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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132709
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20240920BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20240920BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240920BHJP
【FI】
B60R21/239
B60R21/203
B60R21/2338
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043597
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐司
(72)【発明者】
【氏名】河村 功士
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA07
3D054AA13
3D054CC11
3D054CC15
3D054CC34
(57)【要約】
【課題】ストラップを自由状態にするための破断装置を有するエアバッグ装置であって、当該破断装置が単純な構造でありかつ単純な動作機序であるものを提供すること。
【解決手段】
開口状のベントホール21を有するエアバッグ2と、
前記エアバッグ2に取り付けられ前記ベントホール21を覆うフラップ4と、
前記フラップ4から延び、ストラップ用取付部2に固定されて、前記ベントホール21を閉じる閉位置に前記フラップ4を位置固定するストラップ5と、
前記ストラップ5を前記ストラップ用取付部2に固定するための固定材50を熱により破断させることで前記ストラップを自由状態とする発熱装置60と、を具備するエアバッグ装置1。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口状のベントホールを有するエアバッグと、
前記エアバッグに取り付けられ前記ベントホールを覆うフラップと、
前記フラップから延び、ストラップ用取付部に固定されて、前記ベントホールを閉じる閉位置に前記フラップを位置固定するストラップと、
前記ストラップを前記ストラップ用取付部に固定するための固定材と、
前記固定材を熱により破断させることで前記ストラップを自由状態とする発熱装置と、を具備するエアバッグ装置。
【請求項2】
前記固定材は、前記ストラップを前記エアバッグに縫い付ける縫製糸である、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記発熱装置の発熱部を取り囲む筒部を具備しかつ前記発熱装置を位置固定するキャップを有し、
前記キャップは前記発熱装置を前記固定材の周囲に固定し、
前記筒部は前記固定材に向けて開口する、請求項1または請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記発熱装置と、前記エアバッグに膨張流体を供給する膨張流体発生源と、の間に立壁を有する、請求項1または請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記筒部は、周方向の一部である一般部と、周方向の他の一部であり前記一般部よりも筒高さの低い切り欠き部と、を有し、
前記切り欠き部は、前記切り欠き部のうち最も筒高さの低い切欠き底部から前記切り欠き部のうち前記一般部に連続する切欠き頂部に向けて徐々に筒高さが増大する傾斜壁状をなす、請求項1または請求項2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衝突時に、インフレータ等の膨張流体発生源が発したガス等の膨張流体を、当該膨張流体発生源に接続されたエアバッグに供給し、車体と乗員との間で当該エアバッグを展開および膨張させて当該乗員を保護する、各種のエアバッグ装置が知られている。
【0003】
ところでエアバッグ装置においては、衝突による衝撃から乗員を保護する都合上、その展開・膨張時においてエアバッグに迅速に且つ充分な量の膨張流体を供給する必要がある。しかしその一方で、当該エアバッグにより乗員に大きな反力を負荷することで当該乗員に著しい不快感を与える。当該反力が過大であれば乗員に大きな衝撃を与え、その結果、当該乗員の身体に負担を与える虞がある。
【0004】
エアバッグの展開・膨張時における上記の不具合を回避するために、エアバッグに開口状のベントホールを設けるエアバッグ装置が知られている。
この種のエアバッグ装置において、エアバッグの展開・膨張時における初期段階では、ベントホールを閉じることでエアバッグに迅速に且つ充分な量の膨張流体を供給し、乗員を保護するのに充分な程度にまでエアバッグの内圧を高める。その後、ベントホールを開くことでエアバッグ内の膨張流体を外部に流出させ、エアバッグの内圧を低下させて、乗員に負荷する上記の反力を軽減する。
【0005】
エアバッグのベントホールを開閉する方法として種々の方法が提案されている。
【0006】
特許文献1には、エアバッグ1にベントホール14を設け、突出部13をエアバッグ1の表面に密着させることで当該ベントホール14を閉じ、突出部13をエアバッグ1に対して起立させることで当該ベントホール14を開くエアバッグ装置が紹介されている。
【0007】
上記の突出部13には、略紐状をなすストラップ4が接続されている。
