(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132722
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】プロジェクター
(51)【国際特許分類】
G03B 21/00 20060101AFI20240920BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240920BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240920BHJP
F21V 14/06 20060101ALI20240920BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240920BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240920BHJP
【FI】
G03B21/00 D
G03B21/14 A
G03B21/14 Z
H04N5/74 Z
F21V14/06
F21S2/00 340
F21S2/00 355
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043614
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】米山 拓応
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2K203FA32
2K203FA44
2K203GA22
2K203GA33
2K203GA36
2K203GA49
2K203HA03
2K203HA14
2K203HA84
2K203MA02
2K203MA04
2K203MA05
5C058BA35
5C058EA51
(57)【要約】
【課題】画像品質に優れるプロジェクターを提供する。
【解決手段】本発明のプロジェクターは、光源装置と、第1入射面と第1射出面とを有する第1透過光学素子と、第2入射面と第2射出面とを有する第2透過光学素子と、1つの光変調装置と、投射光学装置と、を備える。第1透過光学素子は、第1透過光学素子に対する光の入射方向である第1方向に交差する第2方向に沿って延びる第1回転軸を中心として回転可能とされる。第2透過光学素子は、第1方向および第2方向のそれぞれに交差する第3方向に沿って延びる第2回転軸を中心として回転可能とされる。第1入射面と第1射出面とは互いに平行であり、第2入射面と第2射出面とは互いに平行である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を射出する光源部と、
回転可能に支持された透光性部材から構成され、前記光源部から射出される前記光が入射する第1入射面と、前記第1入射面から入射する前記光を射出させる第1射出面と、を有する第1透過光学素子と、
回転可能に支持された透光性部材から構成され、前記第1透過光学素子から射出される前記光が入射する第2入射面と、前記第2入射面から入射する前記光を射出させる第2射出面と、を有する第2透過光学素子と、
前記第2透過光学素子から射出される前記光を画像情報に基づいて変調する1つの光変調装置と、
前記光変調装置により変調される光を投射する投射光学装置と、
を備え、
前記第1透過光学素子は、前記第1透過光学素子に対する前記光の入射方向である第1方向に交差する第2方向に沿って延びる第1回転軸を中心として回転し、
前記第2透過光学素子は、前記第1方向および前記第2方向のそれぞれに交差する第3方向に沿って延びる第2回転軸を中心として回転し、
前記第1入射面と前記第1射出面とは互いに平行であり、
前記第2入射面と前記第2射出面とは互いに平行である、プロジェクター。
【請求項2】
前記第1透過光学素子は、前記第1回転軸を中心として回転することにより、前記光源部から射出される前記光を、第1走査方向に走査し、
前記第2透過光学素子は、前記第2回転軸を中心として回転することにより、前記第1透過光学素子から射出される前記光を、前記第1走査方向と交差する第2走査方向に走査し、
前記第1透過光学素子と前記第2透過光学素子とにより、前記光は2次元に走査される、請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記第1透過光学素子は、前記第1回転軸に交差する第1面および第2面と、前記第1面および前記第2面に接する2×m(m:2以上の自然数)個の第1側面と、を有し、
前記第1入射面および前記第1射出面は、前記2×m個の前記第1側面のうちの互いに平行な2つの前記第1側面であり、
前記第2透過光学素子は、前記第2回転軸に交差する第3面および第4面と、前記第3面および前記第4面に接する2×n(n:2以上の自然数)個の第2側面と、を有し、
前記第2入射面および前記第2射出面は、前記2×n個の前記第2側面のうちの互いに平行な2つの前記第2側面である、請求項1または請求項2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記第1透過光学素子および前記第2透過光学素子の少なくとも一方は、石英から構成される、請求項1または請求項2に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記第2透過光学素子から射出される前記光を前記光変調装置に向けて反射する反射部と、
前記反射部によって反射される前記光を集光して前記光変調装置に導く導光素子と、
をさらに備え、
前記光は、第1波長帯の第1光と、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光と、前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯の第3光と、を含み、
前記反射部は、
前記第2透過光学素子から射出される前記第1光、前記第2光、および前記第3光が入射し、前記第1光と前記第2光とを透過し、前記第3光を第1反射角で反射する第1反射素子と、
前記第1反射素子を透過する前記第1光および前記第2光が入射し、前記第1光を透過し、前記第2光を前記第1反射角とは異なる第2反射角で反射する第2反射素子と、
前記第2反射素子を透過する前記第1光が入射し、前記第1光を前記第1反射角および前記第2反射角とは異なる第3反射角で反射する第3反射素子と、
を備え、
前記光変調装置は、
前記第1光を変調する第1サブ画素と、
前記第2光を変調する第2サブ画素と、
前記第3光を変調する第3サブ画素と、を有し、
前記導光素子は、
前記反射部から射出される前記第1光を前記第1サブ画素に入射させ、
前記反射部から射出される前記第2光を前記第2サブ画素に入射させ、
前記反射部から射出される前記第3光を前記第3サブ画素に入射させる、請求項1または請求項2に記載のプロジェクター。
【請求項6】
前記第1光は赤色光であり、
前記第2光は緑色光であり、
前記第3光は青色光であり、
前記光変調装置に対する前記第1光の入射角は、前記光変調装置に対する前記第2光の入射角よりも大きく、
前記光変調装置に対する前記第2光の入射角は、前記光変調装置に対する前記第3光の入射角よりも大きい、請求項5に記載のプロジェクター。
【請求項7】
前記光源部は、
前記第1光を射出する第1発光素子と、
前記第2光を射出する第2発光素子と、
前記第3光を射出する第3発光素子と、
前記第1光と前記第2光と前記第3光とを合成して合成光を生成し、前記合成光を前記第1透過光学素子に向けて射出する光合成光学系と、
を備え、
前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子のそれぞれは、レーザー光を射出するレーザーダイオードである、請求項5に記載のプロジェクター。
【請求項8】
前記第1透過光学素子は、
第1屈折率を有する第1透光性部材と、
前記第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する第2透光性部材と、
前記第2屈折率よりも低い第3屈折率を有する第3透光性部材と、
を備え、
前記第1透光性部材、前記第2透光性部材、および前記第3透光性部材は、前記第2方向に沿って配置され、
前記第1光は、前記第1透光性部材に入射し、
前記第2光は、前記第2透光性部材に入射し、
前記第3光は、前記第3透光性部材に入射する、請求項5に記載のプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに用いる光源装置として、発光素子から射出された光を液晶パネル等の光変調装置上で時間的に走査することにより、光変調装置を照明する光源装置が提案されている。
【0003】
下記の特許文献1には、光源ランプを含む光源装置と、液晶ライトバルブと、光源装置と液晶ライトバルブとの間に設けられたポリゴンミラーと、投射レンズと、を備えるプロジェクターが開示されている。このプロジェクターにおいて、光源装置は、楕円形の光束断面を有する光を射出する。ポリゴンミラーは、光源装置から射出される光を反射して、液晶ライトバルブの画像形成領域上で楕円形の光束断面の短軸方向に走査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のプロジェクターのように、光の走査にポリゴンミラーを用いた場合、完全な平行光をポリゴンミラーに入射させたとしても、ポリゴンミラーによって光の平行度が損なわれる。すなわち、ポリゴンミラーが回転しつつ光を反射するため、ポリゴンミラーの反射面に対する光の入射角が時間的に変化し、ポリゴンミラーに入射した平行光が所定の発散角を有する光となって液晶ライトバルブを照明する。その結果、液晶ライトバルブにおける明るさやコントラストの低下、色むらの発生、投射レンズでの光の損失等、プロジェクターの画像品質に関係する様々な不具合が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様のプロジェクターは、光を射出する光源装置と、回転可能に支持された透光性部材から構成され、前記光源装置から射出される前記光が入射する第1入射面と、前記第1入射面から入射する前記光を射出させる第1射出面と、を有する第1透過光学素子と、回転可能に支持された透光性部材から構成され、前記第1透過光学素子から射出される前記光が入射する第2入射面と、前記第2入射面から入射する前記光を射出させる第2射出面と、を有する第2透過光学素子と、前記第2透過光学素子から射出される前記光を画像情報に基づいて変調する1つの光変調装置と、前記光変調装置により変調される光を投射する投射光学装置と、を備える。前記第1透過光学素子は、前記第1透過光学素子に対する前記光の入射方向である第1方向に交差する第2方向に沿って延びる第1回転軸を中心として回転可能とされる。前記第2透過光学素子は、前記第1方向および前記第2方向のそれぞれに交差する第3方向に沿って延びる第2回転軸を中心として回転可能とされる。前記第1入射面と前記第1射出面とは互いに平行であり、前記第2入射面と前記第2射出面とは互いに平行である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【
