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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132703
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】足場用幅木
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/00 20060101AFI20240920BHJP
   E04G 7/34 20060101ALI20240920BHJP
   E04G 7/28 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E04G5/00 301A
E04G7/34 303B
E04G7/28 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043587
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】315019894
【氏名又は名称】株式会社杉孝グループホールディングス
(71)【出願人】
【識別番号】000134659
【氏名又は名称】株式会社ナカオ
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】和田 錬太郎
(72)【発明者】
【氏名】中尾 哲也
(57)【要約】
【課題】踏板を支持する支柱間の距離が異なっても取り付けることができ、隣接する支柱間に設けた他方の幅木と干渉することなく取り付けることができる足場用幅木を提供する。
【解決手段】建築・土木現場で仮設される単管および枠組み足場の支柱に支持される踏板の縁に沿って設ける幅木であって、幅木部と、前記幅木部を横方向にスライド自在としつつ前記支柱に固定するスライド固定部と、を備え、前記幅木部は、略平板状の本体幅木と、前記本体幅木に対して相対的に横方向にスライドする調整幅木と、よりなり、前記スライド固定部は、前記本体幅木を横方向にスライド自在に吊設するスライドロッドと、前記支柱に着脱自在であって前記スライドロッドの両端部に前記スライドロッドに沿ってスライド自在に設けた掴み金具と、よりなることを特徴とする足場用幅木を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築・土木現場で仮設される単管および枠組み足場の支柱に支持される踏板の縁に沿って設ける幅木であって、
幅木部と、
前記幅木部を横方向にスライド自在としつつ前記支柱に固定するスライド固定部と、
を備え、
前記幅木部は、
略平板状の本体幅木と、
前記本体幅木に対して相対的に横方向にスライドする調整幅木と、
よりなり、
前記スライド固定部は、
前記本体幅木を横方向にスライド自在に吊設するスライドロッドと、
前記支柱に着脱自在であって前記スライドロッドの両端部に前記スライドロッドに沿ってスライド自在に設けた掴み金具と、
よりなることを特徴とする足場用幅木。
【請求項2】
前記本体幅木に上下に移動自在とする振れ止め体を備えたことを特徴とする請求項1に記載の足場用幅木。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築・土木現場で仮設された単管および枠組み足場の踏板の縁に沿って設けた足場用幅木に関するものである。
【0002】
従来、土木構造物の建築現場において仮設される足場は、設置面に立設した支柱と、隣接する支柱間に水平状に架設した横架材と、同一水平面上であって対向する平行な二本の横架材に架設された踏板と、で構成している。
【0003】
このように構成された足場には、作業用の工具や建築用の部材が踏板から落下することを防止するとともに、作業者が踏板から足を踏み外す虞がなく安心感をもって作業することができるように、踏板の縁に沿って幅木が設けられている。
【0004】
幅木は、平板状の幅木本体と、幅木本体の両端にそれぞれ取り付けられたフックを有し、隣接する支柱にフックを係止することにより、幅木本体が踏板に直交するように設けられている。
【0005】
ところが、足場を構成する支柱間の距離は、建築現場に応じて変化する。そのため、従来は、踏板の寸法に合わせて複数種類の長さの幅木を用意して対応するか、コンパネや木板、端材を現場にて必要な寸法に加工することで対応していた。
【0006】
