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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132699
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ロータ、およびモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/215 20160101AFI20240920BHJP
【FI】
H02K11/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043576
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀哲
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611PP05
5H611QQ01
5H611QQ03
5H611RR02
5H611TT01
5H611UA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロータの回転速度を精度よく制御できるロータ、およびモータを提供する。
【解決手段】本発明のロータの一態様は、回転軸線を中心として回転するロータの磁束密度を検知するセンサを備えるアウターロータのモータに使用可能なロータであって、回転軸線を中心とする筒状のロータコアと、ロータコアの径方向内側に配置され、ロータコアの内周面に固定される環状のマグネットと、を備える。ロータコアは、マグネットの外周面を径方向外側から支持する支持部と、マグネットの外周面と隙間を介して径方向に対向する離間対向部と、を有する。マグネットは、周方向に沿って交互に配置される第1極および第2極と、第1極の周方向一方側の端部と第2極の周方向他方側の端部の境界である第1着磁境界部と、を有する。離間対向部は、第1着磁境界部と周方向にずれた位置に配置される。径方向に見て、第1着磁境界部は、支持部と重なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心として回転するロータの磁束密度を検知するセンサを備えるアウターロータのモータに使用可能なロータであって、
前記回転軸線を中心とする筒状のロータコアと、
前記ロータコアの径方向内側に配置され、前記ロータコアの内周面に固定される環状のマグネットと、を備え、
前記ロータコアは、前記マグネットの外周面を径方向外側から支持する支持部と、前記マグネットの外周面と隙間を介して径方向に対向する離間対向部と、を有し、
前記マグネットは、
周方向に沿って交互に配置される第1極および第2極と、
前記第1極の周方向一方側の端部と前記第2極の周方向他方側の端部の境界である第1着磁境界部と、
を有し、
前記離間対向部は、前記第1着磁境界部と周方向にずれた位置に配置され、
径方向に見て、前記第1着磁境界部は、前記支持部と重なる、ロータ。
【請求項2】
前記マグネットは、前記第2極の周方向一方側の端部と前記第1極の周方向他方側の端部の境界である第2着磁境界部を有し、
径方向に見て、前記第2着磁境界部は、前記離間対向部と重なる、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記ロータコアは、前記ロータコアの径方向内側を向く面から径方向外側に窪むロータ窪み部を有し、
前記離間対向部は、前記ロータ窪み部の内側面である、請求項1に記載のロータ。
【請求項4】
前記マグネットは、前記マグネットの径方向外側を向く面から径方向内側に窪むマグネット窪み部を有し、
前記離間対向部は、前記ロータコアの内周面のうち前記マグネット窪み部の内側面と径方向に対向する部分である、請求項1に記載のロータ。
【請求項5】
前記ロータコアは、複数の前記支持部、および複数の前記離間対向部を有し、
前記支持部と前記離間対向部とは、周方向に沿って交互に配置され、
前記マグネットは、周方向に沿って間隔をあけて配置される複数の前記第1着磁境界部を有し、
複数の前記第1着磁境界部のぞれぞれは、径方向に見て互いに異なる前記支持部と重なる、請求項1から4のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のロータと、
前記回転軸線を中心に回転する前記ロータの回転に応じて変化する前記マグネットの磁束密度を検知可能なセンサと、
を備え、
前記センサは、前記第1着磁境界部における磁束密度の変化に基づいて、前記ロータの位相を検知する、モータ。
【請求項7】
前記センサは、前記マグネットと軸方向に対向して配置される、請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記ロータの径方向内側に配置されるステータコアを備え、
前記ステータコアは、環状のコアバック部と、前記コアバック部の外周面から径方向外側に延び、前記コアバック部の外周面に沿って配置される複数のティース部と、を有し、
前記離間対向部の周方向の寸法は、周方向に隣り合って配置されるティース部同士の間の空隙の周方向の寸法よりも小さい、請求項6に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、およびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転するロータが有するマグネットの磁界をセンサで検知し、センサの検知結果に基づいて生成されたFG(Frequency Generator)信号を用いてロータの回転速度を制御する構成のモータが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-41872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータにおいては、モータの温度変化によってマグネットが熱収縮すると、マグネットの複数の磁極同士の境界の位置が変動することがあった。複数の磁極同士の境界の周方向の位置が変動すると、センサが係る境界を検知するタイミングが変動するため、ロータの回転速度の検知精度が低下する虞があった。この場合、ロータの回転速度を精度よく制御できないため、ロータが回転する際の振動および騒音を抑制することが困難であった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、ロータの回転速度を精度よく制御できるロータ、およびモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータの一つの態様は、回転軸線を中心として回転するロータの磁束密度を検知するセンサを備えるアウターロータのモータに使用可能なロータであって、前記回転軸線を中心とする筒状のロータコアと、前記ロータコアの径方向内側に配置され、前記ロータコアの内周面に固定される環状のマグネットと、を備える。前記ロータコアは、前記マグネットの外周面を径方向外側から支持する支持部と、前記マグネットの外周面と隙間を介して径方向に対向する離間対向部と、を有する。前記マグネットは、周方向に沿って交互に配置される第1極および第2極と、前記第1極の周方向一方側の端部と前記第2極の周方向他方側の端部の境界である第1着磁境界部と、を有する。前記離間対向部は、前記第1着磁境界部と周方向にずれた位置に配置される。径方向に見て、前記第1着磁境界部は、前記支持部と重なる。
