(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132708
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】クリプトコックス症治療薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240920BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P31/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043595
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100203253
【弁理士】
【氏名又は名称】村岡 皓一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100179039
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】田中 義正
(72)【発明者】
【氏名】迎 寛
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 泰可
(72)【発明者】
【氏名】中田 奈々
(72)【発明者】
【氏名】水田 賢志
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
(57)【要約】
【課題】クリプトコックス属に対する抗真菌活性が高く、且つ重篤な副作用や併用禁忌等を回避し得るような化合物を含有してなるクリプトコックス症の治療又は予防薬の提供。
【解決手段】下記式(I):
〔式(I)中、各記号は添付の明細書に記載の通りである〕
で示される化合物又はその塩を含む、クリプトコックス症の治療又は予防薬。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
〔式(I)中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基及び/又はヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1~6の脂肪族基、3~8員の脂環式炭化水素基及び5~8員の単環式の芳香族基からなる群から選択される基、あるいはR
1及びR
2は、共に、置換基及び/又はヘテロ原子を有していてもよい、5~8員の脂環式炭化水素基又は単環式の芳香族基を形成し、並びに
R
3は、ヘテロ原子を有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基を示す〕
で示される化合物又はその塩を含む、クリプトコックス症の治療又は予防薬。
【請求項2】
R3が、ヘテロ原子を1つ有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基である、請求項1に記載の治療又は予防薬。
【請求項3】
R3が、ヘテロ原子を有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基であって、前記ヘテロ原子の少なくとも1つが窒素原子である、請求項1又は2に記載の治療又は予防薬。
【請求項4】
R1が、ハロゲン原子又は炭素数1~3の脂肪族基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の治療又は予防薬。
【請求項5】
R1が、ハロゲン原子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療又は予防薬。
【請求項6】
R2が、炭素数1~3の脂肪族基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療又は予防薬。
【請求項7】
R2が、メチル基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療又は予防薬。
【請求項8】
R1及びR2が、共に、5~8員の脂環式炭化水素基又は単環式の芳香族基を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の治療又は予防薬。
【請求項9】
式(I)が、以下:
【化2】
からなる群から選択される、請求項1に記載の治療又は予防薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリプトコックス症の治療又は予防薬に関する。より詳細には、本発明は、テトラゾール縮環化合物、さらに具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物又はその塩を含有してなる、クリプトコックス症の治療又は予防薬に関する。
【背景技術】
【0002】
クリプトコックス症は、ハトの糞中に存在するクリプトコックス(Cryptococcus)属(真菌)によって引き起こされる感染症である。典型的には、免疫不全状態(AIDS、ステロイド投与、臓器移植、白血病等)の患者に、皮膚、肺から感染して病巣を形成し、肺又は中枢神経系が侵され易い。その後、皮膚・内臓臓器・骨等に播種性感染症を起こすことがある。クリプトコックス脳髄膜炎は、永続的な神経障害をきたし、致死率は10%以上と高率である。
【0003】
肺クリプトコックス症に対する第一選択薬はフルコナゾールであり、クリプトコックス脳髄膜炎にはアムホテリシンB製剤(点滴)が使用されている。クリプトコックス脳髄膜炎患者の大部分がAIDS患者であり、生涯にわたる維持療法を必要とする例も少なくない。これら薬剤の問題点として、ポリエン系抗真菌薬アムホテリシンB製剤(点滴)は、重篤な副作用として腎毒性が問題視されている。一方、ラノステロールC14α脱メチル化酵素の阻害薬であるフルコナゾールは、代謝酵素CYP3A4を阻害するので、併用禁忌、併用注意の薬剤が多い。このことから、クリプトコックス症は致死に至る感染症であるが、従来技術の治療だけでは選択肢が少なく、新たな治療薬が望まれている(非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kuroki, M., et al. (2004) Environmental isolation of Cryptococcus neoformans from an endemic region of HIV-associated cryptococcosis in Thailand. Yeast 21, 809-812.
【非特許文献2】Mihara, T., et al. (2013) Multilocus sequence typingof Cryptococcus neoformans in non-HIV associated Cryptococcusis in Nagasaki, Japan. Med. Mycol. 51, 252-260.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、クリプトコックス属に対する抗真菌活性が高く、且つ重篤な副作用や併用禁忌等を回避し得るような化合物を含有してなるクリプトコックス症の治療又は予防薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、既存の化合物ライブラリー(約2万種類)から、クリプトコックス属の真菌に対して所定の濃度以下の処理濃度で、抗真菌活性を示す化合物のスクリーニングを実施した。その結果、驚くべきことに、該ライブラリーからクリプトコックス属の真菌に対して高い抗真菌活性を示すテトラゾール縮環化合物(より具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物)を見出した。本発明者らは、見出した化合物を基に、更に構造最適化を行い、より抗真菌活性が高く、低毒性の誘導体を取得することに成功した。そして、本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]
下記式(I):
【0008】
【0009】
〔式(I)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基及び/又はヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1~6の脂肪族基、3~8員の脂環式炭化水素基及び5~8員の単環式の芳香族基からなる群から選択される基、あるいはR1及びR2は、共に、置換基及び/又はヘテロ原子を有していてもよい、5~8員の脂環式炭化水素基又は単環式の芳香族基を形成し、並びに
R3は、ヘテロ原子を有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基を示す〕
で示される化合物又はその塩を含む、クリプトコックス症の治療又は予防薬。
[2]
R3が、ヘテロ原子を1つ有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基である、[1]に記載の治療又は予防薬。
[3]
R3が、ヘテロ原子を有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基であって、前記ヘテロ原子の少なくとも1つが窒素原子である、[1]又は[2]に記載の治療又は予防薬。
[4]
R1が、ハロゲン原子又は炭素数1~3の脂肪族基である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の治療又は予防薬。
[5]
R1が、ハロゲン原子である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の治療又は予防薬。
[6]
R2が、炭素数1~3の脂肪族基である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の治療又は予防薬。
[7]
R2が、メチル基である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の治療又は予防薬。
[8]
R1及びR2が、共に、5~8員の脂環式炭化水素基又は単環式の芳香族基を形成する、[1]~[3]のいずれか一つに記載の治療又は予防薬。
[9]
式(I)が、以下:
【0010】
【0011】
からなる群から選択される、請求項1に記載の治療又は予防薬。
[10]
哺乳動物に対して、[1]~[9]のいずれか一つに記載の化合物若しくはその塩の有効量を投与することを含む、クリプトコックス症の治療又は予防方法。
[11]
クリプトコックス症の治療又は予防における使用のための、[1]~[9]のいずれか一つに記載の化合物若しくはその塩。
[12]
クリプトコックス症の治療又は予防薬の製造のための、[1]~[9]のいずれか一つに記載の化合物若しくはその塩の使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クリプトコックス症の治療又は予防が可能となる。特に、本発明の有効成分であるテトラゾール縮環化合物(より具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物)は、従来の薬剤と比して、複数のクリプトコックス属の真菌(例:クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クリプトコックス・ガッティ(Cryptococcus gattii)等)に対して同等あるいはより高い抗真菌活性発揮し、且つ低毒性であるため、クリプトコックス症の治療又は予防の新しい選択肢となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、クリプトコックス・ネオフォルマンスに対する化合物7及び8の抗真菌活性を示す。
【
図2】
図2は、クリプトコックス・ネオフォルマンスに対する化合物1、7、及び14並びにアンホテリシンB(AMB)の時間-殺真菌曲線(time-kill curve)を示す。各化合物の段階希釈を用いて、各化合物のクリプトコックス・ネオフォルマンスに対する抗真菌活性を調べた。定量限界は50 CFU ml
-1であり、殺真菌のカットオフを、開始接種菌液(starting inoculum)から、CFU ml
-1の99.9%を超える減少に設定した。データは、2つの独立した実験の代表である。アッセイは3回行った。
【
図3】
図3は、化合物1、7、8、12、13、及び14並びにAMBが、ヒト肺癌細胞株であるA549に対して示した細胞毒性の結果を示す。ATPベースの発光アッセイは3回行った。データは、2つの独立した実験の代表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
後述の実施例で示される通り、テトラゾール縮環化合物(より具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物)が、クリプトコックス症の原因真菌であるクリプトコックス属の真菌に対して高い抗真菌活性を発揮することが本発明者らにより見出された。また、該見出された化合物は、従来の薬剤(例:アムホテリシンB製剤)と比して、生体に対してより低毒性であるため、クリプトコックス症の治療又は予防用途に用いることができる。従って、本発明は、テトラゾール縮環化合物(より具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物)(以下、「本発明の化合物」と称することがある)を含有してなる、クリプトコックス症の治療又は予防薬(以下、「本発明の医薬」と称することがある)を提供する。また、特に断らない限り、クリプトコックス症の治療又は予防薬(又は方法)には、該疾患を治療でき、且つ予防できる医薬(又は方法)も包含される。
【0015】
本明細書において、「治療薬」には、クリプトコックス症の根治治療を目的とする医薬だけでなく、例えば、クリプトコックス症の進行抑制を目的とする医薬、症状の軽減(例えば、生活、仕事の支障がない症状軽微(minimal manifestations;MM)への改善)を目的する、又は後遺症を軽減する医薬も含まれるものとする。また、本発明において、「治療薬」には、後述するクリプトコックス症の原因となるクリプトコックス属の真菌(例:クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クリプトコックス・ガッティ(Cryptococcus gattii)等)の増殖を抑制する医薬や、該真菌を殺傷する医薬も含まれる。例えば、クリプトコックス症は、対象が免疫不全状態にある場合には、急性呼吸困難や進行性肺炎、あるいは脳髄膜炎から永続的な神経障害等を生じる可能性があることから、早期に治療を開始することで、症状の進行を予防することができる。また、本明細書において、「予防薬」には、クリプトコックス症を発症していない対象に対して、クリプトコックス症を発症するリスクを低減させることを目的とする医薬だけでなく、クリプトコックス症を発症した対象に対して、クリプトコックス症が再発する(あるいは原因菌であるクリプトコックス属の真菌が再活性化する)リスクを低減させることを目的とする医薬も包含されるものとする。例えば、クリプトコックス症に罹患しやすい免疫不全状態の対象(あるいは患者)に対して、クリプトコックス症の症状を呈する前に本発明の医薬を投与することにより、クリプトコックス症の発症を予防することもできる。「治療方法」及び「予防方法」についても同様である。