このため、足場用の部材の部品点数の増加、または、必要な寸法への材料の加工が必要となり踏板への幅木の設置作業が煩雑であった。このような問題を解消する幅木構造として全長を可変とする幅木構造が開示されている。
【0007】
特許文献1に記載の幅木は、本体幅木と、延長部材を介して本体幅木に連結した調整幅木とを有する。調整幅木は、延長部材により本体幅木に対して近接離反自在に設けられている。調整幅木の端部には、支柱に取り付けるための取付金具が設けられている。このように、特許文献1に記載の幅木は、本体幅木に調整幅木を並設して、本体幅木に対して調整幅木を近接離反自在とする構成により、足場を構成する支柱間の距離に関係なく幅木を取付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-326296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の幅木は、幅木を支柱に係止するための取付金具を幅木部材の端部に連結した構成であるため、支柱と幅木との距離を調整することができなかった。
【0010】
踏板の縁辺に取り付けられる幅木は、踏板の長側辺に設けられる桁側幅木と、踏板の短側辺に設けられる妻側幅木がある。各幅木は、踏板を支持する隣接する支柱間に係止されている。そのため、いずれか一方の幅木の厚みが大きいと、他方の幅木に干渉してしまい、他方の幅木を取付けることができないという問題が生じる。このように、支柱と幅木との間の距離を調整することができないと、桁側幅木または妻側幅木のいずれかの幅木を取付けることができなくなる虞があった。
【0011】
本発明は、かかる従来の課題を解決すべく、踏板を支持する支柱間の距離が異なっても取り付けることができ、隣接する支柱間に設けた他方の幅木と干渉することなく取り付けることができる足場用幅木を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、建築・土木現場で仮設される単管および枠組み足場の支柱に支持される踏板の縁に沿って設ける幅木であって、幅木部と前記幅木部を横方向にスライド自在としつつ前記支柱に固定するスライド固定部と、を備え、前記幅木部は、平板状の本体幅木と、前記本体幅木に対して相対的に横方向にスライドする調整幅木と、よりなり、前記スライド固定部は、前記本体幅木を横方向にスライド自在に吊設するスライドロッドと、前記支柱に着脱自在であって前記スライドロッドの両端部に前記スライドロッドに沿ってスライド自在に設けた掴み金具と、よりなることを特徴とする足場用の幅木である。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記本体幅木に上下に移動自在とする振れ止め体を備えたことを特徴とする足場用の幅木である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、建築・土木現場で仮設される単管および枠組み足場の支柱に支持される踏板の縁に沿って設ける幅木であって、幅木部と前記幅木部を横方向にスライド自在としつつ前記支柱に固定するスライド固定部と、を備え、前記幅木部は、平板状の本体幅木と、前記本体幅木に一部を重畳しつつ相対的に横方向にスライドする調整幅木と、よりなり、前記スライド固定部は、前記本体幅木を横方向にスライド自在に吊設するスライドロッドと、前記支柱に着脱自在であって前記スライドロッドの両端部に前記スライドロッドに沿ってスライド自在に設けた掴み金具と、より構成したため、踏板を支持する支柱間の距離が異なっても幅木の全長を調整して足場踏板の周縁部と幅木との間に隙間が生起される虞を低減して幅木を取付けることができる。また、スライドロッドに本体幅木を横方向にスライド自在に吊設したことにより、隣接する支柱間に設けた他方の幅木の厚みに関係なく取り付けることができる。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、前記本体幅木に上下に移動自在とする振れ止め体を備えた構成により、スライドロッドに沿って本体幅木を移動させたとしても足場の周縁部から本体幅木が離隔する虞を低減して、幅木が揺動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る幅木を支柱に取り付けた状態を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る幅木を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る幅木の分解斜視図であり、(a)は上方から見た分解斜視図であり、(b)は下方から見た分解斜視図である。
