b)に示すように、支持体25をチップ21cおよび21dの下面に接合層26を用いて接合する。支持体25の開口28の幅W1はほぼ同じである。これにより、pMUT素子20cおよび20dが製造される。
【0072】
実施例1の変形例1では、図13のステップS13のように、下部電極12、圧電層14および上部電極16の少なくとも1つの厚さに基づき、中間層10の厚さを決定する。ステップS14のように、中間層10を薄膜化し決定した厚さとする。ステップS20のように、支持体25を、中間層10に接合する。これにより、pMUT素子20cの積層膜18の厚さTcとpMUT素子20dの積層膜18の厚さTdとの差を小さくできる。よって、pMUT素子20cと20dとの共振周波数の差を小さくできる。
【実施例0073】
実施例2は、実施例1の製造方法を用いて製造されたpMUT素子がアレイ状に配置された超音波トランスデューサの例である。図16は、実施例2に係る超音波トランスデューサの平面図である。
【0074】
超音波トランスデューサ100では、pMUT素子20aおよび20bがアレイ状に配列されている。pMUT素子20aは、図9(a)のように、積層膜18の厚さTaが大きく、開口28aの幅W1aが大きい。pMUT素子20bは、図9(b)のように、積層膜18の厚さTbが小さく、開口28bの幅W1bが小さい。このように、実施例1の製造方法を用いたpMUT素子を用いることで、アレイ状のpMUT素子の共振周波数のばらつきを小さくできる。
【0075】
実施例2では、超音波トランスデューサ100に複数のpMUT素子20が設けられる。複数のpMUT素子20がほぼ同じ周波数において動作することで、送信される超音波の音圧を大きくできる。また、超音波を受信する感度を向上できる。
【0076】
続いて、複数のpMUT素子20を有する超音波トランスデューサの問題点について説明する。図17(a)および図17(b)は、それぞれトランスデューサAおよびBの周波数に対するインピーダンスを示す模式図である。図17(a)および図17(b)において、インピーダンスZが極小になる周波数が共振周波数frである。図17(a)および図17(b)は、それぞれトランスデューサAおよびBのpMUT素子に対応する。
【0077】
図17(a)に示すように、トランスデューサAでは、2つのpMUT素子20の共振周波数frはほぼ一致している。このように、トランスデューサAでは、複数のpMUT素子20の共振周波数frはほぼ一致しており、理想的な状態である。
【0078】
図17(b)に示すように、トランスデューサBでは、2つのpMUT素子20の共振周波数frが異なっている。中間層10、下部電極12、圧電層14および上部電極16の成膜時の膜厚分布、および開口28を形成するときの中間層10のエッチング量の分布などにより、トランスデューサB内のpMUT素子20の共振周波数がばらついてしまう。このように、トランスデューサBでは、複数のpMUT素子20の共振周波数frがばらついている。
【0079】
図17(c)は、トランスデューサAおよびBにおいて、距離に対する音圧を示す図である。横軸の距離は、超音波トランスデューサから対象物までの距離である。縦軸の音圧は、超音波トランスデューサから送信される超音波を、マイクロホンを用い計測したときの音圧を示している。
【0080】
図17(c)に示すように、トランスデューサAおよびBともに、距離が大きくなるほど音圧が小さくなる。同じ距離では、トランスデューサBはAに比べ音圧が小さくなる。トランスデューサAでは、全てのpMUT素子20において共振周波数frはほぼ同じである。このため、pMUT素子20を共振周波数frまたはその近傍の同じ周波数において動作させることにより、複数のpMUT素子20は効率的に超音波を送信できる。これにより、音圧が大きくなる。一方、トランスデューサBでは、pMUT素子20の共振周波数がばらついている。このため、pMUT素子20を動作させたときに、あるpMUT素子20では共振周波数またはその近傍において動作し、別のpMUT素子20では、共振周波数から大きく離れた周波数で動作する。これにより、音圧が小さくなってしまう。このため、pMUT素子は意図した特性を示さず、超音波トランスデューサの音圧が小さくなってしまう。