【0016】
本発明の医薬は、テトラゾール縮環化合物(より具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物)が、クリプトコックス症の原因真菌であるクリプトコックス属の真菌に対して高い抗真菌活性を発揮する。従って、本発明の医薬は、クリプトコックス属の真菌(例:クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クリプトコックス・ガッティ(Cryptococcus gattii)等)の増殖抑制剤(あるいは薬)、該真菌に対する抗真菌剤(あるいは薬)ともいえる。
【0017】
本発明の医薬は、有効成分である本発明の化合物をそのまま単独で、又は薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤等と混合し、適当な剤型の医薬組成物として経口的又は非経口的に投与することができる。また、本発明の医薬は、哺乳動物(例:ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、サル)に対して投与することが可能である。よって、哺乳動物に対し、本発明の化合物の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物におけるクリプトコックス症の治療又は予防方法も提供される。
【0018】
本明細書において、「クリプトコックス症」は、クリプトコックス属の真菌による感染症であり、クリプトコックス属の真菌は主に肺や皮膚から感染して病巣を形成する。肺クリプトコックス症が多いが、播種性感染症を起こすことがある。特に、中枢神経系に播種して、脳髄膜炎を起こすことが多い。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、臓器移植、腎疾患、膠原病、悪性腫瘍(例:悪性リンパ腫、白血病等)、サルコイドーシス、糖尿病、ステロイド投与などがクリプトコックス症のリスク因子であり、例えば、HIV感染等による免疫不全状態は、クリプトコックス脳髄膜炎のハイリスクとなる。クリプトコックス属の真菌としては、例えば、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クリプトコックス・ガッティ(Cryptococcus gattii)等が挙げられる。
【0019】
本発明の増殖抑制剤や、クリプトコックス症の原因真菌に対する抗真菌剤(以下、「本発明の剤」と称することがある)は、一般的な医薬組成物又は医薬製剤として、あるいは化粧品や食品として調製され、経口又は非経口的に投与される。また、本発明の剤は、試剤として用いることもできる。本発明の剤は、例えば、ヒトを含む対象(例:哺乳動物、哺乳類動物の細胞、組織、器官など)に投与することができる。従って、本発明の化合物を対象に投与することを含む、該対象におけるクリプトコックス症の原因真菌の増殖抑制方法も提供される。
【0020】
本発明で用いるテトラゾール縮環化合物(より具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物)としては、下記式(I)で示される化合物又はその塩を例示することができる。
【0021】
【0022】
〔式(I)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基及び/又はヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1~6の脂肪族基、3~8員の脂環式炭化水素基及び5~8員の単環式の芳香族基からなる群から選択される基、あるいはR1及びR2は、共に、置換基及び/又はヘテロ原子を有していてもよい、5~8員の脂環式炭化水素基又は単環式の芳香族基を形成し、並びに
R3は、ヘテロ原子を有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基を示す。〕
【0023】
一態様では、上記式(I)で表される化合物又はその塩において、R3は、ヘテロ原子を1つ有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基が好ましい。中でも、ヘテロ原子を有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基であって、前記ヘテロ原子の少なくとも1つが窒素原子である基が好ましい。また、R1は、ハロゲン原子又は炭素数1~3の脂肪族基が好ましい。中でも、ハロゲン原子であることが好ましい。その上、R2は、炭素数1~3の脂肪族基が好ましい。中でも、メチル基が好ましい。従って、好適な態様において、R1が、ハロゲン原子であり、R2が、メチル基であり、R3が、ヘテロ原子を有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基であって、前記ヘテロ原子の少なくとも1つが窒素原子である基であることが好ましい。さらに好適な態様では、R3の該5~8員の単環式の芳香族基は、置換基を有しない。
【0024】
別の一態様では、上記式(I)で表される化合物又はその塩において、R3は、ヘテロ原子を1つ有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基が好ましい。中でも、ヘテロ原子を有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基であって、前記ヘテロ原子の少なくとも1つが窒素原子である基が好ましい。また、R1及びR2は、共に、5~8員の脂環式炭化水素基又は単環式の芳香族基を形成することが好ましい。従って、好適な態様において、R1及びR2は、共に、5~8員の脂環式炭化水素基又は単環式の芳香族基を形成し、R3が、ヘテロ原子を有し、置換基を有していてもよい、5~8員の単環式の芳香族基であって、前記ヘテロ原子の少なくとも1つが窒素原子である基であることが好ましい。さらに好適な態様では、R3の該5~8員の単環式の芳香族基は、置換基を有しない。
【0025】
上記式(I)で表される化合物又はその塩の具体的な例としては、下記の化合物1、7、8、9、12,13及び14、並びにこれらの化合物の塩が挙げられる。
【0026】
【0027】
本明細書において、「脂肪族基」とは、完全に飽和している、又は1つ以上の不飽和結合を含む、直鎖又は分枝した炭化水素鎖を意味する。脂肪族基として、例えば、直鎖又は分岐したアルキル基(例:メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、ペンチル基、3-ペンチル基、3-メチルブチル基、ヘキシル基、3-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基等)、アルケニル基(例:ビニル基、アリル基、2-プロピニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1,4-ペンタジエニル基、2,4-ペンタジエニル基、1-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基等)、アルキニル基(例:エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、ペンタジイニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、1-メチル-2-ブチニル基、1,1-ジメチル-2-ブチニル基、4-メチル-2-ペンチニル基等)などが挙げられる。
【0028】
本明細書において、「脂環式炭化水素基」とは、完全に飽和している、又は1つ以上の不飽和結合を含む、単環式若しくは二環式の炭化水素基であって、芳香族炭化水素基に属さない基、あるいは該炭化水素基を有する脂肪族基を意味する。脂環式炭化水素基として、例えば、シクロアルキル基(例:シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)、シクロアルケニル基(例:シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基等)、(シクロアルキル)アルキル基、(シクロアルケニル)アルキル基、(シクロアルキル)アルケニル基などが挙げられる。
【0029】
単環式の芳香族基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等の炭素数8個以下のアリール基が挙げられる。ヘテロアリール基としては、例えば窒素原子を1~2個含む5~6員単環式の基、窒素原子を1~2個と酸素原子を1個若しくは硫黄原子を1個含む5~6員単環式の基、酸素原子を1個若しくは硫黄原子を1個含む5員単環式の基等が挙げられ、具体的には、例えば、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-チエニル基、3-チエニル基、3-オキサジアゾリル基、1-イミダゾリル基、2-イミダゾリル基、2-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、2-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、2-フリル基、3-フリル基、3-ピロリル基などが挙げられる。
【0030】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0031】
本明細書において、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメチル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルカノイルオキシ基、アミノ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、低級アルキルアミノカルボニル基、ジ低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルコキシカルボニルアミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アルカノイルアミノ基、低級アルキルスルホンアミド基、フタルイミド基、ヘテロアリール基、置換基を有するアリール(置換アリール)、置換基を有するヘテロアリール(置換ヘテロアリール)、飽和ヘテロ環基又は式:-NR4R5(R4及びR5は、独立して、水素原子、低級アルコキシ基、低級アルキル基、置換低級アルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基を表すか、又はR4及びR5が互いに結合してそれらが結合する窒素原子とともに、環を構成する炭素数が4から8個の飽和環状アミノ基を表す。)で示される基が挙げられる。ヘテロアリール基としては、前記と同様のヘテロアリール基が挙げられる。飽和ヘテロ環基としては、例えば1-ピペリジニル、1-ピロリジニル等の窒素原子1個を有する5~8員環の基、窒素原子2個を有する6~8員環の基、窒素原子1個及び酸素原子1個を有する6~8員環の基が挙げられる。また置換アルキル基としては、シクロアルキル基若しくは置換シクロアルキルに置換された炭素数1~6個のアルキル基、又はアラルキル基若しくは置換アラルキル基が挙げられる。アラルキル基及び置換アラルキル基としては前記アリール基、置換アリール基に置換された炭素数1~6個のアルキル基が挙げられ、例えばベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、2-ナフチルメチル基が挙げられる。また、本明細書において、「低級」とは、炭素数5以下(好ましくは3以下)を意味する。
【0032】
本発明のテトラゾール縮環化合物、さらに具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物には、フリー体だけでなく、その薬理学的に許容される塩も包含されるものとする。薬理学的に許容される塩は化合物の種類によって異なるが、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アルミニウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩、並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン等の有機塩基塩などの塩基付加塩、あるいは塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩などの酸付加塩が挙げられる。
【0033】
テトラゾール縮環化合物、さらに具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体等の異性体を有する場合には、いずれか一方の異性体も混合物も本発明の化合物に包含される。例えば、テトラゾール縮環化合物、さらに具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物に光学異性体が存在する場合には、ラセミ体から分割された光学異性体も本発明における化合物に包含される。これらの異性体は、自体公知の合成手法、分離手法(例、濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等)、光学分割手法(例、分別再結晶法、キラルカラム法、ジアステレオマー法等)等によりそれぞれを単品として得ることができる。
【0034】
テトラゾール縮環化合物、さらに具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物は、結晶であってもよく、結晶形が単一であっても結晶形混合物であっても本発明の化合物に包含される。結晶は、自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。
【0035】
テトラゾール縮環化合物、さらに具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物は、溶媒和物(例、水和物等)であっても、無溶媒和物(例、非水和物等)であってもよく、いずれも本発明の化合物に包含される。