図4】本実施形態に係る幅木を支柱に取り付けた状態を示す側面図である。
図5】本実施形態に係る幅木の幅員を調整した状態を示す斜視図である。
図6】本実施形態に係る幅木を支柱に取り付けた状態を示す正面図である。
図7】本実施形態に係る幅木を支柱に取り付けた状態を示す平面図である。
図8】本実施形態に係る幅木の収納形態を示す斜視図である。
図9】本実施形態に係る幅木の収納形態を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
図10】本実施形態に係る幅木を積層して収納した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る足場用の幅木の構成について、図1図10を参照して具体的に説明する。
図1は、本実施形態に記載の足場用の幅木を足場の支柱に取り付けた状態を示す斜視図であり、図2は、本実施形態に記載の足場用の幅木の斜視図であり、図3は、本実施形態に記載の足場用の幅木の分解斜視図である。
【0018】
図1に示すように、足場Sは、設置面に立設した支柱Pと、隣接する支柱P,P間に水平状に架設した横架材Hと、同一水平面上であって対向する平行な二本の横架材H,Hに架設された踏板Tが設けられている。そして、作業用の工具や建築用の部材が踏板Tから落下することを防止するとともに、作業者が踏板Tから足を踏み外す虞がなく安心感をもって作業することができるように踏板Tの縁に沿って幅木Bが設けられている。
【0019】
幅木Bは、図2に示すように、踏板Tからの落下を防止する幅木部1と、幅木部1を横方向にスライド自在に支持しつつ隣接する支柱P,P間に固定するスライド固定部2とで構成している。なお、本実施形態における横方向とは、図2に示す左右方向のことを指す。
【0020】
幅木部1は、略平板状の本体幅木10と、略平板状であって本体幅木10に一部を重畳しつつ本体幅木10に対して相対的に横方向にスライド可能に構成した調整幅木11,11とよりなる。
【0021】
本体幅木10は、図3に示すように、調整幅木11が横方向にスライドするためのスライド機構を有する本体支持部100と、本体支持部100の下部に連結した本体側スライド量調整部101と、本体側スライド量調整部101の下部に連結した振れ止め部102とからなる。
【0022】
本体支持部100は、略方形状の切欠部100b,100bを左右に有する支持体100aと、支持体100aの上端部を略90度屈曲して前方に伸延した摺動支持部100cを有する。本体支持部100は、側面視において、支持体100aと摺動支持部100cとにより全体が略“L”字状に形成されている。本体支持部100は、左右の切欠部100b,100b間の略中央部、すなわち、支持体100aの略中央上部近傍にロッド係合部100dを設けている。
【0023】
ロッド係合部100dは、略平板状の固定部100eと、固定部100eの上部に連結した移動用筒部100fとを有する。ロッド係合部100dは、固定部100eにボルトなどの締結部材を挿通してその先端を支持体100aに締め付けることで固定されている。移動用筒部100fは、左右方向に貫通した孔部を有する円筒体である。移動用筒部100fに後述するスライドロッド20を挿通することにより、本体幅木10がスライドロッド20に左右方向にスライド自在に吊設される。このように構成した本体支持部100の下端部には、本体側スライド量調整部101を連結している。
【0024】
本体側スライド量調整部101は、本体支持部100の下端部から前方であって斜め下方に直線状に伸延した上側傾斜面部101aと、上側傾斜面部101aから下方であって垂直方向に直線状に伸延した鉛直面部101bと、鉛直面部101bから後方であって斜め下方に直線状に伸延した下側傾斜面部101cとを有する。本体側スライド量調整部101は、上側傾斜面部101aと鉛直面部101bと下側傾斜面部101cとにより前側に膨出した略山型に形成している。
【0025】
鉛直面部101bは、略平板状であって左右端部近傍に設けたスライド規制部101d,101dと、中央部近傍に設けた取付用孔部101e,101eとを有する。スライド規制部101d,101dは、一対のボルトとナットからなり、一端部が鉛直面部101bから前側に突出し、他端部が鉛直面部101bから後側に突出している。
【0026】