【0007】
本発明のモータの一つの態様は、上記のロータと、前記回転軸線を中心に回転する前記ロータの回転に応じて変化する前記マグネットの磁束密度を検知可能なセンサと、を備える。前記センサは、前記第1着磁境界部における磁束密度の変化に基づいて、前記ロータの位相を検知する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、ロータ、およびモータにおいて、ロータの回転速度を精度よく制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態のモータ示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態のモータを示す断面図であって、図1のII-II断面図である。
図3図3は、第1実施形態のモータの検知磁束密度とFG信号との関係を示す第1の図である。
図4図4は、第1実施形態の比較例のモータの検知磁束密度とFG信号との関係を示す図である。
図5図5は、第1実施形態のモータの検知磁束密度とFG信号との関係を示す第2の図である。
図6図6は、第2実施形態のモータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0011】
各図において、Z軸方向は、正の側(+Z側)を上側とし、負の側(-Z側)を下側とする上下方向である。各図に適宜示す回転軸線Jが延びる方向は、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。以下の説明においては、回転軸線Jと平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。また、回転軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、回転軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。以下の説明では、+Z側を「上側」と呼び、-Z側を「下側」と呼ぶ。なお、上下方向、上側、および下側は、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0012】
周方向は、各図において矢印θで示される。周方向のうち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θが向く側と反対側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、上側から見て回転軸線J回りに時計回りに進む側である。周方向他方側は、上側から見て回転軸線J回りに反時計回りに進む側である。
【0013】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態のモータ10は、インペラを回転させて軸方向に空気を移動させる軸流ファン等に用いられるモータである。モータ10は、ステータ保持部15と、ロータ20と、ステータ30と、第1軸受91と、第2軸受92と、回路基板80と、センサ81と、を備える。本実施形態のモータ10は、ステータ30の径方向外側にロータ20を配置するアウターロータのモータである。
【0014】
ステータ保持部15は、回転軸線Jを中心として軸方向に延びる略円筒状である。ステータ保持部15は、軸方向の両側に開口する。
【0015】
ステータ30は、ステータ保持部15に保持される。ステータ30は、ロータ20の径方向内側に配置される。ステータ30は、ステータコア31と、コイル部35と、を有する。ステータコア31は、回転軸線Jを中心とする円環状である。ステータコア31は、ステータ保持部15を径方向外側から囲む。ステータコア31は、ステータ保持部15の外周面に固定される。図2に示すように、ステータコア31は、コアバック部32と、複数のティース部33と、を有する。
【0016】
コアバック部32は、回転軸線Jを中心とする環状である。コアバック部32の内周面は、ステータ保持部15の外周面に固定される。これにより、ステータ30は、ステータ保持部15に固定される。
【0017】
複数のティース部33のそれぞれは、コアバック部32の外周面から径方向外側に延びる。複数のティース部33は、コアバック部32の外周面に沿って略等間隔をあけて配置される。本実施形態において、ステータコア31は、6個のティース部33を有する。各ティース部33は、ティース本体部33aと、アンブレラ部33bと、を有する。
【0018】
ティース本体部33aは、コアバック部32の外周面から径方向外側に延びる。軸方向に見て、ティース本体部33aは、略長方形状である。複数のティース本体部33aは、周方向に沿って略等間隔をあけて配置される。
【0019】
アンブレラ部33bは、ティース本体部33aの径方向外側の端部と繋がっている。アンブレラ部33bは、ティース本体部33aよりも周方向の両側に突出する。軸方向に見て、アンブレラ部33bの径方向外側を向く面は、回転軸線Jを中心とする円弧状である。アンブレラ部33bは、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。図2に示すティース間寸法Ltは、周方向に隣り合って配置されるティース部33同士の間の空隙の周方向の寸法である。本実施形態において、ティース間寸法Ltは、周方向に隣り合って配置されるアンブレラ部33b同士の間の空隙の周方向の寸法である。
【0020】
コイル部35は、回路基板80と電気的に接続され、回路基板80から電流が供給される。コイル部35は、ティース本体部33aに図示しないインシュレータを介して巻き付けられる。ステータ30は、複数のコイル部35を有する。本実施形態において、ステータ30は、6個のコイル部35を有する。各コイル部35のそれぞれは、互いに異なるティース本体部33aに図示しないインシュレータを介して巻き付けられる。各コイル部35は、図示しない接続線によって、互いに電気的に接続される。また、各コイル部35は、図示しない引出線によって、回路基板80と電気的に接続される。
【0021】
図1に示すように、第1軸受91および第2軸受92は、ステータ保持部15に保持される。第1軸受91は、ステータ保持部15の上側の部分の内周面に保持される。第2軸受92は、ステータ保持部15の上側の部分の内周面に保持される。
【0022】
