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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132687
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】半導体記憶装置及びメモリシステム
(51)【国際特許分類】
   G11C 7/04 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G11C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043558
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】三木 陽生
(72)【発明者】
【氏名】菅原 大暉
(57)【要約】
【課題】パッケージの信頼性を検知することができる半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の半導体記憶装置は、熱履歴モニタと、判定回路とを備える。熱履歴モニタは、コントローラ又はホスト装置から信頼性検知コマンドが入力されると、メモリセルの特性変動に基づいた熱履歴を出力する。判定回路は、熱履歴モニタから出力された熱履歴に基づき、パッケージ信頼性を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラ又はホスト装置から信頼性検知コマンドが入力されると、メモリセルの特性変動に基づいた熱履歴を出力する熱履歴モニタと、
前記熱履歴モニタから出力された前記熱履歴に基づき、パッケージ信頼性を判定する判定回路と、
を備える半導体記憶装置。
【請求項2】
前記判定回路は、前記熱履歴が前記パッケージ信頼性の許容値以上か否かを判定し、前記許容値以上の場合、アラームを出力する請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記熱履歴は、所定の読み出しレベルにおけるFBC(Fail Bit Count)である請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記熱履歴モニタは、選択ゲートの又はダミーゲートの特性変動に基づいた前記熱履歴を出力する請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記判定回路は、前記メモリセルの特性変動の線形性が得られなくなった場合、前記メモリセルのデータを初期化し、初期化回数を保存する請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
コントローラと、
前記コントローラの制御に基づきデータを記憶する半導体記憶装置と、
を有し、
前記半導体記憶装置は、前記コントローラ又はホスト装置から信頼性検知コマンドが入力されると、メモリセルの特性変動に基づいた熱履歴を出力する熱履歴モニタを有し、
前記コントローラは、前記熱履歴モニタから出力された前記熱履歴に基づき、パッケージ信頼性を判定する判定回路を備える、メモリシステム。
【請求項7】
前記判定回路は、前記熱履歴が前記パッケージ信頼性の許容値以上か否かを判定し、前記許容値以上の場合、アラームを出力する請求項6に記載のメモリシステム。
【請求項8】
前記熱履歴は、所定の読み出しレベルにおけるFBC(Fail Bit Count)である請求項6に記載のメモリシステム。
【請求項9】
前記熱履歴モニタは、選択ゲートの又はダミーゲートの特性変動に基づいた前記熱履歴を出力する請求項6に記載のメモリシステム。
【請求項10】
