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特開2024-132714保全支援装置、保全支援方法及び保全支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132714
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】保全支援装置、保全支援方法及び保全支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20240920BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240920BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240920BHJP
【FI】
G21C17/00 600
G06Q50/06
G06Q10/20
G21C17/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043606
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】樫又 恒一
(72)【発明者】
【氏名】大野 茂樹
【テーマコード(参考)】
2G075
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA17
2G075BA18
2G075EA09
2G075FC18
2G075GA35
5L049CC06
5L049CC15
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】原子力プラントの保全作業により発生する物理構成の一時変更中において、原子力プラントの健全性を担保する保全計画を提供する。
【解決手段】本発明の保全支援装置1は、原子力プラントの保全計画を構成する作業管理単位及び前記作業管理単位に付与された安全・ハザード管理情報と系統運用情報と法令・規制情報の少なくともいずれかを入力として工程の作成及び/または最適化を行う工程最適化部111、を備えるようにした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの保全計画を構成する作業管理単位及び前記作業管理単位に付与された安全・ハザード管理情報と系統運用情報と法令・規制情報の少なくともいずれかを入力として工程の作成及び/または最適化を行う工程最適化部、
を備えることを特徴とする保全支援装置。
【請求項2】
並行する作業の制約を計算する並行作業制約算出部を更に備え、
前記工程最適化部は、前記並行作業制約算出部が算出した作業の制約の下で、前記作業管理単位及び前記作業管理単位に付与された安全・ハザード管理情報と系統運用情報と法令・規制情報の少なくともいずれを用いて工程を作成及び/または最適化を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項3】
前記作業管理単位に付与された安全・ハザード管理情報は、各系統の隔離範囲情報、系統の隔離ステップ情報、隔離情報に基づく機能維持機器の配置情報、ハザード区域情報、機能維持機器の各ハザードバンウダリー構成情報、火災区域エリアの許容火災荷重情報、溢水区域エリアの許容床面積(体積)情報、持込物品の火災荷重情報、持込物品の床占有面積(体積)情報、ハザードバウンダリーの崩壊情報を含む発電所の安全に係る維持すべき機能情報と前記機能情報の管理情報、維持すべきハザードバリア・ハザードバウンダリー情報とハザードバリア・ハザードバウンダリー管理情報である
ことを特徴とする請求項2に記載の保全支援装置。
【請求項4】
前記作業管理単位に付与された安全・ハザード管理情報には、作業の実施に伴う設備の物理構成の一時的な変更情報、または、一時的な変更対象となる設備の構成情報または設計要求情報が格納される
ことを特徴とする請求項2に記載の保全支援装置。
【請求項5】
前記工程最適化部は、各定期点検における作業管理単位と、ライフサイクルマネジメントに係る保全計画の作業管理単位それぞれに安全・ハザード管理情報、系統運用情報、または法令・規制情報を付与する、
ことを特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項6】
前記工程最適化部は、各作業に係る工程の期間、各作業のコスト、各作業に要するリソースを考慮して、原子力プラントの信頼性を担保する制約条件の下で、前記作業管理単位及び前記作業管理単位に付与された安全・ハザード管理情報、系統運用情報、または法令・規制情報を用いて工程を最適化する、
ことを特徴とする請求項5に記載の保全支援装置。
