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特開2024-13269画像形成方法、画像形成物の製造方法、及び画像形成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013269
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】画像形成方法、画像形成物の製造方法、及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20240125BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20240125BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20240125BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20240125BHJP
   D06P 5/08 20060101ALI20240125BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B41M5/00 100
C09D11/54
C09D11/322
D06P5/30
D06P5/08 Z
B41M5/00 120
B41M5/00 134
G03G9/08
G03G9/08 391
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115211
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】坂口 愛
(72)【発明者】
【氏名】水野 菜央
【テーマコード(参考)】
2H186
2H500
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2H186AB09
2H186AB12
2H186AB29
2H186AB44
2H186AB46
2H186BA08
2H186DA17
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB54
2H186FB58
2H500AA14
2H500FA14
4H157AA02
4H157BA15
4H157CA15
4H157CB08
4H157CC02
4H157CC03
4H157DA01
4H157DA24
4H157GA06
4H157JA10
4H157JB03
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE06
4J039BA04
4J039BC09
4J039BC13
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE28
4J039CA06
4J039EA15
4J039EA19
4J039EA36
4J039EA46
4J039EA47
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 にじみがなく、耐擦性に優れる画像形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明の画像形成方法は、画像形成する対象物に水性インクをインクジェット方式により付与する画像形成工程と、前記水性インクを付与した領域に樹脂粉体を付与する樹脂粉体付与工程と、前記水性インクを付与した領域及び前記樹脂粉体を付与した領域に熱を加えて、前記水性インク及び前記樹脂粉体を、前記対象物に熱定着する熱定着工程と、を有し、前記水性インクが顔料と、水溶性樹脂及び樹脂エマルションの少なくとも一方と、を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成する対象物に水性インクをインクジェット方式により付与する画像形成工程と、
前記水性インクを付与した領域に樹脂粉体を付与する樹脂粉体付与工程と、
前記水性インクを付与した領域及び前記樹脂粉体を付与した領域に熱を加えて、前記水性インク及び前記樹脂粉体を、前記対象物に熱定着する熱定着工程と、
を有し、
前記水性インクが顔料と、水溶性樹脂及び樹脂エマルションの少なくとも一方と、を含む画像形成方法。
【請求項2】
前記水性インクの付与量(X)と、前記樹脂粉体の付与量(Y)の比率(X/Y)が、0.04以上、かつ、240以下であることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記水溶性樹脂および前記樹脂エマルションは、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂のいずれかである請求項1又は2記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記水性インク全量に対する、前記水溶性樹脂または前記樹脂エマルションの固形分配合量が、5質量%以上、かつ、10質量%以下である請求項1又は2記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記樹脂粉体の付与量が0.1mg/cm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記樹脂粉体が熱可塑性樹脂を含む、請求項1又は2記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記樹脂粉体は帯電した樹脂粉体である請求項1又は2記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記樹脂粉体付与工程が、電子写真方式により行われ、
前記樹脂粉体付与工程において、前記帯電した樹脂粉体を付与する領域が、前記水性インクを付与した領域に対して1%以上大きく、
前記熱定着工程が、非接触により行われ、
前記画像形成工程後に前記熱定着工程を行い、その後、前記樹脂粉体付与工程を行い、さらにその後、前記熱定着工程を行うことを特徴とする請求項7記載の画像形成方法。
【請求項9】
画像形成工程を含み、
前記画像形成工程は、請求項1又は2記載の画像形成方法により実施される、
画像形成物の製造方法。
【請求項10】
インク流路、樹脂粉体収容部、インク付与手段、及び樹脂粉体付与手段を含み、
前記インク流路に供給された水性インクを前記インク付与手段によって画像形成する対象物に付与し、
前記水性インクが付与された領域に重なるよう、前記樹脂粉体収容部に収容された樹脂粉体を前記樹脂粉体付与手段によって画像形成する対象物に付与し、
