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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013270
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115214
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】光本 高野
(72)【発明者】
【氏名】荒木 大助
(72)【発明者】
【氏名】長野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 久善
(72)【発明者】
【氏名】上野 生太
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA14
3L211BA42
3L211BA51
3L211BA52
3L211DA13
(57)【要約】
【課題】小型でありながらも常時サイドベント開口部から送風を行うことのできる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車両用空調装置(10;10A)は、センターベント開口部(21c)及びサイドベント開口部(21s)が形成されているケース(20)と、送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器(31)と、送風空気を温めることが可能な加熱用熱交換器(32)と、加熱用熱交換器(32)を通過する送風空気と迂回する送風空気との比率を調節可能なエアミックスドア(33)と、センターベント開口部(21c)及びサイドベント開口部(21s)の開口面積を調節するためのスライド式のベントドア(40;40A)と、を備えている。ベントドア(40;40A)には、センターベント開口部(21c)の開口面積が最少とされた際に、サイドベント開口部(21s)から車室(VI)に送風空気の吹出を許容する空気通過許容部(42e)が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に送風空気が通過可能な流路(R)を有し、送風空気を車室(VI)に吹出可能なセンターベント開口部(21c)及びサイドベント開口部(21s)が形成されているケース(20)と、
前記流路(R)に配置されて送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器(31)と、
この冷却用熱交換器(31)を通過した送風空気が通過可能であり送風空気を温めることが可能な加熱用熱交換器(32)と、
この加熱用熱交換器(32)を通過する送風空気と前記加熱用熱交換器(32)を迂回する送風空気の比率を調節可能なエアミックスドア(33)と、
前記センターベント開口部(21c)及び前記サイドベント開口部(21s)の開口面積を調節するためのスライド式のベントドア(40;40A)と、を備え、
前記ベントドア(40;40A)には、前記センターベント開口部(21c)の開口面積が最少とされた際に、前記サイドベント開口部(21s)から前記車室(VI)に送風空気の吹出を許容する空気通過許容部(42e)が形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記ケース(20)には、前記ベントドア(40)をガイドするレール(24)と、前記センターベント開口部(21c)と前記サイドベント開口部(21s)とを区切っている区画部(25)と、が設けられ、
前記レール(24)は、前記ベントドア(40)が前記センターベント開口部(21c)の開口面積を最少としている位置において、前記ベントドア(40)が前記区画部(25)に近づくようにガイドする形状に形成されている、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記ベントドア(40)は、前記センターベント開口部(21c)の開口面積を最少としている位置において、前記区画部(25)に当接していることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記区画部(25)は、前記センターベント開口部(21c)から前記流路(R)に向かって延びるセンター側壁部(25c)と、前記サイドベント開口部(21s)から前記流路(R)に向かって延びるサイド側壁部(25s)と、これらのセンター側壁部(25c)の先端及びサイド側壁部(25s)の先端を繋いでいる底壁部(25u)と、を含む、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記区画部(25)は、前記底壁部(25u)から前記流路(R)に向かってさらに延びる延出壁部(25e)を有する、請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記ケース(20)には、前記ベントドア(40A)をガイドするレール(24)が設けられ、