ロータ20は、第1軸受91および第2軸受92によって、回転軸線Jを中心として回転可能に支持される。ロータ20は、アウターロータのモータ10に使用可能なロータである。ロータ20は、ロータコア21と、マグネット25と、シャフト29と、備える。
【0023】
ロータコア21は、回転軸線Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。ロータコア21は、下側に開口する。本実施形態において、ロータコア21は、金属製である。ロータコア21は、周壁部22と、天壁部23と、を有する。また、図2に示すように、周壁部22は、支持部22aと、離間対向部22bと、を有する。また、周壁部22は、ロータ窪み部22dを有する。離間対向部22bは、ロータ窪み部22dの内側面の一部である。
【0024】
図1に示すように、周壁部22は、回転軸線Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。周壁部22は、ステータ30およびステータ保持部15を径方向外側から囲む。天壁部23は、軸方向と直交する方向に広がる板状である。軸方向に見て、天壁部23は、円形状である。天壁部23は、ステータ30およびステータ保持部15よりも上側に配置される。天壁部23の径方向外縁は、周壁部22の上端と繋がる。
【0025】
図2に示すように、支持部22aおよび離間対向部22bのそれぞれは、周壁部22の内周面の一部である。支持部22aは、マグネット25と径方向に接触する。支持部22aは、マグネット25の外周面を径方向外側から支持する。ロータコア21は、複数の支持部22aを有する。本実施形態において、ロータコア21は、2個の支持部22aを有する。ロータコア21は、3個以上の支持部22aを有してもよい。軸方向に見て、各支持部22aは、円弧状である。本実施形態において、各支持部22aは、回転軸線Jを挟んで配置される。
【0026】
ロータ窪み部22dは、周壁部22の径方向内側を向く内周面から径方向外側に窪む窪みである。軸方向に見て、ロータ窪み部22dは、径方向に突出する略矩形状である。軸方向に見て、ロータ窪み部22dは、半円形状および三角形状等の他の形状であってもよい。ロータコア21は、複数のロータ窪み部22dを有する。本実施形態において、ロータコア21は、2個のロータ窪み部22dを有する。ロータコア21は、3個以上のロータ窪み部22dを有してもよい。本実施形態において、各ロータ窪み部22dは、回転軸線Jを挟んで配置される。各ロータ窪み部22dは、回転軸線Jを挟んで配置されなくてもよい。周方向において、各ロータ窪み部22dは、2個の支持部22a同士の間に配置される。
【0027】
離間対向部22bは、周壁部22の内周面の一部である。離間対向部22bは、マグネット25の外周面と隙間を介して径方向に対向する。本実施形態において、離間対向部22bは、ロータ窪み部22dの内側面のうち、径方向内側を向く面である。つまり、離間対向部22bは、ロータ窪み部22dの内側面である。ロータコア21は、複数の離間対向部22bを有する。本実施形態において、ロータコア21は、2個の離間対向部22bを有する。ロータコア21は、3個以上の離間対向部22bを有してもよい。本実施形態において、各離間対向部22bは、回転軸線Jを挟んで配置される。各離間対向部22bは、回転軸線Jを挟んで配置されなくてもよい。周方向において、各離間対向部22bは、2個の支持部22a同士の間に配置される。つまり、支持部22aと離間対向部22bとは、周方向に沿って交互に配置される。図2に示す離間対向部寸法Lsは、離間対向部22bの周方向の寸法である。本実施形態において、離間対向部寸法Lsは、ティース間寸法Ltよりも小さい。
【0028】
図1に示すように、シャフト29は、回転軸線Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。シャフト29の上端は、天壁部23の下側を向く面と繋がる。シャフト29は、ステータ保持部15の内部を軸方向に通される。本実施形態において、ロータコア21およびシャフト29のそれぞれは同一の単一部材の一部である。ロータコア21とシャフト29とは、互いに別個の部材であってもよい。シャフト29の上側の部分は、第1軸受91によって回転軸線J回りに回転可能に支持される。シャフト29の下側の部分は、第2軸受92によって回転軸線J回りに回転可能に支持される。これらにより、ロータ20は、回転軸線J回りに回転可能である。
【0029】
マグネット25は、回転軸線Jを中心とする環状である。マグネット25は、ロータコア21の径方向内側に配置される。マグネット25の外周面は、周壁部22の内周面に支持される。より詳細には、図2に示すように、マグネット25の外周面は、支持部22aに支持される。本実施形態において、マグネット25の外周面は、支持部22aに固定される。これにより、マグネット25は、ロータコア21の内周面に固定される。マグネット25は、ステータコア31と径方向に隙間を介して対向する。マグネット25の外周面の一部は、支持部22aと径方向に接触する。マグネット25の外周面の他の一部は、離間対向部22bと隙間を介して径方向に対向する。すなわち、マグネット25の外周面の他の一部は、ロータコア21に固定されていない。本実施形態において、マグネット25は、磁性粉末が混合された樹脂によって構成されたプラスチックマグネットである。本実施形態において、マグネット25の線膨張係数は、ロータコア21の線膨張係数よりも大きい。マグネット25は、複数の第1極25aと、複数の第2極25bと、複数の着磁境界部26と、を有する。
【0030】
複数の第1極25aおよび複数の第2極25bは、周方向に沿って交互に配置される。本実施形態において、第1極25aはN極であり、第2極25bはS極である。第1極25aがS極であり、第2極25bがN極であってもよい。本実施形態において、マグネット25は、第1極25aおよび第2極25bを2個ずつ有する。各第1極25aおよび各第2極25bの中心角は、90[°]である。径方向に見て、各第1極25aの周方向他方側(-θ側)の端部および各第2極25bの周方向一方側(+θ側)の端部のそれぞれは、離間対向部22bと重なる。
【0031】
複数の着磁境界部26のそれぞれは、マグネット25の一部であって、第1極25aと第2極25bとの境界である。本実施形態において、マグネット25は、4個の着磁境界部26を有する。各着磁境界部26は、周方向に沿って90[°]間隔で配置される。複数の着磁境界部26は、複数の第1着磁境界部27と、複数の第2着磁境界部28と、を含む。
【0032】