前記インク流路に、請求項1記載の水性インクが供給されることを特徴とする、画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法、画像形成物の製造方法、及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷物の印刷面にオーバーコート液を吐出して被膜を形成して、印刷物の耐擦性を高める画像形成方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-053942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような液体のオーバーコート剤を使用した画像形成方法の場合、形成した画像ににじみが発生する問題がある。また、液体のオーバーコート剤は画像表面で濡れ広がるため、十分な耐擦性も得られない。
【0005】
そこで、本発明は、にじみがなく、耐擦性にも優れる画像形成方法、画像形成物の製造方法、及び画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の画像形成方法は、
画像形成する対象物に水性インクをインクジェット方式により付与する画像形成工程と、
前記水性インクを付与した領域に樹脂粉体を付与する樹脂粉体付与工程と、
前記水性インクを付与した領域及び前記樹脂粉体を付与した領域に熱を加えて、前記水性インク及び前記樹脂粉体を、前記対象物に熱定着する熱定着工程と、
を有し、
前記水性インクが顔料と、水溶性樹脂及び樹脂エマルションの少なくとも一方と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の画像形成方法、画像形成物の製造方法、及び画像形成システムは、にじみがなく、耐擦性にも優れる画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の画像形成システムにおけるインクジェット記録装置の一例の構成を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明の画像形成システムにおけるレーザープリンタ(電子写真方式)の一例の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、「質量」という場合は、特に断らない限り「重量」と読み替えてもよいものとする。例えば、「質量比」は、特に断らない限り「重量比」と読み替えてもよく、「質量%」は、特に断らない限り「重量%」と読み替えてもよいものとする。
【0010】
本発明の画像形成方法について説明する。本発明の画像形成方法は、画像形成する対象物に水性インクをインクジェット方式により付与する画像形成工程と、前記水性インクを付与した領域に樹脂粉体を付与する樹脂粉体付与工程と、前記水性インクを付与した領域及び前記樹脂粉体を付与した領域に熱を加えて、前記水性インク及び前記樹脂粉体を、前記対象物に熱定着する熱定着工程と、を有し、前記水性インクが顔料と、水溶性樹脂及び樹脂エマルションの少なくとも一方と、を含む。
【0011】
本発明において、「顔料」という場合は、特に断らない限り「樹脂分散顔料」及び「自己分散顔料」の少なくとも一方を含む。前記樹脂分散顔料は、例えば、樹脂分散剤によって溶媒に顔料粒子が分散可能となったものである。また、前記自己分散顔料は、例えば、樹脂分散剤を使用しなくても溶媒に顔料粒子が分散可能なものである。
【0012】
前記樹脂分散顔料は、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等があげられる。前記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等があげられる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等をあげることができる。前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等があげられる。また、その他の顔料であっても水相に分散可能なものであれば使用できる。これらの顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6及び7;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、15、16、17、55、74、78、150、151、154、180、185及び194;C.I.ピグメントオレンジ31及び43;C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、12、15、16、48、48:1、53:1、57、57:1、112、122、123、139、144、146、149、150、166、168、175、176、177、178、184、185、190、202、209、221、222、224及び238;C.I.ピグメントバイオレット19及び196;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22及び60;C.I.ピグメントグリーン7及び36;並びにこれらの顔料の固溶体等もあげられる。
【0013】
前記樹脂分散剤としては、例えば、一般的な高分子分散剤(顔料分散用樹脂や樹脂分散剤等ともいう)等を用いてよく、自家調製してもよい。また、本発明の水性インクにおいて、前記顔料は、高分子によりカプセル化されたものであってもよい。前記樹脂分散剤としては、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸の少なくとも一方をモノマーとして含むものを用いることができ、例えば、市販品を用いてもよい。前記樹脂分散剤は、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等の疎水性単量体、又は、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体からなる群から選ばれる2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グラフト共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等であってもよい。前記市販品としては、例えば、ジョンソンポリマー(株)製の「ジョンクリル(登録商標)611」、「ジョンクリル(登録商標)60」、「ジョンクリル(登録商標)586」、「ジョンクリル(登録商標)687」、「ジョンクリル(登録商標)63」及び「ジョンクリル(登録商標)HPD296」;ビックケミー社製の「Disperbyk190」及び「Disperbyk191」;ゼネカ社製の「ソルスパース20000」及び「ソルスパース27000」;等があげられる。
【0014】
前記顔料分散用樹脂を用いた前記顔料の分散方法としては、例えば、分散装置を使用して顔料を分散させることがあげられる。前記顔料の分散に使用する分散装置は、一般的な分散機であれば特に限定はされないが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル(例えば、高速型)等があげられる。