前記ベントドア(40A)は、前記センターベント開口部(21c)の開口面積を減少するスライド方向における前端(42f)側から後端(42r)側に向かって、前記レール(24)に対して徐々に前記流路(R)の下流側に傾斜している傾斜面(42Aa)を有し、
この傾斜面(42Aa)によって、前記センターベント開口部(21c)と前記サイドベント開口部(21s)とを区切っている区画部(25)を覆うことが可能である、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記傾斜面(42Aa)は、前記ベントドア(40A)が前記センターベント開口部(21c)の開口面積を最少としている位置において、前記区画部(25)に当接している、請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記区画部(25)は、前記センターベント開口部(21c)から前記流路(R)に向かって延びるセンター側壁部(25c)と、前記サイドベント開口部(21s)から前記流路(R)に向かって延びるサイド側壁部(25s)と、これらのセンター側壁部(25c)の先端及びサイド側壁部(25s)の先端を繋いでいる底壁部(25u)と、を含む、請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記区画部(25)は、前記底壁部(25u)から前記流路(R)に向かってさらに延びる延出壁部(25e)を有する、請求項8に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の温度を調節するための車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両には、車室内の温度を調節するために空調装置が搭載されている。車両用空調装置に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示された車両用空調装置は、加熱用熱交換器を通過する送風空気と加熱用熱交換器を迂回する送風空気の比率を調節可能なエアミックスドアと、センターベント開口部及びサイドベント開口部の開口面積を調節するためのスイング式のベントドアと、を備えている。
【0004】
ベントドアは、センターベント開口部のシート面とサイドベント開口部のシート面とが段状に形成されている。これにより、センターベント開口部を全閉にした場合であっても、サイドベント開口部を一部開放することができる。サイドベント開口部を常に開放するため、車室側方には、常に一定量以上の風を送ることができる。送風を行うことにより、車室側方の窓ガラスが曇ることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/020957号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1による車両用空調装置によれば、段差のあるベントドアをスイングさせるため、ケース内に大きなスペースが必要となる。このため、ケースが大型化し、車両用空調装置の大型化を招くこととなる。
【0007】
車両用空調装置は、通常、車室前部の限られた載置スペースに載置される。このため、小型化された車両用空調装置の提供が望まれる。一方で、車室側方の窓ガラスの曇りを抑制する観点から、常時サイドベント開口部からは送風を行うことができることが望まれる。
【0008】
本発明は、小型でありながらも常時サイドベント開口部から送風を行うことのできる車両用空調装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
第1に、内部に送風空気が通過可能な流路(R)を有し、送風空気を車室(VI)に吹出可能なセンターベント開口部(21c)及びサイドベント開口部(21s)が形成されているケース(20)と、
前記流路(R)に配置されて送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器(31)と、
この冷却用熱交換器(31)を通過した送風空気が通過可能であり送風空気を温めることが可能な加熱用熱交換器(32)と、
この加熱用熱交換器(32)を通過する送風空気と前記加熱用熱交換器(32)を迂回する送風空気の比率を調節可能なエアミックスドア(33)と、
前記センターベント開口部(21c)及び前記サイドベント開口部(21s)の開口面積を調節するためのスライド式のベントドア(40;40A)と、を備え、
前記ベントドア(40;40A)には、前記センターベント開口部(21c)の開口面積が最少とされた際に、前記サイドベント開口部(21s)から前記車室(VI)に送風空気の吹出を許容する空気通過許容部(42e)が形成されていることを特徴とする車両用空調装置が提供される。
【0011】
第2に、好ましくは、第1に記載の車両用空調装置であって、