取付用孔部101eは、正面視において略円形状であって後述する調整幅木11に調整側スライド規制体111dを取付けるために設けられた取付作業用の孔部である。このように形成した本体側スライド量調整部101の下端部には、振れ止め部102を連結している。
【0027】
振れ止め部102は、略平板状の支持板部102aと、支持板部102aの下端部を略90度屈曲して前方に伸延した揺動規制部102bとを有する。振れ止め部102は、側面視において、支持板部102aと揺動規制部102bとにより全体が略“L”字状に形成されている。
【0028】
支持板部102aは、略中央部に振れ止め体摺動部103を固設している。振れ止め体摺動部103は、略平板状の固定部103aと、固定部103aの上下端部から前方にそれぞれ屈曲して水平状に伸延した棒体支持片部103b,103bとを有する。固定部103aは、ボルト等の締結部材を挿通し、その先端部を支持板部102aに固定することで支持板部102aに固定されている。棒体支持片部103b,103bは、互いに平行であって対向して設けられている。振れ止め体摺動部103は、固定部103aと棒体支持片部103b,103bとにより側面視において、前方側を開口側とする略“コ”字状に形成している。棒体支持片部103b,103bの中央部間には、円柱状の摺動ガイド棒103cが架設されている。すなわち、摺動ガイド棒103cは、鉛直方向に延伸している。この摺動ガイド棒103cには、振れ止め体104を移動自在に設けている。
【0029】
振れ止め体104は、支柱P,P間に架設した横架材Hに接触して本体幅木10の前後方向の揺動を規制するための揺動規制体である(図4参照)。振れ止め体104は、上下方向に貫通した孔部を有する円筒状に形成した上下移動用筒部104aと、上下移動用筒部104aに連結され踏板Tと横架材Hとの隙間に挿入することで幅木Bの前後方向の揺動を規制する振れ止め片部104bとからなる。振れ止め体104は、上下移動用筒部104aに摺動ガイド棒103cを挿通することにより、摺動ガイド棒103cに沿って上下方向に移動自在に構成している。
【0030】
振れ止め片部104bは、上下移動用筒部104aから水平状に延設した水平部104cと、水平部104cの先端下部から鉛直方向の下方に延設した鉛直部104dとからなる。水平部104cおよび鉛直部104dは、いずれも平板状に形成している。振れ止め片部104bは、水平部104cと鉛直部104dとにより略“L”字状に形成している。振れ止め片部104bは、水平部104cと鉛直部104dとを合わせた上下方向の全長を下側傾斜面部101cの下端部から揺動規制部102bの上面までの距離よりも短く形成している。これにより、幅木Bの収納時において、振れ止め体104を本体側スライド量調整部101と振れ止め部102との間に収納して、幅木B全体の上下方向の全長を短くして収納しやすくできる(図8図9(a)参照)。また、振れ止め片部104bは、上下移動用筒部104aにより摺動ガイド棒103cの軸方向を中心として左右方向に回動できる。これにより、幅木Bの収納時において、振れ止め片部104bの伸延方向を振れ止め部102に対して直交形態から平行形態に変態することができる。すなわち、幅木Bの収納時において、振れ止め片部104bは、後述する調整幅木11の揺動規制片部110e,112bよりも後方に位置することができ、幅木Bの前後方向の全長(厚み)を短く(薄く)でき、コンパクトに収納できる。
【0031】
このように構成した本体幅木10の後面には、一部を本体幅木10に重畳しつつ本体幅木10に対して相対的に横方向にスライド自在とする調整幅木11,11を設けている。なお、本実施形態においては、本体幅木10の左右に調整幅木11をそれぞれ設ける構成を記載しているが、本発明は、本体幅木10の左右の少なくともいずれか一方に本体幅木10に一部が重畳するように調整幅木11が設置されるよう構成されていればよい。
【0032】
調整幅木11は、図3に示すように、本体幅木10に沿って横方向にスライドするためのスライド機構を有する調整支持部110と、調整支持部110の下部に連結した調整側スライド量調整部111と、調整側スライド量調整部111の下部に連結した揺動規制部112とを有する。なお、本実施形態において、調整幅木11は、本体幅木10の左右にそれぞれ設けられているものの、本体幅木10を中心に線対称に設けられているため、図3の手前側に図示された左側の調整幅木11を例示してその構成を説明する。
【0033】