【0015】
前記自己分散型顔料は、例えば、顔料粒子にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性官能基及びこれらの塩の少なくとも一種が、直接又は他の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。前記自己分散型顔料は、例えば、特開平8-3498号公報、特表2000-513396号公報、特表2008-524400号公報、特表2009-515007号公報、特表2011-515535号公報等に記載の方法によって顔料が処理されたものを用いることができる。前記自己分散型顔料の原料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。また、前記処理を行うのに適した顔料としては、例えば、三菱化学(株)製の「MA8」及び「MA100」等のカーボンブラック等があげられる。前記自己分散型顔料は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、キャボット・コーポレーション社製の「CAB-O-JET(登録商標)200」、「CAB-O-JET(登録商標)250C」、「CAB-O-JET(登録商標)260M」、「CAB-O-JET(登録商標)270Y」、「CAB-O-JET(登録商標)300」、「CAB-O-JET(登録商標)400」、「CAB-O-JET(登録商標)450C」、「CAB-O-JET(登録商標)465M」及び「CAB-O-JET(登録商標)470Y」;オリエント化学工業(株)製の「BONJET(登録商標)BLACK CW-2」及び「BONJET(登録商標)BLACK CW-3」;東洋インク製造(株)製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」等があげられる。
【0016】
前記水性インク全量における前記顔料の顔料固形分配合量は、例えば、0.5質量%~20質量%、好ましくは、1質量%~10質量%、より好ましくは、3質量%~5質量%である。
【0017】
前記水性インクは、水溶性樹脂及び樹脂エマルションの少なくとも一方を含む。
【0018】
前記水溶性樹脂は、例えば、構造中の親水性部の含有率がより高く、水に溶解する樹脂があげられる。前記水溶性樹脂は、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等があげられる。前記水溶性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記水溶性樹脂は、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0019】
前記樹脂エマルションは、例えば、樹脂微粒子と、分散媒(例えば、水)とで構成されるものであり、前記樹脂微粒子は、前記分散媒に対して溶解状態ではなく、特定の粒子径を持って分散している。前記樹脂エマルションは、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等があげられる。前記樹脂エマルションは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記水性樹脂エマルションは、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0020】
前記樹脂エマルションとしては、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルションとして、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス(登録商標)460」;三井化学(株)製の「タケラック(登録商標)W-6110」;DIC(株)製の「ハイドラン(登録商標)WLS-210」;等があげられ、ポリエステル系ウレタン樹脂エマルションとして、三洋化成工業(株)製の「ユーコート(登録商標)UWS-145」;三井化学(株)製の「タケラック(登録商標)W-5030」;DIC(株)製の「ハイドラン(登録商標)HW-920」;等があげられ、ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルションとして、三井化学(株)製の「タケラック(登録商標)W-6061T」;DIC(株)製の「ハイドラン(登録商標)FCS-855」、「ハイドラン(登録商標)WLS-201」;等があげられる。
【0021】
前記水性インク全量に対する、前記水溶性樹脂または前記樹脂エマルションの固形分配合量は、例えば、1質量%~20質量%、好ましくは、5質量%~10質量%、より好ましくは、7質量%~10質量%である。
【0022】
前記水性インクは、例えば、さらに、水、界面活性剤、湿潤剤、浸透剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防カビ剤、架橋剤等の成分を含んでもよい。
【0023】
前記水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。前記水性インク全量における前記水の含有量は、例えば、10質量%~90質量%、好ましくは、20質量%~80質量%である。前記水の含有量は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
【0024】
前記界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤があげられる。前記ノニオン性界面活性剤は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1004」、「オルフィン(登録商標)E1006」及び「オルフィン(登録商標)E1010」等があげられる。
【0025】
前記水性インク全量における前記ノニオン性界面活性剤の含有量は、例えば、0.1質量%~2質量%、好ましくは、0.3質量%~1.5質量%、より好ましくは、0.5質量%~1質量%である。
【0026】
前記界面活性剤は、さらに、ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤(例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等)を含んでもよいが、ノニオン性界面活性剤のみを前記界面活性剤として用いてもよい。
【0027】