前記ケース(20)には、前記ベントドア(40)をガイドするレール(24)と、前記センターベント開口部(21c)と前記サイドベント開口部(21s)とを区切っている区画部(25)と、が設けられ、
前記レール(24)は、前記ベントドア(40)が前記センターベント開口部(21c)の開口面積を最少としている位置において、前記ベントドア(40;40A)が前記区画部(25)に近づくようにガイドする形状に形成されている。
【0012】
第3に、好ましくは、第2に記載の車両用空調装置であって、
前記ベントドア(40)は、前記センターベント開口部(21c)の開口面積を最少としている位置において、前記区画部(25)に当接している。
【0013】
第4に、好ましくは、第2又は第3に記載の車両用空調装置であって、
前記区画部(25)は、前記センターベント開口部(21c)から前記流路(R)に向かって延びるセンター側壁部(25c)と、前記サイドベント開口部(21s)から前記流路(R)に向かって延びるサイド側壁部(25s)と、これらのセンター側壁部(25c)の先端及びサイド側壁部(25s)の先端を繋いでいる底壁部(25u)と、を含む。
【0014】
第5に、好ましくは、第4に記載の車両用空調装置であって、
前記区画部(25)は、前記底壁部(25u)から前記流路(R)に向かってさらに延びる延出壁部(25e)を有する。
【0015】
第6に、好ましくは、第1に記載の車両用空調装置であって、
前記ケース(20)には、前記ベントドア(40A)をガイドするレール(24)が設けられ、
前記ベントドア(40A)は、前記センターベント開口部(21c)の開口面積を減少するスライド方向における前端(42f)側から後端(42r)側に向かって、前記レール(24)に対して徐々に前記流路(R)の下流側に傾斜している傾斜面(42Aa)を有し、
この傾斜面(42Aa)によって、前記センターベント開口部(21c)と前記サイドベント開口部(21s)とを区切っている区画部(25)を覆うことが可能である。
【0016】
第7に、好ましくは、第6に記載の車両用空調装置であって、
前記傾斜面(42Aa)は、前記ベントドア(40A)が前記センターベント開口部(21c)の開口面積を最少としている位置において、前記区画部(25)に当接している。
【0017】
第8に、好ましくは、第6又は第7に記載の車両用空調装置であって、
前記区画部(25)は、前記センターベント開口部(21c)から前記流路(R)に向かって延びるセンター側壁部(25c)と、前記サイドベント開口部(21s)から前記流路(R)に向かって延びるサイド側壁部(25s)と、これらのセンター側壁部(25c)の先端及びサイド側壁部(25s)の先端を繋いでいる底壁部(25u)と、を含む。
【0018】
第9に、好ましくは、第8に記載の車両用空調装置であって、
前記区画部(25)は、前記底壁部(25u)から前記流路(R)に向かってさらに延びる延出壁部(25e)を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小型でありながらも常時サイドベント開口部から送風を行うことのできる車両用空調装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1による車両用空調装置を左側方から見た状態の斜視図である。
図2図1に示された車両用空調装置を左側方から見た状態の断面を模式的に示した図である。
図3図2に示されたベントドアを後方から見た状態の断面図である。
図4】4Aは、図2に示されたベントドアの要部について説明する図、4Bは、4Aに示されたベントドアが後退した状態について説明する図である。
図5図4Aに示されたベントドアの斜視図である。
図6図3の6矢視図である。
図7】第1の変更例に用いられるベントドアを後方から見た状態の断面図である。
図8】8Aは、第2の変更例に用いられる空気通過許容部の平面図、8Bは、第3の変更例に用いられる空気通過許容部の平面図、8Cは、第4の変更例に用いられる空気通過許容部の平面図である。
図9】9Aは、実施例2による車両用空調装置図のベントドアの要部について説明する図、9Bは、9Aに示されたベントドアが後退した状態について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中Frは車両用空調装置が搭載される車両の進行方向を基準として前、Rrは後、Leは車両の乗員を基準として左、Riは乗員を基準として右、Upは上、Dnは下を示している。
【0022】
<実施例1>
図1を参照する。車両用空調装置10(以下、「空調装置10」と略記する。)は、例えば、車室VIの前部に設けられ、樹脂パネルや内装材等によって囲われている。空調装置10は、車室VI内及び/又は車外の空気を取り入れて送風する送風部11と、この送風部11から送られた送風空気の温度を調節可能な温度調節部12と、を有する。
【0023】