図4A】透過光学素子が回転する際の光の挙動を説明するための模式図である。
【
図5】シミュレーションのモデルである透過光学素子を示す模式図である。
【
図6A】透過光学素子の屈折率が1.5の場合の回転角度と変位量との関係を示すグラフである。
【
図6B】透過光学素子の屈折率が1.75の場合の回転角度と変位量との関係を示すグラフである。
【
図6C】透過光学素子の屈折率が2.0の場合の回転角度と変位量との関係を示すグラフである。
【
図6D】透過光学素子の屈折率が2.5の場合の回転角度と変位量との関係を示すグラフである。
【
図6E】透過光学素子の屈折率が3.0の場合の回転角度と変位量との関係を示すグラフである。
【
図7】透過光学素子と光の屈折角との関係を示す模式図である。
【
図8】透過光学素子への光線の入射角θ
1と、光軸と光線とのなす角度θ
2´との関係を示すグラフである。
【
図9A】発光素子から射出される光の照度分布を示す図である。
【
図9B】第2透過光学素子から射出される光線の軌跡を示す図であって、軌跡の間隔が広い場合を示す。
【
図10A】発光素子から射出される光の照度分布を示す図である。
【
図10B】第2透過光学素子から射出される光線の軌跡を示す図であって、軌跡の間隔が狭い場合を示す。
【
図10C】被照明面における光の照度分布を示す図であって、走査線の間隔が狭い場合を示す。
【
図11A】2つの透過光学素子の屈折率が相対的に低い場合の光の照度分布を示す図である。
【
図11B】2つの透過光学素子の屈折率が相対的に高い場合の光の照度分布を示す図である。
【
図12】6角柱状の透過光学素子と光の変位量との関係を示す模式図である。
【
図13】透過光学素子の形状と最大入射角との関係を示す模式図である。
【
図14A】光線の軌跡を示す図であり、透過光学素子の屈折率が1.492、透過光学素子の形状が正4角柱の場合を示す。
【
図14B】光線の軌跡を示す図であり、透過光学素子の屈折率が2.5、透過光学素子の形状が正4角柱の場合を示す。
【
図14C】光線の軌跡を示す図であり、透過光学素子の屈折率が1.492、透過光学素子の形状が正6角柱の場合を示す。
【
図14D】光線の軌跡を示す図であり、透過光学素子の屈折率が1.492、透過光学素子の形状が正8角柱の場合を示す。
【
図15】光の照度分布と伝播距離との関係を示す図である。
【
図16】第2実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【
図17】光変調装置の断面構造を示す模式図である。
【
図18】第3実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【
図19】第4実施形態のプロジェクターにおける光源装置の概略構成図である。
【
図20】
図19と直交する方向から見た光源装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光変調装置として液晶パネルを用いた液晶プロジェクターの一例である。
以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0009】
図1は、本実施形態のプロジェクター20の概略構成図である。
図1に示すように、プロジェクター20は、光源装置10と、光変調装置21と、射出側偏光板22と、投射光学装置23と、を備える。
【0010】
図3は、本実施形態の光源装置10の概略構成を示す斜視図である。
図3に示すように、本実施形態の光源装置10は、第1発光素子11と、第1透過光学素子13と、第2透過光学素子14と、第1回転駆動装置15と、第2回転駆動装置16と、を備える。本実施形態の場合、第1発光素子11は光源部10Aを構成する。
【0011】
以下、図面において、必要に応じてXYZ直交座標系を用いて説明する。X軸は、第1発光素子11の光軸に平行な軸である。第1発光素子11の光軸AXは、第1発光素子11から射出される第1光L1の主光線に沿う軸と定義する。Y軸は、X軸に直交する軸であり、第1透過光学素子13の第1回転軸C1に沿う軸である。Z軸は、X軸およびY軸に直交する軸であり、第2透過光学素子14の第2回転軸C2に沿う軸である。
本実施形態のX軸方向は、特許請求の範囲の第1方向に対応する。本実施形態のY軸方向は、特許請求の範囲の第2方向に対応する。本実施形態のZ軸方向は、特許請求の範囲の第3方向に対応する。
【0012】
第1発光素子11は、第1透過光学素子13に向けて第1波長帯の第1光L1を射出する。第1発光素子11は、レーザーダイオードから構成されている。そのため、第1発光素子11から射出される第1光L1は、可干渉性を有する直線偏光であり、光束幅が狭く、平行度が高い光である。第1波長帯は、可視光波長帯の範囲内であればよく、特に限定されない。
【0013】
第1透過光学素子13は、第1発光素子11の光軸AX上において、第1発光素子11と第2透過光学素子14との間に設けられている。第1透過光学素子13は、回転可能に支持された透光性部材から構成されている。第1透過光学素子13は、Y軸方向に沿って延びる第1回転軸C1を中心として回転可能とされている。第1回転軸C1は、モーター等からなる第1回転駆動装置15に連結されている。第1透過光学素子13は、第1回転駆動装置15の駆動によって第1回転軸C1を中心として回転する。
【0014】
第1透過光学素子13を構成する透光性部材の硝材として、例えばBK7等の光学ガラス、石英、樹脂等の透光性材料が用いられる。第1透過光学素子13は、第1回転軸C1に交差する第1面13aおよび第2面13bと、第1面13aおよび第2面13bに対して垂直に接する4つの第1側面13c1,13c2,13c3,13c4と、を有する。すなわち、第1透過光学素子13の形状は、第1面13a、第2面13b、および4つの第1側面13c1,13c2,13c3,13c4を含む6つの平面を有する正4角柱である。第1回転軸C1に垂直な面で切断した第1透過光学素子13の断面形状は、正方形である。すなわち、4つの第1側面13c1,13c2,13c3,13c4は、互いに同じ面積を有し、互いに対向する2つの第1側面同士は平行である。
【0015】
第1透過光学素子13は、第1回転軸C1を中心として回転しつつ、第1発光素子11から射出される第1光L1を透過させる。したがって、第1発光素子11から射出される第1光L1が第1透過光学素子13に入射する第1側面は、1つに決まっておらず、時間を追って変化する。同様に、第1透過光学素子13に入射した第1光L1が外部空間に射出される第1側面は、1つに決まっておらず、時間を追って変化する。第1透過光学素子13において、第1発光素子11から射出される第1光L1が入射する第1側面を第1入射面と称する。第1入射面から入射する第1光L1を射出させる第1側面を第1射出面と称する。この場合、第1入射面および第1射出面は、時間を追って変化し、4つの第1側面13c1,13c2,13c3,13c4のうちの互いに平行な2つの第1側面のいずれかである。
【0016】
本明細書において、透過光学素子の2つの面が互いに平行であると称する場合、透光性部材を構成する硝材の加工精度、光の平行度の許容範囲等を考慮して、2つの面のなす角度が0±5度の範囲にある場合を「平行」と称する。
【0017】
本実施形態の場合、第1透過光学素子13は、4個の第1側面13c1,13c2,13c3,13c4を有するが、第1側面の数は必ずしも4個でなくてもよく、2×m(m:2以上の自然数)個であることが望ましい。すなわち、第1側面の数は、例えば6個、8個等、偶数個であることが望ましい。第1側面の数が偶数個であれば、全ての第1側面のそれぞれは、当該第1側面に対向する第1側面に対して平行になり、平行でない第1側面が存在しない。これにより、第1透過光学素子13における迷光の発生が少なく、光利用効率を高めることができる。
【0018】
第2透過光学素子14は、第1発光素子11の光軸AX上において、第1透過光学素子13の光射出側に設けられている。第2透過光学素子14は、回転可能に支持された透光性部材から構成されている。第2透過光学素子14は、Z軸方向に沿って延びる第2回転軸C2を中心として回転可能とされている。すなわち、第1回転軸C1と第2回転軸C2とは、光軸AXに垂直な仮想面内において互いに直交する方向に延びている。第2回転軸C2は、モーター等からなる第2回転駆動装置16に連結されている。第2透過光学素子14は、第2回転駆動装置16の駆動によって第2回転軸C2を中心として回転する。
【0019】
第2透過光学素子14を構成する透光性部材は、第1透過光学素子13を構成する透光性部材と略同様である。透光性部材の硝材として、例えばBK7等の光学ガラス、石英、樹脂等の透光性材料が用いられる。特に第2透過光学素子14の場合、第1透過光学素子13とは異なり、第1透過光学素子13によって一方向に走査された後の第1光L1が入射するため、第1透過光学素子13に入射する時点の第1光L1よりも光密度が小さい。そのため、耐光性や耐熱性が低い樹脂材料を使用できる可能性が第1透過光学素子13よりも高い。
【0020】
第2透過光学素子14は、第2回転軸C2に交差する第3面14aおよび第4面14bと、第3面14aおよび第4面14bに対して垂直に接する4つの第2側面14c1,14c2,14c3,14c4と、を有する。すなわち、第2透過光学素子14の形状は、第3面14a、第4面14b、および4つの第2側面14c1,14c2,14c3,14c4を含む6つの平面を有する正4角柱である。第2回転軸C2に垂直な面で切断した第2透過光学素子14の断面形状は、正方形である。すなわち、4つの第2側面14c1,14c2,14c3,14c4は、互いに同じ面積を有し、互いに対向する2つの第2側面同士は平行である。
【0021】
第2透過光学素子14は、第2回転軸C2を中心として回転しつつ、第1透過光学素子13から射出される第1光L1を透過させる。したがって、第1透過光学素子13から射出される第1光L1が第2透過光学素子14に入射する第2側面は、1つに決まっておらず、時間を追って変化する。同様に、第2透過光学素子14に入射した第1光L1が外部空間に射出される第2側面は、1つに決まっておらず、時間を追って変化する。第2透過光学素子14において、第1透過光学素子13から射出される第1光L1が入射する第2側面を第2入射面と称する。第2入射面から入射する第1光L1を射出させる第2側面を第2射出面と称する。この場合、第2入射面および第2射出面は、時間を追って変化し、4つの第2側面14c1,14c2,14c3,14c4のうちの互いに平行な2つの第2側面のいずれかである。
【0022】