前記湿潤剤は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリアルキレングリコール等のポリエーテル;アルキレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;2-ピロリドン;N-メチル-2-ピロリドン;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。前記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等があげられる。これらの湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中で、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。
【0028】
前記水性インク全量における前記湿潤剤の含有量は、例えば、1質量%~30質量%、好ましくは、5質量%~20質量%、より好ましくは、10質量%~15質量%である。
【0029】
前記浸透剤は、例えば、グリコールエーテル系化合物、及びアルキレン系ジオールがあげられる。前記グリコールエーテル系化合物は、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル及びトリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等があげられる。アルキレン系ジオールは、例えば、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール及び3-メチル-1,5-ペンタンジオール等があげられる。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
前記水性インク全量における前記浸透剤の含有量は、例えば、0質量%~20質量%、好ましくは、0質量%~15質量%、より好ましくは、1質量%~6質量%である。
【0031】
本発明において「樹脂粉体」とは、樹脂を主成分とする、粉体を指す。前記樹脂粉体は、例えば、結着樹脂、離型剤、帯電制御剤、及び外添剤等の成分を含んでもよい。なお、結着樹脂、離型剤、帯電制御剤、及び外添剤、及び顔料等を有するものとしては印刷に使用されるトナーがあるが、当該トナーから顔料を除いたものを、樹脂粉体としてもよい。
【0032】
前記結着樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよい。前記熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂等があげられる。前記ポリエステル樹脂としては、酸価が、例えば、0.5~40mgKOH/g、好ましくは、1.0~20mgKOH/gであってもよい。また、重量平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による)が、例えば、9,000~200,000、好ましくは、20,000~150,000であってもよい。さらに、ゲル分(THF不溶分)が、例えば、10質量%以下、好ましくは、0.5~10質量%でであってもよい。またさらに、ガラス転移点(Tg)が、例えば、50~70℃、好ましくは、55~65℃であってもよい。具体的には、市販のポリエステル樹脂として、例えば、FC1565(三菱レイヨン製)、FC023(三菱レイヨン製)等があげられる。本発明の画像形成方法に用いる水性インクは、前述のとおり、水溶性樹脂及び樹脂エマルションの少なくとも一方を含む。これらは前記画像形成する対象物への定着性を考慮して添加されているが、定着のためには加熱(熱定着)が必要となる。結着樹脂として、例えば、熱硬化性樹脂を使用した場合、前記熱硬化性樹脂は溶融しないため、オーバーコートができなる。したがって、結着樹脂として、熱定着時に溶融する前記熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0033】
前記離型剤は、例えば、ポリオレフィン系ワックス、長鎖炭化水素系ワックス、エステル系ワックスがあげられる。
【0034】
前記帯電制御剤は、前記樹脂粉体に帯電性を付与する。前記帯電性は、正帯電性および負帯電性のいずれであってもよい。前記帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等があげられる。さらには、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料等があげられる。さらには、スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物等もあげられる。
【0035】
前記帯電制御剤の配合割合は、結着樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0036】
前記外添剤は、前記樹脂粉体の帯電性、流動性、保存安定性を調整する。前記外添剤としては、例えば、無機粒子や合成樹脂粒子等があげられる。
【0037】
前記無機粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物、及びこれらの疎水性化処理物等があげられる。前記シリカの疎水化処理物は、例えば、シリカの微粉体を、シリコーンオイルや、ジクロロジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等のシランカップリング剤で処理することにより、得ることができる。
【0038】
前記合成樹脂粒子としては、例えば、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン-アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体でシェルがメタクリル酸エステル重合体からなるコアシェル型粒子等があげられる。
【0039】
前記外添剤の粒径は、前記結着樹脂の粒径よりも小さい。外添剤の粒径は、例えば、2μm以下、好ましくは、0.1μm以下、さらに好ましくは、0.03μm以下である。
【0040】
前記外添剤の配合割合は、前記結着樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、例えば、10質量部以下である。
【0041】
前記水性インクの付与量の下限は、例えば、0.004mg/cm以上、0.04mg/cm以上、0.4mg/cm以上である。前記水性インクの付与量の上限は、例えば、24mg/cm以下、12mg/cm以下、8mg/cm以下、4mg/cm以下である。なお、前記水性インクの付与量の上限は、水性インクのにじみの観点から、4mg/cm以下であることが好ましい。
【0042】
前記樹脂粉体の付与量の下限は、例えば、0.1mg/cm以上である。前記樹脂粉体の付与量の上限は、例えば、1.2mg/cm以下である。本発明者らは、前記樹脂粉体の付与量が0.1mg/cm未満である場合、十分なOD値が得られないことを突き止めている。また、消費量抑制の観点からも、前記樹脂粉体の付与量は少なければ少ないほどよい。これらの理由から、前記樹脂粉体の付与量は、0.1mg/cm以上であることが好ましい。