【請求項7】
前記工程最適化部は、クリティカル作業管理単位について工程最適化計算をするとともに、求めたクリティカル作業管理単位を制約条件として、ノンクリティカル作業管理単位について最適化計算を行い、全体工程の成立性を確認する
ことを特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項8】
前記工程最適化部は、最適化計算により作成されたクリティカル工程の期間情報を制約条件として新たなクリティカル作業管理単位が発生することがなく、かつ、定検期間とコスト係数の調整がない場合に、クリティカル作業管理単位を決定する
ことを特徴とする請求項7に記載の保全支援装置。
【請求項9】
最適化計算結果に基づいて工程の更なる最適化のための改善項目検討の支援を行う工程改善支援部を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項10】
前記工程改善支援部は、
選択された工程の工程最適化結果の感度解析により、工程に与える影響の大きい変化率の高い制約条件項目を改善項目またはリスク情報としてピックアップし、
制約条件のトレードオフ情報を利用し、作業管理単位の制約条件を変更した場合の工程へのインパクトを分析する
ことを特徴とする請求項9に記載の保全支援装置。
【請求項11】
前記工程最適化部は、各定期点検または定期点検工程におけるリソースの動員能力とその期間情報より、リソース負荷の平準化機能を持つ
ことを特徴とする請求項1に記載の保全支援装置。
【請求項12】
原子力プラントの保全計画を構成する作業管理単位に、当該作業管理単位に対応する安全・ハザード管理情報と系統運用情報と法令・規制情報の少なくともいずれかを付与するステップと、
前記作業管理単位及び前記作業管理単位に付与された安全・ハザード管理情報と系統運用情報と法令・規制情報の少なくともいずれかを入力として工程を最適化するステップと、
を備えることを特徴とする保全支援方法。
【請求項13】
コンピュータに、
原子力プラントの保全計画を構成する作業管理単位に、当該作業管理単位に対応する安全・ハザード管理情報と系統運用情報と法令・規制情報の少なくともいずれかを付与する手順と、
前記作業管理単位及び前記作業管理単位に付与された安全・ハザード管理情報と系統運用情報と法令・規制情報の少なくともいずれかを入力として工程を最適化する手順と、
を実行させるための保全支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラントにおける長期点検計画を支援する保全支援装置、保全支援方法及び保全支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、定期点検(定検)において原子炉が停止され、原子力発電所の各設備の点検・部品交換/修理(本明細書では以降まとめて「保全」とする)や改造工事を行っている。この定期点検は、所定期間内に実施するために、定検工程計画に基づいて行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、入力部から入力された定検期間中の実施作業情報と、点検機器データと、保安規定データと、過去定検工程実績データとを格納するデータベースと、データベースに格納された定検期間中の実施作業情報のうち、クリティカル工程に係わる基本情報から過去定検工程実績データを参照してクリティカル工程に係わる主要工程からなる主要工程表を自動生成するとともに、クリティカル工程以外の複数の点検機器に関する実施作業情報から当該点検機器についての点検工程の実施時期を決める順序を決定する定検工程作成手順作成機能部と、順序に従って、点検機器についての点検工程の実施時期を決める際に、主要工程表に割り当て可能な時期を表示する工程表作成機能部とを具備し、熟練技術者でなくとも、発電プラントの安全性を踏まえた定検工程計画の作成を可能とする定期検査工程の作成支援装置が開示されている。
【0004】
近年、原子力発電所では、各設備・機器が設計要求のとおり製作・設置され、運転・維持(保全)されていることを常に確認、保証するために、設計要件、設計構成情報、物理構成の3要素の整合性維持及び管理を行う、Configuration Management(CM:コンフィグレーション管理)という取り組みが、事業者の管理において求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-135144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原子力発電所では、保全作業により実際の構築物・設備、系統及び機器の物理構成が一時的に変更される場合がある。このような原子力発電所の物理構成の一時変更中において、安全確保のため、各保全作業が原子力発電所の健全性を担保するためのパラメータ(制約条件)にどのような影響を与えているかを含めてCMを行うことが望ましい。