本実施形態の場合、第2透過光学素子14は、4個の第2側面14c1,14c2,14c3,14c4を有するが、第2側面の数は必ずしも4個でなくてもよく、2×n(n:2以上の自然数)個であることが望ましい。すなわち、第2側面の数は、例えば6個、8個等、偶数個であることが望ましい。第2側面の数が偶数個であれば、全ての第2側面のそれぞれは、当該第2側面に対向する第2側面に対して平行になり、平行でない第2側面が存在しない。これにより、第2透過光学素子14における迷光の発生が少なく、光利用効率を高めることができる。
【0023】
本実施形態では、第1透過光学素子13および第2透過光学素子14は、ともに正4角柱の形状を有しているが、互いに平行な入射面と射出面とを有してさえいれば、第1透過光学素子13と第2透過光学素子14とが異なる形状を有していてもよい。
【0024】
図3においては、第1透過光学素子13を第2透過光学素子14と同じ大きさに示しているが、第1透過光学素子13は、後述するように、第1光L1をZ軸方向に走査するが、Y軸方向には走査しないため、Y軸方向の辺の長さをX軸方向およびZ軸方向の辺の長さよりも小さくしてもよい。すなわち、第1透過光学素子13は、
図3に示す立方体に近い形状に代えて、Y軸方向の辺の長さがX軸方向およびZ軸方向の辺の長さよりも短い直方体の形状としてもよい。これにより、第1透過光学素子13の薄型化が図れる。その場合、第2透過光学素子14の寸法が第1透過光学素子13の寸法よりも大きくなるが、上述したように、第2透過光学素子14では、入射光の光密度が低いことから、樹脂材料を用いることができる。透光性部材の硝材として樹脂材料を用いると、第2透過光学素子14が軽量になるため、第2回転駆動装置16の小型化が図れる。
【0025】
第1透過光学素子13および第2透過光学素子14の少なくとも一方は、石英で構成されていてもよい。第1透過光学素子13および第2透過光学素子14において、透光性部材を透過する光の量が多くなるに従って、透光性部材で吸収される光の量も多くなり、透光性部材に熱歪みが生じる場合がある。この場合、第1発光素子11から射出される第1光L1の偏光方向が乱れ、透光性部材に入射した直線偏光が楕円偏光になって透光性部材から射出される。その結果、光源装置10をプロジェクターに適用した場合、第1発光素子11にレーザーダイオードを用いることにより、入射側偏光板を備えることなく、所定のコントラストが得られる、という効果が得られなくなる。すなわち、第1発光素子11にレーザーダイオードを用いているにもかかわらず、偏光方向を揃えるための入射側偏光板を用いる必要が生じる。そこで、上記の効果を得るためには、熱歪みの少ない硝材として、ヤング率と熱膨張係数とが小さい硝材を用いることが望ましく、一例として石英を用いることが望ましい。
【0026】
以下、第1光L1が第1透過光学素子13および第2透過光学素子14を透過する際の第1光L1の挙動について説明する。なお、第1透過光学素子13の作用と第2透過光学素子14の作用とは同様であり、方向が異なるだけであるため、以下では第1透過光学素子13のみを図示して説明する。
【0027】
図4A~
図4Fは、第1透過光学素子13が回転する際の第1光L1の挙動を説明するための模式図である。この例では、+Y側から見て、第1透過光学素子13は第1回転軸C1を中心として時計回りに回転しており、
図4Aから
図4Fに向かって時間が経過している状態を示す。
【0028】
図4A~
図4Fにおいて、第1回転軸C1を通り、第1透過光学素子13の第1側面13c1に直交する直線Mと光軸AXとのなす角度を第1透過光学素子13の回転角度ωと定義する。また、実際には第1光L1はZ軸方向に所定の光束幅を有しているが、ここでは光軸AX上を進行する光線L1aの挙動に着目して考える。
【0029】
図4Aは、第1透過光学素子13の初期状態を示す。すなわち、第1透過光学素子13は回転しておらず、直線Mと光軸AXとが重なっており、回転角度ωが0度である。この場合、光線L1aは、第1側面13c1に対して垂直に入射するため、第1側面13c1で屈折することなく、第1透過光学素子13の内部を光軸AXに沿って進行する。次に、光線L1aは、第1側面13c1に対して平行な第1側面13c3に対しても垂直に入射する。そのため、光線は、第1側面13c3でも屈折することなく、第1透過光学素子13から射出され、光軸AX上を進行する。
【0030】
次に、
図4Bに示すように、第1透過光学素子13が回転角度ωだけ回転すると、光線L1aは、第1側面13c1に対して回転角度ωと等しい入射角で入射する。そのため、光線L1aは、図に示す方向(+Z側)に屈折し、第1透過光学素子13の内部を進行する。次に、光線L1aは、第1側面13c3に対しても所定の入射角で入射するため、第1側面13c3で屈折し、第1透過光学素子13から射出される。このとき、第1側面13c1と第1側面13c3とが互いに平行であるため、第1側面13c1に対する光線L1aの入射角と第1側面13c3に対する光線L1aの入射角とが等しく、第1側面13c1に入射する光線L1aの屈折角と第1側面13c3から射出される光線L1aの屈折角とは、符号が逆向きで絶対値が等しくなる。これにより、光線L1aの第1側面13c1への入射時の屈折角と第1側面13c3からの射出時の屈折角とが相殺される。その結果、光線L1aは、光軸AXから+Z側に変位量dだけ変位した位置を光軸AXと平行に進行する。
【0031】
次に、
図4Cに示すように、第1透過光学素子13の回転角度ωが
図4Bよりも大きくなると、光線L1aの入射角が大きくなり、屈折角が大きくなる。そのため、光線L1aの光軸AXからの変位量dは、
図4Bのときよりも大きくなる。また、光線L1aが光軸AXと平行に進行する状態は常に維持される。回転角度ωが0度から45度までの間は、回転角度ωの増加に伴って変位量dが単調に増加する。
【0032】
次に、
図4Dに示すように、第1透過光学素子13の回転角度ωが45度を超えると、光線L1aの入射面が第1側面13c1から第1側面13c2に変わる。このとき、光線L1aは、第1側面13c2で屈折するが、
図4Cまでの期間とは屈折方向が変わり、図に示す方向(-Z側)に屈折する。また、光線L1aの射出面も第1側面13c3から第1側面13c4に変わるが、第1側面13c2と第1側面13c4とが互いに平行であるため、光線L1aの第1側面13c3への入射時の屈折角と第1側面13c4からの射出時の屈折角とが相殺されるという関係は、
図4Cまでの期間と変わらない。その結果、光線L1aは、光軸AXから-Z側に変位量dだけ変位した位置を光軸AXと平行に進行する。
【0033】
次に、
図4Eに示すように、第1透過光学素子13の回転角度ωが
図4Dよりも大きくなると、光線L1aの入射角が小さくなり、屈折角が小さくなる。そのため、光線L1aの光軸AXからの変位量dは、
図4Dのときよりも小さくなる。このように、回転角度ωが45度から90度までの間は、回転角度ωの増加に伴って変位量dが単調に減少する。
【0034】
次に、
図4Fに示すように、第1透過光学素子13の回転角度ωが90度になると、入射面は初期状態の第1側面13c1から第1側面13c2に変わるが、光線L1aの挙動は、
図4Aに示す初期状態と同じになる。
【0035】
このように、第1透過光学素子13の第1入射面と第1射出面とが互いに平行であれば、第1透過光学素子13の回転角度ωにかかわらず、光線L1aの進行方向が変化することはなく、光線L1aは時間の経過とともに光軸AXと平行な方向に平行移動する。回転角度ωが0度のとき、光線L1aの変位量dは0であり、回転角度ωが0度から45度までの間は+Z側、-Z側のいずれか一方に変位量dが増加する。回転角度ωが45度を超えた瞬間に、変位量dの絶対値が同じままで変位の方向が逆になり、回転角度ωが45度から90度までの間は変位量dが減少し、回転角度ωが90度になると、変位量dは0となる。90度以降は、上記の挙動を繰り返す。したがって、第1透過光学素子13が1回転すると、光線L1aの変位量dは、上記のサイクルを4周期繰り返す。光線L1aの変位量は、第1透過光学素子13の屈折率、サイズ等のパラメーターを調整することで適宜設定することができる。
【0036】
以上、第1透過光学素子13による1方向の変位のみについて説明したが、光源装置10は、互いに直交する回転軸を有する第1透過光学素子13と第2透過光学素子14とを備えている。そのため、第1光L1は、時間の経過によって互いに直交する2方向に変位する。具体的には、
図3に示すように、第1発光素子11から射出される第1光L1は、第1透過光学素子13によってZ軸方向に走査され、第2透過光学素子14によってZ軸方向と直交するY軸方向に走査される。すなわち、第1透過光学素子13と第2透過光学素子14とは、第1光L1を被照明面における2次元の被照明領域Q内で走査する。
本実施形態のZ軸方向は、特許請求の範囲の第1走査方向に対応する。本実施形態のY軸方向は、特許請求の範囲の第2走査方向に対応する。
【0037】
図1に示すように、光変調装置21は、光軸AX上において、光源装置10の光射出側に設けられている。光変調装置21は、光源装置10から射出される第1光L1を画像情報に応じて変調し、画像光を形成する。光変調装置21には、透過型の液晶パネルが用いられる。液晶パネルは、カラーフィルターを備えていてもよいし、カラーフィルターを備えていなくてもよい。液晶パネルがカラーフィルターを備える場合、カラー表示が可能なプロジェクター20を実現することができる。液晶パネルがカラーフィルターを備えていない場合、単色表示が可能なプロジェクター20を実現することができる。液晶パネルの駆動方式としては、ツイステッド・ネマティック(TN)方式、垂直配向(VA)方式、横電界(IPS)方式等が用いられ、特に限定されない。
【0038】
図2は、光軸AXの方向から見た光変調装置21の正面図である。
図2に示すように、光変調装置21は、光変調領域21cと、遮光領域21dと、を有する。光変調領域21cは、複数の画素がマトリクス状に配列された領域であって、光変調装置21に入射する第1光L1を変調して射出する。遮光領域21dは、光変調領域21cの周囲に位置し、光変調装置21に入射する第1光L1のうち、変調に寄与しない光を遮断する。光源装置10の第2透過光学素子14から射出される第1光L1が2次元に走査される被照明領域Qは、光変調領域21cに対応する。光源装置10の各透過光学素子13,14のサイズ、屈折率等のパラメーターは、光変調領域21cのサイズやアスペクト比に合わせて設計される。
【0039】
図1に示すように、射出側偏光板22は、光軸AX上において、光変調装置21と投射光学装置23との間に設けられている。射出側偏光板22は、光変調装置21から射出される特定方向の直線偏光を投射光学装置23に向けて透過させる。本実施形態の場合、第1発光素子11にレーザーダイオードが用いられているため、光源装置10から直線偏光が射出される。そのため、光変調装置21の光入射側に設けられる入射側偏光板は、不要である。
【0040】
投射光学装置23は、複数の投射レンズから構成されている。投射光学装置23は、光変調装置21により変調された画像光をスクリーン等の被投射面に向けて拡大投射する。これにより、被投射面上に画像が表示される。