前記判定回路は、前記メモリセルの特性変動の線形性が得られなくなった場合、前記メモリセルのデータを初期化し、初期化回数を保存する請求項6に記載のメモリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体記憶装置及びメモリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体記憶装置の一種として、NAND型メモリが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0268995号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、パッケージの信頼性を検知することができる半導体記憶装置及びメモリシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の半導体記憶装置は、熱履歴モニタと、判定回路とを備える。熱履歴モニタは、コントローラ又はホスト装置から信頼性検知コマンドが入力されると、メモリセルの特性変動に基づいた熱履歴を出力する。判定回路は、熱履歴モニタから出力された熱履歴に基づき、パッケージ信頼性を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態のメモリシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図1中の不揮発性メモリ2の一例を示すブロック図である。
図3】3次元構造のメモリセルアレイ20のブロックの構成の一例を示す図である。
図4】熱ストレスによる閾値電圧分布の変化とFBCとの関係の一例を示す図である。
図5】熱ストレスの積算時間とFBCの関係の一例を示す図である。
図6】選択ゲートの閾値と熱ストレスによる閾値電圧分布の変化の一例を示す図である。
図7】長時間放置によりFBCの変動量が飽和したときの閾値電圧分布の変化の一例を示す図である。
図8】パッケージ信頼性の判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】第2の実施形態のメモリシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図10図9中の不揮発性メモリ5の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
(メモリシステムの構成)
図1は、第1の実施形態のメモリシステムの構成の一例を示すブロック図である。本実施形態のメモリシステム1は、複数のNAND型不揮発性メモリと、メモリコントローラ3とを備える。図1では、4つのNAND型不揮発性メモリ2A~2Dを備える例を示している。以下、4つのNAND型不揮発性メモリ2A~2Dを区別する必要がない場合には代表してNAND型不揮発性メモリ2という。また、NAND型不揮発性メモリのことを単に不揮発性メモリともいう。メモリシステム1は、ホスト装置4から送信された信号に応じて、ユーザデータの読み出し、書き込み、消去等を行う。ホスト装置4は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯端末などの電子機器である。
【0008】
メモリシステム1は、ホスト装置4が搭載されたマザーボード上に、メモリシステム1を構成する複数のチップを実装して構成してもよいし、メモリシステム1を1つのモジュールで実現するシステムLSI(Large-Scale Integrated Circuit)またはSoC(System-on-a-Chip)として構成してもよい。メモリシステム1は、ユーザデータを記憶可能なシステムであり、例えば、SDカードのようなメモリカード、SSD(Solid-State-Drive)、あるいは、eMMC(embedded-Multi-Media-Card)である。
【0009】
不揮発性メモリ2は、複数のメモリセルを備えたNAND型メモリであり、データを不揮発に記憶する。不揮発性メモリ2は、半導体記憶装置の一例である。不揮発性メモリ2は、熱履歴モニタ30と、判定回路31とを備える。不揮発性メモリ2には、メモリコントローラ3又はホスト装置4からの信頼性検知コマンドが入力される。信頼性検知コマンドが入力されると、熱履歴モニタ30から熱履歴が判定回路31に出力され、判定回路31が熱履歴に基づきパッケージ信頼性を判定する。不揮発性メモリ2は、パッケージ信頼の判定結果をメモリコントローラ3又はホスト装置4に出力する。不揮発性メモリ2のその他の具体的な構成については後述する。
【0010】