第1着磁境界部27は、第1極25aの周方向一方側(+θ側)の端部と第2極25bの周方向他方側(-θ側)の端部との境界である。本実施形態において、マグネット25は、2個の第1着磁境界部27a,27bを有する。各第1着磁境界部27a,27bは、回転軸線Jを挟んで配置される。各第1着磁境界部27a,27bは、周方向に180[°]離れて配置される。径方向に見て、各第1着磁境界部27a,27bは、支持部22aと重なる。より詳細には、各第1着磁境界部27a,27bは、径方向に見て、互いに異なる支持部22aと重なる。各第1着磁境界部27a,27bは、ロータコア21に固定される。各第1着磁境界部27a,27bは、離間対向部22bと周方向にずれた位置に配置される。より詳細には、各第1着磁境界部27a,27bは、離間対向部22bと周方向に90[°]ずれた位置に配置される。なお、径方向に見て、各第1着磁境界部27a,27bが支持部22aと重なるならば、各第1着磁境界部27a,27bと離間対向部22bとの間の角度は、90[°]に限定されず、90[°]未満であってもよいし、90[°]より大きくてもよい。
【0033】
第2着磁境界部28は、第2極25bの周方向一方側(+θ側)の端部と第1極25aの周方向他方側(-θ側)の端部との境界である。本実施形態において、マグネット25は、2個の第2着磁境界部28a,28bを有する。各第2着磁境界部28a,28bは、回転軸線Jを挟んで配置される。各第2着磁境界部28a,28bは、第1着磁境界部27a,27bと周方向に90[°]離れた位置に配置される。径方向に見て、各第2着磁境界部28a,28bは、互いに異なる離間対向部22bと重なる。各第2着磁境界部28a,28bは、離間対向部22bと隙間を介して径方向に対向する。なお、径方向に見て、各第1着磁境界部27a,27bが支持部22aと重なるならば、各第2着磁境界部28a,28bは、離間対向部22bと重なっていなくてもよい。
【0034】
図1に示すように、回路基板80は、軸方向と直交する方向に広がる略円環板状である。回路基板80は、ロータ20およびステータ30よりも下側に配置される。回路基板80は、ステータ保持部15およびシャフト29を径方向外側から囲む。回路基板80の内周面は、ステータ保持部15に固定される。回路基板80は、コイル部35から引き出された図示しない引出線と電気的に接続される。回路基板80は、コイル部35に供給する電流を制御することによって、ロータ20の回転を制御する。本実施形態では、回路基板80は、コイル部35に交番電流を供給し、コイル部35が構成する電磁石の磁界の向きを適宜切り替える。これにより、ロータ20は回転軸線J回りに回転する。回路基板80には、センサ81、および図示しないコンデンサ等の電子部品が実装されている。
【0035】
本実施形態において、センサ81は、回路基板80の上側を向く面に実装される。センサ81は、マグネット25と軸方向に間隔をあけて対向する。センサ81は、例えば、ホールIC等のホール素子である。センサ81は、回転軸線Jを中心として回転するロータ20の磁束密度を検知する。センサ81は、ロータ20の回転に応じて変化するマグネット25の磁束密度を検出可能である。センサ81は、回転するロータ20におけるマグネット25の磁束密度の検出結果を回路基板80に送信する。回路基板80は、センサ81の検出結果に基づいてFG信号を生成し、FG信号に基づいてステータ30に供給する交番電流を制御する。これにより、回路基板80は、ロータ20の回転速度を制御する。なお、FG信号は、ロータ20の回転速度に応じた周波数成分を含む信号である。
【0036】
次に、センサ81が検知したマグネット25の磁束密度とFG信号の関係について説明する。図3の上段は、ロータ20の回転角度αと、センサ81が検知したマグネット25の磁束密度である検知磁束密度Mdとの関係を示す図である。図3の上段の横軸は回転角度αであり、縦軸は検知磁束密度Mdである。図3の下段は、回転角度αとFG信号との関係を示す図である。図3の下段の横軸は回転角度αであり、縦軸はFG信号の信号値Sfである。なお、以下の説明では、図2に示すように、ロータ20の回転角度αは、一方の第1着磁境界部27aがセンサ81と軸方向に対向するロータ20の周方向の位置を0[°]とする。ロータ20は、回転軸線J回りを周方向一方側(+θ)に向けて回転する。また、本実施形態のセンサ81は、第1極25aすなわちN極の磁束を検知すると正の値を回路基板80に送信し、第2極25bすなわちS極の磁束を検知すると負の値を回路基板80に送信する。なお、図3は、モータ10の内部の温度が20[℃]程度の常温における、回転角度αと検知磁束密度Mdおよび信号値Sfとの関係を示す。そのため、図3は、ロータコア21およびマグネット25それぞれの熱収縮が小さい状態における、回転角度αと検知磁束密度Mdおよび信号値Sfとの関係を示している。
【0037】
図3の上段に示すように、ロータ20が回転すると、センサ81と対向するマグネット25の磁極が第1極25aと第2極25bとの間で交互に変わるため、検知磁束密度Mdは、正の値および負の値に周期的に変動する。より詳細には、回転角度αが0[°]においてセンサ81は一方の第1着磁境界部27aと対向し、回転角度αが180[°]において、センサ81は他方の第1着磁境界部27bと対向し、センサ81が対向する磁極が第2極25bから第1極25aに切り替わる。そのため、回転角度αが0[°]および180[°]において、検知磁束密度Mdは負の値から正の値になる。センサ81が第1着磁境界部27と対向するタイミング、すなわち回転角度αが0[°]および180[°]における検知磁束密度Mdは0[mT]である。
【0038】
また、回転角度αが90[°]において、センサ81は一方の第2着磁境界部28aと対向し、回転角度αが270[°]において、センサ81は他方の第2着磁境界部28bと対向し、センサ81が対向する磁極が第1極25aから第2極25bに切り替わる。そのため、回転角度αが90[°]および270[°]において、検知磁束密度Mdは正の値から負の値になる。センサ81が第2着磁境界部28と対向するタイミング、すなわち回転角度αが90[°]および270[°]における検知磁束密度Mdは0[mT]である。
【0039】
図3の下段に示すように、本実施形態の回路基板80は、センサ81から送信される検出結果である検知磁束密度Mdが負の値から正の値に変化する際に信号値Sfを「LOW」から「HIGH」に立ち上げ、検知磁束密度Mdが正の値から負の値に変化する際に信号値Sfを「HIGH」から「LOW」に立ち下げる。つまり、回路基板80は、センサ81が第1着磁境界部27と対向する際に信号値Sfを「LOW」から「HIGH」に立ち上げ、センサ81が第2着磁境界部28と対向する際に信号値Sfを「HIGH」から「LOW」に立ち下げる。これらにより、FG信号は、第1着磁境界部27がセンサ81を通過するタイミングで「LOW」から「HIGH」に立ち上がり、第2着磁境界部28がセンサ81を通過するタイミングで「HIGH」から「LOW」に立ち下がるパルス波で規定される。
【0040】
図3の下段に示す単位パルスPは、FG信号の1周期分に相当する。単位パルスPは、FG信号が「LOW」から「HIGH」に立ち上がるタイミングから、次にFG信号が「LOW」から「HIGH」に立ち上がるタイミングまでの間のFG信号である。すなわち、単位パルスPは、各第1着磁境界部27a,27bの一方がセンサ81を通過してから、各第1着磁境界部27a,27bの他方がセンサ81を通過するまでの間のFG信号である。単位パルスPは、第1単位パルスP1と、第2単位パルスP2と、を有する。