【0081】
実施例2では、図16図9(a)および図9(b)のように、pMUT素子20a(第1素子)の領域52における中間層10の下面から上部電極16の上面までの厚さTaは、pMUT素子20b(第2素子)の厚さTbより大きい。pMUT素子20aにおける開口28aの幅W1aは、pMUT素子20bにおける開口28bの幅W1bより大きい。これにより、超音波トランスデューサ100内のpMUT素子20の共振周波数の差を小さくできる。なお、開口28の幅W1は、開口28が中間層10に接する領域の最大幅であり、開口28の平面形状が円の場合には、開口28の直径に相当する。
【0082】
実施例2では、超音波トランスデューサ100のpMUT素子20における、中間層10の下面から上部電極16の上面までの厚さTがばらついているときに、開口28の幅W1を変え、共振周波数fを調整する。この観点から、複数のpMUT素子20における厚さTの最大値をTmax、厚さTの最小値をTminとしたとき、2(Tmax-Tmin)/(Tmax+Tmin)が、例えば0.01以上または0.02以上と厚さTがばらついている。このとき、複数のpMUT素子20のうち開口28の幅W1の最大値をWmax、幅W1の最小値をWminとしたとき、2(Wmax-Wmin)/(Wmax+Wmin)を、例えば0.01以上または0.02以上とする。これにより、複数のpMUT素子20のうち共振周波数の最大値をfmax、共振周波数の最小値をfminとしたとき、2(fmax-fmin)/(fmax+fmin)を、例えば0.01以下または0.001以下にでき、共振周波数のばらつきを小さくできる。
【0083】
pMUT素子20aは、複数のpMUT素子のうち厚さTが最も大きく、かつ複数のpMUT素子のうち開口28の幅W1が最も大きい。pMUT素子20bは、複数のpMUT素子のうち厚さTが最も小さく、複数のpMUT素子のうち開口28の幅W1が最も小さい。このように、厚さTが最大のpMUT素子20aの開口28の幅W1を最小とし、厚さTが最小のpMUT素子20aの開口28の幅W1を最大とする。これにより、pMUT素子20aと20bとの共振周波数の差を小さくできる。
【0084】
[実施例2の変形例1]
実施例2変形例1は、実施例1の変形例1の製造方法を用い製造されたpMUT素子がアレイ状に配置された超音波トランスデューサの例である。図18は、実施例2に係る超音波トランスデューサの平面図である。
【0085】
超音波トランスデューサ102では、異なるウエハのpMUT素子20cおよび20dがアレイ状に配列されている。図15(a)のように、pMUT素子20cは、圧電層14の厚さT3cが大きく、中間層10の厚さT1cが小さい。図15(b)のように、pMUT素子20dは、圧電層14の厚さT3dが薄く、中間層10の厚さT1dが厚い。このように、実施例1の変形例1の製造方法を用いたpMUT素子20cおよび20dを用いることで、アレイ状のpMUT素子の共振周波数のばらつきを小さくできる。
【0086】
実施例2の変形例1では、図18図15(a)および図15(b)のように、pMUT素子20c(第1素子)の領域52における中間層10の厚さT1cは、pMUT素子20d(第1素子)の領域52における中間層10の厚さT1dより小さい。pMUT素子20c(第2素子)の領域52における下部電極12の下面から上部電極16の上面までの厚さT5cは、pMUT素子20d(第2素子)の領域52における下部電極12の下面から上部電極16の上面までの厚さT5dより大きい。これにより、超音波トランスデューサ102内のpMUT素子20cおよび20dの共振周波数の差を小さくできる。
【0087】
実施例2の変形例1では、超音波トランスデューサ102のpMUT素子20cおよび20dにおける、下部電極12の下面から上部電極16の上面までの厚さT5がばらついているときに、中間層10の厚さT1を変え、共振周波数fを調整する。この観点から、複数のpMUT素子20のうち厚さT5の最大値をT5max、厚さT5の最小値をT5minとしたとき、2(T5max-T5min)/(T5max+T5min)が、例えば0.01以上または0.02以上とばらついている。このとき、複数のpMUT素子20のうち中間層10の厚さT1の最大値をT1max、厚さT1の最小値をT1minとしたとき、2(T1max-T1min)/(T1max+T1min)を、例えば0.01以上または0.02以上とする。これにより、複数のpMUT素子20のうち共振周波数の最大値をfmax、共振周波数の最小値をfminとしたとき、2(fmax-fmin)/(fmax+fmin)を、例えば0.01以下または0.001以下にでき、共振周波数のばらつきを小さくできる。