【0043】
前記水性インクの付与量(X)と、前記樹脂粉体の付与量(Y)の比率(X/Y)は、例えば、0.04~240、好ましくは、0.04~80、より好ましくは、0.4~80、さらに好ましくは、40~80である。
【0044】
前記画像形成する対象物は、例えば、布帛、または紙などの記録媒体等があげられる。
【0045】
前記布帛は、編物及び織物の双方を含んでいてもよい。前記布帛の材質は、例えば、天然繊維、合成繊維があげられる。前記天然繊維としては、例えば、綿、絹等があげられる。前記布帛の材質は、例えば、複数種の前記天然繊維を混ぜて紡績された混紡であってもよいし、前記天然繊維と前記合成繊維との繊維を混ぜて紡績された混紡であってもよい。前記合成繊維としては、例えば、ポリエステル、アクリル、レーヨン、ウレタン、ナイロン等があげられる。前記天然繊維と前記合成繊維との混紡としては、例えば、綿/ポリエステル=50%/50%等があげられる。
【0046】
前記記録媒体は、例えば、普通紙、光沢紙、マット紙、コート紙、合成紙、板紙、ダンボール、フィルム等があげられる。
【0047】
前記画像形成工程は、例えば、図1に示すインクジェット記録装置を用いて実施できる。
【0048】
図1に、前記インクジェット記録装置の一例の構成を示す。図示のとおり、このインクジェット記録装置1は、インクカートリッジ101と、インク付与手段(インクジェットヘッド)102と、ヘッドユニット103と、キャリッジ104と、駆動ユニット105と、プラテンローラ106と、パージ装置107とを主要な構成要素として含む。また、図示していないが、インクカートリッジ101と、インク付与手段102とは、インク流路により接続されており、前記水性インクが収容されたインクカートリッジ101から、前記インク流路に前記水性インクが供給され、インク付与手段102は、前記水性インクを画像形成する対象物Pに付与する。
【0049】
インクカートリッジ101は、例えば、前記水性インクを含んでもよい。前記インクカートリッジの本体としては、例えば、従来公知のものを使用できる。
【0050】
また、図示していないが、インクジェット記録装置1は、前記水性インクを含むインクカートリッジ101に加えて、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の水性インクを、それぞれ1色ずつ含む4つのインクカートリッジのセットを含んでもよい。また、前記4つのインクカートリッジのセットに代えて、水性イエローインク収納部、水性マゼンタインク収納部、水性シアンインク収納部及び水性ブラックインク収納部を形成するようにその内部が間仕切りされた一体型のインクカートリッジを用いてもよい。
【0051】
ヘッドユニット103に設置されたインクジェットヘッド102は、画像形成する対象物Pに画像形成を行う。キャリッジ104には、インクカートリッジ101及びヘッドユニット103が搭載される。駆動ユニット105は、キャリッジ104を直線方向に往復移動させる。駆動ユニット105としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008-246821号公報参照)。プラテンローラ106は、キャリッジ104の往復方向に延び、インクジェットヘッド102と対向して配置されている。
【0052】
パージ装置107は、インクジェットヘッド102の内部に溜まる気泡等を含んだ不良インクを吸引する。パージ装置107としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008-246821号公報参照)。
【0053】
パージ装置107のプラテンローラ106側には、パージ装置107に隣接してワイパ部材118が配設されている。ワイパ部材118は、へら状に形成されており、キャリッジ104の移動に伴って、インクジェットヘッド102のノズル形成面を拭うものである。図1において、キャップ117は、インクの乾燥を防止するため、記録が終了するとリセット位置に戻されるインクジェットヘッド102の複数のノズルを覆うものである。
【0054】
本例のインクジェット記録装置1においては、インクカートリッジ101は、ヘッドユニット103と共に、1つのキャリッジ104に搭載されている。ただし、本発明は、これに限定されない。インクジェット記録装置1において、インクカートリッジ101は、ヘッドユニット103とは別のキャリッジに搭載されていてもよい。また、インクカートリッジ101は、キャリッジ104には搭載されず、インクジェット記録装置1内に配置、固定されていてもよい。これらの態様においては、例えば、インクカートリッジ101と、キャリッジ104に搭載されたヘッドユニット103とが、チューブ等の前記インク流路により連結され、インクカートリッジ101からヘッドユニット103に前記インクが供給される。また、これらの態様においては、インクカートリッジ101に代えて、ボトル形状のインクボトルを用いてもよい。この場合、前記インクボトルには、外部から内部にインクを注入するための注入口が設けられていることが好ましい。
【0055】
このインクジェット記録装置1を用いた前記画像形成工程は、例えば、つぎのようにして実施される。まず、画像形成する対象物Pが、インクジェット記録装置1の側方又は下方から供給される。画像形成する対象物Pは、インクジェットヘッド102と、プラテンローラ106との間に導入される。導入された画像形成する対象物Pに、インクジェットヘッド102から付与される水性インクにより所定の画像が形成される。画像形成後の画像形成する対象物Pは、インクジェット記録装置1から排出される。図1においては、画像形成する対象物Pの供給機構及び排出機構の図示を省略している。
【0056】
図1に示す装置では、シリアル型インクジェットヘッドを採用するが、本発明は、これに限定されず、例えば、ライン型インクジェットヘッドやロールトゥロールを採用する装置であってもよい。なお、前記シリアル型インクジェットヘッドは、インクジェットヘッドを画像形成対象物の幅方向に往復させつつ印刷するインクジェットヘッドである。ライン型インクジェットヘッドは、画像形成対象物の幅方向全体をカバーするインクジェットヘッドである。ロールトゥロールは、ロール状の画像形成対象物を繰り出して印刷し、再びロール状に巻き取る方式である。
【0057】
前記樹脂粉体付与工程は、例えば、手作業で行ってもよいし、電子写真方式により行ってもよい。手作業で行う場合、例えば、手、または、匙、刷毛、粉ふるい等の器具を用いて、前記水性インクが付与された領域に前記樹脂粉体を付与することができる。電子写真方式で行う場合、例えば、従来公知のレーザープリンタを使用して、前記水性インクが付与された領域に前記樹脂粉体を付与することができる。
【0058】
前記電子写真方式は、例えば、図2に示すレーザープリンタ(電子写真方式)を用いて実施できる。
【0059】