メモリコントローラ3は、例えばホスト装置4からの命令に応答して、不揮発性メモリ2に対して書き込み(プログラムともいう)、読み出し、および消去などを命令する。また、メモリコントローラ3は、不揮発性メモリ2のメモリ空間を管理する。メモリコントローラ3は、ホストインターフェース(ホストI/F)回路10、プロセッサ11、RAM(Random Access Memory)12、バッファメモリ13、メモリインターフェース(メモリI/F)回路14、及び、ECC(Error Checking and Correcting)回路15などを備える。
【0011】
ホストI/F回路10は、ホストバスを介してホスト装置4に接続され、ホスト装置4との間でインターフェース処理を行う。また、ホストI/F回路10は、ホスト装置4との間で、命令、アドレス、およびデータの送受信を行う。
【0012】
プロセッサ11は、例えばCPU(中央処理装置)から構成される。プロセッサ11は、メモリコントローラ3全体の動作を制御する。例えば、プロセッサ11は、ホスト装置4から書き込み命令を受けた場合に、メモリI/F回路14を介して、ホスト装置4からの書き込み命令に応じた書き込み命令を不揮発性メモリ2に発行する。読み出しおよび消去の場合も同様である。また、プロセッサ11は、ウェアレベリングなど、不揮発性メモリ2を管理するための様々な処理を実行する。
【0013】
RAM12は、プロセッサ11の作業領域として使用され、不揮発性メモリ2からロードされたファームウェアデータ、およびプロセッサ11が作成した各種テーブルなどを格納する。RAM12は、例えばDRAMまたはSRAMから構成される。
【0014】
バッファメモリ13は、ホスト装置4から送信されたデータを一時的に保持するとともに、不揮発性メモリ2から送信されたデータを一時的に保持する。
【0015】
メモリI/F回路14は、バスを介して不揮発性メモリ2に接続され、不揮発性メモリ2との間でインターフェース処理を行う。また、メモリI/F回路14は、不揮発性メモリ2との間で命令、アドレス、およびデータの送受信を行う。
【0016】
ECC回路15は、データの書き込み時には、書き込みデータに対してエラー訂正符号を生成し、このエラー訂正符号を書き込みデータに付加してメモリI/F回路14に送る。また、ECC回路15は、データの読み出し時には、読み出しデータに対して、読み出しデータに含まれるエラー訂正符号を用いてエラー検出および/またはエラー訂正を行う。なお、ECC回路15は、メモリI/F回路14内に設けるようにしてもよい。
【0017】
(不揮発性メモリの構成)
図2は、図1中の不揮発性メモリ2の一例を示すブロック図である。不揮発性メモリ2は、メモリセルアレイ20、入出力回路21、ロジック制御回路22、レジスタ23、制御回路24、電圧生成回路25、ロウデコーダ26、カラムデコーダ27、センスアンプユニット群28、およびデータレジスタ(データキャッシュ)29を備える。
【0018】
メモリセルアレイ20は、j個のブロックBLK0~BLK(j-1)およびブロックBLKXを備える。jは、1以上の整数である。複数のブロックBLKの各々は、複数のメモリセルトランジスタを備える。メモリセルトランジスタは、電気的に書き換え可能なメモリセルを構成する。メモリセルアレイ20には、メモリセルトランジスタに印加する電圧を制御するために、複数のビット線BL、複数のワード線WL、およびソース線CELSRCなどが配設される。ブロックBLKの具体的な構成については後述する。
【0019】
入出力回路21およびロジック制御回路22は、バスを介して、メモリコントローラ3に接続される。入出力回路21は、メモリコントローラ3との間でバスを介して、信号DQ(例えばDQ0~DQ7)を送受信する。
【0020】
ロジック制御回路22は、メモリコントローラ3からバスを介して、外部制御信号(例えば、チップイネーブル信号CEn、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、書き込みイネーブル信号WEn、読み出しイネーブル信号REn、およびライトプロテクト信号WPn)を受信する。信号名に付記されたnは、アクティブ・ローを示す。また、ロジック制御回路22は、バスを介して、メモリコントローラ3にレディー/ビジー信号R/Bnを送信する。
【0021】