特許文献1のエアバッグ装置では、当該ストラップ4に張力を付与しひいては突起部13に張力を付与することで、突出部13をエアバッグ1の表面に密着させベントホール14を閉じている。そして、カッター53を含む破断装置を用いて当該ストラップ4を破断させることにより、ストラップ4を自由状態とし、突出部13をエアバッグ1に対して起立させベントホール14を開いている。
【0008】
特許文献2には、ベントホール4aの周囲に沿ってストラップ(テザー5)を通す貫通孔4bを設け、当該テザー5の一部を貫通孔4bの中に通してベントホール4aの周囲を1周させる旨が開示されている。
特許文献2のエアバッグ装置では、エアバッグ4の展開に伴い、テザー5が緊張状態となってベントホール4aを絞ることで、当該ベントホール4aを閉じている。また、エアバッグ4が完全に展開した後に、カッター(テザーカッター6)を含む破断装置を用いてテザー5を破断させることでテザー5の緊張状態を緩和し(すなわちストラップを自由状態とし)、かつ、展開状態のエアバッグ4に乗員が衝突することで、ベントホール4aを開いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-35473号公報
【特許文献2】特開2020-185893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、上記した特許文献1や特許文献2に紹介されているような、カッターを用いてストラップを破断させるための破断装置には、カッターを位置変化させるための駆動機構が必要である。
【0011】
具体的には、例えば特許文献1のエアバッグ装置における駆動機構では、スクイブ54によって、カッター53をストラップ4に向けてスライドさせる推進力を生じさせている。さらに、特許文献1のエアバッグ装置における駆動機構は、当該スクイブ54の生じた推進力を十分に利用するための機構、例えば、スクイブ54が生じた燃焼生成物を受け止めるためにカッター53に設けた受圧面53b、スクイブ54及びカッター53を収容するためのハウジング55等を必要とする。
【0012】
したがって、特許文献1、2に紹介されている類いのエアバッグ装置、すなわち、ベントホールを開くためにストラップをカッターによって破断させるエアバッグ装置では、駆動機構を含む破断装置の構造が複雑であるため製造コストを低減させ難い。
【0013】
さらに、上記の破断装置によりストラップを破断させるためには、駆動機構を正しく動作させて駆動力を生じ、当該駆動機構が生じた駆動力をカッターに正しく伝達し、カッターを正しく動作させる必要がある。このため、ストラップをカッターによって破断させるエアバッグ装置においては、破断装置の動作には、全体として、非常に高い精度が要求される。このため、ストラップを破断させる破断装置の動作機序には改善の余地がある。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、単純な構造かつ簡単な動作機序でストラップを自由状態にし得るエアバッグ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明のエアバッグ装置は、
開口状のベントホールを有するエアバッグと、
前記エアバッグに取り付けられ前記ベントホールを覆うフラップと、
前記フラップから延び、ストラップ用取付部に固定されて、前記ベントホールを閉じる閉位置に前記フラップを位置固定するストラップと、
前記ストラップを前記ストラップ用取付部に固定するための固定材と、
前記固定材を熱により破断させることで前記ストラップを自由状態とする発熱装置と、を具備するエアバッグ装置である。
【0016】
本発明のエアバッグ装置は、単純な構造かつ単純な動作機序でストラップを自由状態にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグが展開および膨張している様子を模式的に説明する説明図である。
図2】実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグが展開および膨張している様子を模式的に説明する説明図である。
図3図1の要部拡大図である。
図4】実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグ、フラップ、ストラップ、膨張流体発生源およびケースのユニットを模式的に説明する説明図である。
図5】実施例1のエアバッグ装置におけるキャップを模式的に説明する説明図である。
図6】実施例1のエアバッグ装置におけるフラップ、ストラップおよび固定材をエアバッグの外側から見た様子を模式的に説明する説明図である。
図7】実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグのアクティブベントホールをフラップが閉じまたは開いている様子を模式的に説明する説明図である。
図8】実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグのアクティブベントホールをフラップが閉じまたは開いている様子を模式的に説明する説明図である。
図9】実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグのアクティブベントホールをフラップが閉じまたは開いている様子を模式的に説明する説明図である。
図10】実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグのアクティブベントホールをフラップが閉じまたは開いている様子を模式的に説明する説明図である。
図11】実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグのアクティブベントホールをフラップが閉じまたは開いている様子を模式的に説明する説明図である。