【0041】
第1単位パルスP1は、一方の第1着磁境界部27aがセンサ81を通過してから、他方の第1着磁境界部27bがセンサ81を通過するまでの間のFG信号である。第2単位パルスP2は、他方の第1着磁境界部27bがセンサ81を通過してから、一方の第1着磁境界部27aがセンサ81を通過するまでの間のFG信号である。第1単位パルスP1と第2単位パルスP2とは交互に生成される。
【0042】
図3の下段に示すパルス角度αpは、単位パルスPの回転角度に相当する。すなわち、パルス角度αpは、各第1着磁境界部27a,27bの一方がセンサ81を通過してから、各第1着磁境界部27a,27bの他方がセンサ81を通過するまでの間の回転角度である。パルス角度αpは、FG信号が「LOW」から「HIGH」に立ち上がる回転角度と、次にFG信号が「LOW」から「HIGH」に立ち下がる回転角度との間の回転角度である。各第1着磁境界部27a,27bが周方向に180[°]離れて位置する場合、パルス角度αpは、180[°]である。パルス角度αpは、第1パルス角度αp1と、第2パルス角度αp2と、を有する。
【0043】
第1パルス角度αp1は、第1単位パルスP1の回転角度に相当する。第1パルス角度αp1は、一方の第1着磁境界部27aがセンサ81を通過してから、他方の第1着磁境界部27bがセンサ81を通過するまでの間の回転角度である。第2パルス角度αp2は、第2単位パルスP2の回転角度に相当する。第2パルス角度αp2は、他方の第1着磁境界部27bがセンサ81を通過してから、一方の第1着磁境界部27aがセンサ81を通過するまでの間の回転角度である。各第1着磁境界部27a,27bが周方向に180[°]離れて位置する場合、第1パルス角度αp1および第2パルス角度αp2は、それぞれ180[°]であり、第1パルス角度αp1および第2パルス角度αp2のそれぞれは、同じ角度である。
【0044】
本実施形態において、回路基板80は、単位パルスPの時間、すなわちFG信号の1周期の時間であって、ロータ20の回転速度と相関する時間に基づいてステータ30に供給する交番電流を制御する。これにより、回路基板80は、ロータ20の回転速度を所望の回転速度に制御できる。上述のように、単位パルスPは、各第1着磁境界部27a,27bがセンサ81を通過する際のマグネット25の磁束密度の変化に基づいて生成される。したがって、センサ81は、各第1着磁境界部27a,27bにおける磁束密度の変化に基づいて、ロータ20の位相を検知していると換言できる。なお、各第1着磁境界部27a,27bが周方向に180[°]離れて位置する場合、第1単位パルスP1の時間および第2単位パルスP2の時間は同じである。したがって、回路基板80が第1単位パルスP1の時間および第2単位パルスP2の時間に基づいてステータ30に供給する電流を制御しても、単位パルスPの周期すなわちロータ20が180[°]回転する周期で、ロータ20の回転速度は変動しない。これにより、ロータ20の回転速度を精度よく制御できる。
【0045】
次に、本実施形態のモータ10の比較例のモータにおいて、連続駆動によってモータの内部の温度が上昇した場合における、回転角度αと検知磁束密度Mdおよび信号値Sfとの関係について説明する。なお、図示は省略するが、比較例のモータのロータコアは、図2に示すロータ窪み部22dおよび離間対向部22bを有していない。すなわち、軸方向に見て、比較例のモータの周壁部の内周面は、周方向一周に亘って周方向に延びる円形状である。よって、マグネット25の外周面全体が周壁部に支持される。比較例のモータのその他の構成等は、本実施形態のモータ10のその他の構成等と同一である。
【0046】
図4は、比較例のモータの内部の温度が上昇した場合における、回転角度αと検知磁束密度Mdおよび信号値Sfとの関係の一例を示す図である。図4の上段は、回転角度αと検知磁束密度Mdとの関係を示す図である。図4の上段の横軸は回転角度αであり、縦軸は検知磁束密度Mdである。図4の下段は、回転角度αと信号値Sfとの関係を示す図である。図4の下段の横軸は回転角度αであり、縦軸は信号値Sfである。なお、モータが連続駆動されると、ステータ30のコイル部35に供給される電流によって、コイル部35にはジュール熱が発生し、係るジュール熱等によってモータの内部の温度が上昇する。そのため、モータが連続駆動されると、ロータコア21およびマグネット25それぞれの温度が上昇する。
【0047】
上述のように、本実施形態において、マグネット25の線膨張係数は、ロータコア21の線膨張係数よりも大きい。そのため、マグネット25の熱膨張は、ロータコア21の熱膨張よりも大きい。また、上述のように、本実施形態において、ロータコア21は金属製であり、マグネット25はプラスチックマグネットである。よって、比較例のモータの内部の温度が上昇すると、マグネット25にはロータコアから応力が加わり、マグネット25は変形する。これにより、比較例のモータの内部の温度が上昇すると、各第1着磁境界部27a,27bおよび各第2着磁境界部28a,28bの周方向の位置が変動する。したがって、各第1着磁境界部27a,27bおよび各第2着磁境界部28a,28bそれぞれがセンサ81を通過する際の回転角度αが変動する。
【0048】
したがって、図4の上段に示すように、一方の第1着磁境界部27aがセンサ81を通過する回転角度αは0[°]からずれ、他方の第1着磁境界部27bがセンサ81を通過する回転角度αは180[°]からずれる。また、一方の第2着磁境界部28aがセンサ81を通過する回転角度は90[°]からずれ、他方の第2着磁境界部28bがセンサ81を通過する回転角度は270[°]からずれる。そのため、図4の下段に示すように、第1パルス角度αp1は、180[°]よりも小さくなり、第2パルス角度αp2は、180[°]よりも大きくなる。つまり、第1パルス角度αp1と第2パルス角度αp2とが互いに異なる角度になる。これにより、第1単位パルスP1の時間と第2単位パルスP2の時間が異なる時間になる。上述のように、回路基板80は、単位パルスPの時間に基づいてステータ30に供給する電流を制御する。したがって、比較例のモータでは、単位パルスPの周期すなわちロータ20が約180[°]回転する周期でロータ20の回転速度が変動してしまうため、ロータ20の回転速度を精度よく制御できない。また、ロータ20が約180[°]回転する周期でロータ20の回転速度が変動するため、ロータ20が回転する際の振動および騒音が増大する。
【0049】
次に、本実施形態のモータ10において、連続駆動によってモータ10の内部の温度が上昇した場合における、回転角度αと検知磁束密度Mdおよび信号値Sfとの関係について説明する。図5は、本実施形態のモータ10の内部の温度が上昇した場合における、回転角度αと検知磁束密度Mdおよび信号値Sfとの関係を示す図である。図5の上段は、回転角度αと検知磁束密度Mdとの関係を示す図である。図5の上段の横軸は回転角度αであり、縦軸は検知磁束密度Mdである。図5の下段は、回転角度αと信号値Sfとの関係を示す図である。図5の下段の横軸は回転角度αであり、縦軸は信号値Sfである。