【0036】
また、同位元素(例、3H、14C、35S、125I等)等で標識された化合物も、本発明の化合物に包含される。
【0037】
経口投与のための組成物としては、固体又は液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。一方、非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤;及び、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤である)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;及び、上記澱粉誘導体である)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、及び、前記賦形剤と同様の化合物である)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類である)、乳化剤(例えば、ベントナイト、ビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;及び、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤である)、安定剤(メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及び、ソルビン酸である)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等である)、希釈剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0038】
本発明の医薬又は増殖抑制剤若しくは抗真菌剤の有効成分である本発明の化合物の投与量は、化合物の種類、投与対象の症状、齢、体重、薬物受容性等の種々の条件により変化し得るが、1回当たり下限0.02mg(好適には、0.1mg)、上限5000mg(好適には、200mg)を、成人に対して1日当たり1乃至6回投与することができる。症状に応じて増量又は減量してもよい。
【0039】
本発明の医薬又は増殖抑制剤若しくは抗真菌剤は、クリプトコックス症に対する治療薬又は予防薬(現在治験中のものも含む)や、他の抗菌あるいは抗真菌薬(剤)(現在治験中のものも含む)と組み合わせて用いることもできる。具体的には、例えば、アンホテリシン、フルコナゾール、フルシトシン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ストレプトマイシン、ネチルマイシン、カナマイシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、ロメフロキサシン、レボフロキサシン、エノキサシン、ナフチリジン、スルホンアミド、ポリミキシン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、パラモマイシン、コリスチメタート、バシトラシン、バンコマイシン、テトラサイクリン、リファンピシン及びその誘導体、サイクロセリン、セファロスポリン、アジスロマイシン、ファロペネム、オゼノキサシン、ナタマイシン、ミコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾールが挙げられる。
【0040】
また、上述したように対象が、クリプトコックス症のリスク因子(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、臓器移植、腎疾患、膠原病、悪性腫瘍(例:悪性リンパ腫、白血病等)、サルコイドーシス、糖尿病、ステロイド投与等)に罹患あるいは有する場合、それらの治療薬や予防薬を組み合わせて用いることもできる。
【0041】
併用薬剤として用いる場合には、かかる併用薬剤は、本発明の化合物とともに製剤化して単一の製剤として投与することもできるし、あるいは、本発明の化合物とは別個に製剤化して、本発明の医薬又は増殖抑制剤若しくは抗真菌剤と同一若しくは別ルートで、同時若しくは時間差をおいて投与することもできる。また、これらの併用薬剤の投与量は、該薬剤を単独投与する場合に通常用いられる量であってよく、あるいは通常用いられる量より減量することもできる。
【0042】
本発明の化合物の製造法について以下に説明する。
【0043】
以下の製造方法における各工程(A~C)で用いられた原料や試薬、並びに得られた化合物は、それぞれ塩を形成していてもよい。このような塩としては、例えば、前述の式(I)で表される化合物の塩と同様のものが挙げられる。
【0044】
各工程で得られた化合物がフリー体である場合には、自体公知の方法により、目的とする塩に変換することができる。逆に各工程で得られた化合物が塩である場合には、自体公知の方法により、フリー体又は目的とする他の種類の塩に変換することができる。
【0045】
各工程で得られた化合物は反応液のままか、又は粗生成物として得た後に、次反応に用いることもできる、あるいは、各工程で得られた化合物を、常法に従って、反応混合物から濃縮、晶出、再結晶、蒸留、溶媒抽出、分溜、クロマトグラフィーなどの分離手段により単離及び/又は精製することができる。
【0046】
各工程の原料や試薬の化合物が市販されている場合には、市販品をそのまま用いることができる。
【0047】
各工程の反応において、反応時間は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載の無い場合、通常1分~48時間、好ましくは10分~8時間である。
【0048】
各工程の反応において、反応温度は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載が無い場合、通常-78℃~300℃、好ましくは-78℃~150℃である。
【0049】
各工程の反応において、圧力は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載が無い場合、通常1気圧~20気圧、好ましくは1気圧~3気圧である。
【0050】
各工程の反応において、試薬は、特に記載が無い場合、基質に対して0.5当量~20当量、好ましくは0.8当量~5当量が用いられる。試薬を触媒として使用する場合、試薬は基質に対して0.001当量~1当量、好ましくは0.01当量~0.2当量が用いられる。試薬が反応溶媒を兼ねる場合、試薬は溶媒量が用いられる。
【0051】
<製造(合成)工程A>
化合物(iii)は、化合物(i)及び(ii)から以下の製造工程Aに従い製造することができる。
【0052】
【0053】
〔上記式中、R1~R3の定義は、上記式(I)での定義と同じである。〕
【0054】
化合物(i)は、市販のもの(例えば、ピリジン-2-カルボキシミドアミド塩酸塩(pyridine-2-carboximidamide hydrochloride)、5-クロロピリジン-2-カルボキシミドアミド塩酸塩(5-chloropyridine-2-carboximidamide hydrochloride)、ベンズイミダミド塩酸塩(benzimidamide hydrochloride)など)を用いてもよく、自体公知の方法(国際公開第2010/069147号(Goldmann, S., et al., Preparation of dihydropyrimidine derivatives for the treatment of hepatitis B viral infection))により合成してもよい。
【0055】
化合物(ii)は、市販のもの(例えば、2-クロロアセト酢酸エチル(ethyl 2-chloroacetoacetate)、2-フルオアセト酢酸エチル(ethyl 2-fluoroacetoacetate)、2-オキソシクロペンタンカルボン酸エチル(ethyl 2-oxocyclopentanecarboxylate)、2-メチルアセト酢酸エチル(ethyl 2-methylacetoacetate)、アセト酢酸エチル(ethyl acetoacetate)、ベンゾイル酢酸エチル(ethyl benzoylacetate)など)を用いてもよく、自体公知の方法(国際公開第2006/124692号(Green.J. N., et al., Preparation of 3-cyanoquinolines as Tpl-2 kinase inhibitors for treating inflammatory disease))により合成してもよい。
【0056】
化合物(iii)の合成は、自体公知の方法(国際公開第2008112651号)で行ってもよく、具体的には、例えば、化合物(i)と(ii)、トリエチルアミン(Et3N)及びアセトニトリルを室温で混合し、60℃でおよそ4時間攪拌する。その後、室温まで冷却し、沈殿をろ過し、アセトニトリルで洗浄する。該ろ過物を、エバポレートし、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(例:ヘキサン-酢酸エチル(AcOEt)混合物=2:1~1:1)に供して精製して、化合物(iii)を得る。
【0057】
<製造(合成)工程B>
化合物(iv)は、化合物(iii)から以下の製造工程Bに従い製造することができる。
【0058】
【0059】
〔上記式中、R1~R3の定義は、上記式(I)での定義と同じである。〕
【0060】
化合物(iii)は、上記製造工程Aで製造した化合物でもよく、例えば、5-クロロ-6-メチル-2-(ピリジン-2-イル)ピリミジン-4-オール(5-Chloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol)、5-フルオロ-6-メチル-2-(ピリジン-2-イル)ピリミジン-4-オール(5-Fluoro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol)、2-(ピリジン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[d]ピリミジン-4-オール(2-(Pyridin-2-yl)-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidin-4-ol)、5-クロロ-2-(5-クロロピリジン-2-イル)-6-メチルピリミジン-4-オール(5-Chloro-2-(5-chloropyridin-2-yl)-6-methylpyrimidin-4-ol)、5-クロロ-6-メチル-2-フェニルピリミジン-4-オール(5-Chloro-6-methyl-2-phenylpyrimidin-4-ol)、5-フルオロ-6-メチル-2-フェニルピリミジン-4-オール(5-Fluoro-6-methyl-2-phenylpyrimidin-4-ol)、2-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-cyclopentaシクロペンタ[d]ピリミジン-4-オール(2-Phenyl-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidin-4-ol)、6-メチル-2-(ピリジン-2-イル)ピリミジン-4-オール(6-Methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol)などが挙げれらる。また、化合物(iii)に相当する市販の化合物を用いてもよい。
【0061】
化合物(iv)の合成は、自体公知の方法(国際公開第2005082884号)により行ってもよく、具体的には、例えば、上述のような化合物(iii)を、ジクロロメタン(CH2Cl2)中の塩化ホスホリル(POCl3)と混合し、80℃でおよそ1時間加熱する。混合物を真空下で濃縮、冷却し、炭酸カリウム水溶液でpH7.0にした。該溶液を酢酸エチル(AcOEt)で抽出し有機層と併せて、無水MgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮する。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(例:ヘキサン-酢酸エチル(AcOEt)混合物(1:1)で精製し、ヘキサン-酢酸エチル(AcOEt)混合物(1:1)、次いでAcOEt-MeOH-NH3水溶液混合物(10:1:0.1)で溶出し、最終生成物として化合物(iv)を得る。
【0062】
<製造(合成)工程C>
化合物(I)(本発明の式(I)の化合物)は、化合物(iv)から以下の製造工程Cに従い製造することができる。
【0063】
【0064】
〔上記式中、R1~R3の定義は、上記式(I)での定義と同じである。〕
【0065】
化合物(iv)は、上記製造工程Bで製造した化合物でもよく、例えば、4,5-ジクロロ-6-メチル-2-(ピリジン-2-イル)ピリミジン(4,5-Dichloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine)、4-クロロ-5-フルオロ-6-メチル-2-(ピリジン-2-イル)ピリミジン(4-Chloro-5-fluoro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine)、4-クロロ-2-(ピリジン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[d]ピリミジン(4-Chloro-2-(pyridin-2-yl)-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidine)、4,5-ジクロロ-2-(5-クロロピリジン-2-イル)-6-メチルピリミジン(4,5-Dichloro-2-(5-chloropyridin-2-yl)-6-methylpyrimidine)、4,5-ジクロロ-6-メチル-2-フェニルピリミジン(4,5-Dichloro-6-methyl-2-phenylpyrimidine)、4-クロロ-5-フルオロ-6-メチル-2-フェニルピリミジン(4-Chloro-5-fluoro-6-methyl-2-phenylpyrimidine)、4-クロロ-2-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[d]ピリミジン(4-Chloro-2-phenyl-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidine)、4-クロロ-5,6-ジメチル-2-(ピリジン-2-イル)ピリミジン(4-Chloro-5,6-dimethyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine)、4-クロロ-6-メチル-2-(ピリジン-2-イル)ピリミジン(4-Chloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine)、4-クロロ-6-フェニル-2-(ピリジン-2-イル)ピリミジン(4-Chloro-6-phenyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine)などが挙げれらる。また、化合物(iv)に相当する市販の化合物(例:4-クロロ-6-フェニル-2-(ピリジン-2-イル)ピリミジン(4-chloro-6-phenyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine))を用いてもよい。