【0007】
しかし、様々な作業が並行して行われる定期点検時において、これらの情報を手作業で集約して管理することは困難であり、原子力発電所の健全性への影響を把握しにくい。特許文献1の定期検査工程の作成支援装置も、これらの情報を考慮していない。
【0008】
また、プラント停止期間においても、地震、津波、竜巻、噴火などよる外的事象や溢水、火災などの内的事象が想定される。これらハザード事象による波及的効果の影響を最小化し、プラントの安全確保、かつ設備を保護するためには機能維持範囲のハザードバウンダリー状況と共に、機能喪失範囲のハザードバウンダリー情報を常に把握し、状況に応じて適切な処置を講じなければならない。定期点検時は多くの作業が多数のエリアで同時並行に進捗しているために、ハザードバリアの運用状況を管理責任者が網羅的に把握できないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は原子力発電所等の原子力プラントの保全作業により発生する物理構成の一時変更中において、原子力プラントの健全性を担保すること、及び作業の実施における安全・ハザード管理等の制約条件をクリアする工程を計画する保全支援装置、保全支援方法及び保全支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の保全支援装置は、原子力プラントの保全計画を構成する作業管理単位及び前記作業管理単位に付与された安全・ハザード管理情報と系統運用情報と法令・規制情報の少なくともいずれかを入力として工程の作成及び/または最適化を行う工程最適化部、を備えるようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子力プラントの保全作業により発生する物理構成の一時変更中において、原子力プラントの健全性を担保する保全計画を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る保全支援装置の機能ブロック図である。
図2】保全支援装置の物理構成を示す図である。
図3】並行作業制約の算出方法を示す図である。
図4】並行作業制約の解消方法を示す図である。
図5】保全支援処理のフローチャートである。
図6】工程最適化処理のフローチャートである。
図7】作業ステップとリソース情報表示例を示す図である。
図8】作業管理単位をパターン化したテーブルである。
図9】工程解析結果であるパレート解を表示する画面を示す図である。
図10】工程進捗管理支援処理のフローチャートである。
図11】クリティカル作業管理単位と制約と影響先を示す画面を示す図である。
図12】サブクリティカル作業管理単位と制約と影響先を示す画面を示す図である。
図13】保全支援装置の他の物理構成を示す図である。
図14】改善項目検討支援処理のフローチャートである。
図15】最適化後の工程を表示する出力画面を示す図である。
図16】シミュレーション結果を表示する出力画面を示す図である。
図17】リソース負荷平準化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施形態の保全支援装置、保全支援方法及び保全支援プログラムは、原子力発電所の作業管理単位と、原子力発電所の安全・ハザード管理情報、系統運用情報、法令・規制情報とを紐付けて管理する。そして、作業管理単位の実施時に発生する物理構成の一時変更情報を、作業管理単位に付与することにより、作業中の原子力発電所の健全性を担保した作業計画の作成と実施を支援する。
【0014】
図1は、実施形態に係る保全支援装置1の機能ブロック図である。
保全支援装置1は、工程最適化部111と並行作業制約算出部112を含む処理部11と、制約条件記憶部121と、最適化計算結果記憶部122とを備え、各保全作業が原子力発電所の健全性を担保するためのパラメータ(制約条件)にどのような影響を与えているかを含め管理を行う。
【0015】
保全支援装置1は、安全・ハザード管理情報データベース22、系統運用データベース25、法令・規制データベース26と作業管理単位データベース21の情報が入力され、作業進捗管理情報32と最適化作業計画33とを算出して、ユーザの工程管理システム61または工程管理データベース62に出力する。また、最適化作業計画33は、最適化計算結果記憶部122に記憶される。
【0016】
安全・ハザード管理情報データベース22は、原子力発電所の安全管理及びハザード管理情報が格納されるデータベースである。安全・ハザード管理情報データベース22には、作業管理単位に対して付与される安全管理及びハザード管理情報が格納される。