【0088】
pMUT素子20cは、複数のpMUT素子20のうち厚さT5が最も大きく、かつ複数のpMUT素子20のうち厚さT1が最も小さい。pMUT素子20dは、複数のpMUT素子20のうち厚さT5が最も小さく、複数のpMUT素子20のうち厚さT1が最も大きい。このように、厚さT5cが最大のpMUT素子20cの厚さT1cを最小とし、厚さT5dが最小のpMUT素子20dの厚さT1dを最大とする。これにより、pMUT素子20cと20dとの共振周波数の差を小さくできる。
【0089】
複数のpMUT素子20における厚さTのばらつきを小さくする観点から、複数のpMUT素子20のうち中間層10の下面から上部電極16の上面までの厚さTの最大値をTmax、厚さTの最小値をTminとすると、(Tmax-Tmin)は、(T1max-T1min)より小さく、(T5max-T5min)より小さいことが好ましい。
【0090】
実施例2およびその変形例1では、支持体25は樹脂であり、接合層26は、支持体25と中間層10とを接合する。このような構造により、実施例1の製造方法のように、厚さTにより開口28の大きさを調整できる。また、実施例1の変形例1のように、厚さT1により厚さT5を調整できる。
【0091】
中間層10は平板形状である。これにより、実施例2では、開口28の大きさが異なる支持体25を中間層10に接合することで、共振周波数を調整できる。実施例2の変形例1では、中間層10の厚さT1を調整することで、共振周波数を調整できる。
【0092】
[実施例2の変形例2]
実施例2の変形例2は、1つの中間層10上に複数のpMUT素子をアレイ状に配置した例である。図19(a)は、実施例2の変形例2に係る超音波トランスデューサの平面図、図19(b)は、図19(a)のA-A断面図である。
【0093】
超音波トランスデューサ104では、中間層10の平面形状は正方形であり、pMUT素子20が4行4列のアレイ状に配列されている。pMUT素子20の個数は任意に設定できる。圧電層14上に上部電極16、配線16a、パッド受け部16b、パッド24aおよび24bが設けられている。それぞれの上部電極16とパッド受け部16bとは配線16aにより電気的に接続される。パッド受け部16b上には、パッド24bが設けられている。中間層10と圧電層14との間に下部電極12、配線12a、パッド12bが設けられている。下部電極12とパッド12bとは配線12aにより電気的に接続される。パッド24aは、孔22を介しパッド12bに電気的に接続されている。
【0094】
pMUT素子20aの厚さTaはpMUT素子20bの厚さTbより大きく、pMUT素子20aの開口28aの幅W1aはpMUT素子20bの開口28bの幅W1bより大きい。このように、厚さTの大きいpMUT素子20の開口28を大きくする。これにより、複数のpMUT素子の共振周波数の差を小さくできる。
【0095】
実施例2の変形例2の製造方法は、図5のステップS12において、図19のチップ21内のpMUT素子20の位置における下部電極12の厚さT2、圧電層14の厚さT3および上部電極16の厚さT4を測定する。厚さT2、T3およびT4の測定は、図4(a)および図4(b)のようなTEG31を用いてもよい。下部電極12の厚さT2および上部電極16の厚さT4を、例えばXRF(X‐ray Fluorescence)法を用い測定してもよい。圧電層14の厚さT3を、例えば反射分光膜厚計を用い測定してもよい。
【0096】
図20は、実施例2の変形例2における厚さの分布を示す模式図である。図20のウエハ34内の細線は、厚さT2、T3およびT4の合計の厚さT5の等高線である。
【0097】