【0050】
上述のように、本実施形態において、マグネット25の線膨張係数は、ロータコア21の線膨張係数よりも大きい。そのため、上述の比較例のモータと同様にモータ10の内部の温度が上昇すると、マグネット25の熱膨張は、ロータコア21の熱膨張よりも大きい。よって、モータ10の内部の温度が上昇すると、マグネット25にはロータコア21から応力が加わり、マグネット25は変形する。図2に示すように、本実施形態のロータコア21は、ロータ窪み部22dと、マグネット25の外周面と隙間を介して径方向に対向する離間対向部22bと、を有する。そのため、マグネット25のうち、一方の第2着磁境界部28aを含む離間対向部22bと径方向に対向する部分、および他方の第2着磁境界部28bを含む離間対向部22bと径方向に対向する部分のそれぞれは、容易に径方向外側に変形する。つまり、第1着磁境界部27から周方向にずれた部分が離間対向部22bに向けて径方向外側に容易に変形するため、ロータコア21から第1着磁境界部27に加わる応力を低減できる。また、上述のように、第1着磁境界部27は、ロータコア21の支持部22aに支持されているため、第1着磁境界部27は変形しづらい。これらにより、モータ10の内部の温度が上昇しても、第1着磁境界部27の周方向の位置が変動することを抑制でき、各第1着磁境界部27a,27bは、周方向に180[°]離れて配置される。なお、本実施形態において、上述のマグネット25の変形により、各第2着磁境界部28a,28bの位置は、少なくとも径方向外側にずれ、周方向にもずれる場合がある。
【0051】
したがって、図5の上段に示すように、一方の第1着磁境界部27aがセンサ81と通過する回転角度は0[°]であり、他方の第1着磁境界部27bがセンサ81を通過する回転角度は180[°]である。また、上述のマグネット25の変形により、一方の第2着磁境界部28aがセンサ81を通過する回転角度は90[°]からずれ、他方の第2着磁境界部28bがセンサ81を通過する回転角度は270[°]からずれる。そのため、図5の下段に示すように、本実施形態のモータ10では、モータ10の内部の温度が変化しても、第1パルス角度αp1および第2パルス角度αp2のそれぞれは、180[°]である。つまり、第1パルス角度αp1と第2パルス角度αp2とは同じ角度である。よって、第1単位パルスP1の時間と第2単位パルスP2の時間とが同じ時間になるため、単位パルス周期すなわちロータ20が180[°]回転する周期で、ロータ20の回転速度が変動することを抑制できる。これにより、ロータ20の回転速度を精度よく制御できる。
【0052】
本実施形態によれば、ロータコア21は、ロータコア21の径方向内側を向く面から径方向外側に窪むロータ窪み部22dを有し、離間対向部22bは、ロータ窪み部22dの内側面である。よって、マグネット25に窪み部を設ける場合と比較して、マグネット25の周方向の磁束密度のばらつきを低減できる。よって、周方向において、マグネット25と、各コイル部35に電流が供給されることによって構成される電磁石との間の磁気力のばらつきを低減できるため、ロータ20の回転トルクおよび回転速度を安定させることができる。
【0053】
本実施形態によれば、モータ10は、ロータ20の径方向内側に配置されるステータコア31を備え、離間対向部寸法Ls、すなわち離間対向部22bの周方向の寸法は、ティース間寸法Lt、すなわち周方向に隣り合って配置されるティース部33同士の間の空隙の周方向の寸法よりも小さい。よって、離間対向部寸法Lsが大きくなりすぎることを抑制し易いため、マグネット25からロータコア21に流れ込む磁束が低下することを抑制し易い。したがって、マグネット25と上述の電磁石との間の磁気力が低下することを抑制できるため、モータ10の回転トルクが低下することを抑制できる。
【0054】
本実施形態によれば、ロータ20は、回転軸線Jを中心とする筒状のロータコア21と、ロータコア21の径方向内側に配置され、ロータコア21の内周面に固定される環状のマグネット25と、を備える。ロータコア21は、マグネット25の外周面を径方向外側から支持する支持部22aと、マグネット25の外周面と隙間を介して径方向に対向する離間対向部22bと、を有し、マグネット25は、周方向に沿って交互に配置される第1極25aおよび第2極25bと、第1極25aの周方向一方側(+θ側)の端部と第2極25bの周方向他方側(-θ側)の端部の境界である第1着磁境界部27と、を有する。離間対向部22bは、第1着磁境界部27と周方向にずれた位置に配置され、径方向に見て、第1着磁境界部27は、支持部22aと重なる。よって、モータ10の内部の温度変化によって、ロータコア21からマグネット25に応力が加わっても、上述のように、マグネット25のうち第1着磁境界部27から周方向にずれた部分が離間対向部22bに向けて径方向外側に容易に変形するため、ロータコア21から第1着磁境界部27に加わる応力を低減できる。また、第1着磁境界部27は、支持部22aによって径方向外側から支持されているため、第1着磁境界部27は変形しづらい。これらにより、モータ10の内部の温度が変化しても、第1着磁境界部27の位置が周方向にずれることを抑制できる。よって、センサ81が第1着磁境界部27における磁束密度の変化を検知するタイミングに基づいてロータ20の回転制御を行う場合において、センサ81が第1着磁境界部27における磁束密度の変化を検知する回転角度が変動することを抑制できる。これにより、モータ10の内部の温度が変化しても、ロータ20の位相を精度よく検知できるため、ロータ20の回転速度を精度よく制御できる。したがって、ロータ20が回転する際に発生する振動および騒音を抑制できる。
【0055】
本実施形態によれば、マグネット25は、第2極25bの周方向一方側(+θ側)の端部と第1極25aの周方向他方側(-θ側)の端部の境界である第2着磁境界部28を有し、径方向に見て、第2着磁境界部28は、離間対向部22bと重なる。よって、マグネット25のうち第1着磁境界部27と第2着磁境界部28との間の部分が、径方向に見て、離間対向部22bと重なる場合と比較して、第1着磁境界部27と離間対向部22bとの間の周方向の距離を大きくし易い。これにより、モータ10の内部の温度変化によって、マグネット25の一部が離間対向部22bに向けて径方向外側に変形する際に、第1着磁境界部27が変形することを抑制できる。よって、第1着磁境界部27の位置が周方向にずれることをより好適に抑制できる。したがって、センサ81が第1着磁境界部27における磁束密度の変化を検知する回転角度が変動することをより好適に抑制できる。よって、モータ10の内部の温度が変化しても、ロータ20の位相をより精度よく検知できるため、ロータ20の回転速度をより精度よく制御できる。