【0066】
化合物(I)の合成は、自体公知の方法(A. Tokarenko et al., J. Med. Chem. 2018, 61, 9347-9359)により行ってもよく、具体的には、例えば、上述のような化合物(iv)と、アジ化ナトリウム(NaN3)及び塩化リチウムをテトラヒドロフラン(脱水)に溶解し、混合物をおよそ2日間室温に置く。混合物を真空下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(例:ヘキサン-酢酸エチル(AcOEt)混合物(1:1)で精製し、化合物(I)を得る。
【0067】
上記製造(合成)工程Cにより得られる化合物(I)としては、例えば、8-クロロ-7-メチル-5-(ピリジン-2-イル)テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン(8-Chloro-7-methyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine) (化合物1)、8-フルオロ-7-メチル-5-(ピリジン-2-イル)テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン(8-Fluoro-7-methyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine) (化合物7)、5-(ピリジン-2-イル)-8,9-ジヒドロ-7H-シクロペンタ[e]テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン(5-(Pyridin-2-yl)-8,9-dihydro-7H-cyclopenta[e]tetrazolo[1,5-c]pyrimidine) (化合物8)、8-クロロ-5-(5-クロロピリジン-2-イル)-7-メチルテトラゾロ[1,5-c]ピリミジン(8-Chloro-5-(5-chloropyridin-2-yl)-7-methyltetrazolo[1,5-c]pyrimidine) (化合物9)、8-クロロ-7-メチル-5-フェニルテトラゾロ[1,5-c]ピリミジン(8-Chloro-7-methyl-5-phenyltetrazolo[1,5-c]pyrimidine) (化合物10)、8-フルオロ-7-メチル-5-フェニルテトラゾロ[1,5-c]ピリミジン(8-Fluoro-7-methyl-5-phenyltetrazolo[1,5-c]pyrimidine) (化合物11)、7,8-ジメチル-5-(ピリジン-2-イル)テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン(7,8-Dimethyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine) (化合物12)、7-メチル-5-(ピリジン-2-イル)テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン(7-Methyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine) (化合物13)、7-フェニル-5-(ピリジン-2-イル)テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン(7-Phenyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine) (化合物14)などが挙げられる。本発明の化合物の好適なものとしては、以下の化合物1、7、8、9、12、13、及び14が挙げられる。
【0068】
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例0070】
<実験手順>
真菌株と培地
実施例で使用された真菌株を、表1にリストアップした。クリプトコックス株とカンジダ株は、1%(w/v)酵母エキス、2%(w/v)ペプトン、2%(w/v)デキストロース、及び1.7%寒天(Difcoラボラトリーズ、米国)からなる酵母ペプトンデキストロース(YPD)寒天上で、特に明記しない限り35℃で増殖させた。
【0071】
抗真菌スクリーニングアッセイは、18 g/lデキストロース(富士フイルム和光純薬工業、日本)(最終デキストロース濃度2%)及び0.165 M 3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸緩衝液(メルク、ドイツ)(水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業)でpHを7に調整した)を添加したRPMI-1640培地(メルク)中で実施した。抗真菌感受性試験は、0.165 M 3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸緩衝液(pH 7)を添加したRPMI-1640培地中で実施した。
【0072】
【0073】
ハイスループットスクリーニング及び抗真菌薬感受性試験
クリプトコックス及びカンジダ種は、酵母ペプトンデキストロース寒天培地(BD DifcoTM、米国)上で増殖させ、収穫し、RPMI-1640培地(メルク、ドイツ)中に再懸濁した。化学ライブラリーをスクリーニングするために、100μlのRPMI-1640培地(ベンチトップマルチピペッティングシステム(EDR-384 12ステージワークステーション、Biotec Co. Ltd.、日本)を使用して、96ウェル丸底組織培養試験プレート(TPP Techno Plastic Products AG、スイス)に分注した)で化合物を希釈した。簡潔に説明すると、各化合物混合物100μlを各ウェルに添加して、10μMの化合物及び1%ジメチルスルホキシドを含む総量200μlを得た。真菌の最終接種濃度は、約5×102~5×103のコロニー形成単位/ミリリットル(CFU ml-1)であった。クリプトコックス種又はカンジダ種を含む試験プレートを、35℃でそれぞれ72時間又は48時間インキュベートした。化合物の抗真菌活性を、培養培地の濁度に基づいて評価した(薬物なしの増殖対照と比較して50%を超える増殖阻害)。スクリーニングにより得られたヒット化合物は、段階希釈後に二次スクリーニングを行い、IC50及びIC80を決定した。
【0074】
時間-殺真菌キネティックアッセイ(Time-kill kinetic assay)
既報に記載のように、時間-殺真菌キネティックアッセイを実行した。C. ネオフォルマンスを、試験前にジャガイモのデキストロース寒天(PDA)プレート上で2回継代培養した。約5×106 CFU ml-1に相当する、0.5 マクファーランド濁度(McFarland turbidity)の真菌懸濁液を滅菌水を用いて調製し、その1 mlを9 mlのRPMI-1640培地で希釈して、約5×105 CFU ml-1の開始接種菌液を得た。CFUは、PDAプレート上に真菌懸濁液の適切な希釈液をプレーティングすることにより決定した。
【0075】
アッセイは、化合物1及び7については0.1又は1μM、化合物14については0.2又は2μM、AMBについては0.5、1、2、4又は8μg ml-1の最終濃度で実施した。培養バイアルを攪拌しながら35℃でインキュベートした。抗真菌剤の添加後0、3、6、12、及び24時間で、0.1 mlのサンプルを各培養バイアルから取り出し、滅菌水で1:10に段階希釈した。希釈したサンプル(各30μl)をPDAプレートに播種した。35℃で24~48時間インキュベートした後、コロニー数を決定した。これらの方法の定量限界は50 CFU ml-1である(M. E. Klepser, E. J. Ernst, R. E. Lewis, M. E. Ernst, M. A. Pfaller, Antimicrob Agents Chemother 1998, 42, 1207-1212.)。殺真菌活性は、初期の真菌濃度(約5×105 CFU ml-1)と比較して、生存細胞数の99.9%を超える減少として定義した。
【0076】
細胞毒性アッセイ
化学物質の潜在的な毒性を調べるために、A549ヒト肺腺がん細胞株(CCL-185、ATCC、米国)由来の細胞を、96ウェル平底プレート(TrueLine)に10,000細胞/ウェルに分注し、各ウェルに、化合物1、7、8、12、13、又は14 (0、3.125、6.25、12.5、25、50、又は100μM)、又はAMB(0、3.125、6.25、12.5、25、50、又は100μg ml-1)の段階希釈を100 μl/ウェルで添加した。プレートを37℃、5% CO2で4日間インキュベートした。細胞生存率は、既報(K. Tateishi, F. Higuchi, J. J. Miller, M. V. A. Koerner, N. Lelic, G. M. Shankar, S. Tanaka, D. E. Fisher, T. T. Batchelor, A. J. Iafrate, H. Wakimoto, A. S. Chi, D. P. Cahill, Cancer Research 2017, 77, 4102-4115.)に記載されているように、ルシフェラーゼ結合ATP定量アッセイ(Cell Titer-Glo(登録商標)2.0 Assay、Promega、米国)を使用して評価した。簡単に説明すると、100μlのCell Titer-Glo(登録商標)2.0試薬を各ウェルに加え、ローテーターで室温である20~25℃で2分間混合した。次いで、プレートを暗所で、室温でインキュベートした。10分後、PHERAstar FS(BMG LABTECH、ドイツ)を使用して発光強度を測定し、製造者のプロトコルに基づいてIC50値を計算した。
【0077】
化学ライブラリー
東京大学(東京都、日本)の創薬機構により化学ライブラリーが樹立された。ライブラリーは22,000を超える化合物で構成され、そのうち薬物様及びリード様の22,400個の化合物を最初のスクリーニング用に選択した。アムホテリシンB(AMB)とフルコナゾール(FLCZ)を陽性対照として使用し、メルクから購入した。抗真菌剤をDMSO(富士フイルム和光純薬工業)に溶解し、抗真菌剤の段階希釈を0.1、0.2、0.4、0.8、1.6、10 mg/dl及び6.4 mg/μlの濃度で調製し、使用するまで-30℃で保存した。
【0078】
一般情報
すべての核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、Varian 500PS分光計で記録した。1H及び13C NMRスペクトルは、内部標準としてテトラメチルシラン(1H及び13C)を使用して、溶媒ピークに対する100万分の1単位(ppm)の化学シフト(δ)として報告された。化学シフト(δ)は100万分の1単位(ppm)で表され、カップリング定数(J)はヘルツ(Hz)で測定される。多重度を表すために次の略語を使用した:s = 一重線、d = 二重線、t = 三重線、q = 四重線、quint. = 五重線、sext. = 六重線、sept. = 七重線、br = 幅広線、m = 多重線。NMRスペクトルは、ACD/SpecManagerを使用して処理した。高分解能質量スペクトル(HRMS、m/z)は、マトリックスとしてm-ニトロベンジルアルコールを使用した高速原子衝撃(FAB)用のJEOL JMS-700N、又はエレクトロスプレイイオン化(ESI+)用のJEOL JMS-T100TDで得た。すべての反応は、不活性雰囲気下で磁気攪拌を行う装置で行った。フラッシュカラムクロマトグラフィー(flash column chromatography)は、下述の溶離系を使用して、Fuji Silysia Chemical Ltd.のシリカゲルC60(50~200μm)を用いて実施した。薄層クロマトグラフィーは、TLC Silica Gel 60 F254アルミニウムシート(メルク)及びSilica Gel F254ガラスプレート(メルク)を使用して実施した。旋光度は、JACSO P2000装置で測定し、[α]24
D値として報告さる。対応する濃度(c)はg/100 mlで与えられる。
【0079】
特に明記しない限り、すべての出発物質及び試薬は商品製造業者から入手し、さらなる精製はせずに使用した。化合物3及び4は、Namiki Shoji Co. Ltd(日本)から購入した。その他の化学薬品は、シグマアルドリッチ(米国)、ナカライテスク(日本)、東京化成工業(日本)、及び和光純薬工業から購入し、そのまま使用した。溶媒はすべて和光純薬工業から購入した。
【0080】
化学合成
化合物1は、既報の手順(スキーム1)に従って合成した。ピリジン-2-カルボキシミドアミドを、トリエチルアミン(Et3N)の存在下で2-クロロ-3-オキソブタン酸エチルと反応させて、対応するピリジニルピリミジン5aを収率16%で得た。塩化ホスホリル(P(O)Cl3)で処理した後、4-クロロピリミジン誘導体(6a)を67%の収率で得た。化合物1の合成は、NaN3を用いた6aの[3+2]環化により72%の収率で達成された。
【0081】
一連の化合物1のアナログ7~14は、スキーム1に従って合成した。3-オキソブタノエートを、ピリジン-2-カルボキシミドアミド、4-クロロピリジン-2-カルボキシミドアミド、又はベンズイミドアミドと縮合させ、得られたピリミジノン5をP(O)Cl3と反応させて4-クロロピリミジン6を得た。ピリミジノン5b~5jは、縮合工程で2-クロロアセトアセテート、2-フルオロアセトアセテート、2-オキソシクロペンタンカルボキシレート、2-メチルアセトアセテート、アセトアセテート、又はベンゾイルアセテートと反応させることにより形成させた(収率9~56%)。2番目のステップでのP(O)Cl3を用いた5b~5jの置換反応により、4-クロロピリミジン(6a~6j)が低収率から良好な収率で得られた。一連のテトラゾール誘導体(7~14)は、NaN3による[3+2]環化を経由して得られた。この反応により、ピリジニル中間体(6a~6d、6h~6j)が得ることに成功した。しかし、フェニル中間体(6e、6f)は反応性が低く、中間体6gが生成した後反応は全く進行しなかった。詳細な合成手順は、以下の通りである。