調整支持部110は、図3に示すように、略方形平板状の調整側スライド支持体110aと、調整側スライド支持体110aの上端部を略90度屈曲して前方に伸延した摺動部110bと、正面視において調整側スライド支持体110aの左隅部近傍に設けた掴み金具支持部110cとを有する。調整支持部110は、側面視において、調整側スライド支持体110aと摺動部110bとにより略逆“L”字状に形成している。
【0034】
摺動部110bは、調整側スライド支持体110aの上端部に基端部を連結した支持部110dと、支持部110dの先端部から直角に屈曲して下方に伸延した揺動規制片部110eと、支持部110dの先端部から直角に屈曲して上方に伸延してその先端部を直角に屈曲して前方に伸延した側面視略“L”字状の収納支持部110fからなる。
【0035】
支持部110dは、図9(b)に示すように、基端部と先端部近傍に下方に突設した摺動膨出部110d1、110d2を有する。調整幅木11は、摺動膨出部110d1,110d2を本体幅木10の摺動支持部100cの上面に係合することで本体幅木10に吊設している。これにより、調整幅木11は、本体幅木10との接触面積が小さくなり摺動抵抗を低減して本体幅木10に沿って横方向に容易にスライドさせることができる。また、支持部110dは、前後方向の幅員を摺動支持部100cよりも長く形成している。
【0036】
揺動規制片部110eは、本体幅木10の摺動支持部100cの上下方向の厚みよりも全長が長くなるように構成している(図9(b)参照)。すなわち、揺動規制片部110eは、支持部110dが摺動支持部100cで支持された状態において、摺動支持部100cの下面よりも下方にその先端部が位置している。これにより、調整幅木11は本体幅木10に支持された状態において、揺動規制片部110eが本体幅木10の摺動支持部100cの先端部に係合して前後方向への揺動が規制される。
【0037】
掴み金具支持部110cは、略方形平板状の固定部110gと、固定部110gの上端部から直角に屈曲して前方に水平状に伸延した水平面部110hと、水平面部110hの前端部から上方に直角に屈曲伸延した鉛直面部110jとを有する。掴み金具支持部110cは、ボルト等の締結具を固定部110gに挿通して、その先端部を調整側スライド支持体110aに締め付けることで固定されている。
【0038】
固定部110gは、上下方向の幅員を本体幅木10の支持体100aに設けた切欠部100bの上下方向の幅員よりも小さく形成している。これにより、図5および図6に示すように、調整幅木11を本体幅木10の中央部寄りにスライドした際、固定部110gが切欠部100bに侵入して支持体100aに干渉することなく移動させることができる。なお、固定部110gは、調整幅木11を本体幅木10の中央部寄りにスライドした際、切欠部100bに侵入後、切欠部100bの鉛直状に形成した内側面と接触することにより調整幅木11がそれ以上本体幅木10の中央寄りにスライド移動することを規制する。つまり、切欠部100bが調整幅木11のスライド規制部としても機能する。
【0039】
水平面部110hと鉛直面部110jは、いずれも略平板状に形成されており、水平面部110hと鉛直面部110jとで略“L”字状に形成している。このように構成した水平面部110hと鉛直面部110jは、調整側スライド支持体110aと摺動部110bとにより挿通空間isを形成している。この挿通空間isには、後述するスライドロッド20を挿通している。挿通空間isに挿通したスライドロッド20の下端部は、鉛直面部110jの上端部よりも下方であって水平面部110hから上方に離隔して配設される(図9(b)参照。)。また、鉛直面部110jの上端部には、後述する掴み金具21が支持される。このように構成した調整支持部110の下端部には、調整側スライド量調整部111を連結している。
【0040】
調整側スライド量調整部111は、調整支持部110の下端部から略90度屈曲して前方に伸延した上側突壁部111aと、上側突壁部111aの先端部から下方に屈曲伸延した鉛直面部111bと、鉛直面部111bの下端部から後方に屈曲伸延した下側突壁部111cとからなる。調整側スライド量調整部111は、上側突壁部111aと鉛直面部111b、および下側突壁部111cとにより側面視において後方側を開口した略“コ”字状に形成している。
【0041】