信号CEnは、不揮発性メモリ2が複数使用されるシステム構成において、特定の不揮発性メモリ2を選択し、イネーブルにするための信号である。信号CLEは、信号DQとして送信されるコマンドをレジスタ23にラッチすることを可能にする。信号ALEは、信号DQとして送信されるアドレスをレジスタ23にラッチすることを可能にする。信号WEnは、書き込みを可能にする。信号REnは、読み出しを可能にする。信号WPnは、書き込みおよび消去を禁止する。信号R/Bnは、基本動作コマンドを使用しているときは、不揮発性メモリ2が書き込み、読み出し、および消去動作をしていないレディー状態(外部からの命令を受け付けることが可能である状態)であるか、ビジー状態(外部からの命令を受け付けることができない状態)であるかを示す。
【0022】
レジスタ23は、コマンドレジスタ、アドレスレジスタ、およびステータスレジスタなどを備える。コマンドレジスタは、コマンドを一時的に保持する。アドレスレジスタは、アドレスを一時的に保持する。ステータスレジスタは、不揮発性メモリ2の動作に必要なデータを一時的に保持する。レジスタ23は、例えばSRAMから構成される。
【0023】
制御回路24は、レジスタ23からコマンドを受け、このコマンドに基づくシーケンスに従って不揮発性メモリ2を統括的に制御する。
【0024】
電圧生成回路25は、不揮発性メモリ2の外部から電源電圧を受け、この電源電圧を用いて、書き込み動作、読み出し動作、および消去動作に必要な複数の電圧を生成する。電圧生成回路25は、生成した複数の電圧を、メモリセルアレイ20、ロウデコーダ26、およびセンスアンプユニット群28などに供給する。
【0025】
ロウデコーダ26は、レジスタ23からロウアドレスを受け、このロウアドレスをデコードする。ロウデコーダ26は、デコードされたロウアドレスに基づいて、ワード線の選択動作を行う。なお、書き込みおよび読み出しの対象となるメモリセルトランジスタMTが接続されるワード線を選択ワード線と呼ぶ。そして、ロウデコーダ26は、選択されたブロックBLKに、書き込み動作、読み出し動作、および消去動作に必要な複数の電圧を転送する。
【0026】
カラムデコーダ27は、レジスタ23からカラムアドレスを受け、このカラムアドレスをデコードする。カラムデコーダ27は、デコードされたカラムアドレスに基づいて、各ビット線BLに所定の電圧を供給する。
【0027】
センスアンプユニット群28は、データの読み出し時には、メモリセルトランジスタからビット線に読み出されたデータを検知および増幅する。また、センスアンプユニット群28は、データの書き込み時には、書き込みデータをビット線BLに供給する。
【0028】
データレジスタ29は、データの読み出し時には、センスアンプユニット群28から転送されたデータを一時的に保持し、これをシリアルに入出力回路21へ転送する。また、データレジスタ29は、データの書き込み時には、入出力回路21からシリアルに転送されたデータを一時的に保持し、これをセンスアンプユニット群28へ転送する。データレジスタ29は、SRAMなどで構成される。
【0029】
熱履歴モニタ30は、制御回路24の制御に基づき、熱履歴を判定回路31に出力する。制御回路24は、メモリコントローラ3又はホスト装置4から信頼性検知コマンドが入力されると、熱履歴モニタ30に熱履歴の出力を指示する。
【0030】
熱履歴の指標としては、メモリセルの特性変動を用いる。具体的には、熱履歴の指標としては、ある読み出しレベルにおけるFBC(Fail Bit Count)を用いる。FBCは、ある読み出しレベルに到達できなかったビット数である。なお、FBCについては、後述する図4及び図5を用いて説明する。
【0031】
判定回路31は、熱履歴モニタ30から入力された熱履歴がパッケージ信頼性の許容値以上か否かを判定する。判定回路31は、熱履歴がパッケージ信頼性の許容値以上の場合、アラームを出力する。一方、判定回路31は、熱履歴がパッケージ信頼性の許容値未満の場合、信頼性検知(熱履歴の評価)を終了する。なお、判定回路31は、熱履歴がパッケージ信頼性の許容値未満の場合、パッケージ信頼性に対する使用割合を出力してもよい。
【0032】
制御回路24は、判定回路31により判定された判定結果をメモリコントローラ3又はホスト装置4に出力する。パッケージ信頼性の判定の実施サイクルは、使用される環境に応じて変更することができる。例えば、メモリシステム1が熱の影響を過度に受ける環境で使用される場合、パッケージ信頼性の判定の実施サイクルを短くする。一方、メモリシステム1が熱の影響を過度に受けない環境で使用される場合、パッケージ信頼性の判定の実施サイクルを長くする。