【0041】
[第1実施形態の効果]
本実施形態のプロジェクター20は、第1光L1を射出する光源装置10と、回転可能に支持された透光性部材から構成され、光源装置10から射出される第1光L1が入射する第1入射面と、第1入射面から入射する第1光L1を射出させる第1射出面と、を有する第1透過光学素子13と、回転可能に支持された透光性部材から構成され、第1透過光学素子13から射出される第1光L1が入射する第2入射面と、第2入射面から入射する第1光L1を射出させる第2射出面と、を有する第2透過光学素子14と、第2透過光学素子14から射出される第1光L1を画像情報に基づいて変調する1つの光変調装置21と、光変調装置21により変調される画像光を投射する投射光学装置23と、を備える。第1透過光学素子13は、Y軸方向に沿って延びる第1回転軸C1を中心として回転可能とされる。第2透過光学素子14は、Z軸方向に沿って延びる第2回転軸C2を中心として回転可能とされる。第1入射面と第1射出面とは互いに平行であり、第2入射面と第2射出面とは互いに平行である。
【0042】
従来の光源装置のように、光を走査する手段としてポリゴンミラーを用いた場合、ポリゴンミラーが回転しつつ光を反射するため、被照明面に入射する光の入射角が時間によって刻々と変化する。したがって、たとえポリゴンミラーに入射させる光が平行光であったとしても、ポリゴンミラーから射出される光は発散光となるため、被照明面に対して光を常に垂直に入射させることは極めて難しい。したがって、ポリゴンミラーを備える従来のプロジェクターにおいては、光変調装置における明るさやコントラストの低下、色むらの発生、投射光学装置での光の損失等が生じ、プロジェクターの画像品質が低下するおそれがある。
【0043】
上記の問題に対して、本実施形態の光源装置10によれば、
図4A~
図4Fに示すように、第1光L1は、第1透過光学素子13および第2透過光学素子14の回転に伴って、第1発光素子11の光軸AXに対して平行な状態を維持したまま、第1光L1の進行方向と直交する方向に変位する。また、互いに直交する回転軸C1,C2を有する第1透過光学素子13と第2透過光学素子14とを備えることにより、第1光L1を任意の被照明面における2次元の被照明領域Q内で走査することができる。したがって、光源装置10を備えるプロジェクター20においては、光変調装置21に対して第1光L1を常に垂直に入射させることができる。これにより、光変調装置21における明るさやコントラストの低下、色むらの発生、投射光学装置23での光の損失等が抑えられ、表示品質に優れるプロジェクター20を簡易な構成で実現することができる。
【0044】
また、第1発光素子11から射出される第1光L1が可干渉性を有するレーザー光であっても、第1光L1が光変調装置21上において2次元に高速に走査されることによって時間的に重畳される。これにより、可干渉性を有する光源を使用したことによる照度ムラを抑制することができる。また、第1光L1の軌跡を密にすることにより、疑似的に複数の第1光L1が重なり合った状態を作ることができる。この作用によってもスペックルノイズを抑制することができる。
【0045】
本実施形態の光源装置10によれば、マルチレンズ等、光を矩形に成形するための光学系を用いなくても、略矩形の形状に照明することができる。そのため、全体の光路長を比較的短くすることができるとともに、光学部品を減らすことにより、光学系と空気との界面の数を減らすことができるため、界面反射による光のロスを低減することができる。
【0046】
本実施形態の光源装置10は走査型の照明装置であるため、光変調領域21c内の黒を表示したい領域に第1光L1が到達した際に第1発光素子11を消灯することもできる。これにより、黒表示以外の領域のみを照明する方法、いわゆるエリア照明が可能となり、非走査型の従来の照明方式と比べて、入力電力に対する射出光強度の効率を十分に向上させることができる。これに伴って、黒表示時に射出側偏光板22で吸収される光が減ることにより、射出側偏光板22の負荷を軽減させることができる。これにより、射出側偏光板22の信頼性向上、有機材料からなる偏光板の採用によるコントラスト向上、等の効果が期待できる。
【0047】
[透過光学素子の各種パラメーターに関するシミュレーション]
本発明者は、透過光学素子の屈折率、形状等の各種のパラメーターが照明特性にどのように影響するかを調べるため、シミュレーションを行った。以下、シミュレーション結果について説明する。
【0048】
図5は、シミュレーションのモデルとなる透過光学素子18を示す模式図である。
図5に示すように、透過光学素子18は、上記実施形態と同様、回転軸Oに垂直な断面形状が正方形であり、4つの側面を有する。正方形の1辺の長さlは、20mmとする。光線L1aは、光軸AXと平行に進み、点P1において入射角θ
1で透過光学素子18に入射し、屈折角θ
2で屈折した後、点P2において透過光学素子18から射出され、光軸AXと平行に進む。光線L1aとして、光軸AX上を進む光線と、光軸AXから距離sだけ離れた位置を進む光線と、を想定する。具体的には、距離s(mm)として、-4,-2,0,+2,+4の5種類を設定する。すなわち、シミュレーションにおいて、間隔が2mmの5本の光線を設定する。
【0049】
透過光学素子18の外部空間(空気)の屈折率n1を1.0とし、透過光学素子18の屈折率n2を1.5,1.75,2.0,2.5,3.0の5種類に変化させ、透過光学素子18の回転角度と変位量dとの相関関係に関するシミュレーションを行った。
【0050】
シミュレーション結果を
図6A~
図6Eに示す。
図6Aは、屈折率n2=1.5の結果である。
図6Bは、屈折率n2=1.75の結果である。
図6Cは、屈折率n2=2.0の結果である。
図6Dは、屈折率n2=2.5の結果である。
図6Eは、屈折率n2=3.0の結果である。
図6A~
図6Eにおいて、横軸は回転角度(度)を示し、縦軸は変位量(mm)を示す。符号Aのグラフは、s=-4の光線を示す。符号Bのグラフは、s=-2の光線を示す。符号Cのグラフは、s=0(光軸上)の光線を示す。符号Dのグラフは、s=+2の光線を示す。符号Eのグラフは、s=+4の光線を示す。
【0051】
例えば
図6Aの符号C(光軸上の光線)のグラフに着目すると、
図4A~
図4Fを用いて説明したように、回転角度が0度のときの変位量は0であり、回転角度が0度から45度まで増加するに従って、変位量は+7mm程度まで増加する。回転角度が45度を超えると、変位量は-7mm程度まで逆方向に反転し、回転角度が45度から90度まで増加するに従って、変位量は0mmに向けて減少する。以下、この周期を繰り返す。したがって、グラフの全体形状は、鋸刃状となる。また、他のグラフA,B,D,Eも、グラフCと同様の傾向を示す。
【0052】
図6A~
図6Eを比較すると、透過光学素子18の屈折率n2を1.5から3.0まで高くすると、変位量dが±7mm程度から±11mm程度まで大きくなることが判った。これにより、透過光学素子18のサイズが同じであっても、透過光学素子18の屈折率n2を1.5から3.0まで高くすることにより、光線L1aの走査範囲を大きくすることができる。
【0053】
また、透過光学素子18の屈折率n2を1.5から3.0まで高くすると、鋸刃形状のグラフの線形性が高くなることが判った。例えば
図6Aを見ると、特に透過光学素子18の入射面が切り替わる回転角度の近傍、すなわち、鋸刃形状の尖った部分の近傍でグラフが湾曲していることが判る。これに対して、
図6Eを見ると、透過光学素子18の入射面が切り替わる回転角度の近傍でも、グラフが直線状に延びていることが判る。詳細な説明を省略するが、本発明者は、鋸刃形状のグラフの線形性が高い程、被照明領域における光の照度分布が高くなるという知見を得ている。
【0054】
次に、
図7に示すように、透過光学素子18に対する光線L1aの入射角θ
1と、透過光学素子18に入射した後の光線L1aと光軸AXとのなす角度θ
2´と、の関係について考察する。
角度θ
2´は、以下の(1)式で表される。θ
2は屈折角である。
【0055】
【0056】
(1)式から、透過光学素子18の屈折率n2を無限大に向けて高くしていくと、角度θ2´は入射角θ1に限りなく近づくことが判る。
【0057】
したがって、上式(1から下式(2)が導かれる。
【0058】
【0059】
図8は、(2)式の入射角θ
1と角度θ
2´との関係を示すグラフである。
図8において、横軸はθ
1(度)であり、縦軸はθ
2´(度)である。符号Fのグラフは、屈折率n2が1.5の場合を示す。符号Gのグラフは、屈折率n2が2.0の場合を示す。符号Hのグラフは、屈折率n2が2.5の場合を示す。符号Iのグラフは、屈折率n2が3.0の場合を示す。符号Jのグラフは、仮に屈折率n2について極限値をとった場合である屈折率n2が1000の場合を示す。
【0060】
図8に示すように、透過光学素子18の屈折率n2を大きくすると、角度θ
2´が入射角θ
1に近付いていくことが判る。したがって、透過光学素子18の屈折率n2を大きくすることにより、光線L1aの変位量を大きくすることができる。
【0061】
次に、透過光学素子の屈折率n2が十分大きく、変位量が理想的な鋸刃形状の場合に、2つの透過光学素子を用いて、2次元の被照明領域を照明する場合の照度分布について考察する。
【0062】
上記実施形態における第1透過光学素子13および第2透過光学素子14のそれぞれの回転周波数を調整することにより、2次元の被照明領域における光の走査が可能となる。第1透過光学素子13および第2透過光学素子14が互いに直交する2つの方向に光を走査するため、特に変位量が理想的な鋸刃形状を示す場合、光は、例えば2次元の被照明領域において斜めに延びる複数本の直線の軌跡を描くように走査される。
【0063】
画面を描画する周波数を固定した時を考えると、2つの透過光学素子のそれぞれの回転周波数が相対的に低い場合、換言すると、2つの透過光学素子のそれぞれの回転速度が相対的に遅い場合、隣り合う2本の軌跡の間隔は相対的に広くなる。
図9Aは、発光素子から射出される光の照度分布を示す図である。
図9Bは、第2透過光学素子から射出される光線の軌跡を示す図である。
【0064】
この場合、
図9Bに示すように、各光線の軌跡は、図の左上から右下に向かって斜めに延び、隣り合う2本の軌跡の間隔は比較的広い。
図9Aに示すように、発光素子から射出される光の照度分布が横長の楕円形状の分布を示す場合、被照明面における光の照度分布は、軌跡と交差する方向に沿って明暗の照度ムラが発生する。
【0065】
これに対して、2つの透過光学素子の回転周波数が相対的に高い場合、換言すると、2つの透過光学素子の回転速度が相対的に速い場合、隣り合う2本の軌跡の間隔は相対的に狭くなる。
図10Aは、発光素子から射出される光の照度分布を示す図である。
図10Bは、第2透過光学素子から射出される光線の軌跡を示す図である。
図10Cは、被照明面における光の照度分布を示す図である。
【0066】
この場合、