【0017】
詳しくは、安全・ハザード管理情報データベース22に格納される情報は、各系統の隔離範囲情報、系統の隔離ステップ情報、隔離情報に基づく機能維持機器の配置情報、ハザード区域情報、機能維持機器の各ハザードバンウダリー構成情報、火災区域エリアの許容火災荷重情報、溢水区域エリアの許容床面積(体積)情報、持込物品の火災荷重情報、持込物品の床占有面積(体積)情報、ハザードバウンダリーの崩壊情報を含む発電所の安全に係る維持すべき機能情報と前記機能管理情報、維持すべきハザードバリア・ハザードバウンダリー情報とハザードバリア・ハザードバウンダリー管理情報である。
【0018】
更に、安全・ハザード管理情報データベース22には、作業の実施に伴う設備の物理構成の一時的な変更情報、または、一時的な変更対象となる設備の構成情報または設計要求情報が格納される。
【0019】
作業管理単位データベース21は、原子力発電所の作業管理単位の情報が格納されるデータベースである。
作業管理単位データベース21に格納される情報は、作業管理単位ID、作業の実施周期または実施トリガ、作業エリア情報、対象設備情報、作業開始可能条件情報、作業完了条件情報、作業に必要なリソース、天井クレーンなど作業エリア内の共用設備を使用する作業ステップ情報、大物搬入口などの共用施設を使用する作業ステップ情報、持込物品情報を含む、作業の識別と管理に係る情報である。
【0020】
詳しくは、作業エリア情報には、作業の搬入出エリア、エリア制約条件が含まれる。
また、対象設備情報には、設備名称、設備管理番号等、点検周期、設備の要求機能、設備ステータス、物理構成の変更情報が含まれる。作業の前後関係には、ネットワークパスまたは付帯作業が含まれる。
作業に必要なリソースには、人員数、技能、作業支援機械、資材が含まれる。標準工程には、標準作業時間、作業場所、作業内容が含まれる。
【0021】
系統運用データベース25に格納される情報は定検時の運転/待機中系統情報、系統対象機器情報を含む、作業対象設備がどの系統・区分に属し、その系統運用を自動で選定できるようにするための情報である。
【0022】
法令・規制データベース26に格納される情報は法令・規制により作業の制約条件となる、保安規定等を含む情報である。
【0023】
プラント健全性データベース24は、プラントの運転時及び停止時において、それぞれ必要となる機能、稼働設備、待機設備の情報が格納されるデータベースである。
【0024】
ユーザ入力情報31は、ユーザが保全支援装置に指示する情報であり、運転サイクル期間情報、動員可能リソース情報、リソースのコスト情報、計画の目標値、計画の微調整、作業進捗情報などである。
【0025】
処理部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成され、各種演算処理を実行する。処理部11が、図2に示す保全支援プログラム123を実行することで、工程最適化部111と並行作業制約算出部112とを具現化する。
【0026】
工程最適化部111は、安全・ハザード管理情報データベース22、系統運用データベース25、法令・規制データベース26と作業管理単位データベース21の情報が入力されると、並行作業制約算出部112と協働して、作業進捗管理情報32と最適化作業計画33とを算出する。つまり、工程最適化部111は、原子力発電所の設備に対する保全計画を構成する作業管理単位及び前記作業管理単位に付与された情報を入力として工程を最適化する。
【0027】
並行作業制約算出部112は、並行する作業の制約条件を算出するものである。工程最適化部111は、並行作業制約算出部112が算出した作業の制約の下で、作業管理単位及びその作業管理単位に付与された構成管理情報を用いて工程を最適化する。
【0028】
図2は、保全支援装置1の物理構成を示す図である。
保全支援装置1は、処理部11、記憶部12、入力部13、通信部14、出力部15を備えるコンピュータであり、オンプレミス環境またはクラウド環境に設置されている。
【0029】
処理部11が保全支援プログラムを実行することで、工程最適化部111と並行作業制約算出部112とが具現化される。
記憶部12は、例えばSSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブなどの大容量記憶装置で構成され、制約条件記憶部121と、最適化計算結果記憶部122と、保全支援プログラム123を格納している。
【0030】
通信部14は、例えばネットワークインタフェースである。
入力部13は、例えばマウス・キーボード・タッチパネルなどである出力部15は、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置であり、文字・図形・画像などを表示する。出力部15と入力部13は、タッチパネルディスプレイとして構成されてもよい。