【0033】
(メモリセルアレイのブロック構成)
図3は、3次元構造のメモリセルアレイ20のブロックの構成の一例を示す図である。図3はメモリセルアレイ20を構成する複数のブロックのうちの1つのブロックBLKを示している。メモリセルアレイの他のブロックも図3と同様の構成を有する。
【0034】
図示するように、ブロックBLKは、例えば4つのストリングユニットSU0~SU3(以下、これらを代表してストリングユニットSUという)を含む。また各々のストリングユニットSUは、複数のメモリセルトランジスタMT(MT0~MT7)と、1個のダミーセルトランジスタDTと、選択ゲートトランジスタST1,ST2とを含むNANDストリングNSを有する。なお、NANDストリングNSに含まれるメモリセルトランジスタMTの個数は、図3では8個とするが、更に多数個であってもよい。選択ゲートトランジスタST1,ST2は、電気回路上は1つのトランジスタとして示しているが、構造上はメモリセルトランジスタと同じでもよい。また、選択ゲートトランジスタST1,ST2として、それぞれ複数の選択ゲートトランジスタを用いてもよい。さらに、メモリセルトランジスタMTと選択ゲートトランジスタST1,ST2との間には、ダミーセルトランジスタが設けられていてもよい。
【0035】
メモリセルトランジスタMTは、選択ゲートトランジスタST1,ST2間において、直列接続されるようにして配置されている。一端側(ビット線側)のメモリセルトランジスタMT7が、選択ゲートトランジスタST1に接続され、他端側(ソース線側)のメモリセルトランジスタMT0が、選択ゲートトランジスタST2に接続されている。
【0036】
ダミーセルトランジスタDTは、メモリセルトランジスタMTと同じ構造を有しているが、ホスト装置4からの要求に応じてメモリコントローラ3から送信されたデータの保持には使用されない。
【0037】
なお、図3の例では、ダミーセルトランジスタDTは、メモリセルトランジスタMT2とMT3との間に配置(直列接続)されているが、これに限定されることなく、選択トランジスタT2とメモリセルトランジスタMT0との間、メモリセルトランジスタMT7と選択トランジスタST1との間、あるいは、メモリセルトランジスタMT0~MT7のうち、任意の2つのメモリセルトランジスタMTの間に配置(直列接続)されていればよい。
【0038】
ストリングユニットSU0~SU3の各々の選択ゲートトランジスタST1のゲートは、それぞれ選択ゲート線SGD0~SGD3(以下、これらを代表して選択ゲート線SGDという)に接続される。また、ストリングユニットSU0~SU3の各々の選択ゲートトランジスタST2のゲートは、それぞれ選択ゲート線SGS0~SGS3(以下、これらを代表して選択ゲート線SGSという)に接続される。なお、各ブロックBLK内にある複数の選択ゲートトランジスタST2のゲートは、共通の選択ゲート線SGSに接続されていてもよい。
【0039】
同一のブロックBLK内にあるメモリセルトランジスタMT0~MT7のゲートは、それぞれワード線WL0~WL7に共通接続される。同様に、同一のブロックBLK内にあるダミーセルトランジスタDTの制御ゲートはダミーワード線DWLに共通接続される。すなわち、ワード線WL0~WL7及びダミーワード線DWLは、同一ブロックBLK内の複数のストリングユニットSU0~SU3間で共通に接続されているのに対し、選択ゲート線SGDは、同一ブロックBLK内であってもストリングユニットSU0~SU3毎に独立している。ブロックBLK内において同一行にあるメモリセルトランジスタMTiのゲートは、同一のワード線WLiに接続される。
【0040】
各NANDストリングNSは、対応するビット線に接続されている。従って、各メモリセルトランジスタMTは、NANDストリングNSに含まれる選択ゲートトランジスタST1,ST2や他のメモリセルトランジスタMTを介して、ビット線に接続されている。一般に、同一のブロックBLK内にあるメモリセルトランジスタMTのデータは、一括して消去される。一方、データの読み出しおよび書き込みは、典型的には、1つのストリングユニットSUに配設された1本のワード線WLに共通接続された複数のメモリセルトランジスタMTに対して、一括して行われる。このような、1つのストリングユニットSU内でワード線WLを共有するメモリセルトランジスタMTの組を、セルユニットCUと呼ぶ。