図12】実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグのアクティブベントホールをフラップが閉じまたは開いている様子を模式的に説明する説明図である。
図13】実施例2のエアバッグ装置におけるキャップを模式的に説明する説明図である。
図14】実施例2のエアバッグ装置におけるエアバッグが展開および膨張している様子を模式的に説明する説明図である。
図15】実施例3のエアバッグ装置におけるフラップ、ストラップおよび固定材をエアバッグの外側から見た様子を模式的に説明する説明図である。
図16】評価試験の結果を表すグラフである。
図17】評価試験の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のエアバッグ装置は、開口状のベントホールを有するエアバッグと、前記エアバッグに取り付けられ前記ベントホールを覆うフラップと、前記フラップから延び、ストラップ用取付部に固定されて、前記ベントホールを閉じる閉位置に前記フラップを位置固定するストラップと、前記ストラップを前記ストラップ用取付部に固定するための固定材と、を具備する。本発明のエアバッグ装置においては、閉位置にあるフラップによって、ベントホールを閉じる。
【0019】
本発明のエアバッグ装置は、さらに、発熱装置を具備する。当該発熱装置は、前記固定材を熱により破断させることで、前記ストラップを自由状態とする。
ここで、本明細書において、破断とは、刃物を用いて対象物を分断させることと刃物を用いずに対象物を分断させることとの両方を含む。そして、上記したように熱によりストラップを破断させるための発熱装置は破断装置といい得る。また、本発明のエアバッグ装置が後述するキャップを具備する場合には、破断装置は、当該キャップおよび発熱装置を含むものといい得る。
【0020】
本発明のエアバッグ装置では、発熱装置が生じる熱によって固定材を破断させる。これによりストラップを自由状態とし、さらに、当該ストラップを介してストラップ用取付部に固定されていたフラップを自由状態として、当該フラップを、ベントホールを閉じる閉位置から当該ベントホールを開く位置(以下、必要に応じて開位置と称する)に位置変化させる。
【0021】
本発明のエアバッグ装置では、発熱装置が生じる熱によって固定材を破断させる。このため本発明のエアバッグ装置では、ストラップを破断させる破断装置は単純な構造であり、かつ、当該破断装置の動作機序もまた単純である。
【0022】
以下、本発明のエアバッグ装置をその構成要素毎に説明する。
なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限x及び上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、並びに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで新たな数値範囲を構成し得る。更に、上記の何らかの数値範囲内から任意に選択した数値を新たな数値範囲の上限、下限の数値とすることができる。
【0023】
本発明のエアバッグ装置は、エアバッグ、フラップ、ストラップ、固定材および発熱装置を具備する。さらに、本発明のエアバッグ装置は後述するキャップを具備し得る。なお、既述したように、発熱装置を含み固定材を破断させるための装置を破断装置と称する。当該破断装置はキャップを含み得る。
【0024】
エアバッグは、中空の袋状をなし、車両に搭載され衝突等の衝撃発生時に乗員を保護するための部分である。当該エアバッグは車両の如何なる部分に配置されても良いが、例えば、ステアリングホイールに搭載されたり、インストルメントパネルの裏面側のうち助手席の前側に位置する部分に搭載されたりして、乗員とフロントガラスとの間に介在するものであるのが特に好適である。
【0025】
エアバッグは、膨張流体発生源に接続され、衝撃発生時に膨張流体の供給を受けて展開および膨張するが、通常時には折り畳まれ収納される。このためエアバッグの材料としては、折り畳み可能であり且つ展開可能な材料を選択するのが好適である。具体的なエアバッグの材料としては、可撓性を有しかつ高強度な材料を選択するのが好適であり、例えば、ポリエステルやポリアミド等の高強度樹脂繊維を用いた織布を特に好適に使用し得る。
【0026】
本発明のエアバッグ装置におけるエアバッグは、開口状のベントホールを有する。エアバッグに設けられるベントホールは1つのみであっても良いし、複数であっても良い。ベントホールは、エアバッグの内外を連絡し、エアバッグ内部の膨張流体を外部に排出できれば良く、その形状については特に限定しない。エアバッグが複数のベントホールを有する場合、各ベントホールは同じ形状であっても良いし、異なる形状であっても良い。
【0027】
フラップはエアバッグに取り付けられ、上記したベントホールを覆う。本発明のエアバッグ装置において、エアバッグが複数のベントホールを有する場合には、全てのベントホールをフラップが覆っても良い。または、一部のベントホールのみをフラップが覆い、残りのベントホールはフラップで覆わなくても良い。
【0028】
フラップは、閉位置においてベントホールを覆うことが可能であり、且つ、開位置においてベントホールから離れて当該ベントホールを開くことが可能であればよい。したがって、フラップの形状や材料は特に限定されないが、エアバッグとともに折り畳まれエアバッグの展開および膨張を妨げ難いものであるのが好適である。このようなフラップの材料としては、可撓性を有しかつ高強度な材料を選択するのが好適であり、エアバッグ同様にポリエステルやポリアミド等の高強度樹脂繊維を用いた織布を選択するのが特に好適である。