図10Bに示すように、各光線の軌跡は、図の左上から右下に向かって斜めに延び、隣り合う2本の軌跡の間隔は、
図9Bに比べて十分に狭い。
図10Aに示すように、発光素子から射出される光の照度分布が楕円形状の分布を示す場合、被照明面における光の照度分布は、
図10Cに示すように、被照明領域の全域にわたって略均一な照度分布を示す。なお、被照明領域の周縁部に見える照度のにじみは、発光素子から射出される光の照度分布に依存する。
【0067】
以上のことから、本発明の光源装置をプロジェクターに適用する場合には、2つの透過光学素子の回転周波数を相対的に高くすることによって、明るさムラの少ない画像を得ることができる。
【0068】
次に、透過光学素子の屈折率n2があまり大きくなく、変位量が理想的な鋸刃形状でない場合に、2つの透過光学素子を用いて、2次元の被照明領域を照明する場合の照度分布について考察する。
【0069】
変位量が理想的な鋸刃形状でない場合、被照明領域における光走査時の軌跡は、
図9Bまたは
図10Bとは異なり、曲線状となる。そのため、被照明領域における軌跡の粗密、すなわち、光線の滞在時間密度によって、照度分布のムラが生じる。そこで、照度分布のムラを改善する方法として、透過光学素子の屈折率を高くする、または、透過光学素子の形状を変えて側面の数が多い正多角柱を使用する、の2通りの方法が考えられる。
【0070】
まず、透過光学素子の屈折率を高くする方法について検討する。
図11Aは、2つの透過光学素子のそれぞれの屈折率が相対的に低い場合の光の照度分布を示す図である。
図11Bは、2つの透過光学素子のそれぞれの屈折率が相対的に高い場合の光の照度分布を示す図である。具体的には、
図11Aにおいて、第1透過光学素子の屈折率は1.5であり、第2透過光学素子の屈折率は1.8である。
図11Bにおいて、第1透過光学素子の屈折率は2.5であり、第2透過光学素子の屈折率は2.5である。
図11Aおよび
図11Bにおいては、同一の照度を示す点を曲線で結んだ等照度曲線を示す。
【0071】
図11Aおよび
図11Bに示すように、各透過光学素子の屈折率が相対的に低い場合、等照度曲線の数が多く、照度の変化が大きいのに対し、各透過光学素子の屈折率が相対的に高い場合、等照度曲線の数が少なく、照度の変化が小さい。このことから、2つの透過光学素子の屈折率を相対的に高くすることによって、照度分布をより均一にできることが判った。
【0072】
次に、側面の数が多い正多角柱を使用する方法について検討する。
透過光学素子の形状として、上記では4つの側面を有する正4角柱の例を挙げたが、ここでは6つの側面を有する正6角柱の例を挙げる。
【0073】
図12は、正6角柱状の透過光学素子19と光の変位との関係を示す模式図である。
図12に示すように、正6角柱状の透過光学素子19の場合、回転方向における1つの側面の幅lは、透過光学素子の体積が同じであったとすると、
図5に示した正4角柱状の透過光学素子18の1つの側面の幅lに比べて短くなる。そのため、正6角柱状の透過光学素子19における光軸AX上を通る光線L1aの最大入射角は、正4角柱状の透過光学素子18における光軸AX上を通る光線L1aの最大入射角に比べて小さくなる。
【0074】
一般的に、透過光学素子の形状を正(2×m)角柱(m:2以上の自然数)とすると、光軸上を通る光線の最大入射角は、90/m(度)と表すことができる。具体的には、正4角柱状の場合の最大入射角は45度であり、正6角柱状の場合の最大入射角は30度である。すなわち、透過光学素子の形状と最大入射角との関係は、
図13で示すようになる。
図13において、横軸は透過光学素子の形状を示し、縦軸は最大入射角(度)を示す。
【0075】
図13に示すように、透過光学素子を構成する正多角柱の側面の数が多くなる程、最大入射角が小さくなる。そのため、正多角柱の側面の数が多くなる程、光線の最大変位量も小さくなる。したがって、正多角柱の側面の数を多くしつつ光線の最大変位量を確保するためには、正多角柱の体積を大きくし、回転方向における1つの側面の幅lを大きくする必要がある。その結果、透過光学素子が大型化するという欠点がある。その一方、正多角柱の側面の数を多くした場合、光線の最大変位量が小さくなることは、
図6A~
図6Eに示した鋸刃形状のグラフの頂点近傍の曲線部分が少なくなることを意味する。そのため、正多角柱の側面の数を多くすると、照度分布を均一にできるという利点がある。
【0076】
以上の考察から、透過光学素子の屈折率と正多角柱の形状とを変化させ、被照明領域における光線の軌跡のシミュレーションを行うと、以下の
図14A~
図14Dの結果が得られた。
【0077】
図14Aは、透過光学素子の屈折率が1.492であり、透過光学素子の形状が正4角柱の場合を示す。
図14Bは、透過光学素子の屈折率が2.5であり、透過光学素子の形状が正4角柱の場合を示す。
図14Cは、透過光学素子の屈折率が1.492であり、透過光学素子の形状が正6角柱の場合を示す。
図14Dは、透過光学素子の屈折率が1.492であり、透過光学素子の形状が正8角柱の場合を示す。
【0078】
図14Aに示すように、透過光学素子の屈折率が1.492、透過光学素子の形状が正4角柱の場合、光線の軌跡が全体的に湾曲していることが判る。この場合、被照明領域における照度ムラが発生するおそれがある。これに対し、
図14Bに示すように、透過光学素子の形状が同じであっても、透過光学素子の屈折率を2.5まで高くすると、光線の軌跡の直線性が高くなる。これにより、被照明領域における照度ムラを抑制することができる。または、
図14Cに示すように、透過光学素子の屈折率が同じであっても、透過光学素子の形状を正6角柱にすると、光線の軌跡の直線性が高くなる。これにより、被照明領域における照度ムラを抑制することができる。
図14Dに示すように、透過光学素子の形状を正8角柱にすると、光線の軌跡の直線性がさらに高くなる。これにより、被照明領域における照度ムラをさらに抑制することができる。
【0079】
図15は、5つの光源から射出された光が所定の距離だけ伝播した際の照度分布の変化を示す模式図である。
図15において、横軸は光の伝搬方向と直交する方向の光源の位置を示し、縦軸は伝播距離を示す。
図15に示すように、光源から射出される光が理想的なガウシアンビームである場合、等間隔に配置された5つの光源を点灯させると、光が伝播するにつれて、5つの光の照度分布を全て合成した合成照度分布は、徐々に平均化されてなだらかになる。さらに、各光源から射出される光が所定の距離だけ伝播した時点で、合成照度分布は、ほぼ凹凸を持たないフラットな形状となる。
【0080】
上記の考え方を本発明の光源装置にも適用することができる。すなわち、本発明の光源装置は光を走査して照明を行う走査照明系であるから、例えば
図14A~
図14Dのシミュレーション結果において、被照明領域を水平方向(図の横方向)に切断した断面における照度分布を考えると、複数本の軌跡の位置を照度の頂点とする複数の光源が水平方向に並んだ状態と見なすことができる。そのため、軌跡の間隔を調整した上で、光源から被照明面までの距離、プロジェクターの場合には光源装置から光変調装置までの距離を、複数の光からなる合成照度分布がフラットな形状となる距離に一致するように設定すればよい。軌跡の間隔は、透過光学素子の回転速度によって調整することができる。これにより、光変調装置において均一な照度分布を得ることができる。上の説明では、一例として水平方向の断面に着目したが、全ての方向において成り立つ。
【0081】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、
図16および
図17を用いて説明する。
図16は、本実施形態のプロジェクター30の概略構成図である。
図17は、光変調装置の断面構造を示す模式図である。
図16および
図17において、第1実施形態の図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0082】
図16に示すように、プロジェクター30は、光源装置40と、反射部41と、光変調装置42と、第1マイクロレンズアレイ43(
図17参照)と、第2マイクロレンズアレイ44(
図17参照)と、射出側偏光板22と、投射光学装置23と、を備える。以下の実施形態において、投射光学装置23の光軸を投射光軸AX4と定義する。
【0083】
光源装置40は、光源部40Aと、第1透過光学素子13と、第2透過光学素子14と、光束幅調整光学系73と、を備える。光源部40Aは、第1発光素子47と、第2発光素子48と、第3発光素子49と、光合成光学系72と、を備える。第1透過光学素子13および第2透過光学素子14の構成は、第1実施形態と同様である。
【0084】
第1発光素子47は、第1波長帯の第1光LBを射出する。第1発光素子47は、レーザーダイオードから構成される。そのため、第1発光素子47から射出される第1光LBは、可干渉性を有する直線偏光であり、光束幅が狭く、平行度が高いレーザー光である。第1波長帯は、例えば450nm±5nmの青色波長帯である。すなわち、第1光LBは、青色光である。以下、第1光LBを青色光LBと称する。
【0085】
第2発光素子48は、第2波長帯の第2光LGを射出する。第2発光素子48は、レーザーダイオードから構成される。そのため、第2発光素子48から射出される第2光LGは、可干渉性を有する直線偏光であり、光束幅が狭く、平行度が高いレーザー光である。第2波長帯は、例えば530nm±5nmの緑色波長帯である。すなわち、第2光LGは、緑色光である。以下、第2光LGを緑色光LGと称する。
【0086】
第3発光素子49は、第3波長帯の第3光LRを射出する。第3発光素子49は、レーザーダイオードから構成される。そのため、第3発光素子49から射出される第3光LRは、可干渉性を有する直線偏光であり、光束幅が狭く、平行度が高いレーザー光である。第3波長帯は、例えば650nm±5nmの赤色波長帯である。すなわち、第3光LRは、赤色光である。以下、第3光LRを赤色光LRと称する。
【0087】
第1発光素子47の光軸AX1は、第1発光素子47から射出される青色光LBの主光線に沿う軸と定義する。第2発光素子48の光軸AX2は、第2発光素子48から射出される緑色光LGの主光線に沿う軸と定義する。第3発光素子49の光軸AX3は、第3発光素子49から射出される赤色光LRの主光線に沿う軸と定義する。
【0088】
第1発光素子47は、第1発光素子47の光軸AX1が第2発光素子48の光軸AX2に対して直交する向きに配置されている。第3発光素子49は、第3発光素子49の光軸AX3が第2発光素子48の光軸AX2に対して直交する向きに配置されている。本実施形態では、第1発光素子47が第2発光素子48に近い側に配置され、第3発光素子49が第2発光素子48から遠い側に配置されているが、第1発光素子47の位置と第3発光素子49の位置とは逆であってもよい。以上説明してきたように、第1発光素子47と第2発光素子48と第3発光素子49の配置は、本実施形態に記載の配置に限られず、配置については、どのような組み合わせであっても良い。