図2に示すレーザープリンタ2は、画像形成ユニット200を備える。画像形成ユニット200は、搬送されてきた画像形成する対象物Pの表面に樹脂粉体を転写するプロセスカートリッジ201と、プロセスカートリッジ201の現像感光体ドラム203の表面を露光する露光ユニット205とを備えている。
【0060】
プロセスカートリッジ201は、現像ローラ202と、現像感光体ドラム203と、転写ローラ204等とを備えている。露光ユニット205は、レーザダイオード、ポリゴンミラー、レンズ、及び反射鏡等を備えており、レーザープリンタ2に入力された画像データに基づいてレーザ光を現像感光体ドラム203へ向けて照射することにより、現像感光体ドラム203の表面を露光する。
【0061】
現像感光体ドラム203は、現像ローラ202に隣接して配置されている。現像感光体ドラム203の表面は、図示しない帯電器により一様に正帯電された後、露光ユニット205により露光される。現像感光体ドラム203の露光された部分は他の部分よりも電位が低くなり、現像感光体ドラム203に画像データに基づく静電潜像が形成される。そして、静電潜像が形成された現像感光体ドラム203の表面に、正に帯電された樹脂粉体が現像ローラ202から供給されることにより、静電潜像が顕像化されて現像剤像となる。
【0062】
転写ローラ204は、現像感光体ドラム203に対向配置され、図示しないバイアス印加手段により負の転写バイアスが印加される。転写ローラ204の表面に転写バイアスがされている状態で、現像剤像(樹脂粉体)が形成された現像感光体ドラム203と転写ローラ204との間(転写位置)で画像形成する対象物Pを挟持しなから搬送することにより、現像感光体ドラム203の表面に形成された現像剤像(樹脂粉体)が画像形成する対象物Pの表面に転写される。
【0063】
前記樹脂粉体は、前述のとおり、例えば、帯電した樹脂粉体であってもよい。前記樹脂粉体付与工程において、前記帯電した樹脂粉体を付与する領域は、前記水性インクを付与した領域に対して少し大きくてもよい。前記少し大きくとは、例えば、0.5%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは、2%以上である。
【0064】
前記樹脂粉体付与工程が電子写真方式ではない場合、例えば、前記樹脂粉体は、前記帯電制御剤、及び前記離型剤を含まなくてもよい。
【0065】
前記熱定着工程における熱定着は、例えば、前記画像形成する対象物と接触して行ってもよいし、非接触で行ってもよい。前記接触する方法としては、例えば、ヒートローラ、市販のホットプレス機等を用いる方法があげられる。前記非接触の方法としては、例えば、オーブン、ベルトコンベアオーブン、ドライヤー等を用いる方法があげられる。前記熱定着における加熱部材の温度は、例えば、100℃~200℃であり、好ましくは、100℃~150℃、より好ましくは、110℃~130℃である。
【0066】
前記樹脂粉体付与工程が、電子写真方式により行われる場合、例えば、前記熱定着工程が非接触で行われ、前記画像形成工程後に前記熱定着工程を行い、その後、前記樹脂粉体付与工程を行い、さらにその後、前記熱定着工程を行ってもよい。電子写真方式で前記樹脂粉体付与工程を行う場合、前記樹脂粉体付与工程を行う前に前記水性インクが付与された領域を非接触で熱定着することで、前記樹脂粉体を塗布するローラの汚染を防ぐことができる。
【0067】
前記画像形成工程後に前記熱定着工程を行う場合、図示していないが、図1のインクジェット記録装置1は、さらに、加熱処理部を含んでいてもよい。前記加熱処理部は、その内部に、接触加熱部材、または非接触加熱部材を含んでもよい。前記接触加熱部材としては、例えば、ヒートローラ、熱板等があげられる。前記非接触加熱部材としては、例えば、オーブン、ベルトコンベアオーブン、ドライヤー等があげられる。前記加熱処理部は、インクジェット記録装置1とは別個独立に設けられてもよい。
【0068】
つぎに、本発明の画像形成物の製造方法について説明する。本発明の画像形成物の製造方法は、画像形成工程を含み、前記画像形成工程は、本発明の画像形成方法により実施される。
【0069】
つぎに、本発明の画像形成システムについて説明する。本発明の画像形成システムは、インク流路、樹脂粉体収容部、インク付与手段、及び樹脂粉体付与手段を含み、前記インク流路に供給された水性インクを前記インク付与手段によって画像形成する対象物に付与し、前記水性インクが付与された領域に重なるよう、前記樹脂粉体収容部に収容された樹脂粉体を前記樹脂粉体付与手段によって画像形成する対象物に付与し、前記インク流路に、前記実施形態に記載の水性インクが供給されることを特徴とする。
【0070】
本発明の画像形成システムは、例えば、図1のインクジェット記録装置1と、図2のレーザープリンタ2とを組み合わせたものであってもよい。本発明の画像形成システムは、例えば、インクジェット記録装置1と、レーザープリンタ2とが別個独立に設けられてもよいし、これらが一体となっていてもよい。
【実施例0071】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例により限定及び制限されない。また、以下の説明において、「部」および「%」は、特に言及のない限り、質量基準である。さらに、各種物性は、後述する測定方法に準じて測定した。
【0072】
(水性インク)
1.顔料分散液の調整
<自己分散Bk>
三菱化学(株)製のカーボンブラック「#2650」40gを、イオン交換水200gに混合して、ビーズミルにて粉砕した。これにカルボキシル基剤を添加して、加熱撹拌を行い、酸化処理した。ついで、得られた液を溶剤にて数回洗浄した後、水中に注ぎ、再度水洗を繰り返した後、フィルターにてろ過処理し、表1に示す自己分散Bk顔料を得た。この自己分散Bk顔料に含まれるカーボンブラックの平均粒子径を、(株)堀場製作所製の「LB-550」を用いて測定したところ、135nmであった。
【0073】
<樹脂分散Bk>
顔料(カーボンブラック)20wt%、スチレン-アクリル酸共重合体の水酸化ナトリウム中和物7wt%(酸価175mgKOH/g、分子量10000)に、純水を加えて全体を100wt%とし、攪拌混合して混合物を得た。この混合物を、0.3mm径ジルコニアビーズを充填した湿式サンドミルに入れて、6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータにより取り除き、孔径3.0μmセルロースアセテートフィルターでろ過することにより、表1に示す樹脂分散Bkを得た。なお、スチレン-アクリル酸共重合体は、一般に顔料の分散液として用いられる水溶性のポリマーである。
【0074】
<樹脂分散M>