【0029】
フラップをエアバッグに取り付ける方法としては、エアバッグの展開・膨張等を阻害しない方法であれば、如何なる方法を選択しても良い。例えばエアバッグとフラップとを一体に成形しても良いし、エアバッグと別体で成形したフラップをエアバッグに縫い付けたり、接着したり、溶着したりしても良い。
【0030】
フラップは、エアバッグの内部においてベントホールを覆っても良いし、エアバッグの外部においてベントホールを覆っても良い。
【0031】
ストラップは、フラップから延びかつ固定材によりストラップ用取付部に固定されることが可能であれば良く、紐状や帯状等の形状をとり得るが、これに限定されない。
【0032】
ストラップとフラップとは一体に形成しても良いし、フラップと別体で成形したストラップをフラップに縫い付けたり、接着したり、溶着したりしても良い。ストラップの材料としては、可撓性を有しかつ高強度な材料を選択するのが好適であり、フラップと同様に、ポリエステルやポリアミド等の高強度樹脂繊維を用いた織布を選択するのが特に好適である。固定材の材料としては、熱により破断可能なものを選択すれば良く、可撓性を有しかつ高強度な材料を選択するのが好適である。固定材の材料としては、ポリエステルやポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性を有する高強度樹脂繊維を選択するのが特に好適である。
【0033】
ストラップが固定されるストラップ用取付部は、本発明のエアバッグ装置の一部であっても良いし、本発明のエアバッグ装置の近傍に配置される車両構成部品や車両内装品等であっても良い。例えば本発明のエアバッグ装置がステアリングホイールに搭載される場合であれば、ストラップはステアリングホイールに固定されても良いし、本発明のエアバッグをステアリングホイールに取り付けるための基体に固定されても良い。または、エアバッグ自体に固定されても良い。これらの各場合において、ステアリングホイール、基体、またはエアバッグがストラップ用取付部となる。
【0034】
ストラップは、固定材によりストラップ用取付部に固定される。固定材は、ストラップとストラップ用取付部との位置関係や、これらの材料、これらの形状等に応じて適宜適切な材料や形状のものを選択すれば良い。例えば、ストラップ用取付部がエアバッグである場合には、固定材はストラップをエアバッグに縫い止める縫製糸状をなすのが好適である。この場合、さらに、発熱部の熱により当該縫製糸状をなす固定材を破断させる場合には、当該固定材は熱により破断し易い材料、例えば熱可塑性樹脂製の縫製糸であるのが特に好適である。なお、本明細書における縫製糸とは縫製に用い得る糸をいい、その材料、紡績方法、繊維長等を限定するものではない。
【0035】
なお、本発明における固定材は上記の縫製糸に限定されない。つまり固定材は、紐状やテープ状等のその他の形状をなしても良いし、エアバッグ以外のストラップ用取付部に、縫い止められる以外の方法で固定されるものであっても良い。例えば固定材はテープ状をなし、ストラップと、ストラップ用取付部としてのエアバッグとに溶着または接着されても良い。または、固定材は、ストラップと一体に形成された細紐であっても良く、ストラップ用取付部としてのエアバッグに溶着または接着されても良いし、基体やステアリングホイールに締結されても良い。何れの場合にも、固定材はストラップよりも破断されやすい形状、例えば、細い、薄い、疎である等の形状であるのが特に好適である。
【0036】
ストラップは、エアバッグの外部に固定されても良いし、エアバッグの内部に固定されても良い。
【0037】
破断装置は、発熱装置を必須とし、さらにキャップを含むのが好適である。このうち発熱装置としては、発熱部を有する所謂点火装置であり、スクイブ、イニシエータ、イグナイタ等とも称されるものが好適である。一般的なスクイブでは、フィラメントを含む発熱部が通電により発熱するが、本発明のエアバッグ装置においては発熱部が発熱する作用機序はこれに限定されない。
なお、発熱部の発熱温度は固定材を破断させ得る程度であれば良く、例えば固定材が熱可塑性樹脂製であれば、当該熱可塑性樹脂の軟化温度以上であれば良い。
【0038】
破断装置は、エアバッグの内部に配置されても良いし、エアバッグの外部に配置されても良い。勿論、破断装置の一部がエアバッグの内部に配置され残部がエアバッグの外部に配置されても良い。
【0039】
本発明のエアバッグ装置は、破断装置として、上記の発熱装置の他にキャップを具備し得る。キャップは、発熱装置の発熱部を取り囲む筒部を有する。
発熱装置は固定材を破断させるものであるため、当該キャップは、当該発熱装置を破断対象である固定材の周囲に固定する。当該キャップの筒部は固定材に向けて開口する。
【0040】
上記のキャップによって発熱装置を固定材の周囲に固定することで、発熱装置を当該固定材に対して位置決めすることができる。これにより、発熱部が生じる熱は、固定材から逸れず当該固定材に信頼性高く供給される。
【0041】
また、筒部が発熱部を取り囲みかつ固定材に向けて開口することで、発熱部から当該固定材に至る熱の伝達経路の少なくとも一部が、外界すなわち筒部の外部から区画される。これにより、発熱部の生じた熱は外界に逃され難く、十分な量で固定材に供給される。
よって、上記のキャップを有する破断装置によると、発熱部によって固定材を十分に信頼性高く破断させることが可能であり、ストラップ用取付部に対するストラップの固定を解いて当該ストラップを信頼性高く自由状態にすることが可能である。
【0042】
キャップは、上記の発熱装置を固定材の周囲に固定する機能を有し、且つ、発熱装置の発熱部を取り囲み固定材に向けて開口する筒部を有する。以下、キャップのうち発熱装置を固定材の周囲に固定する部分を、必要に応じて発熱装置固定部と称する場合がある。