鉛直面部111bは、長手方向の一端部であって、調整幅木11を本体幅木10に係合した際の本体幅木10の中央寄りに調整側スライド規制体111dを設けている。すなわち、図3の左側に位置する調整幅木11の場合、鉛直面部111bの右端部近傍に調整側スライド規制体111dが設けられており、図3の右側に位置する調整幅木11の場合、鉛直面部111bの左端部近傍に調整側スライド規制体111dが設けられている。調整側スライド規制体111dは、一対のボルトとナットからなり、鉛直面部111bの前後面に突設している。本体幅木10に調整幅木11を吊設した状態において、このように形成した調整側スライド量調整部111の鉛直面部111bと本体側スライド量調整部101の鉛直面部101bとの間にスライド規制空間Rを形成している(図9(b)参照。)。
【0042】
スライド規制空間Rは、本体幅木10と調整幅木11との重畳部分であって、調整側スライド量調整部111と本体側スライド量調整部101との間に形成している。このスライド規制空間Rに調整幅木11の調整側スライド規制体111dと、本体幅木10のスライド規制部101dが設けられ、本体幅木10に沿って調整幅木11をスライドさせた際、各幅木の規制体が干渉することで調整幅木11が本体幅木10から脱落することを防止できる。すなわち、本体幅木10に沿って調整幅木11をスライド変位した際、スライド規制部101dと調整側スライド規制体111dとが接触した地点が調整幅木11の本体幅木10に対する最大スライド量となる。このように構成した調整側スライド量調整部111の下端部には揺動規制部112を連結している。
【0043】
揺動規制部112は、略方形平板状の支持体112aと、支持体112aの下端部から前方に伸延した揺動規制片部112bを有する。揺動規制片部112bは、支持体112aの下端部から前方に直角に屈曲伸延した支持片部112cと、支持片部112cの先端部を上方に直角に屈曲伸延した揺動規制部112dと、下方に直角に屈曲伸延してその下端部を前方に屈曲伸延した収納支持部112eとを有する。
【0044】
支持片部112cは、本体幅木10に調整幅木11を係合した状態における前後方向の全長を揺動規制部102bよりも長く形成している。すなわち、支持片部112cは、揺動規制部102bの前端面よりも前方位置に揺動規制部112dを立設している。これにより、調整幅木11は、本体幅木10に吊設した状態において、本体幅木10に対する前後方向への揺動が規制される。換言すると、本体幅木10に対する調整幅木11の前後方向に対する揺動が揺動規制部112dで規制される。
【0045】
このように幅木部1は構成されており、調整幅木11の摺動部110bを本体幅木10の摺動支持部100cで支持することにより、調整幅木11を本体幅木10で吊設した態様において、調整幅木11が揺動規制片部110eと揺動規制部112dにより、本体幅木10に対する前後方向への揺動が規制される。また、調整幅木11は、調整側スライド量調整部111の調整側スライド規制体111dと金具支持部110cの固定部110gとで本体幅木10に対する左右方向への最大スライド量と最小スライド量が規定され、隣接する支柱P,P間の距離に応じて最大スライド量と最小スライド量の間で幅木部1の左右幅員を連続的に調整できる。このように構成した幅木部1は、隣接する支柱P,P間に固定されるスライド固定部2により左右方向にスライド自在としている。
【0046】
スライド固定部2は、図3(b)または図9(a)に示すように、横方向に伸延したスライドロッド20と、スライドロッド20の両端部近傍であってスライドロッド20に沿って横方向にスライド自在とする掴み金具21とを有する。
【0047】
スライドロッド20は、全体が略一定の径で構成された円柱体であって、ロッド係合部100dの移動用筒部100fに挿通する本体幅木調整部200と、本体幅木調整部200の左右端部に連結して掴み金具21を摺動自在とする金具調整部201,201と、本体幅木調整部200と金具調整部201の連結部に設けた溝部に嵌着した移動規制片202とで構成している。また、スライドロッド20の両端部には、金具調整部201にスライド自在に支持された掴み金具21の脱落を防止するための落下防止具21aを着脱自在に設けている。
【0048】
このようにスライドロッド20は構成しており、本体幅木調整部200を本体幅木10のロッド係合部100dに挿通し、本体幅木調整部200と金具調整部201,201との連結部分に設けた溝部に略円板状に形成した移動規制片202,202をそれぞれ嵌着し、また、左右の金具調整部201,201に掴み金具21,21を挿通してスライドロッド20の両端部に落下防止具21aを固定する。これにより、本体幅木10が、溝部dに嵌着した左右の移動規制片202,202の間で自由に摺動できるとともに、掴み金具21が、移動規制片202と落下防止具21aとの間の金具調整部201を自由に摺動することができる。