【0089】
光合成光学系72は、第1光合成素子75と、第2光合成素子76と、を備える。第1光合成素子75は、光軸AX1と光軸AX2とが交差する位置に設けられている。第1光合成素子75は、緑色光を透過し、青色光を反射するダイクロイックミラーから構成される。第2光合成素子76は、光軸AX2と光軸AX3とが交差する位置に設けられている。第2光合成素子76は、緑色光および青色光を透過し、赤色光を反射するダイクロイックミラーから構成される。光合成光学系72は、第1発光素子47から射出される緑色光LG、第2発光素子48から射出される青色光LB、および第3発光素子49から射出される赤色光LRを合成し、白色の合成光LWを生成する。すなわち、合成光LWは、緑色光LGと青色光LBと赤色光LRとを含み、第1透過光学素子13に向けて射出される。
【0090】
光束幅調整光学系73は、第2透過光学素子14と反射部41との間に設けられている。光束幅調整光学系73は、1つの凹レンズ77と1つの凸レンズ78から構成されているが、レンズの種類や数は特に限定されない。光束幅調整光学系73は、第2透過光学素子14から射出される合成光LWの光束幅を調整する。本実施形態の光束幅調整光学系73は、光束幅調整光学系73に入射する平行光を光束幅が調整された平行光として射出する光学系、いわゆるアフォーカル光学系である。本実施形態の場合、光束幅調整光学系73が設けられたことにより、必要な光束幅が大きい場合であっても、各透過光学素子13,14のサイズを小さくすることができる。ただし、光束幅の調整が必要ない場合、光束幅調整光学系73は設けられていなくてもよい。
【0091】
反射部41は、第1反射素子51と、第2反射素子52と、第3反射素子53と、を備える。反射部41は、光源装置40から射出される合成光LWを3つの色光に分離し、光変調装置42に向けて反射する。第1反射素子51、第2反射素子52、および第3反射素子53は、光束幅調整光学系73から射出される合成光LWが入射する側から、この順に配置されている。第1反射素子51、第2反射素子52、および第3反射素子53のそれぞれは、光軸AX2および投射光軸AX4のそれぞれに対して傾斜して配置され、傾斜角度が互いに異なる。
【0092】
第1反射素子51は、緑色光と青色光とを透過し、赤色光を反射するダイクロイックミラーから構成されている。したがって、第1反射素子51は、光源装置40から射出される合成光LWが入射し、緑色光LGと青色光LBとを第2反射素子52に向けて透過し、赤色光LRを光変調装置42に向けて所定の反射角で反射する。
【0093】
第2反射素子52は、青色光を透過し、緑色光を反射するダイクロイックミラーから構成されている。したがって、第2反射素子52は、第1反射素子51を透過する青色光LBおよび緑色光LGが入射し、青色光LBを第3反射素子53に向けて透過し、緑色光LGを光変調装置42に向けて所定の反射角で反射する。
【0094】
第3反射素子53は、波長依存性を持たない反射ミラーから構成されている。したがって、第3反射素子53は、第2反射素子52を透過する青色光LBが入射し、青色光LBを光変調装置42に向けて所定の反射角で反射する。なお、第3反射素子53は、青色光を反射するダイクロイックミラーから構成されていてもよい。
【0095】
第1反射素子51の反射面と光軸AX2とのなす角度は、第2反射素子52の反射面と光軸AX2とのなす角度よりも小さい。第2反射素子52の反射面と光軸AX2とのなす角度は、第3反射素子53の反射面と光軸AX2とのなす角度よりも小さい。以上の各反射素子51,52,53の配置から、第1反射素子51に入射する光の入射角は、第2反射素子52に入射する光の入射角よりも大きい。第2反射素子52に入射する光の入射角は、第3反射素子53に入射する光の入射角よりも大きい。したがって、第1反射素子51で反射する赤色光LRの反射角は、第2反射素子52で反射する緑色光LGの反射角よりも大きい。第2反射素子52で反射する緑色光LGの反射角は、第3反射素子53で反射する青色光LBの反射角よりも大きい。その結果、赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとは、互いに異なる入射角で光変調装置42に入射する。
【0096】
図17に示すように、光変調装置42を構成する液晶パネルは、複数の青色サブ画素PX1と、複数の緑色サブ画素PX2と、複数の赤色サブ画素PX3と、が周期的にマトリクス状に配列された光変調領域を有する。青色サブ画素PX1は、青色光LBを変調する。緑色サブ画素PX2は、緑色光LGを変調する。赤色サブ画素PX3は、赤色光LRを変調する。画像の最小単位である1つの画素は、1つの青色サブ画素PX1と、1つの緑色サブ画素PX2と、1つの赤色サブ画素PX3と、から構成される。隣り合う2つのサブ画素の間に、ブラックマトリクスと称される遮光膜55が設けられている。本実施形態の青色サブ画素PX1は、特許請求の範囲の第1サブ画素に対応する。本実施形態の緑色サブ画素PX2は、特許請求の範囲の第2サブ画素に対応する。本実施形態の赤色サブ画素PX3は、特許請求の範囲の第3サブ画素に対応する。
【0097】
第1マイクロレンズアレイ43は、液晶パネルを構成する第1基板57の光入射側に設けられている。第1マイクロレンズアレイ43は、複数の第1マイクロレンズ431がマトリクス状に配列された構成を有する。第1マイクロレンズアレイ43は、反射部41によって反射される各色光を集光して光変調装置42の各サブ画素PX1,PX2,PX3に導く。1つの第1マイクロレンズ431は、レンチキュラーレンズで構成され、1つの画素、すなわち、一方向に並んだ異なる色の3つのサブ画素PX1,PX2,PX3にわたって配置されている。
【0098】
反射部41から射出される青色光LBと緑色光LGと赤色光LRとは、第1マイクロレンズ431に対して互いに異なる入射角で入射するため、互いに異なる方向に向かって進み、集光される。これにより、青色光LBは青色サブ画素PX1に入射し、緑色光LGは緑色サブ画素PX2に入射し、赤色光LRは赤色サブ画素PX3に入射する。すなわち、第1マイクロレンズアレイ43は、反射部41から射出される青色光LBを青色サブ画素PX1に入射させ、反射部41から射出される緑色光LGを緑色サブ画素PX2に入射させ、反射部41から射出される赤色光LRを赤色サブ画素PX3に入射させる。本実施形態の第1マイクロレンズアレイ43は、特許請求の範囲の導光素子に対応する。
【0099】
第2マイクロレンズアレイ44は、液晶パネルを構成する第2基板58の光射出側に設けられている。第2マイクロレンズアレイ44は、複数の第2マイクロレンズ441がマトリクス状に配列された構成を有する。第2マイクロレンズアレイ44は、液晶パネルから射出される各色光を平行化する。第2マイクロレンズ441は、1つのサブ画素毎に設けられている。なお、本実施形態では、各色光の平行化を液晶パネルから射出された後に行う例を挙げたが、この構成に代えて、第2マイクロレンズアレイ44を液晶パネルの光入射側に配置し、各色光の平行化を液晶パネルに入射する前に行ってもよい。
プロジェクター30のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0100】
[第2実施形態の効果]
本実施形態においても、光変調装置42における明るさやコントラストの低下、色むらの発生、投射光学装置23での光の損失、可干渉性を有する光源を使用したことによる照度ムラ等の問題が改善できる、光学部品を減らすことにより、光学系と空気との界面の数を減らすことができるため、界面反射による光のロスを低減することができる、光を矩形に成形するための光学系を用いずに光利用効率を高めることができる、エリア照明が可能となる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0101】
また、本実施形態のプロジェクター30は、発光色が互いに異なる3つの発光素子47,48,49を備えており、3つの反射素子51,52,53を含む反射部41と第1マイクロレンズアレイ43との作用によって、3つの色光LB,LG,LRを空間的に分離し、各色光LB,LG,LRを対応する各サブ画素PX1,PX2,PX3に入射させることができる。これにより、光変調装置42にカラーフィルターを用いることなく、簡易な構成でカラー画像を表示可能なプロジェクター30を実現することができる。
【0102】
このように、3つの反射素子を含む反射部を備えるプロジェクターは、第1マイクロレンズアレイに対する各色光の入射角が常に一定であることを前提として設計されている。ところが、従来の光源装置のように、光を走査する手段としてポリゴンミラーを用いた場合、ポリゴンミラーが回転しつつ光を反射するため、各反射素子を経て第1マイクロレンズアレイに入射する各色光の入射角が時間によって変化する。この場合、特定の色光が当該色光に対応しない隣りのサブ画素に入射することで表示画像の色純度が低下する、という問題が生じるおそれがある。また、液晶パネルのブラックマトリクスに入射する光が増え、表示画像の明るさが低下する、という問題が生じるおそれがある。
【0103】
上記の問題に対して、本実施形態のプロジェクター30によれば、第2透過光学素子14から射出される合成光LWが略平行光となるため、第1マイクロレンズアレイ43に対する各色光LB,LG,LRの入射角の時間的変化が極めて少ない。これにより、特定の色光が当該色光に対応しない隣りのサブ画素やブラックマトリクスに入射する割合が減るため、表示画像の色純度や明るさの低下を抑えることができる。
【0104】
また、本実施形態のプロジェクター30によれば、クロスダイクロイックプリズム等の光合成光学系を用いないため、光合成光学系を用いるプロジェクターに比べて、投射光学装置23を光変調装置42に近付けて配置することができる。これにより、投射レンズのバックフォーカスが短くて済む。また、第2マイクロレンズアレイ44によって光変調装置42から射出される各色光が平行化されているため、投射レンズで光を取り込み可能な角度が小さくて済む。これらの要因により、投射レンズの性能向上やコスト低減を図ることができる。また、イメージサークルが液晶パネルのサイズをカバーできている場合、市販のカメラレンズを装着することもできる。
【0105】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、
図18を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターの基本構成は第2実施形態のプロジェクターと略同様であり、反射部の構成が第2実施形態と異なる。
図18は、本実施形態のプロジェクター60の概略構成図である。
図18において、第2実施形態の
図16と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0106】