【0031】
データセンタ2は、多数のサーバ群が設置されている設備である。このデータセンタ2に設置されているサーバ群に、作業管理単位データベース21、安全・ハザード管理情報データベース22、点検実績データベース23、プラント健全性データベース24、系統運用データベース25、法令・規制データベース26が構築されている。
【0032】
保全支援装置1は、通信部14にて、ネットワークNWを介してデータセンタ2の作業管理単位データベース21、安全・ハザード管理情報データベース22、点検実績データベース23、プラント健全性データベース24、系統運用データベース25、法令・規制データベース26と通信可能である。
【0033】
点検実績データベース23には、過去の定検の実績が格納されている。他のデータベースの内容は、図1と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0034】
次に、工程の最適化を行う並行作業制約算出部112と工程最適化部111(図1図2参照)の処理を図3図4により説明する。まず、図3により、並行作業制約算出部112で処理され、並行して実施される作業Aと作業Bとで制約条件を満たさない状態を説明する。
【0035】
作業Aは、作業管理単位である工程A-1からA-3で構成される。火災荷重は、各期間にて作業Aにて生じるエリアXでの可燃物の量を示している。作業Aにて生じるエリアXでの可燃物は、原子力発電所の保全作業により発生する物理構成の一時変更に該当する。
【0036】
作業Bは、作業管理単位である工程B-1からB-3で構成される。火災荷重は、各期間にて作業Bにて生じるエリアXでの可燃物の量を示している。作業Bにて生じるエリアXでの可燃物は、原子力発電所の保全作業により発生する物理構成の一時変更に該当する。
【0037】
合計火災荷重は、エリアXでの可燃物の合計量を示している。許容火災荷重は、エリアXにて許容できる可燃物の量を示している。図3では、第4期間と第5期間にて、合計火災荷重が許容火災荷重を上回っており、制約条件を満たしていない。
【0038】
このため、工程最適化部111は、各定期点検における個別の作業管理単位(工程)の最適化において、工程の進捗よりも並行する作業の持つ制約条件を優先して最適化する。図4に、並行作業制約を解消した状態を示す。
【0039】
図4にて、作業Aの工程A-2は、第4期間と第5期間にて実施しないように修正する。これにより、第1期間から第15期間までの全てにおいて、合計火災荷重が許容火災荷重を下回り、制約条件を満たすようになる。
【0040】
図5は、保全支援処理のフローチャートである。
本フローチャートでは、ユーザの入力した計画期間、定期検査の実施タイミングとその期間、制約条件に対する相対コスト係数より、並行作業間の作業管理単位とそれに付与された安全・ハザード管理情報、系統運用情報、法令・規制情報を用いて、原子力発電所の健全性を維持した定検工程の作成と、その工程の最適化支援を行う。
【0041】
最初、ユーザが計画期間を入力する(ステップS10)。
工程最適化部111は、作業管理単位データベース21から、期間中に実行する作業管理単位の情報を抽出する(ステップS11)。
そして工程最適化部111は、安全・ハザード管理情報データベース22、系統運用データベース25、法令・規制データベース26から、これら作業管理単位に対応する少なくともいずれかの情報を抽出する(ステップS12)。
【0042】
工程最適化部111は、ステップS12で抽出した情報に係る制約条件を分類し(ステップS13)、これら制約条件の分類を一覧表示する(ステップS14)。
次に、工程最適化部111は、入力部13にてユーザの条件入力を受け付ける(ステップS15)。ユーザの条件入力の情報は、例えば、相対コスト係数、各定検の実施時期と期間、最適化の選好解、希求水準等である。
【0043】
工程最適化部111は、これら情報に基づいて工程最適化処理を実行すると(ステップS16)、最適化計算結果であるパレート解等を表示する(ステップS17)。
【0044】
次に、ステップS18にて、入力部13がユーザによる工程調整入力を受け付けると、工程最適化部111は、新たな調整入力が有るか否かを判定する(ステップS19)。工程最適化部111は、新たな調整入力が有るならば(S19のYes)、ステップS16に戻り、新たな調整入力に基づく最適化を繰り返す。工程最適化部111は、新たな調整入力が無いならば(S19のNo)、処理を終了する。
【0045】
図6は、図5のステップS16の工程最適化処理の詳細を示すフローチャートである。
【0046】