【0049】
掴み金具21は、図3(b)および図9(a)に示すように、つかみ金本体210と、つかみ金本体210に設けたガイドピン210eおよびロックピン210fに沿って移動自在としたロック体211とよりなる。
【0050】
つかみ金本体210は、移動用筒部210aと、移動用筒部210aに連結した支柱係止部210bとを有する。
【0051】
移動用筒部210aは、内部中空状の円筒体であって、金具調整部201が挿通されている。これにより、金具調整部201に沿って掴み金具21を摺動しつつ、スライドロッド20の軸方向を中心として掴み金具21を上下方向に回動できる。移動用筒部210aには、支柱係止部210bを連結している。
【0052】
支柱係止部210bは、先端部に設けた掴み部210cと、略中央部に立設したガイドピン210eおよびロックピン210fとを有する。
【0053】
掴み部210cは、正面視において略方形状であって、略半円弧状に切欠した係止部210dを有する。係止部210dは、図9(a)に示すように、支柱Pを開口部210d1から挿入し、係止部210dの円弧内周面と後述するロック体211とで支柱Pを挟持する部分である。具体的には、図7に示すように、支柱Pを開口部210d1から係止部210dに挿入し、開口部210d1をロック体211で閉塞することにより、支柱Pが係止部210dとロック体211で挟持され、掴み金具21が支柱Pに固定される。
【0054】
ガイドピン210eとロックピン210fは、つかみ金本体210の略中央部に立設しており、各ピンに係合するようにねじりコイルバネ210gを配設している。
【0055】
ねじりコイルバネ210gは、コイル部210g1とコイル部210g1の両端部からそれぞれ伸延した引掛け部210g2,210g2よりなる。ねじりコイルバネ210gは、コイル部210g1をガイドピン210eに挿通して、ロックピン210fのピン周面に引掛け部210g2の一端部を係合し、ロック体211の切欠部211aに引掛け部210g2の他端部を係合している。このようにねじりコイルバネ210gは、引掛け部210g2の一端部をロックピン210fのピン周面に係合固定したことにより、コイル部210g1の円周方向に対する回動が規制されて他端部の引掛け部210g2に係合したロック体211を係止部210dに設けた開口部210d1を閉塞する方向に付勢できる。すなわち、ロック体211は、開口部210d1を閉塞する方向にねじりコイルバネ210gにより常時付勢されている。
【0056】
ロック体211は、図2および図3に示すように、正面視略扇形状であって、外側面の一部を切欠いた切欠部211aと、上下に貫通形成したロックガイド溝211bとを有する。切欠部211aには、ねじりコイルバネ210gの引掛け部210g2を係合している。これにより、ロック体211は、つかみ金本体210に形成した開口部210d1を閉塞する方向に常時付勢されている。
【0057】
ロックガイド溝211bは、つかみ金本体210の開口部210d1を開閉する方向にガイドピン210eおよびロックピン210fに沿ってロック体211を摺動させるための摺動ガイド部である。ロックガイド溝211bの前端部には、ロック部211b1を有する。ロック部211b1は、開口部210d1を開放した状態とするためにロック体211の回動を規制する溝部である。具体的には、ロック体211は、つかみ金本体210に立設したロックピン210fをロック部211b1に係合することにより、ロック体211の回動が規制されて開口部210d1を開放状態にできる。
【0058】
このように構成したロック体211は、前述のガイドピン210eとロックピン210fとで係止部210dの円弧中心部を中心として開口部210d1を閉塞する方向に回動できる。また、ロック体211は、ロックガイド溝211bにロック部211b1を形成したことで、ロックピン210fをロック部211b1に係止するだけで容易に開口部210d1を開放した状態にできる。
【0059】
上述したように幅木Bは構成されており、幅木部1とスライド固定部2により、係止する支柱P,P間の距離に合わせて幅木部1の左右方向の全長およびスライド固定部2の取付位置を調整することができる。また、幅木部1の本体幅木10をスライドロッド20に吊設した構成により、スライドロッド20の本体幅木調整部200に本体幅木10をスライド移動可能としつつ、本体幅木10に対して調整幅木11を相対的に横方向にスライド移動可能とした構成により、踏板Tの桁側に設けた幅木の厚みに関係なく設置できる。