【0041】
セルユニットCUに対する書き込み動作は、ページを単位として実行される。例えば、各セルが、3ビット(8値)のデータを保持可能なTLC(Triple Level Cell)である場合、1つのセルユニットCUが、3ページ分のデータを保持することができる。各メモリセルトランジスタMTが保持することができる3ビットは、それぞれこの3ページに対応する。
【0042】
(閾値電圧分布の変化とFBCの関係)
図4は、熱ストレスによる閾値電圧分布の変化とFBCとの関係の一例を示す図である。
図4では、2bit/Cellの不揮発性メモリ2の閾値電圧分布例を示している。不揮発性メモリ2では、メモリセルの電荷蓄積層に蓄えられた電荷量により情報を記憶する。各メモリセルは、電荷量に応じた閾値電圧を有する。そして、メモリセルに記憶する複数のデータ値を、閾値電圧の複数の領域(閾値電圧分布領域)にそれぞれ対応させる。
【0043】
図4の、Er、A,B,Cと記載した4つの分布(山型)は、4つの閾値電圧分布領域を示している。このように、各メモリセルは、3つの境界によって仕切られた閾値電圧分布を有している。図4の横軸は閾値電圧を示し、縦軸はメモリビット(ビット数)の分布を示している。
【0044】
また、図4において、実線で示す4つの閾値電圧分布は、初期状態の閾値電圧分布を示し、破線で示す4つの閾値電圧分布は、熱ストレスを受けた後の閾値電圧分布を示している。すなわち、初期状態の閾値電圧分布を実線とした場合、熱ストレスを受けた後の閾値電圧分布は、破線のように変動する。
【0045】
そのため、例えば、読み出しレベルAに未達のビット数(すなわち、FBCであり、図4では斜線で示す)は、初期状態のFBCよりも熱ストレスを受けた後のFBCが増加する。
【0046】
図5は、熱ストレスの積算時間とFBCの関係の一例を示す図である。図5は、メモリセルに熱ストレスを実際に与えた際の熱ストレスの積算時間とFBCの関係を示している。
【0047】
図5に示すように、熱ストレスの積算時間に対してFBCの増加が相関を有している。具体的には、熱ストレスを与える時間が多くなると、それに比例してFBCも増加している。そのため、熱履歴モニタ30は、このFBCの増加量から熱履歴の積算をモニタすることができる。
【0048】
本実施形態では、このようなメモリセルの特性変動をパッケージが受けた熱履歴の指標とするため、まず、熱履歴モニタ30の初期化を行い、メモリセルの初期状態を記録する。具体的には、メモリセルの初期化は、MCP(Multi Chip Package)までの製造工程内において実施し、初期状態のFBCを判定回路31に記録する。初期状態は、メモリセルをある1つの閾値に固定したデータパターンにしてもよいし、規則性を持ったデータパターンにしてもよい。
【0049】
なお、MCPまでの製造工程以降の製品組み立て工程において、熱ストレスによるメモリセルの特性変動が無視できない場合、メモリセルの初期化を製品組み立て工程内で実施してもよい。
【0050】
また、パッケージ信頼性として許容される熱履歴とFBCの変動量の相関を事前に取得しておき、パッケージ信頼性として許容できるFBCの変動量を判定回路31に記録する。
【0051】
判定回路31は、事前に記録されたメモリセルの初期状態およびパッケージ信頼性として許容できるFBCの変動量と、熱履歴モニタ30からの熱履歴とを比較することで、パッケージ信頼性を判定する。
【0052】
なお、本実施形態では、熱履歴の指標として、メモリセルのFBCを一例に説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、選択ゲートの又はダミーゲートの特性変動、選択ゲートの閾値又はダミーゲートの閾値を用いたFBC、あるいは、これらのFBCの差分やバラつきの大きさ等からパッケージ信頼性の判定を行ってもよい。
【0053】
図6は、選択ゲートの閾値と熱ストレスによる閾値電圧分布の変化の一例を示す図である。図6では、初期状態の閾値電圧分布を実線で示し、熱ストレスを受けた後の閾値電圧分布を破線で示す。
【0054】