まず、工程最適化部111は、ステップS71で、作業管理単位(WO)に付与された情報、及び工程作成者によって入力された制約条件より、クリティカルとなるWOをクリティカルWOとして選定する。WO情報と作業の前後関係等の制約より各定検で最長期間となる一連のWOを装置により選定する。
そして、ステップS72で、クリティカルWOについて各種制約条件から工程最適化計算を行う。
【0047】
次に、ステップS73で、最適化計算により作成されたクリティカル工程の期間情報を制約条件とすると、ステップS71でクリティカルWOに選定されなかったWOが新たにクリティカルWOとなるかを判定する。クリティカルWOが追加される場合(S73のYes)には、ステップS71から再度実行する。この際、必要に応じ任意の時間遅延が発生することなどでクリティカルWOとなってしまうリスクを持つWOについて、クリティカルWOとして扱うか判定する。
【0048】
新たなクリティカルWOがない場合には(S73のNo)、ステップS74に進み、作成された工程最適化計算のパレート解と作成工程の点を算出して表示する。ここで作成されるパレート解と作成工程点の表示例は、図9に後記する。
【0049】
次に、ステップS75で、ステップS74の表示結果に基づくユーザによる定検期間とコスト係数の調整はあるか判定し、調整がある場合には(S75のYes)、ステップS72から再実行する。
調整がない場合には(S75のNo)、ステップS76に進み、クリティカル工程を決定する。
【0050】
そして、ステップS77で、クリティカル工程を制約条件に加え、ノンクリティカルWOの最適化計算を行う。
最後に、ステップS78で、プラント健全性データベース24を参照して全体工程の成立性を確認して全体工程を決定する。
【0051】
リソースローディングの考え方としてWOの実施時期を調整し、定検期間内の作業コストの最適化を図ることを目的とする。定検期間時の動員能力と作業の実施に必要な人員及び能力・作業機器などの必要リソース情報、コスト情報、運転サイクル情報より作業管理単位及び図中の作業ステップ単位で必要なリソースを適切に割り当て、定検期間中の動員リソース全体に対して作業の最適化計画を行う。詳細は後述する。
【0052】
必要であれば、図7のように、作業間単位または作業ステップに対して作業資格や技能のトレーニング実施履歴などの情報をリソース割り当ての制約条件として設定する。また、法令等制約があれば逸脱の内容制約条件を設定する。
【0053】
図8は、作業管理単位をパターン化したテーブルである。このテーブルは、ライフサイクルマネジメントに係る保全計画を立案するためのものである。数物設備に対し物量・コスト・リソース・必要期間ごとに点検の作業管理単位をパターン化する。そして、工程最適化部111は、数物設備の点検実施条件(数物設備の保全周期)を満たすように、プラントライフサイクルにおける設備の保全計画を構成する作業管理単位のパターンを作成し、最適なパターンを選択する。
【0054】
具体的には、図8のテーブルは、点検本数が20本の場合、コストが2500万円で、時間は3日間とする。点検本数が30本の場合には、コストが3500万円で、時間は4日間である。点検本数が40本の場合には、コストが4500万円で、時間は5日間である。点検本数が60本の場合には、コストが6000万円で、時間は7日間である。点検本数が80本の場合には、コストが7500万円で、時間は9日間である。点検本数が100本の場合には、コストが9000万円で時は11日間である。
【0055】
図9は、工程解析結果であるパレート解を表示する画面53である。
複数の特性を改善する多目的最適化問題おいて、最適化対象が複数ある場合、最適解は1つにはならない。最適化対象が2つの場合は最適なトレードオフ曲線が解となり、3つ以上の場合はトレードオフ曲面が解になる。これら複数の最適解は、パレート解と呼ばれている。
【0056】
画面53には、パレート解を評価関数空間にプロットしたときに得られる曲線であるパレートフロント531と、作成工程点532とが表示されている。評価関数空間の最適化対象は、コストと発電停止期間である。この画面53により、現在の制約条件下での期間とコストの可変領域を直感的に確認可能であり、電力需要の変化に応じてより経済的な計画となるよう見直すことができる。
【0057】
図10は、工程進捗管理支援処理のフローチャートである。
定検実施中に、作業管理単位が全て予定通りに進むことが理想であるが、予定より早く終わる場合や遅延する場合がある。この場合、後工程で行われる作業管理単位の開始の可否やリカバリープランの検討が迅速に必要となる。実施形態の保全支援装置1は、図10のフローチャートの処理により、定検における工程進捗をインプットとして構成管理条件の適切な管理とリアルタイムな工程進捗管理を支援する。
【0058】