ウエハ34内におけるダイ領域32は、図19(a)のチップ21となる領域である。図20からダイ領域32のうち領域52に相当する領域の厚さT5がわかる。そこで、図5のステップS16において、図20の領域52に相当する厚さT5から、各領域52に相当する開口28の大きさを決定する。図5のステップS18において、決定した開口28の大きさを有する支持体25を成形する。例えば3Dプリンタを用いることで、4×4の16個のpMUT素子20に対応する、大きさの異なる開口28を有する支持体25を形成することができる。その後、図5のステップS20において、一体として形成された支持体25を中間層10に接合する。
【0098】
実施例2の変形例2のように、複数のpMUT素子の中間層10は一体に連続して設けられていてもよい。
【実施例0099】
図21(a)は、実施例3に係る超音波トランスデューサの平面図、図21(b)は、図21(a)のA-A断面図である。図21(a)は、蓋部42を透視した図である。
【0100】
実施例3の超音波トランスデューサ106では、支持体25は、下壁部40aと枠体部40bを有している。下壁部40aには、下壁部40aを貫通する開口28と貫通電極46が設けられている。下壁部40a上にチップ21および電子回路45が搭載されている。チップ21は樹脂接着剤等の接合層26により下壁部40aの上面に接合されている。チップ21は、実施例2の変形例2の図19(a)および図19(b)のチップ21のように、1つの中間層10に複数のpMUT素子20が設けられている。pMUT素子20の領域52を含むように、下壁部40aに複数の開口28が設けられている。
【0101】
電子回路45は、例えば図2(a)および図2(b)の制御部30を備えている。下壁部40a上には配線44が設けられている。配線44は電子回路45に電気的に接続されている。チップ21のパッド24aおよび24bと配線44とはボンディングワイヤ43により電気的に接続されている。下壁部40aの下面には端子48が設けられている。電子回路45と端子48とは貫通電極46により電気的に接続されている。
【0102】
チップ21と電子回路45を囲むように枠体部40bが設けられている。枠体部40b上に蓋部42が接合されている。蓋部42、枠体部40bおよび下壁部40aにより、チップ21および電子回路45は空隙47に封止される。
【0103】
実施例3では、中間層10下に支持体25が接合されている。支持体25は、樹脂からなり下壁部40aと枠体部40bとを有している。下壁部40aは、領域52を含むように設けられた開口28を有する。枠体部40bは、下壁部40aと一体に連続して形成され、チップ21および電子回路45を囲むように設けられ、チップ21の高さより高い位置まで延伸する。また、蓋部42は、枠体部40bの上面に接合され、支持体25とでチップ21を封止する。これにより、支持体25とチップ21を実装するパッケージとを共通にすることができ、製造工程の削減およびコストの削減が可能となる。
【0104】
支持体25を、例えば3Dプリンタを用い作製することで、実施例2の変形例2と同様に、チップ21内のpMUT素子20の厚さTに基づき開口28の幅を変えることができる。これにより、pMUT素子20の共振周波数のばらつきを小さくできる。
【0105】
[実施例3の変形例1]
図22は、実施例3の変形例1に係る超音波トランスデューサ108の断面図である。図22に示すように、チップ21には、1つのpMUT素子20が設けられている。このように、支持体25は、1つのpMUT素子20を実装してもよい。その他の構成は実施例3と同じであり説明を省略する。
【0106】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0107】
10 中間層
12 下部電極
14 圧電層
16 上部電極
18 積層膜
20、20a~20d pMUT素子
21、21a~21d チップ
25、25a、25b 支持体
26 接合層
28、28a、28b 開口
31 TEG
40a 下壁部
40b 枠体部
42 蓋部
50 振動領域
52 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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