【0082】
実験手順及び同定データ
化合物5a、6a、及び1の合成手順の概略図を以下に示す。
【0083】
【0084】
一般合成工程A:5-Chloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol(5a)
5-chloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol (5a)を、自体公知の方法(国際公開第2008112651号)に従って合成した。2-クロロアセト酢酸エチルとトリエチルアミン(Et3N; 500μl, 3.6 mmol)を、ピリジン-2-カルボキシミドアミド塩酸塩(471 mg, 3 mmol)を含むアセトニトリル(MeCN; 6 ml)溶液に室温で加えた。反応混合物を激しく攪拌しながら60℃で4時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、沈殿物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した。ろ過物を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-酢酸エチル(AcOEt)混合物=2:1~1:1)で精製し、最終生成物として化合物5aを得た(107 mg、収率16%)。
【0085】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.55 (s, 3H), 7.48-7.51 (m, 1H), 7.88-7.92 (m, 1H), 8.43 (dd, J = 1.0, 8.1 Hz, 1H), 8.64-8.66 (m, 1H), 11.2 (br s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 22.4, 122.1, 126.6, 137.7, 147.1, 149.0, 150.0, 157.6, 161.0; HRMS (FAB): m/z calcd for C10H8ClN3O: 222.0434 [M+H]+; found: 222.0435.
【0086】
一般合成工程B:4,5-Dichloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(6a)
4,5-Dichloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(6a)を、自体公知の方法(国際公開第2005082884号)に従って調製した。5-chloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol(106 mg, 0.48 mmol)及び塩化ホスホリル(1 ml、10.7 mmol)のジクロロメタン溶液の溶液を、80℃で1時間加熱した。混合物を真空下濃縮した。次に、反応混合物に砕いた氷を加え、その後、炭酸カリウム水溶液を加えてpH 7とした。溶液を酢酸エチルで2回抽出し、有機層を併せて無水MgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ヘキサン-酢酸エチル(AcOEt)混合物(1:1))、次いでAcOEt-MeOH-NH3水混合物(10:1:0.1))で溶出し、最終生成物として化合物6aを得た(78 mg、収率67%)。
【0087】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.74 (s, 3H), 7.48-7.51 (m, 1H), 7.48-7.51 (m, 2H), 8.40-8.42 (m, 2H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 23.3, 126.4, 128.4, 128.6, 131.3, 135.5, 158.4, 161.3, 166.4; HRMS (FAB): m/z calcd for C10H8Cl2N3: 240.0095 [M+H]+; found: 240.0094.
【0088】
一般合成工程C:8-Chloro-7-methyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine(1)
8-Chloro-7-methyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine 8(1)を、自体公知の方法(A. Tokarenko et al., J. Med. Chem. 2018, 61, 9347-9359)に従って調製した。4,5-Dichloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(50 mg、0.21 mmol)、アジ化ナトリウム(NaN3)(27 mg、0.42 mmol)、塩化リチウム(18 mg、0.42 mmol)を、テトラヒドロフラン(脱水)(THF; 3 ml)に溶解し、混合物を室温で2日間撹拌した。混合物を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-酢酸エチル = 1:1)を用いて精製し、最終生成物として化合物1を得た(37 mg、収率 72%)。
【0089】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.73 (s, 3H), 7.39-7.42 (m, 1H), 7.85 (dt, J = 1.7, 7.6 Hz, 1H), 8.44-8.46 (m, 1H), 8.82-8.84 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 22.7, 117.8, 123.8, 125.1, 137.0, 150.1, 153.3, 158.7, 159.7, 166.9; HRMS (FAB): m/z calcd for C10H7ClN6: 247.0499 [M+H]+; found: 247.0500.
【0090】
5-Fluoro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol(5b)の合成
5-fluoro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol(5b)を、2-フルオロアセト酢酸エチル(382μl、3 mmol)、トリエチルアミン(500μl、3.6 mmol)、ピリジン-2-カルボキシミドアミド塩酸塩(471 mg、3 mmol)、及びアセトニトリル(6 ml)を用いて、上述の一般合成工程Aにより合成した。混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(2:1)で溶出して、化合物5bを最終生成物として得た(342 mg、収率56%)。
【0091】
【0092】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.38-2.40 (m, 3H), 7.44-7.47 (m, 1H), 7.88 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.37 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.61-8.62 (m, 1H), 11.2 (br s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 16.9, 121.7, 126.2, 137.6, 147.0, 147.3 (d, J = 15.2 Hz), 147.7 (d, J = 6.6 Hz), 148.9, 149.2, 154.6 (d, J = 26.5 Hz); 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ -149.7 (s, 1F); HRMS (FAB): m/z calcd for C10H8FN3O: 206.0730 [M+H]+; found: 206.0730.
【0093】
4-Chloro-5-fluoro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(6b)の合成
4-Chloro-5-fluoro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(6b)を、5-fluoro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol(135 mg、0.66 mmol)、塩化ホスホリル(1.2 ml、12.8 mmol)、及びジクロロメタン(4 ml)を用いて、上述の一般合成工程Bにより合成した。混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)に次いでAcOEt-MeOH-NH3水混合物(10:1:0.1)で溶出した。このようにして、化合物6bを合成した(112 mg、収率76%)。
【0094】
【0095】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.67-2.68 (m, 3H), 7.38-7.42 (m, 1H), 7.83-7.86 (m, 1H), 8.42-8.44 (m, 1H), 8.82-8.83 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 18.2, 123.8, 125.0, 137.1, 147.7 (d, J = 18.9 Hz), 150.1, 150.9, 152.8, 153.0, 156.6 (d, J = 15.2 Hz), 158.1 (d, J= 8.5 Hz); 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ -133.2 (s, 1F); HRMS (FAB): m/z calcd for C10H7FN3O: 224.0391 [M+H]+; found: 224.0388.
【0096】
8-Fluoro-7-methyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine(7)の合成
8-fluoro-7-methyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine(7)を、4-Chloro-5-fluoro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(110 mg、0.49 mmol)、アジ化ナトリウム(38 mg、0.6 mmol)、塩化リチウム(25 mg、0.6 mmol)、テトラヒドロフラン(THF)(5 ml)を用いて、上述の一般合成工程Cにより合成した。得られた産物を、カラムクロマトグラフィーにより生成し、酢酸エチルで溶出して、最終生成物として化合物7を得た(98 mg、収率87%)。
【0097】
【0098】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.65 (d, J = 3.0 Hz, 3H), 7.41 (ddd, J = 1.0, 4.6, 7.3 Hz, 1H), 7.68 (dt, J = 1.7, 7.6 Hz, 1H), 8.42 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.83-8.85 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 17.8, 123.7, 124.9, 137.0, 144.7, 146.8, 150.0 (d, J = 10.4 Hz), 150.1, 153.3, 156.0 (d, J = 13.2 Hz), 157.6 (d, J = 8.5 Hz); 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ -147.0 (d, J = 3.3 Hz,1F); HRMS (FAB): m/z calcd for C10H7FN6: 231.0794 [M+H]+; found: 231.0793.
【0099】
2-(Pyridin-2-yl)-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidin-4-ol(5c)の合成
2-(Pyridin-2-yl)-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidin-4-ol(5c)を、2-オキソシクロペンタンカルボン酸エチル(381μl、3 mmol)、トリエチルアミン(500μl、3.6 mmol)、ピリジン-2-カルボキシミドアミド塩酸塩(471 mg、3 mmol)、及びアセトニトリル(6 ml)を用いて、上述の一般合成工程Aにより合成した。混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)で溶出して、化合物5cを最終生成物として得た(62 mg、収率10%)。
【0100】
【0101】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.14 (quint., J = 7.8 Hz, 2H), 2.90 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.96 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 7.44-7.47 (m, 1H), 7.88 (dt, J = 1.5, 7.6 Hz, 1H), 8.41 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 8.64 (d, J = 4.7 Hz, 1H), 11.0 (br s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 21.3, 27.5, 34.8, 121.7, 126.0, 126.2, 137.5, 147.9, 148.9, 153.4, 159.9, 170.0; HRMS (FAB): m/z calcd for C12H11N3O: 214.0980 [M+H]+; found: 214.0979.