送風部11は、内部に送風ファンが収納されているファン収納部11aと、このファン収納部11aから前方に延び車外の空気を取り入れ可能な前部空気取入部11bと、ファン収納部11aから後方に延び後方から車室VI内の空気を取り入れ可能な後部空気取入部11cと、を有する。
【0024】
送風ファンが作動することにより、前部空気取入部11b及び/又は後部空気取入部11cから空気が取り入れられる。取り入れられた空気は、温度調節部12に向かって送られる。温度調節部12において温度が調節された送風空気は、ダクト等を介して車室VI内に送られる。次に、温度調節部12について詳細に説明する。
【0025】
図2を参照する。温度調節部12は、送風部11(図1参照)に接続されているケース20に、送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器31と、この冷却用熱交換器31を通過した送風空気が通過可能であり通過する送風空気を温める加熱用熱交換器32と、この加熱用熱交換器32を通過する送風空気と加熱用熱交換器32を迂回する送風空気の比率を調節可能なエアミックスドア33と、このエアミックスドア33の上方にスライド可能に設けられているベントドア40と、このベントドア40の前方にスイング可能に設けられているデフロスタドア35と、ベントドア40の後方にスイング可能に設けられているフットドア36と、が収納されてなる。
【0026】
ケース20の内部は、送風空気が通過可能な流路Rとされている。流路Rには、加熱用熱交換器32が設けられている加熱流路r1と、この加熱流路r1を迂回して形成されている迂回路r2と、が含まれる。
【0027】
図1を併せて参照する。また、ケース20には、車室VI内に送風空気を吹出すための複数の開口部21~23が開けられている。開口部21~23は、乗員の上半身に送られる空気が通過するベント開口部21と、フロントガラスに送られる空気が通過するデフロスタ開口部22と、乗員の脚部に送られる空気が通過するフット開口部23と、を含む。
【0028】
ベント開口部21は、車幅中央に送られる空気が通過するセンターベント開口部21cと、車幅端部に送られる空気が通過するサイドベント開口部21sと、からなる。
【0029】
送風部11から送られる送風空気は、前端右側からケース20に入り、後方に向かって冷却用熱交換器31を通過する。例えば、冷却用熱交換器31を通過した送風空気の一部は、加熱用熱交換器32を通過する。また、冷却用熱交換器31を通過した送風空気の残部は、加熱用熱交換器32を迂回する。加熱用熱交換器32を通過した送風空気及び加熱用熱交換器32を迂回した送風空気は、合流し各開口部21~23から車室VI内へと送られる。
【0030】
図3を参照する。ケース20には、ベントドア40を支持すると共にガイドする溝状のレール24が複数形成されている。また、ケース20には、センターベント開口部21cとサイドベント開口部21sとを区切っている区画部25が形成されている。
【0031】
区画部25は、センターベント開口部21cから流路Rに向かって延びるセンター側壁部25cと、サイドベント開口部21sから流路Rに向かって延びるサイド側壁部25sと、これらのセンター側壁部25cの先端及びサイド側壁部25sの先端を繋いでいる底壁部25uと、を含む。
【0032】
センター側壁部25cは、センターベント開口部21cの縁に沿って略矩形枠状に形成されていても良い。また、サイド側壁部25sは、サイドベント開口部21sの縁に沿って略矩形枠状に形成されていても良い。
【0033】
図7を参照する。図7には、第1の変更例に用いられる区画部25が示されている。区画部25は、底壁部25uから流路Rに向かってさらに延びる延出壁部25eを有していても良い。
【0034】
延出壁部25eは、サイド側壁部25sの下方に連続して延びていても良いし、センター側壁部25cの下方に連続して延びていても良い。また、延出壁部25eは、サイド側壁部25sとセンター側壁部25cとの間の位置から延びていても良い。
【0035】
図2を参照する。冷却用熱交換器31は、内部に冷媒が循環される。送風空気が冷却用熱交換器31を通過する際に、内部を循環している冷媒と熱交換を行ない、送風空気は冷却される。
【0036】
加熱用熱交換器32は、内部に温水が循環される温水ヒータ32aと、電力により発熱する電気ヒータ32bと、を有する。送風空気は、温水ヒータ32a及び電気ヒータ32bを通過する際に熱交換を行うことにより、温められる。
【0037】
なお、加熱用熱交換器32は、温水ヒータ32aのみで構成することとしても良いし、電気ヒータ32bのみで構成することとしても良い。
【0038】
エアミックスドア33は、例えばスライド式が用いられる。エアミックスドア33は、駆動力を伝達するピニオンギヤを含むミックスドア駆動部33aと、このミックスドア駆動部33aに噛み合うラックを有し、ピニオンが回転することにより加熱流路r1から迂回路r2までスライド可能なミックスドア本体33bと、を有する。
【0039】