保全支援装置1は、ステップS30で、入力部13がユーザによる工程進捗や調整の入力を受け付けると、並行作業制約算出部112により、並行作業の制約条件を計算し(ステップS31)、その計算結果を表示する(ステップS32)。
【0059】
そして、保全支援装置1は、ステップS33で、工程見直しの必要があるか否かを判定し、工程見直しの必要がない場合には(S33のNo)処理を終了し、工程見直しの必要な場合には(S33のYes)、ステップS34に進む。
【0060】
ステップS34で、作業管理単位の変更の必要があるか否かを判定し、作業管理単位の変更の必要がある場合には(S34のYes)、工程変更情報を入力し(スップS35)、ステップS36に進む。作業管理単位の変更の必要がない場合には(S34のNo)、ステップS36に進む。
【0061】
ステップS36で、工程最適化部111が工程の最適化を行い、図10の処理を終了する。
【0062】
図11は、クリティカル作業管理単位と制約と影響先を示す、保全支援装置1の出力部15の出力画面(画面51)である。
画面51には、クリティカル作業管理単位欄と、クリティカル制約欄と、影響先の作業管理単位欄で構成されるテーブルが表示され、一連の作業管理単位がどの制約条件によりクリティカル工程となっているかと、その影響先となる作業管理単位が表示されている。
【0063】
図12は、サブクリティカル作業管理単位と制約と影響先を示す、保全支援装置1の出力部15の出力画面(画面52)である。
画面52には、サブクリティカル作業管理単位欄と、クリティカル制約欄と、影響先の作業管理単位欄で構成されるテーブルが表示される。画面52は、並行して動作する作業管理単位がどの制約条件によりクリティカル工程となっているかと、その影響先となる作業管理単位が表示されている。
【0064】
これら画面51や画面52により、ユーザは、工程改善に有効な制約条件をピックアップ可能である。
【0065】
次に、工程の更なる最適化のための改善項目検討の支援を行う保全支援装置1について説明する。
図13は、本実施形態の保全支援装置1の物理構成を示す図である。図1の保全支援装置1とは、処理部11が、最適化計算結果に基づいて工程の更なる最適化のための改善項目検討の支援を行う工程改善支援部113を備える点が異なる。
【0066】
図14は、工程改善支援部113(図13参照)における改善項目検討支援処理のフローチャートである。
【0067】
最初、ステップS50で、工程改善支援部113は、ユーザ選択した工程を入力する。
そして、工程改善支援部113は、ステップS51で、最適化計算結果記憶部122を参照して、選択した工程に係る最適化の計算結果を解析する。
次に、工程改善支援部113は、最適化項目のトレードオフ関係と制約条件による変化率を表示する。
【0068】
以上により、工程改善支援部113は、工程最適化結果の感度解析により工程に与える影響の大きい変化率の高い制約条件項目を改善項目またはリスク情報としてピックアップする。ここでリスク情報とは、或る工程に遅延が発生し後工程が大きくずれ込む工程の情報のことをいう。
【0069】
次に、ステップS53で、制約条件を変えて入力することで作業の制約条件を変更した場合の工程全体に与える影響をシミュレーションするために、シミュレーション情報として制約条件を入力する。
【0070】
ステップS54で、工程改善支援部113は、制約条件のトレードオフ情報を利用し、作業管理単位の制約条件を変更した場合の工程へのインパクトを分析して、シミュレーション工程を計算する。例えば、点検周期を延伸することで作業管理単位の実施頻度が下がり、長期的に定検の日数が減るなどの効果を確認することができる。
【0071】
最後に、ステップS55で、工程改善支援部113は、シミュレーション結果を表示すし、処理を終了する。
【0072】
長期工程作成の実施例として、数物の点検最適化を説明する。ここでは数物として、180台の制御棒駆動機構(FMCRD:Fine Motion Control Rod Drive)を、6年周期で全て点検する場合を考える。このような場合、作業管理単位をパターン化して各定検回次に適切な台数の制御棒駆動機構を選択することが最適化において有効である。180台の制御棒駆動機構を6年以内に点検することを点検実施条件にし、2回目以降、すなわち(n+1)回目以降の点検も対象が6年以内に行えるように、点検時期を計画する。このとき、図8に示す条件(作業管理単位のパターン化)で点検が行えるとする。
【0073】
図15は、処理部11における最適化後の工程を表示する出力画面(画面54)である。
ここでは、作業管理単位である工程A-1からA-3と、工程B-1からB-3までが表示されている。ここでは工程B-1,B-2と、工程A-2,A-3は特定リソースを使用するため、そのことをハッチングにより示している。