顔料(C.I.ピグメントレッド122)20質量%、スチレン-アクリル酸共重合体の水酸化ナトリウム中和物 7質量%(酸価50mgKOH/g、分子量10000)に、純水を加え全体を100質量%とし、撹拌混合して混合物を得た。この混合物を、0.3mm径ジルコニアビーズを充填した湿式サンドミルに入れ、6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータにより取り除き、孔径3.0μmセルロースアセテートフィルターでろ過することにより、表1に示す樹脂分散Mを得た。なお、スチレン-アクリル酸共重合体は、一般に顔料の分散剤として用いられる水溶性のポリマーである。
【0075】
2.定着樹脂
<ウレタン樹脂>
グリコール類と、ポリイソシアネートとを反応させて合成したものを用いた。この定着樹脂の平均粒子径を、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製の「LB-550」)を用いて測定したところ、40nmであった。
【0076】
<アクリル樹脂>
44.7wt%モビニール6899D(ジャパンコーティングレジン製)を用いた。
【0077】
<ポリエステル樹脂>
30wt%エリーテルKT-8803(ユニチカ製)を用いた。
【0078】
3.水性インクの調整
表1の水性インク組成における、顔料を除く成分を、均一に混合し、インク溶媒を得た。次に、顔料を前記インク溶媒に加え、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、表1に示す実施例1~15、比較例1~3の水性インクを得た。
【0079】
4.オーバーコート(OC)インクの調整
表1のOCインク組成における、定着剤、湿潤剤、及び界面活性剤を、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、表1に示す比較例3の水性インク(OCインク)を得た。
【0080】
(樹脂粉体)
1.帯電制御樹脂微粒子懸濁液の調製工程
MEK82.5部と、帯電制御樹脂(商品名「FCA-201PS」、藤倉化成製)17.5部とを混合攪拌し、帯電制御樹脂をMEKに溶解させて、帯電制御樹脂液を得た。この帯電制御樹脂液100部に、蒸留水100部を混合し、ホモジナイザー(ローター・ステーター式、シャフト18F、ローター径12.5mm:DIAX-900型ハイドルフ製)を用いて、回転数16000rpm(先端周速10.5m/s)で20分間攪拌して乳化させて帯電制御樹脂乳化液を得た。得られた帯電制御樹脂乳化液を1Lセパラブルフラスコへ移し、窒素を気相中へ送気しながら、60℃で120分間、加熱攪拌してMEKを揮発させて除去し、帯電制御樹脂微粒子が分散された帯電制御樹脂微粒子懸濁液を得た。帯電制御樹脂微粒子懸濁液の固形分濃度は、22.9%であった。また、帯電制御樹脂微粒子懸濁液中の帯電制御樹脂微粒子の体積平均粒子径(メジアン径:D50)は、110nmであった。
【0081】
2.樹脂粉体母粒子製造工程
(1)母体微粒子懸濁液
(1-1)結着樹脂液の調製
ポリエステル樹脂(FC1565:Tg62℃、Mn(数平均分子量)3600、Mw(重量平均分子量)50000、ゲル分2wt%未満、酸価6.0KOHmg/g:三菱レイヨン製)180部と、MEK720部を混合して攪拌し、これを液温70℃に加熱攪拌して結着樹脂液を得た。
【0082】
(1-2)結着樹脂乳化液の調製
得られた結着樹脂液900部と、蒸留水900部と、1規定の水酸化ナトリウム水溶液9.0部とを混合し、ホモジナイザー(シャフト22F、ローラ径:16.5mm)にて回転数15000rpm(先端周速13.0m/s)で20分間攪拌して乳化させて結着樹脂乳化液を得た。
【0083】
(1-3)母体微粒子懸濁液の調製
これを2Lセパラブルフラスコへ移し、窒素を気相中へ送気しながら、75℃で140分間加熱攪拌してMEKを除去し、母体微粒子が分散された母体微粒子懸濁液を得た。母体微粒子懸濁液の固形分は、23.1質量%であった。また、母体微粒子懸濁液中の母体微粒子の体積平均粒子径(メジアン径:D50)は、299nmであった。また、母体微粒子懸濁液中の母体微粒子のガラス転移点(Tg)は、58.3℃であった。
【0084】
(2)樹脂粉体母粒子懸濁液
次いで、母体微粒子懸濁液692.6部に、ノニオン性界面活性剤(エパン785:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー:第一工業製薬製)の5%水溶液57.6部を混合し、蒸留水849.8部で希釈して、固形分濃度10%の母体微粒子懸濁液の希釈液1600部を準備した。この希釈液に、凝集剤として0.2規定の塩化アルミニウム水溶液35部を添加し、ホモジナイザー(シャフト22F、ローラ径:16.5mm)にて、回転数8000rpmで10分間、高速混合した。その後、希釈液を、6枚平板タービン翼(φ75mm)にて回転数300rpmで攪拌しながら45℃に加熱して母体微粒子を凝集させた。その後、凝集停止剤として0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液46部を投入した後、90℃まで昇温し、約6.5時間攪拌し、樹脂粉体母粒子懸濁液を得た。得られた樹脂粉体母粒子懸濁液を濾過し、濾別された樹脂粉体母粒子を、蒸留水で洗浄した後、セパラブルフラスコへ投入した。そこへ蒸留水を注いで、樹脂粉体母粒子を再び分散させ、固形分10質量%の樹脂粉体母粒子懸濁液1600部(樹脂粉体母粒子として160部)を得た。樹脂粉体母粒子の体積基準の平均粒子径(Dv)は、8.1μmであった。
【0085】
3.樹脂粉体化工程
(1)樹脂粉体母粒子の帯電性付与
25℃の湯浴中において、固形分10質量%の樹脂粉体母粒子懸濁液1600部(樹脂粉体母粒子として160部)に、帯電制御樹脂微粒子が分散された帯電制御樹脂微粒子懸濁液(固形分22.9質量%)を7部(帯電制御樹脂微粒子として1.6部)混合し、インペラー(6枚平板タービン翼2段:直径75mm)を用いて200rpmで15分間攪拌し、混合液を調製した。その後、混合液を濾過し、さらにケーキを蒸留水で洗浄濾過し、その濾液の導電率が4μS/cm以下になるまで繰り返した。
【0086】
(2)外添処理
その後、十分した帯電性付与した樹脂粉体母粒子100部に対して、HVK2150(疎水性シリカ:クラリアント製)1部と、NA50H(疎水性シリカ:アエロジル製)1部とを配合し、メカノミル(岡田精工製)にて回転数2500rpmで3分間攪拌した。その後、疎水性シリカの粗大凝集物を、篩によって除去し、樹脂粉体を得た。
【0087】
組成(一例)
結着樹脂 80~90wt%
離型剤 3~10wt%
帯電制御剤 0~ 5wt%
外添剤 1~ 2wt%
【0088】
<実施例1~15及び比較例1~3>
後述の画像形成を行い、表1に示す実施例1~15及び比較例1~3の布帛を得た。
【0089】
(画像形成)