【0102】
4-Chloro-2-(pyridin-2-yl)-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidine(6c)の合成
4-chloro-2-(pyridin-2-yl)-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidine(6c)を、2-(pyridin-2-yl)-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidin-4-ol(62 mg、0.29 mmol)、塩化ホスホリル(600μl、6.4 mmol)、及びジクロロメタン(2 ml)を用いて、上述の一般合成工程Bにより合成した。混合物をシリカゲルカラムにアプライし、そしてヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)に次いでAcOEt-MeOH-NH3水混合物(10:1:0.1)で溶出し、最終生成物として化合物6cを得た(58 mg, 収率86%)。
【0103】
【0104】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.17-2.22 (m, 2H), 3.01-3.04 (m, 2H), 3.17-3.20 (m, 2H), 7.37-7.42 (m, 1H), 7.80-7.86 (m, 1H), 8.45-8.50 (m, 1H), 8.77-8.85 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 21.4, 29.0, 34.9, 123.8, 125.0, 133.2, 137.0, 150.0, 153.8, 157.2, 163.0 177.4; HRMS (FAB): m/z calcd for C12H10N3: 232.0642 [M+H]+; found: 232.0641.
【0105】
5-(Pyridin-2-yl)-8,9-dihydro-7H-cyclopenta[e]tetrazolo[1,5-c]pyrimidine(8)の合成
5-(pyridin-2-yl)-8,9-dihydro-7H-cyclopenta[e]tetrazolo[1,5-c]pyrimidine(8)を、上述の一般合成工程Cにより合成した。出発化合物として、4-chloro-2-(pyridin-2-yl)-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidine(58 mg、0.25 mmol)、アジ化ナトリウム(20 mg、0.3 mmol)、塩化リチウム(13 mg、0.3 mmol)、及びテトラヒドロフラン(3 ml)を用いて反応を50℃で行った。混合物をシリカゲルカラムにアプライし、酢酸エチル-メタノール混合物(10:1)で溶出して最終生成物として化合物8を得た(41 mg、収率69%)。
【0106】
【0107】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.14 (quint., J = 7.9 Hz, 2H), 2.84 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.11 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.35 (ddd, J = 1.0, 4.6, 7.3 Hz, 1H), 7.81 (dt, J = 2.0, 7.9 Hz, 1H), 8.45 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.79-8.80 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 21.8, 27.0, 34.5, 122.8, 123.5, 124.6, 136.7, 149.9, 154.2, 157.5, 162.3, 177.7; HRMS (FAB): m/z calcd for C12H10N6: 239.1045 [M+H]+; found: 239.1044.
【0108】
5-Chloro-2-(5-chloropyridin-2-yl)-6-methylpyrimidin-4-ol(5d)の合成
5-chloro-2-(5-chloropyridin-2-yl)-6-methylpyrimidin-4-ol(5d)を、2-クロロアセト酢酸エチル(418μl、3 mmol)、トリエチルアミン(500μl、3.6 mmol)、5-クロロピリジン-2-カルボキシミドアミド塩酸塩(576 mg、3 mmol)、及びアセトニトリル(6.0 ml)を用いて、上述の一般合成工程Aにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)で溶出して最終生成物として化合物5dを得た(139 mg、収率18%)。
【0109】
【0110】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.54 (s, 3H), 7.88 (dd, J = 2.5, 8.6 Hz, 1H), 8.39 (dd, J = 0.8 Hz, 1H), 8.01 (dd, J = 0.8, 2.5 Hz, 1H), 11.0 (br s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 22.4, 110.0, 121.9, 123.0, 135.5, 137.5, 145.3, 148.1, 149.2, 157.5, 161.0; HRMS (FAB): m/z calcd for C10H7Cl2N3O: 256.0044 [M+H]+; found: 256.0044.
【0111】
4,5-Dichloro-2-(5-chloropyridin-2-yl)-6-methylpyrimidine(6d)の合成
4,5-dichloro-2-(5-chloropyridin-2-yl)-6-methylpyrimidine(6d)を、5-chloro-2-(5-chloropyridin-2-yl)-6-methylpyrimidin-4-ol(70 mg、0.27 mmol)、塩化ホスホリル(600μl、6.4 mmol)及びジクロロメタン(2 ml)を用いて、一般合成工程Bにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)に次いでAcOEt-MeOH-NH3水混合物(10:1:0.1)で溶出した。そのようにして、最終生成物として、化合物6dを得た(32 mg、収率12%)。
【0112】
【0113】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.78 (s, 3H), 7.82(dd, J = 2.4, 8.6 Hz, 1H), 8.45 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.77 (d, J = 2.2 H, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 23.5, 124.9,128.6, 134.2, 136.8, 149.2, 150.9, 159.0, 159.3, 167.4; HRMS (FAB): m/z calcd for C10H6Cl2N3: 273.9706 [M+H]+; found: 273.9703.
【0114】
8-Chloro-5-(5-chloropyridin-2-yl)-7-methyltetrazolo[1,5-c]pyrimidine(9)の合成
8-chloro-5-(5-chloropyridin-2-yl)-7-methyltetrazolo[1,5-c]pyrimidine(9)を、4,5-dichloro-2-(5-chloropyridin-2-yl)-6-methylpyrimidine(32 mg、0.11 mmol)、アジ化ナトリウム(15 mg、0.23 mmol)、塩化リチウム(10 mg、0.23 mmol)andテトラヒドロフラン(3 ml)を用いて、一般合成工程Cにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(4:1)で溶出して、最終生成物として化合物9を得た(11 mg、収率35%)。
【0115】
【0116】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.74 (s, 3H), 7.84 (dd, J = 2.5, 8.4 Hz, 1H), 8.43 (dd, J = 0.8, 8.6 Hz, 1H), 8.78 (dd, J = 0.5, 2.5 Hz, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 22.7, 118.0, 124.7, 134.0, 136.7, 149.1, 151.5, 158.8, 158.9, 167.0; HRMS (FAB): m/z calcd for C12H6Cl2N6: 281.0109 [M+H]+; found: 281.0110.
【0117】
5-Chloro-6-methyl-2-phenylpyrimidin-4-ol(5e)の合成
5-chloro-6-methyl-2-phenylpyrimidin-4-ol(5e)を、2-クロロアセト酢酸エチル(418μl、3 mmol)、トリエチルアミン(500μl、3.6 mmol)、ベンズイミドアミド塩酸塩(benzimidamide hydrochloride)(468 mg、3 mmol)、及びアセトニトリル(6 ml)を用いて、一般合成工程Aにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(2:1)で溶出して、最終生成物として化合物5eを得た(90 mg、収率14%)。
【0118】
【0119】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.58 (s, 3H), 7.56-7.58 (m, 4H), 8.13-8.19 (m, 2H), 12.1 (br s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 22.6, 119.1, 125.9, 127.6, 128.9, 190. 1, 131.2, 132.2, 153.3, 160.6, 162.4; HRMS (FAB): m/z calcd for C11H9ClN2O: 221.0482 [M+H]+; found: 221.0483.
【0120】
4,5-Dichloro-6-methyl-2-phenylpyrimidine(6e)の合成
4,5-dichloro-6-methyl-2-phenylpyrimidine(6e)を、5-chloro-6-methyl-2-phenylpyrimidin-4-ol(60 mg、0.27 mmol)、塩化ホスホリル(600μl、6.4 mmol)及びジクロロメタン(2 ml)を用いて、一般合成工程Bにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(99:1)で溶出して、最終生成物として化合物6eを得た(60 mg、収率92%)。
【0121】
【0122】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.73 (s, 3H), 7.48-7.50 (m, 3H), 8.03 (br s, 1H), 8.41-8.43 (m, 2H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 23.3, 127.0, 128.4, 128.6, 131.3, 135.5, 158.4, 161.3, 166.4; HRMS (FAB): m/z calcd for C11H8Cl2N2: 239.0143 [M+H]+; found: 239.0143.
【0123】
8-Chloro-7-methyl-5-phenyltetrazolo[1,5-c]pyrimidine(10)の合成
8-chloro-7-methyl-5-phenyltetrazolo[1,5-c]pyrimidine(10)を、4,5-dichloro-6-methyl-2-phenylpyrimidine(60 mg、0.25 mmol)、アジ化ナトリウム(33 mg、0.5 mmol)、塩化リチウム(21 mg、0.5 mmol)、及びテトラヒドロフラン(3 ml)を用いて、一般合成工程Cにより合成した。反応混合物を分取薄層クロマトグラフィーに適用し、ヘキサン-酢酸エチル混合物(99:1)で展開し、最終生成物として化合物10を得た(4.0 mg、収率6%)。
【0124】
【0125】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.66 (s, 3H), 7.48-7.51 (m, 3H), 8.42-8.44 (m, 2H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 22.5, 116.2, 128.3, 128.6, 131.1, 136.0, 158.4, 160.8, 166.0; HRMS (FAB): m/z calcd for C11H8ClN5: 246.0546 [M+H]+; found:246.0547.
【0126】
5-Fluoro-6-methyl-2-phenylpyrimidin-4-ol(5f)の合成
5-fluoro-6-methyl-2-phenylpyrimidin-4-ol(5f)を、2-フルオロアセト酢酸エチル(382μl、3 mmol)、トリエチルアミン(500μl、3.6 mmol)、ベンズイミダミド塩酸塩(468 mg、3 mmol)、及びアセトニトリル(6 ml)を用いて、上述の一般合成工程Aにより合成した。混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(2:1)で溶出して、化合物5fを最終生成物として得た(68 mg、収率11%)。
【0127】
【0128】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.44 (d, J = 3.7 Hz, 3H), 7.53-7.56 (m, 3H), 8.11-8.17 (m, 2H), 13.0 (br s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 17.3 127.5, 129.1, 131.4, 131.8, 145.5, 147.5, 148.9 (d, J = 13.3 Hz), 151.3 (d, J = 6.6 Hz), 157.5 (d, J = 24.6 Hz); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -153.3 (s, 1F); HRMS (FAB): m/z calcd for C11H9FN2O: 205.0777 [M+H]+; found: 205.0777.