【0074】
工程A-1が終了すると、工程A-2とA-3を開始可能である。しかし、工程A-1が終了した時点で、特定リソースは工程B-2で使用されているため、工程B-2が終了するまで工程A-2を開始できない。そこで、工程A-2に対して、特定リソースを使用しない方法へ見直しすることが考えられる。
【0075】
図16は、処理部11におけるシミュレーション結果を表示する出力画面(画面55)である。
ここでは、工程A-2が特定のリソースを使用しないので、工程A-1が終了した時点で開始できている。また、工程A-3は、工程B-2が終了した時点で開始できている。今回の改善を行う場合、工程A-1からA3までの工期が短縮できる。そして、新たに工程B-1からB-3までもクリティカル工程となる。
【0076】
次に、実施形態の保全支援装置1が、動員可能リソースを制約条件とし定検の実施期間の最適化を支援する機能を説明する。保全支援装置1は、動員可能リソースを管理して、点検コストの最適化及び工程実施の成立性を向上する。具体的には、発電所を跨ぐリソースローディング(resource loading:資源投入負荷)により、定検時の動員能力確保とリソース負荷の平準化を図ることができる。
【0077】
実施形態の保全支援装置1では、図5のステップS10で入力する計画期間は、規制・法令や設備の保全周期により定検で実施する作業とその実施に必要な期間によって決められるが、決められた期間で計画を実行するためには作業に動員可能なリソースも考慮する必要がある。
【0078】
そこで、作業管理単位情報により事前のリソース調整を用いる必要があると判断される作業を実施する定検においては、動員可能リソースを制約条件として工程最適化部111により、定検実施時期の最適化を行う。
また、動員に限りのあるリソースについては、決められた期間の作業に必要な動員可能リソースを把握し、計画に対してリソース確保及びリソース負荷の平準化を行う(リソースローディング機能)。
【0079】
より詳しくは、同時期に行われる他の発電所のリソース利用期間を制約条件として把握し、計画期間を最適化する場合を、図17のリソース負荷平準化を例に説明する。
具体的には、図17は、A発電所、B発電所のリソース利用予定が決まっている状態で、C発電所のリソース利用計画を立てる場合を示している。制約条件として、同時期に動員可能リソースは2組としている。
【0080】
工程最適化部111は、図17に示すリソース利用期間(リソース動員情報)はリソース制約条件として格納され、リソース制約条件に基づいてC発電所における対象WO実施可能期間を表示する。
【0081】
さらに、工程最適化部111は、リソースの使用率が高い期間を避け、投入可能リソースの変動リスクが少ない期間を表示する。また、動員コストが時期により変動するなどの情報がある場合は、コスト優位な期間を表示する。
また、検討対象となるリソースが複数種存在する場合は対象WO実施可能期間の重複部を表示する。
【0082】
作業管理するプラント(定検)が複数ある場合は、工程最適化部111は、プラントそれぞれに必要なリソース条件を設定し、制約条件として対象WO実施可能期間を表示する。この時、コスト情報等がある場合は最適化を行い、コスト優位な期間を表示する。
【0083】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0084】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0085】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0086】
上記の実施形態では、係る保全支援装置1が、原子力発電所の健全性を担保した作業計画の作成と実施を支援する場合について説明したが、原子力発電所に限らず、燃料再処理施設、廃炉施設等の原子力プラントに適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 保全支援装置
11 処理部
111 工程最適化部
112 並行作業制約算出部
113 工程改善支援部
12 記憶部
121 制約条件記憶部
122 最適化計算結果記憶部
13 入力部
14 通信部
15 出力部
2 データセンタ
21 作業管理単位データベース
22 安全・ハザード管理情報データベース
23 点検実績データベース
24 プラント健全性データベース
25 系統運用データベース
26 法令・規制データベース
31 ユーザ入力情報
32 作業進捗管理情報
33 最適化作業計画
51~55 画面
61 工程管理システム
62 工程管理データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17