【0060】
例えば、図6に示すように、桁側に設けた幅木の厚みが大きい場合(図6の斜線部分)、左側の調整幅木11を本体幅木10の中央部側に変位させることで従来の幅木では回避することのできなかった桁側幅木との干渉を避けて幅木Bを支柱Pに取り付けることができる。
【0061】
また、本実施形態に記載の幅木Bは、図8図10に示すように、掴み金具21および振れ止め体104を金具調整部201および摺動ガイド棒103cの軸心方向を中心として回動可能とした構成によりコンパクトに収納できる。この幅木Bの収納形態を具体的に説明すると、図8および図9に示すように、幅木Bを収納する際には、本体幅木10の左右方向の中心位置とスライドロッド20の本体幅木調整部200の左右方向の中心位置を合わせ、調整幅木11の調整側スライド規制体111dと本体幅木10のスライド規制部101dとを係合して幅木Bの左右全長を最大長として金具支持部110cの本体幅木10寄りの側端部とスライドロッド20の移動規制片202との間に隙間を形成する。この隙間に移動用筒部210aをスライドロッド20の軸心を中心として下方に回動させる。これにより、掴み金具21が調整幅木11の揺動規制片部110eと支持片部112cを結ぶ直線よりも後方に位置させることができる。すなわち、図10に示すように、幅木Bの積層収納時において、揺動規制片部110eと支持片部112cの前端部で他方の幅木Bを支持することができる。
【0062】
また、幅木Bは、摺動ガイド棒103cの上端部まで振れ止め体104を変位し、摺動ガイド棒103cの軸心を中心に振れ止め体104を左右方向に回動して振れ止め片部104bを振れ止め部102に直交する形態から平行な形態に変態することで本体側スライド量調整部101の下側傾斜面部101cと振れ止め部102の揺動規制部102bとの間に収納できる。このように、振れ止め体104を下側傾斜面部101cと揺動規制部102bとの間に収納できるように構成することで、幅木Bの前後方向の厚みを小さくしつつ積層した状態で収納できる。
【0063】
このように、本実施形態に記載の幅木Bは、掴み金具21と振れ止め体104とが調整幅木11の揺動規制片部110eおよび揺動規制部102bの前端部よりも後方側に位置させることで、図10に示すように幅木Bを積層した状態で保管することができる。この際、一方の幅木Bの調整幅木11の後側面を他方の幅木Bの揺動規制片部110eと揺動規制部112dで支持することで安定して積層保管できる。
【0064】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0065】
1 幅木部
10 本体幅木
100 本体支持部
100a支持体
100b切欠部
100c摺動支持部
100dロッド係合部
100e固定部
100f移動用筒部
101 本体側スライド量調整部
101a上側傾斜面部
101b鉛直面部
101c下側傾斜面部
101dスライド規制部
101e取付用孔部
102 振れ止め部
102a支持板部
102b揺動規制部
103 振れ止め体摺動部
103a固定部
103b棒体支持片部
103c摺動ガイド棒
104 振れ止め体
104a上下移動用筒部
104b振れ止め片部
104c水平部
104d鉛直部
11 調整幅木
110 調整支持部
110a調整側スライド支持体
110b摺動部
110c掴み金具支持部
110d支持部
110d1,110d2 摺動膨出部
110e揺動規制片部
110f収納支持部
110g固定部
110h水平面部
110j鉛直面部
111 調整側スライ量調整部
111a上側突壁部
111b鉛直面部
111c下側突壁部
111d調整側スライド規制体
112 揺動規制部
112a支持体
112b揺動規制片部
112c支持片部
112d揺動規制部
112e収納支持部
2 スライド固定部
20 スライドロッド
200 本体幅木調整部
201 金具調整部
202 移動規制片
21 掴み金具
21a 落下防止具
210 つかみ金本体
210a移動用筒部
210b支柱係止部
210c掴み部
210d係止部
210d1開口部
210eガイドピン
210fロックピン
210gねじりコイルバネ
210g1コイル部
210g2引掛け部
211 ロック体
211bロックガイド溝
211b1ロック部
B 幅木
H 横架材
P 支柱
R スライド規制空間
S 足場
T 踏板
is 挿通空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10