【0129】
4-Chloro-5-fluoro-6-methyl-2-phenylpyrimidine(6f)の合成
4-Chloro-5-fluoro-6-methyl-2-phenylpyrimidine(6f)を、5-fluoro-6-methyl-2-phenylpyrimidin-4-ol(67 mg、0.33 mmol)、塩化ホスホリル(600μl、6.4 mmol)及びジクロロメタン(2 ml)を用いて、一般合成工程Bにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(5:95)で溶出して、最終生成物として化合物6fを得た(54 mg、収率74%)。
【0130】
【0131】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.76 (s, 3H), 7.47-7.48 (m, 3H), 8.36-8.37 (m, 2H), 8.73 (br s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 18.1, 128.3, 128.6, 131.8, 135.6, 150.0, 152.1, 155.8 (d, J = 15.2 Hz), 159.5; 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ -134.2 (s, 1F); HRMS (FAB): m/z calcd for C11H8ClFN2: 223.0438 [M+H]+; found: 223.0444.
【0132】
8-Fluoro-7-methyl-5-phenyltetrazolo[1,5-c]pyrimidine(11)の合成
8-Fluoro-7-methyl-5-phenyltetrazolo[1,5-c]pyrimidine(11)を、4-chloro-5-fluoro-6-methyl-2-phenylpyrimidine (54 mg、0.24 mmol)、アジ化ナトリウム(19 mg、0.29 mmol)、塩化リチウム(21 mg、0.29 mmol)、及びテトラヒドロフラン(2.5 ml)を用いて、一般合成工程Cにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:99)で溶出して、最終生成物として化合物11を得た(22 mg、収率40%)。
【0133】
【0134】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.55 (d, J = 2.9 Hz, 3H), 7.47-7.50 (m, 3H), 8.38-8.40 (m, 2H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 17.7, 128.1, 128.5, 136.1, 144.0, 146.1, 149.6 (d, J = 10.4 Hz), 155.0 (d, J = 12.3 Hz), 158.6; 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ -149.9 (d, J = 3.3 Hz, 1F); HRMS (FAB): m/z calcd for C11H8FN5: 230.0842 [M+H]+; found:230.0842.
【0135】
2-Phenyl-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidin-4-ol(5g)の合成
2-Phenyl-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidin-4-ol(5g)を、2-オキソシクロペンタン-1-カルボン酸エチル(381μl、3 mmol)、トリエチルアミン(500μl、3.6 mmol)、ベンズイミダミド塩酸塩(468 mg、3 mmol)、及びアセトニトリル(6 ml)を用いて、上述の一般合成工程Aにより合成した。混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)で溶出して、化合物5gを最終生成物として得た(56 mg、収率9%)。
【0136】
【0137】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.13 (quint., J = 7.8 Hz, 2H), 2.88 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.97 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 7.49-7.54 (m, 3H), 8.15-8.17 (m, 2H), 12.4 (br s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 21.3, 27.2, 35.1, 123.1, 128.6, 128.9, 131.6, 132.3, 156.8, 162.6, 171.4; HRMS (FAB): m/z calcd for C13H12N2O: 213.1028 [M+H]+; found: 213.1028.
【0138】
4-Chloro-2-phenyl-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidine(6g)の合成
4-Chloro-2-phenyl-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidine(6g)を、2-phenyl-6,7-dihydro-5H-cyclopenta[d]pyrimidin-4-ol(56 mg、0.33 mmol)、塩化ホスホリル(600μl、6.4 mmol)、及びジクロロメタン(2 ml)を用いて、一般合成工程Bにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(5:95)で溶出して、最終生成物として化合物6gを得た(26 mg、収率43%)。
【0139】
【0140】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.20 (quint., J = 7.6 Hz, 2H), 3.03 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 3.13 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.46-7.49 (m, 3H), 8.40-8.42 (m, 2H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 21.4, 28.9, 34.8, 128.3, 128.5, 130.8, 131.4, 136.6, 157.0, 164.3, 176.3; HRMS (FAB): m/z calcd for C13H11ClN2: 231.0689 [M+H]+; found: 231.0689.
【0141】
4-Chloro-5,6-dimethyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(6h)の合成
4-chloro-5,6-dimethyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(6h)を以下のようにして合成した。2-メチルアセト酢酸エチル(426μl、3 mmol)とトリエチルアミン(500μl, 3.6 mmol)を、ピリジン-2-カルボキシミドアミド塩酸塩(471 mg, 3 mmol)を含むアセトニトリル(MeCN; 6 ml)溶液に室温で加えた。反応混合物を激しく攪拌しながら60℃で4時間加熱後、室温に冷却した。続いて、反応混合物をろ過し、アセトニトリルで洗浄して、真空下でろ過物を濃縮した。粗残渣をジクロロメタン(3 ml)に溶解し、塩化ホスホリル(1 ml、10.7 mmol)を該溶液に添加した。次に、生じた反応混合物を80℃で1時間攪拌し、その後、真空下で濃縮した。混合物に砕いた氷を添加し、炭酸カリウム水溶液を加えてpH 7とした。溶液を酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を併せて無水MgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(2:1)に次いでAcOEt-MeOH-NH3水混合物(10:1:0.1)で溶出して、最終生成物として化合物6hを得た(122 mg、収率19%)。
【0142】
【0143】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.30 (s, 3H), 2.56 (s, 3H), 7.26-7.28 (m, 1H), 7.71 (dt, J = 1.7, 7.8 Hz, 1H), 8.35 (dd, J = 0.8, 7.8 Hz, 1H), 8.72-8.73 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 14.9, 23.1, 123.4, 124.6, 127.0, 136.7, 149.9, 153.5, 160.3, 161.1, 167.8; HRMS (FAB): m/z calcd for C11H10ClN3: 220.0642 [M+H]+; found: 220.0642.
【0144】
7,8-Dimethyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine(12)の合成
7,8-dimethyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine(12)を、4-chloro-5,6-dimethyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(85 mg、0.39 mmol)、アジ化ナトリウム(30 mg、0.46 mmol)、塩化リチウム(19 mg、0.46 mmol)、及びテトラヒドロフラン(5 ml)を用いて、一般合成工程Cにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)で溶出して、最終生成物として化合物12を得た(71 mg、収率81%)。
【0145】
【0146】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.19 (s, 3H), 2.63(s, 3H), 7.37-7.40 (m, 1H), 7.85 (dt, J = 1.7, 7.5 Hz, 1H), 8.49 (dd, J = 1.0, 8.1 Hz, 1H), 8.83-8.84 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 11.9, 22.6, 117.9, 123.5, 124.7, 136.9, 150.0, 154.4, 160.0, 160.5, 167.6; HRMS (FAB): m/z calcd for C11H10N6:227.1045 [M+H]+; found:227.1045.
【0147】
6-Methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol(5i)の合成
6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol(5i)を、アセト酢酸エチル(360μl、3 mmol)、トリエチルアミン(500μl、3.6 mmol)、ピリジン-2-カルボキシミドアミド塩酸塩(471 mg, 3 mmol)、及びアセトニトリル(6 ml)を用いて、一般合成工程Aにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)で溶出して、化合物5iを最終生成物として得た(112 mg、収率20%)
【0148】
【0149】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.38 (d, J = 2.7 Hz, 3H), 6.31-6.32 (m, 1H), 7.46-7.49 (m, 1H), 7.87-7.91 (m, 1H), 8.43-8.45 (m, 1H), 8.64-8.66 (m, 1H), 11.0 (br s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 24.0, 113.3, 122.1, 126.5, 137.6, 147.7, 148.9, 152.9, 161.8, 165.3; HRMS (FAB): m/z calcd for C10H9N3O: 188.0824 [M+H]+; found: 188.0823.
【0150】
4-Chloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(6i)の合成
4-chloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(6i)を、6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidin-4-ol(127 mg、0.68 mmol)、塩化ホスホリル(1 ml、10.7 mmol)及びジクロロメタン(4 ml)を用いて、一般合成工程Bにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)で溶出して、最終生成物として化合物6iを得た(23 mg、収率16%)。
【0151】
【0152】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.66 (s, 3H), 7.23 (s, 1H), 7.41 (ddd, J = 1.0, 4.7, 7.6 Hz, 1H), 7.85 (dt, J = 1.7, 7.8 Hz, 1H), 8.49-8.51 (m, 1H), 8.84-8.85 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 24.2, 119.9, 124.1, 125.2, 137.0, 150.2, 153.6, 161.7, 163.8, 169.7; HRMS (FAB): m/z calcd for C10H8ClN3: 206.0485 [M+H]+; found: 206.0485.
【0153】
7-Methyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine(13)の合成
7-methyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine(13)を、4-chloro-6-methyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine (18 mg、0.09 mmol)、アジ化ナトリウム(7 mg、0.1 mmol)、塩化リチウム(5 mg、0.1 mmol)、及びテトラヒドロフラン(3 ml)を用いて、一般合成工程Cにより合成した。反応混合物をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)で溶出して、最終生成物として化合物13を得た(19 mg、収率99%)。
【0154】
【0155】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.63 (s, 3H), 6.67 (s, 1H), 7.41 (ddd, J = 1.0, 4.7, 7.6 Hz, 1H), 7.86 (dt, J = 1.5, 7.6 Hz, 1H), 8.50 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.84-8.85 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 24.5,108.9, 123.9, 125.0, 136.9, 150.1, 154.1, 162.6, 163.2, 168.9; HRMS (FAB): m/z calcd for C10H8N6: 213.0889 [M+H]+; found:213.0888.