図18に示すように、本実施形態の光源装置70の光源部70Aにおいて、第1発光素子81は、第1波長帯の第1光LRを射出する。本実施形態の第1光LRは、赤色光である。以下、第1光LRを赤色光LRと称する。第2発光素子82は、第2波長帯の第2光LGを射出する。本実施形態の第2光LGは、緑色光である。以下、第2光LGを緑色光LGと称する。第3発光素子83は、第3波長帯の第3光LBを射出する。本実施形態の第3光LBは、青色光である。以下、第3光LBを青色光LBと称する。なお、本実施形態では、特許請求の範囲との整合性を取るため、発光素子および色光の名称を第2実施形態とは異ならせているが、発光素子および色光の配置は第2実施形態と同じである。
【0107】
反射部84において、第1反射素子85は、赤色光と緑色光とを透過し、青色光を反射するダイクロイックミラーから構成されている。したがって、第1反射素子85は、光源装置70から射出される合成光LWが入射し、赤色光LRと緑色光LGとを第2反射素子86に向けて透過し、青色光LBを光変調装置42に向けて所定の反射角で反射する。
【0108】
第2反射素子86は、赤色光を透過し、緑色光を反射するダイクロイックミラーから構成されている。したがって、第2反射素子86は、第1反射素子85を透過する赤色光LRおよび緑色光LGが入射し、赤色光LRを第3反射素子87に向けて透過し、緑色光LGを光変調装置42に向けて所定の反射角で反射する。
【0109】
第3反射素子87は、波長依存性を持たない反射ミラーから構成されている。したがって、第3反射素子87は、第2反射素子86を透過する赤色光LRが入射し、赤色光LRを光変調装置42に向けて所定の反射角で反射する。なお、第3反射素子87は、赤色光を反射するダイクロイックミラーから構成されていてもよい。
【0110】
このように、第2実施形態の反射部41と第3実施形態の反射部84とでは、各色光の反射の順番が異なる。すなわち、
図16に示す第2実施形態の反射部41では、光が第1反射素子51から第3反射素子53に向かって進む間に、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBがこの順に反射する。これに対して、
図18に示す第3実施形態の反射部84では、光が第1反射素子85から第3反射素子87に向かって進む間に、青色光LB、緑色光LG、および赤色光LRがこの順に反射する。
【0111】
本実施形態の場合、第1反射素子85で反射する青色光LBの反射角は、第2反射素子86で反射する緑色光LGの反射角よりも大きい。第2反射素子86で反射する緑色光LGの反射角は、第3反射素子87で反射する赤色光LRの反射角よりも大きい。これにより、青色光LBと緑色光LGと赤色光LRとは、互いに異なる入射角で光変調装置42に入射する。また、3つの色光のうち、第1反射素子85で反射する青色光LBは、光変調装置42に対して最も垂直に近い方向から入射する設定となっている。そのため、光変調装置42に対する赤色光LRの入射角は、光変調装置42に対する緑色光LGの入射角よりも大きく、光変調装置42に対する緑色光LGの入射角は、光変調装置42に対する青色光LBの入射角よりも大きい。
プロジェクター60のその他の構成は、第2実施形態と同様である。
【0112】
[第3実施形態の効果]
本実施形態においても、光変調装置42における明るさやコントラストの低下、色むらの発生、投射光学装置23での光の損失、可干渉性を有する光源を使用したことによる照度ムラ等の問題が改善できる、光学部品を減らすことにより、光学系と空気との界面の数を減らすことができるため、界面反射による光のロスを低減することができる、光を矩形に成形するための光学系を用いずに光利用効率を高めることができる、エリア照明が可能となる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0113】
また、本実施形態においても、光変調装置42にカラーフィルターを用いることなく、簡易な構成でカラー画像を表示することができる、第2透過光学素子14から射出される光が略平行光となることで表示画像の色純度や明るさの低下を抑えることができる、といった第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0114】
さらに、本実施形態によれば、以下に述べる特有の効果が得られる。
光源装置70を構成する2つの透過光学素子13,14の硝材が色収差を有しているため、各透過光学素子13,14における屈折角が光の波長によって異なり、変位量が光の波長によって異なる。具体的には、各色光の変位量は、赤色光LR、緑色光LG、青色光LBの順に大きくなる。これにより、第2透過光学素子14から射出される各色光の主光線に垂直な断面のサイズも赤色光LR、緑色光LG、青色光LBの順に大きくなる。
【0115】
一方、本実施形態では、光変調装置42に対する各色光の入射角が青色光LB、緑色光LG、赤色光LRの順に大きくなっているため、光変調装置42に入射する各色光の主光線に垂直な断面のサイズは、青色光LB、緑色光LG、赤色光LRの順に大きくなる。したがって、各透過光学素子13,14の波長分散による各色光のサイズの大小と、光変調装置42に対する各色光の入射角の相違による各色光のサイズの大小と、が相殺されるため、光変調装置42上での各色光のサイズの違いが第2実施形態に比べて小さくなる。そのため、アクロマート、アポクロマート等の色収差補正用レンズを用いることなく、透過光学素子13,14の色収差に起因する光変調装置42上での各色光のサイズの違いを小さくすることができ、画像周縁部における色ずれを抑制することができる。
【0116】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、
図19および
図20を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターの基本構成は第3実施形態のプロジェクターと略同様であり、光源装置の構成が第3実施形態と異なる。したがって、本実施形態では、プロジェクター全体の図示を省略し、光源装置のみを図示する。
図19は、本実施形態の光源装置90の概略構成図である。
図20は、
図19とは直交する方向から見た光源装置90の概略構成図である。
図19および
図20では、光束幅調整光学系の図示を省略する。
図19および
図20において、第3実施形態の
図18と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0117】
図19に示すように、光源装置90を第1回転軸C1の方向から見ると、
図18に示す第2実施形態の光源装置70と同様である。これに対して、
図20に示すように、光源装置90を第1回転軸C1に直交する第2回転軸C2の方向から見ると、第1透過光学素子91は、第1透光性部材93と、第2透光性部材94と、第3透光性部材95と、を備える。第1透光性部材93、第2透光性部材94、および第3透光性部材95のそれぞれは、板状の部材からなり、第1回転軸C1の延在方向に沿って互いに接合され、一体化されている。なお、3つの透光性部材93,94,95は、必ずしも互いに接合されていなくてもよく、互いに離間していてもよい。すなわち、第1透光性部材93、第2透光性部材94、および第3透光性部材95は、第1回転軸C1の延在方向に沿って配置されていればよい。
【0118】
第1透光性部材93、第2透光性部材94、および第3透光性部材95は、互いに異なる屈折率を有する硝材から構成されている。第1透光性部材93は、第1屈折率n1を有する。第2透光性部材94は、第1屈折率n1よりも低い第2屈折率n2を有する。第3透光性部材95は、第2屈折率n2よりも低い第3屈折率n3を有する。すなわち、屈折率の大小関係は、n1>n2>n3である。
【0119】
第1発光素子81から射出される赤色光LRは、光合成光学系72を経て、第1透過光学素子91の第1透光性部材93に入射する。第2発光素子82から射出される緑色光LGは、光合成光学系72を経て、第1透過光学素子91の第2透光性部材94に入射する。第3発光素子83から射出される青色光LBは、光合成光学系72を経て、第1透過光学素子91の第3透光性部材95に入射する。このように、各発光素子から射出される各色光は、互いに異なる透光性部材に入射するように構成されている。すなわち、相対的に長波長の光が入射する透光性部材は、相対的に高い屈折率を有する。相対的に短波長の光が入射する透光性部材は、相対的に低い屈折率を有する。
【0120】
本実施形態では、各色光を互いに異なる透光性部材に入射させるため、第1発光素子81、第2発光素子82、および第3発光素子83の第1回転軸C1の延在方向における位置を、互いに異ならせている。したがって、各透過光学素子91,14を透過する各色光の光路が第1回転軸C1の延在方向にずれ、第2透過光学素子14から射出される各色光の位置が第1回転軸C1の延在方向にずれる。このずれは、反射部84を構成する各反射素子85,86,87の傾きを調整することにより補正することができる。第1透過光学素子91の互いに異なる位置から射出される赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBのそれぞれは、第2透過光学素子14に入射する。
プロジェクターのその他の構成は、第3実施形態と同様である。
【0121】
[第4実施形態の効果]
本実施形態においても、光変調装置42における明るさやコントラストの低下、色むらの発生、投射光学装置23での光の損失、可干渉性を有する光源を使用したことによる照度ムラ等の問題が改善できる、光学部品を減らすことにより、光学系と空気との界面の数を減らすことができるため、界面反射による光のロスを低減することができる、光を矩形に成形するための光学系を用いずに光利用効率を高めることができる、エリア照明が可能となる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0122】
また、本実施形態においても、光変調装置42にカラーフィルターを用いることなく、簡易な構成でカラー画像を表示することができる、第2透過光学素子14から射出される光が略平行光となることで表示画像の色純度や明るさの低下を抑えることができる、といった第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0123】
さらに、本実施形態によれば、以下に述べる特有の効果が得られる。
第3実施形態において、透過光学素子13,14の波長分散による各色光のサイズの大小を、光変調装置42に対する各色光の入射角の相違による各色光のサイズの大小によって相殺し、補正できると述べた。ただし、この場合、補正が可能な光のサイズは、光変調装置42に対する光の入射角が調整できる方向、すなわち、
図18の紙面の横方向であって、
図18の紙面に垂直な方向の光のサイズを調整することはできない。
【0124】
これに対して、本実施形態の構成によれば、屈折率が互いに異なる3つの透光性部材93,94,95が
図19の紙面に垂直な方向に積層された第1透過光学素子91を用いることによって、