【0043】
固定材に対する発熱装置の位置は、発熱装置の発熱部が生じた熱により固定材を破断し得る位置であれば良く、特に限定されない。発熱部と固定材との距離もまた、発熱部が生じた熱により固定材を破断し得る距離であれば良く、発熱部が生じる熱エネルギの大きさや固定材の材料や形状等に応じて適宜適切に設定すれば良い。
【0044】
発熱装置固定部は、如何なる方法で発熱装置を固定材の周囲に固定しても良い。例えば、本発明のエアバッグ装置がステアリングホイールに搭載される場合であれば、発熱装置固定部は、ステアリングホイールに直接固定されても良いし、本発明のエアバッグをステアリングホイールに取り付けるための基体に固定されても良い。発熱装置固定部はこれに限らずその他の相手材に固定されても良い。発熱装置固定部を相手材に固定する方法としては、例えば、ボルト固定、接着、溶着、ピン等の係合部材を用いた係合等を挙げ得るが、これに限定されない。
【0045】
筒部は、発熱装置の発熱部を取り囲むことができる筒状をなせば良く、例えば円筒状であっても良いし角筒状であっても良い。発熱部が生じた熱を損失少なく固定材に伝達するためには、発熱部から筒壁までの距離は一定であるのが好ましく、その点において筒部は円筒状をなすのが好適である。
【0046】
筒部の筒高さは、当該筒部の周方向に一定であっても良いし、周方向の一部において他の部分と異なっていても良い。筒部は、その周方向の一部に、他の部分に比べて筒高さの低い部分を有するのが好適である。当該筒高さの低い部分を切り欠き部と称し、他の部分を一般部と称する場合がある。
【0047】
筒部が切り欠き部と一般部とを有する場合、筒部の外観が部分的に異なることから、キャップと発熱装置とを互いに組付ける際に、両者の取り付け位置を容易に位置決めできる利点がある。
【0048】
また、例えば、筒部のうちエアバッグ側の部分を切り欠き部とする場合には、エアバッグが展開および膨張した場合にも筒部がエアバッグに接触しないか、または筒部のうちエアバッグに接触する部分が小さくて済む。これにより、エアバッグの展開および膨張時における筒部とエアバッグとの干渉を抑制できる利点がある。
【0049】
エアバッグの展開および膨張時に筒部がエアバッグと接触することを考慮すると、切り欠き部と一般部とは滑らかに連続するのが好適である。例えば当該切り欠き部は、切り欠き部のうち最も筒高さの低い部分である切欠き底部から、切り欠き部のうち一般部に連続する部分である切欠き頂部に向けて徐々に筒高さが増大する傾斜壁状をなすのが特に好適である。
【0050】
本発明のエアバッグ装置は、エアバッグに膨張流体を供給するための膨張流体発生源を含み得る。
膨張流体発生源は、膨張流体としてガスを発生する所謂インフレータを用いるのが好適であるが、場合によっては、ガス以外の膨張流体、例えば液体やゲル等を発生するものであっても良い。
【0051】
膨張流体発生源は、膨張流体をエアバッグに供給するための装置であれば良く、例えば、膨張流体としてのガスを発生するガス発生剤を有する所謂パイロタイプのものであっても良いし、高圧容器の隔壁を破断させ当該高圧容器に収容されたガスを供給する所謂ハイブリッドタイプのものであっても良い。膨張流体発生源は、その全体がエアバッグの外部に配置されていても良いし、一部または全体がエアバッグの内部に配置されても良い。
【0052】
本発明のエアバッグ装置は、その他の構成部材を具備し得る。当該その他の構成部材としては、例えば、膨張流体発生源の少なくとも一部を収容するリテーナや、エアバッグの少なくとも一部を取り囲むカバー、膨張流体発生源とエアバッグ制御装置とを電気的に接続するためのワイヤハーネス等が例示されるが、本発明のエアバッグ装置はこれに限定されずその他の構成部材を具備しても良い。
【0053】
ここで、上記の膨張流体発生源は、膨張流体を発生させるための発熱装置を有しても良い。当該発熱装置は、上記した破断装置の発熱装置とは別途設けられる。以下、必要に応じて、膨張流体発生源の発熱装置を膨張流体発生用発熱装置、膨張流体用スクイブ等と称する場合がある。
膨張流体発生用発熱装置は、破断装置の発熱装置と同じ構造を有するものであっても構わない。
【0054】
破断装置の発熱装置は、膨張流体の発生には関与しない。また、膨張流体発生源が生じた膨張流体が、破断装置の発熱装置に浴びせられると、破断装置の発熱装置が生じる熱の損失が生じる虞がある。このため、本発明のエアバッグ装置においては、破断装置の発熱装置を、上記の膨張流体発生源から隔離するのが好適である。具体的には、本発明のエアバッグ装置は、破断装置の発熱装置と上記の膨張流体発生源との間に立壁を有するのが好適である。
【0055】
立壁の高さは、特に限定しないが、膨張流体発生源におけるオリフィス等のガス吹出口を覆い得る高さであるのが好適である。なお、立壁が少しでもあれば膨張流体発生源から破断装置の発熱装置に至るガスの流路が阻害される効果がある。
【0056】
以下、具体例を挙げて本発明のエアバッグ装置を説明する。
【0057】
(実施例1)
実施例1のエアバッグ装置は、車両のステアリングホイールに搭載される運転席エアバッグである。