【0156】
4-Chloro-6-phenyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(6j)の合成
4-chloro-6-phenyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(6j)を以下のようにして合成した。ベンゾイル酢酸エチル(515μl、3 mmol)とトリエチルアミン(500μl, 3.6 mmol)を、ピリジン-2-カルボキシミドアミド塩酸塩(471 mg, 3 mmol)を含むアセトニトリル(6 ml)溶液に室温で加えた。反応混合物を激しく攪拌しながら60℃で4時間加熱後、室温に冷却した。続いて、反応混合物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した。真空下でろ過物を濃縮した。得られた粗残渣をジクロロメタン(3 ml)に溶解し、塩化ホスホリル(600μl、6.4 mmol)を該溶液に添加した。生じた反応混合物を80℃で1時間攪拌し、その後、真空下で濃縮した。混合物に砕いた氷を添加し、炭酸カリウム水溶液を加えてpH 7とした。溶液を酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を併せて無水MgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生じた物質をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(2:1)に次いでAcOEt-MeOH-NH3水混合物(10:1:0.1)で溶出して、最終生成物として化合物6jを得た(12 mg、収率2%)。
【0157】
【0158】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.45 (ddd, J = 1.3, 4.9, 7.6 Hz, 1H), 7.55-7.58 (m, 3H), 7.76 (s, 1H), 7.91 (dt, J = 1.8, 7.6 Hz, 1H), 8.20-8.22 (m, 2H), 8.65 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 8.89-8.90 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 116.0, 124.2, 125.3, 127.5, 129.1, 131.7, 135.5, 137.0, 150.2, 153.8, 163.0, 164.2, 166.1; HRMS (FAB): m/z calcd for C15H10ClN3: 268.0642 [M+H]+; found: 268.0643.
【0159】
7-Phenyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine (14)の合成
7-phenyl-5-(pyridin-2-yl)tetrazolo[1,5-c]pyrimidine(14)を、4-chloro-6-phenyl-2-(pyridin-2-yl)pyrimidine(12 mg、0.05 mmol)、アジ化ナトリウム(7 mg、0.1 mmol)、塩化リチウム(5 mg、0.1 mmol)、及びテトラヒドロフラン(3 ml)を用いて、一般合成工程Cにより合成した。生じた物質をシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン-酢酸エチル混合物(1:1)で溶出して、最終生成物として化合物14を得た(12 mg、収率99%)。
【0160】
【0161】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.21 (s, 1H), 7.45 (ddd, J = 1.2, 4.9, 7.6 Hz, 1H), 7.52-7.54 (m, 3H), 7.90 (dt, J = 1.7, 7.6 Hz, 1H), 8.19-8.21 (m, 2H), 8.61-8.63 (m, 1H), 8.87-8.88 (m, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 105.2, 124.2, 125.1, 127.4, 128.9, 131.2, 136.3, 136.9150.1, 154.5, 163.7, 163.8, 166,4; HRMS (FAB): m/z calcd for C15H10N6: 247.1045 [M+H]+; found: 247.1045.
【0162】
実施例1:抗真菌性化合物のスクリーニング
既存の抗真菌薬と相乗的に作用できるリード化合物を得るため、まず、96ウェル丸底プレート内で、化学物質の存在下又は非存在下でC.ネオフォルマンスをRPMI-1640培地で増殖させるスクリーニングシステムをセットアップした。本実施例で使用された化学ライブラリー、すなわちAdvanced Core Libraryは、東京大学創薬機構が提供する化学ライブラリーから選択された、22,400個の薬物様及びリード様化合物を含んでいた。
【0163】
まず、C.ネオフォルマンスに対する有効な抗真菌剤であるFLCZ(最小阻害濃度の1/4)を使用して、Advanced Core Libraryをスクリーニングして、C.ネオフォルマンスの増殖を阻害できる化合物を特定した。Clinical and Laboratory Standards Instituteのガイドライン(National Committee for Clinical Laboratory Standards: Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Testing of Yeasts:M27Ed4 2017.)に基づいて増殖抑制効果を評価した。22,400個の化合物をスクリーニングした後、2μM以下の濃度でC.ネオフォルマンスの増殖を阻害する、2つの化合物1及び2を得た。しかし、化合物1及び2は、FLCZとの相乗効果を示さなかった。化合物1及び2の構造を以下に示す。
【0164】
【0165】
化合物1は、テトラゾール骨格を含み、50%阻害濃度(half-maximal inhibitory concentration)(IC50)及び80%阻害濃度(80% inhibitory concentration)(IC80)は、それぞれ0.10μMであった。化合物2は、C.ネオフォルマンスの増殖を阻害する活性が化合物1よりも低く、IC50とIC80はそれぞれ1.25μMであった。C.ガッティ(C. gattii)に対する阻害活性を試験したところ、化合物1は0.31μMのIC50及びIC80を示し、化合物2は、1.25μMのIC50及び2.50μMのIC80を示した。これらの知見に基づいて、さらなる研究のために化合物1を選択した。
【0166】
実施例2:化合物1及びそのアナログの設計と合成
次に、in silico計算を使用して、化合物1の構造に類似した構造を有する化合物を特定した。2つの市販化合物(化合物3及び4)がテトラゾール骨格を含むことを見出し、それらの抗真菌活性を調べた。しかし、C.ネオフォルマンス及びC.ガッティに対する化合物3及び4の活性は認められなかった。化合物3及び4の構造を以下に示す。
【0167】
【0168】
化合物1の一連の誘導体を設計及び合成した。これらの誘導体を合成するために、最初に元の化合物を以下の手順(スキーム1)に従って合成した。
【0169】
【0170】
最初のステップでは、トリエチルアミン(Et3N)の存在下で、ピリジン-2-カルボキシミドアミドをエチル2-クロロ-3-オキソブタン酸と反応させて、対応するピリジニルピリミジン5aを得た。続いて、5aを塩化ホスホリル(P(O)Cl3)で処理し、4,5-ジクロロピリミジン誘導体(6a)を形成させた。最後に、6aを、アジ化ナトリウム(NaN3)を用いて[3+2]環化することにより、目的の化合物1を得た。次に、一連の化合物1のアナログ6g及び7~14を合成した。合成戦略はスキーム1に基づいていた。化合物6g及び7~14の構造を以下に示す。
【0171】
【0172】
実施例3:化合物1のアナログが示す抗真菌活性
表2に示すように、新たに合成した化合物1は、ライブラリー由来の化合物1を使用して決定されたIC50と一致して、C.ネオフォルマンス及びC.ガッティに対する抗真菌活性(IC50 = 0.10 μM)を示した。しかし、カンジダ・アルビカンスやカンジダ・パラプシローシスなどのカンジダ種は、該化合物に対して比較的耐性を有していた。特に、AMBとFLCZは広域スペクトルの抗真菌活性を示したが、化合物1はクリプトコックス種に比較的特異的であり、化合物1の標的は、AMB及びFLCZの標的とは異なる可能性があることを示している。
【0173】
【0174】
新たに合成した化合物6g及び7~14のうち、ピリジン環を含む化合物7及び8は、化合物1に匹敵するC.ネオフォルマンスに対する強力な抗真菌活性を示した(
図1及び表2)。C.ガッティに対する化合物7の活性は化合物1と同等であったが、化合物8はC.ガッティに対して化合物1及び7よりも効果が低く、塩素やフッ素などのハロゲン原子が化合物と真菌の標的との間の相互作用において重要な役割を有することが示唆される。カンジダ種は、化合物1と同様に、化合物7及び8に対して比較的耐性を有していた。ピリジン環を含む化合物13及び14は、化合物8と同様の抗真菌スペクトルを示し、C.ガッティよりもC.ネオフォルマンスに対してより有効であった。ピリジニル基の代わりにフェニル基を含む化合物10及び11は、本実施例で調べたクリプトコックス及びカンジダ種に対する抗真菌活性を示さなかった。テトラゾール骨格構造を欠く化合物6gは、抗真菌活性を示さなかった。
【0175】
実施例4:テトラゾール骨格を有する代表的な化合物の時間-殺真菌キネティックアッセイ
上記の増殖阻害アッセイの結果に基づき、代表的なテトラゾール含有化合物として化合物1、7、及び14を選択し、時間-殺真菌キネティックアッセイ(M. A. Pfaller, D. J. Sheehan, J. H. Rex, Clinical Microbiology Reviews 2004, 17, 268-280.)を行った。C.ネオフォルマンスに対する代表的な化合物の殺真菌活性を評価するために、時間-殺真菌アッセイを行った。0.1μg ml
-1及び1.0μg ml
-1の濃度での化合物1、7、及び14の時間-殺真菌キネティクスを、0.5μg ml
-1から8.0μg ml
-1の濃度でのAMBのキネティクスと比較した。
図2に示すように、AMBはC.ネオフォルマンスに対して濃度及び時間依存的に殺真菌活性を示した。対照的に、3つの代表的な化合物1、7、及び14は、0.1μM及び1μMの濃度でC.ネオフォルマンスに対して殺真菌活性を示さず、テトラゾールアナログが殺真菌性ではなく静菌性(fungistatic)であることを示す。AMBは、4μg ml
-1の濃度で殺真菌活性(初期真菌濃度と比較して生存細胞数の99.9%を超える減少)を示した。AMBは、現在臨床で使用されている抗真菌薬の中で最も強力な殺真菌薬である。
【0176】
実施例5:テトラゾールアナログの細胞毒性の評価
テトラゾール誘導体を、新規クラスの抗真菌剤の開発のための化合物リードとして使用する可能性を調べるために、化合物の細胞毒性を、ヒト肺腺がん細胞株であるA549(M. Lieber, B. Smith, A. Szakal, W. Nelson-Rees, G. Todaro, Int J Cancer 1976, 17, 62-70.)を使用して決定した(
図3)。
【0177】
AMBは、A549細胞に対して約10μg ml-1の半有効量(median effective dose)(ED50)を有していた。C.ネオフォルマンスに対するAMBのIC50は0.25μg ml-1であったため、ED50/IC50比は40であった。一方で、新しく合成された化合物1、7、8、及び13のED50は約100μMであったが、IC50は0.1μM未満、ED50/IC50比は1,000以上であった。各化合物のED50とIC50との間の大きな相違は、テトラゾール誘導体が新しいクラスの抗真菌剤の開発に適した候補であることを示唆している。
本発明によりクリプトコックス症の新たな治療又は予防が可能となるため有用である。特に、本発明の有効成分であるテトラゾール縮環化合物(より具体的には、テトラゾロ[1,5-c]ピリミジン母核を有する化合物)は、従来の薬剤と比して、複数のクリプトコックス属の真菌(例:クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クリプトコックス・ガッティ(Cryptococcus gattii)等)に対して同等あるいはより高い抗真菌活性発揮し、且つ低毒性であるため、クリプトコックス症の治療又は予防の新しい選択肢となり得ることが期待される。