熱ストレスを受けて閾値電圧分布が変化することにより、ある読み出しレベル対して未達のビット数が増加する。そのため、判定回路31は、このFBCの変動量を用いて熱履歴の積算量をモニタする。
【0055】
さらに、長時間放置などによって、メモリセルの特性変動の線形性が失われる場合がある。すなわち、図5に示すような熱ストレスの積算時間とFBCの増加の相関が得られなくなることがある。図7は、長時間放置によりFBCの変動量が飽和したときの閾値電圧分布の変化の一例を示す図である。
【0056】
長時間放置によりFBCの変動量が飽和した場合は、メモリセルの特性変動の線形性が失われるため、メモリセルの特性変動をモニタすることで加わった熱履歴を正しく評価することができなくなってしまう。そのため、熱履歴によって再びメモリセルの特性変動が検知できる状態にするため、メモリセルの初期化が必要になる。
【0057】
具体的には、メモリセルの初期化の判定は、FBCが初期化基準に達したかどうかで判定する。FBCの初期化基準は、熱履歴モニタ30を備える不揮発性メモリ2の熱履歴に対するFBCの変動特性の評価において、熱履歴に対するFBCの変動の線形性が失われるFBCを事前評価しておく。メモリセルの初期化を伴うパッケージ信頼性の判定では、まず、不揮発性メモリ2(あるいはメモリコントローラ3)に初期化回数を保存する。次に、メモリセルのデータを初期化することで初期状態に戻す。そして、再度、FBCの変動量を熱履歴モニタ30において検出する。そして、判定回路31は、初期化回数と熱履歴モニタ30からのFBCとに基づき、パッケージ信頼性が許容値以上であるかを判定する。
【0058】
他に、メモリセルを初期化する際、初期化するFBCの基準を例えばX個とする。このときFBCがXを超えたときに、初期化する場合は、初期化回数を保存する。
【0059】
あるいは、初期化する際、X個の50%、すなわち0.5Xで初期化してもよい。あるいは任意の割合で初期化してもよい。このように初期化する基準が異なる場合、初期化回数のみではなく、FBC数も記録してもよい。
【0060】
1回目の初期化は0.5Xで初期化し、2回目は0.7Xで初期化したときは、2回初期化し、積算してFBC数1.2Xであるとして保存する。あるいは、1回目は0.5X、2回目は0.7Xで保存する、というように回数ごとにFBC数を保存してもよい。
【0061】
あるいは初期化基準は持たなくとも任意のときに初期化してもよい。このときも、初期化の回数と、FBC数とを記録してもよい。FBC数は初期化のたびに積算し、それを保存してもよい。
判定回路31は、保存されたFBC数を判定に用いてもよい。
【0062】
さらにまた、本実施形態では、不揮発性メモリ2A~2D、及び、ホスト装置4に接続されるメモリコントローラ3を備える構成であるが、これに限定されるものではない。例えば、メモリコントローラ3を備えずに、ホスト装置4と不揮発性メモリ2A~2Dを直接接続した構成であってもよい。
【0063】
(パッケージ信頼性の判定処理)
図8は、パッケージ信頼性の判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、メモリコントローラ3又はホスト装置4から信頼性検知コマンドが不揮発性メモリ2に送信される(S1)。この信頼性検知コマンドは、入出力回路21及びレジスタ23を経由して制御回路24に入力される。制御回路24は、信頼性検知コマンドが入力されると熱履歴モニタ30に熱履歴の出力を指示する。
【0064】
次に、制御回路24の指示に基づき、熱履歴モニタ30は、熱履歴を判定回路31に出力する(S2)。熱履歴は、上述したように、ある読み出しレベルに到達できなかったビット数、すなわち、FBCである。
【0065】
次に、判定回路31は、熱履歴モニタ30からの熱履歴がパッケージ信頼性の許容値以上か否かを判定する(S3)。判定回路31は、熱履歴がパッケージ信頼性の許容値以上であると判定した場合(S3:YES)、アラームを出力し(S4)、処理を終了する。
【0066】
一方、判定回路31は、熱履歴がパッケージ信頼性の許容値以上でない(許容値未満)と判定した場合(S3:NO)、パッケージ信頼性の使用割合を出力し(S5)、処理を終了する。
【0067】
制御回路24は、信頼性検知コマンドを送信したメモリコントローラ3又はホスト装置4に対して、判定回路31から出力されたアラームあるいはパッケージ信頼性の使用割合を送信する。