ミックスドア駆動部33aが作動(回転)すると、ミックスドア本体33bが前後方向にスライドする。これにより、加熱流路r1の開放量と、迂回路r2の開放量とが変化する。
【0040】
ミックスドア本体33bは、加熱流路r1を全開とし迂回路r2を全閉とする位置から、加熱流路r1を全閉とし迂回路r2を全開とする位置まで移動可能である。ミックスドア本体33bが迂回路r2を全閉としている状態において、冷却用熱交換器31を通過した送風空気のほぼすべてが加熱流路r1を通過可能な状態にある。一方、ミックスドア本体33bが加熱流路r1を全閉としている状態において、冷却用熱交換器31を通過した送風空気のほぼすべてが迂回路r2を通過可能な状態にある。
【0041】
ミックスドア本体33bの位置を調節することによって、加熱用熱交換器32を通過する送風空気と加熱用熱交換器32を迂回する送風空気の比率を調節することができる。加熱流路r1を通過した温かい送風空気と、迂回路r2を通過した冷たい空気は、下流で合流する。これにより、送風空気を所定の温度とすることができる。換言すれば、設定温度によってミックスドア本体33bの位置が調節され、加熱用熱交換器32を通過する送風空気の割合が調節される。
【0042】
なお、空調装置10の小型化の観点からエアミックスドア33は、スライド式を用いることが好ましいが、スイング式を用いることも可能である。
【0043】
図3及び図4Aを参照する。ベントドア40は、駆動力を伝達するピニオンギヤを含むベントドア駆動部41と、このベントドア駆動部41に噛み合うラック42cを有し、ピニオンが回転することにより前後方向にスライド可能なベントドア本体42と、を有する。
【0044】
図3及び図5を参照する。ベントドア本体42は、略矩形板状の部材であり、前後方向にスライド可能に設けられている。以下、ベントドア本体42がセンターベント開口部21cを閉じる際に進む方向を前、ベントドア本体42がセンターベント開口部21cを開く際に進む方向を後、ということがある。空調装置10において、ベントドア本体42の前後と、車両の進行方向の前後とは一致している。
【0045】
ベントドア40がセンターベント開口部21cの開口面積を最少としている位置(閉じている位置)において、ベントドア本体42の上面42aは、底壁部25uに当接している。
【0046】
なお、図7に示されるように、区画部25が延出壁部25eを有する際には、ベントドア本体42の上面42aは、延出壁部25eの下端に当接している。ベントドア40がセンターベント開口部21cの開口面積を最少としている位置において、ベントドア本体42の上面42aは、区画部25の流路R側の端部に当接している、ということができる。
【0047】
図3及び図5を参照する。ベントドア本体42のそれぞれの角の近傍には、レール24に挿入されている円柱状のピン部42bが形成されている。ピン部42bの下面は、レール24に接触している。また、ベントドア本体42の左右の端部には、前後方向に亘ってベントドア駆動部41に噛み合うラック42cが形成されている。
【0048】
ベントドア本体42の後部において、ベントドア本体42の上面42aからラック42cの上端42dまでの距離は後端42rに近づくにつれ徐々に長くなっている。つまり、ベントドア本体42の後部において、ラック42cは、ベントドア本体42の上面42aから徐々に離間している。
【0049】
図6を参照する。ベントドア40がセンターベント開口部21cを閉じている際(センターベント開口部21cを通過する風量を最小としている際)を基準として、ベントドア本体42には、サイドベント開口部21sに重なる位置に矩形穴状の空気通過許容部42eが前後2カ所に形成されている。センターベント開口部21cが閉じられている場合においても、サイドベント開口部21sからは、空気通過許容部42eを通過した送風空気が車室VI(図1参照)内に吹き出される。
【0050】
なお、空気通過許容部42eは、1カ所又は3カ所以上に形成されていても良く、四角以外の多角形や丸形状の穴であっても良い。ベントドア40がセンターベント開口部21cを通過する風量を最小としている際に、サイドベント開口部21sから車室VI(図1参照)に送風空気の吹出を許容するものであれば、矩形状の穴には限られない。また、図8A図8Cに示されるように、空気通過許容部42eは、任意の位置に形成することができる。
【0051】
図4A及び図4Bを参照する。図4Aに示されている状態においてベントドア駆動部41が作動すると、ベントドア本体42は後退する。後退することにより、センターベント開口部21c(図3参照)及びサイドベント開口部21sの両方から空気の吹き出しが許容される。例えば、冷房モードにおいて、センターベント開口部21c及びサイドベント開口部21sの両方から空気の吹き出しが許容される。図4Aの位置にあったベントドア本体42は、いずれ図4Bの位置まで後退する。
【0052】