【0056】
本実施形態によれば、ロータコア21は、複数の支持部22a、および複数の離間対向部22bを有し、支持部22aと離間対向部22bとは、周方向に沿って交互に配置され、マグネット25は、周方向に沿って間隔をあけて配置される複数の前記第1着磁境界部27a,27bを有し、複数の第1着磁境界部27a,27bのぞれぞれは、径方向に見て互いに異なる支持部22aと重なる。よって、ロータコア21が複数の離間対向部22bを有するため、モータ10の内部の温度が変化すると、マグネット25の複数の部分が離間対向部22bに向けて径方向外側に変形する。これにより、各第1着磁境界部27a,27bに加わる応力をより好適に低減できる。また、各第1着磁境界部27a,27bは、支持部22aによって径方向外側から支持されるため、各第1着磁境界部27a,27bは変形しづらい。これらにより、モータ10の内部の温度が変化しても、各第1着磁境界部27a,27bの位置が周方向にずれることをより好適に抑制できる。よって、センサ81が各第1着磁境界部27a,27bにおける磁束密度の変化を検知する回転角度が変動することをより好適に抑制できる。したがって、センサ81によって、モータ10の内部の温度が変化しても、ロータ20の位相をより精度よく検知できるため、ロータ20の回転速度をより精度よく制御できる。
【0057】
本実施形態によれば、モータ10は、ロータ20と、回転軸線Jを中心に回転するロータ20の回転に応じて変化するマグネット25の磁束密度を検知可能なセンサ81と、を備える。センサ81は、第1着磁境界部27における磁束密度の変化に基づいて、ロータ20の位相を検知する。上述のように、第1着磁境界部27は、離間対向部22bと周方向にずれた位置に配置され、径方向に見て、第1着磁境界部27は、支持部22aと重なる。そのため、上述のように、モータ10の内部の温度変化によって、ロータコア21からマグネット25に応力が加わっても、第1着磁境界部27の位置が周方向にずれることを抑制できる。よって、センサ81が第1着磁境界部27における磁束密度の変化に基づいて、ロータ20の位相を検知することによって、上述のように、FG信号の第1パルス角度αp1および第2パルス角度αp2が変動することを抑制できる。したがって、単位パルス周期すなわちロータ20が180[°]回転する周期で、ロータ20の回転速度が変動することを抑制できる。よって、ロータ20の回転速度を精度よく制御できるため、ロータ20が回転する際に発生する振動および騒音を抑制できる。
【0058】
本実施形態によれば、センサ81は、マグネット25と軸方向に対向して配置される。よって、センサ81がマグネット25の回転方向、すなわち周方向と直交する方向にマグネット25と対向して配置されるため、センサ81は、回転軸線Jを中心として回転するマグネット25の磁束密度の変化を精度よく検知できる。これにより、FG信号の第1パルス角度αp1および第2パルス角度αp2がばらつくことをより好適に抑制できるため、単位パルス周期すなわちロータ20が180[°]回転する周期で、ロータ20の回転速度が変動することをより好適に抑制できる。したがって、ロータ20の回転速度をより精度よく制御できるため、ロータ20が回転する際に発生する振動および騒音をより好適に抑制できる。
【0059】
<第2実施形態>
図6に示すように、本実施形態のモータ210のマグネット225は、マグネット窪み部225eを有する。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
本実施形態において、ロータコア221は、周壁部222と、天壁部23と、を有する。周壁部222は、支持部222aと、離間対向部222bと、を有する。本実施形態の天壁部23の構成等は、上述の第1実施形態の天壁部23の構成等と同一である。
【0061】
周壁部222の内周面は、周方向一周に亘って周方向に延びる円形状である。本実施形態の周壁部222のその他の構成等は、上述の第1実施形態の周壁部22のその他の構成等と同一である。
【0062】
支持部222aおよび離間対向部222bは、周壁部222の内周面の一部である。離間対向部222bは、周壁部222の内周面のうち、支持部222a以外の部分である。離間対向部222bは、マグネット225の外周面と隙間を介して径方向に対向する。ロータコア221は、複数の離間対向部222bを有する。本実施形態において、ロータコア221は、2個の離間対向部222bを有する。本実施形態において、各離間対向部222bは、回転軸線Jを挟んで配置される。支持部222aと離間対向部222bとは、周方向に沿って交互に配置される。各離間対向部222bは、第1着磁境界部27と周方向にずれた位置に配置される。離間対向部寸法Lsは、離間対向部222bの周方向の寸法である。本実施形態において、離間対向部寸法Lsは、ティース間寸法Ltよりも小さい。
【0063】
マグネット225は、回転軸線Jを中心とする環状である。マグネット225の外周面は、周壁部22の内周面に支持される。より詳細には、マグネット225の外周面は、支持部222aに支持される。本実施形態において、マグネット225の外周面は、支持部222aに固定される。つまり、マグネット225は、ロータコア221の内周面に固定される。マグネット225は、マグネット窪み部225eを有する。
【0064】
マグネット窪み部225eは、マグネット225の径方向外側を向く外周面から径方向内側に窪む窪みである。軸方向に見て、マグネット窪み部225eは、径方向に延びる略矩形状である。軸方向に見て、マグネット窪み部225eは、半円形状および三角形状等の他の形状であってもよい。ロータコア221は、複数のマグネット窪み部225eを有する。本実施形態において、ロータコア221は、2個のマグネット窪み部225eを有する。ロータコア221は、3個以上のマグネット窪み部225eを有してもよい。本実施形態において、各マグネット窪み部225eは、回転軸線Jを挟んで配置される。径方向に見て、各マグネット窪み部225eは、第1極25aの周方向他方側(-θ側)の端部および第2極25bの周方向一方側(+θ側)の端部のそれぞれと重なる。すなわち、各マグネット窪み部225eは、径方向に見て、第2着磁境界部28と重なる。各マグネット窪み部225eは、径方向に見て、第2着磁境界部28と重なっていなくてもよい。各マグネット窪み部225eは、離間対向部222bと径方向に対向する。離間対向部222bは、マグネット窪み部225eの内側面と径方向に対向する。これにより、離間対向部222bは、マグネット225の外周面と径方向に隙間を介して対向する。本実施形態のマグネット225のその他の構成等は、上述の第1実施形態のマグネット25のその他の構成等と同一である。
【0065】