実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグが展開および膨張している様子を模式的に説明する説明図を図1および図2に示す。なお、図1図2とは各々実施例1のエアバッグ装置を異なる位置で切断した様子を表す。図1の要部拡大図を図3に示す。実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグ、フラップ、ストラップ、膨張流体発生源およびケースのユニットを模式的に説明する説明図を図4に示す。実施例1のエアバッグ装置におけるキャップを模式的に説明する説明図を図5に示す。実施例1のエアバッグ装置におけるフラップ、ストラップおよび固定材をエアバッグの外側から見た様子を模式的に説明する説明図を図6に示す。実施例1のエアバッグ装置におけるエアバッグのアクティブベントホールをフラップが閉じまたは開いている様子を模式的に説明する説明図を図7図12に示す。なお、図8図7に示すアクティブベントホールおよびフラップを裏側から見た様子を表す。図10図9に示すアクティブベントホールおよびフラップを裏側から見た様子を表す。図12図11に示すアクティブベントホールおよびフラップを裏側から見た様子を表す。
【0058】
図1に示すように、実施例1のエアバッグ装置1は、エアバッグ2、膨張流体発生源3、フラップ4、ストラップ5、固定材50、破断装置6、ケース7および基体8を具備する。
【0059】
実施例1のエアバッグ装置1における膨張流体発生源は、膨張流体としてのガスを発生するインフレータ3であり、ガス発生を開始させるための膨張流体発生用スクイブ(図略)を含む。インフレータ3はガスを吹き出すためのガス吹出口31を有し、膨張流体発生用スクイブは、エアバッグ2を展開および膨張させるための図略の制御装置に接続され、電力の供給を受けて動作する。
【0060】
エアバッグ2は中空の袋状をなし、上記したインフレータ3のガス吹出口31はエアバッグ2の開口部20に接続されエアバッグ2の内部にガスすなわち膨張流体を供給可能である。
【0061】
図7図8に示すように、エアバッグ2には複数のベントホール21が設けられている。各ベントホール21はエアバッグ2の内外を連絡する略真円の開口状をなす。
【0062】
ベントホール21の一つをアクティブベントホール21Aと称する。その他のベントホール21を一般ベントホール21Gと称する。後述するように、アクティブベントホール21Aは、閉位置にあるフラップ4によって覆われ、閉じられる。一般ベントホール21Gは常に開放されている。
【0063】
エアバッグ2のうち当該アクティブベントホール21の周囲にはフラップ4が縫い付けられている。
フラップ4は、エアバッグ2と同じナイロン製の布帛からなり、略正三角形状をなす。フラップ4をエアバッグ2に縫い付けている縫製糸45もまたナイロン製である。
【0064】
図8に示すように、略三角形状をなすフラップ4の一辺がベントホール21の周囲においてエアバッグ2の内面側に直線的に縫い付けられ、当該辺に向かい合う角からストラップ5が延びている。
【0065】
ストラップ5はエアバッグ2およびフラップ4と同じナイロン製の布帛からなり、細い帯状をなす。ストラップ5の一端はフラップ4と一体であり、ストラップ5の他端はエアバッグ2の内部に縫い付けられ、固定されている。これにより、フラップ4はエアバッグ2の内部においてアクティブベントホール21Aを覆い、ベントホール21を閉じる閉位置(図7図8)に位置固定されている。実施例1のエアバッグ装置1において、エアバッグ2自体がストラップ用取付部である。また、ストラップ5をエアバッグ2に縫い付けた縫製糸が固定材50である。固定材50はナイロン製の糸からなる。
【0066】
図6に示すように、固定材50はエアバッグ2とストラップ5を貫通するように、これらを縫い合わせている。したがって、固定材50の一部はエアバッグ2の内側に露出し、他の一部はエアバッグ2の外側に露出する。
【0067】
破断装置6は、発熱装置60およびキャップ61を有し、エアバッグ2の外部に配置されている。発熱装置60はスクイブである。
図3に示すように、発熱装置60は発熱部60Hを有し、図略の電源および上記した図略の制御装置に接続されている。なお、発熱装置60は上記した膨張流体発生用スクイブとは別のものである。
【0068】
発熱装置60はキャップ61に取り付けられている。
図5に示すように、キャップ61は、発熱装置固定部62と後述する筒部65とを有する。発熱装置固定部62は、実施例1のエアバッグ装置1をステアリングホイール90に取り付けるための基体8に嵌合する。これにより発熱装置60は、キャップ61を介して、発熱部60Hを固定材50に向けつつ当該固定材50の周囲に固定される。
【0069】
キャップ61の筒部65は、断面略真円の円筒状をなす。筒部65は、発熱装置60の周囲を取り囲みつつ固定材50に向けて延び、固定材50に向けて開口する。発熱装置60の発熱部60Hもまた筒部65に取り囲まれている。図1図3に示すように、実施例1のエアバッグ装置1において、筒部65の筒高さは、筒部65の周方向に一定である。
【0070】
上記したエアバッグ2、フラップ4、ストラップ5および膨張流体発生源3は、ケース7に組付けられてユニット化されている(図4)。ケース7はパッド7Uおよびバッグプレート7Lを有している。膨張流体発生源3はバッグプレート7L側に配置され、エアバッグ2はパッド7U側に配置されている。フラップ4およびストラップ5はエアバッグ2の内部に配置されている。これにより、エアバッグ2、フラップ4、ストラップ5および膨張流体発生源3はパッド7Uおよびバッグプレート7Lで挟まれている。ケース7は基体8に固定されている。
【0071】
基体8には、パッド7U側に延びる立壁70が設けられている。当該立壁70は、インフレータ3のオリフィス35を覆う高さであり、図3に示すように、発熱装置60とインフレータ3との間に介在している。
【0072】
以下、実施例1のエアバッグ装置1の動作を説明する。
【0073】