図18の紙面に垂直な方向の光のサイズを3つの色光で略一致させることができる。このように、第3実施形態の反射部84の構成と、本実施形態の第1透過光学素子91の構成と、を組み合わせることにより、光変調装置42の光入射面の2方向において3つの色光のサイズの違いを小さくすることができる。その結果、画像周縁部における色ずれをより良く抑制することができる。
【0125】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、本発明の一つの態様は、上記の各実施形態の特徴部分を適宜組み合わせた構成とすることができる。
【0126】
上記実施形態の光源装置においては、各透過光学素子の形状として、側面の数が偶数の多角柱の例を挙げた。迷光の発生が少なく、光利用効率が高いという観点では、側面の数が偶数の多角柱が望ましい。ただし、互いに平行な1組の入射面および射出面を有していれば、側面の数が偶数の多角柱以外の形状であってもよい。また、本願実施形態における「回転」は、透過光学素子を揺動して同様な走査を行うことも含めることができる。
【0127】
その他、光源装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。また、上記実施形態では、本発明による光源装置を、液晶パネルを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置を、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに適用してもよい。
【0128】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
【0129】
(付記1)
光を射出する光源部と、
回転可能に支持された透光性部材から構成され、前記光源部から射出される前記光が入射する第1入射面と、前記第1入射面から入射する前記光を射出させる第1射出面と、を有する第1透過光学素子と、
回転可能に支持された透光性部材から構成され、前記第1透過光学素子から射出される前記光が入射する第2入射面と、前記第2入射面から入射する前記光を射出させる第2射出面と、を有する第2透過光学素子と、
前記第2透過光学素子から射出される前記光を画像情報に基づいて変調する1つの光変調装置と、
前記光変調装置により変調される光を投射する投射光学装置と、
を備え、
前記第1透過光学素子は、前記第1透過光学素子に対する前記光の入射方向である第1方向に交差する第2方向に沿って延びる第1回転軸を中心として回転し、
前記第2透過光学素子は、前記第1方向および前記第2方向のそれぞれに交差する第3方向に沿って延びる第2回転軸を中心として回転し、
前記第1入射面と前記第1射出面とは互いに平行であり、
前記第2入射面と前記第2射出面とは互いに平行である、プロジェクター。
【0130】
付記1の構成によれば、光源部から射出される光は、第1透過光学素子および第2透過光学素子の回転に伴って、光軸に対して平行な状態を維持したまま、光の進行方向と直交する方向に変位する。そのため、光変調装置に対して光を常に垂直に入射させることができる。これにより、明るさやコントラストの低下、色むらの発生等が少なく、表示品質に優れるプロジェクターを実現することができる。
【0131】
(付記2)
前記第1透過光学素子は、前記第1回転軸を中心として回転することにより、前記光源部から射出される前記光を、第1走査方向に走査し、
前記第2透過光学素子は、前記第2回転軸を中心として回転することにより、前記第1透過光学素子から射出される前記光を、前記第1走査方向と交差する第2走査方向に走査し、
前記第1透過光学素子と前記第2透過光学素子とにより、前記光は2次元に走査される、付記1に記載のプロジェクター。
【0132】
付記2の構成によれば、第1透過光学素子と第2透過光学素子とが光を所望の照明領域内二次元に走査するため、光の平行度の高い照明光を生成することができる。
【0133】
(付記3)
前記第1透過光学素子は、前記第1回転軸に交差する第1面および第2面と、前記第1面および前記第2面に接する2×m(m:2以上の自然数)個の第1側面と、を有し、
前記第1入射面および前記第1射出面は、前記2×m個の前記第1側面のうちの互いに平行な2つの前記第1側面であり、
前記第2透過光学素子は、前記第2回転軸に交差する第3面および第4面と、前記第3面および前記第4面に接する2×n(n:2以上の自然数)個の第2側面と、を有し、
前記第2入射面および前記第2射出面は、前記2×n個の前記第2側面のうちの互いに平行な2つの前記第2側面である、付記1または付記2に記載の光源装置。
【0134】
付記3の構成によれば、互いに平行でない第1側面または第2側面に入射する光が存在しないため、各透過光学素子における迷光の発生が少なく、光利用効率を高めることができる。
【0135】
(付記4)
前記第1透過光学素子および前記第2透過光学素子の少なくとも一方は、石英から構成される、付記1から付記3までのいずれか一項に記載の光源装置。
【0136】
付記4の構成によれば、石英のヤング率と熱膨張係数とが小さいため、各透過光学素子の熱歪みが小さく、光の偏光方向の乱れを抑えることができる。
【0137】
(付記5)
前記第2透過光学素子から射出される前記光を前記光変調装置に向けて反射する反射部と、
前記反射部によって反射される前記光を集光して前記光変調装置に導く導光素子と、
をさらに備え、
前記光は、第1波長帯の第1光と、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光と、前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯の第3光と、を含み、
前記反射部は、
前記第2透過光学素子から射出される前記第1光、前記第2光、および前記第3光が入射し、前記第1光と前記第2光とを透過し、前記第3光を第1反射角で反射する第1反射素子と、
前記第1反射素子を透過する前記第1光および前記第2光が入射し、前記第1光を透過し、前記第2光を前記第1反射角とは異なる第2反射角で反射する第2反射素子と、
前記第2反射素子を透過する前記第1光が入射し、前記第1光を前記第1反射角および前記第2反射角とは異なる第3反射角で反射する第3反射素子と、
を備え、
前記光変調装置は、
前記第1光を変調する第1サブ画素と、
前記第2光を変調する第2サブ画素と、
前記第3光を変調する第3サブ画素と、を有し、
前記導光素子は、
前記反射部から射出される前記第1光を前記第1サブ画素に入射させ、
前記反射部から射出される前記第2光を前記第2サブ画素に入射させ、
前記反射部から射出される前記第3光を前記第3サブ画素に入射させる、付記1から付記4までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【0138】
付記5の構成によれば、光変調装置にカラーフィルターを設ける必要がなく、簡易な構成でカラー画像を表示可能なプロジェクターを実現することができる。さらに、この構成において、特定の色光が当該色光に対応しない隣りのサブ画素に入射する割合が少なく、表示画像の色純度や明るさを確保することができる。
【0139】
(付記6)
前記第1光は赤色光であり、
前記第2光は緑色光であり、
前記第3光は青色光であり、
前記光変調装置に対する前記第1光の入射角は、前記光変調装置に対する前記第2光の入射角よりも大きく、
前記光変調装置に対する前記第2光の入射角は、前記光変調装置に対する前記第3光の入射角よりも大きい、付記5に記載のプロジェクター。
【0140】
付記6の構成によれば、透過光学素子の色収差による各色光のサイズの大小と、光変調装置に対する各色光の入射角の相違による各色光のサイズの大小と、が相殺されるため、光変調装置上での各色光のサイズの違いが小さくなる。これにより、色収差補正用レンズを用いることなく、画像周縁部での色ずれの発生を抑制することができる。
【0141】
(付記7)
前記光源装置は、
前記第1光を射出する第1発光素子と、
前記第2光を射出する第2発光素子と、
前記第3光を射出する第3発光素子と、
前記第1光と前記第2光と前記第3光とを合成して合成光を生成し、前記合成光を前記第1透過光学素子に向けて射出する光合成光学系と、
を備え、
前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子のそれぞれは、レーザー光を射出するレーザーダイオードである、付記5または付記6に記載のプロジェクター。
【0142】
付記7の構成によれば、光合成光学系によって合成される合成光を第1透過光学素子に入射させることができる。また、各発光素子から射出される各光が直線偏光のレーザー光であるため、光変調装置に液晶パネルを用いた場合に入射側偏光板を省略することができる。
【0143】
(付記8)
前記第1透過光学素子は、
第1屈折率を有する第1透光性部材と、
前記第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する第2透光性部材と、
前記第2屈折率よりも低い第3屈折率を有する第3透光性部材と、
を備え、
前記第1透光性部材、前記第2透光性部材、および前記第3透光性部材は、前記第2方向に沿って配置され、
前記第1光は、前記第1透光性部材に入射し、
前記第2光は、前記第2透光性部材に入射し、
前記第3光は、前記第3透光性部材に入射する、付記5から付記7までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【0144】
付記8の構成によれば、屈折率が互いに異なる3つの透光性部材を備える第1透過光学素子を用い、各透光性部材に異なる波長帯の光を入射させることによって、第1透過光学素子の色収差を補正することができる。これにより、画像周縁部での色ずれの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0145】
10,40,70,90…光源装置、10A,40A,70A…光源部、20,30,60…プロジェクター、21,42…光変調装置、23…投射光学装置、13,91…第1透過光学素子、13a…第1面、13b…第2面、13c1,13c2,13c3,13c4…第1側面、14…第2透過光学素子、14a…第3面、14b…第4面、14c1,14c2,14c3,14c4…第2側面、41,84…反射部、43…第1マイクロレンズアレイ(導光素子)、11,47,81…第1発光素子、48,82…第2発光素子、49,83…第3発光素子、51,85…第1反射素子、52,86…第2反射素子、53,87…第3反射素子、72…光合成光学系、93…第1透光性部材、94…第2透光性部材、95…第3透光性部材、C1…第1回転軸、C2…第2回転軸、L1…第1光、LB…青色光(第1光、第3光)、LG…緑色光(第2光)、LR…赤色光(第3光、第1光)、PX1…青色サブ画素(第1サブ画素)、PX2…緑色サブ画素(第2サブ画素)、PX3…赤色サブ画素(第3サブ画素)。