【0068】
以上のように、不揮発性メモリ2は、メモリセルの特性変動に応じた熱履歴を用いてパッケージが受けた熱の積算量からパッケージ信頼性を判定することで、データの安全性を向上させている。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図9は、第2の実施形態のメモリシステムの構成の一例を示すブロック図である。なお、図9において、図1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施形態のメモリシステム1Aは、メモリコントローラ3Aと、NAND型不揮発性メモリ5A~5Dとを備える。以下、4つのNAND型不揮発性メモリ5A~5Dを区別する必要がない場合には代表してNAND型不揮発性メモリ5という。また、NAND型不揮発性メモリのことを単に不揮発性メモリともいう。
【0071】
不揮発性メモリ5は、熱履歴モニタ30を備える。メモリコントローラ3Aは、図1のメモリコントローラ3に対して、判定回路31が追加されている。
【0072】
図10は、図9中の不揮発性メモリ5の一例を示すブロック図である。なお、図10において、図2と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
図10に示すように、不揮発性メモリ5は、図2の不揮発性メモリ2から判定回路31が削除されている。
【0074】
制御回路24には、メモリコントローラ3又はホスト装置4からの信頼性検知コマンドが入出力回路21及びレジスタ23を経由して入力される。
【0075】
制御回路24は、信頼性検知コマンドが入力されると、熱履歴モニタ30からメモリセルの特性変動に応じた熱履歴を受け取り、レジスタ23及び入出力回路21を経由してメモリコントローラ3Aに熱履歴を出力する。
【0076】
メモリコントローラ3Aに入力された熱履歴は、判定回路31に入力される。判定回路31は、入力された熱履歴がパッケージ信頼性の許容値以上か否かを判定する。また、本実施形態のように不揮発性メモリ5を複数備えている場合、判定回路31は、複数の不揮発性メモリ5から入力された熱履歴を平均化し、平均化した熱履歴がパッケージ信頼性の許容値以上か否かを判定する。このように、入力された熱履歴を平均化してパッケージ信頼性を判定することで、パッケージ信頼性のバラつきを抑えることができる。
【0077】
例えば、第1の実施形態では、不揮発性メモリ2のそれぞれが判定回路31を備えているため、極端にパッケージ信頼性が悪い不揮発性メモリ2が含まれていた場合、アラームが出力されてしまう。
【0078】
一方、本実施形態では、極端にパッケージ信頼性が悪い不揮発性メモリ5が含まれていた場合でも、他の不揮発性メモリの熱履歴の情報も含めてパッケージ信頼性を判定する。このように、メモリシステム1Aは、熱履歴を平均化して不揮発性メモリ5のパッケージ信頼性を判定することで、第1の実施形態のメモリシステム1よりもパッケージ全体としての寿命を長くすることができる。
【0079】
また、メモリコントローラ3Aに判定回路31を備えることで、不揮発性メモリ5A~5Dのそれぞれが判定回路を備える必要がなくなる。そのため、不揮発性メモリ5は、第1の実施形態の不揮発性メモリ2よりも回路面積やコストを抑えることができる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、一例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1A…メモリシステム、2A~2D,5A~5D…不揮発性メモリ、3,3A…メモリコントローラ、4…ホスト装置、10…ホストI/F回路、11…プロセッサ、12…RAM、13…バッファメモリ、14…メモリI/F回路、15…ECC回路、20…メモリセルアレイ、21…入出力回路、22…ロジック制御回路、23…レジスタ、24…制御回路、25…電圧生成回路、26…ロウデコーダ、27…カラムデコーダ、28…センスアンプユニット群、29…データレジスタ、30…熱履歴モニタ、31…判定回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10