本実施形態によれば、マグネット225は、マグネット225の径方向外側を向く面から径方向内側に窪むマグネット窪み部225eを有し、離間対向部222bは、ロータコア221の内周面のうちマグネット窪み部225eの内側面と径方向に対向する部分である。よって、ロータコア221に窪み部を設ける場合と比較して、ロータコア221の剛性が低下することを抑制できる。これにより、ロータ20が回転する際の遠心力によって、ロータコア221が変形することを抑制できるため、マグネット225の回転中心が回転軸線Jからずれることを抑制できる。よって、センサ81によって、回転軸線J周りに回転するマグネット25の磁束密度の変化を精度よく検知できるため、センサ81によってロータ20の位相を精度よく検知できる。したがって、ロータ20の回転速度を精度よく制御できるためロータ20が回転する際に発生する振動および騒音を抑制できる。
【0066】
また、本実施形態では、離間対向部222bは、第1着磁境界部27と周方向にずれた位置に配置され、径方向に見て、第1着磁境界部27は、支持部222aと重なる。よって、モータ210の内部の温度変化によって、ロータコア221からマグネット225に応力が加わっても、上述の第1実施形態と同様に、マグネット225のうち、第1着磁境界部27から周方向にずれた部分が離間対向部222bに向けて径方向外側に容易に変形するため、ロータコア221から第1着磁境界部27に加わる応力を低減できる。また、第1着磁境界部27は、支持部222aによって径方向外側から支持されているため、第1着磁境界部27は変形しづらい。これらにより、モータ210の内部の温度が変化しても、第1着磁境界部27の位置が周方向にずれることを抑制できる。よって、センサ81が第1着磁境界部27における磁束密度の変化を検知する回転角度が変動することを抑制できる。したがって、センサ81によって、ロータ220の位相を精度よく検知できるため、ロータ220の回転速度を精度よく制御できる。
【0067】
また、本実施形態では、離間対向部寸法Lsは、ティース間寸法Ltよりも小さい。よって、離間対向部寸法Lsと径方向に対向するマグネット窪み部225eの周方向の寸法が大きくなりすぎることを抑制し易いため、マグネット225からロータコア221に流れ込む磁束が低下することを抑制し易い。したがって、マグネット225と、各コイル部35に電流が供給されることによって構成される電磁石との間の磁気力が低下することを抑制できる。これにより、モータ210の回転トルクが低下することを抑制できる。
【0068】
以上に、本発明の一実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。例えば、上述した実施形態に示したロータ、およびモータの用途は特に限定されない。
【0069】
ロータコアが有する支持部の個数および離間対向部の個数のそれぞれは、2個に限定されず、3個以上であってもよい。この場合、マグネットのより多くの部分が離間対向部に向けて径方向外側に変形するため、第1着磁境界部に加わる応力をより好適に低減できる。
【0070】
マグネット25の構成は本実施形態に限定されず、例えば、第1極がS極であり、第2極がN極であってもよい。この場合、回路基板は、センサ81から送信される検出結果である検知磁束密度が正の値から負の値に変化する際にFG信号値を「LOW」から「HIGH」に立ち上げ、検知磁束密度が負の値から正の値に変化する際にFG信号値を「HIGH」から「LOW」に立ち下げてもよい。
【0071】
ステータコアの構成は本実施形態の構成に限定されず、例えば、ステータコアが有するティース部の個数は、5個以下であってもよいし、7個以上であってもよい。
【0072】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 回転軸線を中心として回転するロータの磁束密度を検知するセンサを備えるアウターロータのモータに使用可能なロータであって、前記回転軸線を中心とする筒状のロータコアと、前記ロータコアの径方向内側に配置され、前記ロータコアの内周面に固定される環状のマグネットと、を備え、前記ロータコアは、前記マグネットの外周面を径方向外側から支持する支持部と、前記マグネットの外周面と隙間を介して径方向に対向する離間対向部と、を有し、前記マグネットは、周方向に沿って交互に配置される第1極および第2極と、前記第1極の周方向一方側の端部と前記第2極の周方向他方側の端部の境界である第1着磁境界部と、を有し、前記離間対向部は、前記第1着磁境界部と周方向にずれた位置に配置され、径方向に見て、前記第1着磁境界部は、前記支持部と重なる、ロータ。
(2) 前記マグネットは、前記第2極の周方向一方側の端部と前記第1極の周方向他方側の端部の境界である第2着磁境界部を有し、径方向に見て、前記第2着磁境界部は、前記離間対向部と重なる、(1)に記載のロータ。
(3) 前記ロータコアは、前記ロータコアの径方向内側を向く面から径方向外側に窪むロータ窪み部を有し、前記離間対向部は、前記ロータ窪み部の内側面である、(1)または(2)に記載のロータ。
(4) 前記マグネットは、前記マグネットの径方向外側を向く面から径方向内側に窪むマグネット窪み部を有し、前記離間対向部は、前記ロータコアの内周面のうち前記マグネット窪み部の内側面と径方向に対向する部分である、(1)または(2)に記載のロータ。
(5) 前記ロータコアは、複数の前記支持部、および複数の前記離間対向部を有し、前記支持部と前記離間対向部とは、周方向に沿って交互に配置され、前記マグネットは、周方向に沿って間隔をあけて配置される複数の前記第1着磁境界部を有し、複数の前記第1着磁境界部のぞれぞれは、径方向に見て互いに異なる前記支持部と重なる、(1)から(4)のいずれか一項に記載のロータ。
(6) (1)から(5)のいずれか一項に記載のロータと、前記回転軸線を中心に回転する前記ロータの回転に応じて変化する前記マグネットの磁束密度を検知可能なセンサと、を備え、前記センサは、前記第1着磁境界部における磁束密度の変化に基づいて、前記ロータの位相を検知する、モータ。
(7) 前記センサは、前記マグネットと軸方向に対向して配置される、(6)に記載のモータ。
(8) 前記ロータの径方向内側に配置されるステータコアを備え、前記ステータコアは、環状のコアバック部と、前記コアバック部の外周面から径方向外側に延び、前記コアバック部の外周面に沿って配置される複数のティース部と、を有し、前記離間対向部の周方向の寸法は、周方向に隣り合って配置されるティース部同士の間の空隙の周方向の寸法よりも小さい、(6)または(7)に記載のモータ。
【符号の説明】
【0073】
10,210…モータ、20,220…ロータ、21,221…ロータコア、22a,222a…支持部、22b,222b…離間対向部、22d…ロータ窪み部、25,225…マグネット、25a…第1極、25b…第2極、27…第1着磁境界部、28…第2着磁境界部、31…ステータコア、32…コアバック部、33…ティース部、81…センサ、225e…マグネット窪み部、J…回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6