一方、暖房モードの際には、例えばフット開口部23(図2参照)から乗員の足元に向かって送風を行う。図4Bに示されている状態においてベントドア駆動部41が作動すると、ベントドア本体42は前進する。センターベント開口部21c(図3参照)からの空気の吹出しが規制される。一方、図4Aに示される状態においても、サイドベント開口部21sからは、空気通過許容部42eを通過した空気が吹き出される。サイドベント開口部21sから吹出した送風空気は、車室VIの左右端部に沿って流れ、窓ガラスの曇りを抑制することができる。図4Bの位置にあったベントドア本体42は、いずれ図4Aの位置まで前進する。
【0053】
図4Aに示すように、ベントドア40が前端位置に位置する際に、後部のピン部42bが当接しているレール24の部位は、ベント開口部21に向かって湾曲する湾曲部24aとされている。ベントドア40が前端位置に達することにより、ベントドア40の全体が湾曲部24aに持ち上げられるようにして区画部25に当接する。一方、ベントドア40が後退すると、後部のピン部42bは下方に下がり、ベントドア40が区画部25から離間する。離間しているため、常に接触している場合に比べて、小さな駆動力によってベントドア40を移動させることができる。
【0054】
レール24は、ベントドア40がセンターベント開口部21cの開口面積を最少としている位置において、ベントドア40が区画部25に近づくようにガイドする形状に形成されている、ということができる。
【0055】
なお、運転モードによって、ベントドア本体42を図4Aに示す位置と図4Bに示す位置との間に止めることも可能である。
【0056】
デフロスタドア35、及び、フットドア36には、例えば、スイング式のドアが設けられる。これらのドア35、36の位置によってデフロスタ開口部22、フット開口部23から吹き出される送風空気の流量が調整される。デフロスタドア35、及び、フットドア36のどちらか一方、又は両方をスライドドアによって構成しても良い。
【0057】
以上に説明した空調装置10は、以下の効果を奏する。
【0058】
空調装置10は、内部に送風空気が通過可能な流路Rを有し、送風空気を車室VIに吹出可能なセンターベント開口部21c及びサイドベント開口部21sが形成されているケース20と、流路Rに配置されて送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器31と、この冷却用熱交換器31を通過した送風空気が通過可能であり送風空気を温めることが可能な加熱用熱交換器32と、この加熱用熱交換器32を通過する送風空気と加熱用熱交換器32を迂回する送風空気の比率を調節可能なエアミックスドア33と、センターベント開口部21c及びサイドベント開口部21sの開口面積を調節するためのスライド式のベントドア40と、を備えている。
ベントドア40には、センターベント開口部21cの開口面積が最少とされた際に、サイドベント開口部21sから車室VIに送風空気の吹出を許容する空気通過許容部42eが形成されている。
【0059】
ベントドア40には、センターベント開口部21cを通過する風量が最少とされた際に、サイドベント開口部21sから空気が送出可能となるよう空気の通過を許容する空気通過許容部42eが形成されている。このため、センターベント開口部21cを通過する風量が最小とされた際(例えば、センターベント開口部21cの全閉時)においても、サイドベント開口部21sから空気を送出することができる。スライド式のベントドア40に空気の通過を許容する空気通過許容部42eを形成するのみであるから、小型でありながらも常時サイドベント開口部21sから送風を行うことのできる空調装置10を提供することができる。
【0060】
ケース20には、ベントドア40をガイドするレール24と、センターベント開口部21cとサイドベント開口部21sとを区切っている区画部25と、が設けられている。レール24は、ベントドア40がセンターベント開口部21cの開口面積を最少としている位置において、ベントドア40が区画部25に近づくようにガイドする形状に形成されている。
【0061】
レール24は、ベントドア40がセンターベント開口部21cを通過する風量を最少としている位置において、ベントドア40が区画部25に近づくようにガイドする形状に形成されている。ベントドア40がセンターベント開口部21cを通過する風量を最少としている位置において、ベントドア40を区画部25により近接(密着)させることができる。これにより、センターベント開口部21cから漏れる風量をより少なくすることができる。
【0062】
ベントドア40は、センターベント開口部21cの開口面積を最少としている位置において、区画部25に当接している。センターベント開口部21cから漏れる風量をより少なくすることができる。
【0063】
区画部25は、センターベント開口部21cから流路Rに向かって延びるセンター側壁部25cと、サイドベント開口部21sから流路Rに向かって延びるサイド側壁部25sと、これらのセンター側壁部25cの先端及びサイド側壁部25sの先端を繋いでいる底壁部25uと、を含む。ダクト等外部の部品が接続される各開口部21c、21s近傍の強度を高め、送風時に発生する振動や騒音を抑制することができる。