布帛として、綿(COTTON HERITAGE社製の「MC1082」)を用いた。前記布帛に、下記表1に示す水性インクを付与した(付与量:4.0mg/cm)。その後、熱風またはヒートローラで加熱し、水性インクを布帛に熱定着させた。さらに、前述の「2.樹脂粉体母粒子製造工程」および「3.樹脂粉体化工程」で調整した樹脂粉体を、ブラザー工業(株)製のレーザープリンタ「HL-L2360DW」に対して図2に示す内容に改造したものを使用して、水性インクを付与した領域に付与した。なお、前記樹脂粉体の付与量は、下記表1に示す量とした。その後、熱風で加熱し、水性インク及び樹脂粉体を布帛に熱定着させた。前記熱定着は、ドライヤーを用いて、110℃、3分の条件で行った。実施例5では、ドライヤーを使用する代わりに、ヒートローラを使用して水性インクの熱定着を行った。実施例8では、水性インクを付与したあとの熱定着は行わず、樹脂粉体付与後にのみ熱定着を行った。比較例1では、樹脂粉体を使用しなかった。比較例2では、水溶性樹脂、及び樹脂エマルションをいずれも使用しなかった。比較例3では、樹脂粉体を使用せず、OCインクを使用した。
【0090】
実施例8及び9では、レーザープリンタを使用する代わりに、以下の手順によって、手作業で前記樹脂粉体を付与した。まず、必要量の前記樹脂粉体を、適当な樹脂フィルムに塗り広げた。これを、水性インクを付与した布帛に被せ、その後、樹脂フィルムをはがして前記樹脂粉体を布帛に転写させ、熱定着を行った。
【0091】
実施例1~15及び比較例1~3の布帛について(a)にじみ、(b)耐擦性、(c)ローラ汚れ、(d)毛羽立ち、(e)位置ずれ評価を、下記方法により実施した。
【0092】
(a)にじみ評価
水性インクを、インクジェット方式により吐出してベタ印刷をした。目視により、下記の評価基準に従って評価した。
【0093】
にじみ評価 評価基準
A:なし
C:あり
【0094】
(b)耐擦性評価
(株)大栄科学精機製作所製の学振型摩擦試験機「RT-200」のプローブに白色の試験布をセットし、画像形成(インク膜)部分を擦り、前記白色の試験布への色移りを、下記評価基準により評価した。
【0095】
耐擦性評価 評価基準
A:なし
B:かすかにあり
C:あり
【0096】
(c)ローラ汚れ評価
水性インク付与後の布帛の乾燥の有無を確認し、前記レーザープリンタにおける加熱ローラの汚れの有無を判断した。
【0097】
ローラ汚れ評価 評価基準
A:なし
C:あり
【0098】
(d)毛羽立ち評価
記録部分を指で10往復擦り、布帛の毛羽立ちの有無を確認した。
【0099】
毛羽立ち評価 評価基準
A:なし
B:かすかにあり
C:あり
【0100】
(e)位置ずれ評価
目視にて、水性インクと樹脂粉体の位置ずれの有無を確認した。
【0101】
位置ずれ評価 評価基準
A:なし
B:かすかにあり
C:あり
【0102】
実施例1~15及び比較例1~3の評価結果を、表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
表1に示すように、実施例1~15では、にじみ評価、及び耐擦性評価の双方が良好であった。また、水性インク(A)と樹脂粉体(B)の付与する領域をA<Bとした実施例1~3、5~8、10~13は、耐擦性評価がより優れていた。
【0105】
比較例1~3は、にじみ評価、及び耐擦性評価のいずれかが悪かった。具体的には、樹脂粉体を付与しなかった比較例1は、耐擦性評価が悪かった。水性インクに水溶性樹脂、または樹脂エマルションを含まなかった比較例2は、耐擦性評価が悪かった。樹脂粉体の代わりにOCインクを使用した比較例3は、にじみ評価が悪かった。
【0106】
上記実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。
(付記1)
画像形成する対象物に水性インクをインクジェット方式により付与する画像形成工程と、
前記水性インクを付与した領域に樹脂粉体を付与する樹脂粉体付与工程と、
前記水性インクを付与した領域及び前記樹脂粉体を付与した領域に熱を加えて、前記水性インク及び前記樹脂粉体を、前記対象物に熱定着する熱定着工程と、
を有し、
前記水性インクが顔料と、水溶性樹脂及び樹脂エマルションの少なくとも一方と、を含む画像形成方法。
(付記2)
前記水性インクの付与量(X)と、前記樹脂粉体の付与量(Y)の比率(X/Y)が、0.04以上、かつ、240以下であることを特徴とする付記1記載の画像形成方法。
(付記3)
前記水溶性樹脂および前記樹脂エマルションは、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂のいずれかである付記1又は2記載の画像形成方法。
(付記4)
前記水性インク全量に対する、前記水溶性樹脂または前記樹脂エマルションの固形分配合量が、5質量%以上、かつ、10質量%以下である付記1から3のいずれかに記載の画像形成方法。
(付記5)
前記樹脂粉体の付与量が0.1mg/cm以上であることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の画像形成方法。
(付記6)
前記樹脂粉体が熱可塑性樹脂を含む、付記1から5のいずれかに記載の画像形成方法。
(付記7)
前記樹脂粉体は帯電した樹脂粉体である付記1から6のいずれかに記載の画像形成方法。
(付記8)
前記樹脂粉体付与工程が、電子写真方式により行われ、
前記樹脂粉体付与工程において、前記帯電した樹脂粉体を付与する領域が、前記水性インクを付与した領域に対して1%以上大きく、
前記熱定着工程が、非接触により行われ、
前記画像形成工程後に前記熱定着工程を行い、その後、前記樹脂粉体付与工程を行い、さらにその後、前記熱定着工程を行うことを特徴とする付記7記載の画像形成方法。
(付記9)
画像形成工程を含み、
前記画像形成工程は、付記1から8のいずれかに記載の画像形成方法により実施される、
画像形成物の製造方法。
(付記10)
インク流路、樹脂粉体収容部、インク付与手段、及び樹脂粉体付与手段を含み、
前記インク流路に供給された水性インクを前記インク付与手段によって画像形成する対象物に付与し、
前記水性インクが付与された領域に重なるよう、前記樹脂粉体収容部に収容された樹脂粉体を前記樹脂粉体付与手段によって画像形成する対象物に付与し、
前記インク流路に、付記1から4のいずれかに記載の水性インクが供給されることを特徴とする、画像形成システム。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明の画像形成方法によれば、にじみ評価と耐擦性評価の双方が優れる。本発明の画像形成方法は、各種画像形成する対象物への画像形成に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 インクジェット記録装置
101 インクカートリッジ
102 インク付与手段(インクジェットヘッド)
103 ヘッドユニット
104 キャリッジ
105 駆動ユニット
106 プラテンローラ
107 パージ装置
2 レーザープリンタ
200 画像形成ユニット
201 プロセスカートリッジ
202 現像ローラ
203 現像感光体ドラム
204 転写ローラ
205 露光ユニット
図1
図2