実施例1のエアバッグ装置1を搭載した車両に衝突等による衝撃が作用すると、図略の制御装置により図略の膨張流体発生用スクイブが動作し、インフレータ3が膨張流体たるガスを生じる。インフレータ3が生じたガスは、エアバッグ2の内部に供給される。これによりエアバッグ2が展開および膨張する。このとき、フラップ4は閉位置にありエアバッグ2のアクティブベントホール21Aはフラップ4により覆われた状態である(図7図8)。
【0074】
エアバッグ2が展開および膨張した直後に、制御装置は破断装置6の発熱装置60を動作させる。これにより当該発熱装置60の発熱部60Hが発熱する。
発熱装置60が発した熱は筒部65の内部を通じてエアバッグ2の外側、すなわち裏側から固定材50に供給される。これにより固定材50が熱せられる。固定材50は熱可塑性樹脂であるナイロン製であるために、加熱されて破断する。
ここで、既述したように、縫製糸すなわち固定材50はエアバッグ2とストラップ5を貫通するようにこれらを縫い合わせ、その一部はエアバッグ2の外側に露出している。したがって、エアバッグ2の外側にある固定材50を熱により破断することで、ストラップ5が開放され自由状態になる。
なお実施例のエアバッグ装置1では、乗員がエアバッグ2に衝突するタイミングで発熱装置60が熱を生じ固定材50が破断されるように設定されている。
【0075】
展開前、すなわちエアバッグ2が折り畳まれている際には、フラップ4はストラップ5により閉位置に固定されている。エアバッグ2の展開および膨張時においても引き続き、フラップ4はストラップ5により閉位置に固定されている。固定材50が破断すると、ストラップ5が自由状態となり、その結果、フラップ4が自由状態になる。
【0076】
このときインフレータ3が生じたガスはエアバッグ2の内部に供給され続けているため、エアバッグ2の内部から外部に向けたガス圧によって、フラップ4はエアバッグ2の外部に向けて押圧され、アクティブベントホール21Aを閉じる開位置からアクティブベントホール21Aを開く開位置に向けて位置変化を開始する(図9図10)。フラップ4およびこれに連続するストラップ5の残部がアクティブベントホール21Aを通じてエアバッグ2の外側に出ると、アクティブベントホール21Aが開かれる(図11図12)。このときフラップ4はアクティブベントホール21Aを開く開位置に配置されるといい得る。
【0077】
フラップ4がアクティブベントホール21Aを開くと、エアバッグ2内のガスが当該アクティブベントホール21Aを通じてエアバッグ2の外部に流出可能になる。これにより、エアバッグ2内部のガス圧は十分に低下し、エアバッグ2に因り乗員に負荷される反力もまた十分に低減する。
【0078】
実施例1のエアバッグ装置1によると、発熱装置60によって破断対象である固定材50を加熱し破断するために、破断装置6の構造は単純であり、かつ、当該破断装置6の動作機序もまた単純である。
【0079】
そして、破断装置6のキャップ61が発熱装置60を固定材50に対して位置決めするとともに、発熱装置60の発熱部60Hが生じた熱を十分な量で固定材50に供給する。これにより、実施例のエアバッグ装置1によると、発熱装置60の発熱部60Hによって固定材50を十分に信頼性高く破断して、ストラップ5を十分に信頼性高く自由状態にし得る。
【0080】
さらに、実施例1のエアバッグ装置1は、破断装置6の発熱装置60とインフレータ3のオリフィス35との間に立壁70を有する。これにより、インフレータ3から発熱装置60に至るガスの流路を阻害する。これにより、当該ガスに因る発熱装置60の発熱が阻害される不具合が回避され、発熱装置60の発熱部60Hは迅速に且つ充分な温度に昇温する。これにより、実施例1のエアバッグ装置1によると、望み通りのタイミングで発熱装置60によって固定材50を加熱し破断することでストラップ5を自由状態とすることが可能であり、ひいては、望み通りのタイミングでアクティブベントホール21Aを開くことが可能である。
【0081】
(実施例2)
実施例2のエアバッグ装置1は、キャップ61における筒部65の形状以外は実施例1のエアバッグ装置1と概略同じものである。
実施例2のエアバッグ装置1におけるキャップ61を模式的に説明する説明図を図13に示す。実施例2のエアバッグ装置1におけるエアバッグ2が展開および膨張している様子を模式的に説明する説明図を図14に示す。
【0082】
図13に示すように、実施例2のエアバッグ装置1におけるキャップ61は、筒部65の形状において、実施例1のエアバッグ装置1におけるキャップ61とは異なる。
具体的には、当該キャップ61の筒部65は断面略真円の円筒状をなす。
当該筒部65は、一般部66と切り欠き部67とを有する。一般部66は、筒部65における周方向の一部であって、筒高さが略一定である部分である。切り欠き部67は、筒部65における周方向の残部であって、筒高さが一般部66よりも低い部分である。
【0083】
切り欠き部67は側面視略V字の傾斜壁状をなす。
より具体的には、筒部65の筒高さは、切り欠き部67のうち最も筒高さの低い部分である切欠き底部67Bから、同じく切り欠き部67のうち上記した一般部66に連続する部分である切欠き頂部67Tに向けて、徐々に増大する。
【0084】
筒部65が切り欠き部67を有することにより、実施例1のエアバッグ装置1を製造する際に、発熱装置60とキャップ61とを組付ける作業者は、筒部65の向きを視覚的にかつ容易に認識することができる。これにより、発熱装置60とキャップ61とを互いに正しい向きで組付ける作業が容易になり、発熱装置60とキャップ61との位置決めを容易且つ精密に行なうことが可能である。
【0085】
また、図13に示すように、傾斜壁状をなす切り欠き部67を筒部65に設けることで、図14に示すように、展開および膨張したエアバッグ2に筒部65が干渉し難い。これにより、エアバッグ2の展開および膨張と、発熱装置60による固定材50の破断とを円滑に行い得る利点がある。