【0064】
図7を参照する。区画部25は、底壁部25uから流路Rに向かってさらに延びる延出壁部25eを有する。延出壁部25eを有することにより、延出する長さを調節することでベントドア40を設ける位置に自由度を持たせることができる。つまり、延出壁部25eは、調整代の役割を果たす。ベントドア40を駆動するリンクはケース20の外側に取り付けられるが、空調装置10を小型化するためにはそのスペースは限られている。しかし、ベントドア40を設ける位置に自由度があることから、リンク等の位置とドア位置を対応させることが容易になる。
【0065】
<実施例2>
次に、実施例2による空調装置10Aを図面に基づいて説明する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0066】
図9Aを参照する。図9Aには、実施例2による空調装置10Aに用いられるベントドア40Aが示されている。ベントドア40Aを支持しているレール24は、略直線状に形成されている。
【0067】
ベントドア40Aは、駆動力を伝達するピニオンギヤを含むベントドア駆動部41と、このベントドア駆動部41に噛み合うラック42cを有し、ピニオンが回転することにより前後方向にスライド可能なベントドア本体42Aと、を有する。
【0068】
ベントドア本体42Aの上面42Aaは、前部から後部に向かって上り勾配に形成された傾斜面とされている。以下、上面42Aaのことを、傾斜面42Aaということもある。
【0069】
ベントドア40Aは、ベント開口部21の開口面積を減少するスライド方向における前端42f側から後端42r側に向かって、レール24に対して徐々に流路Rの下流側に傾斜している傾斜面42Aaを有している、ということもできる。
【0070】
ベントドア40Aがベント開口部21を閉じている状態(開口面積を最小としている状態)において、傾斜面42Aaは、区画部25(図3参照)に当接している。
【0071】
図9Bを併せて参照する。ベントドア駆動部41が作動すると、ベントドア40Aは、直線的なレール24の軌道に沿って直線的に前後方向に移動する。これにより、ベント開口部21の開度を調節することができる。
【0072】
以上に説明した空調装置10Aも空気通過許容部42eが形成されている。これにより、小型でありながらも常時サイドベント開口部21sから送風を行うことのできる空調装置10Aを提供することができる。また、センターベント開口部21c(図3参照)の開口面積を最少としている位置において、ベントドア40Aを区画部25に当接させることにより、センターベント開口部21cから漏れる風量をより少なくすることができる。また、区画部25を略U字状断面形状とすることにより、開口部21c、21s近傍の強度を高め、送風時に発生する振動や騒音を抑制することができる。また、区画部25が底壁部25uから流路Rに向かってさらに延びる延出壁部25eを有する場合には、リンク等の位置とドア位置を対応させることが容易になる。
【0073】
加えて、ケース20には、ベントドア40をガイドするレール24が設けられ、ベントドア40は、センターベント開口部21cの開口面積を減少するスライド方向における前端42f側から後端42r側に向かって、レール24に対して徐々に流路Rの下流側に傾斜している傾斜面42Aaを有している。この傾斜面42Aaによって、センターベント開口部21cとサイドベント開口部21sとを区切っている区画部25を覆うことが可能である。
【0074】
ベントドア40の傾斜面42Aaは、前端42fから後端42rに向かって徐々にレール24から離間するように傾斜している。傾斜面42Aaが傾斜していることにより、ベントドア40をレール24に沿って移動させると、端部において傾斜面42Aaをより区画部25に近接(密着)させることができる。これにより、センターベント開口部21c(図3参照)から漏れる風量をより少なくすることができる。
【0075】
傾斜面42Aaは、ベントドア40がセンターベント開口部21cの開口面積を最少としている位置において、区画部25に当接している。センターベント開口部21cから漏れる風量をより少なくすることができる。
【0076】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の空調装置は、乗用車に搭載する空調装置に好適である。
【符号の説明】
【0078】
10、10A…車両用空調装置
21c…センターベント開口部、21s…サイドベント開口部
24…レール
25…区画部、25c…センター側壁部、25s…サイド側壁部、25u…底壁部、25e…延出壁部
31…冷却用熱交換器
32…加熱用熱交換器
33…エアミックスドア
40、40A…ベントドア
42e…空気通過許容部、42Aa…上面(傾斜面)
R…流路
VI…車室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9