【0086】
(実施例3)
実施例3のエアバッグ装置1は、固定材50の形状および位置、ならびに、ストラップ5とエアバッグ2との関係以外は実施例1のエアバッグ装置1と概略同じものである。
実施例3のエアバッグ装置におけるフラップ4、ストラップ5および固定材50をエアバッグ2の外側から見た様子を模式的に説明する説明図を図15に示す。
【0087】
図15に示すように、実施例3のエアバッグ装置1におけるストラップ5は、実施例1のエアバッグ装置1におけるストラップ5と同様に、細い帯状をなし、その一端はフラップ4と一体である。実施例3のエアバッグ装置1におけるエアバッグ20には貫通孔が設けられており、ストラップ5の他端はエアバッグ2の貫通孔を通じてエアバッグ2の外側に露出している。
【0088】
固定材50は接着テープであり、ストラップ5のうちエアバッグ2の外側に露出している部分をエアバッグ2に貼り付けている。これにより、上記したストラップ5の他端はエアバッグ2の外側に固定されている。
【0089】
実施例3のエアバッグ装置1においても、実施例1のエアバッグ装置1と同様に、発熱装置60が発した熱は筒部65の内部を通じてエアバッグ2の外側に供給される。
【0090】
実施例3のエアバッグ装置1においては、固定材50はエアバッグ2の外側に配置されているために、発熱装置60が発した熱は固定材50に直接供給され、固定材50を熱する。固定材50は熱可塑性樹脂製であるために加熱されて破断する。このためストラップ5が開放されて自由状態となり、さらにフラップ4が自由状態になる。その結果、フラップ4が図略のアクティブベントホール21Aを開き、エアバッグ2内部のガス圧が十分に低下し、エアバッグ2に因り乗員に負荷される反力もまた十分に低減する。
【0091】
実施例3のエアバッグ装置1によっても、実施例1のエアバッグ装置1と同様に、発熱装置60によって破断対象である固定材50を加熱し破断する。このため破断装置6の構造を単純化でき、かつ、当該破断装置6の動作機序をも単純化できる。
【0092】
〔評価試験〕
実施例1の発熱装置60およびキャップ61の一体品(すなわち、実施例1の破断装置)と、当該破断装置に含まれる発熱装置60単体と、につき、固定材50に相当する位置において、発熱装置60に点火した時点からの温度の推移をシミュレーションにより演算した。その結果を図16に示す。なお、図16中の縦軸は温度(℃)を、横軸は点火時点(0ミリ秒)からの経過時間(ミリ秒)を表す。また、図16に示されるグラフにおける点火時点から3ミリ秒までの熱力積を図17に示す。
【0093】
発熱装置60単体によると、図16に示すように点火直後の温度は高くなるものの、その後急激に温度低下し、図17に示すように3ミリ秒までの熱力積は低い値を示す。上記した急激な温度低下は、発熱装置60の点火により発熱部60Hで生じた熱が発熱装置60の筐体に吸熱されたことに因るものと推測される。
【0094】
一方、実施例1の破断装置によると、図16に示すように点火直後の温度は比較的低いものの、その後の温度低下は僅かであり、図17に示すように3ミリ秒までの熱力積は高い値を示す。実施例1の破断装置において点火後の温度低下が僅かであった理由は定かではないが、発熱装置60の発熱部60Hがキャップ61の筒部65で取り囲まれていることに因ると推測される。つまり、実施例1の破断装置においては、発熱装置60の点火により発熱部60Hで生じた熱は、筒部65の内部にとどめられ、当該筒部65の外部に拡散され難いと推測される。
この結果から、実施例1の破断装置によると固定材50に充分な量の熱を与えることができ、固定材50を効率よく加熱し破断させることが可能であることがわかる。
【0095】
キャップ61を含まない発熱装置60単体は、点火後0.68ミリ秒で点火剤を噴出し終わった。発熱装置60は剥き出しになっているために、当該発熱装置60が生じた熱は生じた直後に外界に拡散したと考えられる。
【0096】
これに対して、キャップ61と発熱装置60とを含む実施例1の破断装置においては、発熱装置60が生じた熱は、点火後3.0ミリ秒以上に亘って筒部65に滞留したと考えられる。換言すると、発熱装置60が生じた熱は筒部65に蓄積されたと考えられる。これにより、実施例1のエアバッグ装置1によると、発熱装置60が生じた熱を効率よく利用でき、加熱対象たる固定材50に充分な量の熱を与えることができることが裏付けられる。
【0097】
以上本発明を説明してきたが、本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、当該実施形態等に記載した要素を適宜抽出し組み合わせて実施することや、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
また、本発明の明細書は、出願当初における各請求項の引用関係に止まらず各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0098】
1:エアバッグ装置 2:エアバッグ
21:ベントホール 3:膨張流体発生源(インフレータ)
4:フラップ 5:ストラップ
50:固定材 2:ストラップ用取付部(エアバッグ)
60:発熱装置 60H:発熱部
61:キャップ 65:筒部
66:一般部 67:切り欠き部
67B:切欠き底部 67T:切欠き頂部
70:立壁
図1
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図3
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図5
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